(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112043
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】車両の運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
B62D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016862
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 俊太
(72)【発明者】
【氏名】千葉 昌武
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA23
3D232DA29
3D232DA33
3D232DA77
3D232DA78
3D232DA84
3D232DA87
3D232DB11
3D232EB04
3D232EC22
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】逸脱防止制御を行う機能と、リスク回避制御を行う機能とを備える車両において、逸脱防止制御の終了間際からリスク回避制御の開始直後までの車両の一連の挙動が車両のドライバに違和感を与えるのを抑える。
【解決手段】車両の運転を支援する方法は、前記車両の走行車線から前記車両が逸脱するのを防止するための操舵制御を含む逸脱防止制御を実行するステップと、前記逸脱防止制御の実行中、前記車両の前方のリスク要因を回避するための操舵制御を含むリスク回避制御の作動条件が満たされた場合、前記逸脱防止制御の終了タイミングから前記リスク回避制御を開始するステップと、を含む。前記リスク回避制御の作動条件は、前記車両から前記リスク要因までの縦方向距離が基準距離以下であることを含む。前記方法は、更に、前記逸脱防止制御の実行中、前記基準距離を拡大するステップを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を支援する方法であって、
前記車両の走行車線から前記車両が逸脱するのを防止するための操舵制御を含む逸脱防止制御を実行するステップと、
前記逸脱防止制御の実行中、前記車両の前方のリスク要因を回避するための操舵制御を含むリスク回避制御の作動条件が満たされた場合、前記逸脱防止制御の終了タイミングから前記リスク回避制御を開始するステップと、
を含み、
前記リスク回避制御の作動条件は、前記車両から前記リスク要因までの縦方向距離が基準距離以下であることを含み、
前記逸脱防止制御の実行中、前記基準距離を拡大するステップを更に含む
ことを特徴とする車両の運転支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記逸脱防止制御に含まれる前記操舵制御は、前記車両の基準点を通って前記走行車線に沿って設定される基準線と前記車両の前後軸が平行になるように前記車両を操舵する第1操舵制御と、前記第1操舵制御に続いて行われ、前記走行車線における前記車両の横位置が前記走行車線の中央に向かうように前記車両を操舵する第2操舵制御と、を含み、
前記逸脱防止制御の終了タイミングが、前記第1操舵制御の終了タイミングを含む
ことを特徴とする車両の運転支援方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記逸脱防止制御に含まれる前記操舵制御は、前記車両の基準点を通って前記走行車線に沿って設定される基準線と前記車両の前後軸が平行になるように前記車両を操舵する第1操舵制御と、前記第1操舵制御に続いて行われ、前記走行車線における前記車両の横位置が前記走行車線の中心に向かうように前記車両を操舵する第2操舵制御と、を含み、
前記基準距離の拡大が、前記第1操舵制御の実行中に行われる
ことを特徴とする車両の運転支援方法。
【請求項4】
車両の運転を支援する装置であって、
各種処理を実行するように構成されたプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記車両の走行車線から前記車両が逸脱するのを防止するための操舵制御を含む逸脱防止制御を実行する処理と、
前記逸脱防止制御の実行中、前記車両の前方のリスク要因を回避するための操舵制御を含むリスク回避制御の作動条件が満たされた場合、前記逸脱防止制御の終了タイミングから前記リスク回避制御を開始する処理と、
を行うように構成され、
前記リスク回避制御の作動条件は、前記車両から前記リスク要因までの縦方向距離が基準距離以下であることを含み、
前記プロセッサは、更に、
前記逸脱防止制御の実行中、前記基準距離を拡大する処理を行う
ように構成されたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の運転を支援する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-73530号公報は、車両の運転を支援する方法を開示する。この従来の方法では、車両が道路から逸脱するのを防止する逸脱防止制御が行われる。この逸脱防止制御では、道路上に設定された仮想レーンからの逸脱量に基づいて、車両を仮想レーンに戻すための目標ヨーモーメントが計算される。目標ヨーモーメントは、ブレーキ制御装置と、ステアリング制御装置に配分される。ブレーキ制御装置は、配分後の目標ヨーモーメントに応じたヨーモーメントを発生させるようにブレーキを制御する。一方、ステアリング制御装置は、配分後の目標ヨーモーメントをアシスト操舵トルクに変換し、このアシスト操舵トルクに基づいてトルクを発生させるようにステアリングを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の運転を支援する方法には、車両が障害物と衝突しそうな状況において実行される制御が含まれる。本願では、このような運転支援制御よりも一段階手前の状況、即ち、車両が障害物と衝突する可能性が高くない状況で実行される運転支援制御を考える。この運転支援制御は、車両の前方の歩行者等をリスク要因と見做し、このリスク要因を回避するために行われる。このような運転支援制御を、本願ではリスク回避制御と称す。
【0005】
逸脱防止制御を行う機能と、リスク回避制御を行う機能とを備える車両の場合、これらの運転支援制御の作動条件が満たされるか否かが独立して判断される。ここで問題となるのは、これらの運転支援制御の作動条件が同時期に満たされた場合である。但し、この問題は、早期に開始された一方の運転支援制御が終わり次第、他方の運転支援制御を開始することで解決することが期待される。
【0006】
逸脱防止制御の作動条件とリスク回避制御の作動条件とが時間を隔てて満たされた場合、上記の問題は発生しないとも考えられる。しかしながら、逸脱防止制御の終了後、リスク回避制御が開始されるまでの時間が数秒程度の場合、逸脱防止制御の終了間際からリスク回避制御の開始直後までの車両の一連の挙動がぎこちなく、一体感に欠けるものとなる。そうすると、一連の挙動が車両のドライバに不信感を与える可能性が高い。
【0007】
本開示の1つの目的は、逸脱防止制御を行う機能と、リスク回避制御を行う機能とを備える車両において、逸脱防止制御の終了間際からリスク回避制御の開始直後までの車両の一連の挙動が車両のドライバに違和感を与えるのを抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の観点は、車両の運転を支援する方法であり、次の特徴を有する。
前記車両の走行車線から前記車両が逸脱するのを防止するための操舵制御を含む逸脱防止制御を実行するステップと、前記逸脱防止制御の実行中、前記車両の前方のリスク要因を回避するための操舵制御を含むリスク回避制御の作動条件が満たされた場合、前記逸脱防止制御の終了タイミングから前記リスク回避制御を開始するステップと、を含む。
前記リスク回避制御の作動条件は、前記車両から前記リスク要因までの縦方向距離が基準距離以下であることを含む。
前記方法は、更に、前記逸脱防止制御の実行中、前記基準距離を拡大するステップを含む。
【0009】
本開示の第2の観点は、車両の運転を支援する装置であり、次の特徴を有する。
前記装置は、各種処理を実行するように構成されたプロセッサを備える。前記プロセッサは、前記車両の走行車線から前記車両が逸脱するのを防止するための操舵制御を含む逸脱防止制御を実行する処理と、前記逸脱防止制御の実行中、前記車両の前方のリスク要因を回避するための操舵制御を含むリスク回避制御の作動条件が満たされた場合、前記逸脱防止制御の終了タイミングから前記リスク回避制御を開始する処理と、を行うように構成されている。
前記リスク回避制御の作動条件は、前記車両から前記リスク要因までの縦方向距離が基準距離以下であることを含む。
前記プロセッサは、更に、前記逸脱防止制御の実行中、前記基準距離を拡大する処理を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示の観点によれば、逸脱防止制御の実行中、リスク回避制御の作動条件に含まれる基準距離が拡大される。リスク回避制御の作動条件は、車両からリスク要因までの縦方向距離が基準距離以下であることを含む。そのため、基準距離が拡大されれば、リスク回避制御の作動条件が満たされ易くなる。そうすると、この拡大がなければ逸脱防止制御の終了後、リスク回避制御が開始されるまでに待ち時間が発生するような状況において、逸脱防止制御の終了タイミングからリスク回避制御を開始することが可能となる。故に、逸脱防止制御の終了間際からリスク回避制御の開始直後までの車両の一連の挙動が車両のドライバに違和感を与えるのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図9】実施形態に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図10】制御装置により行われる、実施形態に特に関連する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る車両の運転支援方法、運転支援装置及び運転支援プログラムについて説明する。
【0013】
1.運転支援制御
図1-4は、実施形態において行われる運転支援制御を説明する図である。実施形態に係る運転支援装置10は、車両VHの運転を支援する「運転支援制御」を実行する。この運転支援制御は、自動運転制御に含まれていてもよい。典型的に、運転支援装置10は、車両VHに搭載される。運転支援装置10の少なくとも一部は、車両VHの外部の装置(例えば、外部サーバ)に配置され、リモートで運転支援制御を行ってもよい。つまり、運転支援装置10は、車両VHと外部装置とに分散的に配置されてもよい。
【0014】
運転支援制御は、車両VHの前方のリスク要因3を回避するための「リスク回避制御」を含む。リスク回避制御は、PDA(Proactive Driving Assist)制御とも称される。リスク回避制御において、運転支援装置10は、車両VHの前方のリスク要因3を回避するために、車両VHの操舵及び減速の少なくとも一方を自動的に行う。例えば、
図1において、車両VHは、車道RW内の車線TLを走行している。車線TLは、車道RWに設けられた左白線LW及び右白線RWによって区画される。車線TLは、本開示における「車両の走行車線」に該当する。路肩RSは、車線TLに隣接している。車両VHの前方の路肩RSに存在する歩行者3Aは、車道RWに進入する可能性がある。従って、歩行者3Aはリスク要因3であると言える。
【0015】
図1に示される例では、リスク回避制御が、歩行者3Aを事前に回避するように車両VHの操舵を自動的に行う「操舵支援制御」を含んでいる。リスク回避制御は、歩行者3Aを事前に回避するように車両VHの減速を自動的に行う「減速支援制御」を含んでいてもよい。操舵支援制御において、運転支援装置10は、歩行者3Aから離れる方向へ車両VHを操舵する。歩行者3Aは、自転車又は二輪車に置き換えられてもよい。また、路肩RSだけでなく、車道RWに存在する歩行者、自転車、二輪車などもリスク要因3に含まれる。
【0016】
図2は、リスク回避制御の他の例を説明するための図である。リスク要因3は、
図1に示した歩行者3Aのような“顕在リスク”に限られない。リスク要因3は、“潜在リスク”も含み得る。例えば、
図2において、車両VHの前方の路肩RSには駐車車両3Bが存在している。駐車車両3Bの先の領域は車両VHの死角であり、その死角から歩行者3Cが飛び出してくる可能性がある。従って、駐車車両3B及び歩行者3Cはリスク要因3(潜在リスク)であると言える。
【0017】
図2に示される例では、リスク回避制御が、駐車車両3Bを事前に回避するように車両VHの操舵を自動的に行う操舵支援制御を含む。この操舵支援制御において、運転支援装置10は、駐車車両3Bから離れる方向へ車両VHを操舵する。尚、リスク回避制御が減速支援制御を含んでいてもよいことは、
図1に示した例と同じである。
【0018】
ここで、車両座標系(X,Y)について定義する。車両座標系(X,Y)は、車両VHに固定された相対座標系であり、車両VHの移動と共に変化する。X方向は、車両VHの前方向(進行方向)である。Y方向は、車両VHの横方向である。X方向とY方向は、互いに直交している。
【0019】
図1及び2において、トラジェクトリTR0は、操舵支援制御が実行されない場合の車両VHの走行軌道を表している。操舵支援制御が実行されない場合、車両VHは車線TLと平行に走行すると仮定される。従って、トラジェクトリTR0は、車両VHの現在位置から車線TLと平行に伸びる。以下の説明において、横距離Dyは、トラジェクトリTR0とリスク要因3との間の最短距離である。言い換えれば、横距離Dyは、車両VHがリスク要因3の側方を通過する際の、車両VH(トラジェクトリTR0)とリスク要因3との間のY方向距離である。
【0020】
図1及び2において、トラジェクトリTR1は、操舵支援制御が実行される場合の車両VHの走行軌道を表している。操舵支援制御が実行された場合、車両VHは、リスク要因3から離れる方向に移動する。横移動量δDyは、操舵支援制御に起因する車両VHの、リスク要因3から離れる方向への移動量である。言い換えれば、横移動量δDyは、トラジェクトリTR0から見た車両VHの、リスク要因3から離れる方向への移動量である。
【0021】
運転支援制御は、また、車両VHが車線TLから逸脱するのを防止するための「逸脱防止制御」を含む。逸脱防止制御は、LDA(Lane Departure Alert)制御とも称される。逸脱防止制御において、運転支援装置10は、車両VHが車線TLから逸脱するのを防止するために、車両VHの操舵及び減速の少なくとも一方を自動的に行う。例えば、
図3において、車両VHの前後軸は、車線TL上の基準線RLに対して角度θyだけずれている。ずれ角度θyは、車両VHの基準点RPを通る前後軸と、基準線RLとのなす角度であり、ヨー角と称されることもある。基準線RLは、基準点RPを通って車線TLにそって設定される。そのため、基準線RLが車線TLの中央線CLと一致するときもあれば、基準線RLが中央線CLと一致しないときもある。
【0022】
図3には、基準点RPから左白線LWまでの横距離Dsが示されている。横距離Dsは、基準点RPから右白線RWまでの距離でもある。逸脱防止制御は、車両VHが車線TLの外に逸脱しそうなときに行われる。
図4は、逸脱防止制御を説明する図である。
図4に示される例では、逸脱防止制御が、車両VHが左白線LWの外に逸脱しないように車両VHの操舵を自動的に行う「操舵支援制御」を含んでいる。逸脱防止制御は、車両VHが左白線LWを越えないように車両VHの減速を自動的に行う「減速支援制御」を含んでいてもよい。
【0023】
操舵支援制御において、運転支援装置10は、左白線LWから離れる方向へ車両VHを操舵する。運転支援装置10は、また、中央線CLに近づく方向へ車両VHを操舵する。左白線LWから離れる方向へ車両VHを操舵すると、
図3で説明したずれ角度θyが減少する。操舵支援制御は、車両VHの前後軸が基準線RLと平行であると認められる規定角度θy0とずれ角度θyが一致するまでの第1制御(以下、「第1LDA制御」とも称す。)を含む。操舵支援制御は、また、この第1制御に続いて行われる第2制御(以下、「第2LDA制御とも称す。」)を含む。第2制御では、中央線CLに近づく方向への車両VHの操舵によって、左右方向における横距離Dsが共に所定範囲に収まるまで行われる。尚、所定範囲は、車線TLの横幅に応じて設定される。
【0024】
2.実施形態の特徴
既述したように、逸脱防止制御の終了後、リスク回避制御が開始されるまでの時間が数秒程度(例えば、1~3秒)の場合、逸脱防止制御の終了間際からリスク回避制御の開始直後までの車両の一連の挙動がぎこちなく、一体感に欠けるものとなる。
図5及び6は、この問題を説明する図である。
図5及び6に示される例では、逸脱防止制御が既に開始されている。
【0025】
図5に示される例では、車両VHの左前方の路肩RSに歩行者3Dが存在している。
図6に示される例では、車両VHの右前方の路肩RSに歩行者3Eが存在している。歩行者3D及び3Eはリスク要因3に該当する。但し、リスク回避制御の作動条件には、車両VHからリスク要因3までの縦距離DXが基準距離RD以下であることが含まれる。そのため、縦距離に関する条件が満たされるタイミングまでリスク回避制御の開始を待つことになる。この待ち時間、車両VHは成り行きで走行することになる。但し、逸脱防止制御とリスク回避制御のどちらも作動しない非作動区間が短いと、上述した車両の一連の挙動に繋がる。
【0026】
そこで、実施形態では、逸脱防止制御の実行中、基準距離RDを拡大する処理が行われる。拡大後の基準距離RDを「基準距離RD*」と称す。基準距離RDが基準距離RD*に変更されれば、逸脱防止制御の実行中にリスク回避制御の作動条件が満たされ易くなる。そのため、逸脱防止制御の終了後、リスク回避制御の開始を待つような状況になるのを抑えることが可能となる。
【0027】
逸脱防止制御の実行中にリスク回避制御の作動条件が満たされた場合、逸脱防止制御の終了タイミングからリスク回避制御を開始する。逸脱防止制御の終了タイミングからリスク回避制御を開始すれば、逸脱防止制御とリスク回避制御を連続的に行うことができる。そのため、逸脱防止制御の終了間際からリスク回避制御の開始直後までの車両VHの一連の挙動が車両VHのドライバに違和感を与えるのを抑えることが可能となる。
【0028】
リスク回避制御の開始は、
図4で説明した第1LDA制御の終了タイミングから行ってもよい。
図7及び8は、第1LDA制御の終了タイミングからリスク回避制御を開始した場合の車両の挙動を説明する図である。
図7に示される車両VHの外部環境は
図5で説明したそれと同じである。また、
図8に示される車両VHの外部環境は
図6で説明したそれと同じである。
【0029】
逸脱防止制御の終了タイミングは、第2LDA制御の終了タイミングと、第1LDA制御の終了タイミングとを含む。第2LDA制御の終了タイミングからリスク回避制御を開始すれば、上述した効果が期待される。但し、第2LDA制御の終了タイミングよりも前の第1LDA制御の終了タイミングにおいて、逸脱防止制御の目的(逸脱防止)は達成されている。そのため、第1LDA制御の終了タイミングからリスク回避制御を開始しても問題は生じない。寧ろ、
図8に示される状況では、第1LDA制御の終了タイミングからリスク回避制御が開始されることで、車両VHの操舵挙動の安定化に寄与する。
【0030】
3.運転支援装置
3-1.構成例
図9は、実施形態に係る運転支援装置10の構成例を示すブロック図である。
図9に示される例では、運転支援装置10が、センサ群20と、走行装置30と、制御装置40とを備えている。
【0031】
センサ群20は、例えば、位置センサ、状態センサ及び認識センサを含んでいる。位置センサは、車両VHの位置及び方位を検出する。位置センサとしては、GPS(Global Positioning System)センサが例示される。状態センサは、車両VHの内部状態を検出する。状態センサとしては、車速センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ、操舵角センサなど例示される。認識センサは、車両VHの周囲の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラ、レーダ、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)などが例示される。
【0032】
センサ群20に含まれる各センサは、検出又は認識した情報を制御装置40に送信する。各センサから制御装置40に送信される情報は、運転環境情報ENVを構成する。運転環境情報ENVには、地図情報も含まれる。地図情報には、車線の配置情報、道路の形状等の情報が含まれている。地図情報は、例えば、車両VHが有する所定の記憶装置に格納されている。地図情報は、車両VHの外部の装置(例えば、外部サーバ)に格納されていてもよい。
【0033】
走行装置30は、操舵装置、駆動装置及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車両VHの車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータなどが例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0034】
制御装置40は、車両VHを制御する。典型的には、制御装置40は、車両VHに搭載されるマイクロコンピュータである。制御装置40は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。制御装置40は、車両VHの外部の情報処理装置であってもよい。この場合、制御装置40は車両VHと通信を行い、車両VHをリモートで制御する。
【0035】
制御装置40は、プロセッサ41及び記憶装置42を備えている。プロセッサ41は、各種処理を実行する。記憶装置42は、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどであり、ここには各種情報が格納される。各種情報としては、運転環境情報ENVが例示される。各種情報には、走行装置30に送信される制御情報CONも含まれる。プロセッサ41がコンピュータプログラムである制御プログラムを実行することにより、プロセッサ41による各種処理が実現される。制御プログラムは、記憶装置42に格納され、又は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されている。
【0036】
3-2.制御装置による処理例
図10は、プロセッサ41により行われる運転支援制御に特に関連する処理を示すフローチャートである。
図10に示される処理フローは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0037】
図10に示される処理フローでは、まず、LDA作動条件が満たされるか否かが判定される(ステップS11)。LDA作動条件は、車両VHが車線TLの外に逸脱するか否かを判定するための各種条件を含んでいる。この各種条件には、例えば、ずれ角度θy及び横距離Dsが判定パラメータとして含まれている。車両VHがカーブに差し掛かったことを各種条件に含めてもよい。
【0038】
ステップS11の判定結果が肯定的な場合、LDA制御(つまり、逸脱防止制御)が開始される(ステップS12)。逸脱防止制御では、例えば、ずれ角度θy、横距離Ds、車両VHの速度、車線TLのカーブ半径、車両VHのヨーレート等に基づいて、車両VHが車線TLから逸脱しないようにするための目標トルクが計算される。目標トルクに代えて、車両VHが車線TLから逸脱しないようにするための目標舵角が計算されてもよい。そして、目標トルク(又は目標舵角)を示す制御情報CONが走行装置30(操舵装置)に送信される。
【0039】
ステップS12の処理に続いて、基準距離RDが基準距離RD*(>RD)に変更される(ステップS13)。ステップS13の処理は、ステップS12の処理と並行して行われもよい。尚、基準距離RD及び基準距離RD*は、車両VHの速度に応じて可変に設定される。
【0040】
ステップS13の処理に続いて、第1LDA制御が終了したか否かが判定される(ステップS14)。ステップS14の処理は、例えば、ずれ角度θyが規定角度θy0以下まで減少したか否かにより行われる。ステップS14の判定結果が肯定的な場合、基準距離RD*が基準距離RDに変更される(ステップS15)。つまり、基準距離RDがデフォルト値に設定される。尚、ステップS14の処理では、第1LDA制御の代わりに、第2LDA制御が終了したか否かが判定されてもよい。この場合、ステップS14の処理では、左右方向における横距離Dsが共に所定範囲に収まったか否かが判定される。
【0041】
ステップS14の判定結果が否定的な場合、PDA作動条件が満たされるか否かが判定される(ステップS16)。PDA作動条件は、車両VHが前方の障害物と衝突するリスクがあるか否かを判定するための各種条件を含んでいる。この各種条件は、車両VHの前方にリスク要因3が認識されていることを含む。各種条件は、また、車両VHからこのリスク要因3までの縦距離DXが基準距離RD(基準距離RD*が設定されている場合は、基準距離RD*)以下であることを含む。
【0042】
ステップS16の判定結果が否定的な場合、ステップS14の処理が行われる。つまり、ステップS14及びS16の処理は、第1LDA制御が終了するまで繰り返し行われる。ステップS16の判定結果が肯定的な場合、PDA制御(つまり、リスク回避制御)が開始される。リスク回避制御では、リスク要因3から離れる方向に車両VHを移動させるためのトラジェクトリが生成される。そして、このトラジェクトリに車両VHが追従するように、車両VHの目標トルク、目標加速度などが計算される。目標トルクに代えて、トラジェクトリに車両VHが追従するための目標舵角が計算されてもよい。そして、目標トルク(又は目標舵角)を示す制御情報CONが走行装置30(操舵装置)に送信される。
【0043】
3A、3C、3D、3E 歩行者、3B 駐車車両、10 運転支援装置、41 プロセッサ、42 メモリ、CL 中央線、TL 車線、RL 基準線、RP 基準点、VH 車両、CON 制御情報、ENV 運転環境情報