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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111982
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】手摺及び手摺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
E04F11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016768
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】591137950
【氏名又は名称】サンリット工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 修一
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301JJ06
2E301JJ09
2E301KK01
2E301LL02
2E301MM04
2E301PP00
(57)【要約】
【課題】押し出し成形を用いずに、より少ない材料で作製可能な手摺を提供する。
【解決手段】上弦材(23)及び支柱(6)を有する手摺(1)において、前記支柱(6)は2つの支柱部品(6a,6b)を組み合わせて構成され、それぞれの前記支柱部品(6a,6b)は、押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている、ことを特徴とする手摺(1)によって解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上弦材(23)及び支柱(6)を有する手摺(1)において、
前記支柱(6)は2つの支柱部品(6a,6b)を組み合わせて構成され、
それぞれの前記支柱部品(6a,6b)は、押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている、ことを特徴とする手摺(1)。
【請求項2】
前記支柱部品(6a,6b)は、前記上弦材(23)又は他の部品を前記支柱(6)に固定するためのタッピングホールとして機能する突部(11)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の手摺(1)。
【請求項3】
前記支柱部品(6a,6b)は略コ字状の横断面を有し、対向する2つのセクション(13,14)を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の手摺(1)。
【請求項4】
前記セクション(14)は、前記支柱部品(6a,6b)に形成されたV曲げ部(B)と段曲げ部(C)の間に位置する平坦な第1セクション(14a)と、前記段曲げ部(C)から前記支柱部品(6a,6b)の厚さ分だけ前記第1セクション(14a)より奥まった位置において前記第1セクション(14a)よりさらに前方に延びている第2セクション(14b)とを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の手摺(1)。
【請求項5】
前記セクション(14)は、前記段曲げ部(C)から前記支柱部品(6a,6b)の厚さ分だけ前記第1セクション(14a)より手前の位置において前記第1セクション(14a)よりさらに前方に延びている第3セクション(14c)を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の手摺(1)。
【請求項6】
前記セクション(13)は、曲げ加工部を有しない平坦セクション(13)を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の手摺(1)。
【請求項7】
2つの前記支柱部品(6a,6b)の組み合わせ状態において、前記平坦セクション(13)は前記第2セクション(14b)の上に重なり、前記第2セクション(14b)は2つの前記支柱部品(6a,6b)又は他部品を固定するための裏板として機能する、ことを特徴とする請求項6に記載の手摺(1)。
【請求項8】
前記突部(11)は、前記第2セクション(14b)の頂部において前記第1セクション(14a)と面一に形成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の手摺(1)。
【請求項9】
前記上弦材(23)又は他の部品を前記支柱(6)に固定するためのタッピングホールとして機能する第2の突部(12)が、前記突部(11)より前方に前記第2セクション(14b)から突出している、ことを特徴とする請求項8に記載の手摺(1)。
【請求項10】
前記第2セクション(14b)は、複数個所において、前記支柱部品(6a,6b)の長手方向に沿って間隔をおいて前記第1セクション(14a)から延びており、前記第2セクション(14b)と前記第2セクション(14b)の間には前記第3セクション(14c)が形成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の手摺(1)。
【請求項11】
2つの前記支柱部品(6a,6b)は同一形状を有する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の手摺(1)。
【請求項12】
上弦材(23)及び支柱(6)を有する手摺(1)の製造方法であって、
定尺板から、前記支柱(6)の構成部品である支柱部品(6a,6b)を形成するために必要な形状を有する板状材料を打ち抜き、
前記板状材料の厚さに相当する段差(s)が生じるように、前記板状材料の第2セクション(14b)を前記板状材料の内側に段曲げ加工し、
前記板状材料を折り曲げて、その横断面を略コ字状に加工し、
前記第2セクション(14b)に設けられた突部(11,12)を前記板状材料の内側にカールさせて、前記支柱部品(6a,6b)を作製し、
作製された2つの前記支柱部品(6a,6b)を組み合わせて前記支柱(6)を構成する、製造方法。
【請求項13】
上弦材(23)及び支柱(6)を有する手摺(1)の製造方法であって、
定尺板から、前記支柱(6)の構成部品である支柱部品(6a,6b)を形成するために必要な形状を有する板状材料を打ち抜き、
前記板状材料の厚さに相当する段差(s)が生じるように、前記板状材料の第2セクション(14b)を前記板状材料の内側に段曲げ加工し、
前記第2セクション(14b)に設けられた突部(11,12)を前記板状材料の内側にカールさせ、
前記板状材料を折り曲げて、その横断面を略コ字状に加工して、前記支柱部品(6a,6b)を作製し、
作製された2つの前記支柱部品(6a,6b)を組み合わせて前記支柱(6)を構成する、製造方法。
【請求項14】
前記段差(s)が生じるように、断面略コ字状に形成された前記板状材料の第3セクション(14c)を前記板状材料の外側に段曲げ加工し、
前記第3セクション(14c)の端部(18)を前記板状材料の外側にカールさせて、前記支柱部品(6a,6b)を作製する、ことを特徴とする請求項12又は13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺及び手摺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物のベランダや建造物の外部に設けられている階段及び廊下等には、人間やペット若しくは物品等の落下防止目的のため及び美観向上目的のために、従来から様々な手摺が設置されている。
【0003】
このような手摺を構成するアルミニウム製の手摺支柱、格子、ルーバーなどは大型の押し出し機による押し出し加工によって成形される。押し出し加工では、材料を成形したい形に合った金型に通過させることで製品が形作られるため、金型を各製品の形状・サイズなどに合わせて作ることが必要となる。したがって、例えばメーカーは製品に対応する数百種類もの金型を保有することになり、それら金型を保管するためのスペースも必要となる。また、メーカーは複数種類の形材の在庫を有することにもなる。
【0004】
また、押し出し加工により手摺支柱を成形する場合、上弦材、下弦材、笠木などを支柱にねじ留めするためのタッピングホールは、支柱の長手方向に沿って支柱の一端から他端まで形成されることになる(例えば、特許文献1)。しかしながら、ねじ留めに必要な部分はねじの長さに相当する部分だけであるから、タッピングホールとして使用しない部分は材料の無駄使いになり、また手摺重量の増加をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、押し出し成形を用いずに、より少ない材料で作製可能な手摺を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、上弦材及び支柱を有する手摺において、前記支柱は2つの支柱部品を組み合わせて構成され、それぞれの前記支柱部品は、押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている、ことを特徴とする手摺によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、押し出し成形を用いずに、より少ない材料で作製可能な手摺が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る手摺1の概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る支柱部品を示す概略構成図である。
図3】2つの支柱部品6a,6bを組み合わせて構成された支柱6の概略平面図である。
図4】支柱6の頂部部分の概略側面断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る支柱部品を示す概略構成図である。
図6】2つの支柱部品6a,6bを組み合わせて構成された支柱6の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る手摺1の概略構成図である。
図1において、手摺1は、支柱6、支柱と支柱の間に張り渡された上弦材(上胴縁)23、上弦材23の向かい側に取り付けられた下胴縁25、及び上弦材23と下胴縁25の間にこれらと平行に取り付けられた横桟24を有している。支柱6は2つの支柱部品6a,6bを組み合わせて構成され、それぞれの支柱部品6a,6bは、押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている。
【0010】
図中右側の支柱6は分解状態で示され、図中左側の支柱6は組立状態で示されている。図中左側の支柱6において、斜線部分は、通常外側から見えない支柱6の内側に形成されている部分を示し、これは、具体的には後述する裏板として機能する第2セクション14bである。
支柱6を構成する2つの支柱部品6a,6bは略コ字状の横断面を有し、これら支柱部品6a,6bを組み合わせると正方形の横断面を有する支柱6が形成される。組み合わされた支柱6は、ねじやリベットなどの固定手段16,17によってねじ留めされ又は固定手段16,17をかしめることで固定され、図中左側に示すように支柱6が形成される。組み合わせ状態において、支柱部品6aに形成されたねじ穴16aと支柱部品6bに形成されたねじ穴16bが重なり、そこに固定手段16が挿入可能である。また、組み合わせ状態において、支柱部品6aに形成されたねじ穴17aと支柱部品6bに形成されたねじ穴17bが重なり、そこに固定手段17が挿入可能である。ここで、固定手段16と固定手段17は同じ種類・形状を有してもよく、ねじ穴17aとねじ穴17bは同じ形状を有してもよい。
【0011】
1つの支柱6の頂部には、2つの上弦材23が、小ねじやタッピンねじなどの4つの固定手段21,22によって固定されている。支柱6の外側には、複数の第3セクション14cが形成されており、第3セクション14cはねじ収容部として機能する。第3セクション14cは支柱6のセクション13(図2)の表面に沿って延びている。それぞれの第3セクション14cは端部18を有しており、この端部18は後述するようにカーリング加工を施されることにより、他部品を支柱6に固定するためのタッピングホールとして機能する。上弦材23に対向する支柱6の基部では、下弦材である下胴縁25が、ねじ27を下胴縁25及び端部18に螺合することで支柱6に固定されている。上弦材23と下胴縁25の間には、複数の(本実施形態では2つの)横桟24が、ねじ27を横桟24及び端部18に挿入することで支柱6に固定されている。
【0012】
なお図1の実施形態では、第2セクション14bと第3セクション14cが交互に形成されているが、これらは製品形状や必要とされる強度などに応じて変更され得る。例えば、2つの第2セクション14bの間の第3セクション14cが任意の位置において省略されたり、任意の位置において2つの第2セクション14bが連続的に形成されたりしてもよい。また例えば、縦桟を有する手摺の場合、第3セクション14cが省略され、第2セクション14bのみが形成されてもよい。また、第2セクション14bが省略され、第3セクション14cのみが形成されてもよい。
これに対応して、ねじやリベットなどの固定手段16,17も、不必要な箇所では省略することができる。
【0013】
図2は、本発明の第1実施形態に係る支柱部品を示す概略構成図である。図2(a)は支柱部品の概略平面図、図2(b)は支柱部品の概略正面図である。
上述したように本実施形態における支柱6は、2つの支柱部品6a,6bから成る。支柱部品6a,6bは、押し出し機により作製された押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている。板状材料は、圧延材料であって、例えばアルミニウム板やステンレス鋼板である。2つの支柱部品6a,6bを組み合わせることで、支柱6を構成する角柱形状になる。
【0014】
支柱6は例えば以下のようにして製造する。
まず、定尺板から、支柱6の構成部品である支柱部品6a,6bを形成するために必要な形状を有する1枚の板状材料(ブランク)を打ち抜く。あるいは、ブランクをコイル状に巻かれた圧延材料から打ち抜いてもよい。
図2(a)を参照して、段曲げ部Cにおいて板状材料の厚さに相当する段差sが形成されるようにタレットパンチプレスなどのプレス機械を用いて、1枚の板状材料の第2セクション14bを板状材料の内側に段曲げ加工し、第3セクション14cを板状材料の外側に段曲げ加工する。次いで、板状材料をV曲げ部A及びBにおいてベンダー(曲げ加工機械)又はプレス機械を用いたV曲げ加工により90°に折り曲げ、その横断面を略コ字状に加工する。次いで、段曲げ部Cより自由端側に位置する第2セクション14bの突部11,12に、ベンダー(曲げ加工機械)又はプレス機械を用いてカーリング加工を施し、突部11,12を板状材料の内側にカールさせる。同様に、段曲げ部Cより自由端側に位置する第3セクション14cの端部18に、ベンダー(曲げ加工機械)又はプレス機械を用いてカーリング加工を施し、端部18を板状材料の外側にカールさせる。これにより、支柱部品6a,6bを作製する。
【0015】
しかしながら、これに代えて、段曲げ加工後にカーリング加工を行い、次にV曲げ加工を行ってもよい。
【0016】
ここで、突部11,12は、上弦材23(図4参照)などの他部品を支柱6に固定するためのタッピングホールとして機能し、端部18は、横桟24(図1参照)などの他部品を支柱6に固定するためのタッピングホールとして機能するため、突部11,12及び端部18は、ねじやボルトを挿入するために必要な内径を有するようにカーリングされる。タッピングホールは必要な箇所でのみ部分的に形成され得、タッピングホールの内径はねじなどに合わせてカーリング加工によって任意に変更することができる。また、支柱途中に設ける突部11は、第2セクション14bより厚めの裏板が必要な場合に、支柱6にブラケットなどの他部品をビス留めするために利用することができる。
【0017】
同様の工程によって、もう1枚の板状材料から支柱部品6a,6bを作製する。
同一形状を有する2つの支柱部品6a,6bを互いに向かい合わせて組み立て(図3参照)、ねじなどの固定手段で両者を固定し、支柱6を作製する。
【0018】
図2(a)において、支柱部品6a,6bは、略コ字状の横断面を有し、対向する2つのセクション13,14を有する。セクション13は、曲げ加工部などを有しない平坦セクション13である。しかしながら、セクション13は、第2セクション14bに形成されたねじ穴16b(図2(b)参照)に重なり合うねじ穴(不図示)を有する。
【0019】
また図2(b)において、セクション14は、支柱部品6a,6bに形成されたV曲げ部Bと段曲げ部Cの間に位置する平坦な第1セクション14aと、段曲げ部Cを境に支柱部品6a,6bの厚さ分だけこの第1セクション14aより奥まった位置において第1セクション14aよりさらに前方に延びている第2セクション14bと、段曲げ部Cを境に支柱部品6a,6bの厚さ分だけこの第1セクション14aより手前の位置において第1セクション14aよりさらに前方に延びている第3セクション14cを有する。
【0020】
図2(b)から分かるように、突部11は支柱部品6a,6bの第2セクション14bの頂部において第1セクション14aと面一に形成されており、第2の突部である突部12は、突部11より前方に(図中右方向に)第2セクション14bから突出していて、突部11より下に形成されている。タッピングホールとして機能する突部11と突部12が横方向にずれていることで、突部11と突部12に上からねじなどの固定手段を挿入することができる。タッピングホールとして機能する端部18は、突部11より前方に(図中右方向に)突出していて、突部12と同じ垂直方向位置にある。
【0021】
第2セクション14bは、複数個所において、支柱部品6a,6bの長手方向に沿って間隔をおいて第1セクション14aから延びており、第2セクション14bと第2セクション14bの間には第3セクション14cが形成されており、第2セクション14bと第3セクション14cの間には切り欠き部14dが形成されている。第2セクション14bにはねじ穴16bが形成されている。2つの支柱部品6a,6bを組み合わせてからねじ穴16bに固定手段を挿入することで、2つの支柱部品6a,6bが固定され、支柱6として機能する。固定手段として、ボルトとナット、タッピンねじ、ビスなどを使用することができる。
【0022】
図3は、2つの支柱部品6a,6bを組み合わせて構成された支柱6の概略平面図である。
図3から分かるように、第2セクション14bは、段曲げ加工によって支柱部品6a,6bの厚さ分だけ第1セクション14aより奥まった位置にあり、第3セクション14cは、段曲げ加工によって支柱部品6a,6bの厚さ分だけ第1セクション14aの手前の位置にある。したがって、2つの支柱部品6a,6bを組み合わせると、平坦セクション13は第2セクション14bの上に重なり、第2セクション14bは2つの支柱部品6a,6bを固定するための裏板として機能する。支柱部品6a,6bを平板から加工する場合、支柱部品6a,6bの肉厚は平板の肉厚に限定されてしまうが、本実施形態によれば必要な箇所において第2セクション14bが裏板として機能し、肉厚を2倍にすることができる。第2セクション14bの部分では支柱6の表面は段差のない滑らかで平坦な表面を有するが、第3セクション14cの部分は支柱6の表面から外側に突出している。本発明の実施形態では、支柱6を二部品に分割しているが、段曲げ部Cによって支柱6の形状(本実施形態では正四角柱)を実現することができる。ゆえに、2つの支柱部品6a,6bから成る支柱6の外観は看者に何らの違和感を与えず、支柱6の美観が損なわれることはない。
【0023】
また、支柱6を構成したときに支柱6の内部に位置し、外部から見えない第2セクション14bは、2つの支柱部品6a,6b又は他部品(例えばガラス用の縦枠)を固定するための裏板として機能するため、付加的な裏板を支柱6の内面に追加する必要が無い。さらに、第2セクション14bは、支柱部品6a,6bの分割面である第1セクション14aに、ビス固定のために必要な縦方向の任意の位置に設けることができる。このために、所望の位置に第2セクション14bが形成されるように、最初に定尺板から板状材料を打ち抜くなどして準備すればよい。
【0024】
支柱6を構成する2つの支柱部品6a,6bは同一形状を有するため、異なる形状・寸法の支柱部品6a,6bを作成する必要が無い。ゆえに支柱部品6a,6bの加工工程が単純化されることから、加工ミスが生じにくく、歩留まり率が高まる。
【0025】
また、支柱6の対向する2つの内面には、それぞれ2つのタッピングホールが形成されており、計4つのタッピングホールが形成されている。よって、支柱6とその上に取り付けられる上弦材23(図4参照)が、4か所の固定手段によって強固に締結される。しかしながら、例えば支柱6の対向する2つの内面に、それぞれ1つのタッピングホールを形成し、計2つのタッピングホールを形成してもよい。
【0026】
図2(b)の実施形態では、第2セクション14bは、2つの支柱部品6a,6bから成る支柱6の剛性を維持するのに必要な縦方向長さを有しつつ、縦方向に一定間隔で形成されている。また、縦方向に一定間隔で形成された第2セクション14bと第2セクション14bの間には、切り欠き部14dと第3セクション14cが形成されている。よって、切り欠き部14dが形成されることから、支柱部品6a,6bに必要な材料を削減することができる。しかしながら、必要とされる支柱部品6a,6bの縦方向長さによっては、あるいはより強固な支柱6を形成するために、切り欠き部14dを省いて第2セクション14bと第3セクション14cが支柱部品6a,6bの縦方向全長にわたって連続的に形成されてもよい。
【0027】
また、図2(b)に示す支柱部品6a,6bにおいて、最下位置にある第2セクション14bにもタッピングホールとして機能する突部11と突部12が形成されてもよい。
【0028】
図3の実施形態では、支柱6の断面は正方形であり、その一辺は例えば50mmである。しかしながら、一辺の長さは製品サイズに依存して所望に変更することができる。また、支柱6の断面は正方形に限らず、長方形、平行四辺形、ひし形などであってもよい。
【0029】
図4は、支柱6の頂部部分の概略側面断面図である。
上弦材23が複数の支柱6(不図示)の頂部に架け渡されている。支柱6と上弦材23は、固定手段21,22をタッピングホールとして機能する突部11,12に螺合することで固定されている。上弦材23の上には笠木(不図示)が設置され得る。
【0030】
従来の押し出し加工により手摺支柱を成形する場合、押し出し加工の工法上、支柱の肉厚をある程度以上に薄くすることはできなかったが、本発明によれば支柱を圧延材料から作成するため、強度維持に必要な肉厚を確保する必要があるものの、実現可能な圧延材料の肉厚までその肉厚を薄くすることができる。
【0031】
図1において、上弦材23、横桟24及び下胴縁25も、押し出し機により作製された押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている。具体的には、1枚の板状材料をベンダー(曲げ加工機械)によるV曲げ加工により90°に折り曲げ、その横断面を略コ字状に加工することで、図1に示す上弦材23、横桟24及び下胴縁25が得られる。
【0032】
図5は、本発明の第2実施形態に係る支柱部品を示す概略構成図である。図5(a)は支柱部品の概略平面図、図5(b)は支柱部品の概略正面図である。図6は、2つの支柱部品6a,6bを組み合わせて構成された支柱6の概略平面図である。
第1実施形態と同様に、本実施形態における支柱6も、2つの支柱部品6a,6bから成る。支柱部品6a,6bは、押し出し機により作製された押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている。板状材料は、圧延材料であって、例えばアルミニウム板やステンレス鋼板である。2つの支柱部品6a,6bを組み合わせることで、支柱6を構成する角柱形状になる。
【0033】
第1実施形態とは異なり、タッピングホールとして機能する第3セクション14cの端部18が、第2セクション14bの突部11,12の間に位置しており(図5(a))、また第3セクション14cの長手方向の約半分の長さにわたって形成されている(図5(b))。端部18は、ベンダー又はプレス機械によるV曲げ加工により90°に折り曲げられ、さらにベンダー又はプレス機械によりカーリング加工されている(図5(a))。したがって、2つの支柱部品6a,6bを互いに向かい合わせて組み立て、支柱6を作製すると、端部18は、支柱6の壁面の略中央に位置し、支柱6の壁面からより外側に突出する(図6)。このため、横桟24などを端部18に固定する際、横桟24などの重量をしっかり受け止め、より安定的に支えることができる。
【0034】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(態様1)
上弦材(23)及び支柱(6)を有する手摺(1)において、
前記支柱(6)は2つの支柱部品(6a,6b)を組み合わせて構成され、
それぞれの前記支柱部品(6a,6b)は、押し出し成形品ではなく、1枚の板状材料から作製されている、ことを特徴とする手摺(1)。
(態様2)
前記支柱部品(6a,6b)は、前記上弦材(23)又は他の部品を前記支柱(6)に固定するためのタッピングホールとして機能する突部(11)を有する、ことを特徴とする態様1に記載の手摺(1)。
(態様3)
前記支柱部品(6a,6b)は略コ字状の横断面を有し、対向する2つのセクション(13,14)を有する、ことを特徴とする態様2に記載の手摺(1)。
(態様4)
前記セクション(14)は、前記支柱部品(6a,6b)に形成されたV曲げ部(B)と段曲げ部(C)の間に位置する平坦な第1セクション(14a)と、前記段曲げ部(C)から前記支柱部品(6a,6b)の厚さ分だけ前記第1セクション(14a)より奥まった位置において前記第1セクション(14a)よりさらに前方に延びている第2セクション(14b)とを含む、ことを特徴とする態様3に記載の手摺(1)。
(態様5)
前記セクション(14)は、前記段曲げ部(C)から前記支柱部品(6a,6b)の厚さ分だけ前記第1セクション(14a)より手前の位置において前記第1セクション(14a)よりさらに前方に延びている第3セクション(14c)を含む、ことを特徴とする態様4に記載の手摺(1)。
(態様6)
前記セクション(13)は、曲げ加工部を有しない平坦セクション(13)を含む、ことを特徴とする態様3に記載の手摺(1)。
(態様7)
2つの前記支柱部品(6a,6b)の組み合わせ状態において、前記平坦セクション(13)は前記第2セクション(14b)の上に重なり、前記第2セクション(14b)は2つの前記支柱部品(6a,6b)又は他部品を固定するための裏板として機能する、ことを特徴とする態様6に記載の手摺(1)。
(態様8)
前記突部(11)は、前記第2セクション(14b)の頂部において前記第1セクション(14a)と面一に形成されている、ことを特徴とする態様4に記載の手摺(1)。
(態様9)
前記上弦材(23)又は他の部品を前記支柱(6)に固定するためのタッピングホールとして機能する第2の突部(12)が、前記突部(11)より前方に前記第2セクション(14b)から突出している、ことを特徴とする態様8に記載の手摺(1)。
(態様10)
前記第2セクション(14b)は、複数個所において、前記支柱部品(6a,6b)の長手方向に沿って間隔をおいて前記第1セクション(14a)から延びており、前記第2セクション(14b)と前記第2セクション(14b)の間には前記第3セクション(14c)が形成されている、ことを特徴とする態様5に記載の手摺(1)。
(態様11)
2つの前記支柱部品(6a,6b)は同一形状を有する、ことを特徴とする態様1~10のいずれか一つに記載の手摺(1)。
(態様12)
上弦材(23)及び支柱(6)を有する手摺(1)の製造方法であって、
定尺板から、前記支柱(6)の構成部品である支柱部品(6a,6b)を形成するために必要な形状を有する板状材料を打ち抜き、
前記板状材料の厚さに相当する段差(s)が生じるように、前記板状材料の第2セクション(14b)を前記板状材料の内側に段曲げ加工し、
前記板状材料を折り曲げて、その横断面を略コ字状に加工し、
前記第2セクション(14b)に設けられた突部(11,12)を前記板状材料の内側にカールさせて、前記支柱部品(6a,6b)を作製し、
作製された2つの前記支柱部品(6a,6b)を組み合わせて前記支柱(6)を構成する、製造方法。
(態様13)
上弦材(23)及び支柱(6)を有する手摺(1)の製造方法であって、
定尺板から、前記支柱(6)の構成部品である支柱部品(6a,6b)を形成するために必要な形状を有する板状材料を打ち抜き、
前記板状材料の厚さに相当する段差(s)が生じるように、前記板状材料の第2セクション(14b)を前記板状材料の内側に段曲げ加工し、
前記第2セクション(14b)に設けられた突部(11,12)を前記板状材料の内側にカールさせ、
前記板状材料を折り曲げて、その横断面を略コ字状に加工して、前記支柱部品(6a,6b)を作製し、
作製された2つの前記支柱部品(6a,6b)を組み合わせて前記支柱(6)を構成する、製造方法。
(態様14)
前記段差(s)が生じるように、断面略コ字状に形成された前記板状材料の第3セクション(14c)を前記板状材料の外側に段曲げ加工し、
前記第3セクション(14c)の端部(18)を前記板状材料の外側にカールさせて、前記支柱部品(6a,6b)を作製する、ことを特徴とする態様12又は13に記載の製造方法。
【符号の説明】
【0035】
1 手摺
6 支柱
6a,6b 支柱部品
11 突部
12 突部(第2の突部)
13 セクション、平坦セクション
14 セクション
14a 第1セクション
14b 第2セクション
14c 第3セクション
23 上弦材
B V曲げ部
C 段曲げ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2007-217970号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6