(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112017
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ミラー装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240813BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016818
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】井出 智行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
【テーマコード(参考)】
2H045
3C081
【Fターム(参考)】
2H045AB02
2H045AB13
2H045AB16
2H045AB72
3C081AA18
3C081BA28
3C081BA44
3C081BA46
3C081BA47
3C081BA54
3C081BA55
3C081DA04
3C081EA08
3C081EA09
(57)【要約】
【課題】ミラー面の歪みを効果的に抑制することができると共に、製造を容易化することができるミラー装置を提供する。
【解決手段】ミラー装置は、支持部と、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面31bを含む本体部31を有し、第1表面上にミラー面が形成されると共に第2表面31b上に梁部50が形成された第1可動部3と、第1可動部3がX軸周りに揺動可能となるように第1可動部3を支持部に連結する第1トーションバー5と、を備える。梁部50は、第2表面31bに垂直な方向から見た場合に、本体部31の外縁31cに沿って延在する第1延在部分62を有する。第1延在部分62は、第2表面31bに垂直な方向から見た場合に、本体部31の外縁31cから外側に突出すると共に本体部31の外縁31cに沿って延在する突出部分63を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
第1表面及び前記第1表面とは反対側の第2表面を含む本体部を有し、前記第1表面上にミラー面が形成されると共に前記第2表面上に梁部が形成された可動部と、
前記可動部が所定の軸線周りに揺動可能となるように前記可動部を前記支持部に連結する連結部と、を備え、
前記梁部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記本体部の外縁に沿って延在する延在部分を有し、
前記延在部分は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記本体部の外縁から外側に突出すると共に前記本体部の外縁に沿って延在する突出部分を有する、ミラー装置。
【請求項2】
前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記本体部の外縁に沿っての前記突出部分の長さは、前記第2方向における前記連結部の最小幅よりも大きい、請求項1に記載のミラー装置。
【請求項3】
前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記本体部の外縁からの前記突出部分の突出長さは、前記第2方向における前記連結部の最小幅よりも小さい、請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項4】
前記梁部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、基準位置の側から所定方向における一方側に向かって延在すると共に前記所定方向に垂直な方向において互いに向かい合う一対の第1部分と、前記一対の第1部分に接続された第1接続部分と、前記基準位置の側から前記所定方向における他方側に向かって延在すると共に前記所定方向に垂直な方向において互いに向かい合う一対の第2部分と、前記一対の第2部分に接続された第2接続部分と、を有し、
前記延在部分は、前記第1接続部分及び前記第2接続部分によって構成されている、請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項5】
前記第1接続部分の幅は、前記一対の第1部分の各々の幅よりも広く、前記第2接続部分の幅は、前記一対の第2部分の各々の幅よりも広い、請求項4に記載のミラー装置。
【請求項6】
前記一対の第1部分は、前記基準位置の側において互いに接続されており、前記一対の第2部分は、前記基準位置の側において互いに接続されている、請求項4に記載のミラー装置。
【請求項7】
前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記一対の第1部分の内縁は、滑らかに互いに接続されており、前記一対の第2部分の内縁は、滑らかに互いに接続されている、請求項6に記載のミラー装置。
【請求項8】
前記基準位置は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合における前記本体部の中心と一致している、請求項4に記載のミラー装置。
【請求項9】
前記梁部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記基準位置の側から前記所定方向に垂直な方向における一方側に向かって延在すると共に前記所定方向において互いに向かい合う一対の第3部分と、前記基準位置の側から前記所定方向と垂直な方向における他方側に向かって延在すると共に前記所定方向において互いに向かい合う一対の第4部分と、を更に有する、請求項4に記載のミラー装置。
【請求項10】
前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記一対の第1部分の間の角度は、前記一対の第3部分の間の角度よりも大きい、請求項9に記載のミラー装置。
【請求項11】
前記可動部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に隙間を介して前記本体部を囲み、前記連結部に接続された環状部と、前記環状部を前記本体部に接続する接続部と、を更に有し、
前記突出部分の少なくとも一部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記隙間と重なっている、請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項12】
前記突出部分は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記環状部と重なっていない、請求項11に記載のミラー装置。
【請求項13】
前記突出部分の一部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記環状部と重なっている、請求項11に記載のミラー装置。
【請求項14】
前記可動部は、前記接続部を一対有し、
前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記一対の接続部は、前記本体部に対して前記第2方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置されており、
前記梁部は、基準位置の側から前記第1方向における一方側に向かって延在すると共に前記第2方向において互いに向かい合う一対の第1部分と、前記一対の第1部分に接続された第1接続部分と、前記基準位置の側から前記第1方向における他方側に向かって延在すると共に前記第2方向において互いに向かい合う一対の第2部分と、前記一対の第2部分に接続された第2接続部分と、を有し、
前記延在部分は、前記第1接続部分及び前記第2接続部分によって構成されている、請求項11に記載のミラー装置。
【請求項15】
前記突出部分は、少なくとも前記軸線上において前記本体部の外縁から外側に突出しており、
前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記軸線上における前記突出部分と前記環状部との間の距離は、前記第2方向における前記連結部の最小幅よりも小さい、請求項11に記載のミラー装置。
【請求項16】
前記第1接続部分及び前記第2接続部分は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記軸線と交差するように延在している、請求項14に記載のミラー装置。
【請求項17】
前記梁部は、前記基準位置の側から前記第2方向における一方側に向かって延在すると共に前記第1方向において互いに向かい合う一対の第3部分と、前記基準位置の側から前記第2方向における他方側に向かって延在すると共に前記第1方向において互いに向かい合う一対の第4部分と、を更に有する、請求項14に記載のミラー装置。
【請求項18】
前記一対の第1部分は、前記基準位置の側において互いに接続されており、前記一対の第2部分は、前記基準位置の側において互いに接続されている、請求項14に記載のミラー装置。
【請求項19】
前記基準位置は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合における前記本体部の中心と一致している、請求項14に記載のミラー装置。
【請求項20】
前記突出部分は、前記本体部以外の部分に接触していない、請求項1又は2に記載のミラー装置。
【請求項21】
前記支持部、前記可動部及び前記連結部は、第1半導体層、第2半導体層、及び前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に配置された絶縁層を有する半導体基板によって構成されており、
前記本体部は、少なくとも前記第1半導体層によって構成されており、
前記梁部は、少なくとも前記第2半導体層によって構成されている、請求項1又は2に記載のミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ミラー面を有する可動部が支持部に揺動可能に連結された偏向ミラーが記載されている。特許文献1に記載の偏向ミラーでは、駆動時におけるミラー面の歪みを小さくするために、可動部の裏面にリブが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなミラー装置には、ミラー面の歪みを効果的に抑制することや、製造を容易化することが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、ミラー面の歪みを効果的に抑制することができると共に、製造を容易化することができるミラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のミラー装置は、[1]「支持部と、第1表面及び前記第1表面とは反対側の第2表面を含む本体部を有し、前記第1表面上にミラー面が形成されると共に前記第2表面上に梁部が形成された可動部と、前記可動部が所定の軸線周りに揺動可能となるように前記可動部を前記支持部に連結する連結部と、を備え、前記梁部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記本体部の外縁に沿って延在する延在部分を有し、前記延在部分は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記本体部の外縁から外側に突出すると共に前記本体部の外縁に沿って延在する突出部分を有する、ミラー装置」である。
【0007】
このミラー装置では、梁部が、第2表面に垂直な方向から見た場合に、本体部の外縁に沿って延在する延在部分を有している。これにより、歪みが発生しやすい外縁部において本体部の剛性を高めることができ、本体部の歪み(換言すればミラー面の歪み)を効果的に抑制することができる。一方、本体部の歪みを効果的に抑制する観点からは、梁部を本体部の外縁の近くに形成することが好ましいが、例えば、延在部分の側面が本体部の側面と面一になるように(第2表面に垂直な方向から見た場合に延在部分の側面が本体部の側面と一致するように)延在部分を形成すると、製造誤差(例えばエッチングの誤差)により延在部分が本体部の外縁から突出した装置と延在部分が本体部の外縁から突出していない装置とが混在してしまうことが懸念される。この場合、例えば後工程における製造条件の設定が難しくなってしまうおそれがある。この点、このミラー装置では、延在部分が、第2表面に垂直な方向から見た場合に、本体部の外縁から外側(本体部とは反対側)に突出すると共に本体部の外縁に沿って延在する突出部分を有している。これにより、そのような事態の発生を回避することができ、製造を容易化することができる。よって、このミラー装置によれば、ミラー面の歪みを効果的に抑制することができると共に、製造を容易化することができる。
【0008】
本発明のミラー装置は、[2]「前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記本体部の外縁に沿っての前記突出部分の長さは、前記第2方向における前記連結部の最小幅よりも大きい、[1]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、本体部の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明のミラー装置は、[3]「前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記本体部の外縁からの前記突出部分の突出長さは、前記第2方向における前記連結部の最小幅よりも小さい、[1]又は[2]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、本体部の歪みを抑制しつつ、ミラー装置の小型化を図ることができる。
【0010】
本発明のミラー装置は、[4]「前記梁部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、基準位置の側から所定方向における一方側に向かって延在すると共に前記所定方向に垂直な方向において互いに向かい合う一対の第1部分と、前記一対の第1部分に接続された第1接続部分と、前記基準位置の側から前記所定方向における他方側に向かって延在すると共に前記所定方向に垂直な方向において互いに向かい合う一対の第2部分と、前記一対の第2部分に接続された第2接続部分と、を有し、前記延在部分は、前記第1接続部分及び前記第2接続部分によって構成されている、[1]~[3]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、第1部分及び第2部分によって本体部の全体の歪みを抑制しつつ、第1接続部分及び第2接続部分によって本体部の外縁部の歪みを抑制することができる。
【0011】
本発明のミラー装置は、[5]「前記第1接続部分の幅は、前記一対の第1部分の各々の幅よりも広く、前記第2接続部分の幅は、前記一対の第2部分の各々の幅よりも広い、[4]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、歪みが発生しやすい外縁部において本体部の剛性を高めることができ、本体部の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明のミラー装置は、[6]「前記一対の第1部分は、前記基準位置の側において互いに接続されており、前記一対の第2部分は、前記基準位置の側において互いに接続されている、[4]又は[5]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、梁部の剛性を高めることができ、梁部の破損や剥離を抑制することができる。
【0013】
本発明のミラー装置は、[7]「前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記一対の第1部分の内縁は、滑らかに互いに接続されており、前記一対の第2部分の内縁は、滑らかに互いに接続されている、[6]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、梁部の破損や剥離を一層抑制することができる。
【0014】
本発明のミラー装置は、[8]「前記基準位置は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合における前記本体部の中心と一致している、[4]~[7]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、梁部を本体部上にバランス良く配置することができ、本体部の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明のミラー装置は、[9]「前記梁部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記基準位置の側から前記所定方向に垂直な方向における一方側に向かって延在すると共に前記所定方向において互いに向かい合う一対の第3部分と、前記基準位置の側から前記所定方向と垂直な方向における他方側に向かって延在すると共に前記所定方向において互いに向かい合う一対の第4部分と、を更に有する、[4]~[8]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、本体部の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明のミラー装置は、[10]「前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記一対の第1部分の間の角度は、前記一対の第3部分の間の角度よりも大きい、[9]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、一対の第1部分に接続された第1接続部分の長さを長くすることができ、本体部の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明のミラー装置は、[11]「前記可動部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に隙間を介して前記本体部を囲み、前記連結部に接続された環状部と、前記環状部を前記本体部に接続する接続部と、を更に有し、前記突出部分の少なくとも一部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記隙間と重なっている、[1]~[10]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、本体部が環状部を介して連結部に接続されていることで、可動部の揺動時に連結部において発生した応力が本体部に直接に伝わることを抑制することができ、本体部の動的な歪みを抑制することができる。
【0018】
本発明のミラー装置は、[12]「前記突出部分は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記環状部と重なっていない、[11]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、可動部の揺動時に連結部において発生した応力が本体部に伝わることを抑制することができ、本体部の動的な歪みを抑制することができる。また、環状部に発生した応力が梁部を介して本体部に伝わることを抑制することができ、本体部の歪み(静的な歪み)を抑制することができる。
【0019】
本発明のミラー装置は、[13]「前記突出部分の一部は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記環状部と重なっている、[11]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、例えば、梁部を本体部及び環状部の両方に接続することで、梁部の強度を向上することができる。
【0020】
本発明のミラー装置は、[14]「前記可動部は、前記接続部を一対有し、前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記一対の接続部は、前記本体部に対して前記第2方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置されており、前記梁部は、基準位置の側から前記第1方向における一方側に向かって延在すると共に前記第2方向において互いに向かい合う一対の第1部分と、前記一対の第1部分に接続された第1接続部分と、前記基準位置の側から前記第1方向における他方側に向かって延在すると共に前記第2方向において互いに向かい合う一対の第2部分と、前記一対の第2部分に接続された第2接続部分と、を有し、前記延在部分は、前記第1接続部分及び前記第2接続部分によって構成されている、[11]~[13]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、一対の接続部が本体部に対して第2方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置されていることで、一対の接続部を連結部から離れた位置に配置することができ、可動部の揺動時に連結部において発生した応力が本体部に伝わることを一層抑制することができる。また、上記の第1部分、第1接続部分、第2部分及び第2接続部分を有するように梁部を形成することで、軸線周りの可動部の慣性モーメントの増加を抑制しつつ、本体部の歪みを抑制することができる。
【0021】
本発明のミラー装置は、[15]「前記突出部分は、少なくとも前記軸線上において前記本体部の外縁から外側に突出しており、前記軸線と平行な方向を第1方向とし、前記第1方向及び前記第2表面に垂直な方向の両方に垂直な方向を第2方向とすると、前記軸線上における前記突出部分と前記環状部との間の距離は、前記第2方向における前記連結部の最小幅よりも小さい、[11]~[14]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、ミラー装置の小型化を図ることができる。
【0022】
本発明のミラー装置は、[16]前記第1接続部分及び前記第2接続部分は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記軸線と交差するように延在している、[14]に記載のミラー装置」であってもよい。一対の接続部から遠い位置(例えば軸線上の位置)においては静的な歪みが発生しやすいが、このミラー装置によれば、当該位置における本体部の歪みを効果的に抑制することができる。また、軸線から離れた位置に第1接続部分及び第2接続部分が配置される場合と比べて可動部の慣性モーメントを低減することができる。
【0023】
本発明のミラー装置は、[17]「前記梁部は、前記基準位置の側から前記第2方向における一方側に向かって延在すると共に前記第1方向において互いに向かい合う一対の第3部分と、前記基準位置の側から前記第2方向における他方側に向かって延在すると共に前記第1方向において互いに向かい合う一対の第4部分と、を更に有する、[14]又は[16]に記載のミラー装置」であってもよい。一対の接続部に近い位置には、可動部の揺動時に連結部において発生した応力が伝わりやすく、当該位置においては動的な歪みが発生しやすいが、このミラー装置によれば、当該位置における本体部の歪みを効果的に抑制することができる。
【0024】
本発明のミラー装置は、[18]「前記一対の第1部分は、前記基準位置の側において互いに接続されており、前記一対の第2部分は、前記基準位置の側において互いに接続されている、[14]、[16]又は[17]に記載のミラー装置」であってもよい。この場合、梁部の剛性を高めることができ、梁部の破損や剥離を抑制することができる。
【0025】
本発明のミラー装置は、[19]「前記基準位置は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合における前記本体部の中心と一致している、[14]、[16]~[18]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、梁部を本体部上にバランス良く配置することができ、本体部の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0026】
本発明のミラー装置は、[20]「前記突出部分は、前記本体部以外の部分に接触していない、[1]~[19]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。この場合、本体部以外の部分から梁部を介して本体部に応力が伝わることを抑制することができる。また、梁部の大きさを小さくすることができ、可動部の慣性モーメントの増加を抑制することができる。
【0027】
本発明のミラー装置は、[21]「前記支持部、前記可動部及び前記連結部は、第1半導体層、第2半導体層、及び前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に配置された絶縁層を有する半導体基板によって構成されており、前記本体部は、少なくとも前記第1半導体層によって構成されており、前記梁部は、少なくとも前記第2半導体層によって構成されている、[1]~[20]のいずれか1つに記載のミラー装置」であってもよい。このようなミラー装置においても、ミラー面の歪みを効果的に抑制することができると共に、製造を容易化することができるとの上記作用効果を奏することができる。また、例えば、支持部、可動部及び連結部をそれぞれ別の部材で形成して接合する場合と比べて、装置の強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ミラー面の歪みを効果的に抑制することができると共に、製造を容易化することができるミラー装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図4】
図3のIV-IV線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0031】
図1~
図4に示されるように、ミラー装置1は、支持部2と、第1可動部3と、第2可動部4と、一対の第1トーションバー(第1連結部)5と、一対の第2トーションバー(第2連結部)6と、磁界発生部9と、を備えている。ミラー装置1では、互いに直交するX軸(第1軸線)及びY軸(第1軸線に垂直な第2軸線)の各々の周りに、ミラー面10を有する第1可動部3が揺動する。ミラー装置1は、例えば光通信用光スイッチ、光スキャナ等に用いられ得る。以下、X軸と平行な方向を方向D1(第1方向)とし、Y軸と平行な方向を方向D2(第2方向)とし、方向D1及び方向D2の両方に垂直な方向を方向D3(第3方向)として説明する。なお、
図2では磁界発生部9の図示が省略されている。
【0032】
支持部2、第1可動部3、第2可動部4、一対の第1トーションバー5及び一対の第2トーションバー6は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板100によって一体的に形成されている(
図4参照)。つまり、ミラー装置1は、MEMS技術(パターニング、エッチング等)を用いて半導体基板を加工することにより製造されるMEMSデバイスとして構成されている。SOI基板100は、第1半導体層101と、第2半導体層102と、第1半導体層101と第2半導体層102との間に配置された絶縁層103と、を有している。例えば、第1半導体層101及び第2半導体層102はシリコンにより形成されており、絶縁層103は二酸化シリコンにより形成されている。
【0033】
磁界発生部9は、例えばハルバッハ配列で並べられた複数の永久磁石によって構成されている。磁界発生部9は、後述するコイル14,15に作用する磁界を発生させる。支持部2は、例えば、平面視において(方向D3から見た場合に)四角形状の外形状を有し、枠状に形成されている。支持部2は、第1半導体層101、第2半導体層102及び絶縁層103によって構成されている。支持部2は、方向D3における磁界発生部9の一方側に配置されている。支持部2は、第1可動部3及び第2可動部4等を支持している。第1可動部3は、磁界発生部9から離間した状態で、支持部2の内側に配置されている。第1可動部3は、平面視においてX軸及びY軸の各々に関して対称な形状を有している。第1可動部3は、本体部31と、環状部32と、第1接続部33と、第2接続部34と、を有している。本体部31、環状部32、第1接続部33及び第2接続部34は、第1半導体層101によって構成されている。
【0034】
本体部31は、平面視において例えば円形状に形成されている。平面視における本体部31の中心P(重心)(第1可動部3の中心)は、X軸とY軸の交点と一致している。すなわち、X軸及びY軸は、中心Pを通っている。本体部31は、第1表面31aと、第1表面31aとは反対側の第2表面31bと、を有している(
図4参照)。第1表面31aは、方向D3における一方側の表面であり、磁界発生部9とは反対側の表面である。この例では、第1表面31a及び第2表面31bは、互いに平行な平坦面であり、方向D3と垂直に延在している。第1表面31a上には、円形状のミラー面10が形成されている。ミラー面10は、例えば、アルミニウムからなる金属膜の表面によって構成されている。ミラー面10は、第1表面31aにおける略全面に形成されているが、第1表面31aの一部に形成されてもよい。
【0035】
環状部32は、平面視において環状に形成されており、隙間Gを介して本体部31を囲んでいる。環状部32は、例えば、平面視において略八角形状の外形状を有すると共に略円形状の内形状を有している。環状部32は、X軸上において一対の第1トーションバー5に接続されている。
【0036】
第1接続部33は、本体部31に対して方向D2における一方側(
図1中の上側)に配置されており、第2接続部34は、本体部31に対して方向D2における他方側(
図1中の下側)に配置されている。第1接続部33及び第2接続部34の各々は、環状部32を本体部31に接続している。環状部32と本体部31との間には、第1接続部33及び第2接続部34が配置された箇所を除いて、隙間G(空間)が形成されている。平面視において、隙間Gは、方向D2におけるX軸側から第1接続部33(第2接続部34)側に向かうにつれて、幅(隙間Gの延在方向に垂直な方向における幅)が広くなる部分を有している。また、環状部32は、平面視において、方向D2におけるX軸側から第1接続部33(第2接続部34)側に向かうにつれて、幅(環状部32の延在方向に垂直な方向における幅)が狭くなる部分を有している。環状部32の幅をX軸側から第1接続部33(第2接続部34)側に向かうにつれて徐々に狭くすることにより、揺動時に第1トーションバー5及び第2トーションバー6において発生し、環状部32に伝わる動的な歪み、又は、第2可動部4にコイル等を形成することによって発生し、第1トーションバー5を介して環状部32に伝わる静的な歪みを、環状部32によって好適に緩和することができる。なお、第1接続部33及び第2接続部34は、軸線周りに揺動可能となるように可動部を連結するトーションバー(連結部)とは異なり、本体部31を環状部32に対して揺動可能に連結するものではない。
【0037】
図3に示されるように、第1接続部33は、空間S1(貫通孔)により互いに分離された一対の第1接続領域33aを有している。この例では、空間S1はY軸上に位置しており、一対の第1接続領域33aは方向D1においてY軸を挟んで互いに向かい合っている。各第1接続領域33aは、本体部31及び環状部32に接続されている。第2接続部34は、空間S2(貫通孔)により互いに分離された一対の第2接続領域34aを有している。この例では、空間S2はY軸上に位置しており、一対の第2接続領域34aは方向D1においてY軸を挟んで互いに向かい合っている。各第2接続領域34aは、本体部31及び環状部32に接続されている。
【0038】
第2可動部4は、枠状に形成されており、磁界発生部9から離間した状態で、第1可動部3を囲むように支持部2の内側に配置されている。第2可動部4は、一対の第1接続部41A,41Bと、一対の第2接続部42A,42Bと、一対の第1直線状部43A,43Bと、一対の第2直線状部44A,44Bと、一対の第3直線状部45A,45Bと、一対の第4直線状部46A,46Bと、を有している。これらの各部は、第1半導体層101によって構成されている。第2可動部4は、平面視においてX軸及びY軸の各々に関して対称な形状を有している。
【0039】
第1接続部41A,41Bは、方向D1における第1可動部3の両側に位置しており、方向D2に沿って延在している。第2接続部42A,42Bは、方向D2における第1可動部3の両側に位置しており、方向D1に沿って延在している。平面視における各第2接続部42A,42Bの内縁は、方向D2に窪む凹部48を有しており、平面視における各第2接続部42A,42Bの外縁は、方向D2に突出する凸部49を有している。凹部48及び凸部49は、平面視においてY軸上に位置している。
【0040】
第1直線状部43A,43Bは、方向D1における第2接続部42Aの両側に位置し、方向D1に沿って延在して第2接続部42Aに接続されている。第2直線状部44A,44Bは、方向D1における第2接続部42Bの両側に位置し、方向D1に沿って延在して第2接続部42Bに接続されている。
【0041】
第3直線状部45A,45Bは、それぞれ、第1直線状部43A,43Bに対して第2接続部42Aとは反対側に位置し、第1直線状部43A,43Bと第1接続部41A,41Bとに接続されている。第4直線状部46A,46Bは、それぞれ、第2直線状部44A,44Bに対して第2接続部42Bとは反対側に位置し、第2直線状部44A,44Bと第1接続部41A,41Bとに接続されている。第3直線状部45A,45B及び第4直線状部46A,46Bは、平面視においてX軸及びY軸に対して45度傾斜した方向に沿って延在している。
【0042】
接続部41A~42B及び直線状部43A~46Bにおける磁界発生部9の側の表面には、梁部47が形成されている(
図2参照)。梁部47は、第2半導体層102及び絶縁層103によって構成されている。梁部47は、平面視において第1可動部3を囲むように環状に延在している。第1接続部41A,41B及び直線状部45A~46Bにおける梁部47の幅は、第2接続部42A,42B及び直線状部43A~44Bにおける梁部47の幅よりも狭くなっている。
【0043】
第1トーションバー5及び第2トーションバー6は、第1半導体層101によって構成されている。一対の第1トーションバー5は、X軸上における第1可動部3の両側に配置されている。第1トーションバー5は、第1可動部3がX軸周りに(X軸を中心線として)揺動可能となるように、X軸上において第1可動部3(環状部32)を第2可動部4に連結している。また、第1トーションバー5は、第2可動部4及び第2トーションバー6を介して支持部2に接続されている。つまり、第1トーションバー5は、第1可動部3がX軸周りに揺動可能となるように、第1可動部3を支持部2に連結しているとみなすこともできる。一対の第1トーションバー5は、それぞれ、第1接続部41A,41Bにおいて第2可動部4に接続されている。第1トーションバー5は、この例では、ミラー面10に平行な平面に沿って延在する板状に形成されており、第1可動部3がX軸周りに揺動する際に捩れ変形する。
【0044】
各第1トーションバー5は、X軸に沿って延在すると共に一定の幅を有する直線状部5aと、直線状部5aの両端に接続された一対の拡幅部5bと、を有している。第1トーションバー5は、一方の拡幅部5bにおいて第1可動部3に接続され、他方の拡幅部5bにおいて第2可動部4に接続されている。平面視において、一方の拡幅部5bの幅は、第1可動部3に近づくほど広がっており、他方の拡幅部5bの幅は、第2可動部4に近づくほど広がっている。各拡幅部5bは、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に第1トーションバー5と第1可動部3又は第2可動部4との接続箇所に作用する応力の緩和のために設けられている。すなわち、拡幅部5bが設けられていることで、第1可動部3がX軸周りに揺動した際に拡幅部5bによって応力が緩和され、第1可動部3(環状部32)に作用する応力が減少するため、本体部31における動的な歪みを抑制することができる。なお、一対の拡幅部5bの少なくとも一方が設けられていなくてもよい。
【0045】
一対の第2トーションバー6は、Y軸上における第2可動部4の両側に配置されている。第2トーションバー6は、第2可動部4がY軸周りに(Y軸を中心線として)揺動可能となるように、Y軸上において第2可動部4を支持部2に連結している。一対の第2トーションバー6は、それぞれ、第2接続部42A,42Bにおいて第2可動部4に接続されている。第2トーションバー6は、第2可動部4がY軸周りに揺動する際に捩れ変形する。この例では、第2トーションバー6は、平面視において蛇行して延在している。各第2トーションバー6は、複数の直線状部11と、複数の折り返し部12と、を有している。複数の直線状部11は、方向D2に沿って延在し、方向D1に並んで配置されている。複数の折り返し部12は、隣り合う直線状部11の両端を交互に連結している。
【0046】
この例では、X軸周りの共振周波数を高める目的で、第1トーションバー5のばね定数が、第2トーションバー6のばね定数よりも大きく設定されている。トーションバーの断面積(延在方向に垂直な断面における断面積)が大きくなると、ばね定数が増加する。この例では、第1トーションバー5及び第2トーションバー6は方向D3における厚さが略同一である一方で、幅(延在方向に垂直な方向における幅)については、第1トーションバー5の方が大きく、結果的に第1トーションバー5の断面積が大きくなっている。
【0047】
ミラー装置1は、一対のコイル14,15を更に備えている。各コイル14,15は、第1可動部3を囲むように第2可動部4に設けられ、平面視において渦巻き状に延在している。コイル14,15は、X軸及びY軸を含む平面に沿って配置されている。各コイル14,15は、第1可動部3の周りに複数回巻回されている。コイル14,15は、例えば平面視において第2可動部4の幅方向に互い違いに並んでいる。コイル14,15は、例えば第2可動部4に埋め込まれたダマシン配線として構成されている。
【0048】
図1では、コイル14,15が配置されている配置領域Rがハッチングで示されている。コイル14,15は、第2可動部4の接続部41A~42B及び直線状部43A~46Bにおいて、それらの延在方向に沿って延在している。各コイル14,15は、例えば第2トーションバー6を通って延在する配線を介して支持部2上の電極パッドに電気的に接続されており、ミラー装置1の外部に配置された駆動源等と電気的に接続されている。なお、コイル14,15は、駆動用コイルとして使用されるだけでなく、コイル14,15に発生する逆起電力を測定することで装置の振動状態を確認するためのモニタ用コイルとしても使用され得る。
【0049】
以上のように構成されたミラー装置1では、コイル14にリニア動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル14にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と第2トーションバー6の弾性力とのつり合いを利用することで、Y軸周りに第1可動部3(ミラー面10)を第2可動部4と共にリニア動作させることができる。
【0050】
一方、コイル15に共振動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル15にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することで、X軸周りに第1可動部3(ミラー面10)を共振動作させることができる。具体的には、X軸周りにおける第1可動部3の共振周波数に等しい周波数の駆動信号がコイル15に入力されると、第2可動部4がX軸周りに当該周波数で僅かに振動する。この振動が第1トーションバー5を介して第1可動部3に伝わることにより、第1可動部3をX軸周りに当該周波数で揺動させることができる。
【0051】
図2~
図6に示されるように、第1可動部3の本体部31の第2表面31b上には、梁部50(リブ)が形成されている。梁部50は、第1可動部3を補強するための補強梁であり、所定方向に沿って延在する補強構造として構成されている。梁部50は、第2半導体層102及び絶縁層103によって構成されている。この例では、梁部50は、平面視においてX軸及びY軸の各々に関して対称な形状を有している。梁部50は、中央部51と、第1梁部60と、第2梁部70と、第3梁部80と、第4梁部90と、を有している。
【0052】
中央部51は、平面視において基準位置に配置された基準部分である。この例では、基準位置は、平面視において本体部の中心Pと一致しており、中央部51は中心P上に配置されている。本実施形態では、中央部51は、平面視において方向D2に長尺な形状を呈している。中央部51は、方向D1における幅及び方向D2における幅が略同一となるように形成されてもよい。中央部51における中心Pから後述する第1梁部60の一対の第1部分61の内縁61a同士が接続される箇所までの距離L1は、第1部分61の幅W61よりも大きい。これにより、中央部51における剛性を十分に確保し、梁部50の破損や本体部31からの剥離を防止することができる。第2梁部70側についても同様である。すなわち、中央部51における中心Pから後述する第2梁部70の一対の第2部分71の内縁71a同士が接続される箇所までの距離L2は、第2部分71の幅W71よりも大きい。また、中央部51における中心Pから後述する第3梁部80の一対の第3部分81の内縁81a同士が接続される箇所までの距離L3は、第3部分81の幅W81よりも大きい。これによっても、中央部51における剛性を十分に確保し、梁部50の破損や本体部31からの剥離を防止することができる。第4梁部90側についても同様である。すなわち、中央部51における中心Pから後述する第4梁部90の一対の第4部分91の内縁91a同士が接続される箇所までの距離L4は、第4部分91の幅W91よりも大きい。
【0053】
第1梁部60は、一対の第1部分61と、第1延在部分62(第1接続部分)と、を有している。一対の第1部分61は、中央部51から(基準位置である中心Pの側から)方向D1における一方側(
図3中の左側)に向かって延在し、方向D2においてX軸を挟んで互いに向かい合っている。一対の第1部分61は、平面視において方向D1及び方向D2に対して傾斜した方向に沿って真っ直ぐに延在している。この例では、一対の第1部分61は、中心Pを中心とする円の径方向に沿って延在している。
【0054】
一対の第1部分61は、中央部51において(基準位置である中心Pの側において)互いに接続されている。この例では、一対の第1部分61は、中央部51を介して互いに接続されている(一体化されている)。平面視において、一対の第1部分61の内縁61aは、滑らかに互いに接続されている。「縁A,Bが滑らかに接続されている」とは、縁A,Bの間に尖った箇所(例えば角部(鋭角、直角、鈍角のいずれの場合も含む)の頂点)が存在せずに、且つ縁A,Bの間において曲率が連続するように、縁A,Bが接続されていることを意味する。この例では、円弧状に形成された中央部51の外縁により、内縁61a同士が滑らかに接続されている。
【0055】
第1延在部分62は、平面視において一対の第1部分61の間において延在している。この例では、第1延在部分62は、平面視においてX軸と交差するように延在し、一対の第1部分61に接続されている。より詳細には、第1延在部分62は、一対の第1部分61における中央部51とは反対側の端部61bに接続されている。平面視において、第1延在部分62の内縁62aは、一対の第1部分61の内縁61aに滑らかに接続されている。この例では、内縁61a,62aの間に円弧状に湾曲したR部が形成されており、これにより内縁61a,62aが滑らかに接続されている。第1延在部分62は、平面視において、第1可動部3の本体部31の外縁31cに沿って延在している。また、第1延在部分62は、平面視において、方向D1における一方側(中央部51とは反対側)に向かって凸となるように湾曲している。この例では、外縁31cは円弧状であり、第1延在部分62は、方向D1における一方側に向かって凸の円弧状に形成されている。
【0056】
第1延在部分62の幅W62は、各第1部分61の幅W61よりも広い。第1部分61の幅W61とは、平面視における第1部分61の延在方向(中心Pから端部61bに向かう方向)に垂直な方向に沿っての第1部分61の幅である。第1延在部分62の幅W62とは、平面視における第1延在部分62の延在方向(外縁31cに沿った方向)に垂直な方向に沿っての第1延在部分62の幅である。これらの点は、後述する第2部分71の幅W71及び第2延在部分72の幅W72、並びに上述した第3部分81の幅W81及び第4部分91の幅W91についても同様である。
【0057】
第1部分61の幅W61及び第2部分71の幅W71の各々は、第3部分81の幅W81及び第4部分91の幅W91の各々以上である。これにより、X軸周りの慣性モーメントの増加を抑制しつつ、第1梁部60及び第2梁部70の強度を十分に確保することができる。幅W61及び幅W71の各々は、幅W81及び幅W91の各々よりも大きいことがより好ましい。また、第1延在部分62の幅W62及び第2延在部分72の幅W72の各々は、第3部分81の幅W81及び第4部分91の幅W91の各々以上である。これにより、X軸周りの慣性モーメントの増加を抑制しつつ、第1梁部60及び第2梁部70の強度を十分に確保することができる。幅W62及び幅W72の各々は、幅W81及び幅W91の各々よりも大きいことがより好ましい。
【0058】
第1延在部分62は、平面視において本体部31の外縁31c(本体部31と隙間Gとの間の境界)から外側(中心Pとは反対側)に突出した突出部分63を有している。すなわち、突出部分63は、平面視において外縁31cの外側に位置している。第1延在部分62の内側部分(突出部分63以外の部分)は、外縁31cから外側に突出していない。平面視において、第1延在部分62、一対の第1部分61及び中央部51によって囲まれた領域の全体が、本体部31と重なっている。当該領域は、梁部50が形成されていない領域(リブなし領域)である。このように梁部50が形成されていない領域が本体部31上に設けられていることで、第1可動部3における慣性モーメントの増加を抑制しつつ、梁部50の強度向上を図ることができる。
【0059】
突出部分63は、本体部31の外縁31cに沿って延在している。この例では、突出部分63は、第1延在部分62の延在方向(外縁31cに沿った方向)において第1延在部分62の全体にわたって設けられており、方向D1における一方側(中央部51とは反対側)に向かって凸の円弧状に形成されている。すなわち、突出部分63は、外縁31cに沿った方向において一対の第1部分61の間を延在するように設けられており、X軸上において外縁31cから外側に突出している(平面視においてX軸と交差している)。突出部分63は、X軸上から方向D2における一方側と他方側とに向かって、外縁31cに沿って延在しているとみなすこともできる。突出部分63は、平面視において、第1可動部3の本体部31と環状部32との間に形成された隙間Gと重なっている。突出部分63は、本体部31以外の部分(例えば環状部32、第1トーションバー5、第1接続部33、第2接続部34等)に接触していない。すなわち、この例では、突出部分63は、本体部31以外の部分によって支持されずに、空間上に浮いた部分である。突出部分63は、平面視において環状部32と重なっておらず(環状部32に至っておらず)、平面視において突出部分63と環状部32との間には隙間がある。
【0060】
X軸上における突出部分63と環状部32との間の距離T1は、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも小さい。本体部31の外縁31cに沿っての突出部分63の長さL63aは、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも大きい。長さL63aは、第1延在部分62の幅W62よりも大きい。長さL63aは、距離T1よりも大きい。長さL63aは、環状部32と本体部31とを接続する第1接続領域33aの最大幅W33aよりも大きい。長さL63aは、第1接続部33の全体(一対の第1接続領域33a及び空間S1によって構成される領域)の最大幅よりも大きい。本体部31の外縁31cからの突出部分63の突出長さL63b(
図4参照)は、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも小さい。第1トーションバー5の幅とは、平面視における第1トーションバー5の延在方向(この例では方向D1)に垂直な方向(この例では方向D2)に沿っての第1トーションバー5の幅である。突出長さL63bは、平面視における外縁31cの延在方向(この例では中心Pを中心とする円の周方向)に垂直な方向(この例では中心Pを中心とする円の径方向)における突出部分63の最大突出長さ(最大幅)である。すなわち、外縁31cが曲率を有する場合、外縁31cの延在方向とは接線方向である。この点は後述する突出部分73の突出長さL73bについても同様である。
【0061】
第2梁部70は、Y軸に関して第1梁部60と対称な形状を有している。第2梁部70は、一対の第2部分71と、第2延在部分72(第2接続部分)と、を有している。一対の第2部分71は、中央部51から(基準位置である中心Pの側から)方向D1における他方側(
図3中の右側)に向かって延在し、方向D2においてX軸を挟んで互いに向かい合っている。第2部分71は、平面視において方向D1及び方向D2に対して傾斜した方向に沿って真っ直ぐに延在している。この例では、一対の第2部分71は、中心Pを中心とする円の径方向に沿って延在している。平面視において、一方の第2部分71(
図3中の上側の第2部分71)は、第1梁部60の一方の第1部分61(
図3中の下側の第1部分61)と同一の直線上に位置しており、他方の第2部分71(
図3中の下側の第2部分71)は、第1梁部60の他方の第1部分61(
図3中の上側の第1部分61)と同一の直線上に位置している。第1梁部60及び第2梁部70の全体は、平面視においてリボン状を呈している。
【0062】
一対の第2部分71は、中央部51において(基準位置である中心Pの側において)互いに接続されている。この例では、一対の第2部分71は、中央部51を介して互いに接続されている(一体化されている)。平面視において、一対の第2部分71の内縁71aは、滑らかに互いに接続されている。この例では、円弧状に形成された中央部51の外縁により、内縁71a同士が滑らかに接続されている。
【0063】
第2延在部分72は、平面視において一対の第2部分71の間において延在している。この例では、第2延在部分72は、平面視においてX軸と交差するように延在し、一対の第2部分71に接続されている。より詳細には、第2延在部分72は、一対の第2部分71における中央部51とは反対側の端部71bに接続されている。平面視において、第2延在部分72の内縁72aは、一対の第2部分71の内縁71aに滑らかに接続されている。この例では、内縁71a,72aの間に円弧状に湾曲したR部が形成されており、これにより内縁71a,72aが滑らかに接続されている。第2延在部分72は、平面視において、第1可動部3の本体部31の外縁31cに沿って延在している。また、第2延在部分72は、平面視において、方向D1における他方側(中央部51とは反対側)に向かって凸となるように湾曲している。この例では、外縁31cは円弧状であり、第2延在部分72は、方向D1における一方側に向かって凸の円弧状に形成されている。
【0064】
第2延在部分72の幅W72は、各第2部分71の幅W71よりも広い。第2延在部分72は、平面視において本体部31の外縁31cから外側(中心Pとは反対側)に突出した突出部分73を有している。すなわち、突出部分73は、平面視において外縁31cの外側に位置している。第2延在部分72の内側部分(突出部分73以外の部分)は、外縁31cから外側に突出していない。平面視において、第2延在部分72、一対の第2部分71及び中央部51によって囲まれた領域の全体が、本体部31と重なっている。
【0065】
突出部分73は、本体部31の外縁31cに沿って延在している。この例では、突出部分73は、第2延在部分72の延在方向(外縁31cに沿った方向)において第2延在部分72の全体にわたって設けられており、方向D1における一方側(中央部51とは反対側)に向かって凸の円弧状に形成されている。すなわち、突出部分73は、外縁31cに沿った方向において一対の第2部分71の間を延在するように設けられており、X軸上において外縁31cから外側に突出している(平面視においてX軸と交差している)。突出部分73は、X軸上から方向D2における一方側と他方側とに向かって、外縁31cに沿って延在しているとみなすこともできる。突出部分73は、平面視において、第1可動部3の本体部31と環状部32との間に形成された隙間Gと重なっている。突出部分73は、本体部31以外の部分(例えば環状部32、一対の第1トーションバー5、第1接続部33、第2接続部34等)に接触していない。すなわち、この例では、突出部分73は、本体部31以外の部分によって支持されずに、空間上に浮いた部分である。
【0066】
X軸上における突出部分73と環状部32との間の距離T2は、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも小さい。本体部31の外縁31cに沿っての突出部分73の長さL73aは、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも大きい。長さL73aは、第2延在部分72の幅W72よりも大きい。長さL73aは、距離T2よりも大きい。本体部31の外縁31cからの突出部分73の突出長さL73b(
図4参照)は、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも小さい。
【0067】
第3梁部80は、一対の第3部分81を有している。一対の第3部分81は、中央部51から(基準位置である中心Pの側から)方向D2における一方側(
図2及び
図3中の上側)に向かって延在し、方向D1においてY軸を挟んで互いに向かい合っている。第3部分81は、平面視において方向D1及び方向D2に対して傾斜した方向に沿って真っ直ぐに延在している。この例では、一対の第3部分81は、中心Pを中心とする円の径方向に沿って延在している。
【0068】
一対の第3部分81は、中央部51において(基準位置である中心Pの側において)互いに接続されている。この例では、一対の第3部分81は、中央部51を介して互いに接続されている(一体化されている)。平面視において、一対の第3部分81の内縁81aは、滑らかに互いに接続されている。この例では、内縁81aの間に円弧状に湾曲したR部が形成されており、これにより内縁81a同士が滑らかに接続されている。
【0069】
一対の第3部分81は、第1可動部3の第1接続部33の一対の第1接続領域33aに向かってそれぞれ延在している。平面視において、第3部分81は、第1接続領域33aに至っておらず、第1接続領域33aから離れている。第3部分81と第1接続領域33aとの間の距離T3(最短距離)は、第1接続領域33aの最大幅W33aよりも小さい(
図3及び
図6参照)。第1接続領域33aの最大幅W33aとは、第1接続領域33aによる本体部31及び環状部32の接続方向(第1接続領域33aの延在方向)に垂直な方向における第1接続領域33aの最大幅である。この点は後述する第2接続領域34aの最大幅W34aについても同様である。
【0070】
一対の第3部分81の間には、梁部50が形成されていない。すなわち、梁部50は、一対の第3部分81の間に形成された部分を有していない。「梁部50が一対の第3部分81の間に形成された部分を有していない」とは、例えば平面視において一対の第3部分81の間の領域に梁部50が形成されていないことを意味する。中央部51は、「一対の第3部分81の間に形成された部分」には該当しない。これらの点は後述する第4部分91についても同様である。
【0071】
第4梁部90は、一対の第4部分91を有している。一対の第4部分91は、中央部51から(基準位置である中心Pの側から)方向D2における他方側(
図3中の下側)に向かって延在し、方向D1においてY軸を挟んで互いに向かい合っている。第4部分91は、平面視において方向D1及び方向D2に対して傾斜した方向に沿って真っ直ぐに延在している。この例では、一対の第4部分91は、中心Pを中心とする円の径方向に沿って延在している。平面視において、一方の第4部分91(
図3中の左側の第4部分91)は、第3梁部80の一方の第3部分81(
図3中の右側の第3部分81)と同一の直線上に位置しており、他方の第4部分91(
図3中の右側の第4部分91)は、第3梁部80の他方の第3部分81(
図3中の左側の第3部分81)と同一の直線上に位置している。第3梁部80及び第4梁部90の全体は、平面視においてX状を呈している。
【0072】
一対の第4部分91は、中央部51において(基準位置である中心Pの側において)互いに接続されている。この例では、一対の第4部分91は、中央部51を介して互いに接続されている(一体化されている)。平面視において、一対の第4部分91の内縁91aは、滑らかに互いに接続されている。この例では、内縁91aの間に円弧状に湾曲したR部が形成されており、これにより内縁91a同士が滑らかに接続されている。
【0073】
一対の第4部分91は、第1可動部3の第2接続部34の一対の第2接続領域34aに向かってそれぞれ延在している。平面視において、第4部分91は、第2接続領域34aに至っておらず、第2接続領域34aから離れている。第4部分91と第2接続領域34aとの間の距離T4(最短距離)は、第2接続領域34aの最大幅W34aよりも小さい(
図3参照)。一対の第4部分91の間には、梁部50が形成されていない。すなわち、梁部50は、一対の第4部分91の間に形成された部分を有していない。
【0074】
梁部50においては、第1部分61、第2部分71、第3部分81及び第4部分91が、中心Pを中心として放射状に延在している。第1部分61、第2部分71、第3部分81及び第4部分91は、互いに別の部分である(互いに共有されていない)。第1部分61の長さL61及び第2部分71の長さL71の各々は、第3部分81の長さL81及び第4部分91の長さL91の各々よりも長い。この例では、長さL61,L71は互いに等しく、長さL81,L91は互いに等しい。
【0075】
平面視において、一対の第1部分61の間の角度をθ1とし、一対の第2部分71の間の角度をθ2とし、一対の第3部分81の間の角度をθ3とし、一対の第4部分91の間の角度をθ4とすると、下記の関係が満たされている。
θ3<θ1<3×θ3
θ4<θ1<3×θ4
θ3<θ2<3×θ3
θ4<θ2<3×θ4
すなわち、θ1及びθ2の各々は、θ3及びθ4の各々よりも大きく、θ3及びθ4の各々の3倍よりも小さい。この例では、θ1,θ2は互いに等しく、θ3,θ4は互いに等しい。好ましくは、θ1及びθ2は、30度よりも大きく90度よりも小さい。好ましくは、θ3及びθ4は、10度よりも大きく30度よりも小さい。
【0076】
各部の寸法の一例は次のとおりである。X軸上における突出部分63と環状部32との間の距離T1は、X軸上における突出部分73と環状部32との間の距離T2と等しく、10μm~100μm程度である。第1部分61の幅W61は、第2部分71の幅W71、第3部分81の幅W81及び第4部分91の幅W91と等しく、10μm~100μm程度である。第1延在部分62の幅W62は、第2延在部分72の幅W72と等しく、20μm~200μm程度である。第1部分61の長さL61は、第2部分71の長さL71と等しく、100μm~1000μm程度である。中央部51の中心Pから一対の第1部分61の内縁61a同士が接続される箇所までの距離L1は、中心Pから一対の第2部分71の内縁71a同士が接続される箇所までの距離L2と等しく、20μm~200μm程度である。中心Pから後述する一対の第3部分81の内縁81a同士が接続される箇所までの距離L3は、中心Pから一対の第4部分91の内縁91a同士が接続される箇所までの距離L4と等しく、30μm~300μm程度である。
【0077】
本体部31の外縁31cに沿っての突出部分63の長さL63aは、本体部31の外縁31cに沿っての突出部分73の長さL73aと等しく、100μm~1000μm程度である。第1接続領域33aの最大幅W33aは、第2接続領域34aの最大幅W34aと等しく、20μm~200μm程度である。第3部分81と第1接続領域33aとの間の距離T3は、第4部分91と第2接続領域34aとの間の距離T4と等しく、10μm~100μm程度である。本体部31の外縁31cからの突出部分63の突出長さL63bは、本体部31の外縁31cからの突出部分73の突出長さL73bと等しく、5μm~60μm程度である。第1半導体層101の厚さは、20μm~200μm程度である。梁部50の厚さは、20μm~200μm程度である。
[作用及び効果]
【0078】
ミラー装置1では、梁部50が、平面視において(第2表面31bに垂直な方向D3から見た場合に)、本体部31の外縁31cに沿って延在する第1延在部分62(第1接続部分)及び第2延在部分72(第2接続部分)を有している。これにより、歪みが発生しやすい外縁部において本体部31の剛性を高めることができ、本体部31の歪み(換言すればミラー面10の歪み)を効果的に抑制することができる。一方、本体部31の歪みを効果的に抑制する観点からは、梁部を本体部31の外縁31cの近くに形成することが好ましいが、例えば、延在部分62,72の側面が本体部31の側面と面一になるように(方向D3から見た場合に延在部分62,72の側面が本体部31の側面と一致するように)延在部分62,72を形成すると、製造誤差(例えばエッチングの誤差)により延在部分62,72が本体部31の外縁31cから突出した装置と延在部分62,72が本体部31の外縁31cから突出していない装置とが混在してしまうことが懸念される。この場合、例えば後工程における製造条件の設定が難しくなってしまうおそれがある。例えば、ミラー装置1の製造工程においては、本体部31の表側(ミラー面10が形成される第1表面31a側)に保護膜を形成した後に、梁部50を含めた本体部31の裏面側(第2表面31b側)をエッチングする。また、当該裏面エッチングの後に、保護膜を除去するエッチングを実施する。例えば、製造誤差により延在部分62,72が本体部31の外縁31cから突出した装置と延在部分62,72が本体部31の外縁31cから突出していない装置とが混在する場合、保護膜の除去に必要となるエッチング条件(エッチング時間等)が変わってしまい、製造条件の設定が難しくなるおそれがある。例えば、梁部50が本体部31の外縁31cから突出した装置において保護膜を除去する最適なエッチング条件を設定した場合に、梁部50が本体部31の外縁31cから突出していない装置を同じ条件でエッチングすると、保護膜だけでなく本体部31等の本来エッチングをしたくない部分についてもエッチングされてしまう、といった事態が起こり得る。この点、ミラー装置1では、延在部分62,72が、平面視において、本体部31の外縁31cから外側(本体部31とは反対側)に突出すると共に本体部31の外縁31cに沿って延在する突出部分63,73を有している。これにより、そのような事態の発生を回避することができ、製造を容易化することができる。よって、ミラー装置1によれば、ミラー面10の歪みを効果的に抑制することができると共に、製造を容易化することができる。
【0079】
本体部31に発生する歪みには、動的な歪みと静的な歪みがある。動的な歪みは、第1トーションバー5が捩れ変形して第1可動部3が揺動する際に発生する歪みである。動的な歪みは、第1トーションバー5が捩れ変形した際に第1トーションバー5において発生した応力が、環状部32を介して本体部31に伝わることに起因しても発生する。静的な歪みは、ミラー面10及び保護膜の形成に起因して発生する歪みである。静的な歪みは、異なる材料(例えばSOI基板100の材料であるシリコン、絶縁層の材料であるSiN、コイル14,15を構成する金属材料等)間の熱膨張係数の差に起因しても発生する。動的な歪み及び静的な歪みのいずれも、本体部31の外縁部において特に発生しやすい。具体的には、動的な歪みについては、第1可動部3の揺動時に応力が発生する第1トーションバー5との接続箇所の近傍や、慣性モーメントの影響を強く受けるX軸(揺動軸)から離れた位置において発生しやすい。静的な歪みについては、本体部31に積層される金属膜や無機材料膜の影響により本体部31の外縁部において発生しやすい。また、静的歪みについても、第1トーションバー5との接続箇所の近傍において発生しやすい。これは、コイル14,15(或いは圧電駆動の場合には圧電素子)の形成により第2可動部4に発生した歪みが、第1トーションバー5を介して第1可動部3に伝わり得るためである。本体部31(ミラー面10)に歪みが発生すると、ミラー面10に照射されたレーザ光が歪む等の悪影響が生じ得る。そのため、上述したとおり、ミラー装置1では、本体部31の外縁31cに沿って延在する延在部分62,72を設けることで、本体部31の外縁部における剛性を高め、本体部31の歪みを抑制している。
【0080】
本体部31の外縁31cに沿っての突出部分63,73の長さL63a,L73aが、方向D2(方向D1,D3の両方に垂直な方向)における第1トーションバー5の最小幅W5よりも大きい。これにより、本体部31の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0081】
本体部31の外縁31cからの突出部分63,73の突出長さL63b,L73bが、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも小さい。これにより、本体部31の歪みを抑制しつつ、ミラー装置1の小型化を図ることができる。突出長さL63b,L73bは、例えば加工公差を考慮して最小限の突出量に設定される。
【0082】
梁部50が、平面視において、中央部51から(基準位置の側から)方向D1(所定方向)(X軸と平行な方向)における一方側に向かって延在すると共に方向D2において互いに向かい合う一対の第1部分61と、一対の第1部分61に接続された第1延在部分62(第1接続部分)と、中央部51から方向D1における他方側に向かって延在すると共に方向D2において互いに向かい合う一対の第2部分71と、一対の第2部分71に接続された第2延在部分72(第2接続部分)と、を有している。第1延在部分62及び第2延在部分72は、本体部31の外縁31cに沿って延在している。これにより、第1部分61及び第2部分71によって本体部31の全体の歪みを抑制しつつ、第1延在部分62及び第2延在部分72によって本体部31の外縁部の歪みを抑制することができる。
【0083】
第1延在部分62の幅W62が、各第1部分61の幅W61よりも広く、第2延在部分72の幅W72が、各第2部分71の幅W71よりも広い。これにより、歪みが発生しやすい外縁部において本体部31の剛性を高めることができ、本体部31の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0084】
一対の第1部分61が中央部51において(基準位置において)互いに接続されていると共に、一対の第2部分71が中央部51において互いに接続されている。これにより、梁部50の剛性を高めることができ、梁部50の破損や剥離を抑制することができる。
【0085】
平面視において、一対の第1部分61の内縁61aが滑らかに互いに接続されていると共に、一対の第2部分71の内縁71aが滑らかに互いに接続されている。これにより、梁部50の破損や剥離を一層抑制することができる。
【0086】
基準位置が、平面視における本体部31の中心Pと一致している。これにより、梁部50を本体部31上にバランス良く配置することができ、本体部31の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0087】
梁部50が、平面視において、中央部51から方向D2における一方側に向かって延在すると共に方向D1において互いに向かい合う一対の第3部分81と、中央部51から方向D2における他方側に向かって延在すると共に方向D1において互いに向かい合う一対の第4部分91と、を有している。これにより、本体部31の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0088】
平面視において、一対の第1部分61の間の角度θ1が、一対の第3部分81の間の角度θ3よりも大きい。これにより、一対の第1部分61に接続された第1延在部分62の長さ(本体部31の外縁31cに沿っての長さ)を長くすることができ、本体部31の歪みを一層効果的に抑制することができる。
【0089】
第1可動部3が、平面視において隙間Gを介して本体部31を囲み、第1トーションバー5(連結部)に接続された環状部32と、環状部32を本体部31に接続する第1接続部33及び第2接続部34と、を有し、突出部分63,73の一部が、平面視において隙間Gと重なっている。これにより、本体部31が環状部32を介して第1トーションバー5に接続されていることで、第1可動部3の揺動時に第1トーションバー5において発生した応力が本体部31に直接に伝わることを抑制することができ、本体部31の動的な歪みを抑制することができる。
【0090】
突出部分63が、平面視において環状部32と重なっていない。これにより、第1可動部3の揺動時に第1トーションバー5において発生した応力が本体部31に伝わることを抑制することができ、本体部31の動的な歪みを抑制することができる。また、環状部32に発生した応力が梁部50を介して本体部31に伝わることを抑制することができ、本体部31の歪み(静的な歪み)を抑制することができる。
【0091】
第1接続部33及び第2接続部34が、本体部31に対して方向D2の一方側及び他方側にそれぞれ配置されており、梁部50が、一対の第1部分61、第1延在部分62、一対の第2部分71、及び第2延在部分72を有している。第1延在部分62及び第2延在部分72は、本体部31の外縁31cに沿って延在している。これにより、第1接続部33及び第2接続部34が本体部31に対して方向D2の一方側及び他方側にそれぞれ配置されていることで、第1接続部33及び第2接続部34を第1トーションバー5から離れた位置に配置することができ、第1可動部3の揺動時に第1トーションバー5において発生した応力が本体部31に伝わることを一層抑制することができる。また、第1部分61、第1延在部分62、第2部分71及び第2延在部分72を有しているように梁部50を形成することで、X軸周りの第1可動部3の慣性モーメントの増加を抑制しつつ、本体部31の歪みを抑制することができる。
【0092】
突出部分63,73が、X軸上において本体部31の外縁31cから外側に突出しており、X軸上における突出部分63,73と環状部32との間の距離T1,T2が、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5よりも小さい。これにより、ミラー装置1の小型化を図ることができる。
【0093】
第1延在部分62及び第2延在部分72が、平面視においてX軸と交差するように延在している。第1接続部33及び第2接続部34から遠い位置(例えばX軸上の位置)においては静的な歪みが発生しやすいが、ミラー装置1によれば、当該位置における本体部31の歪みを効果的に抑制することができる。また、X軸から離れた位置に第1延在部分62及び第2延在部分72が配置される場合と比べて第1可動部3の慣性モーメントを低減することができる。
【0094】
梁部50が、一対の第3部分81及び一対の第4部分91を有している。第1接続部33及び第2接続部34に近い位置には、第1可動部3の揺動時に第1トーションバー5において発生した応力が伝わりやすく、当該位置においては動的な歪みが発生しやすいが、ミラー装置1によれば、当該位置における本体部31の歪みを効果的に抑制することができる。
【0095】
突出部分63,73が、本体部31以外の部分に接触していない。これにより、本体部31以外の部分から梁部50を介して本体部31に応力が伝わることを抑制することができる。また、梁部50の大きさを小さくすることができ、第1可動部3の慣性モーメントの増加を抑制することができる。
【0096】
本体部31が第1半導体層101によって構成されており、梁部50が、第2半導体層102及び絶縁層103によって構成されている。このようなミラー装置1においても、ミラー面10の歪みを効果的に抑制することができると共に、製造を容易化することができるとの上記作用効果を奏することができる。
【0097】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。例えば、本体部31、環状部32及びミラー面10は、円形状、楕円形状、四角形状、菱形状等の任意の形状に形成されてもよい。第2可動部4の形状は上述した形状に限られない。
【0098】
上記実施形態において、第1可動部3は、環状部32、第1接続部33及び第2接続部34を有さず、本体部31のみを有していてもよい。この場合、第1トーションバー5が本体部31に直接に接続される。かかる構成において、突出部分63,73は、平面視において本体部31の外縁31c(本体部31とその外側の空間との間の境界)から外側に突出していてもよい。突出部分63,73は、平面視においてその一部が第1可動部3(例えば第1接続部33及び第2接続部34)と重なるように設けられてもよいが、平面視においてその少なくとも一部が第1可動部3と重ならないように設けられる。
【0099】
梁部50が突出部分63,73を有していればよく、第1梁部60は一対の第1部分61を有していなくてもよく、第2梁部70は一対の第2部分71を有していなくてもよい。梁部50は、第3梁部80及び第4梁部90を有していなくてもよい。上記実施形態では一対の第1部分61が中央部51において互いに接続されていたが、一対の第1部分61は中央部51の側(基準位置の側)において互いに接続されていなくてもよい(互いに離れていてもよい)。例えば、上記実施形態において中央部51が省略されてもよい。すなわち、一対の第1部分61は、基準位置の側から方向D1における一方側に向かって延在していればよい。この点は一対の第2部分71、一対の第3部分81及び一対の第4部分91についても同様である。梁部50は、突出部分63,73(第1梁部60及び第2梁部70)のいずれか一方のみを有していてもよい。
【0100】
上記実施形態では突出部分63,73がX軸上において本体部31の外縁31cから突出するように設けられていたが、突出部分63,73は、Y軸上において外縁31cから突出するように設けられていてもよい。例えば、一対の第1部分61が中央部51から(基準位置の側から)方向D2(所定方向)における一方側(
図3中の上側)に向かって延在して方向D1において互いに向かい合うように設けられると共に、一対の第2部分71が中央部51から方向D2における他方側(
図3中の下側)に向かって延在して方向D1において互いに向かい合うように設けられてもよい。この場合、第1延在部分62及び第2延在部分72は、平面視においてY軸と交差するように延在し、X軸とは交差しない。この場合、一対の第3部分81が中央部51から方向D1における一方側(
図3中の左側)に向かって延在して方向D2においてX軸を挟んで互いに向かい合うように設けられると共に、一対の第4部分91が中央部51から方向D1における他方側(
図3中の右側)に向かって延在して方向D2においてX軸を挟んで互いに向かい合うように設けられてもよい。
【0101】
突出部分63,73は、X軸上及びY軸上に限らず、任意の箇所において本体部31の外縁31cから突出していてもよい。突出部分63,73は、平面視において環状部32と重なるように設けられていてもよく、例えば環状部32に接触して固定されていてもよい。この場合、梁部50が本体部31及び環状部32の両方に接続されることで、梁部50の強度を向上することができる。上記実施形態では突出部分63が第1延在部分62の延在方向における全体にわたって設けられていたが、突出部分63は第1延在部分62の延在方向における一部のみに設けられていてもよい。この点は突出部分73及び第2延在部分72についても同様である。
【0102】
突出部分63,73の長さL63a,L73aは、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5以下であってもよい。突出部分63,73の突出長さL63b,L73bは、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5以上であってもよい。第1延在部分62の幅W62は第1部分61の幅W61と等しいか又は幅W61よりも小さくてもよく、第2延在部分72の幅W72は第2部分71の幅W71と等しいか又は幅W71よりも小さくてもよい。平面視において、一対の第1部分61の内縁61aは滑らかに接続されていなくてもよく、一対の第2部分71の内縁71aは滑らかに接続されていなくてもよい。
【0103】
中央部51が配置される基準位置は任意の位置に設定されてよく、必ずしも平面視において本体部31の中心Pと一致していなくてもよい。一対の第1部分61の間の角度θ1は、一対の第3部分81の間の角度θ3と等しいか又は角度θ3よりも小さくてもよい。X軸上における突出部分63,73と環状部32との間の距離T1,T2は、方向D2における第1トーションバー5の最小幅W5以上であってもよい。本体部31は少なくとも第1半導体層101によって構成されていればよく、梁部50は少なくとも第2半導体層102によって構成されていればよい。例えば、本体部31が第1半導体層101及び絶縁層103によって構成され、梁部50が第2半導体層102によって構成されていてもよい。
【0104】
第1可動部3及び第2可動部4の駆動用の素子はコイル14,15に限られず、例えば圧電素子であってもよい。コイル15は、第1可動部3(例えば環状部32)に設けられてもよい。第1可動部3の動作は、リニア動作(非共振動作)であってもよい。第2可動部4及び第2トーションバー6は省略されてもよい。この場合、第1可動部3は、第1トーションバー5により支持部2に直接に連結されてもよい。この場合、第1可動部3の動作は、共振動作であってもよいし、リニア動作であってもよい。すなわち、上記実施形態ではミラー装置1が共振軸とリニア軸とを有していたが、ミラー装置1は共振軸又はリニア軸の一方のみを有していてもよい。第1可動部3が揺動する第1軸線と第2可動部4が揺動する第2軸線とは、垂直以外の角度で交差していてもよいし、互いに平行であってもよいし、或いは同一直線上に位置していてもよい。ミラー面10は、光を回折及び反射させる回折格子として構成されていてもよい。この場合、ミラー面10は、例えば所定の回折格子パターンに沿って形成された金属膜によって構成されてもよい。或いは、ミラー面10は、シリコン(第1半導体層101)をエッチングすることによって形成されてもよい(第1半導体層101の表面によって構成されてもよい)。
【符号の説明】
【0105】
1…ミラー装置、2…支持部、3…第1可動部(可動部)、5…第1トーションバー(連結部)、10…ミラー面、31…本体部、31a…第1表面、31b…第2表面、31c…外縁、32…環状部、50…梁部、61…第1部分、61a…内縁、62…第1延在部分(第1接続部分)、63…突出部分、71…第2部分、71a…内縁、72…第2延在部分(第2接続部分)、73…突出部分、81…第3部分、91…第4部分、100…SOI基板(半導体基板)、101…第1半導体層、102…第2半導体層、103…絶縁層、D1…方向(第1方向)、D2…方向(第2方向)、G…隙間、P…中心。