(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111965
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】病虫害防除方法及び病虫害防除装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
A01M1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016742
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100174528
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 晋朗
(72)【発明者】
【氏名】越智 鉄美
(72)【発明者】
【氏名】山本 長
(72)【発明者】
【氏名】▲土▼田 努
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亜希子
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121DA21
2B121EA26
2B121FA20
(57)【要約】
【課題】優れた病害虫抑制機能を得ることができる病虫害防除方法及び病虫害防除装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係る病虫害防除方法及び病虫害防除装置は、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光を照射する、ことを特徴とする。より具体的に、前記病害虫は、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ、ワタアブラムシの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光を照射する、
ことを特徴とする病虫害防除方法。
【請求項2】
前記病害虫は、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ、ワタアブラムシの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の病虫害防除方法。
【請求項3】
前記照射光は、波長308nmの紫外線B波からなる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の病虫害防除方法。
【請求項4】
前記照射光の光量子密度は、6.0×1019(μmоl/m2/sec)である、
ことを特徴とする請求項3に記載の病虫害防除方法。
【請求項5】
前記病害虫は、アブラムシの特にワタアブラムシであり、
前記照射光を、各日の照射時間を9時間30分以上として、少なくとも8日間連続して照射する、
ことを特徴とする請求項4に記載の病虫害防除方法。
【請求項6】
前記照射光を、ある日の21:30から翌日の7:00を含む9時間30分以上を照射時間として、少なくとも8日間連続して照射する、
ことを特徴とする請求項5に記載の病虫害防除方法。
【請求項7】
前記病害虫は、アザミウマの特にヒラズハナアザミウマ、又は、コナジラミの特にタバココナジラミであり、
前記照射光を、各日の照射時間を5時間30分以上として、前記病害虫の卵からの孵化を防止するように照射する、
ことを特徴とする請求項4に記載の病虫害防除方法。
【請求項8】
前記照射光を、ある日の22:30から翌日の4:00を含む5時間30分以上を照射時間として、前記病害虫の卵からの孵化を防止するように照射する、
ことを特徴とする請求項7に記載の病虫害防除方法。
【請求項9】
前記病害虫の前記付着体は、イチゴである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の病虫害防除方法。
【請求項10】
アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光を照射する、
ことを特徴とする病虫害防除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病虫害防除方法及び病虫害防除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通信ネットワークを介して圃場内の作物の生育を管理する圃場統合管理システムが記載されている。この圃場統合管理システムは、複数のセンサと、一つ以上の病害虫抑制部と、圃場内端末と、予測装置とを備えている。
【0003】
複数のセンサは、圃場内の環境を表す環境パラメータを所定の時間間隔で検出する。一つ以上の病害虫抑制部は、作物に発生する病害虫を抑制する。圃場内端末は、環境パラメータを、通信ネットワークを介して予測装置に送信し、予測装置から病害虫抑制部の動作を制御する制御信号を受信し、病害虫抑制部の動作を制御する。予測装置は、環境パラメータの推移から作物に発生する病害虫を予測する病害虫発生予測モデルを有し、新たに入力された環境パラメータから病害虫の発生を予測し、発生が予測された病害虫に対応する制御信号を生成する。
【0004】
圃場内端末は、環境パラメータの値が閾値よりも大きいか否かを判定する判定部と、環境パラメータの値が閾値よりも大きい場合に利用者に第1警報を発する第1報知部とを備えている。予測装置は、第1警報が発せられた場合、又は病害虫発生予測モデルによって病害虫の発生が予測された場合に携帯電話の回線を用いて利用者の携帯電話の電話番号が登録されている呼制御サーバに第2警報を発する第2報知部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者の鋭意研究によると、特許文献1を含む従来技術にあっては、ある種類の病虫・害虫、特に、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫に対する病害虫抑制機能が不十分となるおそれがある点で、改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の問題意識に基づいて完成されたものであり、優れた病害虫抑制機能を得ることができる病虫害防除方法及び病虫害防除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の病虫害防除方法は、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光を照射する、ことを特徴とする。
【0009】
前記病害虫は、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ、ワタアブラムシの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0010】
前記照射光は、波長308nmの紫外線B波からなることが好ましい。
【0011】
前記照射光の光量子密度は、6.0×1019(μmоl/m2/sec)であることが好ましい。
【0012】
前記病害虫は、アブラムシの特にワタアブラムシであり、前記照射光を、各日の照射時間を9時間30分以上として、少なくとも8日間連続して照射することが好ましい。
【0013】
前記照射光を、ある日の21:30から翌日の7:00を含む9時間30分以上を照射時間として、少なくとも8日間連続して照射することが好ましい。
【0014】
前記病害虫は、アザミウマの特にヒラズハナアザミウマ、又は、コナジラミの特にタバココナジラミであり、前記照射光を、各日の照射時間を5時間30分以上として、前記病害虫の卵からの孵化を防止するように照射することが好ましい。
【0015】
前記照射光を、ある日の22:30から翌日の4:00を含む5時間30分以上を照射時間として、前記病害虫の卵からの孵化を防止するように照射することが好ましい。
【0016】
前記病害虫の前記付着体は、イチゴであることが好ましい。
【0017】
本実施形態の病虫害防除装置は、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光を照射する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた病害虫抑制機能を得ることができる病虫害防除方法及び病虫害防除装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】病虫害防除方法及び病虫害防除装置を適用した圃場統合管理システムの構成を示す図である。
【
図2】制御BOXの内部構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】病虫害防除方法及び病虫害防除装置による病害虫抑制機能の優位性を示す図である。
【
図4】ヒラズハナアザミウマに対する病害虫抑制機能の優位性を示す図である。
【
図5】タバココナジラミに対する病害虫抑制機能の優位性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の病虫害防除方法及び病虫害防除装置は、光技術を用いた病虫害防除技術に係るものである。
【0021】
日本の農作物において、1年あたりで500億円~1000億円もの病虫害被害が発生していると言われており、近年の環境変化(温暖化等)から、国際的に見てもその被害は増加傾向にある。従って、農林水産省より病虫害対策が必要であるとされている。しかし、現在の日本における病虫害防除技術は「化学農薬」が主であり、従来の殺虫剤はリスクが高い上に、近年課題となっている病害虫においては薬剤抵抗性を持つものが存在するため、殺虫剤の効果を得られないケースがみられる。また、防虫ネットや熱処理などの物理的な病虫害防除技術も検討されているが、統合的に効果が得られるものが存在しないのが実情である。さらに、将来に向けて、リスク換算ベースでの化学農薬の使用量を削減する取組が進められており、化学農薬に代わる物理的な病虫害防除技術の確立と普及が求められている。
【0022】
本発明者は、上記の現状を重要な技術課題として捉えて、鋭意研究を重ねた結果、ある種類の病虫・害虫、特に、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫に対しては、特定の波長の光、具体的に、波長280nm~315nmの紫外線B波(UVB:ultraviolet B)からなる照射光を照射することにより、優れた病害虫抑制機能を得ることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明者の鋭意研究によれば、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光は、その他の波長の光、例えば、波長365nmのUVA(ultraviolet A)、波長450nmの青色光(Blue)、波長525nmの緑色光(Green)、波長660nmの赤色光(Red)と比較して、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシに対する顕著な病害虫抑制機能が確認された。さらに、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光は、本実施形態の対象外の病害虫、例えばハダニと比較して、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシに対する顕著な病害虫抑制機能が確認された。
【0024】
ちなみに、アザミウマに対しては、波長365nmのUVA(ultraviolet A)、波長450nmの青色光(Blue)でもある程度の病害虫抑制機能が確認された。しかし、全ての生育ステージのアザミウマ(卵I、卵II、卵III、成虫)、コナジラミ(卵、幼虫、成虫)、アブラムシ(第一世代、第二世代)に満遍なく顕著な病害虫抑制機能を発揮できるのは、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光であった。また、これらの病虫害防除メカニズムが、光照射による虫と共生する細菌の減少であることが分かった。さらに、波長280nm~315nmの中で、病中害ごとに防除に最適な波長を調整することによって、産卵数の低下や成長速度の遅延の効果を生じさせることが可能になる。
【0025】
波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光は、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの防除(孵化の防止、死滅、産卵数低下、共生細菌減少に基づく成長遅延傾向)に有効なことに加えて、炭疽病、萎黄病、灰色カビ病、うどんこ病などの病害防除に対しても効果的に機能する。
【0026】
このように、本実施形態の病虫害防除方法及び病虫害防除装置では、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光を照射する。
【0027】
本実施形態の病虫害防除方法及び病虫害防除装置は、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの中でも、特に、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ、ワタアブラムシの少なくとも1つを含む病害虫に対して、優れた病害虫抑制機能を発揮する。なお、アザミウマに含まれる、ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマが病虫害防除の対象となる病害虫であってもよい。また、コナジラミに含まれる、オンシツコナジラミ、シルバーリーフコナジラミ、ツツジコナジラミが病虫害防除の対象となる病害虫であってもよい。また、アブラムシに含まれる、ミツアブラムシ、ミズキヒラタアブラムシ、マダラアブラムシ、ケアブラムシ、ケクダアブラムシ、オオアブラムシ、ヒラタアブラムシ、モモアカアブラムシが病虫害防除の対象となる病害虫であってもよい。いずれの病害虫も、様々な作物に被害をもたらすため、農作物にとって厄介な存在である。
【0028】
病害虫であるアザミウマ、コナジラミ、アブラムシの付着体として、農作物、とりわけイチゴが挙げられる。イチゴは、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシが付着しやすく、単位量当たりの出荷額、合計出荷額、海外輸出額が大きい農作物であるため、他の農作物と比較して、病害虫防除(病害虫抑制)の必要性ひいては作用効果が大きくなっている。
【0029】
病害虫抑制機能を持つ照射光は、波長280nm~315nmの範囲において、特に、波長308nmの紫外線B波からなることが好ましい。これにより、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫の防除機能(抑制機能)をより一層顕著に発現させることができる。これは、地上に届く太陽光UVのうち、比較的波長が短いUVBである波長280nm~315nmの照射光、とりわけ波長308nmの照射光が、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシのDNAに吸収され、シクロブタンピリミジンダイマーや(6-4)光産物と呼ばれる異常構造(DNA損傷)を引き起こし、転写や翻訳の障害となり、細胞死や機能異常をもたらすためと推察される。
【0030】
病害虫抑制機能を持つ照射光の光量子密度(フォトン数)は、6.0×1019(μmоl/m2/sec)であることが好ましい。secは、秒(s)を意味する。これにより、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫の防除機能(抑制機能)をより一層顕著に発現させることができる。
【0031】
光量子密度(フォトン数)は、次の計算式(X)、(Y)に基づいて得ることができる。
(X)放射照度(W/m2)=光量子密度(mol/m2/s)×アボガドロ数(mol-1)×プランク乗数(Js)×光速度(m/s)÷波長(m)
(Y)光量子密度(mol/m2/s)={放射照度(W/m2)×波長(m)}/{アボガドロ数(mol-1)×プランク乗数(Js)×光速度(m/s)}
【0032】
また、病害虫抑制機能を持つ照射光の光量子密度(フォトン数)は、好ましくは5.0×1019(μmоl/m2/sec)~7.0×1019(μmоl/m2/sec)、より好ましくは5.5×1019(μmоl/m2/sec)~6.5×1019(μmоl/m2/sec)であってもよい。この範囲内において最も好ましい光量子密度(フォトン数)は、6.0×1019(μmоl/m2/sec)である。
【0033】
病害虫が、アブラムシの特にワタアブラムシである場合、病害虫抑制機能を持つ照射光を、各日の照射時間を9時間30分以上として、少なくとも8日間連続して照射することが好ましい。より具体的に、病害虫抑制機能を持つ照射光を、ある日の21:30から翌日の7:00を含む9時間30分以上を照射時間として、少なくとも8日間連続して照射することが好ましい。これにより、アブラムシの特にワタアブラムシの防除機能(抑制機能)をより一層顕著に発現させることができる。なお、各日の照射時間が9時間30分以上であれば、必ずしも、ある日の21:30から翌日の7:00を含む9時間30分以上を照射時間としなくてもよい。
【0034】
病害虫が、アザミウマの特にヒラズハナアザミウマ、又は、コナジラミの特にタバココナジラミである場合、病害虫抑制機能を持つ照射光を、各日の照射時間を5時間30分以上として、病害虫の卵からの孵化を防止するように(対照区の孵化可能期間まで)照射することが好ましい。より具体的に、病害虫抑制機能を持つ照射光を、ある日の22:30から翌日の4:00を含む5時間30分以上を照射時間として、病害虫の卵からの孵化を防止するように照射することが好ましい。これにより、アザミウマの特にヒラズハナアザミウマ、又は、コナジラミの特にタバココナジラミの防除機能(抑制機能)をより一層顕著に発現させることができる。なお、各日の照射時間が5時間30分以上であれば、必ずしも、ある日の22:30から翌日の4:00を含む5時間30分以上を照射時間としなくてもよい。
【0035】
このように、本実施形態の病虫害防除方法及び病虫害防除装置では、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ照射光を、以下の条件(1)~(3)を満足するように照射する。
条件(1):照射光が、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる。好ましくは、照射光が、波長308nmの紫外線B波からなる。
条件(2):照射光の光量子密度が、6.0×1019(μmоl/m2/sec)である。
条件(3):病害虫が、アブラムシの特にワタアブラムシである場合、照射光を、各日の照射時間を9時間30分以上として、少なくとも8日間連続して照射する。好ましくは、照射光を、ある日の21:30から翌日の7:00を含む9時間30分以上を照射時間として、少なくとも8日間連続して照射する。病害虫が、アザミウマの特にヒラズハナアザミウマ、又は、コナジラミの特にタバココナジラミである場合、照射光を、各日の照射時間を5時間30分以上として、病害虫の卵からの孵化を防止するように(対照区の孵化可能期間まで)照射する。好ましくは、照射光を、ある日の22:30から翌日の4:00を含む5時間30分以上を照射時間として、病害虫の卵からの孵化を防止するように照射する。
【0036】
上記の条件(1)~(3)の全てを満足することにより、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫の防除機能(抑制機能)を極めて高いレベルで発現させることができる。但し、条件(1)~(3)の全てではなく、条件(1)~(3)のうちの1つ又は2つを満足することによっても、一定程度の病害虫の防除機能(抑制機能)を得ることができる。また、条件(1)の波長範囲に関する構成要件を必須として、条件(2)の光量子密度に関する構成要件、及び、条件(3)の照射時間に関する構成要件を付加的(択一的)なものとしてもよい。
【0037】
図1は、病虫害防除方法及び病虫害防除装置を適用した圃場統合管理システム(以下、単にシステムと呼ぶ)1の構成を示す図である。システム1は、通信ネットワークを介して圃場内の作物の生育を管理するものである。圃場は、囲いをした畑を意味している。例えば、イチゴのハウス栽培のハウス単位の農地を、ここでは圃場と称する。なお、圃場はイチゴ栽培のハウスに限られない。
【0038】
システム1は、イチゴ栽培のハウス(ビニールハウス)10を有している。ハウス10は、例えば、縦が約15m、横が約35mの平面視矩形をなしており、ハウス10の内部の下面は、イチゴ栽培用の土壌が形成されている。ハウス10には、
図1の縦方向に整列するとともに、
図1の横方向に延びる8列のイチゴ畝20が設けられている。ハウス10には、複数のLED(Light Emitting Diode)光源モジュール30が設けられている。LED光源モジュール30は、イチゴ畝20の上方に位置して、イチゴ畝20に植えられたイチゴ(茎、葉、花、実などの全ての構成要件をまとめて「イチゴ」と称する)、又は、イチゴに付着したアザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫に対して、病害虫抑制機能を持つ照射光を照射する。
図1の例では、8列のイチゴ畝20の各列の上方に、横方向に所定間隔で延びる4個のLED光源モジュール30が設けられており、合計32個のLED光源モジュール30を描いたが、LED光源モジュール30の数や配置には自由度があり、種々の設計変更が可能である。
【0039】
LED光源モジュール30は、波長スペクトルがナローバンドであって、病虫害防除のある波長のみ選択可能、電気応答性が高くIOT(Internet of Things)との親和性が高いものを使用することが好ましい。
【0040】
ハウス10には、IOT(Internet of Things)センシングデバイス40が設けられている。
図1の例では、ハウス10の中央部に設けられた1個のIOTセンシングデバイス40を描いたが、センシングデバイス40の数や配置には自由度があり、種々の設計変更が可能である。IOTセンシングデバイス40は、例えば、圃場(ハウス10)の内部の環境を表す環境パラメータを所定の時間間隔で検出(取得)する。環境パラメータは、例えば、温度、湿度、日照、CO
2濃度、捕虫器で捕獲した害虫の数、土壌含水率等を表す情報であってもよい。IOTセンシングデバイス40が検出した環境パラメータは、後述する制御BOX50から外部装置に出力(送信)される。
【0041】
図示は省略しているが、ハウス10には、IOTセンシングデバイス40とは別個に、虫見板の上に虫を誘引する正の走行性の光を照射し、虫見板上の点の数を数えることで、害虫の発生の有無を検出するための捕虫器が設けられていてもよい。害虫の発生は、複雑な画像処理技術を用いなくても検出することが可能である。
【0042】
ハウス10には、LED光源モジュール30の駆動制御を実行するLED駆動用制御盤を含む制御BOX50が設けられている。制御BOX50は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing nit)などからなるコンピュータで実現される。その場合、各機能厚生部の処理内容はプログラムによって記述される。
【0043】
図2は、制御BOX50の内部構成を示す機能ブロック図である。制御BOX50は、通信部51と、LED駆動制御部52と、センサ駆動制御部53とを有している。
【0044】
通信部51は、IOTセンシングデバイス40が検出した環境パラメータを外部機器である通信機60に向けて送信する。通信部51は、通信機60からLED光源モジュール30の動作を制御するための制御信号を受信する。この制御情報は、LED光源モジュール30による病害虫抑制機能を持つ照射光の照射態様(照射光の波長、光量子密度、照射時間)を制御するための情報である。通信部51と通信機60との通信方式には自由度があり、種々の設計変更が可能であるが、例えば、LPWA(Low Power Wide Area)等の無線通信を採用することができる。
【0045】
LED駆動制御部52は、通信部51が受信した通信機60からの制御情報に基づいてLED光源モジュール30を駆動制御することにより、LED光源モジュール30に、病害虫抑制機能を持つ照射光を、以下の条件(1)~(3)を満足するように照射させる。
条件(1):照射光が、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる。好ましくは、照射光が、波長308nmの紫外線B波からなる。
条件(2):照射光の光量子密度が、6.0×1019(μmоl/m2/sec)である。
条件(3):病害虫が、アブラムシの特にワタアブラムシである場合、照射光を、各日の照射時間を9時間30分以上として、少なくとも8日間連続して照射する。好ましくは、照射光を、ある日の21:30から翌日の7:00を含む9時間30分以上を照射時間として、少なくとも8日間連続して照射する。病害虫が、アザミウマの特にヒラズハナアザミウマ、又は、コナジラミの特にタバココナジラミである場合、照射光を、各日の照射時間を5時間30分以上として、病害虫の卵からの孵化を防止するように(対照区の孵化可能期間まで)照射する。好ましくは、照射光を、ある日の22:30から翌日の4:00を含む5時間30分以上を照射時間として、病害虫の卵からの孵化を防止するように照射する。
【0046】
なお、LED駆動制御部52は、病害虫抑制機能以外の各種の用途に応じて、本実施形態の波長308nmの紫外線B波からなる照射光(UVB:ultraviolet B)、それ以外の波長365nmのUVA(ultraviolet A)、波長450nmの青色光(Blue)、波長525nmの緑色光(Green)、波長660nmの赤色光(Red)の複数波長を1モジュールにミキシングするように、LED光源モジュール30を駆動制御してもよい。
【0047】
センサ駆動制御部53は、IOTセンシングデバイス40を駆動するとともに、IOTセンシングデバイス40が検出した環境パラメータを取得する。センサ駆動制御部53は、例えば、温度センサのサーミスタに定電流を供給し、温度によって変化するサーミスタの端子電圧を温度に変換する。また、湿度センサに対しては、例えば、静電容量を形成する湿度センサに一定電圧を供給し、湿度によって変化する発振周波数を湿度に変換する。センサ駆動制御部53は、各センサの仕様に合わせて駆動し、各センサから環境パラメータを取得するドライバである。
【0048】
通信機60は、複数台のIOTデバイスが接続可能なエッジデバイスとして機能する。通信機60は、IOTセンシングデバイス40が検出した環境パラメータを制御BOX50(通信部51)から受信して、当該環境パラメータをクラウドサーバ70にアップロードする。クラウドサーバ70にアップロードされた環境パラメータ及びその付帯情報は、圃場(ハウス10)の管理者(イチゴの栽培者)に対して、例えば、生育環境モニタリングやアラート通知メールとして提供される。また、LED光源モジュール30の稼働状況モニタリングが、クラウドサーバ70を介して、圃場(ハウス10)の管理者(イチゴの栽培者)に対して提供される。
【0049】
通信機60は、制御BOX50(通信部51)に対して、LED光源モジュール30の動作を制御するための制御信号、つまり、LED光源モジュール30に、病害虫抑制機能を持つ照射光を、上記の条件(1)~(3)を満足するように照射させるための制御信号を送信する。
【0050】
なお、
図1、
図2では図示を省略しているが、システム1は、環境パラメータの推移から農作物に発生する病害虫を予測する病害虫発生予測モデルを有し、新たに入力された環境パラメータから病害虫の発生を予測し、発生が予測された病害虫に対応する制御信号を生成する予測装置を具備していてもよい。また、システム1は、環境パラメータを、通信ネットワークを介して予測装置に送信し、予測装置から病害虫抑制部の動作を制御する制御信号を受信し、病害虫抑制部の動作を制御する圃場内端末を有していてもよい。圃場内端末は、環境パラメータの値が閾値よりも大きいか否かを判定する判定部と、環境パラメータの値が閾値よりも大きい場合に利用者に第1警報を発する第1報知部とを備えていてもよい。予測装置は、第1警報が発せられた場合、又は病害虫発生予測モデルによって病害虫の発生が予測された場合に携帯電話の回線を用いて利用者の携帯電話の電話番号が登録されている呼制御サーバに第2警報を発する第2報知部を備えていてもよい。
【0051】
図3は、病虫害防除方法及び病虫害防除装置による病害虫抑制機能の優位性を示す図である。本発明者は、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ、ワタアブラムシを対象の病害虫として、光照射技術による病害虫抑制機能の実証実験を行った。ヒラズハナアザミウマについては、卵I、卵II、卵III、成虫の4つの生育ステージで実証実験を行った。タバココナジラミについては、卵、成虫の2つの生育ステージで実証実験を行った(幼虫については、UVB、UVA、Blue、Green、Redの全ての波長でデータ適格なしの「N/A」であった)。ワタアブラムシについては、第一世代、第二世代の2つの生育ステージで実証実験を行った。各生育ステージの各病害虫に対して、本実施形態の波長308nmの紫外線B波からなる照射光(UVB:ultraviolet B)を照射する一方、比較例として、波長365nmのUVA(ultraviolet A)、波長450nmの青色光(Blue)、波長525nmの緑色光(Green)、波長660nmの赤色光(Red)を照射して、各生育ステージの各病害虫の生育状況を観察した。実証実験では、インキュベータ内にLEDを配置して、ファンによる空気循環によって過度な温度上昇がないようにした。
【0052】
1反復の照射条件として、UVB、UVA、Blue、Green、Redについては、フォトン数(光量子密度)を6.0×1019(μmоl/m2/sec)で同一にした。
【0053】
照射時間については、ワタアブラムシの場合と、ヒラズハナアザミウマ及びタバココナジラミの場合とで別々に設定した。ワタアブラムシの場合、夜間の9時間30分(ある日の21:30から翌日の7:00の9時間30分)を照射時間として、これを8日間連続して照射した。ヒラズハナアザミウマ及びタバココナジラミの場合、夜間の5時間30分(ある日の22:30から翌日の4:00の5時間30分)を照射時間として、これを病害虫の卵からの孵化を防止するように(対照区の孵化可能期間まで)照射した。測定器として、測定可能範囲が波長300nm~1000nmであるウシオ電機製分光放射照度計USR-45を採用した。測定位置は光源直下として、照射距離は75cmとした。いずれも暗環境かつTa(周囲温度、無風時の周囲温度)は一定(Ta=25℃)とした。
【0054】
図3において、生育ステージが卵の場合、孵化率(%)を計算して表示した。孵化率が10%以上のケースは通常表示し、孵化率が10%未満のケースはグレーの背景に白抜きで強調表示した。ヒラズハナアザミウマの成虫ステージ、タバココナジラミの成虫ステージ、ワタアブラムシの第一世代、第二世代にあっては、観察に基づく病害虫抑制機能を記載した。とりわけ優位な病害虫抑制機能が得られたケースはグレーの背景に白抜きで強調表示した。有意なデータが得られなかったケースについては、データ適格なしとして「N/A」と表示した。
【0055】
図3に示すように、本実施形態の波長308nmの紫外線B波からなる照射光(UVB)の場合には、ヒラズハナアザミウマの卵Iステージで孵化率0%、卵IIステージで孵化率1.7%、成虫ステージで産卵数低下という優位な病害虫抑制機能を確認することができた。また、タバココナジラミの卵ステージで孵化率3.3%、成虫ステージで産卵数低下という優位な病害虫抑制機能を確認することができた。さらに、ワタアブラムシの第一世代、第二世代において、共生細菌減少に基づく成長遅延傾向という優位な病害虫抑制機能を確認することができた。
【0056】
これに対して、波長365nmのUVA(ultraviolet A)、波長450nmの青色光(Blue)、波長525nmの緑色光(Green)、波長660nmの赤色光(Red)では、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ、ワタアブラムシの全般に亘った優位な病害虫抑制機能を確認することはできなかった。UVAによりヒラズハナアザミウマの卵Iステージで孵化率3.8%、Blueによりヒラズハナアザミウマの卵Iステージで孵化率0%、卵IIステージで孵化率5.0%という一定の病害虫抑制機能が確認できたが、いずれも、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ、ワタアブラムシの全般に亘ったものではなく、病害虫抑制機能は限定的・不十分なものと言わざるを得なかった。
【0057】
本発明者は、ワタアブラムシに対する共生細菌の減少の有意性を検証するために、波長308nmの紫外線B波からなる照射光(UVB)を1回照射した2時間後(暗期経過後)に、個体ごとのDNA抽出によるブフネラ定量PCR検査を行ったところ、体内に占めるブフネラ存在量に減少傾向が認められた。また、波長308nmの紫外線B波からなる照射光(UVB)を4回照射した2時間後(暗期経過後)に、個体ごとのDNA抽出によるブフネラ定量PCR検査を行ったところ、体内に占めるブフネラ存在量が有意に減少していることが認められた。
【0058】
このように、吸汁性害虫にしか存在しない共生細菌(必須共生細菌)を標的にした光照射を実行することにより、環境中の生物や有用昆虫には低負荷とすることができ、殺虫剤抵抗性系統にも有効であり、減農薬・高付加価値化を実現することができる。
【0059】
ヒラズハナアザミウマの場合の実証実験結果を更に詳細に説明する。ヒラズハナアザミウマの卵をメッシュ上に設置して、5種類の各LED光源[UVB(308nm)、UVA(365nm)、青(450nm)、緑(525nm)、赤(660nm)]を、フォトン数(光量子密度)を6.0×1019(μmоl/m2/sec)で同一にして照射した場合の孵化率への影響を検証した。その際、ヒラズハナアザミウマの卵の孵化率が観察開始時の成長段階によって異なることが確認されたことから、卵の成長段階ごとに区別して検証を行った。
【0060】
具体的には、産卵後1~2日位でまだあまり形態上の変化がない状態である成長段階I(卵Iステージ)と、産卵後3日位で全体的に膨らんで頭部が突起状に突き出している状態(目は確認できない状態)である成長段階II(卵IIステージ)と、産卵後4日位で赤い目が明確な状態(あと1日か2日で孵化する状態)である成長段階III(卵IIIステージ)とを規定した。
【0061】
卵20個を1セットとして、25℃暗条件で5.5h/24h(22:30-4:00) のLED照射を行い(乾燥による死亡を防止するために1日毎に800μlの水を供給)、最終的な孵化率を算出してグラフにした。その結果を
図4に示す。
図4に示すように、UVB(308nm)及び青(450nm)の照射によって、ヒラズハナアザミウマの卵の孵化率の顕著な低下が引き起こされることが判明した。なお、
図4では、UVB(308nm)及び青(450nm)についてのみ、比較例として、照射時間を1時間とした場合も示している(病害虫抑制機能は不十分である)。
【0062】
タバココナジラミの場合の実証実験結果を更に詳細に説明する。キャベツリーフディスク上に産卵されたタバココナジラミの卵を対象として、ヒラズハナアザミウマの場合と同様に各LED光照射による孵化率への影響を検証した。その結果を
図5に示す。
図5に示すように、UVB(308nm)及び青(450nm)の照射によって、タバココナジラミの卵の孵化率の低下が引き起こされることが判明した。とりわけ、UVB(308nm)によるタバココナジラミの卵の病害虫抑制機能が優れていることが読み取れる。さらに、孵化率を極めて小さく抑えるだけでなく、卵の黒化を観察することができる。なお、
図5では、UVB(308nm)についてのみ、照射距離が8cmと20cmとの2つの場合を示しており、同様の優れた病害虫抑制機能を発揮できている。
【0063】
ワタアブラムシの場合の実証実験結果を更に詳細に説明する。ナスリーフディスク(3日毎に交換)上のワタアブラムシ3齢幼虫(5個体/1シャーレ)に対してLED照射実験[25℃、夜間9.5h照射(21:30-7:00)、光量子密度6.0×1019(μmоl/m2/sec)]を行った結果、UVB照射によって、生重量と総産仔数が減少傾向となることが判明した。また、次世代個体においてもUVBが成長遅延を引き起こす傾向が見られた。また、UVB照射による体内の必須共生細菌ブフネラ(栄養素を宿主へ供給する役割を持つ)への影響についても定量PCRによって確認したところ、1回照射ではブフネラ存在量が減少傾向、4回照射ではブフネラ存在量が有意に減少することが確認された。また、イチゴヒゲナガアブラムシに対しても検証を行ったところ、UVB照射が生存・繁殖に悪影響を及ぼすことが確認された。
【0064】
本実施形態の病虫害防除方法及び病虫害防除装置は、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫又はその付着体に対して、病害虫抑制機能を持つ、波長280nm~315nmの紫外線B波からなる照射光を照射することにより、優れた病害虫抑制機能を得ることができる。つまり、農作物に被害を及ぼす特定の難防除微小害虫(ワタアブラムシ、イチゴケナガアブラムシ、ヒラズハナアザミウマ、タバココナジラミ)に対して、昆虫内部の共生系や害虫の繁殖・生存抑制効果のある特定波長条件を同定し、環境に優しい害虫防除技術として確立することで、既存農薬の代替技術となるような新規の光防除技術の実用化が可能になる。
【0065】
本実施形態の病虫害防除方法及び病虫害防除装置は、光照射技術を用いることにより、化学農薬(殺虫剤)だけに頼らない統合的な病害虫抑制機能を得るための技術として有用である。本実施形態の病虫害防除方法及び病虫害防除装置は、光照射技術を、ICT(Information and Communication Technology)、AI(Artificial Intelligence)、オーガニック農薬等と組み合わせた総合的な病虫害防除技術として実現することによって、農業事業の更なる発展に貢献することが期待できる。例えば、ICTやAIを利用して、病虫害発生前に重点対応エリアを把握することで、病虫害防除の効果の最大化を図るとともに、オーガニック農薬を光照射技術と組み合わせて使用することで、化学農薬の使用量低減の推進を図ることができる。また、例えば、移動式イチゴ栽培装置等の先端的な生産技術やAIとの連携による次世代栽培技術を実現するべく、一般農家から閉鎖型植物工場運営事業者への社会実装提供を図ることも可能である。
【0066】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、上述の実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0067】
以上の実施形態では、アザミウマ、コナジラミ、アブラムシの少なくとも1つを含む病害虫の付着体として、イチゴを例示して説明したが、イチゴ以外の農作物、例えば、トマト、きゅうり、ホウレンソウ、アスパラガス、バラ等が病害虫の付着体であってもよい。また、病害虫の付着体は、農作物以外であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 圃場統合管理システム(病虫害防除装置)
10 ハウス(ビニールハウス)
20 イチゴ畝(農作物、付着体)
30 LED(Light Emitting Diode)光源モジュール
40 IOT(Internet of Things)センシングデバイス
50 制御BOX
51 通信部
52 LED駆動制御部
53 センサ駆動制御部
60 通信機
70 クラウドサーバ