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  • 特開-車両前部構造 図1
  • 特開-車両前部構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111975
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20240813BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20240813BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B60R19/48 P
B60R19/04 M
B60K11/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016756
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 稿治
(72)【発明者】
【氏名】安江 祐輔
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC11
3D038AC16
(57)【要約】
【課題】ショートオーバーハング化に貢献しつつ、ラジエータの上方にまで外気を導入できる車両前部構造を実現する。
【解決手段】車両前部構造は、ラジエータ12と、車両前端に配置されるロアグリル開口14と、前記ロアグリル開口14から前記ラジエータ12に亘って設けられ、前記ロアグリル開口14から導入された外気を前記ラジエータ12に導くエアダクト16と、前記ロアグリル開口14の上方に設けられ、前記エアダクト16の前方壁として形成されるフロントバンパリインフォースメント18と、前記フロントバンパリインフォースメント18の車両後側において、前記エアダクト16の前記前方壁の内側に沿って流れる外気を整流して前記ラジエータ12の上方に導くエアガイド20と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータと、
車両前端に配置されるロアグリル開口と、
前記ロアグリル開口から前記ラジエータに亘って設けられ、前記ロアグリル開口から導入された外気を前記ラジエータに導くエアダクトと、
前記ロアグリル開口の上方に設けられ、前記エアダクトの前方壁として形成されるフロントバンパリインフォースメントと、
前記フロントバンパリインフォースメントの車両後側において、前記エアダクトの前記前方壁の内側に沿って流れる外気を整流して前記ラジエータの上方に導くエアガイドと、
を備える車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造、特に、ラジエータの上方に外気を導く構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両前部構造において、車両の動力源室に配置されたラジエータに、効率的に外気を導くための様々な構造が提案されている。ラジエータは、車両の動力源(例えば、ガソリンエンジンや電動モータ)を冷却するための部品の一つであり、動力源の温度が高くなりすぎることを防ぐ役割がある。したがって、外部から風を取り入れて、動力源に循環する冷媒(例えば、冷却水)をラジエータ内で冷やす必要がある。そのため、特にグリル開口部からラジエータに亘って設けられるエアダクトおよびその周辺部材の構造には工夫が必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、低ボンネット化され車体前面の下部にのみグリルが設けられた車両において、外気をラジエータへ導入する前部構造が開示されている。特許文献1の車両の前部構造は、ロアグリルからラジエータに外気を供給するダクトと、シュラウドアッパパネルに形成されたストライカ用開口部と、を利用して、ラジエータ後方に外気を導入する外気導入路を形成している。かかる構成により、ラジエータ後流の環流を防止しつつ、補機への外気導入路をコンパクトに提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-145221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、特に電気自動車においては、車体前面にロアグリルのみ設けられ、前輪軸から車体前端までの距離を短くする、いわゆるショートオーバーハング化の傾向がある。ここで、ロアグリル開口部とラジエータとの距離が短い場合、エアダクトの傾斜が急になる。かかる場合、ロアグリル開口部から導入された外気をラジエータの上方にまで上げきれないおそれがある。特に、ラジエータ上部の車幅方向外側の部分には、導入された外気を当てにくい。その結果、適切な冷却効果が得られず、ラジエータの冷却性能が足りなくなるという問題が生じる。
【0006】
また、グリル開口部から導入された外気を車両の上部(例えば、カウルトップやフロントガラス付近)にまで導くために、フロントバンパリインフォースメント(以下、適宜「FrバンパR/F」と称する)とエアダクトとの間に隙間を設ける構造が知られている。しかし、ショートオーバーハング化のためには、当該隙間をなくすことが望ましい。
【0007】
そこで、本明細書では、ショートオーバーハング化に貢献しつつ、ラジエータの上方にまで外気を導入できる車両前部構造を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する車両前部構造は、ラジエータと、車両前端に配置されるロアグリル開口と、前記ロアグリル開口から前記ラジエータに亘って設けられ、前記ロアグリル開口から導入された外気を前記ラジエータに導くエアダクトと、前記ロアグリル開口の上方に設けられ、前記エアダクトの前方壁として形成されるフロントバンパリインフォースメントと、前記フロントバンパリインフォースメントの車両後側において、前記エアダクトの前記前方壁の内側に沿って流れる外気を整流して前記ラジエータの上方に導くエアガイドと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示の車両前部構造によれば、エアガイドを設けることでエアダクトの内側を流れる外気を整流して、当該外気をラジエータの上方に導くことができる。さらに、FrバンパR/Fをエアダクトの一部として使用するため、従来の構造では必要であったFrバンパR/Fとエアダクトとの間の隙間が不要となり、ショートオーバーハング化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両前部構造を模式的に示す側面断面図である。
図2図1の車両前部構造を斜め後方から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して車両前部構造について説明する。なお、各図において、「Fr」、「Up」、および、「Rh」は、それぞれ、車両前方、上方、および、右側方を示している。
【0012】
図1は、車両前部構造を模式的に示す側面断面図である。より具体的には、図1は、車両前部構造、特に、車両10の動力源室内に配置されたラジエータ12の上方に外気を導く構造を示した図である。また、図2は、図1の車両前部構造を斜め後方から見た概略斜視図である。図1に示すように、車両前部構造は、ラジエータ12と、ロアグリル開口14と、エアダクト16と、フロントバンパリインフォースメント(FrバンパR/F)18と、エアガイド20と、を備える。
【0013】
ラジエータ12は、車両10の走行動力源を冷却するための部品である。図1,2では、ラジエータ12の一部を表示しているが、当該部分を薄墨部分として示している。なお、車両10に搭載される走行動力源としては、走行用モータ、エンジン、または、走行用モータおよびエンジン、のいずれであってもよい。
【0014】
ロアグリル開口14は、図2に示すロアグリル22の開口部分であり、車両10の前端に配置される。より詳しくは、ロアグリル開口14は、車両前部に外気を導入しロアグリル開口14を覆う網状の部材であるロアグリル22の一部である。ロアグリル開口14は、ラジエータ12に外部から風を取り入れて冷却するとともに、フロントコンパートメントやエアコンへの空気の導入口としても用いられる。なお、本例では、車両10は、低ボンネットであって車体前面の下部にのみグリルが設けられている。したがって、車両10の前端には、グリルとしてロアグリル22のみが配されている。
【0015】
エアダクト16は、空気の通り路であり、空気の導入口から必要なところまで外気を誘導するパイプである。エアダクト16は、本例では、ロアグリル開口14から車両前後方向の後方に配置されたラジエータ12に亘って設けられる略筒状の部材である。エアダクト16は、ロアグリル開口14から導入された外気をラジエータ12に導く。例えば、車両10が近年ショートオーバーハング化の傾向にある電気自動車である場合、図1,2に示すように、エアダクト16の傾斜は急になる。
【0016】
FrバンパR/F18は、フロントバンパカバー24の裏側(すなわち、車両前後方向の後方)に設けられた補強部材である。FrバンパR/F18は、ロアグリル開口14の上方に設けられ、エアダクト16の前方壁として形成される。すなわち、FrバンパR/F18は、エアダクト16の一部として使用される。
【0017】
エアガイド20は、エアダクト16内の外気を整流してラジエータ12の上方に外気を導くフィンである。より詳しくは、エアガイド20は、細長の板状部材であって、その前端が、FrバンパR/F18の裏側(すなわち、車両前後方向の後側)に溶接などにより接合される。図1に示すように、エアガイド20は、エアダクト16の一部であるFrバンパR/F18の裏側から後方に向かって延び、FrバンパR/F18の前方壁の内側に沿うように配置され、側方から見て下方から後方に延びその後上方に向けて延びる形状を有する。なお、図2では、エアガイド20を三つ示しているが、数はこれに限定されない。エアガイド20は、ロアグリル開口14から導入された外気をラジエータ12の上方へより効率的に導くための部材であるため、エアダクト16の上方へ向けての送風能力が向上するように設けられていればよい。したがって、エアガイド20の形状は特に限定されない。
【0018】
上記に示した構成により、本明細書で開示する車両前部構造は、エアガイド20によりエアダクト16の内側を流れる外気を整流して、エアダクト16の上に向けての傾斜が急な場合であっても、当該外気をラジエータ12の上方にまで導くことができる。図1では、ロアグリル開口14で導入された外気を太い矢印で示し、その後外気がラジエータ12の上方まで導かれるイメージを破線の矢印で示している。当該破線の矢印で示すように、外気はその流路方向に沿って設けられたエアガイド20により、ラジエータ12の上方まで送られる。さらには、エアガイド20の形状や角度を変えることで、従来であれば外気を当てにくいとされているラジエータ12の上部の車幅方向外側の隅部分にまで、外気を導入することができる。また、FrバンパR/F18はエアダクト16の一部として使用されるため、FrバンパR/F18とエアダクト16との間の隙間が不要となり、ショートオーバーハング化に貢献できる。
【0019】
なお、これまでの説明は一例であり、本明細書で開示する車両前部構造においては、FrバンパR/Fがエアダクトの一部として(より詳しくは、前方壁として)形成され、さらに、エアダクト内を流れる外気を整流するエアガイドがFrバンパR/Fの前方壁の内側に沿うように配置される構成であればよい。したがって、車両前部構造のその他の構成は、適宜、変更されてもよい。
【0020】
例えば、FrバンパR/Fの材質は、樹脂であってもよい。また、FrバンパR/Fは、アルミ押出、ロール、板金プレスなどのいずれの工法を用いて成形してもよい。例えば、FrバンパR/Fが板金プレス性である場合、FrバンパR/Fの曲げ強度を向上させることができる。すなわち、エアガイドをFrバンパR/Fの裏側に設けたことで、エアガイドはFrバンパR/Fの補強部材としての役割を持つ。そこで、エアガイドの形状によっては、FrバンパR/Fの曲げ強度をさらに向上させることができる。また、FrバンパR/Fが板金プレス性である場合、エアガイドはFrバンパR/Fの補強部材としての役割を持つことから、FrバンパR/Fの必要な形状の一部を担うことができる。その結果、FrバンパR/Fの形状を特殊なものにせず単純な形状とできるため、生産性の向上に貢献できる。
【符号の説明】
【0021】
10 車両、12 ラジエータ、14 ロアグリル開口、16 エアダクト、18 フロントバンパリインフォースメント(FrバンパR/F)、20 エアガイド、22 ロアグリル、24 フロントバンパカバー。
図1
図2