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特開2024-112009電動アクチュエータ、およびアクチュエータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112009
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ、およびアクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240813BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F16H1/32 A
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016809
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】白井 寛
【テーマコード(参考)】
3J027
5H607
【Fターム(参考)】
3J027GC02
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE11
3J027GE14
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】出力シャフトに回転トルクが加わっても、出力シャフトが回転することを抑制できる電動アクチュエータ、およびアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】モータと、モータシャフトに連結された伝達機構と、出力シャフトと、ケースと、を備える。モータシャフトは、偏心軸部を有する。伝達機構は、偏心軸部にベアリングを介して連結される外歯ギヤと、ケースに固定される内歯ギヤと、外歯ギヤの回転を出力シャフトに伝達するフランジ部とを有する。外歯ギヤは、外歯ギヤを軸方向に貫通する複数の貫通孔部を有する。フランジ部には、軸方向に突出する複数の突出部が設けられる。複数の突出部は、複数の貫通孔部のそれぞれに挿入される。内歯歯車部の一部は、外歯歯車部の一部と噛み合う。外歯歯車部および内歯歯車部は、インボリュート歯車である。外歯歯車部の複数の歯部の圧力角および内歯歯車部の複数の歯部の圧力角は、22°以上である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸線を中心として回転可能なモータシャフトを有するモータと、
前記モータシャフトに連結された伝達機構と、
前記伝達機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトと、
前記モータ、前記伝達機構、および前記出力シャフトを内部に収容するケースと、
を備え、
前記モータシャフトは、前記モータ軸線と平行な偏心軸線を中心とする偏心軸部を有し、
前記伝達機構は、
前記偏心軸部の外周面にベアリングを介して連結され、前記モータシャフトの回転が伝達される環状の外歯ギヤと、
前記外歯ギヤの径方向外側に配置され、前記ケースに固定される環状の内歯ギヤと、
前記外歯ギヤの回転を前記出力シャフトに伝達する環状のフランジ部と、
を有し、
前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか一方は、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか一方を軸方向に貫通し、前記モータ軸線を囲んで配置される複数の貫通孔部を有し、
前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか他方には、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか他方から軸方向に突出し、前記モータ軸線を囲んで配置される複数の突出部が設けられ、
前記複数の突出部のそれぞれは、前記複数の貫通孔部のそれぞれに挿入され、
前記内歯ギヤの内周面に沿って設けられる内歯歯車部の一部は、前記外歯ギヤの外周面に沿って設けられる外歯歯車部の一部と噛み合い、
前記外歯歯車部および前記内歯歯車部は、それぞれ、インボリュート歯車であり、
前記外歯歯車部を構成する複数の外歯歯部の圧力角、および前記内歯歯車部を構成する複数の内歯歯部の圧力角は、それぞれ、22°以上である、電動アクチュエータ。
【請求項2】
複数の前記外歯歯部の圧力角、および複数の前記内歯歯部の圧力角は、それぞれ、25.5°以下である、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記モータシャフトは、中空シャフトであり、
前記出力シャフトの少なくとも一部は、前記モータシャフトの内部に位置し、
前記出力シャフトは、前記モータ軸線を中心に回転可能である、請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1または2記載の前記電動アクチュエータと、前記出力シャフトと連結される対象物と、を備え、
前記電動アクチュエータは、車両のシフト操作に基づいて前記対象物を駆動する、アクチュエータ装置。
【請求項5】
前記対象物は、車両のシフト操作に基づいて駆動されるパーキング切替機構である、請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータ、およびアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両操作に基づいて、例えばパーキング切替機構等の対象物を駆動する電動アクチュエータが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-247798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動アクチュエータにおいては、対象物と連結される出力軸に回転トルクが加わると出力軸が回転する虞があり、これにより、対象物を構成する部材等の位置が変動する場合虞があった。係る対象物を構成する部材等の位置の変動を抑制するために、対象物にディテントプレートおよびストッパ等の部材を設けると、対象物の部品点数が増大するとともに、対象物の製造コストが増大していた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、出力シャフトに回転トルクが加わっても、出力シャフトが回転することを抑制できる電動アクチュエータ、およびアクチュエータ装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、モータ軸線を中心として回転可能なモータシャフトを有するモータと、前記モータシャフトに連結された伝達機構と、前記伝達機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトと、前記モータ、前記伝達機構、および前記出力シャフトを内部に収容するケースと、を備える。前記モータシャフトは、前記モータ軸線と平行な偏心軸線を中心とする偏心軸部を有する。前記伝達機構は、前記偏心軸部の外周面にベアリングを介して連結され、前記モータシャフトの回転が伝達される環状の外歯ギヤと、前記外歯ギヤの径方向外側に配置され、前記ケースに固定される環状の内歯ギヤと、前記外歯ギヤの回転を前記出力シャフトに伝達する環状のフランジ部と、を有する。前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか一方は、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか一方を軸方向に貫通し、前記モータ軸線を囲んで配置される複数の貫通孔部を有する。前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか他方には、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか他方から軸方向に突出し、前記モータ軸線を囲んで配置される複数の突出部が設けられる。前記複数の突出部のそれぞれは、前記複数の貫通孔部のそれぞれに挿入される。前記内歯ギヤの内周面に沿って設けられる内歯歯車部の一部は、前記外歯ギヤの外周面に沿って設けられる外歯歯車部の一部と噛み合う。前記外歯歯車部および前記内歯歯車部は、それぞれ、インボリュート歯車である。前記外歯歯車部を構成する複数の外歯歯部の圧力角、および前記内歯歯車部を構成する複数の内歯歯部の圧力角は、それぞれ、22°以上である。
【0007】
本発明のアクチュエータ装置の一つの態様は、上記の前記電動アクチュエータと、前記出力シャフトと連結される対象物と、を備える。前記電動アクチュエータは、車両のシフト操作に基づいて前記対象物を駆動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、電動アクチュエータ、およびアクチュエータ装置において、出力シャフトに回転トルクが加わっても、出力シャフトが回転することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態の駆動装置を示す側面図である。
図2図2は、一実施形態の電動アクチュエータを示す断面図である。
図3図3は、一実施形態の伝達機構を軸方向一方側から見た図である。
図4図4は、一実施形態の伝達機構を軸方向一方側から見た図であって、図3の部分拡大図である。
図5図5は、一実施形態の電動アクチュエータの圧力角と正駆動時の駆動効率との関係を示す図である。
図6図6は、一実施形態の電動アクチュエータの圧力角と逆駆動時の逆駆動トルクとの関係を示す図である。
図7図7は、一実施形態の比較例の電動アクチュエータの外歯ギヤに加わる力を説明する図であって、伝達機構を軸方向一方側から見た図である。
図8図8は、一実施形態の比較例の電動アクチュエータの外歯ギヤに加わる力を説明する図であって、伝達機構を軸方向一方側から見た第2の図である。
図9図9は、一実施形態の電動アクチュエータの外歯ギヤに加わる力を説明する図であって、伝達機構を軸方向一方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態においては、一例として、車両操作に基づいて電動アクチュエータ9が変位駆動させる対象物が、パーキング切替機構70である場合について説明する。本実施形態の電動アクチュエータ9およびパーキング切替機構70が搭載された機器として、駆動装置1について説明する。
【0011】
以下の説明では、図1に示す本実施形態の駆動装置1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、+Z側を上側とし、-Z側を下側とする鉛直方向である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、各図に適宜示す電動アクチュエータ9のモータ軸線J1が延びる方向である。モータ軸線J1は、仮想軸線である。本実施形態において、+X側は、軸方向の一方側であり、-X側は、軸方向の他方側である。Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の両方と直交する方向であって、車両の左右方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左右方向一方側であり、-Y側は、車両の左右方向他方側である。
【0012】
本実施形態では、Z軸方向と平行な方向を「鉛直方向Z」と呼び、X軸方向と平行な方向を「軸方向」と呼び、Y軸方向と平行な方向を「左右方向Y」と呼ぶ。また、Z軸方向の正の側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。X軸方向の正の側(+X側)を単に「軸方向一方側」と呼び、X軸方向の負の側(-X側)を単に「軸方向他方側」と呼ぶ。Y軸方向の正の側(+Y側)を単に「左右方向一方側」と呼び、Y軸方向の負の側(-Y側)を単に「左右方向他方側」と呼ぶ。なお、上側、および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0013】
また、以下の説明においては、モータ軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸線J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。周方向は、各図において矢印θ1で示される。周方向のうち矢印θ1が向く側(+θ1側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θ1が向く側と逆側(-θ1側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、軸方向一方側から見てモータ軸線J1回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、軸方向一方側から見てモータ軸線J1回りに反時計回りに進む側である。
【0014】
図1に示す本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載される。駆動装置1は、ハウジング2と、駆動モータ3と、減速装置4と、差動装置5と、パークロックギヤ6と、アクチュエータ装置100と、を備える。アクチュエータ装置100は、パーキング切替機構70と、電動アクチュエータ9と、を備える。
【0015】
ハウジング2は、駆動モータ3、減速装置4、差動装置5、およびパーキング切替機構70を内部に収容する。図示は省略するが、ハウジング2の内部には、オイルが収容される。減速装置4は、駆動モータ3に接続される。差動装置5は、減速装置4に接続され、駆動モータ3から出力されるトルクを図示しない車両の車軸に伝達する。パークロックギヤ6は、減速装置4および差動装置5を介して、車両の車軸に連結される。パークロックギヤ6は、複数の歯部6aを有する。
【0016】
パーキング切替機構70は、車両のシフト操作に基づいて、電動アクチュエータ9によって駆動される。パーキング切替機構70は、パークロックギヤ6をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。パーキング切替機構70は、車両のギヤがパーキングである場合に、パークロックギヤ6をロック状態とし、車両のギヤがパーキング以外である場合に、パークロックギヤ6をアンロック状態とする。車両のギヤがパーキング以外である場合とは、例えば、車両のギヤがドライブ、ニュートラル、リバース等である場合を含む。パーキング切替機構70は、パーキングシャフト78と、ロッド76と、環状部材73と、パークロックアーム77と、支持部材75と、を有する。
【0017】
パーキングシャフト78は、電動アクチュエータ9と連結され、電動アクチュエータ9によってモータ軸線J1周りに回転させられる。本実施形態において、パーキングシャフト78は、モータ軸線J1に沿って軸方向に延びる。図2に示すように、パーキングシャフト78の軸方向一方側の端部には、軸方向に延びるスプライン溝が周方向に沿って複数設けられる。
【0018】
図1に示すように、ロッド76は、パーキングシャフト78と連結される。パーキングシャフト78がモータ軸線J1周りに回転すると、ロッド76は、左右方向Yに移動する。環状部材73は、ロッド76と連結される。環状部材73は、左右方向Yに延びる略円錐状である。環状部材73は、左右方向Yに移動可能である。図示は省略するが、環状部材73の外周面は、左右方向一方側(+Y側)に向かうに従って外径が小さくなるテーパ面である。ロッド76が左右方向Yに移動すると、環状部材73は、ロッド76と共に左右方向Yに移動する。
【0019】
支持部材75は、環状部材73を左右方向Yに移動可能に支持する。本実施形態において支持部材75は、環状部材73を下側から支持する。支持部材75は、ハウジング2の内側面に固定される。
【0020】
パークロックアーム77は、環状部材73の上側、且つ、パークロックギヤ6の下側に配置される。パークロックアーム77は、左右方向Yに延びる回転軸線J3を中心として左右方向Yに延びる円柱状の支持シャフト79によって、回転軸線J3周りに回転可能に支持される。パークロックアーム77は、アーム本体77aと、噛合部77bと、接触部77cと、を有する。
【0021】
アーム本体77aは、支持シャフト79から軸方向一方側に延びる。接触部77cは、アーム本体77aの軸方向一方側の端部から軸方向一方側に突出する。接触部77cは、環状部材73の外周面に上側から接触する。噛合部77bは、アーム本体77aから上側に突出する。支持シャフト79には図示しない巻きバネが装着される。巻きバネは、パークロックアーム77に対して、回転軸線J3を中心として左右方向一方側(+Y側)から見て反時計回り向きの弾性力を加える。
【0022】
上述のように、環状部材73の外周面の外径は、左右方向他方側(-Y側)から左右方向一方側(+Y側)に向かうにしたがって大きくなる。そのため、パーキングシャフト78の回転に伴って、環状部材73が左右方向他方側に移動すると、接触部77cが上側に持ち上げられ、パークロックアーム77が回転軸線J3を中心として左右方向一方側(+Y側)から見て時計回りに回転する。これにより、図示は省略するが、噛合部77bが、パークロックギヤ6の歯部6a同士の間に噛み合い、パークロックギヤ6は、ロック状態となる。
【0023】
また、パーキングシャフト78の回転に伴って、環状部材73が左右方向一方側(+Y側)に移動すると、環状部材73の外周面によって持ち上げられていた接触部77cが自重および図示しない巻きバネからの弾性力によって下側に移動し、パークロックアーム77は、回転軸線J3を中心として左右方向一方側(+Y側)から見て反時計回りに回転する。これにより、噛合部77bが歯部6a同士の間から外れ、パークロックギヤ6は、アンロック状態となる。これらにより、車両のシフト操作に基づいて電動アクチュエータ9が駆動すると、パーキングシャフト78、ロッド76、および環状部材73を介して、パークロックアーム77が回転軸線J3周りに回転し、パークロックギヤ6をロック状態とアンロック状態との間で切り替えることができる。
【0024】
なお、本実施形態の電動アクチュエータ9は、後述するように、パーキングシャフト78と連結される出力シャフト46にパーキングシャフト78から回転トルクが加わっても、出力シャフト46がモータ軸線J1周りに回転することを抑制できる。そのため、出力シャフト46にパーキングシャフト78から回転トルクが加わっても、パークロックアーム77の位置が変動することを抑制できる。したがって、本実施形態のパーキング切替機構70には、ディテントプレートおよびストッパ部材等のパークロックアーム77の位置変動を抑制する部材が設けられていない。
【0025】
電動アクチュエータ9は、車両のシフト操作に基づいてパーキング切替機構70、すなわち対象物を駆動する。本実施形態において、電動アクチュエータ9は、パーキングシャフト78等の部材を介して、パークロックアーム77を上側、または下側に移動させることにより、パークロックギヤ6をロック状態とアンロック状態との間で切り換える。
【0026】
図2に示すように、電動アクチュエータ9は、ケース10と、モータ20と、伝達機構30と、出力シャフト46と、第1ベアリング51と、第2ベアリング52と、第3ベアリング53と、制御基板80と、回転センサ81と、センサマグネット45と、を備える。第1ベアリング51、第2ベアリング52、および第3ベアリング53は、例えば、ボールベアリングである。
【0027】
ケース10は、モータ20、伝達機構30、出力シャフト46を含む電動アクチュエータ9の各部を内部に収容する。ケース10は、ケース本体11と、蓋部材12と、を有する。ケース本体11は、モータ軸線J1を中心とする円筒状である。ケース本体11は、軸方向一方側に開口する開口部11hを有する。ケース本体11は、第1収容部11aと、第2収容部11bと、を有する。
【0028】
第1収容部11aは、ケース本体11の軸方向他方側の部分である。第1収容部11aは、軸方向他方側に位置する底部11cと、底部11cの径方向外縁から軸方向一方側に延びる周壁部11dと、を有する。底部11cには、底部11cを軸方向に貫通する孔部11eが設けられる。孔部11eは、モータ軸線J1を中心とする略円形状の孔である。孔部11eの軸方向一方側の部分は、第1ベアリング51を保持する第1ベアリング保持部11fを構成する。第1ベアリング51は、第1ベアリング保持部11fに保持される。
【0029】
第2収容部11bは、ケース本体11の軸方向一方側の部分である。第2収容部11bは、第1収容部11aと軸方向に繋がる。第2収容部11bは、軸方向一方側に開口する筒状である。第2収容部11bの内周面には、軸方向一方側を向く段差面11gを有する段差が設けられる。
【0030】
蓋部材12は、ケース本体11の軸方向一方側の端部に固定される。蓋部材12は、ケース本体11の開口部11hを軸方向一方側から塞ぐ。蓋部材12は、開口部11hを軸方向一方側から塞ぐ蓋本体部12aと、蓋本体部12aから軸方向他方側に突出する第2ベアリング保持部12bと、を有する。第2ベアリング保持部12bは、モータ軸線J1を中心とし、軸方向他方側に開口する円筒状である。第2ベアリング保持部12bの内周面には、第2ベアリング52が保持される。
【0031】
モータ20は、ロータ21と、ステータ22と、を有する。ロータ21は、モータ軸線J1を中心として回転可能である。ロータ21は、モータシャフト23と、ロータコア24aと、マグネット24bと、を有する。モータシャフト23は、モータ軸線J1を中心として回転可能である。モータシャフト23は、モータ軸線J1を中心として軸方向に延びる略円筒状である。モータシャフト23は、中空シャフトである。モータシャフト23は、軸方向の両側に開口する。モータシャフト23は、第1収容部11aの内部と第2収容部11bの内部とに跨って延びている。モータシャフト23は、本体部23aと、偏心軸部23bと、を有する。
【0032】
本体部23aは、モータシャフト23の軸方向一方側の部分である。本体部23aの外周面にはロータコア24aが固定される。本体部23aの軸方向一方側の端部は、第2収容部11bの内部に配置される。本体部23aのうち軸方向一方側の端部以外の部分は、第1収容部11aの内部に配置される。
【0033】
偏心軸部23bは、モータシャフト23の軸方向他方側の部分である。偏心軸部23bは、本体部23aと軸方向に繋がる。偏心軸部23bは、第1収容部11aの内部に配置される。偏心軸部23bは、ロータコア24aよりも軸方向他方側に配置される。軸方向に見て、偏心軸部23bの内周面は、モータ軸線J1を中心とする円形状である。軸方向に見て、偏心軸部23bの外周面は、モータ軸線J1に対して偏心した偏心軸線J2を中心とする円形状である。偏心軸線J2は、モータ軸線J1と平行な仮想軸線である。偏心軸部23bの外周面には、第3ベアリング53の内輪が嵌め合わされて固定される。これにより、第3ベアリング53は、モータシャフト23に固定される。
【0034】
ロータコア24aは、モータ軸線J1を中心とする円環状である。ロータコア24aは、第1収容部11aの内部に配置される。ロータコア24aは、本体部23aの外周面に固定される。マグネット24bは、ロータコア24aの外周面に固定される。本実施形態において、マグネット24bは、周方向に間隔をあけて複数配置される。
【0035】
ステータ22は、ロータ21と径方向に対向して配置される。ステータ22は、ロータ21の径方向外側に、ロータ21と隙間を介して配置される。ステータ22は、第1収容部11aの内部に配置される。ステータ22は、ロータコア24aを径方向外側から囲む環状のステータコア22aと、ステータコア22aに装着されたインシュレータ22bと、インシュレータ22bを介してステータコア22aに装着された複数のコイル部22cと、を有する。ステータコア22aの外周面は、周壁部11dの内周面に固定されている。これにより、ステータ22は、ケース10に固定されている。
【0036】
伝達機構30は、第1収容部11aの内部に配置される。伝達機構30は、ロータコア24aおよびステータ22の軸方向他方側に配置される。伝達機構30は、モータシャフト23および出力シャフト46に連結される。伝達機構30は、モータシャフト23のモータ軸線J1周りの回転を出力シャフト46に伝達する。すなわち、出力シャフト46には、伝達機構30を介してロータ21の回転が伝達される。本実施形態において、伝達機構30は、ロータ21の回転を減速して出力シャフト46に伝達する減速機構である。伝達機構30は、ロータ21の回転を増速して出力シャフト46に伝達する増速機構であってもよいし、ロータ21の回転と同じ回転速度の回転を出力シャフト46に伝達する伝達機構であってもよい。伝達機構30は、外歯ギヤ31と、内歯ギヤ32と、フランジ部42と、複数の突出部43と、を有する。
【0037】
外歯ギヤ31は、偏心軸線J2を中心とする円環状である。外歯ギヤ31は、第3ベアリング53の外輪に嵌め合わされる。外歯ギヤ31は、モータシャフト23の偏心軸部23bに第3ベアリング53を介して連結される。これにより、外歯ギヤ31には、モータシャフト23の回転が伝達される。外歯ギヤ31は、偏心軸線J2周りにモータシャフト23と相対的に回転可能である。図3に示すように、外歯ギヤ31は、複数の貫通孔部31bと、外歯歯車部31cと、を有する。
【0038】
本実施形態において、複数の貫通孔部31bのそれぞれは、外歯ギヤ31を軸方向に貫通する孔である。軸方向に見て、複数の貫通孔部31bのそれぞれは、円形状である。複数の貫通孔部31bは、モータ軸線J1を囲んで配置される。本実施形態において、貫通孔部31bは、8個設けられる。
【0039】
外歯歯車部31cは、外歯ギヤ31の外周面に沿って設けられる。外歯歯車部31cは、外歯ギヤ31の外周面に沿って並ぶ複数の外歯歯部31dによって構成される。本実施形態において、外歯歯車部31cは、79個の外歯歯部31dによって構成される。すなわち外歯歯車部31cの歯数N1は、79である。外歯歯車部31cの歯数N1は、78以下であってもよいし、80以上であってもよい。本実施形態において、外歯歯車部31cは、インボリュート歯車である。図3に示す第1仮想線L1は、軸方向に見て、偏心軸線J2と、外歯歯部31dのピッチ点31fとを結ぶ仮想線である。第1仮想線L1は、偏心軸線J2と直交する直線である。図4に示すように、ピッチ点31fは、外歯歯部31dの歯面のうち内歯ギヤ32の後述する内歯歯部32bと接触する部分である。第1接線L3は、外歯歯部31dの歯面と接する接線のうち、ピッチ点31fと接する接線である。第1仮想線L1と第1接線L3とが成す角度は、外歯歯部31dの圧力角α1である。本実施形態において、複数の外歯歯部31dそれぞれの圧力角α1は、22°以上、25.5°以下である。
【0040】
図3に示すように、内歯ギヤ32は、外歯ギヤ31の径方向外側に配置される。内歯ギヤ32は、外歯ギヤ31を径方向外側から囲む。内歯ギヤ32は、モータ軸線J1を中心とする環状である。図2に示すように、内歯ギヤ32の外周面は、周壁部11dの内周面に固定される。すなわち、内歯ギヤ32は、ケース10に固定される。図3に示すように、内歯ギヤ32は、内歯歯車部32aを有する。
【0041】
内歯歯車部32aは、内歯ギヤ32の内周面に沿って設けられる。内歯歯車部32aは、内歯ギヤ32の内周面に沿って並ぶ複数の内歯歯部32bによって構成される。本実施形態において、内歯歯車部32aは、80個の内歯歯部32bによって構成される。すなわち内歯歯車部32aの歯数N2は、80である。内歯歯車部32aの歯数N2は、79以下であってもよいし、81以上であってもよい。内歯歯車部32aの一部は、外歯歯車部31cの一部と噛み合っている。本実施形態において、内歯歯車部32aは、インボリュート歯車である。図3に示す第2仮想線L2は、軸方向に見て、モータ軸線J1と、内歯歯部32bのピッチ点32dとを結ぶ仮想線である。第2仮想線L2は、モータ軸線J1と直交する直線である。図4に示すように、ピッチ点32dは、内歯歯部32bの歯面のうち外歯歯部31dのピッチ点31fと接触する部分である。第2接線L4は、内歯歯部32bの歯面と接する接線のうち、ピッチ点32dと接する接線である。第2仮想線L2と第2接線L4とが成す角度は、内歯歯部32bの圧力角α2である。本実施形態において、複数の内歯歯部32bそれぞれの圧力角α2は、22°以上、25.5°以下である。圧力角α1と圧力角α2とは、互いに同じ角度であってもよいし、互いに異なる角度であってもよい。本実施形態において、圧力角α1と圧力角α2とは、互いに同じ角度である。
【0042】
図2に示すように、フランジ部42は、外歯ギヤ31の軸方向他方側に配置される。フランジ部42は、外歯ギヤ31と軸方向に間隔をあけて配置される。フランジ部42は、モータ軸線J1を中心とする円環状である。フランジ部42は、出力シャフト46のうちモータシャフト23よりも軸方向他方側の部分に固定される。フランジ部42には、複数の突出部43が設けられる。
【0043】
本実施形態において、複数の突出部43のそれぞれは、フランジ部42から軸方向一方側に突出する円柱状である。本実施形態において、複数の突出部43とフランジ部42とは、同一の単一部材の一部である。図3に示すように、複数の突出部43それぞれの外径は、複数の貫通孔部31bそれぞれの内径よりも小さい。複数の突出部43は、モータ軸線J1を囲んで配置される。本実施形態において、突出部43は、8個設けられる。図2に示すように、複数の突出部43のそれぞれは、複数の貫通孔部31bのそれぞれに軸方向他方側から挿入される。図3に示すように、各突出部43は、貫通孔部31bの内側面を介して、外歯ギヤ31をモータ軸線J1周りに揺動可能に支持する。
【0044】
出力シャフト46は、電動アクチュエータ9の駆動力をパーキング切替機構70に出力する。図2に示すように、出力シャフト46は、軸方向に延びる。出力シャフト46は、モータ軸線J1を中心に回転可能である。出力シャフト46には、伝達機構30を介してモータシャフト23の回転が伝達される。出力シャフト46は、モータシャフト23の内部を軸方向に通される。出力シャフト46は、モータシャフト23から軸方向両側に突出している。すなわち、出力シャフト46の少なくとも一部は、モータシャフト23の内部に位置する。なお、出力シャフト46とフランジ部42とは、同一の単一部材の一部であってもよい。出力シャフト46は、出力シャフト本体41と、出力シャフト本体41の外周面に固定される取付部材44と、を有する。
【0045】
出力シャフト本体41は、軸方向に延びる。出力シャフト本体41は、第1ベアリング51および第2ベアリング52によって、モータ軸線J1周りに回転可能に支持される。出力シャフト本体41は、連結部41aと、延伸部41bと、を有する。
【0046】
連結部41aは、出力シャフト本体41の軸方向他方側の部分である。連結部41aは、モータ軸線J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。連結部41aは、軸方向他方側に開口する。連結部41aの軸方向他方側の端部は、孔部11eの内部に挿入されている。連結部41aの軸方向一方側の端部は、偏心軸部23bの内部に挿入されている。連結部41aは、第1ベアリング51によってモータ軸線J1周りに回転可能に支持される。
【0047】
連結部41aの内部には、軸方向他方側からパーキングシャフト78の軸方向一方側の部分が挿入可能である。パーキングシャフト78の外周面に設けられた複数のスプライン溝が、連結部41aの内周面に設けられた複数のスプライン溝に嵌め合わされると、連結部41aとパーキングシャフト78とが互いに連結される。これにより、パーキング切替機構70、すなわち対象物は、出力シャフト46と連結される。モータシャフト23の回転は、出力シャフト46を介して、パーキングシャフト78に伝達される。これにより、電動アクチュエータ9は、パーキング切替機構70を駆動する。
【0048】
延伸部41bは、出力シャフト本体41の軸方向一方側の部分である。延伸部41bは、モータ軸線J1を中心として軸方向に延びる円柱状である。延伸部41bは、連結部41aと軸方向に繋がる。延伸部41bは、モータシャフト23の内部を軸方向に通される。延伸部41bの軸方向一方側の部分は、モータシャフト23よりも軸方向一方側に突出する。延伸部41bの軸方向一方側の端部は、第2ベアリング52によってモータ軸線J1周りに回転可能に支持される。上述のように、連結部41aは、第1ベアリング51によってモータ軸線J1周りに回転可能に支持される。これらにより、出力シャフト46は、第1ベアリング51および第2ベアリング52を介して、ケース10に支持される。
【0049】
本実施形態において、延伸部41bの外径は、モータシャフト23の本体部23aの内径よりも僅かに小さい。延伸部41bは、本体部23aの内部に隙間嵌めされる。延伸部41bと本体部23aとの間の径方向の隙間は、延伸部41bによって、モータシャフト23をモータ軸線J1周りに回転可能に支持できる程度に小さい。よって、モータシャフト23は、出力シャフト46、第1ベアリング51、および第2ベアリング52を介して、ケース10に支持される。これにより、ケース10に対して、モータシャフト23が径方向に移動することを抑制できる。なお、延伸部41bと本体部23aとの隙間には、例えば、潤滑油を配置してもよい。
【0050】
取付部材44は、延伸部41bの外周面のうちモータシャフト23よりも軸方向一方側の部分に固定される。取付部材44は、固定筒部44aと、環状部44bと、を有する。固定筒部44aは、モータ軸線J1を中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。固定筒部44aは、延伸部41bの外周面に固定される。環状部44bは、固定筒部44aの軸方向他方側の端部から径方向外側に広がる略円環板状である。
【0051】
センサマグネット45は、モータ軸線J1を囲む環状である。センサマグネット45は、固定筒部44aの外周面に固定される。センサマグネット45の径方向外縁部は、環状部44bよりも径方向外側に位置し、回転センサ81と軸方向に対向する。
【0052】
軸方向において、モータシャフト23の本体部23aの軸方向他方側の端部と、出力シャフト46の連結部41aの軸方向一方側の端部との間には、ワッシャ61が配置される。ワッシャ61は、延伸部41bを囲む円環板状である。ワッシャ61の板面は、軸方向を向く。ワッシャ61は、本体部23aおよび連結部41aのそれぞれと軸方向に接触する。また、軸方向において、本体部23aの軸方向一方側の端部と環状部44bとの間には、ワッシャ62が配置される。ワッシャ62は、延伸部41bを囲む円環板状である。ワッシャ62の板面は、軸方向を向く。ワッシャ62は、本体部23aおよび環状部44bのそれぞれと軸方向に接触する。ワッシャ61およびワッシャ62は、例えば、スリップワッシャである。本実施形態では、ワッシャ61およびワッシャ62によって、出力シャフト46に対するモータシャフト23の軸方向の位置が決まる。これにより、モータシャフト23と出力シャフト46とが直接的に軸方向に接触する場合と比較して、モータシャフト23と出力シャフト46との間の摩擦力を低減できる。したがって、電動アクチュエータ9の出力効率を高めることができる。
【0053】
制御基板80は、ステータ22の軸方向一方側に配置される。制御基板80は、ケース10の段差面11gに固定される。制御基板80は、径方向に広がる板状である。図示は省略するが、制御基板80には、モータ20に電力を供給するインバータ回路が設けられる。図示は省略するが、制御基板80は、ステータ22の複数のコイル部22cのそれぞれと電気的に接続される。制御基板80は、複数のコイル部22cのそれぞれに供給する電力を制御する。制御基板80には、貫通孔80aが設けられる。軸方向に見て、貫通孔80aは、モータ軸線J1を中心とする円形状である。貫通孔80aには、出力シャフト46の延伸部41bが軸方向に通される。制御基板80には、回転センサ81が取り付けられる。
【0054】
回転センサ81は、制御基板80の軸方向一方側を向く面うち貫通孔80aの周縁部に固定される。回転センサ81は、出力シャフト46に固定されるセンサマグネット45の径方向外縁部と軸方向に対向する。本実施形態において、回転センサ81は、磁気センサである。回転センサ81は、例えば、ホールICなどのホール素子である。回転センサ81は、センサマグネット45の磁界を検出することでセンサマグネット45の回転を検出する。これにより、回転センサ81は、出力シャフト46の回転を検出する。
【0055】
制御基板80からモータ20に電力が供給されてモータシャフト23がモータ軸線J1周りに回転すると、偏心軸部23bは、モータ軸線J1を中心として周方向に公転する。偏心軸部23bの公転は、第3ベアリング53を介して外歯ギヤ31に伝達される。外歯ギヤ31は、貫通孔部31bの内周面と突出部43の外周面との接触する位置が変化しつつ、モータ軸線J1周りに公転する。外歯ギヤ31がモータ軸線J1周りに公転すると、外歯ギヤ31の外歯歯車部31cと内歯ギヤ32の内歯歯車部32aとの噛み合う位置が、周方向に変化する。これにより、外歯ギヤ31を介して、内歯ギヤ32にモータシャフト23の駆動力が伝達される。
【0056】
上述のように、内歯ギヤ32は、ケース10に固定されている。そのため、内歯ギヤ32に伝達される駆動力の反力によって、外歯ギヤ31は偏心軸線J2周りに回転する。このとき、外歯ギヤ31の回転は、モータシャフト23の回転に対して減速される。本実施形態の伝達機構30の構成では、モータシャフト23の回転に対する出力シャフト46の回転の減速比、すなわち伝達機構30の減速比Rは、R=(N2-N1)/N1で表される。上述のように、本実施形態において、外歯歯車部31cの歯数N1は、79であり、内歯歯車部32aの歯数N2は、80である。したがって、本実施形態における減速比Rは、1/79となる。したがって、本実施形態の伝達機構30によれば、モータシャフト23の回転に対する出力シャフト46の回転の減速比Rを比較的大きくできるとともに、モータシャフト23の回転トルクに対する出力シャフト46の回転トルクを大きくできる。
【0057】
外歯ギヤ31の偏心軸線J2周りの回転は、貫通孔部31bの内側面および突出部43を介して、フランジ部42に伝達され、フランジ部42がモータ軸線J1周りに回転する。上述のように、出力シャフト46は、フランジ部42と固定されるため、出力シャフト46は、フランジ部42とともにモータ軸線J1周りに回転する。すなわち、フランジ部42によって、外歯ギヤ31の回転は出力シャフト46に伝達される。このようにして、出力シャフト46には、伝達機構30を介してモータシャフト23の回転が伝達される。
【0058】
図5は、本実施形態の電動アクチュエータ9の外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2のそれぞれと、電動アクチュエータ9の正駆動時の駆動効率Edとの関係を示す図である。図5における横軸は、外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2である。上述のように、本実施形態において、圧力角α1および圧力角α2は互いに同じ角度である。図5における縦軸は、駆動効率Edである。本実施形態において、駆動効率Ed[%]は、Ed=(To/Tm)×R×100で表される。Toは、出力シャフト46の回転トルクである。Tmは、モータシャフト23の回転トルクである。Rは、上述の伝達機構30の減速比である。なお、本実施形態において、正駆動では、上述のように、制御基板80からステータ22に電力を供給してモータシャフト23をモータ軸線J1周りに回転させ、伝達機構30を介してモータシャフト23の回転を出力シャフト46に伝達して、出力シャフト46をモータ軸線J1周りに駆動する。なお、本実施形態の電動アクチュエータ9における駆動効率Edの目標値は、54%以上である。なお、例えば、モータシャフトにウォームギヤが設けられ、出力シャフトと連結されるギヤとウォームギヤとが噛み合うことにより、モータシャフトの回転が出力シャフトに減速して伝達される構成の伝達機構の駆動効率は、最大でも50%程度である。したがって、本実施形態の電動アクチュエータ9における駆動効率Edが54%以上である場合、上述の構成の伝達機構よりも駆動効率を高めることができる。
【0059】
駆動効率Edは、圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが20°において最大となり、圧力角α1および圧力角α2が21°よりも大きくなるにしたがって、単調に減少する。図4に示すように、圧力角α1が大きくなるにしたがって、外歯歯部31dの歯面は、径方向外側を向き、圧力角α2が大きくなるにしたがって、内歯歯部32bの歯面は径方向内側を向く。そのため、圧力角α1および圧力角α2が大きくなるにしたがって、外歯歯部31dから内歯歯部32bに加わる力のうち周方向を向く周方向成分が低下する。これにより、内歯歯部32bから外歯歯部31dに加わる反力の周方向成分が低下するため、外歯ギヤ31が偏心軸線J2周りに回転する回転トルクが低下する。すなわち、圧力角α1および圧力角α2が大きくなるにしたがって、外歯ギヤ31と内歯ギヤ32との間の駆動伝達効率が低下する。したがって、圧力角α1および圧力角α2が大きくなるにしたがって、出力シャフト46の回転トルクToが低下するため、駆動効率Edが減少する。
【0060】
これに対して、本実施形態によれば、上述のように、複数の外歯歯部31dの圧力角α1および複数の内歯歯部32bの圧力角α2は、それぞれ、25.5°以下である。よって、外歯ギヤ31と内歯ギヤ32との間の駆動伝達効率が低下しすぎることを抑制できるため、電動アクチュエータ9の駆動効率Edが低下しすぎることを抑制できる。より詳細には、図5に示すように、電動アクチュエータ9の駆動効率Edが、駆動効率Edの目標値である54%よりも低下することを抑制できる。したがって、出力シャフト46の回転トルクToが低下しすぎることを抑制できるため、出力シャフト46と連結されるパーキング切替機構70、すなわち対象物を安定的に駆動できる。
【0061】
図6は、本実施形態の電動アクチュエータ9の外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2のそれぞれと、電動アクチュエータ9の逆駆動時の逆駆動トルクTrとの関係を示す図である。本実施形態において、逆駆動では、出力シャフト46に回転トルクを加えて出力シャフト46をモータ軸線J1周りに回転させ、伝達機構30を介して出力シャフト46の回転をモータシャフト23に伝達して、モータシャフト23をモータ軸線J1周りに駆動する。本実施形態において、逆駆動では、制御基板80からステータ22への電力の供給は停止されている。本実施形態において、逆駆動トルクTrは、出力シャフト46に加える回転トルクであって、電動アクチュエータ9を逆駆動するために必要な回転トルクである。図6において、逆駆動トルクTrの欄に示す「×」は、電動アクチュエータ9の逆駆動トルクTrが大きくなりすぎたため、電動アクチュエータ9を逆駆動できなかったことを示す。
【0062】
圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが17°以上、21°以下においては、逆駆動トルクTrは、1.3[N・m]以上、10.6[N・m]以下の範囲であり、電動アクチュエータ9を逆駆動できた。また、圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが22°より大きくなると、電動アクチュエータ9の逆駆動トルクTrが大きくなりすぎたため、電動アクチュエータ9を逆駆動できなかった。以下に、これらの理由について説明する。
【0063】
図7に、本実施形態の電動アクチュエータ9の比較例の電動アクチュエータ109の伝達機構130を示す。以下の説明において、上述の本実施形態の伝達機構30と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
伝達機構130は、外歯ギヤ131と、内歯ギヤ132と、フランジ部42と、複数の突出部43と、を有する。外歯ギヤ131は、複数の貫通孔部31bと、外歯歯車部131cと、を有する。外歯歯車部131cは、外歯ギヤ131の外周面に沿って並ぶ複数の外歯歯部131dによって構成される。外歯歯車部131cは、インボリュート歯車である。第1仮想線L5は、軸方向に見て、偏心軸線J2と、外歯歯部131dのピッチ点131fとを結ぶ仮想線である。第1仮想線L5は、偏心軸線J2と直交する直線である。第1接線L7は、外歯歯部131dの歯面と接する接線のうち、ピッチ点131fと接する接線である。第1仮想線L5と第1接線L7とが成す角度は、外歯歯部131dの圧力角α1である。比較例の電動アクチュエータ109において、複数の外歯歯部131dそれぞれの圧力角α1は、17°である。外歯ギヤ131のその他の構成等は、上述の外歯ギヤ31のその他の構成等と同一である。
【0065】
図示は省略するが、内歯ギヤ132は、ケース10に固定される。内歯ギヤ132は、内歯歯車部132aを有する。内歯歯車部132aは、内歯ギヤ132の内周面に沿って並ぶ複数の内歯歯部132bによって構成される。内歯歯車部132aの一部は、外歯歯車部131cの一部と噛み合っている。内歯歯車部132aは、インボリュート歯車である。ピッチ点132dは、内歯歯部132bの歯面のうち外歯歯部131dのピッチ点131fと接触する部分である。図示は省略するが、比較例の電動アクチュエータ109において、複数の内歯歯部132bそれぞれの圧力角α2は、17°である。
【0066】
次に、比較例の電動アクチュエータ109を逆駆動する際に外歯ギヤ131に加わる力について説明する。以下の説明では、出力シャフト46に周方向他方側(-θ1側)を向く回転トルクを加える場合について説明する。この場合、外歯ギヤ131は、偏心軸線J2周りを周方向他方側に向けて自転しようとし、外歯ギヤ131の中心である偏心軸線J2は、矢印Rhで示すように、モータ軸線J1周りを周方向一方側(+θ1側)に向けて公転しようとする。図示は省略するが、モータシャフト23は、モータ軸線J1周りを周方向一方側に向けて回転する。また、以下の説明において、外歯歯部131eは、外歯ギヤ131の複数の外歯歯部131dのうち、内歯歯車部132aと噛み合っている外歯歯部である。
【0067】
出力シャフト46に周方向他方側(-θ1側)を向く回転トルクを加えると、出力シャフト46に固定されるフランジ部42および複数の突出部43は、モータ軸線J1周りを周方向他方側に回転しようとする。そのため、外歯ギヤ131の貫通孔部31bの内側面には、複数の突出部43から周方向他方側を向く力である押圧力Fpが加わる。これにより、外歯歯部131eは、偏心軸線J2を中心として周方向他方側に向けて回転しようとするため、外歯歯部131eの周方向他方側に位置する内歯歯部132cのピッチ点132dには、外歯歯部131eから周方向他方側を向く力である第2押圧力Fgが加わる。
【0068】
第2押圧力Fgは、内歯歯部132cのピッチ点132dに対して第1仮想線L5と直交する方向に加わる力である。第2法線力Fn2は、第2押圧力Fgのうち、外歯歯部131eのピッチ点131fにおける外歯歯部131eの歯面の法線方向を向く成分である。第2法線力Fn2は、内歯歯部132cのピッチ点132dにおける内歯歯部132cの歯面の法線方向を向く。ピッチ点131fから見て、第2法線力Fn2は、周方向他方側(-θ1側)と径方向外側との間の方向を向く。第2接線力Ft2は、第2押圧力Fgのうち、外歯歯部131eのピッチ点131fにおける外歯歯部131eの歯面の接線方向を向く成分である。ピッチ点131fから見て、第2接線力Ft2は、周方向他方側と径方向内側との間の方向を向く。
【0069】
上述のように、内歯ギヤ132は、ケース10に固定されるため、外歯歯部131eには、内歯歯部132cから第2法線力Fn2の反力Fr2が加わる。反力Fr2は、第2法線力Fn2と同じ大きさの力であり、第2法線力Fn2の向きと逆方向を向く力である。したがって、外歯歯部131eには、第2接線力Ft2と、反力Fr2との合力である推進力F2が加わる。
【0070】
ピッチ点131fから見て、推進力F2は、周方向一方側(+θ1側)と径方向内側との間を向く方向を向く力である。第3仮想線Lt2は、外歯歯部131eのピッチ点131fを通り、第1仮想線L5と直交する直線である。外歯歯部131eに推進力F2が加わる向きと、第3仮想線Lt2とが成す角度αf2は、30°程度である。すなわち、外歯歯部131eには、周方向一方側に対して30°程度、径方向内側寄りを向く推進力F2が加わる。つまり、外歯歯部131eには、径方向内側よりも周方向一方側寄りを向く推進力F2が加わる。
【0071】
図示は省略するが、複数の外歯歯部131dのうち、内歯歯車部132aと噛み合う外歯歯部131e以外の外歯歯部131dにも、周方向一方側に対して30°程度、径方向内側寄りを向く推進力が加わる。よって、内歯歯車部132aと噛み合う複数の外歯歯部131dのそれぞれには、径方向内側よりも周方向一方側寄りを向く推進力が加わる。よって、図8に示すように、外歯ギヤ131は、モータ軸線J1周りを周方向一方側に向けて公転しつつ、図示は省略するが、偏心軸線J2周りを周方向他方側に向けて自転する。これにより、図2に示す第3ベアリング53を介して、モータシャフト23を、モータ軸線J1周りに周方向一方側(+θ1側)に向けて回転させることができる。したがって、圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが、17°である、比較例の電動アクチュエータ109は、出力シャフト46に加わる回転トルクによって、逆駆動可能である。
【0072】
なお、図示は省略するが、比較例の電動アクチュエータ109において、出力シャフト46に周方向一方側(+θ1側)を向く回転トルクが加わる場合、内歯歯車部132aと噛み合う複数の外歯歯部131dには、周方向他方側(-θ1側)に対して30°程度、径方向内側寄りを向く推進力が加わるため、外歯ギヤ131は、モータ軸線J1周りを周方向他方側に向けて公転しつつ、偏心軸線J2周りを周方向一方側に向けて自転する。これにより、モータシャフト23を、モータ軸線J1周りに周方向他方側に向けて回転する。したがって、比較例の電動アクチュエータ109は、出力シャフト46に周方向一方側(+θ1側)を向く回転トルクが加わる場合においても、逆駆動可能である。
【0073】
次に、図9に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ9を逆駆動する際に外歯ギヤ31に加わる力について説明する。以下の説明では、上述の比較例の電動アクチュエータ109と同様に、出力シャフト46に周方向他方側(-θ1側)を向く回転トルクを加える場合について説明する。以下の説明では、圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが25.5°である場合について説明する。以下の説明において、外歯歯部31eは、外歯ギヤ31の複数の外歯歯部31dのうち、内歯歯車部32aと噛み合っている外歯歯部である。
【0074】
出力シャフト46に周方向他方側(-θ1側)を向く回転トルクを加えると、上述の比較例の電動アクチュエータ109と同様に、外歯ギヤ31の貫通孔部31bの内側面には、複数の突出部43から周方向他方側を向く力である押圧力Fpが加わり、外歯歯部31eの周方向他方側に位置する内歯歯部32cには、外歯歯部31eから周方向他方側を向く力である第2押圧力Fgが加わる。
【0075】
第2法線力Fn1は、第2押圧力Fgのうち、外歯歯部31eのピッチ点31fにおける外歯歯部31eの歯面の法線方向を向く成分である。ピッチ点31fから見て、第2法線力Fn1は、周方向他方側(-θ1側)と径方向外側との間の方向を向く。第2接線力Ft1は、第2押圧力Fgのうち、外歯歯部31eのピッチ点31fにおける外歯歯部31eの歯面の接線方向を向く成分である。ピッチ点31fから見て、第2接線力Ft1は、周方向他方側と径方向内側との間の方向を向く。本実施形態の圧力角α1および圧力角α2は、比較例の圧力角α1および圧力角α2よりも大きいため、第2法線力Fn1は図7に示す比較例の第2法線力Fn2よりも径方向外側を向き、第2接線力Ft1は、図7に示す比較例の第2接線力Ft2よりも、周方向他方側を向く。また、第2法線力Fn1は、第2法線力Fn2よりも小さい力であり、第2接線力Ft1は、第2接線力Ft2よりも大きい力である。
【0076】
上述のように、内歯ギヤ32は、ケース10に固定されるため、外歯歯部31eには、内歯歯部32cから第2法線力Fn1の反力Fr1が加わる。反力Fr1は、第2法線力Fn1と同じ大きさの力であり、第2法線力Fn1の向きと逆方向を向く力である。反力Fr1は、図7に示す比較例の反力Fr2よりも小さい力であり、反力Fr1は、反力Fr2よりも径方向内側を向く。外歯歯部31eには、第2接線力Ft1と、反力Fr1との合力である推進力F1が加わる。
【0077】
ピッチ点31fから見て、推進力F1は、周方向一方側(+θ1側)と径方向内側との間を向く方向を向く力である。上述のように、第2接線力Ft1は、図7に示す第2接線力Ft2よりも、周方向他方側を向き、第2接線力Ft2よりも大きい力である。さらに、上述のように、反力Fr1は、図7に示す反力Fr2よりも径方向内側を向き、反力Fr2よりも小さい力である。そのため、推進力F1は、図7に示す推進力F2よりも、径方向内側を向く。第3仮想線Lt1は、外歯歯部31eのピッチ点31fを通り、第1仮想線L1と直交する直線である。外歯歯部31eに推進力F1が加わる向きと、第3仮想線Lt1とが成す角度αf1は、52°程度である。すなわち、外歯歯部31eには、周方向一方側に対して52°程度、径方向内側寄りを向く推進力F1が加わる。つまり、外歯歯部31eには、周方向一方側よりも、径方向内側寄りを向く推進力F1が加わる。
【0078】
図示は省略するが、複数の外歯歯部31dのうち、内歯歯車部32aと噛み合う外歯歯部31e以外の外歯歯部31dにも、周方向一方側(+θ1側)に対して52°程度、径方向内側寄りを向く推進力が加わる。よって、内歯歯車部32aと噛み合う複数の外歯歯部31dのそれぞれには、周方向一方側よりも、径方向内側すなわちモータシャフト23側を向く推進力が加わる。そのため、比較例の電動アクチュエータ109と比較して、推進力の周方向一方側を向く成分が小さくなるため、外歯ギヤ31は、偏心軸線J2を中心として周方向一方側に回転しづらくなる。また、比較例の電動アクチュエータ109と比較して、推進力の径方向内側を向く成分が大きくなるため、外歯ギヤ31を図2に示す第3ベアリング53を介して、モータシャフト23に押し付ける力が大きくなる。上述のように、モータシャフト23は、出力シャフト46、第1ベアリング51、および第2ベアリング52を介して、ケース10に支持され、ケース10に対して径方向に移動することが抑制されている。これらにより、外歯ギヤ31は、偏心軸線J2を中心として周方向一方側に回転できず、かつ、径方向内側に移動できないため、内歯歯車部32aと噛み合っている複数の外歯歯部31dと、内歯歯車部32aとが噛み合った状態が維持される。したがって、圧力角α1および圧力角α2のそれぞれが、25.5°である本実施形態の電動アクチュエータ9では、逆駆動によって、外歯ギヤ31が、モータ軸線J1周りを周方向一方側に向けて公転することを抑制できる。よって、本実施形態の電動アクチュエータ9では、逆駆動することを抑制できる。
【0079】
なお、図示は省略するが、本実施形態の電動アクチュエータ9において、出力シャフト46に周方向一方側(+θ1側)を向く回転トルクが加わる場合、内歯歯車部32aと噛み合う複数の外歯歯部31dには、周方向他方側(-θ1側)に対して52°程度、径方向内側寄りを向く推進力が加わるため、外歯ギヤ131が、モータ軸線J1周りを周方向一方側に向けて公転することを抑制できる。よって、本実施形態の電動アクチュエータ9では、出力シャフト46に周方向一方側)を向く回転トルクが加わる場合においても、逆駆動することを抑制できる。
【0080】
上記の説明では、外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2のそれぞれが、17°および25.5°の場合について説明したが、例えば、出力シャフト46に周方向他方側(-θ1側)を向く回転トルクを加える場合において、複数の外歯歯部31dのうち、内歯歯車部32aと噛み合う外歯歯部31dに加わる推進力の向きは、外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2が大きくなるにしたがって、径方向内側寄り、すなわちモータシャフト23側を向いていく。図6に示すように、外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2が21°以下の場合では、逆駆動において、外歯ギヤ31を偏心軸線J2周りに回転させる力が、外歯ギヤ31をモータシャフト23に押し付ける力よりも比較的大きいため、電動アクチュエータ9は逆駆動可能である。これに対して、外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2が22°以上の場合では、逆駆動において、外歯ギヤ31をモータシャフト23に押し付ける力が、外歯ギヤ31を偏心軸線J2周りに回転させる力よりも比較的大きくなるため、逆駆動することを抑制できる。
【0081】
このように外歯歯車部31cおよび内歯歯車部32aをインボリュート歯車とし、外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2を22°以上とすることによって、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制できる知見は、本発明者らによって新たに得られた知見である。本発明者らは、計算機実験および実機検証等によって、外歯歯車部31cの歯数および内歯歯車部32aの歯数が、本実施形態と異なる場合についても検証を行ったが、同様に圧力角α1,α2を22°以上とすることで、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制できることが分かった。これは、外歯歯車部31cおよび内歯歯車部32aの歯数によらず、圧力角α1,α2が22°以上の場合、外歯ギヤ31に加わる力のうち外歯ギヤ31をモータシャフト23に押し付ける成分が、外歯ギヤ31に加わる力のうち外歯歯部31dと内歯歯部32b同士の噛み合いが外れる向きに外歯ギヤ31を移動させて、外歯ギヤ31をモータ軸線J1周りに公転させる成分よりも大きくなるためであると考えられる。圧力角α1,α2が22°以上の場合には、出力シャフト46に対して逆駆動させる回転トルクを加えるほど、外歯ギヤ31がモータシャフト23に押し付けられる力の反力で外歯歯部31dと内歯歯部32c同士が強く噛み合うため、逆駆動トルクTrが無限大となり、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制できるものと考えられる。
【0082】
本実施形態によれば、伝達機構30は、偏心軸部23bの外周面に第3ベアリング53を介して連結され、モータシャフト23の回転が伝達される環状の外歯ギヤ31と、外歯ギヤ31の径方向外側に配置され、ケース10に固定される環状の内歯ギヤ32と、外歯ギヤ31の回転を出力シャフト46に伝達する環状のフランジ部42と、を有する。外歯ギヤ31は、外歯ギヤ31を軸方向に貫通し、モータ軸線J1を囲んで配置される複数の貫通孔部31bを有し、フランジ部42には、フランジ部42から軸方向に突出し、モータ軸線J1を囲んで配置される複数の突出部43が設けられる。内歯ギヤ32の内周面に沿って設けられる内歯歯車部32aの一部は、外歯ギヤ31の外周面に沿って設けられる外歯歯車部31cの一部と噛み合い、外歯歯車部31cおよび内歯歯車部32aは、それぞれ、インボリュート歯車である。外歯歯車部31cを構成する複数の外歯歯部31dの圧力角α1、および内歯歯車部32aを構成する複数の内歯歯部32bの圧力角α2は、それぞれ、22°以上である。よって、上述のように、出力シャフト46に回転トルクが加わっても、外歯ギヤ31をモータシャフト23に押し付ける力が、外歯ギヤ31を偏心軸線J2周りに回転させる力よりも比較的大きくなる。これにより、外歯ギヤ31が、モータ軸線J1周りを周方向に向けて公転することを抑制できるため、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制できる。したがって、出力シャフト46に回転トルクが加わっても、出力シャフト46が回転することを抑制できる。
【0083】
また、本実施形態によれば、外歯歯部31dの圧力角α1および内歯歯部32bの圧力角α2のそれぞれを22°以上にすることによって、上述したように、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制できる。よって、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制するための部材等を追加的に設ける必要が無いため、電動アクチュエータ9の部品点数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0084】
本実施形態によれば、モータシャフト23は、中空シャフトであり、出力シャフト46の少なくとも一部は、モータシャフト23の内部に位置し、出力シャフト46は、モータ軸線J1を中心に回転可能である。よって、出力シャフト46をモータシャフト23の径方向外側に配置する場合と比較して、電動アクチュエータ9が径方向に大型化することを抑制できる。
【0085】
本実施形態によれば、アクチュエータ装置100は、電動アクチュエータ9と、出力シャフト46と連結される対象物と、を備え、電動アクチュエータ9は、車両のシフト操作に基づいて対象物を駆動する。よって、電動アクチュエータ9および対象物の停止時において、対象物から出力シャフト46に回転トルクが加わっても、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制できるため、出力シャフト46が回転することを抑制できる。これにより、電動アクチュエータ9および対象物の停止時において、対象物を構成する各部材の位置が変動することを抑制できる。よって、アクチュエータ装置100に、対象物を構成する各部材の位置が変動することを抑制するためのディテントプレートおよびストッパ部材等の部材を設ける必要が無い。したがって、アクチュエータ装置100の部品点数が増大すること、およびアクチュエータ装置100の製造コストが増大することを抑制できる。
【0086】
本実施形態によれば、対象物は、車両のシフト操作に基づいて駆動されるパーキング切替機構70である。よって、電動アクチュエータ9が、パーク・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置100に搭載される場合において、パーキング切替機構70から出力シャフト46に回転トルクが加わっても、電動アクチュエータ9が逆駆動することを抑制できるため、出力シャフト46が回転することを抑制できる。したがって、アクチュエータ装置100に、ディテントプレートおよびストッパ部材等の部材を設ける必要が無いため、アクチュエータ装置100の部品点数、およびアクチュエータ装置100の製造コストが増大することを抑制できる。
【0087】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0088】
伝達機構の構成は、本実施形態に限定されず、例えば、外歯歯車部および内歯歯車部のそれぞれはインボリュート歯車であり、外歯歯部の圧力角および内歯歯部の圧力角のそれぞれが22°以上であれば、外歯歯部の圧力角および内歯歯部の圧力角それぞれの角度は特に限定されない。また、外歯歯車部の歯数および内歯歯車部の歯数のそれぞれは、特に限定されない。
【0089】
また、複数の突出部は外歯ギヤに設けられ、複数の貫通孔部は出力フランジ部に設けられてもよい。この場合、複数の突出部のそれぞれは、外歯ギヤから出力フランジ部に向かって、すなわち軸方向他方側に向かって突出し、貫通孔部に挿入される。また、伝達機構に設けられる突出部の個数および貫通孔部の個数は、それぞれ、7個以下であってもよいし、9個以上であってもよい。
【0090】
また、複数の突出部とフランジ部とは別体であってもよい。この場合、複数の突出部のそれぞれは、フランジ部を貫通する複数の孔のそれぞれに圧入等によって固定される。
【0091】
本発明が適用される電動アクチュエータの用途は、特に限定されない。電動アクチュエータは、運転者のシフト操作に基づいて駆動されるシフト・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載されてもよい。また、電動アクチュエータは、車両以外の機器に搭載されてもよい。なお、以上に、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0092】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) モータ軸線を中心として回転可能なモータシャフトを有するモータと、前記モータシャフトに連結された伝達機構と、前記伝達機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトと、前記モータ、前記伝達機構、および前記出力シャフトを内部に収容するケースと、を備え、前記モータシャフトは、前記モータ軸線と平行な偏心軸線を中心とする偏心軸部を有し、前記伝達機構は、前記偏心軸部の外周面にベアリングを介して連結され、前記モータシャフトの回転が伝達される環状の外歯ギヤと、前記外歯ギヤの径方向外側に配置され、前記ケースに固定される環状の内歯ギヤと、前記外歯ギヤの回転を前記出力シャフトに伝達する環状のフランジ部と、を有し、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか一方は、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか一方を軸方向に貫通し、前記モータ軸線を囲んで配置される複数の貫通孔部を有し、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか他方には、前記外歯ギヤおよび前記フランジ部のいずれか他方から軸方向に突出し、前記モータ軸線を囲んで配置される複数の突出部が設けられ、前記複数の突出部のそれぞれは、前記複数の貫通孔部のそれぞれに挿入され、前記内歯ギヤの内周面に沿って設けられる内歯歯車部の一部は、前記外歯ギヤの外周面に沿って設けられる外歯歯車部の一部と噛み合い、前記外歯歯車部および前記内歯歯車部は、それぞれ、インボリュート歯車であり、前記外歯歯車部を構成する複数の外歯歯部の圧力角、および前記内歯歯車部を構成する複数の内歯歯部の圧力角は、それぞれ、22°以上である、電動アクチュエータ。
(2) 複数の前記外歯歯部の圧力角、および複数の前記内歯歯部の圧力角は、それぞれ、25.5°以下である、(1)に記載の電動アクチュエータ。
(3) 前記モータシャフトは、中空シャフトであり、前記出力シャフトの少なくとも一部は、前記モータシャフトの内部に位置し、前記出力シャフトは、前記モータ軸線を中心に回転可能である、(1)または(2)に記載の電動アクチュエータ。
(4) (1)から(3)のいずれか一項に記載の前記電動アクチュエータと、前記出力シャフトと連結される対象物と、を備え、前記電動アクチュエータは、車両のシフト操作に基づいて前記対象物を駆動する、アクチュエータ装置。
(5) 前記対象物は、車両のシフト操作に基づいて駆動されるパーキング切替機構である、(4)に記載のアクチュエータ装置。
【符号の説明】
【0093】
9…電動アクチュエータ、10…ケース、20…モータ、23…モータシャフト、23b…偏心軸部、30…伝達機構、31…外歯ギヤ、31b…貫通孔部、31c…外歯歯車部、31d…外歯歯部、32…内歯ギヤ、32a…内歯歯車部、32b…内歯歯部、42…フランジ部、43…突出部、46…出力シャフト、53…第3ベアリング(ベアリング)、70…パーキング切替機構(対象物)、100…アクチュエータ装置、J1…モータ軸線、J2…偏心軸線、α1,α2…圧力角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9