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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111992
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/10 20060101AFI20240813BHJP
   A01D 69/08 20060101ALI20240813BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20240813BHJP
   F16H 61/26 20060101ALI20240813BHJP
   B60T 7/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A01D69/10
A01D69/08 Z
A01D69/00 303F
F16H61/26
B60T7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016788
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【テーマコード(参考)】
2B076
3D124
3J067
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA08
2B076BB01
2B076BB03
2B076CC02
2B076CD01
2B076CD02
2B076CD03
2B076DA02
2B076DB06
2B076DB08
2B076DB09
2B076DC01
2B076DC02
2B076DD02
2B076DD05
3D124AA32
3D124BB02
3D124BB07
3D124BB15
3D124CC59
3D124DD74
3J067AA01
3J067AB02
3J067AC42
3J067DA24
3J067DA52
3J067FB81
3J067GA14
(57)【要約】
【課題】駐車ブレーキの調整作業を容易にできる。
【解決手段】機体フレーム2と、機体フレーム2を走行可能にする走行部2aと、機体フレーム2に設けられフロア3a上に設置された運転座席3cと、運転座席3cに臨んで取り付けられ走行部2aの駆動を制動する駐車ブレーキべダル機構13と、フロア3aの下方に取り付けられ駐車ブレーキペダル機構13の制動力を調整するロックナット41eと、を備えるコンバイン1である。フロア3aのロックナット41eにアクセス可能な位置に、開閉可能な開口部15aが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
この車両本体を走行可能にする走行部と、
前記車両本体に設けられ床面上に設置された運転席と、
前記運転席に臨んで取り付けられ前記走行部の駆動を制動する制動部と、
前記床面の下方に取り付けられ前記制動部の制動力を調整する制動力調整部と、を備えた作業車両であって、
前記床面の前記制動力調整部にアクセス可能な位置に開閉可能な開口部が設けられている、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記運転席に臨んで取り付けられ前記走行部の駆動を変速させる変速レバーと、
この変速レバーと前記制動力調整部とを連係させる連係部材とを、備え、
前記車両本体の前記運転席の足元位置の側面に側方開口部が設けられ、
前記連係部材は、前記側方開口部から長さ調整可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記運転席を支えるフレーム部材を備え、
前記フレーム部材は、前記開口部を横断して取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業車両。
【請求項4】
前記車両本体は、センターフレームを有し、
前記制動力調整部および連係部材は、前記センターフレームにて仕切られる空間に振り分けて設置されている、
ことを特徴とする請求項2記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動部の制動力を調整する制動力調整部を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車ブレーキペダル16で操作される駐車ブレーキ40と、主変速レバー14の揺動軸60を中心とする揺動により操作される無段変速装置21とを、伝動ケース20に備え、駐車ブレーキペダル16の操作時に支持軸芯Yを中心にして揺動する作動アーム53の後端部53Rからの引き操作力を駐車ブレーキ40の作動アーム53に伝える制動操作部材54がステップ11の下方に設置された構成の作業車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5432871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の作業車では、操作時に支持軸芯Yを中心にして揺動する作動アーム53の後端部53Rからの引き操作力を駐車ブレーキ40の作動アーム53に伝える制動操作部材54が、ステップ11の下方に設置された構成となっている。このため、制動操作部材30を調整して駐車ブレーキ40による制動力を調整するためには、作業車の下方や側方から制動操作部材30にアクセスして行う必要があり、駐車ブレーキ40の作動力を調整する作業が容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として発明されたものであって、請求項1の発明は、車両本体と、この車両本体を走行可能にする走行部と、前記車両本体に設けられ床面上に設置された運転席と、前記運転席に臨んで取り付けられ前記走行部の駆動を制動する制動部と、前記床面の下方に取り付けられ前記制動部の制動力を調整する制動力調整部と、を備えた作業車両であって、前記床面の前記制動力調整部にアクセス可能な位置に開閉可能な開口部が設けられている、ことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1記載の作業車両であって、前記運転席に臨んで取り付けられ前記走行部の駆動を変速させる変速レバーと、この変速レバーと前記制動力調整部とを連係させる連係部材とを、備え、前記車両本体の前記運転席の足元位置の側面に側方開口部が設けられ、前記連係部材は、前記側方開口部から長さ調整可能に構成されている、ことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2記載の作業車両であって、前記運転席を支えるフレーム部材を備え、前記フレーム部材は、前記開口部を横断して取り付けられている、ことを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項2記載の作業車両であって、前記車両本体は、センターフレームを有し、前記制動力調整部および前記連係部材は、前記センターフレームにて仕切られる空間に振り分けて設置されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、車両本体の床面の開口部を開くことにより制動力調整部にアクセスできるから、例えば、車両本体の下方へ潜り込んだりすることなく制動力調整部にアクセスできる。よって、制動力調整部の調整作業を容易にできる。
請求項2の発明によれば、車両本体の運転席の足元位置の側面に設けた側方開口部を開くことにより、連係部材の長さ調整ができる。このため、制動力調整部を調整する際と同じ立ち位置で連係部材を長さ調整できるから、これら制動力調整部および連係部材を調整する際の作業性を大幅に向上できる。
請求項3の発明によれば、フレーム部材が開口部を横断しているため、開口部を開いて制動力調整部を調整する際に、作業者がフレーム部材をアームレストとして用いることができる。よって、制動力調整部の調整作業を容易にでき、作業性を向上できる。
請求項4の発明によれば、車両本体のセンターフレームにて仕切られる空間に制動力調整部および連係部材を振り分けて設置させることにより、これら制動力調整部および連係部材を車両本体にコンパクトに設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】コンバインの運転操作部を示す斜視図である。
図3】コンバインの運転操作部の開口部および側方開口部を開いた状態を示す斜視図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】コンバインの一部を分解した正面図である。
図6】コンバインの駐車ブレーキの構造を示す左側面図である。
図7】コンバインの一部を取り外した斜視図である。
図8図7に示すコンバインからバッテリカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図9】コンバインの内部構造を示す斜視図である。
図10】コンバインのフロア台に油圧バルブを取り付けた状態を示す斜視図である。
図11】コンバインのフロア台に油圧バルブを取り付けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<全体構成>
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。図1図7および図8に示すように、作業車両の一例として示すコンバイン1は、機体フレーム(車両本体)2を備えている。機体フレーム2には、この機体フレーム2を走行可能にする左右一対のクローラ式の走行部2aが取り付けられている。機体フレーム2には、この機体フレーム2の右側前部に設置されキャビン3kにて覆われた運転部3と、この運転部3の下方に設置されたエンジン部Eと、運転部3の後方に設置されたグレンタンク4とが配置されている。また、機体フレーム2の左側前部には、刈取部と扱深搬送体と等からなる前処理部5が昇降自在に支持されている。
【0009】
さらに、機体フレーム2の後方には、脱穀部5aが配設され、圃場の植立穀稈を刈取り脱穀して収穫できる構成となっている。運転部3には、図2および図3に示すように、平面視方形状の平板面で形成される床面となるフロア3aの前側に横長な前部運転パネル部3bが立設され、このフロア3a上の後側にオペレータが着座する運転座席(運転席)3cが配置され、これら前部運転パネル部3bおよび運転座席3cの左側に側部運転パネル部3dが前後方向に亘って立設されている。
【0010】
前部運転パネル部3bには、コラムパネル部にマルチステアリングレバー6が前後および左右揺動操作自在に設けられ、このマルチステアリングレバー6の前後揺動操作にて前処理部5が昇降作動し、かつ左右揺動操作にて走行操舵する構成となっている。側部運転パネル部3dには、前後方向の天板パネル面に変速操作具としての主変速レバー7と、この主変速レバー7bの左側に操作間隔を有して副変速レバー8とが並列に配設されている。副変速レバー8の後方には、脱穀部5a等作業部用の作業部操作レバー等が配設され、これら各レバーは前後方向の長孔状として形成される各レバー溝に沿って切換操作する構成になっている。
【0011】
前部運転パネル部3bの前部左側コーナー部でフロア3aから立設するコーナー前壁10aおよびコーナー側壁10bに近接する位置には、制動操作具としての駐車ブレーキペダル11が取り付けられている。駐車ブレーキペダル11は、フロア3a上の運転座席3cに臨んだ位置に取り付けられている。そして、駐車ブレーキペダル11のペダル部11bが可及的に近接して配置され、このペダル部11bの左側にロック機構としてのロックペダル12が配置されて駐車ブレーキペダル機構13が構成されている。
【0012】
よって、コンバイン1は、オペレータ等の作業者が各種操作レバーを操作しながら運転することにより、圃場に植立する作物を前処理部5の刈取部で刈取り、刈取った穀稈を株元挾持搬送体と穂先係止搬送体等とからなる扱深搬送体とを介して脱穀部5aのフィードチェンに継送搬送され、脱穀部5aにて脱穀選別された穀粒がグレンタンク4へ供給貯留されて一連の収穫作業が行なわれ、駐車時には駐車ブレーキペダル機構13の操作によって走行部2aの駆動を制動して駐車停止を確実にする構成となっている。
【0013】
<運転部3の構造>
次に、図2ないし図6を参照して、本一実施形態に係る運転部3の側部運転パネル部3dの設置構造と、主変速レバー7および駐車ブレーキペダル機構13と、その関連構造の概要について説明する。フロア3aは、機体フレーム2の右側前部に所定高さの箱状枠体として構成されるフロア台15を有している。フロア台15は、運転座席3cを支持する運転フレームであって、このフロア台15の上部には、フロア板16を着脱可能に敷設する台横フレーム17が、ボルト(図示せず)にて前後左右の取付け間隔を有して締結固定されている。また、台横フレーム17の内方(左側)に張出したフレーム延長端部には、側部フレームとしての側部運転パネルフレーム20が一体的に立設されて側部運転パネル部3dが構成されている。また、フロア台15は、フロア3a上の運転座席3cを支えるフレーム部材としてのステップフレームとして機能し、図3および図4に示すように、左側上方に位置する縦フレーム15eが、前後方向に沿って開口部15aを横断して取り付けられている。
【0014】
よって、フロア板16を台横フレーム17から取り外すことによって、フロア3a上に、フロア台15およびその左側部を連続して開口させてアクセス可能とする開口部15aが形成される。そして、開口部15aに臨んだフロア台15およびその左側の側部運転パネルフレーム20内のスペースがメンテナンスホールとなっている。また、運転座席3cは、図2および図3に示すように、この運転座席3cの座面の先端側がフロア板16上を覆う、要するにオーバーラップさせて取り付けられている。
【0015】
フロア3aの左側に立設された側部運転パネルフレーム20は、フロア3a側の全側面がフレームカバー21にて着脱可能に覆われている。フレームカバー21は、装着した状態で、フロア3a側から両手を自由に差し入れ可能な方形状の側方開口部21aがメンテナンス作業用の窓孔として形成され、この側方開口部21aを開閉自在にする閉鎖する開口カバー21bがボルト等にて取り外し可能に取り付けられている。側方開口部21aは、図3および図4に示すように、運転座席3cの足元位置の側面に設けられている。よって、作業者は、開口カバー21bを開けた状態で、フロア3a側から側方開口部21a内に両手を差し入れることによって側部運転パネルフレーム20内のメンテナンス作業を容易かつ効率良く行うことができる。
【0016】
側部運転パネルフレーム20は、主変速レバー7の基部側に設置されるレバーユニット機構22と、駐車ブレーキペダル機構13とを、予め上下段に振り分けた所定の関連配置位置に対し、精度および取り付け強度を確保しながら効率よく組み付けることを容易にしている。駐車ブレーキペダル機構13は、下前後フレーム20cの上方に設けられた縦枠フレーム20aを覆う側部運転パネルフレーム20に対し、ペダル軸(駐車ブレーキ回動軸)25をレバーユニット機構22の略直下位置で左右方向に貫通させて固定される軸支筒29に回動自在に挿入されて駐車ブレーキペダル11が取り付けられている。
【0017】
また、側部運転パネルフレーム20は、内部のメンテナンス作業を必要とする際に開口カバー21bを取り外すことによって、補強部材23の上方で大きく開放する側方開口部21aに対し、フロア3a側に居ながら両手を差し入れることができる構成となっている。よって、内方に設置されるレバーユニット機構22や、駐車ブレーキリンク機構13a等の近隣配置部品の点検および修理や清掃等のメンテナンス作業を、容易かつ効率よく行うことができる。
【0018】
レバーユニット機構22は、在来と同様な構成と操作により、主変速レバー7を側部運転パネルフレーム20の天板パネルに前後向きのクランク形状孔として形成されるガイド溝に挿入し組み付けた状態で、中立操作経路からレバー回動軸22aを支点に前進操作経路内を前方に向け操作移動させることで、トラニオンアームに連結される変速リンク22bを介し伝動ケース26に備えられるHSTを作動し、前進速度を順次高速に変速し溝前端で最高速度にできる。また、レバーユニット機構22は、中立操作経路から後進操作経路内を後方に向け操作移動させることで、同様に変速リンク22bを介しHSTを作動し、後進速度を順次高速に変速し溝後端で最高速度にできる。
【0019】
さらに、レバーユニット機構22は、主変速レバー7が前進変速域あるいは後進変速域にある状態において、駐車ブレーキペダル11が踏み込み操作された場合に、この操作に連係して主変速レバー7を中立位置方向に揺動させ中立位置に復帰させる前後で対をなす連係部材としての連係ロッド22cを備えている。連係ロッド22cは、図3および図4に示すように、側部運転パネルフレーム20の側方開口部21aに臨んだ位置に取り付けられ、この側方開口部21aからの作業者のアクセスにより、これら各連係ロッド22cの長さが調整可能に構成されている。
【0020】
そして、各連係ロッド22cの長孔には、駐車ブレーキペダル11のブレーキプレート31に突設される戻しピン(図示せず)が挿入されて連結され中立復帰機構が構成されている。中立復帰機構は、駐車ブレーキペダル11が踏み込み操作され、図5および図6に示すように、駐車ブレーキリンク機構13aとしてのブレーキプレート31とブレーキリンク31a等を介し、伝動ケース26に設置されるブレーキ機構が制動状態に達する直前に、主変速レバー7を中立位置にタイミングよく復帰させるように連係動作させる構成となっている。
【0021】
駐車ブレーキペダル機構13は、駐車ブレーキペダル11が駐車ブレーキ状態から非駐車ブレーキ状態に付勢復帰させるバネ材等からなる復帰手段(図示せず)を備えている。この復帰手段は、側部運転パネルフレーム20と駐車ブレーキペダル11との間に介装されるスプリングや、ブレーキ機構のブレーキ解除方向付勢をするスプリング等にて構成されている。駐車ブレーキペダル11は、そのペダル部11bを前部運転パネル部3bの前部左側コーナー部で、フロア3aから立設されるコーナー前壁10aとコーナー側壁10bとに可及的に近接させて配置されている。
【0022】
<駐車ブレーキペダルの構造>
次いで、図3ないし図6を参照して、駐車ブレーキペダル機構13の構成について説明する。駐車ブレーキペダル11は、ペダル軸25の外方側軸端に基部(後部)を挿入し固定されるペダルアーム11aと、ペダルアーム11aの前端(遊端部)に一体的に設けられて縦長フラット状の踏圧面を有して形成されるペダル部11bと、ペダルアーム11aの中途部でペダル部11bに近接した位置に横向きに突設され、ロックペダル12に設けられる係合部(図示せず)に係脱自在に係合させる係合部材としてのピン(図示せず)等から構成されている。また、ペダル軸25の機体内方側軸端に予め挿入された軸支アーム30のアーム基部を、センターフレームとなる補強部材23側から延長されているブラケット24の取付部に対しボルト(図示せず)にて組み付けられ、これによってペダル軸25の機体内方側軸端が、ブラケット24に対し簡単かつ安定して取り付け支持されている。
【0023】
駐車ブレーキリンク機構13aは、駐車ブレーキ調整部としての駐車ブレーキロッド41を有し、この駐車ブレーキロッド41の上端寄りの位置に調整ボス41aが摺動可能(スライド自在)に挿通されて支持されている。摺動ボス41aには、駐車ブレーキアーム41bが回動可能に連結され、駐車ブレーキアーム41bには、ブレーキリンク31aの下端側が回動可能に取り付けられている。よって、駐車ブレーキリンク機構13aは、駐車ブレーキペダル11のペダル部11bを踏み込んだ場合に、ブレーキリンク31aを介して駐車ブレーキロッド41が引き上げられ、この駐車ブレーキロッド41を介して駐車ブレーキアーム41bが操作される構成とされている。また、駐車ブレーキロッド41は、駐車ブレーキアーム41bが回動して調整ボス41aが持ち上げられて引き上げられる構成となっている。
【0024】
また、調整ボス41aの上側には、駐車ブレーキロッド41に挿通されてスプリング41cが取り付けられている。スプリング41cの上側には、駐車ブレーキロッド41に挿通させてワッシャ41dが取り付けられ、駐車ブレーキロッド41の上端部に制動力調整部としてのロックナット41eが調整可能にねじ止めされて取り付けられている。よって、スプリング41cは、駐車ブレーキペダル11のペダル部11bを踏み込んだ場合に圧縮し、このペダル部11bの踏み込みを停止した場合に伸長する構成となっている。さらに、駐車ブレーキロッド41は、調整ボス41aが持ち上げられた場合に、駐車ブレーキロッド41に固定されたワッシャ41dが押し上げられ、駐車ブレーキロッド41が引き上げられる構成となっている。このとき、駐車ブレーキロッド41は、スプリング41cが弾性変形して圧縮され、このスプリング41cの弾性変形が戻る、要するに伸長する際に生じる弾性力によって、駐車ブレーキロッド41が操作される構成となっている。
【0025】
さらに、ロックナット41eは、駐車ブレーキロッド41に対するねじ込み量を調整することによって、このロックナット41eと調整ボス41aとの間の隙間が変化して調整され、駐車ブレーキペダル11のペダル部11bを踏み込んだ際に生じるスプリング41cの圧縮量が調整される。そして、駐車ブレーキロッド41の下端側は、リンク片41fを介して駐車ブレーキ機構41gに回動可能に連結され、この駐車ブレーキ機構41gによる制動力が駐車ブレーキ機構41gを介して調整される構成となっている。そして、ロックナット41eは、図3ないし図5に示すように、フロア3aより下方の台横フレーム17内であって、フロア3aの開口部15aに臨んだ位置に取り付けられ、この開口部15aからの作業者によるアクセスによりロックボルト41cのねじ込み量を調整できる構成となっている。
【0026】
また、ロックナット41eは、補強部材23にて仕切られた空間のうち、この補強部材23より下方の空間に振り分けられて収容されている。一方、連係ロッド22cは、補強部材23にて仕切られた空間のうち、この補強部材23より上方の空間に振り分けられて収容されている。よって、これら連係ロッド21cおよびロックナット41eは、センターフレームとなる補強部材23にて仕切られた空間に振り分けられて収容され、これら連係ロッド21cおよびロックナット41eが開口部15aおよび側方開口部21aの内側にコンパクトに設置された構成となっている。
【0027】
一方、図10および図11に示すように、機体フレーム2の右側前部に構成されたフロア台15の内部には、エンジンEにて駆動される油圧ポンプ(図示せず)からの作動油が供給される油圧バルブ51が収容されている。油圧バルブ51には、ブラケット51aが取り付けられている。そして、ブラケット51aを、フロア台15の下面側に位置する一対の左右方向の横フレーム15bに取り付けられた取付部材15cにブラケット固定ボルト51bをねじ止めして固定することによって、油圧バルブ51がフロア台15内に固定され収容される構成となっている。よって、油圧バルブ51は、フロア3aのフロア板16を台横フレーム17から取り外すことによって、フロア3aに形成された開口部15aからアクセスできるように設置されている。
【0028】
さらに、図1ないし図4図7および図8に示すように、機体フレーム2のフロア台15の前側かつキャビン3kの下側には、エンジンEの始動時やコンピュータ機器(図示せず)への電力供給を行うためのバッテリ52が設置される取付フレーム15dが設けられている。取付フレーム15d上には、バッテリ52が設置されている。バッテリ52は、上面視で油圧バルブ51と前後方向にオーバーラップさせて配置され、このバッテリ52を覆うようにバッテリカバー53が取り外し可能にボルト止めされて取り付けられている。バッテリカバー53は、後側面および下面が開放した形状とされ、フロア台15の前側を覆う構成となっている。また、バッテリカバー53は、バッテリ52に接続されるハーネス(図示せず)等の配線材が収容できる程度の内部空間を有している。
【0029】
バッテリカバー53の右側面には、例えばスプレー缶等の略円柱状の缶体(図示せず)を立て掛けて収納するためのホルダ部53aが設けられている。ホルダ部53aは、スプレー缶等の缶体の置き場となるスプレー置き場であり、缶体を斜めに立て掛けできるように上側を前側に傾斜させて取り付けられている。具体的に、ホルダ部53aは、上面に円形状の挿入開口部53bが形成され、挿入開口部53bからホルダ部53a内に缶体を挿入させて収容させる構成となっている。
【0030】
<調整方法>
次に、駐車ブレーキペダル機構13および連係ロッド22cの調整方法について、図2ないし図5を参照して説明する。
【0031】
まず、駐車ブレーキペダル機構13の調整、要するに点検・整備(メンテナンス)等を行う場合には、図2および図5に示すように、キャビン3k内のフロア3a上にフロア板16が取り付けられているため、このフロア板16に取り付けられた各ボルトのそれぞれを取り外す。その後、図3および図4に示すように、フロア板16をフロア3aから取り外し、このフロア3aに開口部15aを開口させる。
【0032】
この状態で、図3ないし図5に示すように、開口部15aから駐車ブレーキペダル機構13のロックナット41eを目視にて確認できる。よって、開口部15aから作業者がスパナ等の工具を持って手を差し込むことにより、ロックナット41eのねじ込み量を調整できる。この結果、ロックナット41eのねじ込み量の調整によって、駐車ブレーキペダル11のペダル部11bを踏み込んだ際に生じるスプリング41cの圧縮量を調整でき、駐車ブレーキ機構41gによる制動力を調整できる。
【0033】
次いで、連係ロッド12cの調整、要するに主変速レバー7と駐車ブレーキペダル機構13との連係状態を点検・整備(メンテナンス)等を行う場合には、図2および図5に示すように、キャビン3k内のフレームカバー21に開口カバー21bが取り付けられているため、この開口カバー21に取り付けられた各ボルトのそれぞれを取り外す。その後、図3および図4に示すように、フレームカバー21から開口カバー21bを取り外し、フレームカバー21に側方開口部21aを開口させる。
【0034】
このとき、図3ないし図5に示すように、側方開口部21aから連係ロッド22cを目視にて確認でき、側方開口部21aから作業者がスパナ等の工具をもって手を差し込むことにより、連係ロッド21cの長さを調整できる。この結果、これら連係ロッド22cの長さ適宜調整することにより、主変速レバー7が前進変速域あるいは後進変速域にある状態で、駐車ブレーキペダル11が踏み込み操作された場合に、この操作に連係して主変速レバー7を中立位置方向に揺動させ中立位置に復帰させる状態に調整できる。
【0035】
さらに、開口部15aおよび側方開口部21aのそれぞれを開口させることにより、フロア3a上から開口部15aを介してロックナット41eを目視でき、かつ側方開口部21aを介して連係ロッド22cを目視できる。よって、これらロックナット41eおよび連係ロッド22cの調整作業を一連の作業として行うことができる。
【0036】
<作用効果>
叙述の如く構成された本一実施形態によれば、コンバイン1のキャビン3k内のフロア板16を取り外して形成される開口部15aに臨んだ位置に、駐車ブレーキペダル機構13のロックナット41eを設置した構成としている。このため、開口部15aを開くことにより、この開口部15aからロックナット41eを目視できアクセスできる。よって、機体フレーム2の下方へ潜り込んだり、他の部品を取り外したりすることなく、キャビン3k内からロックナット41eへアクセスできるため、開口部15aから作業者がスパナ等の工具を持って手を差し込むことにより、ロックナット41eのねじ込み量を容易に調整できる。
【0037】
したがって、例えばキャビン3kの扉を開けた状態で、フロア3a上に上ることなく、立ち姿勢で駐車ブレーキペダル機構13の調整が可能となり、駐車ブレーキペダル11による制動力の調整、すなわち駐車ブレーキの調整の作業性を向上できる。さらに、前処理部5と運転座席3cとの間の部分にバッテリ52等を設置した構成のコンバイン1としても、駐車ブレーキペダル機構13のロックナット41eの調整を容易に行うことができる。
【0038】
また、運転座席3cの足元位置の側面に設けたフレームカバー21から開口カバー21bを取り外して形成される側方開口部21aに臨んだ位置に、連係ロッド22cを設置した構成としている。この結果、側方開口部21aを開くことにより、この側方開口部21aから連係ロッド22cを目視できアクセスできる。したがって、機体フレーム2の下方へ潜り込んだり、他の部品を取り外したりすることなく、キャビン3k内から連係ロッド22cへアクセスでき、側方開口部21aから作業者がスパナ等の工具を持って手を差し込むことにより、連係ロッド22cの長さを調整できる。よって、これら連係ロッド22cの長さ適宜調整することにより、主変速レバー7が前進変速域あるいは後進変速域にある状態で、駐車ブレーキペダル11が踏み込み操作された場合に、この操作に連係して主変速レバー7を中立位置方向に揺動させ中立位置に復帰させる状態への調整の作業性を向上できる。
【0039】
特に、開口部15aおよび側方開口部21aのそれぞれを開くことにより、開口部15aからロックナット41eを目視でき、側方開口部21aから連係ロッド22cを目視できる構成となっている。このため、これらロックナット41eおよび連係ロッド22cの調整作業を同じ立ち位置で行うことができ、一連の作業として行うことができるから、これら調整作業の作業性を大幅に向上できる。
【0040】
また、運転座席3cを支えるフロア台15の左側のスペースに、駐車ブレーキペダル機構13のロックナット41e等を収容させ、このフロア台15の縦フレーム15eを、前後方向に沿って開口部15aを横断する構成としている。よって、開口部15aを開き、この開口部15aから作業者がスパナ等の工具を持って手を差し込んでロックナット41eを調整する際に、作業者がフロア台15の縦フレーム15eをアームレスト(肘掛け)として用いることができるから、開口部15aからのロックナット41eの調整作業を正確かつ容易(楽)にできる。
【0041】
さらに、図3ないし図5に示すように、補強部材23にて仕切られた空間のうち、この補強部材23より下方の空間にロックナット41eを振り分けて収容し、この補強部材23にて仕切られた空間のうち、この補強部材23より上方の空間に連係ロッド21cを振り分けて収容した構成としている。この結果、連係ロッド21cを開口部15aに臨ませ、かつロックナット41eを側方開口部21aに臨ませた位置であって、これら開口部15aおよび側方開口部21aの内側にコンパクトに収納させて設置できる。よって、これら連係ロッド21cおよびロックナット41eの調整作業を同一箇所から振り分けて個々に行うことができるため、これら連係ロッド21cおよびロックナット41eの調整作業を適切かつ正確に行うことができる。
【0042】
さらに、フロア台15の内部に油圧バルブ51を収容し、ブラケット51aを介してフロア台15の横フレーム15a上にブラケット固定ボルト51bにて油圧バルブ51を固定した構成としている。この結果、フロア3aからフロア板16を取り外して開口部15aを開けることにより、この開口部15aから油圧バルブ51にアクセスでき、この油圧バルブ51の上面側から各ブラケット固定ボルト51bにアクセスできる。よって、開口部15aから作業者がスパナ等の工具を持って手を差し込んで各ブラケット固定ボルト51bを取り外すことによって油圧バルブ51を取り外すことができるから、油圧バルブ51の交換作業やメンテナンス作業を容易にできる。
【0043】
また、フロア台15の前側かつキャビン3kの下側に取付フレーム15dを設け、この取付フレーム15d上にバッテリ52を設置し、このバッテリ51にバッテリカバー53を取り付けてバッテリ52およびフロア台15の前側を覆う構成としている。この結果、バッテリ52が設置された取付フレーム15d上の空間とフロア台15内の空間とが繋がった空間(連続する)となるため、バッテリ52上部の空間をハーネス配策用の空間として用いることができる。よって、ハーネスの配策経路の短縮が可能となり、ヒューズ等の部品配置の自由度を向上できる。
【0044】
フロア台15の前側とバッテリ52との間を仕切るカバーが存在しないため、大型化した油圧バルブ51とバッテリ52とを上面視でオーバーラップさせて配置できるから、これら油圧バルブ51およびバッテリ52の配置スペースをコンパクトにできる。また、バッテリカバー52を取り外すことにより、バッテリ52とフロア台15との隙間からフロア台15内を目視できる。よって、バッテリ52を取り外すことなくバッテリカバー53のみを取り外すことでフロア台15内のメンテナンスが可能になるため、フロア台15内のメンテナンスの作業性を向上できる。さらに、バッテリカバー53のフロア台15に面する後側が開放した構成となっているため、例えばバッテリ52から生じた熱がバッテリカバー53内にこもりにくく、バッテリ52の発熱に伴うトラブルを適切に防止できる。
【0045】
また、バッテリカバー53に、例えばスプレー缶等の缶材が収容可能なホルダ部53aを設けた構成としている。よって、ホルダ部53aに缶材を収容させることにより、キャビン3kの室外であって、エンジンEの冷却風が当たらず高温となることがなく比較的運転座席3cに近い場所に缶材を設置できるので、作業者の利便性を向上できる。このとき、上側を前側に傾斜させてホルダ部53aを設けたため、バッテリカバー53の上方に位置するキャビン3kのフロントカバーが邪魔にならずに缶材をホルダ部53aに収納でき、このホルダ部53a内にゴミが溜まりにくくできる。
【0046】
<その他>
なお、上記一実施形態においては、バッテリカバー53に設けたホルダ部53aに缶材を収容させる構成としたが、このバッテリカバー53とキャビン3kのフロントカバーとの間の空間に、缶材を横向きにして収容可能な収容部を設ける構成とすることもできる。この場合には、直接日光が当たらずデッドスペースとなる箇所を有効利用でき、バッテリカバー53上での屑等の堆積を目立たなくできる。
【0047】
また、バッテリカバー53をフロア台15にボルト止めして固定したが、バッテリカバー53を横方向にスライド可能にフロア台15の前側に取り付けることもできる。この場合には、前処理部5が近接して接触した場合に、この前処理部5にてバッテリカバー53が押されて横方向にスライドするため、前処理部5がバッテリカバー53に接触することによるバッテリカバー53等の損傷を防止できる。
【符号の説明】
【0048】
1 コンバイン(作業車両)
2 機体フレーム(車両本体)
2a 走行部
3a フロア(床面)
3c 運転座席(運転席)
7 主変速レバー(変速レバー)
13 駐車ブレーキペダル機構(制動部)
15 フロア台(フレーム部材)
15a 開口部
21a 側方開口部
22c 連係ロッド(連係部材)
23 補強部材(センターフレーム)
41e ロックナット(制動力調整部)
図1
図2
図3
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図9
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図11