(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111978
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】三次元スキャナ用プローブ及び三次元スキャナ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016761
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮木 悠二
(72)【発明者】
【氏名】池淵 正康
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA12
2F065AA37
2F065AA53
2F065FF05
2F065FF06
2F065GG04
2F065HH05
2F065HH06
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065QQ31
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】コストや重量の問題を解決しつつ、複数のマーカの相対的な位置関係を周囲の環境によらず一定に保てるようにして測定精度を向上させる。
【解決手段】三次元スキャナ用のプローブ2は、スキャナ部60の周りに配置される複数のマーカブロック21~24と、スキャナ部60に対し、複数のマーカブロック21~24を支持する金属製の支持部とを備えている。複数のマーカブロック21~24の各々は、複数の方向に各々面した各自発光マーカを位置決め固定するとともに支持部よりも低い熱膨張率の材料で構成されたマーカホルダを有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像ユニットによって撮像される複数のマーカを有する三次元スキャナ用のプローブであって、
測定方向にパターン光を照射するスキャナ光源と、前記測定方向における前記スキャナ光源により照射したパターン光を撮像するスキャナ撮像部と、を有するスキャナ部と、
前記スキャナ部の周りに配置される複数のマーカブロックと、
前記スキャナ部に対し、前記マーカブロックを支持する金属製の支持部と、を備え、
前記複数のマーカブロックの各々は、複数の方向に各々面した各自発光マーカを位置決め固定するとともに前記支持部よりも低い熱膨張率の材料で構成されたマーカホルダを有する、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記マーカホルダは多角形の柱状をなしており、一面は前記支持部に取り付けられる取付面をなし、取付面以外の各面には少なくとも1つのマーカが設けられる、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記マーカホルダにおける軸方向一端面が前記取付面とされ、
前記多角形の柱状の軸方向他端面には、少なくとも1つのマーカが設けられる、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記複数のマーカの各々の外形は、プレートと、当該プレート上に形成される遮光性のマスクにより規定される、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項5】
請求項4に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記プレートの材料として、石英ガラスが用いられる、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項6】
請求項4に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記遮光性のマスクの材料として、クロムが用いられる、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項7】
請求項4に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記遮光性のマスクの膜厚は、前記プレートの厚みよりも小さい、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項8】
請求項1に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記マーカには、マーカ光源と、当該マーカ光源から出射した光を拡散させる拡散板とが含まれる、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項9】
請求項8に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記マーカの光軸方向に沿って見た時、前記拡散板は、前記マーカ光源が配置されている領域よりも大きく形成され、
前記拡散板の中央部の厚みが周辺部に比べて厚く設定されている、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項10】
請求項1に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記スキャナ光源及び前記スキャナ撮像部が取り付けられる光学ベースと、
前記光学ベース及び前記支持部を覆う外装部材と、をさらに備え、
前記外装部材には、把持部が前記光学ベースから前記測定方向と反対側へ離れた位置に設けられている、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項11】
請求項10に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記外装部材は、前記スキャナ光源と前記スキャナ撮像部を覆うスキャナカバー部を有し、
前記把持部は、前記スキャナカバー部の内部に連通する中空状をなしており、
前記把持部の端部には、当該把持部の内部の空気を排出するための空気排出口が形成されている、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項12】
請求項10に記載の三次元スキャナ用のプローブにおいて、
前記外装部材は、前記マーカホルダに対して非締結とされている、三次元スキャナ用のプローブ。
【請求項13】
複数のマーカを有するプローブと、前記複数のマーカを撮像する撮像ユニットと、測定対象物の三次元座標の取得が可能に構成された処理部と、を備えた三次元スキャナであって、
前記プローブは、
測定対象物に対してパターン光を照射するスキャナ光源と、前記スキャナ光源により照射されたパターン光を撮像し、輝線画像を生成するスキャナ撮像部と、を有するスキャナ部と、
複数の方向に面した自発光マーカの各々を位置決め固定するマーカホルダを有する複数のマーカブロックと、
前記マーカブロックを前記スキャナ部に対して支持するとともに、前記マーカホルダよりも熱膨張率が高い材料で構成された支持部と、を備え、
前記撮像ユニットは、
前記プローブに設けられた前記自発光マーカを撮像することにより、複数の自発光マーカを含むマーカ画像を生成し、
前記処理部は、
前記マーカブロックにおける各々の自発光マーカの配置情報を記憶する記憶部と、
前記スキャナ部の温度変化に起因する前記複数のマーカブロック間の位置ずれ情報を、前記記憶部に記憶された自発光マーカの配置情報に基づいて取得する取得部と、
前記スキャナ撮像部で生成された輝線画像と、前記撮像ユニットにより生成されたマーカ画像に含まれる複数のマーカの位置姿勢と、前記取得部により取得された位置ずれ情報と、に基づいて、測定対象物の三次元座標を算出する算出部と、を備えることを特徴とする、三次元スキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元スキャナ及び三次元スキャナによる三次元測定時に使用される三次元スキャナ用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、測定位置を指定するためのプローブと、プローブにより指定される測定位置の座標を算出する算出部とを備えた光学式座標測定装置が開示されている。プローブには複数のマーカが互いに間隔をあけて設けられている。測定時には、プローブとは別体に構成された撮像部によってプローブのマーカを撮像して画像データを生成し、撮像部によって生成された画像データに基づいて、算出部が測定位置の座標を算出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のプローブでは、作業者が把持する側と反対に位置する前面にのみマーカが設けられているので、測定時にはプローブの前面を常に撮像部に向けておく必要があり、測定時におけるプローブの向きや姿勢に制約が生じる。
【0005】
特に、測定対象物が大きな部材であったり、撮像部から見て奥の方に測定箇所が存在していたりする場合には、プローブの前面を常に撮像部に向けておくことが困難になり、測定に支障を来す結果となり得る。
【0006】
そこで、マーカの数を増やすことが考えられるが、マーカの相対的な位置関係が経時的に変化してしまうと測定精度に悪影響を及ぼすことになるので、単純にマーカの数を増やすことはできない。例えば、特許文献1のように光学ベースを石英製とし、全てのマーカをその光学ベースに取り付ければ、周囲の温度や湿度の変化に殆ど影響を受けなくなり、測定精度を高めることができるが、特許文献1のものよりマーカの数を増やそうとすると、必然的に光学ベースが大型するので、そのような大型の光学ベースを石英製にするにはコスト、重量等で課題が生じる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、コストや重量の問題を解決しつつ、複数のマーカの相対的な位置関係を周囲の環境によらず一定に保てるようにして測定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示では、撮像ユニットによって撮像される複数のマーカを有する三次元スキャナ用のプローブを前提とすることができる。プローブは、測定方向にパターン光を照射するスキャナ光源と、前記測定方向における前記スキャナ光源により照射したパターン光を撮像するスキャナ撮像部と、を有するスキャナ部と、前記スキャナ部の周りに配置される複数のマーカブロックと、前記スキャナ部に対し、前記マーカブロックを支持する金属製の支持部と、を備えている。前記複数のマーカブロックの各々は、複数の方向に各々面した各自発光マーカを位置決め固定するとともに前記支持部よりも低い熱膨張率の材料で構成されたマーカホルダを有している。
【0009】
この構成によれば、複数のマーカブロックの各々に自発光マーカが設けられることになるので、マーカの数を増やすことができるだけでなく、マーカ間の距離も十分に確保することが可能になり、測定精度が向上する。複数のマーカブロックの各々が有するマーカホルダは、マーカブロックを支持する支持部よりも低い熱膨張率の材料で構成されているので、各マーカブロックの複数のマーカの位置関係が周囲の環境によらず一定に保たれ、よって、測定精度が向上する。つまり、マーカブロック間の位置関係のみ周囲の環境に応じて補正すれば高精度な測定が行える。
【0010】
また、前記マーカホルダは多角形の柱状、例えば四角形、五角形、六角形等の多角形断面を有する柱状をなしていてもよい。この場合、前記マーカホルダにおける多角形の柱状の一面が支持部に取り付けられる取付面であってもよく、取付面以外の各面には少なくとも1つのマーカが設けられていてもよい。これにより、各マーカブロックに設けられるマーカの数を増やすことができるとともに、各マーカブロックに設けられるマーカを全て異なる方向に向けることができるので、測定時にプローブの向きや姿勢が様々に変化しても、測定に必要な数のマーカが撮像ユニットに向くように配置され、撮像ユニットよって複数のマーカを撮像することが可能になる。また、前記多角形の軸方向一端面が前記取付面とされていてもよく、この場合、前記多角形の軸方向他端面には、少なくとも1つのマーカを設けることができる。
【0011】
また、前記マーカには、マーカ光源と、当該マーカ光源から出射した光を拡散させる拡散板とが含まれていてもよい。この場合、前記マーカの光軸方向に沿って見た時、前記拡散板は、前記マーカ光源が配置されている領域よりも大きく形成することができる。前記拡散板の中央部の厚みを周辺部に比べて厚く設定することで、拡散板の中央部で光が減衰されやすいようにして、マーカの光が均一化される。
【0012】
また、スキャナ光源及びスキャナ撮像部が取り付けられる光学ベース及び支持部を覆う外装部材をさらに備えていてもよい。この場合、前記外装部材には、把持部を前記光学ベースから前記測定方向と反対側へ離れた位置に設けることができる。これにより、把持部及び測定作業者の手が測定の邪魔にならないようにすることができるとともに、測定作業者の手の熱が光学ベースに伝達しにくくなり、熱膨張による測定精度の悪化を回避できる。
【0013】
前記外装部材は、前記スキャナ光源と前記スキャナ撮像部を覆うスキャナカバー部を有していてもよく、前記把持部は、前記スキャナカバー部の内部に連通する中空状をなし、前記把持部の端部には、当該把持部の内部の空気を排出するための空気排出口を形成することができる。これにより、スキャナ光源やスキャナ撮像部の排熱が把持部の端部から排出されるので、排熱がマーカ周辺に届き難くなり、高い測定精度を維持できる。
【0014】
また、前記外装部材は、前記マーカホルダに対して非締結とされていてもよい。非締結とは、外装部材をマーカホルダに対してネジやボルト等の締結部材で締結していないということである。これにより、外装部材からマーカホルダに対して力が作用しにくくなるので、複数のマーカの位置精度を高い状態で保つことができる。
【0015】
他の態様では、前記プローブと、前記複数のマーカを撮像する撮像ユニットと、測定対象物の三次元座標の取得が可能に構成された処理部と、を備えた三次元スキャナを構成することもできる。前記撮像ユニットは、前記プローブに設けられた前記自発光マーカを撮像することにより、複数の自発光マーカを含むマーカ画像を生成することができる。前記処理部は、前記マーカブロックにおける各々の自発光マーカの配置情報を記憶する記憶部と、前記スキャナ部の温度変化に起因する前記複数のマーカブロック間の位置ずれ情報を、前記記憶部に記憶された自発光マーカの配置情報に基づいて取得する取得部と、前記撮像部で生成された輝線画像と、前記撮像ユニットにより生成されたマーカ画像に含まれる複数のマーカの位置姿勢と、前記取得部により取得された位置ずれ情報と、に基づいて、測定対象物の三次元座標を算出する算出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、複数のマーカブロックを金属製の支持部で支持し、複数のマーカブロックの各々が、複数の方向に各々面した各自発光マーカを位置決め固定するとともに支持部よりも低い熱膨張率の材料で構成されたマーカホルダを有しているので、コストや重量の問題を解決しつつ、複数のマーカの相対的な位置関係を周囲の環境によらず一定に保てるようにして測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る三次元スキャナの構成を示す図である。
【
図8】外装部材を取り外した状態を示すプローブの正面図である。
【
図16】プローブの回路構成を示すブロック図である。
【
図17】三次元スキャナによる測定対象物の三次元形状の測定手順の一例を示すフローチャートである。
【
図18】データマッチングの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図19】温度補正の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る三次元スキャナ1の構成を示す図である。三次元スキャナ1は、測定対象物Wの三次元形状及び三次元座標を、当該測定対象物Wに接触することなく測定する形状測定器であり、複数の自発光マーカを有するプローブ2と、プローブ2が有する複数の自発光マーカを撮像する撮像ユニット3と、撮像ユニット3により生成されたマーカ画像とプローブ2により生成された輝線画像とに基づいて測定対象物Wの三次元形状及び三次元座標を測定する処理部4とを備えている。プローブ2は、撮像ユニット3及び処理部4とは別体とされており、測定作業者はプローブ2を撮像ユニット3及び処理部4から離れた所にある測定対象物Wの近傍まで持って行き、輝線画像をプローブ2によって生成させることができる。
【0020】
(撮像ユニット3の構成)
撮像ユニット3は、プローブ2に設けられた複数の自発光マーカ(後述する)を撮像することにより、当該複数の自発光マーカを含むマーカ画像を生成するユニットである。
図2に示すように、撮像ユニット3は、基台30と、基台30に支持された可動ステージ31と、可動ステージ31の上部に固定されたプローブ撮像用カメラ32とを備えている。可動ステージ31は、ステージ駆動部31aを備えている。ステージ駆動部31aは、モータ等のアクチュエータを内蔵しており、可動ステージ31を鉛直軸周りに回動させるとともに、水平軸周りにも回動させるように構成されている。可動ステージ31を鉛直軸周りに回動させることにより、プローブ撮像用カメラ32が鉛直軸周りに回動し、また、可動ステージ31を水平軸周りに回動させることにより、プローブ撮像用カメラ32が水平軸周りに回動する。これにより、プローブ撮像用カメラ32の視野(
図1、
図2に破線Aで模式的に示す)を移動させて、プローブ2、即ちプローブ2が有する複数の自発光マーカがプローブ撮像用カメラ32の視野内に入るように、自発光マーカをトラッキングすることができる。ステージ駆動部31aは、撮像ユニット3が有する本体制御部33によって制御される。
【0021】
可動ステージ31の下部には、複数の発光体31bが二次元平面上に所定の間隔をあけて設けられており、発光体31bは、点灯制御部31cによって点灯した状態と消灯した状態とに切り替えられるようになっている。複数の発光体31bは、プローブ撮像用カメラ32及び可動ステージ31の移動に伴って移動する。点灯制御部31cは、本体制御部33によって制御される。一方、基台30には、点灯制御部31cによって点灯した状態とされた発光体31bを撮像する基準カメラ34が設けられている。
【0022】
複数の発光体31bにより、基準カメラ34により撮像される参照マーカが構成される。複数の発光体31bを含む参照部材の構成を具体的に説明すると、図示しないが、参照部材は、上から下に向けて順に配置された発光基板、拡散板、ガラス板を有し、これらは、その側方の周囲が拡散反射シートによって包囲されている。発光基板の下面には、全体に亘って数多くの発光体31bが整列した状態で実装されている。各発光体31bは、例えば赤外LED(発光ダイオード)で構成されている。発光体31bとしては、赤外LEDの代わりに他の波長の光を発するLEDが用いられてもよいし、フィラメント等の他の発光体が用いられてもよい。発光体31bは点灯制御部31cによって駆動される。拡散板は、例えば樹脂からなる板部材であり、複数の発光体31bから発生される光を拡散させつつ下方へ透過する。拡散反射シートは、例えば樹脂からなる帯状のシート部材であり、複数の発光体31bから参照部材の側方(外方)に向かう光を拡散させつつその内方に反射する。以上の構成により、拡散板から放出される光を面全体に均一化することができる。ガラス板は板ガラスであり、例えば石英ガラスまたはソーダガラスで構成される。ガラス板の上下の面のうち少なくとも下面は、高度に平滑化された面で構成され、この下面に複数の円形開口を有する薄膜マスクが設けられている。薄膜マスクは、例えばガラス板の下面にスパッタ法または蒸着法により形成されるクロムマスクである。この薄膜マスクの各円形開口によって参照マーカの円形輪郭が規定される。これにより、どの角度から参照マーカを撮像しても、規定の形状を歪みの無い画像を獲得することができる。面発光マーカである参照マーカの輪郭形状は任意であり、四角形、星形、楕円などであってもよい。
【0023】
上記の構成により、複数の発光体31bから発生されて拡散板および拡散反射シートにより拡散されて面全体に均一に放出される。つまり面全体に均一に光を放出する面光源になる。そして、この面光源から放出された光は、薄膜マスクの各円形開口を通して参照部材の下方に放出される。これにより輪郭が明確な面発光の参照マーカとなる。複数の参照マーカは、参照部材の下面(平面)において、マトリクス状に等間隔に配列されている。
【0024】
撮像ユニット3には、カメラ画像処理部35が設けられている。カメラ画像処理部35は画像処理回路を有しており、プローブ撮像用カメラ32を制御して所定のタイミングで撮像を実行させる。画像処理回路としては、例えばGPU(Graphics Processing Unit)や、FPGA(Field Programmable Gate Array)とDSP(Digital Signal Processor)等を挙げることができる。
【0025】
カメラ画像処理部35には、プローブ撮像用カメラ32で撮像されたマーカ画像が入力されるとともに、基準カメラ34によって撮像された発光体31bの画像も入力される。
【0026】
カメラ画像処理部35は、プローブ撮像用カメラ32が撮像したマーカ画像を処理して自発光マーカの中心位置情報、例えば円形の自発光マーカの中心位置を生成する。具体的には、カメラ画像処理部35は、マーカ画像に対して自発光マーカの中心を抽出する処理を行う。そして、抽出した結果に基づいて、自発光マーカの中心位置情報を生成する。さらに、カメラ画像処理部35は、自発光マーカの中心を抽出する処理の結果、得られた自発光マーカの中心位置情報に基づいて、可動撮像部3Aに対する自発光マーカの位置姿勢情報を生成する。
【0027】
自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の中心位置情報は次の方法で生成される。まず、カメラ画像処理部35は、プローブ2に記憶されている各自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の配置情報を取得する。そして、カメラ画像処理部35は、プローブ2から取得した自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の配置情報とカメラ画像処理部35により生成されたマーカ画像に含まれるマーカ間の相対的な三次元位置情報とに基づいて、撮像ユニット3に対するプローブ2の相対的な位置や姿勢を変化させたときに、各マーカが撮像ユニット3によりどのような位置に撮像されるのかを算出し、算出された各マーカ位置と画像102のマーカ位置とをマッチングさせる。そして、算出された各マーカ位置と画像102のマーカ位置との誤差が最も小さくなる撮像ユニット3に対するプローブ2の相対的な位置姿勢が算出され、自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の中心位置情報として生成される。すなわち、カメラ画像処理部35は、仮想的にプローブ2の位置姿勢を変化させることで、プローブ2から取得した自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の配置情報を仮想的に変化させ、カメラ画像処理部35により生成されたマーカ画像とマッチングする位置姿勢を算出し、自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の中心位置情報を生成する。この位置姿勢情報の算出処理は、バンドル調整と言われるものであってもよい。ここで、 マッチングにはマーカ画像に含まれる自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の一部を代表マーカとして選択的に使用してもよい。円形状の自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107は、プローブ2の位置姿勢によっては楕円形状になる。そこで、一例として、マーカ画像に含まれる自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の長辺と短辺の長さの比率である扁平率を用い、扁平率が所定の値以下の場合には計算対象に含めず、扁平率が所定の値以上の自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107を代表マーカとしてもよい。また、マーカブロックの中で真円に近いものを代表マーカとして選択してもよい。このように計算対象となる自発光マーカを代表マーカに限定することで、計算速度を向上させるとともに、測定精度の低下を抑制できる。
【0028】
ここで算出される自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の中心位置情報は、プローブ撮像用カメラ32を基準としたものである。そこで、カメラ画像処理部35は、基準カメラ34を基準としたプローブ撮像用カメラ32の位置姿勢情報と、プローブ撮像用カメラ32を基準としたプローブ2の位置姿勢情報とに基づいて、基準カメラ34を基準としたプローブ2の位置姿勢情報を算出することで、基準カメラ34を基準とした自発光マーカの中心位置情報を生成する。
【0029】
撮像ユニット3は、本体制御部33によって制御される無線通信部36を備えている。無線通信部36は、撮像ユニット3以外の機器と通信可能に構成された通信モジュール等である。本例では、無線通信部36を介して撮像ユニット3がプローブ2と通信し、例えばプローブ撮像用カメラ32で撮像された画像データ等の各種データや、各種信号等の送受信が可能になっている。
【0030】
撮像ユニット3は、本体制御部33によって制御される通信部37も備えている。通信部37は、処理部4と通信可能に構成された通信モジュール等である。通信部37を介して撮像ユニット3が処理部4と通信し、例えば画像データ等の各種データや、各種信号等の送受信が可能になっている。通信部37による通信は、有線を用いた通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0031】
撮像ユニット3は、測定指示に基づいて、同期実行のタイミングを規定するトリガ信号を生成するトリガ生成部38を有している。トリガ生成部38により生成されるトリガ信号により、撮像ユニット3のプローブ撮像用カメラ32や基準カメラ34、発光体31bが同期して制御される。また、トリガ生成部38により生成されたトリガ信号は、トリガ管理部38aに送信される。トリガ管理部38aは、トリガ信号の受信に応じて、トリガ信号を識別するための識別情報を生成する。トリガ管理部38aは、例えばリングバッファまたはカウンタを有し、リングバッファまたはカウンタにより、生成した識別情報を管理する。トリガ管理部38aは、トリガ信号の受信に応じてリングバッファまたはカウンタを参照し、次のバッファ領域に対応する情報やカウンタに保持されている値に所定の演算を行うことで得られた情報を、受信したトリガ信号に対応する識別情報として生成する。この識別情報は、トリガ生成部38により生成されたトリガ信号を一意に識別するものであるため、トリガIDということもできる。例えば、測定作業者が所定の測定開始操作を行うと、撮像ユニット3の本体制御部33が測定開始操作を受け付ける。本体制御部33は、測定開始操作を受け付けると、トリガ生成部38に、上記トリガ信号を生成させる。トリガは、例えば無線通信部36またはコネクタCONに接続される通信ケーブルを介してプローブ2に送信される。
【0032】
本体制御部33は、トリガ生成部38によりトリガ信号が生成されたことに同期して、プローブ撮像用カメラ32によるプローブ2の自発光マーカの撮像と、可動ステージ31の発光体31bの点灯と、基準カメラ34による発光体31bの撮像とを同期させて実行する。また、プローブ2の自発光マーカも当該トリガが生成されたことに同期して発光するように、無線通信部36または通信ケーブルを介してトリガ信号をプローブ2に送信する。尚、可動ステージ31の発光体31bは常時点灯させていてもよく、従って、少なくとも、プローブ2の自発光マーカの発光と、プローブ撮像用カメラ32による撮像と、基準カメラ34による撮像とがトリガ信号に基づいて同期して実行されるように制御される。なお、プローブ2の自発光マーカの発光のタイミングをプローブ撮像用カメラ32による撮像のタイミングよりも僅かに早めてもよく、この場合も、プローブ2の自発光マーカの発光と、プローブ撮像用カメラ32による撮像とは同期しているものとする。
【0033】
通信部37は、カメラ画像処理部35が生成した自発光マーカの中心位置情報と、当該自発光マーカの中心位置情報に対応する識別情報と、を紐づけて送信する。ここで、自発光マーカの中心位置情報に対応する識別情報とは、自発光マーカの中心位置情報を生成するためにカメラ画像処理部35により処理されたマーカ画像に対応する識別情報でもあり、当該マーカ画像を取得させるためのトリガ信号に対応する識別情報である。なお、「紐づける」とは、2以上の情報を関連付ける、または対応付けることであり、この場合、自発光マーカの中心位置情報と、この自発光マーカの中心位置情報を他の自発光マーカの中心位置情報と区別するための識別情報とが関連付けられている。よって、識別情報に基づいて、所望の自発光マーカの中心位置情報を特定することができる。なお、ここでは、トリガ生成部38が生成したトリガ信号に基づき、トリガ管理部38aが識別情報を生成する場合を説明したが、この方法に限定されない。トリガ生成部38がトリガ信号だけでなく、トリガ信号に対応する識別情報を生成してもよい。この場合、プローブ2には、トリガ信号だけでなく識別情報も重畳して送信されてもよく、プローブ2の処理を簡素化できるとともに、撮像ユニット3とプローブ2との間で識別情報の不一致が生じる虞を抑制できる。
【0034】
(処理部4の構成)
処理部4は、撮像ユニット3により生成されたマーカ画像を処理することで得られた複数のマーカの位置姿勢を撮像ユニット3から受信するとともに、プローブ2により生成された輝線画像を処理することで得られた輝線画像のエッジデータを受信し、受信したマーカの位置姿勢とエッジデータとに基づいて測定対象物Wの三次元形状を測定する部分である。
【0035】
三次元形状の測定手法は従来から周知の手法を用いることができる。以下、一例について説明する。撮像ユニット3の複数の発光体31bは、プローブ撮像用カメラ32が固定された可動ステージ31に設けられているので、プローブ撮像用カメラ32に対する複数の発光体31bの位置関係は既知である。ステージ駆動部31aでプローブ撮像用カメラ32を動かす際には、基準カメラ34によってそれら発光体31bが撮像できる範囲内でプローブ撮像用カメラ32が動くようになっている。プローブ撮像用カメラ32が撮像したプローブ2のマーカ画像に基づいてプローブ撮像用カメラ32に対するプローブ2の位置姿勢を決定し、基準カメラ34は同様にして複数の発光体31bを撮像した画像に基づいて基準カメラ34に対するプローブ撮像用カメラ32の位置姿勢を決定し、これら二つの位置姿勢から、基準カメラ34に対するプローブ2の位置姿勢を決定して測定点の座標を求めることで三次元座標測定、即ち三次元形状の測定が可能になる。
【0036】
図1では、処理部4が汎用のノート型パーソナルコンピュータで構成されている例を示しているが、デスクトップ型パーソナルコンピュータや、三次元スキャナ1に専用のコントローラ等で構成されていてもよく、いずれの場合であっても、三次元スキャナ1の機能を実現させるためのプログラムやアプリケーションをインストールすることで、処理部4として利用できる。処理部4は、撮像ユニット3と別体とされていてもよいし、撮像ユニット3と一体化されていてもよい。また、処理部4の一部が撮像ユニット3に組み込まれていてもよいし、撮像ユニット3の一部が処理部4に組み込まれていてもよい。
【0037】
図2に示すように、処理部4は、制御ユニット40と、モニタ41と、操作入力部42とを備えている。モニタ41は、各種画像やユーザインタフェース等の表示が可能に構成された液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されている。
【0038】
操作入力部42は、ユーザが各種入力操作を行う部分である。操作入力部42は、例えばキーボードやマウス等で構成されている。
【0039】
制御ユニット40は、制御部43と、表示制御部44と、記憶部45と、通信部46とを備えている。表示制御部44は、制御部43から出力された信号に基づいてモニタ41を制御する部分であり、モニタ41に各種画像やユーザインタフェース等を表示させる。ユーザインタフェース上で行われたユーザによる操作は、操作入力部42から出力される信号に基づいて制御部43が取得する。
【0040】
記憶部45は、ROMであってもよいし、ソリッドステートドライブやハードディスクドライブ等であってもよい。記憶部45には、プローブ2が有するマーカブロックにおける各々の自発光マーカの配置情報が記憶されている。マーカブロック及び各々の自発光マーカの配置情報としては、マーカブロック間の距離、各マーカブロックに設けられている自発光マーカの相対的な位置関係を示す情報等である。
【0041】
制御部43は、取得部43aと算出部43bとを備えている。取得部43aと算出部43bの動作は次の通りである。すなわち、取得部43aは、プローブ2が有するスキャナ部(後述する)の温度変化に起因する複数のマーカブロック間の位置ずれ情報を、記憶部45に記憶された自発光マーカの配置情報に基づいて取得する部分である。例えば、環境温度を変化させていった時の部材の寸法変化を測定ないし算出しておき、環境温度と部材の寸法変化量との関係を所定の形式として保持しておくことができ、これをマーカブロック間の位置ずれ情報とすることができる。詳細は後述する温度補正処理で説明する。
【0042】
また、算出部43bは、プローブ2で生成された輝線画像と、撮像ユニット3により生成されたマーカ画像に含まれる複数のマーカの位置姿勢と、取得部43aにより取得された位置ずれ情報と、に基づいて、測定対象物Wの三次元座標を算出する部分である。例えば、温度センサを設けてプローブ2を構成する部材近傍の温度を検出することで、上記位置ずれ情報に基づいて部材の寸法変化量を取得できる。取得した寸法変化量を、測定対象物Wの三次元座標の算出に加味することで、算出結果の精度を高めることができる。
【0043】
また、処理部4の通信部46は、制御部43によって制御される。通信部46は、撮像ユニット3の通信部37と通信可能に構成された通信モジュール等である。
【0044】
(プローブ2の構成)
プローブ2は、測定作業者が片手または両手で持って自由に移動させながら、測定対象物Wの形状測定が行えるように構成されており、手持型、可搬型の非接触プローブである。電源は外部から供給されるようになっていてもよいし、バッテリを内蔵し、そのバッテリから供給されるようになっていてもよい。本実施形態では、プローブ2の前後左右及び上下を
図3~7に示すように定義する。すなわち、プローブ2を測定作業者が手で持った時に右に位置する側を右といい、左に位置する側を左という。プローブ2の前は、測定対象物Wと対向する側であり、プローブ2の後側は、測定対象物Wと対向する側と反対側である。プローブ2の上とは、後述する把持部112を決められたように自然な姿勢で把持した状態で上側となる側であり、プローブ2の下とは、把持部112を決められたように自然な姿勢で把持した状態で下側となる側である。ただし、上述したようにプローブ2を手で持って移動させながら測定対象物Wの三次元形状を測定できるので、プローブ2の向きは上下反転したり、上側が右や左に位置する姿勢となることもあり得るし、後側が上に位置したり、下に位置したりすることもある。
【0045】
プローブ2は、プローブ本体20と、第1マーカブロック21と、第2マーカブロック22と、第3マーカブロック23と、第4マーカブロック24とを備えている。詳細は後述するが、第1~第4マーカブロック21~24は、複数の方向に各々面した自発光マーカを有している。
図7に示す正面視で、プローブ本体20の上下方向の寸法の方は左右方向の寸法よりも長く設定されており、これにより、プローブ本体20の長手方向は上下方向となり、短手方向は左右方向となる。尚、長手方向が左右方向であってもよいし、上下方向と左右方向の寸法が同一であってもよい。また、プローブ2の原点は、第1~第4マーカブロック21~24の位置関係に基づいて定められてもよい。すなわち、第1マーカブロック21と第2マーカブロック22を結ぶ直線L1(
図4に示す)と、第3マーカブロック23と第4マーカブロック24を結ぶ直線L2(
図6に示す)の各々を仮想的に規定する。これらの2直線L1、L2はねじれの関係にあり、交わらないため、一方の直線を他方の直線に投影することで仮想交点を規定する。このように規定された仮想交点から一方の直線に垂線を下ろし、当該垂線が一方の直線と交わる点と、仮想交点との中央の点を原点Pとして規定してもよい。このように、第1~第4マーカブロック21~24からの距離が等しくなる点を原点P(
図4及び
図6に示す)として規定してもよい。このように原点Pを規定することで、後述の三次元座標を計算する際の計算処理を低減できる。
図4で示している原点Pは、本来、第3マーカブロック23と第4マーカブロック24との中間点に位置しているが、
図4に示す都合上、第4マーカブロック24の手前に位置するように示している。
【0046】
プローブ本体20は、中央部から上へ延びる第1アーム部51、中央部から下へ延びる第2アーム部52、中央部から左へ延びる第3アーム部53及び中央部から右へ延びる第4アーム部54とを備えている。第1アーム部51の長手方向(上下方向)に延びる中心線と、第2アーム部52の長手方向(上下方向)に延びる中心線とは、同一直線B上に配置される。また、第3アーム部53の長手方向(左右方向)に延びる中心線と、第4アーム部54の長手方向に延びる中心線(左右方向)とは、同一直線C上に配置される。上下方向に延びる直線Bと左右方向に延びる直線Cとは正面視で互いに直交している。
【0047】
第1アーム部51の先端部に第1マーカブロック21が取り付けられ、また、第2アーム部52の先端部に第2マーカブロック22が取り付けられ、また、第3アーム部53の先端部に第3マーカブロック23が取り付けられ、また、第4アーム部54の先端部に第4マーカブロック24が取り付けられるようになっている。
【0048】
図8に示すように、プローブ本体20は、スキャナ部60と光学ベース61とを有している。スキャナ部60の周りに、第1~第4マーカブロック21~24が配置される。スキャナ部60は、第1スキャナ光源62、第2スキャナ光源63、第1スキャナ撮像部64、第2スキャナ撮像部65及びテクスチャカメラ66を有している。光学ベース61は、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金製の部材であり、プローブ本体20の左右方向中央部に配置されて上下方向に長い形状をなしている。光学ベース61の中央部よりも上側部分は、第1アーム部51を構成する部分であり、第1マーカブロック21を支持する上側支持部61aとなっている。よって、上側支持部61aの上端部に第1マーカブロック21が取り付けられている。光学ベース61の中央部よりも下側部分は、第2アーム部52を構成する部分であり、第2マーカブロック22を支持する下側支持部61bとなっている。よって、下側支持部61bの下端部に第2マーカブロック22が取り付けられている。
【0049】
光学ベース61の上下方向中央部、即ち、上側支持部61aと下側支持部61bとの間の部分には、2つの第1スキャナ光源62が左右方向に間隔をあけて取り付けられている。2つの第1スキャナ光源62は、測定方向(前方)に複数本の線状の光を照射するマルチライン光源であり、光の出射面が測定時における測定対象物Wに対向するように配置されている。第1スキャナ光源62が照射する光をマルチライン光と呼ぶことができ、マルチライン光はパターン光に含まれる。
【0050】
光学ベース61の上下方向中央部における第1スキャナ光源62の上方には、第2スキャナ光源63が取り付けられている。第2スキャナ光源63は、測定方向(前方)に1本の線状の光を照射するシングルライン光源であり、光の出射面が測定時における測定対象物Wに対向するように配置されている。第2スキャナ光源63が照射する光をシングルライン光と呼ぶことができ、シングルライン光もパターン光に含まれる。
【0051】
第1スキャナ光源62から照射されるマルチライン光は、1つのレーザー光源により出射されたレーザー光がビームスプリッタにより複数本に分割されることによって生成される。そのため、第1スキャナ光源62から照射されるマルチライン光の各々の光量は、レーザー光源により生成される光の光量と比較して相対的に低下する。一方、シングルライン光源である第2スキャナ光源63から照射されるシングルライン光は、1つのレーザー光源により出射されたレーザー光が分割されることなく生成される。そのため、第2スキャナ光源63から照射されるシングルライン光の光量は、レーザー光源により生成される光の光量からの低下が少ない。第1スキャナ光源62から照射されるマルチライン光と、第2スキャナ光源63から照射されるシングルライン光の光量とを比較すると、第2スキャナ光源63から照射されるシングルライン光の光量の方が相対的に大きくなる。そのため、光の反射率が少ないような測定対象物Wからも測定データを取得でき、ワーク対応力を向上させることができる。
【0052】
第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63は、レーザー光を照射するレーザー光源を有しているが、光源の種類は特に限定されるものではない。また、本例では、合計3つのスキャナ光源62、63が設けられているが、これに限らず、スキャナ光源は1つ以上設けられていればよい。また、パターン光の種類は特に限定されるものではなく、マルチライン光、シングルライン光以外のパターン光をスキャナ光源が照射してもよい。
【0053】
第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65は、例えばCMOSセンサ等の受光素子、外部から入射した光を受光素子の受光面に結像させるための光学系等を有している。第1スキャナ撮像部64は、スキャナ光源62、63から上方に離れた部位である光学ベース61の上部に取り付けられている。第2スキャナ撮像部65は、スキャナ光源62、63から下方に離れた部位である光学ベース61の下部に取り付けられている。第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65は、各光軸がスキャナ光源62、63によるパターン光の照射方向に向くように配置されており、これにより、測定方向におけるスキャナ光源62、63により照射したパターン光を撮像し、輝線画像を生成することが可能になる。
【0054】
第1スキャナ撮像部64を光学ベース61の上部に取り付け、第2スキャナ撮像部65を光学ベース61の下部に取り付けているので、第1スキャナ撮像部64と第2スキャナ撮像部65との距離を長く確保してステレオ測定法の精度を高めることができる。すなわち、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65の光軸間距離が既知であり、第1スキャナ光源62または第2スキャナ光源63から照射されたパターン光を、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65で同時に撮像して生成されたそれぞれの画像の対応点を求め、ステレオ測定法を利用することにより、対応点の三次元座標を求めることができる。ステレオ測定法は、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65を用いたパッシブステレオであってもよいし、1つのスキャナ撮像部を用いたアクティブステレオであってもよい。特に、測定対象物Wが鏡面反射するものであった場合や、深穴を測定する場合など、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65で生成された画像の一方に、パターン光含まれない場合がある。このような場合は、パターン光が撮影された画像に対応するスキャナ撮像部とスキャナ光源との位置関係に基づき、アクティブステレオ法により三次元座標を算出してもよい。
【0055】
テクスチャカメラ66は、例えばカラー画像を取得可能なCMOSセンサ等の受光素子、外部から入射した光を受光素子の受光面に結像させるための光学系等を有している。テクスチャカメラ66は、第1スキャナ撮像部64と第2スキャナ撮像部65との間において光学ベース61に取り付けられている。テクスチャカメラ66は、光軸が測定時の測定対象物Wに向くように配置されており、測定対象物Wを撮像してテクスチャ画像を生成する。
【0056】
プローブ本体20は、第3マーカブロック23をスキャナ部60に対して支持する左側支持部68と、第4マーカブロック24をスキャナ部60に対して支持する右側支持部69とを備えている。左側支持部68及び右側支持部69は光学ベース61と同様な軽合金製の部材である。本例では、左側支持部68及び右側支持部69が光学ベース61と別体である場合について示しているが、これに限らず、左側支持部68及び右側支持部69と光学ベース61とが一体成形されていてもよい。
【0057】
左側支持部68は、光学ベース61の上下方向中央部の左側面に対して締結部材等によって固定されており、
図4~
図5に破線で示すように、左方向へ向けて突出するとともに左端部に近づくほど前に位置するように延びている。左側支持部68の左端部に第3マーカブロック23が取り付けられている。また、右側支持部69は、光学ベース61の上下方向中央部の右側面に対して締結部材等によって固定されており、右方向へ向けて突出するとともに右端部に近づくほど前に位置するように延びている。右側支持部69の右端部に第4マーカブロック24が取り付けられている。
【0058】
上述した構成により、第1マーカブロック21及び第2マーカブロック22は上下方向に互いに間隔をあけて配置されるとともに、第1マーカブロック21及び第2マーカブロック22の間の中央部にスキャナ部60が配置される。したがって、第1マーカブロック21及び第2マーカブロック22は、スキャナ部60を中心に位置付けた状態で上下方向(第一の方向)に並ぶように配置される一対のマーカブロックを構成している。また、プローブ本体20の上下方向は、当該プローブ本体20の長手方向なので、第1マーカブロック21と第2マーカブロック22からなる一対のマーカブロックは、プローブ本体20の長手方向両端部に設けられることになる。
【0059】
また、第3マーカブロック23及び第4マーカブロック24は左右方向に互いに間隔をあけて配置されるとともに、第3マーカブロック23及び第4マーカブロック24の間の中央部にスキャナ部60が配置される。したがって、第3マーカブロック23及び第4マーカブロック24は、スキャナ部60を中心に位置付けた状態で左右方向(第二の方向)に並ぶように配置される一対のマーカブロックを構成している。
【0060】
第一の方向と第二の方向とは、正面視で互いに直交する関係にあるので、第1マーカブロック21と第2マーカブロック22からなる一対のマーカブロックの並び方向と、第3マーカブロック23と第4マーカブロック24からなる一対のマーカブロックの並び方向とは、測定方向から見たときに直交することになる。
【0061】
第3マーカブロック23及び第4マーカブロック24はそれぞれ前方へ向けて延びている左側支持部68及び右側支持部69の先端部に取り付けられているので、スキャナ部60から測定方向(前方)にオフセットした位置に、第3マーカブロック23と第4マーカブロック24からなる一対のマーカブロックが設けられることになる。「オフセット」とは、スキャナ部60を基準とした時、当該スキャナ部60よりも前方に位置付けられることである。
【0062】
また、
図8に示すように、光学ベース61、左側支持部68、右側支持部69には少なくとも1つの温度センサS1~S4が設けられていてもよい。後述するように、温度センサS1~S4を設けてプローブ2を構成する部材近傍の温度を検出することで、三次元座標の算出結果の精度を高めることができる。温度センサS1~S4は、光学ベース61、左側支持部68、右側支持部69からプローブ2の外側に向けて配置される。光学ベース61の内部はスキャナ撮像部64、65やスキャナ光源62、63により空間に限りがあるため、温度センサS1~S4はプローブ2の外側に向けて配置されてもよい。この場合、プローブ2の外側に向けて温度センサS1~S4を取り付ければよいため、容易に組立を行うこともできる。また、温度センサS1~S4は直線Bまたは直線Cに対して対称な配置ではなく、直線Bを直線C上に投影した直線B’と直線Cとの交点に対して対称な点対象な配置をしていてもよい。すなわち、第1の温度センサS1と第2の温度センサS2は、一方が直線Bに対して右側に配置され、他方が直線Bに対して左側に配置されてもよい。また、第3の温度センサS3と第4の温度センサS4は、一方が直線Cに対して上側に配置され、他方が直線Cに対して下側に配置されてもよい。複数の温度センサS1~S4を点対称に配置することにより、プローブ2の環境温度をより正確に測定できる。
【0063】
図5及び
図6に示すように、第1マーカブロック21、第2マーカブロック22及び第3マーカブロック23により仮想平面Dが規定される。仮想平面Dを規定する際、第1マーカブロック21の重心21A(
図5に示す)、第2マーカブロック22の重心22A(
図6に示す)及び第3マーカブロック23の重心23A(
図5及び
図6に示す)を通る平面を仮想平面Dとすることができる。また、第1マーカブロック21の中心、第2マーカブロック22の中心及び第3マーカブロック23の中心を通る平面を仮想平面Dとすることもできる。
【0064】
第4マーカブロック24は、仮想平面Dから離間するように配置される。本例では、第4マーカブロック24が、右端部に近づくほど前に位置するように延びている右側支持部69によって支持されているので、仮想平面Dから前方に離間した位置に配置されることになる。例えば
図5に示すように、第4マーカブロック24の重心24Aを通り、仮想平面Dに対して垂直な仮想線Eを規定した時、仮想線E上の重心24Aと仮想平面Dとの距離を、第4マーカブロック24の仮想平面Dからの離間距離とすることができる。この離間距離は、任意の距離に設定することができる。
【0065】
第1~第4マーカブロック21~24は同じ構造となっている。
図9~
図12に示すように、第1マーカブロック21は、複数の方向に面した第1~第7自発光マーカ71~77と、第1~第7自発光マーカ71~77の各々を位置決め固定するマーカホルダ78とを有している。
図3~
図8では、マーカホルダ78が樹脂製のカバー29によって覆われている。
【0066】
マーカホルダ78は、光学ベース61、左側支持部68及び右側支持部69を構成する材料よりも熱膨張率が低い材料で構成されており、そのような材料としては、例えば石英、コージライトなどの低膨張セラミック、インバーなどの低膨張金属、炭素繊維強化プラスチップ(CFRP)等を挙げることができ、これらのうち、1種のみでマーカホルダ78が構成されていてもよいし、任意の複数種を組み合わせてマーカホルダ78が構成されていてもよい。言い替えると、光学ベース61、左側支持部68及び右側支持部69は、マーカホルダ78よりも熱膨張率が高い材料で構成されている。
【0067】
本例では、マーカホルダ78が六角形断面を有する中空の柱状をなしているが、これに限らず、例えば三角形、四角形、五角形、または、七角形以上の多角形断面を有する柱状をなしていてもよい。また、マーカホルダ78は円柱状であってもよい。以下、マーカホルダ78が六角形、正六角形の柱状である場合について説明する。尚、工業製品であるため、厳密な正六角形の柱状に成形するのは困難であり、よって、マーカホルダ78は正六角形の柱状に近似可能な形状になる。
【0068】
マーカホルダ78が六角形の柱状である場合には、
図9及び
図11に示すように、幾何的にマーカホルダ78の軸線Hを規定することができ、この軸線Hは第1マーカブロック21の軸線と言うこともできる。第1マーカブロック21は、軸線Hが直線B(
図7及び
図8に示す)の延長線上に位置するように配置されている。
【0069】
図11に示すように、マーカホルダ78の軸方向一端面は、光学ベース61の上側支持部61aに取り付けられる取付面78aとされている。この取付面78aから軸方向に取付用のボス79が突出している。一方、マーカホルダ78の取付面78a以外の各面には少なくとも1つの自発光マーカが設けられており、マーカホルダ78の軸方向他端面にも少なくとも1つの自発光マーカが設けられている。
【0070】
具体的に説明すると、
図10に示すように、マーカホルダ78が正六角形の柱状をなしていることから、外周面には、6つの平面として第1面78b、第2面78c、第3面78d、第4面78e、第5面78f、第6面78gが形成されることになる。第1~第6面78b~78gの各々には、
図12に示すように第1~第6自発光マーカ71~76がそれぞれ配置されている。
【0071】
また、第1~第6自発光マーカ71~76はガラス、セラミックス、または、ガラスセラミックスで構成される透明なプレート71Aと、当該プレート71A上に形成される薄膜71eとを有している。この薄膜71eは、プレート71Aの一面に遮光性のマスクを印刷することで形成される。プレート71Aに薄膜71eが形成されることにより、各自発光マーカ71~76の外形が形成される。プレート71Aは、高い透光性を有する。プレート71Aの材料として、例えば石英ガラスまたはソーダガラスが用いられる。特に、線膨張係数が小さくかつ吸湿性が低い石英ガラスが、プレート71Aの材料として用いられることが好ましい。マスクの材料として、ガラスに対する吸着性が高い(付着力が強い)金属材料が用いられ、例えばクロムが用いられる。これにより、ガラスからなる板状部材上に膜強度が高くかつ膜厚が小さいマスクを形成することができる。また、ガラスと吸着しやすい金属材料の薄膜上に、さらに他の金属薄膜を形成することにより、膜強度が高い積層膜からなるマスクを形成してもよい。また、エマルジョンインクまたは他の有機インク等を用いてマスクが形成されてもよい。薄膜71eの厚みは、プレート71Aの厚みよりも小さい。薄膜71eの厚みは、5μm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
【0072】
図10に示すように、マーカホルダ78の外周面のうち、第1面78bから最も離れている面が第2面78cであり、第1面78bと第2面78cとは互いに平行である。また、マーカホルダ78の外周面のうち、第3面78dから最も離れている面が第4面78eであり、第3面78dと第4面78eとは互いに平行である。さらに、マーカホルダ78の外周面のうち、第5面78fから最も離れている面が第6面78gであり、第5面78fと第6面78gとは互いに平行である。また、第3~第6面78d~78gは、第1面78b及び第2面78cと交差する位置関係にある。つまり、マーカホルダ78には、第1面78b及び第2面78cと交差する複数の側面として第3~第6面78d~78gが形成されている。第1~第6面78b~78gの向く方向が全て異なっているので、第1~第6自発光マーカ71~76の向く方向も全て異なることになる。また、第1~第6自発光マーカ71~76は、軸線H周りに等間隔に配置される。
【0073】
図9及び
図11に示すように、マーカホルダ78の軸方向他端面78hは、第1~第6面78b~78gに対して直交する位置関係にある。マーカホルダ78の他端面78hには、第7自発光マーカ77が配置されている。第7自発光マーカ77の光軸は、他端面78hに対して直交する位置関係となっており、従って、第1~第6自発光マーカ71~76の光軸と、第7自発光マーカ77の光軸とは互いに直交することになる。第7自発光マーカ77は、マーカホルダ78の他端面78hの中央部(軸線H上)に位置付けられている。
【0074】
第1~第7自発光マーカ71~77は全て同じ構造であり、以下、第1自発光マーカ71の詳細について
図13及び
図14に基づいて説明する。第1自発光マーカ71は、発光ダイオード(LED)71aと、基板71bと、筒状部材71cと、拡散板71dとを備えている。発光ダイオード71aはマーカ光源であり、本例では複数の発光ダイオード71aが基板71bに実装されている。複数の発光ダイオード71aは、基板71bの面に沿った方向に互いに間隔をあけて配置されている。筒状部材71cは、複数の発光ダイオード71a及び発光ダイオード71aから出射した光を囲むように形成されている。筒状部材71cの内面は、光を反射及び拡散させる拡散反射板で構成されている。
【0075】
拡散板71dは、複数の発光ダイオード71aから出射した光を拡散させるための部材である。第1自発光マーカ71の光軸方向に沿って見た時、拡散板71dは、複数の発光ダイオード71aが配置されている領域よりも大きく形成されている。言い換えると、複数の発光ダイオード71aが配置されている領域を小さくして第1自発光マーカ71の小型化及び軽量化を図りながら、マーカとして必要な面積の発光面が確保されるように、拡散板71dの大きさが設定されている。
【0076】
ここで、第1自発光マーカ71の発光面は全体が均一な明るさにするのが好ましい。しかし、上述したように拡散板71dが、複数の発光ダイオード71aの配置領域よりも大きいと、発光面の周辺部が中央部に比べて暗くなるおそれがある。このことに対して、本例では、拡散板71dの中央部の厚みが周辺部に比べて厚く設定されている。具体的には、拡散板71dにおける発光ダイオード71aと対向する面が、その中央部に行くほど基板71bに接近するようにドーム状に湾曲している。つまり、拡散板71dの形状を中央部が厚く、周辺部が薄くなる形状とすることにより、中央部での光の減衰を大きくして、狭い照明範囲でも均一な輝度分布となるようにしている。特に、プローブ2の向きや姿勢が様々に変化するため、自発光マーカ71~77を正面から撮像できるとは限らない。自発光マーカ71~77を斜め方向から撮像した場合でも、自発光マーカ71~77を正面方向から撮像した場合と同等の明るさにできるよう、拡散板71dの中央部の厚みが周辺部に比べて厚く設定されている。このような構成により、プローブ2の向きや姿勢によらず、自発光マーカ71~77を撮像したマーカ画像からより正確に自発光マーカの中心位置情報を抽出することができる。
【0077】
第2~第4マーカブロック22~24も第1マーカブロック21と同様に構成されている。すなわち、
図3~
図8に示すように、第2マーカブロック22は、第1~第7自発光マーカ81~87を有しており、また、第3マーカブロック23は、第1~第7自発光マーカ91~97を有しており、また、第4マーカブロック24は、第1~第7自発光マーカ101~107を有している。
【0078】
図7に示すように、第1マーカブロック21の第1自発光マーカ71と、第2マーカブロック22の第1自発光マーカ81とは、直線B周りに位置ずれるように配置されており、第1マーカブロック21の第1自発光マーカ71の光軸と、第2マーカブロック22の第1自発光マーカ81の光軸とは、異なる方向に向いている。これは、第2マーカブロック22に形成される複数の側面が、第1マーカブロック21に形成される複数の側面に対して、第一の方向(上下方向)に延びる軸周りの位置がずれるように配置されていることによる。同様に、第4マーカブロック24に形成される複数の側面が、第3マーカブロック23に形成される複数の側面に対して、第二の方向(左右方向)に延びる軸周りの位置がずれるように配置されている。これにより、後述するマーカ画像の処理時に複数の解が出にくくしている。
【0079】
図12に示すように、マーカブロック21~24には、各々1本のフレキシブルケーブルCAが配線されている。このフレキシブルケーブルCAにより、各自発光マーカ71~77に電源が供給される。具体的には、光学ベース61から各々のマーカブロック21~24に1本のフレキシブルケーブルCAが延びる。このフレキシブルケーブルCAは、マーカブロック71の内部で取付用のボス79を中心とした円状に配線される。円状に配線されたフレキシブルケーブルCAは、各々の自発光マーカ71~77に電源を供給するため、7本のサブフレキシブルケーブルCA1~CA6(
図12で6本のみ示す)に分岐している。そして、各々のサブフレキシブルケーブルCA1~CA6は、各自発光マーカ71~77の基板背面に設けられた電源コネクタ71C~76C(自発光マーカ77のものは示さず)を介して自発光マーカ71~77に接続される。なお、図示は省略するが、マーカホルダ78の他端面78hに配置されている第7自発光マーカ77にも同様に、円状に配線されたフレキシブルケーブルCAから分岐したサブフレキシブルケーブルが電源コネクタを介して接続される。このように、1本のフレキシブルケーブルCAにより、7つの自発光マーカ71~77に電源を供給することで、省配線を実現するとともに、マーカブロック21~24やプローブ2の小型化、軽量化に資することができる。さらに、省配線化により、配線からマーカブロック21~24に生じる応力を抑制できるため、各々の自発光マーカ71~77に生じる経時変化も抑制できる。
【0080】
プローブ本体20は、光学ベース61や左側支持部68、右側支持部69を覆う樹脂製の外装部材110を備えている。外装部材110の前側部分は、第1スキャナ光源62、第2スキャナ光源63、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65を覆うスキャナカバー部111を有している。また、外装部材110の後側部分は、測定作業者が把持する把持部112を有している。
【0081】
例えば
図15に示すように、把持部112は、上下方向に長い形状をなしており、その上端部が外装部材110の本体部分と一体化しており、光学ベース61から測定方向と反対側(後側)へ離れた位置に設けられている。把持部112の下端部は、第2マーカブロック22よりも下へ突出するように配置されている。また、把持部112の下端部と第2マーカブロック22とは前後方向に離れている。把持部112の長手方向は、直線Bに対して後方に傾斜しており、把持部112の下へ行くほど直線Bから離れるように当該把持部112が設けられている。言い換えると、把持部112よりも前方に第1~第4マーカブロック21~24が位置付けられているので、撮像ユニット3による撮像時に測定作業者の手や把持部112が自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107と被りにくくなる。
【0082】
図5及び
図15に示すように、把持部112の上端部には、スキャナ部60による測定結果を表示するための表示部113と、スキャナ部60を操作するための操作部114とが設けられている。表示部113は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されており、表示面が直線Bに対して傾斜するように配置されている。また、表示面は、測定対象者側に向いており、表示部113の表示内容を見ながらプローブ2を動かすことができるようになっている。
【0083】
表示部113の表示面側には、タッチ操作可能なタッチパネル113aも設けられている。操作部114は、例えば測定開始ボタン、測定停止ボタン等を含む複数の操作ボタン等で構成されており、表示部113の下方に配置されている。タッチパネル113aも操作部の一部とすることができる。
【0084】
図3や
図4等に示すように、外装部材110における第1~第4アーム部51~54に対応する部分には、複数のアーム側通気口110aが形成されている。また、
図5に示すように、外装部材110における表示部113を覆う部分には、複数の表示部側通気口110bが形成されている。
【0085】
図15に示すように、把持部112は、スキャナカバー部111の内部に連通する中空状をなしている。
図3及び
図6にも示すように、把持部112の下端部には、把持部112の内部の空気を排出するための空気排出口112aが形成されている。空気排出口112aは、第2マーカブロック22から離れる方向に向いて開口している。さらに、本例では、把持部112の内部に送風ファン112bが設けられている。この送風ファン112bは、把持部112の内部の空気を空気排出口112aから強制的に排出するため部材である。送風ファン112bを動作させると、外装部材110のアーム側通気口110a及び表示部側通気口110b等から当該外装部材110の内部に吸い込まれた空気がスキャナ部60や表示部113等を冷却しながら把持部112の内部に達し、空気排出口112aから排出される。よって、プローブ本体20の内部を強制空冷することができる。プローブ本体20の内部には、スキャナ光源62、63やスキャナ撮像部64、65、表示部113といった熱を発生させる部材が存在する。プローブ本体20の内部に熱が発生することにより、複数の部品間の相対位置が変動し、測定精度が低下してしまう虞がある。プローブ本体20の内部を中空に形成するとともに、プローブ本体20の内部の熱を送風ファン112bから排出することで、測定精度の低下を抑制することができる。さらに、空気排出口112aから排出された空気は、第2マーカブロック22から離れる方向に向けて流れるので、測定時における第2マーカブロック22近傍の空気の揺らぎを抑制できる。
【0086】
図15に示すように、外装部材110の後側部分の上下方向中央部は、光学ベース61の上下方向中央部に対して2点の締結部材115によって締結固定されている。2点の締結部材115は互いに接近しており、実質的に1点の締結箇所とみなすことが可能である。すなわち、実質的に1点の締結箇所とみなすことが可能である隣り合った2点の締結部材115により、外装部材110の後側部分の上下方向中央部が、光学ベース61の上下方向中央部に対して締結固定されている。外装部材110の光学ベース61に対する締結は、締結部材115のみである。これにより、外装部材110と光学ベース61との熱膨張の相違による各部のひずみを抑制できる。尚、外装部材110は1点の締結部材115によって光学ベース61に締結固定されていてもよい。
【0087】
また、外装部材110は、第1~第4マーカブロック21~24の各マーカホルダ78に対して非締結とされている。非締結とは、外装部材110を各マーカホルダ78に対してネジやボルト等の締結部材で締結していないということである。これにより、外装部材110から各マーカホルダ78に対して力が作用しにくくなるので、複数の自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の位置精度を高い状態で保つことができる。
【0088】
さらに、外装部材110と光学ベース61との間には空間が形成されている。外装部材110と光学ベース61との間に形成される空間により、プローブ本体20の内部に生じる熱が送風ファン112bに向かう流路を確保するとともに、スキャナ撮像部やスキャナ光源部などの電気部品を接続する各種のケーブルを配線する領域を確保することができる。
【0089】
(プローブ2の回路)
次にプローブ2の回路について
図16に基づいて説明する。プローブ2は、表示制御部140と、マーカ点灯制御部141と、プローブ制御部142と、記憶部143とを備えている。表示制御部140は、プローブ制御部142から出力された信号に基づいて表示部113を制御する部分であり、表示部113に各種画像やユーザインタフェース等を表示させる。表示部113上で行われたユーザによる操作は、タッチパネル113aから出力される信号に基づいてプローブ制御部142が取得する。
【0090】
また、撮像ユニット3のトリガ生成部38により生成されたトリガ信号は無線通信部144またはコネクタCONに接続される通信ケーブルを介して通信制御部149により受信される。そして、プローブ2は通信制御部149によりトリガ信号を受信すると、トリガ信号をプローブ2のトリガ管理部150に送信する。プローブ2のトリガ管理部150は、トリガ信号の受信に応じて、トリガ信号に対応する識別情報を生成する。識別情報の生成は、撮像ユニット3のトリガ管理部38aと同様の処理であるため、ここでは説明を省略する。
【0091】
トリガ信号の受信に応じて、スキャナ画像処理部147により第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65が制御され、撮像が実行される。これにより、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65による撮像と、プローブ撮像用カメラ32によるプローブ2の自発光マーカの撮像と、可動ステージ31の発光体31bの点灯と、基準カメラ34による発光体31bの撮像とがトリガ信号に応じて同期して実行される。
【0092】
マーカ点灯制御部141は、自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107(
図16では71のみ示している)を制御する部分である。プローブ2が通信制御部149によりトリガ信号を受信すると、マーカ点灯制御部141が自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107を制御して自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107を点灯した状態にしてもよい。マーカ点灯制御部141は、プローブ制御部142によって制御される。記憶部143には、プログラムやスキャナ部60で撮像された画像等が一時的に記憶可能になっている。
【0093】
プローブ2は、プローブ制御部142によって制御される無線通信部144を備えている。無線通信部144は、プローブ2以外の機器と通信可能に構成された通信モジュール等である。本例では、無線通信部144を介してプローブ2が撮像ユニット3と通信し、例えばスキャナ部60で撮像された画像データ等の各種データや、各種信号等の送受信が可能になっている。なお、プローブ2と撮像ユニット3とは、コネクタCONを介して通信ケーブルで接続されていてもよく、当該ケーブルを介してスキャナ部60で撮像された画像データ等の各種データや、各種信号等の送受信がされてもよい。プローブ2と撮像ユニット3とを無線で接続することにより、ケーブルなどの制約を受けることがなくなるため、プローブ2の可搬性を高めるとともに、測定領域を拡張することができる。また、プローブ2と撮像ユニット3とを無線で接続することにより、高速化・大容量な通信が可能になるとともに、バッテリのような電力源を収容する必要がなく軽量化が可能となる。
【0094】
プローブ2は、モーションセンサ145を備えている。モーションセンサ145はプローブ2の加速度、角速度を検知するセンサで構成されており、検出した値はプローブ制御部142に出力されて各種演算処理に使用される。例えば、モーションセンサ145から出力される値を使用して、プローブ2の姿勢、即ち第1~第4マーカブロック21~24の姿勢の初期解を求めてマッチング精度を向上させるとともに、姿勢計算時の処理速度を向上させることができる。モーションセンサ145から出力される値を使用した処理は、撮像ユニット3や処理部4で実行されてもよい。
【0095】
プローブ2は、スキャナ光源制御部146と、スキャナ画像処理部147を備えている。スキャナ光源制御部146は、第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63を制御する部分である。プローブ2が通信制御部149によりトリガ信号を受信すると、スキャナ光源制御部146は、第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63を制御して第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63を点灯した状態にしてもよい。第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63は、スキャナ光源制御部146によって点灯した状態と消灯した状態とに切り替えられるようになっている。スキャナ光源制御部146は、プローブ制御部142によって制御される。また、スキャナ画像処理部147は、第1スキャナ撮像部64、第2スキャナ撮像部65及びテクスチャカメラ66を制御して所定のタイミングで撮像を実行させる。プローブ2が通信制御部149によりトリガ信号を受信すると、スキャナ画像処理部147は、第1スキャナ撮像部64、第2スキャナ撮像部65及びテクスチャカメラ66を制御して所定のタイミングで撮像を実行させてもよい。また、プローブ2は通信制御部149によりテクスチャ取得用のトリガ信号を受信すると、スキャナ画像処理部147はテクスチャカメラ66を制御して撮像を実行させてもよい。ここで、トリガ信号は、三次元形状測定用のトリガ信号とテクスチャ取得用のトリガ信号とを区別してもよく、一部または全部を共用してもよい。すなわち、スキャナ画像処理部147は、三次元形状測定用のトリガ信号を受信したことに応じて第1スキャナ撮像部64および第2スキャナ撮像部65を同期して制御し、テクスチャ取得用のトリガ信号を受信したことに応じてテクスチャカメラ66を制御して撮像を実行させてもよい。
【0096】
スキャナ画像処理部147には、第1スキャナ撮像部64、第2スキャナ撮像部65及びテクスチャカメラ66で撮像された画像が入力される。スキャナ画像処理部147では、入力された画像に対してエッジデータの抽出等、各種画像処理を実行する。
【0097】
このような構成により、第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63の点灯と、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65による撮像と、自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の点灯と、プローブ撮像用カメラ32によるプローブ2の自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の撮像と、可動ステージ31の発光体31bの点灯と、基準カメラ34による発光体31bの撮像とがトリガ信号を介して同期して実行されてもよい。
【0098】
プローブ2は、表示灯148及び通信制御部149を備えている。表示灯148は、プローブ2の動作状態を表示するものであり、プローブ制御部142によって制御される。通信制御部149は、例えば画像データ等の通信の実行処理を行う部分である。
【0099】
(三次元スキャナ1による測定)
次に、上述のように構成された三次元スキャナ1による測定対象物Wの三次元形状の測定手順について
図17に示すフローチャートに基づいて説明する。測定作業者は、プローブ2の把持部112を持ってスキャナ部60を測定対象物Wに向けてから、操作部114に含まれている測定開始ボタンを操作する。すると、ステップSA1で撮像ユニット3のトリガ生成部38がトリガ信号を発行する。また、トリガ生成部38によるトリガ信号の生成に応じて、トリガ管理部38aが当該トリガ信号に対応する識別情報を生成する。この識別情報は、トリガ信号が発行されたタイミングを識別するためのIDの役割をトリガ信号に対して果たす。
【0100】
撮像ユニット3が発行したトリガ信号は、撮像ユニット3の無線通信部36またはコネクタCONに接続される通信ケーブルを介してプローブ2に送信される。そして、プローブ2の無線通信部144または通信ケーブルを介して通信制御部149によりトリガ信号が受信される。プローブ2は通信制御部149によりトリガ信号を受信すると、プローブ2のトリガ管理部150により、トリガ信号に対応する識別情報を生成する。ステップSA2において、プローブ2のプローブ制御部142はマーカ点灯制御部141に発光指示を出力し、マーカ点灯制御部141が自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107を発光させる。ステップSA3では、プローブ2のプローブ制御部142がスキャナ光源制御部146に発光指示を出力し、スキャナ光源制御部146が第1スキャナ光源62または第2スキャナ光源63を発光させる。第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63のいずれを発光させるかは、事前の設定時に予め決められている。
【0101】
また、ステップSA4では、ステップSA3と同時に、プローブ2のプローブ制御部142がスキャナ画像処理部147に撮像指示を出力し、スキャナ画像処理部147が第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65に撮像を実行させる。ステップSA5では、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65の撮像により、輝線画像を取得する。輝度画像にはトリガIDが付与される。ステップSA6では、輝線画像をスキャナ画像処理部147に入力し、スキャナ画像処理部147が輝線画像からエッジデータを抽出する。エッジデータには識別情報であるトリガIDが付与されており、トリガIDが付与されたエッジデータは、プローブ2の無線通信部144を介して撮像ユニット3の無線通信部36で受信される。
【0102】
上記のような構成により、第1スキャナ光源62及び第2スキャナ光源63の点灯と、第1スキャナ撮像部64及び第2スキャナ撮像部65による撮像と、自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の点灯と、プローブ撮像用カメラ32によるプローブ2の自発光マーカの撮像と、可動ステージ31の発光体31bの点灯と、基準カメラ34による発光体31bの撮像とがトリガ信号を介して同期して実行される。
【0103】
一方、撮像ユニット3では、ステップSA1でトリガ信号を発行した後、ステップSA7に進んで本体制御部33がカメラ画像処理部35に撮像指示を出力し、カメラ画像処理部35がプローブ撮像用カメラ32に撮像を実行させる。このとき、第1マーカブロック21と第2マーカブロック22が上下方向に間隔をあけて並び、第3マーカブロック23と第4マーカブロック24が左右方向に間隔をあけて並び、かつ、第4マーカブロック24が第1マーカブロック21、第2マーカブロック22および第3マーカブロック23により規定される仮想平面Dから離間していて、第1~第4マーカブロック21~24の各々が、複数の方向に向けて発光する自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107を有しているので、プローブ2の向きや姿勢が様々に変化しても、測定に必要な数のマーカが撮像ユニット3のプローブ撮像用カメラ32に向くように配置される。したがって、ステップSA8では、プローブ撮像用カメラ32が、複数の自発光マーカを含むマーカ画像を取得することができる。また、プローブ撮像用カメラ32の撮像と、自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の発光とがトリガ信号に同期して実行されるため、自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の発光時間を短くすることができる。これにより自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の発光によりプローブ本体20の内部に発生する熱を抑制できる。なお、マーカ画像にはトリガIDが付与される。
【0104】
ここで、測定に必要な数のマーカについて説明する。プローブ2の向きや姿勢が変化したとしても、プローブ2の第1の方向に離間し、かつ、プローブ2の第2の方向にも離間したマーカがプローブ撮像用カメラ32により撮影されるようにプローブ2が配置されていてもよい。なお、第1の方向とは、上下方向、左右方向、前後方向のいずれかであり、第2の方向とは、第1の方向とは交差する方向であればよい。例えば、
図4に示す例では、第1のマーカブロック21と第2のマーカブロック22とで規定される軸から、第4のマーカブロック24がオフセットする様に配置されている。そのため、
図4に示すように、プローブ2が右側から撮像され、左側に存在するマーカユニット23がマーカユニット24に隠れていたとしても、第1の方向および第2の方向の双方に離間した複数のマーカを撮像できる。このように、第1の方向および第2の方向の双方に離間した複数のマーカを撮像することで、上下、左右、前後(奥行)方向の各々において、測定精度を高めることができる。
【0105】
ステップSA9では、撮像ユニット3のカメラ画像処理部35にマーカ画像を入力し、カメラ画像処理部35がマーカ画像座標を抽出し、また、ステップSA10では、マーカ外部パラメータを算出する。マーカ外部パラメータは、6軸のパラメータである。なお、ステップSA9で抽出されるマーカ外部座標およびステップSA10で算出されるマーカ外部パラメータには、識別情報であるトリガIDが付与されている。そして、ステップSA10では、プローブ2から送信されたエッジデータと、マーカ画像座標とのデータマッチングをトリガIDに基づいて実行する。データマッチングの詳細については後述する。
【0106】
ステップSA12では、ステップSA11で得られたデータを、通信部37を介して処理部4の通信部46に送信する。ステップSA13では、処理部4の制御部43が、撮像ユニット3から送信されたデータを処理する。ステップSA14では、制御部43が三次元点群化を実行する。これにより、測定対象物Wの三次元形状が得られる。
【0107】
本例では、スキャナ部60を挟むように第1マーカブロック21と第2マーカブロック22とが配置されるので、第1マーカブロック21と第2マーカブロック22の距離が十分に確保される。同様に、スキャナ部60を挟むように第3マーカブロック23と第4マーカブロック24とが配置されるので、第3マーカブロック23と第4マーカブロック24の距離も十分に確保される。よって、撮像ユニット3で撮像される自発光マーカ同士の距離が長くなり、測定精度が向上する。
【0108】
また、第1マーカブロック21の各々が有するマーカホルダ78は、第1マーカブロック21を支持する支持部61aよりも低い熱膨張率の材料で構成されているので、第1マーカブロック21の複数のマーカ71~77の位置関係が周囲の環境によらず一定に保たれ、よって、測定精度が向上する。第2~第4マーカブロック22~24についても同様である。つまり、第1~第4マーカブロック21~24間の位置関係のみ周囲の環境に応じて補正すれば高精度な測定が行える。
【0109】
(データマッチングの詳細)
図18は、データマッチングの処理手順の一例を示すフローチャートである。ステップSB1では、
図17に示すフローチャートのステップSA10で算出したマーカ外部パラメータデータを撮像ユニット3が取得する。また、ステップSB2では、
図17に示すフローチャートのステップSA6で抽出したエッジデータをプローブ2が取得し、撮像ユニット3に送信する。ステップSB3では、ステップSB1で取得したマーカ外部パラメータデータと、ステップSB2で取得したエッジデータを撮像ユニット3が一時保存する。
【0110】
ステップSB4では、予め付与されているトリガIDに基づいてマーカ外部パラメータデータとエッジデータのID照合を実行する。ステップSB5では、トリガIDが一致するか否かを判定する。トリガIDが一致する場合には、ステップSB6でマーカ外部パラメータデータとエッジデータとを紐づける。トリガIDが一致しない場合には、ステップSB7でマーカ外部パラメータデータとエッジデータとを廃棄する。ステップSB6の後、ステップSB8では処理部4へのデータ送信処理を実行する。ステップSB9では処理部4がデータを受信する。
【0111】
(温度補正の処理の詳細)
図19は、温度補正処理の手順を示すフローチャートである。三次元スキャナ1の製造時には、ステップSC1においてプローブ2にキャリブレーション値を記録し、ステップSC2においてプローブ2に基準温度を記録する。すなわち、原点と座標系は、設計上のマーカ座標重心に置き、キャリブレーションによりその座標系での三次元座標が各マーカに割り当てされるとともに、キャリブレーション時の温度が記録される。
【0112】
ユーザが三次元スキャナ1を起動させる時には、ステップSC3で撮像ユニット3がプローブ2からキャリブレーション値を読み出し、ステップSC4で撮像ユニット3がプローブ2から基準温度を読み出す。
【0113】
三次元スキャナ1の運用が開始されると、ステップSC5において、プローブ2に内蔵されている温度センサS1~S4(
図8に示す)からの出力値を読み込み、それを現在温度として撮像ユニット3に通知する。現在温度は、プローブ2の環境温度に相当する。撮像ユニット3は、ステップSC6でプローブ2から通知された現在温度を読み出す。ステップSC7では、撮像ユニット3が基準温度と現在温度の温度差分を算出する。ステップSC8では、環境温度とキャリブレーション値、熱膨張係数等に基づいて、支持部61a、61b、68、69の膨張/収縮量、即ち寸法変化量を計算する。ステップSC9では、撮像ユニット3が温度差分に基づいてキャリブレーション値を修正する。ステップSC10では、ステップSC9で修正したキャリブレーション値に基づいてマーカの位置姿勢を算出し、これが位置ずれ情報として利用される。ステップSC5~SC10は、所定の短いサイクルで繰り返し実行される。三次元スキャナ1の運用が停止されると、このフローが終了する。
【0114】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、スキャナ部60を挟んで上下方向に並ぶ第1マーカブロック21と第2マーカブロック22、及びスキャナ部60を挟んで左右方向に並ぶ第3マーカブロック23と第4マーカブロック24を備え、第4マーカブロック24が、第1~第3マーカブロック21~23により規定される仮想平面Dから離間しているので、プローブ2の向きや姿勢が様々に変化しても、測定に必要な数の自発光マーカを撮像ユニット3よって撮像することができるとともに、撮像されたマーカ同士の距離を十分に確保できる。これにより、測定精度を高めながら、プローブ2の取り回し自由度をより一層高めて測定作業性をさらに良好にできる。
【0115】
また、第1~第4マーカブロック21~24を金属製の支持部61a、61b、68、69で支持し、第1~第4マーカブロック21~24の各々が、複数の方向に各々面した各自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107を位置決め固定するとともに支持部61a、61b、68、69よりも低い熱膨張率の材料で構成されたマーカホルダ78を有しているので、コストや重量の問題を解決しつつ、複数の自発光マーカ71~77、81~87、91~97、101~107の位置関係を周囲の環境によらず一定に保てるようにして測定精度を向上させることができる。
【0116】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上説明したように、本発明は、各種測定対象物の三次元形状を測定する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0118】
1 三次元スキャナ
2 プローブ
3 撮像ユニット
4 処理部
21~24 第1~第4マーカブロック
60 スキャナ部
62、63 スキャナ光源
64、65 スキャナ撮像部
61 光学ベース
71~77 第1~第7自発光マーカ
71a 発光ダイオード(マーカ光源)
71d 拡散板
78 マーカホルダ
78a 取付面
78b 第1面
78c 第2面
110 外装部材
112 把持部