(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112026
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】冷風扇システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/64 20180101AFI20240813BHJP
F24F 6/00 20060101ALI20240813BHJP
F24F 6/04 20060101ALI20240813BHJP
F24F 1/039 20190101ALI20240813BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240813BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20240813BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20240813BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F6/00 A
F24F6/00 E
F24F6/04
F24F6/00 G
F24F1/039
F24F11/70
F24F110:22
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016835
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】501188306
【氏名又は名称】株式会社フナボリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 政則
【テーマコード(参考)】
3L050
3L055
3L260
【Fターム(参考)】
3L050BB03
3L055BA01
3L055DA01
3L055DA02
3L055DA09
3L260AB20
3L260BA04
3L260CA33
3L260CB64
3L260EA07
3L260FA06
3L260FB80
3L260GA15
(57)【要約】
【課題】 冷風扇が設置された作業場所の周囲の湿度が高くなった場合に、冷風扇に供給する作動水を停止または減じて、湿度の上昇を抑制する冷風扇システムを提供する。
【解決手段】 冷風扇10に作動水Wを供給する給水ポンプ12に給水制御装置20から給水量信号を送出する。給水制御装置20は、湿度設定装置20aにより所望の湿度が設定される。屋外には湿度センサー21が設置されて外気の湿度が取得される。屋外の湿度と設定湿度とが比較され、屋外の湿度が高いときには、給水ポンプ12を停止させ、冷風扇10の気化フィルタ11への給水を停止し、気化フィルタ11からの蒸発を停止させて、作業場所の湿度の上昇を抑制する。また、給水配管11cへの送水配管13に給水弁13aを設けてその開度を調整して、気化フィルタ11への給水量を変更させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に供給された水を流下させる気化フィルタと、気化フィルタに空気を流通させる送風機と、気化フィルタの上部に水を供給する給水ポンプと、給水ポンプから気化フィルタに給水する給水管とを少なくとも備えた冷風扇の作動を制御する冷風扇システムであって、
前記給水ポンプの作動と停止とを制御する給水制御装置と、
前記給水制御装置に具備された湿度設定装置と、
屋外の湿度を測定して前記給水制御装置に対して湿度データを送出する湿度センサーと、
を備え、
前記湿度設定装置で設定された湿度を屋外の湿度データと比較して、この比較結果により前記給水制御装置から給水量信号送出し、この給水量信号に基づいて前記給水ポンプの作動と停止とを行うようにしたことを特徴とする冷風扇システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷風扇システムであって、
気化フィルタの下方に気化フィルタを流下した水を回収する回収タンクを設け、
前記給水ポンプにより回収タンクに貯留した水を気化フィルタの上部に供給することを特徴とする冷風扇システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷風扇システムであって、
冷風扇を配する屋内に動作灯を設け、
前記給水制御装置から前記給水ポンプの動作信号をこの動作灯に送出して、給水ポンプの作動時にはこの動作灯を点灯または点滅させることを特徴とする冷風扇システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の気化熱を利用して冷却された空気を、送風機により送出する冷風扇の作動に係る冷風扇システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水を気化フィルタに供給し、この気化フィルタに送風機によって空気を流通させて気化熱を奪って冷風を生成する冷風扇が知られている。この冷風扇には、工場等の作業場所における作業者に冷風を供給するものがあり、当該作業場所に固定される固定式や据置式、キャスターを具備させて任意の作業場所に移動させることができる移動式のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-23850号公報
【特許文献2】特開2014-92338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷風扇は、気化フィルタに供給された水の気化熱を利用して冷風を生成し、所望の場所へ供給している。気化フィルタには水が供給されるから、気化熱が奪われる際には蒸発する。このため、作業環境によっては、この冷風扇の周囲では、湿度が上昇する虞がある。
【0005】
作業環境の湿度が上昇すると、作業者は不快を感じる虞があり、さらに、熱中症を発する虞がある。
【0006】
そこで、この発明は、作業場所の湿度を一定に保つようにして、作業環境を極力良好なものとする冷風扇システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る冷風扇システムは、上部に供給された水を流下させる気化フィルタと、気化フィルタに空気を流通させる送風機と、気化フィルタの上部に水を供給する給水ポンプと、給水ポンプから気化フィルタに給水する給水管とを少なくとも備えた冷風扇の作動を制御する冷風扇システムであって、前記給水ポンプの作動と停止とを制御する給水制御装置と、前記給水制御装置に具備された湿度設定装置と、屋外の湿度を測定して前記給水制御装置に対して湿度データを送出する湿度センサーとを備え、前記湿度設定装置で設定された湿度を屋外の湿度データと比較して、この比較結果により前記給水制御装置から給水量信号送出し、この給水量信号に基づいて前記給水ポンプの作動と停止とを行うようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、前記給水管の途中に、前記給水制御装置からの給水信号を受けて開度を変更する給水弁を配し、前記給水制御装置は、給水ポンプの作動と停止の制御と共に、給水ポンプの作動時には、給水弁の開度を調整して気化フィルタへの給水量を調整することもできる。
【0009】
また、上述した冷風扇システムであって、気化フィルタの下方に気化フィルタを流下した水を回収する回収タンクを設け、前記給水ポンプにより回収タンクに貯留した水を気化フィルタの上部に供給して水を循環させることが好ましい。
【0010】
さらに、上述した冷風扇システムであって、冷風扇を配する屋内に動作灯を設け、前記給水制御装置から前記給水ポンプの動作信号をこの動作灯に送出して、給水ポンプの作動時には、点灯または点滅する動作灯を設置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明に係る冷風扇システムの構成を説明するブロック図である。
【
図2】この発明に係る冷風扇システムにより作業場所の周囲の湿度の調整制御を行うフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る冷風扇システムを具体的に説明する。
【0013】
図1は、この発明に係る冷風扇システム1の構成を説明するブロック図である。
冷風扇10は、多数のフィルタ構成板11aからなる気化フィルタ11を備えている。この実施形態では、フィルタ構成板11aは、矩形の外形に形成された帯板の辺に対して傾斜する方向に沿って山部と谷部とが交互に折られた、蛇腹折りに形成されている。また、このフィルタ構成板11aには、熱伝導率の良好な金属板によって形成され、特に、高熱伝導率を有するアルミニウムやアルミニウム合金、銅、銅合金等による板材が用いられることが、コスト面でも有利となるので好ましい。
なお、この気化フィルタ11は、フィルタ構成板11aに替えて、スポンジや不織布等が用いられているものであっても構わない。
【0014】
フィルタ構成板11aは枠状のケーシング11bに収容されて保持されており、ケーシング11bの前面と背面とが開口し、気化フィルタ11に図示しない送風機から吹き出された送風が通過できるようにしてある。
多数のフィルタ構成板11aの上方には給水管を構成する給水配管11cが配され、この給水配管11cには適宜な間隔で形成された開口によりノズルが形成されている。このノズルから作動水Wがフィルタ構成板11aに落下するようにしてある。また、ケーシング11bの下方には回収タンク11dが配されており、フィルタ構成板11aを伝わって流下する作動水Wがこの回収タンク11dに回収されて貯留されるようにしてある。
【0015】
回収タンク11d内には給水ポンプ12が収容されており、回収タンク11dに貯留された作動水Wを吸込口12aから吸込み、吐出口12bから排出する。給水ポンプ12は、回収タンク11dの内部に隔壁11eを設けて作動水Wが貯留されない部分に設置し、または作動水W中に配設できる水中ポンプを利用することができる。
給水ポンプ12の吐出口12bには給水管を構成する送水配管13が接続されており、この送水配管13は給水配管11cに接続されている。
なお、送水配管13の途中には給水弁13aが設けられている。
【0016】
また、回収タンク11dには水道水TWが水道配管14を通って供給されている。この水道配管14の途中には、作動水Wの水位の昇降に応じて昇降動作を行うフロート15aの高さ位置に応じて開閉するフロート弁15が設けられている。また、このフロート弁15の上流側には供給弁14aが配されており、水道水TWを供給することを要しない場合には、この供給弁14aが閉じられる。
【0017】
給水ポンプ12には給水制御装置20から給水量信号が送出されており、この給水量信号に基づいて、作動と停止とを行う。また、この給水制御装置20から送出される給水量信号は給水弁13aに入力されて、給水弁13aの開度が調整されて給水量が調整される。
この給水制御装置20には湿度設定装置20aが備えられており、所望の湿度に設定できるようにしてある。なお、デフォルト値として、例えば70%の湿度が設定されており、このデフォルト値に対して増減させて所望の湿度を設定することができる。
【0018】
そして、冷風扇10が設置される工場等の屋外に設置された湿度センサー21が設置されており、この湿度センサー21で測定された屋外の湿度データが給水制御装置20に入力されている。
【0019】
また、工場等の屋内には動作灯22が設置されており、給水ポンプ12が作動中のときには、点灯または点滅するようにして、給水ポンプ12の動作を確認できるようにしてある。なお、この動作灯22は回転灯とすることも好ましい。
【0020】
以下、
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
冷風扇10を作動させると(ステップ201)、給水ポンプ12が作動し、作動水Wが給水配管11cに供給され、気化フィルタ11の上部に供給される。作動水Wはフィルタ構成板11aを伝わりながら流下し、図示しない送風機による風が気化フィルタ11を通過する際に気化熱を奪って冷風が生成され、冷風扇10の設置場所の周辺に冷風が供給される。
また、給水制御装置20に備えられた湿度設定装置20aによって所望の湿度を設定する(ステップ202)。なお、設定されない場合はデフォルト値の湿度が設定される。この冷風扇10が設置されている工場等の屋外に設置された湿度センサー21により屋外の湿度データが測定されて取得され、この湿度データと湿度設定装置20aにより設定された設定湿度とが比較される(ステップ203)。湿度データが設定湿度よりも低い場合には(ステップ202/NO)、屋外の湿度が設定湿度よりも小さい場合であるので、冷風扇10が設置された作業場所の周囲の湿度が高くなることがなく、当該時の状態で冷風扇10を継続して作動させる。
他方、湿度データが設定湿度よりも高い場合には(ステップ202/YES)、屋外の湿度が大きく、冷風扇10の運転を継続すると、作業場所の周囲の湿度が高くなってしまう虞が生じる。そこで、給水制御装置20は給水量信号を送出して、給水弁13aを絞って給水配管11cへの作動水Wの供給量を減じる(ステップ204)。これにより、気化フィルタ11に供給される作動水Wが減じられ、フィルタ構成板11aの表面からの蒸発が減じられて、作業場所の周囲の湿度の上昇が抑制される。
給水弁13aが絞られた状態において、湿度データと設定湿度とが比較される(ステップ205)。湿度データが設定湿度よりも低い場合には(ステップ205/NO)、当該時の状態で冷風扇10の運転を継続する。
他方、湿度データが設定湿度よりも高い場合には(ステップ205/YES)、給水弁13aを絞って給水配管11cへの作動水Wの供給量を減じるのみでは作業場所の周囲の湿度を低下させることができないと判断される。この場合には、給水制御装置20から送出される給水量信号により給水ポンプ12を停止させる(ステップ206)。これにより、給水配管11cからの気化フィルタ11への作動水Wの供給が停止され、送風のみとなって湿度を上昇させることがない。このため、作業環境の快適性を損なうことが極力減じられる。
【0022】
上述した
図2に示す制御の手順において、ステップ202において、湿度データが設定湿度よりも高いと判断された場合には(ステップ202/YES)、同図上に破線で示すように、給水弁13aの開度を調整することなく、ステップ206に進んで給水ポンプ12を停止させるようにしても構わない。例えば、天候が急激に変化して降雨となって屋外の湿度が高くなった場合等では、冷風扇10からの蒸発を迅速に停止させることが好ましいので、給水弁13aの開度調整を行わずに、給水ポンプ12を停止させるものである。
または、給水弁13aを設置することなく、給水ポンプ12の作動と停止とによって、作動水Wの供給の継続と停止とを行われるものであっても構わない。
そして、冷風扇10を停止させると、この制御手順が終了する(ステップ207)。
【0023】
以上に説明したように、この発明に係る冷風扇システムは、上部に供給された水を流下させる気化フィルタ11と、気化フィルタ11に空気を流通させる送風機と、気化フィルタ11の上部に水を供給する給水ポンプ12と、給水ポンプ12から気化フィルタ11に給水する送水配管13とを少なくとも備えた冷風扇10の作動を制御する冷風扇システム1であって、前記給水ポンプ12の作動と停止とを制御する給水制御装置20と、前記給水制御装置20に具備された湿度設定装置20aと、屋外の湿度を測定して前記給水制御装置に対して湿度データを送出する湿度センサー21とを備え、前記給水制御装置20で設定された湿度を屋外の湿度データと比較して、この比較結果により前記給水制御装置20から給水量信号送出し、この給水量信号に基づいて前記給水ポンプ12の作動と停止とを行うようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
気化フィルタ11に供給された水が流下する間に図示しない送風機で発生させた風が気化フィルタ11を通過する際に気化熱を奪って冷風が生成されて、作業場所に冷風が供給される。
このとき、水が蒸発して作業場所の周囲の湿度が上昇する。
また、湿度設定装置には予め所望の湿度、例えば70%が設定湿度として設定されている。
一方、屋外の湿度が湿度センサー21によって計測されてその時の湿度データが給水制御装置20に送出されており、この湿度データと設定湿度とが比較される。湿度データが設定湿度を超えると屋外湿度が高く、冷風扇の作動を継続すると、作業場所の周囲の湿度が高くなる虞がある。このため、給水ポンプ12を停止させて、冷風扇10への給水を停止すれば、作業場所の周囲の湿度が上昇することを抑制し、作業環境が良好に保たれる。
【0025】
また、前記送水配管13の途中に、前記給水制御装置20からの給水信号を受けて開度を変更する給水弁13aを配し、前記給水制御装置20は、給水ポンプ12の作動と停止の制御と共に、給水ポンプ12の作動時には、給水弁13aの開度を調整して気化フィルタ11への給水量を調整することもできる。
【0026】
また、上述の冷風扇システム1であって、気化フィルタ11下方に気化フィルタ11を流下した水を回収する回収タンク11dを設け、前記給水ポンプ12により回収タンク11dに貯留した水を気化フィルタ11の上部に供給することにより水を循環させることが好ましい。
【0027】
気化フィルタ11の上部に供給されて流下する水は、回収タンク11dに回収され、この回収タンク11dから給水ポンプ12により気化フィルタ11の上部に供給するようにして、水を循環させるようにしたものである。
【0028】
また、上述の冷風扇システム1であって、冷風扇10を配する屋内に動作灯22を設け、前記給水制御装置20から給水ポンプ12の動作信号をこの動作灯22に送出して、給水ポンプ12の作動時にはこの動作灯22を点灯または点滅させることが好ましい。
【0029】
給水ポンプが作動している状態にあることを、動作灯の点灯または点滅によって把握できるようにしたものである。例えば、作業場所の周囲の湿度が高いと感じる場合には、設定湿度を下げる。このとき、動作灯が消灯すれば給水ポンプが停止して、湿度の上昇が抑制される。
【符号の説明】
【0030】
1 冷風扇システム
10 冷風扇
11 気化フィルタ
11a フィルタ構成板
11b ケーシング
11c 給水配管(給水管)
11d 回収タンク
11e 隔壁
12 給水ポンプ
12a 吸込口
12b 吐出口
13 送水配管(給水管)
13a 給水弁
15a フロート
15 フロート弁
14a 供給弁
20 給水制御装置
20a 湿度設定装置
21 湿度センサー
22 動作灯
TW 水道水
W 作動水