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特開2024-111984超音波時間計測装置及び超音波時間計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111984
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】超音波時間計測装置及び超音波時間計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20240813BHJP
【FI】
G01F1/66 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016771
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 晃
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】増永 靖行
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和裕
(72)【発明者】
【氏名】木代 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】金井 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】山下(宮本) 汐里
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA08
2F035DA16
(57)【要約】
【課題】超音波の伝搬時間を精度よく計測する。
【解決手段】送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200に送信される超音波の伝搬時間を計測する超音波流量計100は、送信モードの超音波センサ200から超音波を繰り返し送信させる送信部130と、送信モードの超音波センサ200から送信された超音波を受信モードの超音波センサ200が受信したことを検出する受信部150と、受信モードの超音波センサ200により繰り返し受信される超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測する時間計測部170と、時間計測部170により計測された経過時間に基づいて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を算出する流量算出部180と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1センサから第2センサに送信される測定波の伝搬時間を計測する超音波時間計測装置において、
前記第1センサから前記測定波を繰り返し送信させる送信回路と、
前記第1センサから送信された前記測定波を前記第2センサが受信したことを検出する受信回路と、
前記第2センサにより繰り返し受信される前記測定波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測する時間計測部と、
前記時間計測部により計測された経過時間に基づいて、前記第1センサから前記第2センサまでの前記測定波の伝搬時間を算出する算出部と、
を備える、
超音波時間計測装置。
【請求項2】
前記第1センサから繰り返し送信される前記測定波の送信回数は、N回(Nは2以上の整数)であり、
前記時間計測部は、
前記第1センサから繰り返し送信される前記測定波のうち、1番目に送信された前記測定波の送信時刻を前記基準時刻とし、2番目以降に送信された前記測定波の送信時刻までの前記基準時刻からの経過時間を計測し、
N番目に送信された前記測定波の受信時刻までの前記基準時刻からの経過時間を計測した後に、1番目からN番目に送信された前記測定波の各々の受信時刻までの前記基準時刻からの経過時間、及び、2番目からN番目に送信された前記測定波の各々の送信時刻までの前記基準時刻からの経過時間を示す時間情報を、前記算出部に出力する、
請求項1に記載の超音波時間計測装置。
【請求項3】
前記第1センサから繰り返し送信される前記測定波の送信回数は、N回(Nは2以上の整数)であり、
前記送信回路は、
所定の周期を有する送信クロックに同期して、前記第1センサから前記測定波を繰り返し送信させ、
前記時間計測部は、
前記第1センサから繰り返し送信される前記測定波のうち、1番目に送信された前記測定波の送信時刻を前記基準時刻とし、
N番目に送信された前記測定波の受信時刻までの前記基準時刻からの経過時間を計測した後に、1番目からN番目に送信された前記測定波の各々の受信時刻までの前記基準時刻からの経過時間を示す時間情報を、前記算出部に出力し、
前記算出部は、
前記所定の周期及び前記時間計測部により計測された経過時間に基づいて、前記第1センサから前記第2センサまでの前記測定波の伝搬時間を算出する、
請求項1に記載の超音波時間計測装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記時間計測部により計測された経過時間に基づいて、前記第1センサから繰り返し送信される前記測定波の各々の伝搬時間を算出し、前記時間計測部により計測された経過時間に基づいて算出した複数の伝搬時間のうち所定の時間範囲内の伝搬時間を用いて、前記第1センサから前記第2センサまでの前記測定波の伝搬時間を特定する、
請求項1に記載の超音波時間計測装置。
【請求項5】
前記第1センサから繰り返し送信される前記測定波の送信回数を可変に設定する設定部をさらに備え、
前記算出部は、
前記第1センサから送信され、流体を伝搬して前記第2センサに受信された前記測定波の伝搬時間に基づいて、前記流体の流速を算出し、
前記設定部は、
前記算出部により算出された前記流体の流速に基づいて、前記測定波の送信回数を可変に設定する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超音波時間計測装置。
【請求項6】
前記設定部は、
前記算出部により算出された前記流体の流速が遅い場合、前記流体の流速が早い場合に比べて、繰り返し送信される前記測定波の送信回数を増加させる、
請求項5に記載の超音波時間計測装置。
【請求項7】
第1センサから第2センサに送信される測定波の伝搬時間を計測する超音波時間計測方法において、
前記第1センサから前記測定波を繰り返し送信させ、
前記第1センサから送信された前記測定波を前記第2センサが受信したことを検出し、
前記第2センサにより繰り返し受信される前記測定波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測し、
計測された経過時間に基づいて、前記第1センサから前記第2センサまでの前記測定波の伝搬時間を算出する、
超音波時間計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波時間計測装置及び超音波時間計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を利用して流体の流速等を計測する超音波流速測定装置及び超音波流量計等の計測装置が知られている。例えば、特許文献1には、流体の流れに対して順方向に送信された超音波の伝搬時間と、流体の流れに対して逆方向に送信された超音波の伝搬時間との差に基づいて、流体の流速を算出する方法が開示されている。流体の流れに対して順方向に送信された超音波の伝搬時間は、例えば、流体の流れに対して上流に配置された第1センサから送信された超音波が下流に配置された第2センサに受信されるまでの伝搬時間である。また、流体の流れに対して逆方向に送信された超音波の伝搬時間は、例えば、第2センサから送信された超音波が第1センサに受信されるまでの伝搬時間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-338123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体の流速を計測する計測装置では、超音波の伝搬時間を精度よく計測することが求められる。以上の事情を考慮して、本発明のひとつの態様は、超音波の伝搬時間を精度よく計測することを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好適な態様に係る超音波時間計測装置は、第1センサから第2センサに送信される測定波の伝搬時間を計測する超音波時間計測装置において、前記第1センサから前記測定波を繰り返し送信させる送信回路と、前記第1センサから送信された前記測定波を前記第2センサが受信したことを検出する受信回路と、前記第2センサにより繰り返し受信される前記測定波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測する時間計測部と、前記時間計測部により計測された経過時間に基づいて、前記第1センサから前記第2センサまでの前記測定波の伝搬時間を算出する算出部と、を備える。
【0006】
本発明の好適な態様に係る超音波時間計測方法は、第1センサから第2センサに送信される測定波の伝搬時間を計測する超音波時間計測方法において、前記第1センサから前記測定波を繰り返し送信させ、前記第1センサから送信された前記測定波を前記第2センサが受信したことを検出し、前記第2センサにより繰り返し受信される前記測定波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測し、計測された経過時間に基づいて、前記第1センサから前記第2センサまでの前記測定波の伝搬時間を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る超音波流量計を含む計測システムの一例を説明するための説明図である。
図2図1に示した計測システムの各種信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図3図1に示した計測システムの対比例に係る各種信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図4】第2実施形態に係る超音波流量計を含む計測システムの一例を説明するための説明図である。
図5図4に示した計測システムの各種信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
A.実施形態
以下、本発明の実施形態を説明する。先ず、図1を参照しながら、実施形態に係る計測システム10の概要の一例について説明する。
【0010】
A1:第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る超音波流量計100を含む計測システム10の一例を説明するための説明図である。
【0011】
計測システム10は、例えば、配管PL内の流体FLの流量を、超音波を用いて計測するシステムである。例えば、計測システム10は、配管PL内の流体FLの流量を計測する超音波流量計100と、互いに対となる2つの超音波センサ200(200a及び200b)とを有する。超音波流量計100は、「超音波時間計測装置」の一例であり、2つの超音波センサ200は、「第1センサ」及び「第2センサ」の一例である。また、超音波は、「測定波」の一例である。
【0012】
超音波センサ200a及び200bの各々は、超音波の送受信が可能な超音波振動子(図示せず)を含む。超音波センサ200a及び200bは、例えば、超音波センサ200a及び200bの一方から他方に送信される超音波の経路が配管PLの中心軸CL付近を通過するように、配管PLの外面OF(OFa及びOFb)に配置されることが好ましい。より好ましくは、超音波センサ200a及び200bは、超音波センサ200a及び200bの一方から他方に送信される超音波の経路が配管PLの中心軸CLと交差するように、配管PLの外面OFに配置される。図1に示す例では、配管PLの外面OFのうち、接平面が互いに平行な外面OFa及びOFbに、超音波センサ200a及び200bがそれぞれ配置される。
【0013】
さらに、図1に示す例では、超音波センサ200a及び200bは、流体FLの流れに対して上流及び下流にそれぞれ配置される。図1のZ方向は、流体FLが流れる方向を示す。また、図1に示す例では、超音波センサ200a及び200bの各々は、超音波センサ200a及び200bの一方から他方に送信される超音波の経路が配管PLの外面OFa及びOFbに対して傾斜するように、外面OFa及びOFbにそれぞれ取り付けられる。このため、超音波センサ200a又は200bで発生した超音波は、配管PLの外面OFに対する超音波センサ200の傾斜に応じた角度で、配管PL及び流体FL内を伝搬する。なお、超音波センサ200a及び200bは、後述する超音波流量計100に含まれる切替部140により、超音波を送信する超音波センサ200と超音波を受信する超音波センサ200とに切り替えられる。
【0014】
超音波流量計100は、例えば、超音波センサ200aから超音波センサ200bに送信される超音波の伝搬時間、及び、超音波センサ200bから超音波センサ200aに送信される超音波の伝搬時間を計測する。そして、超音波流量計100は、計測した超音波の伝搬時間等に基づいて、配管PL内の流体FLの流量を算出する。本実施形態では、超音波の伝搬時間を計測する方法として、超音波センサ200a及び200bの一方から他方への超音波の送信を複数回繰り返す方法(所謂、シングアラウンド法)が用いられる場合を想定する。また、本実施形態では、超音波センサ200a及び200bの一方から他方に繰り返し送信される超音波の送信回数(送信の繰り返し数)が、N回(Nは2以上の整数)である場合を想定する。このように、本実施形態では、例えば、N回送信された超音波の伝搬時間の合計を値Nで除算した値を超音波の伝搬時間の計測結果とすることにより、計測結果として得られる超音波の伝搬時間の分解能を向上することができる。
【0015】
例えば、超音波流量計100は、制御部120、送信部130、切替部140、受信部150、計測信号出力回路160、時間計測部170、及び、流量算出部180を有する。送信部130は、「送信回路」の一例であり、受信部150は、「受信回路」の一例である。また、流量算出部180は、「算出部」の一例である。
【0016】
制御部120は、超音波流量計100の各要素を制御する。制御部120は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよい。あるいは、制御部120は、超音波流量計100の各要素を制御するプロセッサであってもよい。具体的には、制御部120は、例えば、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)を含んで構成されてもよい。この場合、制御部120は、例えば、図示しない記憶装置から読み出した制御プログラムを実行することにより、超音波流量計100の各要素を制御する機能ブロックとして機能する。
【0017】
また、例えば、制御部120が複数のCPUを含んで構成される場合、制御部120の機能の一部又は全部は、これら複数のCPUが制御プログラム等のプログラムに従って協働して動作することで実現されてもよい。また、制御部120は、1又は複数のCPUと、GPU、DSP、又は、FPGA等のハードウェアとを含んで構成されるものであってもよい。この場合、制御部120の機能の一部又は全部は、DSP等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0018】
制御部120は、例えば、超音波を送信する超音波センサ200と超音波を受信する超音波センサ200とを切り替える切替信号SWsigを生成し、生成した切替信号SWsigを切替部140に出力する。すなわち、制御部120は、流体FLの流れに対して上流から下流に伝搬する超音波の伝搬時間の計測と、流体FLの流れに対して下流から上流に伝搬する超音波の伝搬時間の計測との切り替えを制御する。以下では、流体FLの流れに対して上流から下流に向かう方向は、流体FLの流れに対して順方向とも称され、流体FLの流れに対して下流から上流に向かう方向は、流体FLの流れに対して逆方向とも称される。
【0019】
また、制御部120は、繰り返し送信される超音波のうちの1番目に送信される超音波の送信タイミングを規定する第1送信タイミング信号FSTsigを生成し、生成した第1送信タイミング信号FSTsigを送信部130及び時間計測部170に出力する。超音波の送信タイミングは、超音波の送信時刻に対応する。
【0020】
送信部130は、超音波センサ200から超音波を繰り返し送信させる。例えば、送信部130は、制御部120からの指示に応じて超音波センサ200a又は200bを駆動することで、配管PL内の流体FLに超音波を送信する。具体的には、送信部130は、超音波センサ200を駆動するための送信パルス信号SPsigを、切替部140を介して超音波センサ200a又は200bに送信する。
【0021】
例えば、送信部130は、タイミング制御回路132、タイミング信号出力回路134及びパルス送信回路136を有する。
【0022】
タイミング制御回路132は、例えば、図示しない遅延回路を有する。例えば、タイミング制御回路132は、超音波センサ200a又は200bが超音波を受信したことを示す受信検出信号RDsigを受信部150から受け、受信検出信号RDsigを遅延させる。そして、タイミング制御回路132は、繰り返し送信される超音波のうちの2番目以降に送信される超音波の送信タイミングを規定する後続送信タイミング信号SSTsigを、受信検出信号RDsigを遅延させた信号に基づいて生成する。後続送信タイミング信号SSTsigは、タイミング制御回路132からタイミング信号出力回路134及び計測信号出力回路160に出力される。
【0023】
タイミング信号出力回路134は、第1送信タイミング信号FSTsigを制御部120から受け、後続送信タイミング信号SSTsigをタイミング制御回路132から受ける。そして、タイミング信号出力回路134は、繰り返し送信される超音波の各々の送信タイミングを規定する送信タイミング信号STsigを、第1送信タイミング信号FSTsig及び後続送信タイミング信号SSTsigに基づいて生成する。送信タイミング信号STsigは、タイミング信号出力回路134からパルス送信回路136に出力される。
【0024】
タイミング信号出力回路134の構成は特に限定されないが、例えば、タイミング信号出力回路134は、論理和回路であってもよい。この場合、第1送信タイミング信号FSTsigと後続送信タイミング信号SSTsigとの論理和結果が送信タイミング信号STsigに対応する。また、例えば、タイミング信号出力回路134は、第1送信タイミング信号FSTsig及び後続送信タイミング信号SSTsigの一方を選択し、選択した信号を送信タイミング信号STsigとしてパルス送信回路136に出力する選択回路であってもよい。この場合、第1送信タイミング信号FSTsigが送信タイミング信号STsigとして選択された後は、後続送信タイミング信号SSTsigが送信タイミング信号STsigとして選択される。
【0025】
パルス送信回路136は、例えば、送信タイミング信号STsigにより示される超音波の送信タイミングに基づいて、超音波センサ200を駆動するための送信パルス信号SPsigを、切替部140を介して超音波センサ200a又は200bに送信する。本実施形態では、超音波の送信タイミングが送信タイミング信号STsigにより繰り返し示されるため、パルス送信回路136は、送信パルス信号SPsigを超音波センサ200a又は200bに繰り返し送信する。これにより、超音波センサ200a及び200bの一方から超音波が繰り返し送信される。
【0026】
なお、超音波センサ200a及び200bの一方から繰り返し送信された超音波は、超音波センサ200a及び200bの他方により受信される。そして、超音波センサ200a又は200bが受信した超音波に対応する受信信号Rsig0が、切替部140を介して、後述する増幅回路152により受信される。受信信号Rsig0は、超音波センサ200に到達した超音波が超音波センサ200(より詳細には、超音波センサ200に含まれる図示しない超音波振動子)により電気信号に変換された信号である。
【0027】
切替部140は、制御部120から受ける切替信号SWsigに基づいて、超音波を送信する超音波センサ200と超音波を受信する超音波センサ200とを切り替える。例えば、切替部140は、スイッチ142及び144を有する。
【0028】
スイッチ142は、切替信号SWsigに基づいて、パルス送信回路136を超音波センサ200a及び200bの一方に接続する。すなわち、スイッチ142は、パルス送信回路136から出力される送信パルス信号SPsigの出力先を、切替信号SWsigに基づいて、超音波センサ200a及び200bのいずれかに切り替える。
【0029】
スイッチ144は、切替信号SWsigに基づいて、増幅回路152を超音波センサ200a及び200bの一方に接続する。すなわち、スイッチ144は、増幅回路152が受信する受信信号Rsig0の供給元を、切替信号SWsigに基づいて、超音波センサ200a及び200bのいずれかに切り替える。なお、スイッチ142及び144は、超音波センサ200a及び200bの一方とパルス送信回路136とが接続され、超音波センサ200a及び200bの他方と増幅回路152とが接続されるように制御される。
【0030】
このように、本実施形態では、切替部140は、切替信号SWsigに基づいて、超音波センサ200a及び200bによる超音波の送信及び受信の関係を切り替える。以下では、超音波センサ200a及び200bのうち、スイッチ142を介してパルス送信回路136に接続された超音波センサ200は、送信モードの超音波センサ200とも称される。また、以下では、超音波センサ200a及び200bのうち、スイッチ144を介して増幅回路152に接続された超音波センサ200は、受信モードの超音波センサ200とも称される。送信モードの超音波センサ200は、「第1センサ」の一例であり、受信モードの超音波センサ200は、「第2センサ」の一例である。
【0031】
受信部150は、送信モードの超音波センサ200から送信された超音波を受信モードの超音波センサ200が受信したことを検出する。例えば、受信部150は、増幅回路152及び信号処理回路154を有する。
【0032】
増幅回路152は、受信モードの超音波センサ200が受信した超音波に対応する受信信号Rsig0を、スイッチ144を介して、受信モードの超音波センサ200から受信する。そして、増幅回路152は、受信モードの超音波センサ200から受信した受信信号Rsig0を増幅し、増幅した受信信号Rsig0を受信信号Rsig1として信号処理回路154に出力する。
【0033】
信号処理回路154は、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信したことを示す受信検出信号RDsigを、増幅回路152から受信した受信信号Rsig1に基づいて生成する。例えば、信号処理回路154は、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信した受信タイミングを示す受信検出信号RDsigを受信信号Rsig1に基づいて生成する。超音波の受信タイミングは、超音波の受信時刻に対応する。なお、受信検出信号RDsigの生成方法については、後述する図2において説明される。受信検出信号RDsigは、信号処理回路154から計測信号出力回路160に出力される。
【0034】
計測信号出力回路160は、後続送信タイミング信号SSTsigをタイミング制御回路132から受け、受信検出信号RDsigを信号処理回路154から受ける。そして、計測信号出力回路160は、基準時刻から超音波の送信時刻までの経過時間、及び、基準時刻から超音波の受信時刻までの経過時間を計測するための計測信号MTsigを、後続送信タイミング信号SSTsig及び受信検出信号RDsigに基づいて生成する。計測信号MTsigは、計測信号出力回路160から時間計測部170に出力される。
【0035】
ここで、基準時刻は、例えば、送信モードの超音波センサ200から繰り返し送信される超音波のうち、1番目に送信された超音波の送信時刻である。例えば、第1送信タイミング信号FSTsigにより示される超音波の送信タイミングが、1番目に送信された超音波の送信時刻に対応する。
【0036】
また、基準時刻からの経過時間の計測対象となる超音波の送信時刻は、例えば、送信モードの超音波センサ200から繰り返し送信される超音波のうち、2番目以降に送信された超音波の各々の送信時刻である。例えば、後続送信タイミング信号SSTsigにより示される超音波の複数の送信タイミングの各々が、2番目以降に送信された超音波の各々の送信時刻に対応する。
【0037】
そして、超音波の受信時刻は、例えば、受信モードの超音波センサ200により繰り返し受信される超音波の各々の受信時刻である。例えば、受信検出信号RDsigにより示される超音波の複数の受信タイミングの各々が、受信モードの超音波センサ200により繰り返し受信される超音波の各々の受信時刻に対応する。
【0038】
計測信号出力回路160の構成は特に限定されないが、例えば、計測信号出力回路160は、論理和回路であってもよい。この場合、後続送信タイミング信号SSTsigと受信検出信号RDsigとの論理和結果が計測信号MTsigに対応する。また、例えば、計測信号出力回路160は、後続送信タイミング信号SSTsig及び受信検出信号RDsigの一方を選択し、選択した信号を計測信号MTsigとして時間計測部170に出力する選択回路であってもよい。この場合、例えば、計測信号MTsigとして、受信検出信号RDsigと後続送信タイミング信号SSTsigとが交互に選択される。
【0039】
時間計測部170は、基準時刻から超音波の送信時刻までの経過時間、及び、基準時刻から超音波の受信時刻までの経過時間を、第1送信タイミング信号FSTsig及び計測信号MTsigに基づいて計測する。例えば、時間計測部170は、第1送信タイミング信号FSTsigの受信を契機に、図2に示すクロックCLKのクロック数(例えば、クロックCLKの立ち上がりエッジ又は立下りエッジの数)のカウントを開始する。そして、時間計測部170は、計測信号MTsigにより示される超音波の複数の送信タイミング及び複数の受信タイミングにおいてそれぞれカウントされた複数のカウント値を保持する。以下では、計測信号MTsigにより示される超音波の複数の送信タイミング及び複数の受信タイミングを、計測タイミングと総称する場合がある。なお、本実施形態では、クロックCLKを生成する発信回路を時間計測部170が有する場合を想定しているが、時間計測部170は、クロックCLKを時間計測部170の外部から受信してもよい。
【0040】
ここで、基準時刻から各計測タイミングまでの経過時間は、例えば、当該計測タイミングにおいて保持されたカウント値とクロックCLKの周期との積により算出される。従って、計測信号MTsigにより示される超音波の複数の送信タイミングの各々においてカウント値を保持することは、繰り返し送信される超音波の各々の送信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測し、計測した経過時間を保持することに対応する。同様に、計測信号MTsigにより示される超音波の複数の受信タイミングの各々においてカウント値を保持することは、繰り返し送信される超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測し、計測した経過時間を保持することに対応する。
【0041】
時間計測部170は、例えば、計測信号MTsigに基づいて保持した複数のカウント値を示すデータDall(図2参照)を、時間情報Tinfとして、送信モードの超音波センサ200が超音波の送信を所定回数繰り返した後に、流量算出部180に出力する。例えば、時間計測部170は、N番目に送信された超音波の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測した後に、時間情報Tinfを流量算出部180に出力する。この場合、時間情報Tinfは、1番目からN番目に送信された超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間、及び、2番目からN番目に送信された超音波の各々の送信時刻までの基準時刻からの経過時間を示す時間情報に対応する。
【0042】
このように、本実施形態では、時間計測部170は、超音波の複数の送信タイミング、及び、超音波の複数の受信タイミングを示す計測信号MTsigを用いることにより、基準時刻から複数の計測タイミングまでの複数の経過時間を計測することができる。
【0043】
流量算出部180は、時間計測部170から受信した時間情報Tinfに基づいて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を算出する。すなわち、流量算出部180は、時間計測部170により計測された経過時間に基づいて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を算出する。そして、流量算出部180は、算出した超音波の伝搬時間に基づいて、配管PL内の流体FLの流速を算出する。また、流量算出部180は、配管PL内の流体FLの流速及び配管PLの断面積に基づいて、配管PL内の流体FLの流量を算出する。
【0044】
配管PL内の流体FLの流速を超音波の伝搬時間に基づいて算出する方法としては、既知の方法を採用することができる。例えば、流量算出部180は、流体FLの温度依存性(例えば、音速の温度依存性等)の影響が小さい伝搬時間差逆数差法を用いて、配管PL内の流体FLの流速を算出してもよい。伝搬時間差逆数差法では、例えば、流体FLの流れに対して順方向の超音波の伝搬時間の逆数と流体FLの流れに対して逆方向の超音波の伝搬時間の逆数との差に基づいて、流体FLの流速が算出される。流体FLの流速の算出方法として伝搬時間差逆数差法が用いられる場合、例えば、制御部120は、送信モードの超音波センサ200と受信モードの超音波センサ200とを切り替えることにより、超音波の伝搬方向を切り替える。
【0045】
図1に示す例では、パルス送信回路136は、スイッチ142を介して超音波センサ200aに接続され、増幅回路152は、スイッチ144を介して超音波センサ200bに接続されている。この場合、パルス送信回路136からの送信パルス信号SPsigに応じて超音波センサ200aで発生した超音波は、配管PLを透過し、配管PL内の流体FLに入射する。配管PL内の流体FLに入射した超音波は、配管PLを透過し、超音波センサ200bに伝搬される。超音波センサ200bに伝搬された超音波は、超音波センサ200bによって、電気信号である受信信号Rsig0に変換される。受信信号Rsig0は、スイッチ144を介して増幅回路152で受信される。そして、信号処理回路154は、受信信号Rsig0を増幅した受信信号Rsig1に基づいて生成した受信検出信号RDsigを、計測信号出力回路160に出力する。これにより、時間計測部170は、超音波が順方向に送信された場合の基準時刻から複数の計測タイミングまでの複数の経過時間を計測し、計測した複数の経過時間を示す時間情報Tinfを流量算出部180に出力する。
【0046】
そして、制御部120は、例えば、N番目に送信された超音波の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を時間計測部170が計測した後に、切替部140を制御することにより、送信モードの超音波センサ200と受信モードの超音波センサ200とを切り替える。これにより、超音波が逆方向に送信された場合の基準時刻から複数の計測タイミングまでの複数の経過時間が時間計測部170により計測され、時間計測部170により計測された複数の経過時間を示す時間情報Tinfが流量算出部180に出力される。流量算出部180は、時間計測部170により計測された経過時間に基づいて、流体FLの流れに対して順方向及び逆方向の2方向の伝搬時間を算出する。そして、流量算出部180は、超音波の2方向の伝搬時間の逆数の差に基づいて、配管PL内の流体FLの流速を算出する。すなわち、流量算出部180は、超音波センサ200aから超音波センサ200bに伝搬する超音波の伝搬時間の逆数と超音波センサ200bから超音波センサ200aに伝搬する超音波の伝搬時間の逆数との差に基づいて、配管PL内の流体FLの流速を算出する。
【0047】
なお、計測システム10及び超音波流量計100の構成は、図1に示す例に限定されない。例えば、タイミング制御回路132は、制御部120に含まれてもよい。また、タイミング制御回路132及びタイミング信号出力回路134が、制御部120に含まれてもよい。あるいは、タイミング信号出力回路134は、パルス送信回路136に含まれてもよい。また、計測信号出力回路160は、時間計測部170に含まれてもよい。また、時間計測部170がクロックCLKを時間計測部170の外部から受信する場合、クロックCLKを生成する発信回路は、超音波流量計100に含まれてもよいし、超音波流量計100の外部に設けられてもよい。
【0048】
次に、図2を参照しながら、超音波の伝搬時間を計測するための各種信号のタイミングの一例について説明する。
【0049】
図2は、図1に示した計測システム10の各種信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。図2には、順方向及び逆方向のうちの1方向に送信される超音波の伝搬時間を計測するための各種信号のタイミングの一例が示されている。また、図2では、時間計測部170が5個のカウント値を保持可能である場合を想定する。但し、時間計測部170が保持可能なカウント値の数は、5個に限定されない。また、図2では、超音波センサ200a及び200bの一方から他方に繰り返し送信される超音波の送信回数(N回)が3回である場合を想定する。
【0050】
以下では、繰り返し送信される超音波の各々の伝搬時間を、個別伝搬時間PT(PT1、PT2及びPT3)と称する場合がある。また、図2では、複数の個別伝搬時間PTを互いに区別するために、個別伝搬時間PTの符号の末尾に、超音波が送信された順番を示す数字(1、2又は3)が付されている。
【0051】
第1送信タイミング信号FSTsigは、1番目に送信される超音波の送信タイミングを規定するパルスPLfstを含む。また、後続送信タイミング信号SSTsigは、2番目以降に送信される超音波の複数の送信タイミングをそれぞれ規定する複数のパルスPLsstを含む。そして、送信タイミング信号STsigは、第1送信タイミング信号FSTsigのパルスPLfst、及び、後続送信タイミング信号SSTsigの複数のパルスPLstにそれぞれ対応する複数のパルスPLstを含む。従って、超音波の複数の送信タイミングは、送信タイミング信号STsigの複数のパルスPLstによりそれぞれ規定される。図2に示す例では、第1送信タイミング信号FSTsigと後続送信タイミング信号SSTsigとの論理和結果が送信タイミング信号STsigに対応する。
【0052】
送信パルス信号SPsigは、複数(図2に示す例では、3個)のパルスPLspを有する複数のパルス群PLGを含む。各パルスPLspは、例えば、送信モードの超音波センサ200に印加される高電圧のパルスである。例えば、複数のパルス群PLGは、送信タイミング信号STsigの複数のパルスPLstにより規定されるタイミングにパルス送信回路136から出力される。図2に示す例では、送信タイミング信号STsigの1番目のパルスPLstにより規定される時刻T0に、1番目のパルス群PLGがパルス送信回路136から出力される。これにより、送信モードの超音波センサ200において、送信パルス信号SPsigの1番目のパルス群PLGに含まれる複数のパルスPLspに応じた超音波が発生する。
【0053】
なお、送信タイミング信号STsigの1番目のパルスPLstにより規定される時刻T0は、第1送信タイミング信号FSTsigのパルスPLfstにより規定される時刻に対応する。従って、第1送信タイミング信号FSTsigのパルスPLfstを受信した時間計測部170は、クロックCLKのクロック数のカウントを時刻T0から開始する。なお、時刻T0は、基準時刻である。このように、時間計測部170は、第1送信タイミング信号FSTsigのパルスPLfstの受信を契機に、基準時刻からの経過時間の計測を開始する。
【0054】
受信信号Rsig1は、図1において説明したように、受信モードの超音波センサ200から出力された受信信号Rsig0を増幅した信号である。なお、図2に示す電圧Vcは、送信モードの超音波センサ200が超音波を送信していない場合に信号処理回路154が受信する受信信号Rsig1の電圧である。また、受信検出信号RDsigは、受信信号Rsig1に基づいて生成される信号であり、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信した受信タイミングを示すパルスPLrdを含む。
【0055】
例えば、信号処理回路154は、受信信号Rsig1の電圧と電圧Vthとの比較結果に基づいて、電圧Vcに対する受信信号Rsig1の電圧が電圧Vcに対する電圧Vth以上になる特定タイミングを特定する。そして、信号処理回路154は、特定タイミングの後に、受信信号Rsig1の電圧が電圧Vc以上になる最初のタイミング(例えば、時刻Ta1)で、パルスPLrdを立ち上げる。また、信号処理回路154は、パルスPLrdを立ち上げてから所定の高レベル期間に対応する時間が経過したタイミングで、パルスPLrdを立ち下げる。なお、信号処理回路154は、パルスPLrdを立ち上げた後に、受信信号Rsig1の電圧が電圧Vc以下になる最初のタイミングで、パルスPLrdを立ち下げてもよい。
【0056】
計測信号MTsigは、後続送信タイミング信号SSTsigの複数のパルスPLst、及び、受信検出信号RDsigの複数のパルスPLrdにそれぞれ対応する複数のパルスPLmtを含む。従って、時刻T0(基準時刻)からの経過時間の複数の計測タイミングは、計測信号MTsigの複数のパルスPLmtによりそれぞれ規定される。図2に示す例では、後続送信タイミング信号SSTsigと受信検出信号RDsigとの論理和結果が計測信号MTsigに対応する。時間計測部170は、複数の計測タイミング(図2に示す例では、時刻Ta1、Ta2、Ta3、Ta4及びTa5)の各々において、クロックCLKのクロック数のカウント値を保持する。
【0057】
ここで、後続送信タイミング信号SSTsigのi番目(iは、1以上N以下の整数)のパルスPLstは、例えば、受信検出信号RDsigのi番目のパルスPLrdを時間Dtaだけ遅延させた信号に基づいて生成される。これにより、例えば、受信検出信号RDsigの1番目のパルスPLrdにより対応する時刻Ta1から時間Dtaだけ経過した時刻Ta2に、後続送信タイミング信号SSTsigの1番目のパルスPLstが、タイミング制御回路132から出力される。
【0058】
これにより、送信タイミング信号STsigの2番目のパルスPLst(すなわち、後続送信タイミング信号SSTsigの1番目のパルスPLst)により規定される時刻Ta2に、2番目のパルス群PLGがパルス送信回路136から出力される。この結果、送信モードの超音波センサ200において、送信パルス信号SPsigの2番目のパルス群PLGに含まれる複数のパルスPLspに応じた超音波が発生する。このように、超音波の送信が繰り返される。
【0059】
図2に示す例では、時刻T0、Ta2及びTa4の各々に、送信モードの超音波センサ200から超音波が送信される。そして、時刻Ta1、Ta3及びTa5の各々に、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信する。なお、より正確には、時刻Ta1、Ta3及びTa5は、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信したタイミングとして信号処理回路154により検出された複数の受信タイミングにそれぞれ対応する複数の時刻である。
【0060】
従って、時間計測部170は、時刻T0から時刻Ta1、Ta2、Ta3、Ta4及びTa5までの複数のカウント値の各々を、時刻T0から時刻Ta1、Ta2、Ta3、Ta4及びTa5までの複数の経過時間の各々を示す情報として保持する。そして、時間計測部170は、時刻T0から時刻Ta1、Ta2、Ta3、Ta4及びTa5までの複数のカウント値を示すデータDallを、複数の経過時間を示す時間情報Tinfとして流量算出部180に出力する。
【0061】
流量算出部180は、時間情報Tinfを用いて、3回送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTを算出する。例えば、1番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT1は、時刻T0から時刻Ta1までの経過時間(Ta1-T0)であり、時刻Ta1に対応するカウント値とクロックCLKの周期との積により算出される。また、2番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT2は、時刻Ta2から時刻Ta3までの経過時間(Ta3-Ta2)であり、時刻Ta3に対応するカウント値から時刻Ta2に対応するカウント値を減算した値とクロックCLKの周期との積により算出される。また、3番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT3は、時刻Ta4から時刻Ta5までの経過時間(Ta5-Ta4)であり、時刻Ta5に対応するカウント値から時刻Ta4に対応するカウント値を減算した値とクロックCLKの周期との積により算出される。
【0062】
このように、本実施形態では、N回送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTが算出される。これにより、本実施形態では、例えば、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信したタイミングとして信号処理回路154により検出された受信タイミングが誤っているか否かを容易に判定することができる。
【0063】
例えば、流量算出部180は、時間情報Tinfに基づいて算出した超音波の個別伝搬時間PTと推定伝搬時間との差が許容時間以上である場合、当該個別伝搬時間PTを、誤った受信タイミングに基づいて算出した誤った個別伝搬時間PTと判定する。推定伝搬時間は、例えば、配管PL及び流体FLのパラメータ等に基づいて推定される。また、許容時間は、例えば、受信モードの超音波センサ200が受信した超音波に対応する受信信号Rsig1の周期TRpに基づく時間(例えば、周期TRpの2分の1)であってもよい。
【0064】
流量算出部180は、時間情報Tinfに基づいて算出した超音波の複数の個別伝搬時間PTのうち、推定伝搬時間との差が許容時間未満の個別伝搬時間PTを用いて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を特定する。推定伝搬時間との差が許容時間未満の個別伝搬時間PTは、例えば、時間情報Tinfに基づいて算出した超音波の複数の個別伝搬時間PTのうちの誤った個別伝搬時間PTを除いた個別伝搬時間PTであり、「所定の時間範囲内の伝搬時間」の一例である。例えば、流量算出部180は、時間情報Tinfに基づいて算出した超音波の複数の個別伝搬時間PTの平均値を、誤った個別伝搬時間PTを除いて、算出する。そして、流量算出部180は、算出した平均値を、超音波の伝搬時間の計測結果として特定する。
【0065】
このように、本実施形態では、時間情報Tinfに基づいて算出された超音波の複数の個別伝搬時間PTのうち、誤った個別伝搬時間PTを除いて、超音波の伝搬時間の計測結果が特定されるため、超音波の伝搬時間を精度よく計測することができる。また、本実施形態では、超音波がN回送信された後に、時間情報Tinfが時間計測部170から流量算出部180に1回送信されるため、カウンタ値が保持される度にデータが転送される場合に比べて、データ転送のオーバーヘッドを少なくすることができる。これにより、本実施形態では、カウンタ値が保持される度にデータが転送される場合に比べて、繰り返し送信される超音波の所定期間内の送信回数を多くすることができる。あるいは、本実施形態では、カウンタ値が保持される度にデータが転送される場合に比べて、1番目の超音波を送信してからN番目の超音波を送信するまでの時間を短くすることができる。
【0066】
また、時間情報Tinfの時間計測部170から流量算出部180への送信は、例えば、超音波の伝搬方向を切り替える切替期間に実行されてもよい。この場合、時間情報Tinfの時間計測部170から流量算出部180への送信が切替期間に実行されない場合に比べて、順方向に送信された超音波の伝搬時間の計測と逆方向に送信された超音波の伝搬時間の計測とにかかる合計の計測時間を短くすることができる。
【0067】
また、本実施形態では、送信モードの超音波センサ200から超音波が送信される時刻T0、Ta2及びTa4においてカウント値がそれぞれ保持されるため、時間Dtaの誤差が超音波の伝搬時間の計測精度に与える影響を小さくすることができる。このため、本実施形態では、例えば、受信検出信号RDsigのパルスPLrdを時間Dtaだけ遅延させる遅延回路が煩雑になることを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上述したように、i番目の超音波が受信されてから、時間Dtaだけ経過した後に、“i+1”番目の超音波が送信される。このため、本実施形態では、i番目の超音波の送信及び受信による超音波センサ200の残存振動が、“i+1”番目の超音波の送信及び受信に与える影響を小さくすることができる。例えば、“i+1”番目の超音波の送信及び受信による超音波センサ200の振動が、i番目の超音波の送信及び受信による超音波センサ200の残存振動と重畳しないように、時間Dtaが決定される。これにより、本実施形態では、信号処理回路154が超音波の受信タイミングを誤って検出することを抑制することができる。なお、時間Dtaは、“0”でもよい。この場合、超音波の伝搬時間の計測にかかる時間を短くすることができる。
【0069】
次に、図3を参照しながら、本実施形態と対比される対比例における各種信号のタイミングの一例について説明する。
【0070】
図3は、図1に示した計測システム10の対比例に係る各種信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。対比例では、超音波流量計が、図1に示した計測信号出力回路160及び時間計測部170の代わりに、N番目に送信された超音波の受信タイミングまでの基準時刻からの経過時間を計測する時間計測部を有する場合を想定する。また、図3においても、超音波センサ200a及び200bの一方から他方に繰り返し送信される超音波の送信回数(N回)が3回である場合を想定する。
【0071】
第1送信タイミング信号FSTsig、後続送信タイミング信号SSTsig、送信タイミング信号STsig、送信パルス信号SPsig、受信信号Rsig1、及び、受信検出信号RDsigについては、図2に示した例と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
図3に示す対比例では、1番目に送信された超音波の送信タイミング(時刻T0)から3番目に送信された超音波の受信タイミング(時刻Tz1)までのクロックCLKのクロック数がカウントされる。そして、時刻T0から時刻Tz1までのカウント値を示すデータDtz1が、時刻T0から時刻Tz1までの経過時間を示す時間情報Tinfとして流量算出部180に出力される。
【0073】
このように、対比例では、3回送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTは、計測されない。従って、対比例では、超音波の伝搬時間は、例えば、時刻T0から時刻Tz1までの経過時間(Tz1-T0)と、超音波を受信してから次の超音波を送信するまでの時間Dtaとを用いて、“(Tz1-T0-2*Dta)/3”により表される。このため、対比例では、例えば、時間Dtaの誤差が大きい場合、時間Dtaの誤差が小さい場合に比べて、超音波の伝搬時間の計測精度が低下する。従って、対比例では、本実施形態に比べて、超音波を受信してから次の超音波を送信するまでの時間Dtaを高精度にする必要がある。換言すれば、本実施形態では、超音波を受信してから次の超音波を送信するまでの時間Dtaを高精度にする必要がない。
【0074】
また、対比例では、3回送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTが計測されないため、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信したタイミングとして信号処理回路154により検出された受信タイミングが誤っているか否かの判定が困難である。このため、対比例では、信号処理回路154が受信タイミングを誤って検出した場合、超音波の伝搬時間の計測精度が低下する。以下に、具体例を示して説明する。
【0075】
本具体例では、3回送信された超音波の各々の実際の個別伝搬時間PTが、図2において説明した許容時間の0.2倍の時間と推定伝搬時間とを加算した時間である場合を想定する。さらに、本具体例では、信号処理回路154が、1番目に送信された超音波の受信タイミングとして、正しい受信タイミングよりも許容時間の1.5倍の時間だけ遅いタイミングを誤って検出した場合を想定する。この場合、対比例では、推定伝搬時間の3倍の時間と時間Dtaの2倍の時間とを加算した推定経過時間と、時間情報Tinfにより示される経過時間との差が、許容時間の約2.1倍の時間となる。従って、対比例では、許容時間の0.7倍の時間と推定伝搬時間とを加算した時間が超音波の伝搬時間として計測され、計測された超音波の伝搬時間と実際の伝搬時間(許容時間の0.2倍の時間と推定伝搬時間とを加算した時間)との差が大きくなる。
【0076】
これに対し、本実施形態では、図2において説明したように、信号処理回路154により誤って検出された受信タイミングに基づいて算出される誤った個別伝搬時間PTは、超音波の伝搬時間の計測結果の特定に用いられない。例えば、本実施形態では、流量算出部180は、上述の具体例において、2番目及び3番目に送信された超音波の各々の送信タイミング及び受信タイミングに基づいて、超音波の伝搬時間の計測結果を特定する。この場合、流量算出部180により特定される超音波の伝搬時間の計測結果は、許容時間の0.2倍の時間と推定伝搬時間とを加算した時間とほぼ一致する。このように、本実施形態では、信号処理回路154が受信タイミングを誤って検出した場合においても、超音波の伝搬時間の計測精度が低下することを抑制することができる。
【0077】
以上、本実施形態では、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200に送信される超音波の伝搬時間を計測する超音波流量計100は、送信モードの超音波センサ200から超音波を繰り返し送信させる送信部130と、送信モードの超音波センサ200から送信された超音波を受信モードの超音波センサ200が受信したことを検出する受信部150と、受信モードの超音波センサ200により繰り返し受信される超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測する時間計測部170と、時間計測部170により計測された経過時間に基づいて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を算出する流量算出部180と、を有する。
【0078】
また、本実施形態では、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200に送信される超音波の伝搬時間を計測する超音波時間計測方法において、送信モードの超音波センサ200から超音波を繰り返し送信させ、送信モードの超音波センサ200から送信された超音波を受信モードの超音波センサ200が受信したことを検出し、受信モードの超音波センサ200により繰り返し受信される超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測し、計測された経過時間に基づいて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を算出する。
【0079】
このように、本実施形態では、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200に繰り返し送信された超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間が計測され、計測された複数の経過時間に基づいて超音波の伝搬時間が算出される。これにより、本実施形態では、受信モードの超音波センサ200により受信された超音波の受信タイミングが誤って検出された場合でも、受信タイミングが誤って検出されたことを容易に判定することができる。このため、本実施形態では、例えば、受信タイミングが誤って検出された超音波の個別伝搬時間PTを用いずに超音波の伝搬時間の計測結果を特定することにより、超音波の伝搬時間を精度よく計測することができる。
【0080】
また、本実施形態では、送信モードの超音波センサ200から繰り返し送信される超音波の送信回数は、N回(Nは2以上の整数)であり、時間計測部170は、送信モードの超音波センサ200から繰り返し送信される超音波のうち、1番目に送信された超音波の送信時刻を基準時刻とし、2番目以降に送信された超音波の送信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測し、N番目に送信された超音波の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測した後に、1番目からN番目に送信された超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間、及び、2番目からN番目に送信された超音波の各々の送信時刻までの基準時刻からの経過時間を示す時間情報Tinfを、流量算出部180に出力する。
【0081】
このように、本実施形態では、1番目に送信された超音波の受信時刻までの基準時刻からの経過時間、及び、2番目以降に送信された超音波の各々の送信時刻及び受信時刻までの基準時刻からの経過時間が時間計測部170により計測される。これにより、本実施形態では、1番目からN番目に送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTを、時間計測部170により計測された複数の経過時間に基づいて容易に算出することができる。また、本実施形態では、2番目以降に送信された超音波の送信時刻までの基準時刻からの経過時間が時間計測部170により計測されるため、超音波を受信してから次の超音波を送信するまでの時間Dtaを高精度にする必要がない。また、本実施形態では、時間計測部170により計測された複数の経過時間を示す時間情報Tinfが流量算出部180に出力されるため、経過時間が計測される度に計測データが転送される場合に比べて、データ転送のオーバーヘッドを少なくすることができる。
【0082】
また、本実施形態では、流量算出部180は、時間計測部170により計測された経過時間に基づいて、送信モードの超音波センサ200から繰り返し送信される超音波の各々の個別伝搬時間PTを算出し、時間計測部170により計測された経過時間に基づいて算出した複数の個別伝搬時間PTのうち所定の時間範囲内の個別伝搬時間PTを用いて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を特定する。
【0083】
このように、本実施形態では、時間計測部170により計測された経過時間に基づいて算出された複数の個別伝搬時間PTのうち所定の時間範囲内の個別伝搬時間PTを用いて、超音波の伝搬時間が特定される。すなわち、本実施形態では、所定の時間範囲外の個別伝搬時間PTは、超音波の伝搬時間の特定に用いられない。所定の時間範囲外の個別伝搬時間PTは、受信タイミングが誤って検出された超音波の個別伝搬時間PTである可能性が高い。従って、本実施形態では、受信タイミングが誤って検出された場合に、超音波の伝搬時間の計測精度が低下することを抑制することができる。すなわち、本実施形態では、受信タイミングが誤って検出された場合においても、超音波の伝搬時間を精度よく計測することができる。
【0084】
A2:第2実施形態
図4は、第2実施形態に係る超音波流量計100Aを含む計測システム10の一例を説明するための説明図である。図1から図3において説明された要素と同様の要素については、同様の符号が付され、詳細な説明は省略される。
【0085】
超音波流量計100Aは、図1に示した計測信号出力回路160が超音波流量計100から省かれ、送信部130の代わりに送信部130Aを有することを除いて、図1に示した超音波流量計100と同様である。超音波流量計100Aは、「超音波時間計測装置」の別の例であり、送信部130Aは、「送信回路」の別の例である。
【0086】
送信部130Aは、図1に示したタイミング制御回路132及びタイミング信号出力回路134の代わりにタイミング信号生成回路135を有することを除いて、図1に示した送信部130と同様である。すなわち、送信部130Aは、タイミング信号生成回路135及びパルス送信回路136を有する。
【0087】
タイミング信号生成回路135は、第1送信タイミング信号FSTsigを制御部120から受ける。そして、タイミング信号生成回路135は、第1送信タイミング信号FSTsigの受信を契機に、繰り返し送信される超音波の各々の送信タイミングを規定する送信タイミング信号STsigを生成する。送信タイミング信号STsigは、タイミング信号生成回路135からパルス送信回路136に出力される。
【0088】
例えば、タイミング信号生成回路135は、第1送信タイミング信号FSTsigの受信を契機に、図5に示す周期TPのパルスPLstを有する送信タイミング信号STsigを、パルス送信回路136に出力する。すなわち、本実施形態では、送信タイミング信号STsigのパルスPLstは、受信部150の信号処理回路154による超音波の受信タイミングの検出結果に拘わらず、タイミング信号生成回路135からパルス送信回路136に周期TPで繰り返し出力される。本実施形態では、パルスPLstの周期TPは、「所定の周期」の一例であり、送信タイミング信号STsigは、「送信クロック」の一例である。なお、パルスPLstが「送信クロック」と解釈されてもよい。
【0089】
ここで、送信タイミング信号STsigのパルスPLstの精度(例えば、周波数精度及びジッタ等)は、高精度であることが好ましい。例えば、送信タイミング信号STsigのパルスPLstの精度は、超音波の伝搬時間計測の分解能と同等以上の精度であることが好ましい。具体的には、送信タイミング信号STsigのパルスPLstの精度は、クロックCLKの精度以上であることが好ましい。例えば、送信タイミング信号STsigのパルスPLstは、クロックCLKを用いて生成されたてもよい。
【0090】
このように、本実施形態では、送信部130Aは、送信タイミング信号STsigに含まれる周期TPのパルスPLstに同期して、送信モードの超音波センサ200から超音波を繰り返し送信させる。
【0091】
時間計測部170は、例えば、第1送信タイミング信号FSTsigを制御部120から受け、受信検出信号RDsigを受信部150から受け。そして、時間計測部170は、基準時刻から超音波の受信時刻までの経過時間を、第1送信タイミング信号FSTsig及び受信検出信号RDsigに基づいて計測する。例えば、時間計測部170は、第1送信タイミング信号FSTsigの受信を契機に、クロックCLKのクロック数のカウントを開始する。そして、時間計測部170は、受信検出信号RDsigにより示される超音波の複数の受信タイミングにおいてそれぞれカウントされた複数のカウント値を保持する。
【0092】
すなわち、本実施形態では、超音波の送信タイミング及び受信タイミングのうちの受信タイミングのみが、時間計測部170がカウント値を保持する計測タイミングとなる。このため、本実施形態では、例えば、時間計測部170が保持するカウント値が図2に示した例と同じ5個である場合でも、後述する図5に示すように、超音波の送信回数を図2に示した例よりも多くすることができる。
【0093】
また、時間計測部170は、例えば、N番目に送信された超音波の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測した後に、1番目からN番目に送信された超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を示す時間情報Tinfを流量算出部180に出力する。流量算出部180による超音波の個別伝搬時間PTの算出方法については、図5において説明される。
【0094】
なお、計測システム10及び超音波流量計100Aの構成は、図1に示す例に限定されない。例えば、タイミング信号生成回路135は、制御部120に含まれてもよいし、パルス送信回路136に含まれてもよい。
【0095】
次に、図5を参照しながら、本実施形態における超音波の伝搬時間を計測するための各種信号のタイミングの一例について説明する。
【0096】
図5は、図4に示した計測システム10の各種信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。図5においても、図2と同様に、順方向及び逆方向のうちの1方向に送信される超音波の伝搬時間を計測するための各種信号のタイミングの一例が示されている。また、図5においても、図2と同様に、時間計測部170が5個のカウント値を保持可能である場合を想定する。また、図5では、超音波センサ200a及び200bの一方から他方に繰り返し送信される超音波の送信回数(N回)が5回である場合を想定する。
【0097】
第1送信タイミング信号FSTsig、送信パルス信号SPsig、受信信号Rsig1、及び、受信検出信号RDsigについては、図2に示した例と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
送信タイミング信号STsigは、繰り返し送信される超音波の複数の送信タイミングをそれぞれ規定する複数のパルスPLstを含む。パルスPLstの周期TPは、例えば、“i+1”番目の超音波の送信及び受信による超音波センサ200の振動が、i番目の超音波の送信及び受信による超音波センサ200の残存振動と重畳しないように、推定伝搬時間等に基づいて決定される。これにより、本実施形態においても、信号処理回路154が超音波の受信タイミングを誤って検出することを抑制することができる。なお、本実施形態では、周期TPは、タイミング信号生成回路135により設定されるが、i番目の超音波が受信されてから、“i+1”番目の超音波が送信されるまでの時間Dtbは、特に設定されない。
【0099】
送信パルス信号SPsigに含まれる複数のパルス群PLGは、送信タイミング信号STsigの複数のパルスPLstにより規定されるタイミングにパルス送信回路136から出力される。従って、パルス群PLGは、パルス送信回路136から周期TPで繰り返し出力される。これにより、送信モードの超音波センサ200から超音波が周期TPで繰り返し送信される。そして、受信モードの超音波センサ200が超音波を繰り返し受信する。
【0100】
なお、周期TPで繰り返し送信されるパルス群PLGのうちの1番目のパルス群PLGは、送信タイミング信号STsigの1番目のパルスPLstにより規定される時刻T0にパルス送信回路136から出力される。従って、時刻T0は、周期TPで繰り返し送信される超音波のうちの1番目の超音波の送信時刻に対応する。
【0101】
また、本実施形態においても、送信タイミング信号STsigの1番目のパルスPLstにより規定される時刻T0は、第1送信タイミング信号FSTsigのパルスPLfstにより規定される時刻に対応する。従って、本実施形態においても、時間計測部170は、クロックCLKのクロック数のカウントを時刻T0から開始する。
【0102】
図5に示す例では、時刻Tb1、Tb2、Tb3、Tb4及びTb5の各々に、受信モードの超音波センサ200が超音波を受信する。従って、時間計測部170は、時刻T0から時刻Tb1、Tb2、Tb3、Tb4及びTb5までの複数のカウント値の各々を、時刻T0から時刻Tb1、Tb2、Tb3、Tb4及びTb5までの複数の経過時間の各々を示す情報として保持する。そして、時間計測部170は、時刻T0から時刻Tb1、Tb2、Tb3、Tb4及びTb5までの複数のカウント値を示すデータDallを、複数の経過時間を示す時間情報Tinfとして流量算出部180に出力する。
【0103】
流量算出部180は、時間情報Tinfを用いて、5回送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTを算出する。例えば、1番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT1は、時刻T0から時刻Tb1までの経過時間(Tb1-T0)であり、時刻Tb1に対応するカウント値とクロックCLKの周期との積により算出される。また、2番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT2は、2番目に送信された超音波の送信時刻(T0+TP)から時刻Tb2までの経過時間(Tb2-(T0+TP))である。従って、2番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT2は、時刻Tb2に対応するカウント値とクロックCLKの周期との積から周期TPに対応する時間を減算することにより算出される。
【0104】
また、3番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT3は、3番目に送信された超音波の送信時刻(T0+2*TP)から時刻Tb3までの経過時間(Tb3-(T0+2*TP))である。従って、3番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT3は、時刻Tb3に対応するカウント値とクロックCLKの周期との積から周期TPの2倍に対応する時間を減算することにより算出される。また、4番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT4は、4番目に送信された超音波の送信時刻(T0+3*TP)から時刻Tb4までの経過時間(Tb4-(T0+3*TP))である。従って、4番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT4は、時刻Tb4に対応するカウント値とクロックCLKの周期との積から周期TPの3倍に対応する時間を減算することにより算出される。
【0105】
また、5番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT5は、5番目に送信された超音波の送信時刻(T0+4*TP)から時刻Tb5までの経過時間(Tb5-(T0+4*TP))である。従って、5番目に送信された超音波の個別伝搬時間PT5は、時刻Tb5に対応するカウント値とクロックCLKの周期との積から周期TPの4倍に対応する時間を減算することにより算出される。
【0106】
このように、本実施形態においても、N回送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTが算出される。これにより、本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、時間計測部170は、超音波の送信タイミングに対応するカウント値を保持せずに、超音波の受信タイミングに対応するカウント値を保持する。このため、本実施形態では、例えば、時間計測部170が保持するカウント値が上述した第1実施形態と同じ数である場合、超音波の送信回数を第1実施形態よりも多くすることができる。このため、本実施形態では、超音波の伝搬時間の計測結果の分解能を向上することができる。
【0107】
以上、本実施形態では、送信部130Aは、周期TPのパルスPLstに同期して、送信モードの超音波センサ200から超音波を繰り返し送信させる。時間計測部170は、送信モードの超音波センサ200から繰り返し送信される超音波のうち、1番目に送信された超音波の送信時刻を基準時刻とし、N番目に送信された超音波の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を計測した後に、1番目からN番目に送信された超音波の各々の受信時刻までの基準時刻からの経過時間を示す時間情報Tinfを、流量算出部180に出力する。流量算出部180は、周期TP及び時間計測部170により計測された経過時間に基づいて、送信モードの超音波センサ200から受信モードの超音波センサ200までの超音波の伝搬時間を算出する。
【0108】
このように、本実施形態では、N回送信された超音波の各々の個別伝搬時間PTを、周期TP及び時間計測部170により計測された経過時間に基づいて、算出することができる。このため、本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、基準時刻から超音波の送信時刻までの経過時間を時間計測部170が計測する必要がないため、時間計測部170による経過時間の計測回数に対する超音波の送信回数を多くすることができる。このため、本実施形態では、例えば、時間計測部170による経過時間の計測回数が第1実施形態と同じ場合でも、超音波の伝搬時間の計測結果の分解能を向上することができる。
【0109】
B:変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で併合してもよい。
【0110】
B1:第1変形例
上述した第1実施形態及び第2実施形態において、例えば、制御部120は、送信モードの超音波センサ200から繰り返し送信される超音波の送信回数を可変に設定してもよい。例えば、流量算出部180は、上述した実施形態で説明したように、送信モードの超音波センサ200から送信され、流体FLを伝搬して受信モードの超音波センサ200に受信された超音波の伝搬時間に基づいて、流体FLの流速を算出する。そして、制御部120は、流量算出部180により算出された流体FLの流速に基づいて、繰り返し送信される超音波の送信回数を可変に設定する。
【0111】
このように、本変形例では、制御部120は、繰り返し送信される超音波の送信回数を、流量算出部180により算出された流体FLの流速に応じて変更する。例えば、制御部120は、流量算出部180により算出された流体FLの流速が遅い場合、流体FLの流速が早い場合に比べて、繰り返し送信される超音波の送信回数を増加させる。具体的には、制御部120は、流体FLの流速に対する時間分解能の誤差割合が一定になるように、流体FLの流速が遅い場合に、繰り返し送信される超音波の送信回数を増加させる。これにより、本変形例では、流体FLの流速の次回の計測(算出)において、流速に適した送信回数で超音波の伝搬時間を計測することができる。すなわち、本変形例では、流体FLの流速の次回の計測(算出)において、流速に適した分解能で超音波の伝搬時間を計測することができる。なお、本変形例では、制御部120は、「設定部」の一例である。
【0112】
B2:第2変形例
上述した実施形態及び変形例では、時間計測部170により計測された全ての経過時間を示す時間情報TinfがN番目に送信された超音波の計測が終了した後に流量算出部180に出力される場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、時間計測部170は、経過時間の計測が所定回数だけ終了する度に、所定回数に対応する所定数の計測済みの経過時間を示す時間情報Tinfを流量算出部180に出力してもよい。また、例えば、時間計測部170は、経過時間を計測する度に、計測した経過時間を示す時間情報Tinfを流量算出部180に出力してもよい。
【0113】
以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。但し、本変形例では、上述した実施形態及び変形例に比べて、データ転送のオーバーヘッドが増加する場合がある。
【0114】
B3:第3変形例
上述した実施形態及び変形例では、超音波の複数の個別伝搬時間PTの中から、超音波の伝搬時間の特定に用いられる個別伝搬時間PTが推定伝搬時間及び許容時間に基づいて選択される場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、流量算出部180は、時間情報Tinfに基づいて算出した超音波の複数の個別伝搬時間PTのうち、上位及び下位の所定数の個別伝搬時間PTを除いて算出した平均(所謂、トリム平均)を、超音波の伝搬時間としてもよい。
【0115】
以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0116】
B4:第4変形例
上述した実施形態及び変形例では、「超音波時間計測装置」として超音波流量計100及び100Aを例示したが、「超音波時間計測装置」は超音波流量計に限定されない。すなわち、計測システム10は、配管PL内の流体FLの流量を、超音波を用いて計測するシステムに限定されない。例えば、計測システム10は、配管PL内の流体FLの流速を、超音波を用いて計測するシステムであってもよい。この場合、計測システム10は、「超音波時間計測装置」として、超音波の伝搬時間を用いて流体FLの流速を計測する流速測定装置を有する。また、例えば、計測システム10は、超音波を用いて物質の音響特性(音速及び音響インピーダンス等)を計測するシステムであってもよい。この場合、計測システム10は、「超音波時間計測装置」として、超音波の伝搬時間を用いて物質の音響特性を計測する装置を有する。以上、本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0117】
10…計測システム、100、100A…超音波流量計、120…制御部、130、130A…送信部、132…タイミング制御回路、134…タイミング信号出力回路、135…タイミング信号生成回路、136…パルス送信回路、140…切替部、142、144…スイッチ、150…受信部、152…増幅回路、154…信号処理回路、160…計測信号出力回路、170…時間計測部、180…流量算出部、200a、200b…超音波センサ、FL…流体、PL…配管。
図1
図2
図3
図4
図5