(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112053
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】表面加工システム、およびラミネート装置
(51)【国際特許分類】
B05C 1/08 20060101AFI20240813BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20240813BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B05C1/08
B05C9/12
B05C9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016877
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】300066896
【氏名又は名称】株式会社ハママツ
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】濱松 弘造
(72)【発明者】
【氏名】濱松 幹子
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA22
4F040AB04
4F040AC01
4F040BA25
4F040CB26
4F040CB36
4F040DB12
4F040DB16
4F040DB21
4F042AA22
4F042AB00
4F042CB07
4F042CB11
4F042DB17
4F042DB41
4F042DC00
4F042DF17
(57)【要約】
【課題】厚みのある基材に対して一定の品質を担保しつつ、容易に表面加工を施すことが可能な表面加工システム、およびラミネート装置を提供する。
【解決手段】
ラミネート装置1は、基材Sの表面XにフィルムFを供給するフィルム供給部10と、基材Sの表面Xに対向するとともに基材Sの表面Xとの間にフィルムFを挟み込み、フィルムFへの接触領域11aが搬送方向D1の下流側に向かうように回転可能な第一のロール11と、基材Sの裏面Yに対向するとともに第一のロール11に対して上下方向D3に間隔をあけて配置され、基材Sの裏面Yへの接触領域12aが搬送方向D1の下流側に向かうように回転可能な第二のロール12と、間隔をあけて配置された第一のロール11および第二のロール12を、それぞれ略等速度で強制的に回転させる駆動部13と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす基材を上流側から下流側に向かって搬送方向に搬送しながら該基材の表面にコート層を形成することで該基材の表面に加工を施す表面加工システムであって、
前記基材の表面に前記コート層用の塗料を塗布する塗布装置と、
前記塗布装置で前記基材に前記塗料が塗布される位置よりも下流側において、前記塗料が塗布された前記基材の表面にフィルムを貼り付けるラミネート装置と、
前記ラミネート装置で前記基材に前記フィルムが貼り付けられる位置よりも下流側において、前記フィルムを介して前記塗料が塗布された前記基材の表面に対して該塗料を硬化させる光を照射するか、または該塗料を硬化させる熱を加える硬化装置と、
を備え、
前記ラミネート装置は、
前記基材の表面に前記フィルムを供給するフィルム供給部と、
前記基材の表面に対向するとともに該基材の表面との間に前記フィルムを挟み込み、該フィルムへの接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第一のロールと、
前記基材の裏面に対向するとともに前記第一のロールに対して前記搬送方向および前記第一のロールにおける回転軸線方向に交差する対向方向に間隔をあけて配置され、前記基材の裏面への接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第二のロールと、
前記間隔をあけて配置された前記第一のロールおよび前記第二のロールを、それぞれ略等速度で強制的に回転させる駆動部と、
を有する表面加工システム。
【請求項2】
前記駆動部は、前記第一のロールと前記第二のロールとの相対回転速度を可変に調整する速度調整部を有する請求項1に記載の表面加工システム。
【請求項3】
前記駆動部は、
一つの駆動源と、
前記駆動源の動力を前記第一のロールおよび前記第二のロールにそれぞれ伝達する動力伝達部と、
前記第一のロールの回転軸および前記第二のロールの回転軸のうちの一方に設けられ、前記第一のロールおよび前記第二のロールが前記基材に接触した際に、前記一方の回転速度を他方の回転速度に近接させるように動作するクラッチである前記速度調整部と、
を有する請求項2に記載の表面加工システム。
【請求項4】
前記第一のロールにおける前記接触領域に対して、前記第一のロールにおける回転方向の手前側の領域において該第一のロールの外面に対向配置され、自身と前記第一のロールとの間に前記フィルムを挟持するフィルム挟持用ロールをさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項5】
前記第一のロールと前記第二のロールとの間の前記対向方向の間隔を調整する間隔調整機構をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項6】
前記第一のロールにおける少なくとの表層部分は、前記第二のロールにおける表層部分にくらべて弾性率の小さい材料によって形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項7】
前記塗布装置は、前記基材の表面に前記塗料として紫外線硬化塗料を塗布し、
前記硬化装置は、紫外線を透過可能な前記フィルムを介して、前記塗料が塗布された前記基材の表面に対して紫外線を照射する請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項8】
前記硬化装置によって前記基材の表面の前記塗料を硬化させる位置よりも前記下流側において、前記フィルムを前記基材から回収するフィルム回収装置をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項9】
前記硬化装置によって前記基材の表面の前記塗料を硬化させる位置よりも前記下流側において、前記フィルムを、前記基材における前記搬送方向の長さに対応させて該基材における前記上流側の位置で切断するカッターをさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項10】
前記フィルム供給部は、前記第一のロールにおける回転軸線方向に、前記基材よりも大きな幅寸法の前記フィルムを供給する請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項11】
前記ラミネート装置は、前記対向方向の厚さ寸法が1〔mm〕以上の前記基材に対して前記フィルムを貼り付ける請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項12】
前記ラミネート装置は、前記塗料が塗布された前記基材の表面に対向する対向面がエンボス加工された前記フィルムを、前記基材に対して貼り付ける請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項13】
前記基材として木材の表面に前記コート層を形成する請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工システム。
【請求項14】
板状をなす基材を上流側から下流側に向かって搬送方向に搬送しながら該基材の表面にフィルムを貼り付けるラミネート装置であって、
前記基材の表面に前記フィルムを供給するフィルム供給部と、
前記基材の表面に対向するとともに該基材の表面との間に前記フィルムを挟み込み、該フィルムへの接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第一のロールと、
前記基材の裏面に対向するとともに前記第一のロールに対して前記搬送方向および前記第一のロールにおける回転軸線方向に交差する対向方向に間隔をあけて配置され、前記基材の裏面への接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第二のロールと、
前記間隔をあけて配置された前記第一のロールおよび前記第二のロールを、それぞれ略等速度で強制的に回転させる駆動部と、
を備えるラミネート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に加工を施す表面加工システム、および基材の表面にフィルムを貼り付けるラミネート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、紙面に紫外線硬化樹脂塗料を塗布した後に、当該紙面に樹脂フィルムを貼り付け、樹脂フィルムと紙とを加圧して圧着し、樹脂フィルムを介して紫外線硬化樹脂塗料に紫外線を照射することで酸素阻害の影響を抑えつつ紫外線硬化樹脂塗料を紙面上で硬化させ、紙面にコート層を形成する装置が知られている。
【0003】
この種の装置を用いることで、紫外線硬化樹脂塗料の硬化後に紙面から樹脂フィルムを取り除けば、樹脂フィルムの表面パターンが紫外線硬化樹脂塗料の塗布された紙面上に転写されるため、樹脂フィルムの表面パターンを適宜選択とすることにより、紙面に対してグロス加工、マット加工、エンボス加工等の表面加工を、容易に、かつ短時間で施すことが可能になっている。このように表面加工が施された紙は、雑誌、広告、製品の外箱等の様々な用途に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年は紙だけでなく、上述したような表面加工が施された木板や金属板等の基材が家具や建築資材に多用されており、これら表面加工が施された木板等の基材の需要が高まっている。しかしながら木板等の基材は紙に比べてある程度の厚みを有しており、かつ柔らかいため、厚さ方向に変形し易く、特許文献1に記載の装置を用いて基材に表面加工を施そうとすると、フィルムを基材に圧着する際に基材が変形してしまう可能性がある。したがって特許文献1に記載の装置を、これら厚みのある基材にそのまま適用することは難しいのが現状である。
【0006】
このような背景もあり、紙に比べて厚みのある基材に表面加工を施す場合には、一般的に艶出し塗料や艶消し塗料を基材表面に直接塗布することが行われている。しかしながら塗料を基材表面の全体に均一に塗布することは非常に難しく、また、基材毎に塗布状態にばらつきが生じてしまい、製品の品質(輝度など)を担保することが難しいといった問題がある。
【0007】
そこで本発明は、厚みのある基材に対して一定の品質を担保しつつ、容易に表面加工を施すことが可能な表面加工システム、およびラミネート装置を提供する。
【0008】
本発明の一態様に係る表面加工システムは、板状をなす基材を上流側から下流側に向かって搬送方向に搬送しながら該基材の表面にコート層を形成することで該基材の表面に加工を施す表面加工システムであって、前記基材の表面に前記コート層用の塗料を塗布する塗布装置と、前記塗布装置で前記基材に前記塗料が塗布される位置よりも下流側において、前記塗料が塗布された前記基材の表面にフィルムを貼り付けるラミネート装置と、前記ラミネート装置で前記基材に前記フィルムが貼り付けられる位置よりも下流側において、前記フィルムを介して前記塗料が塗布された前記基材の表面に対して該塗料を硬化させる光を照射するか、または該塗料を硬化させる熱を加える硬化装置と、を備え、前記ラミネート装置は、前記基材の表面に前記フィルムを供給するフィルム供給部と、前記基材の表面に対向するとともに該基材の表面との間に前記フィルムを挟み込み、該フィルムへの接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第一のロールと、前記基材の裏面に対向するとともに前記第一のロールに対して前記搬送方向および前記第一のロールにおける回転軸線方向に交差する対向方向に間隔をあけて配置され、前記基材の裏面への接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第二のロールと、前記間隔をあけて配置された前記第一のロールおよび前記第二のロールを、それぞれ略等速度で強制的に回転させる駆動部と、を有する。
【0009】
また上記の表面加工システムでは、前記駆動部は、前記第一のロールと前記第二のロールとの相対回転速度を可変に調整する速度調整部を有してもよい。
【0010】
また上記の表面加工システムでは、前記駆動部は、一つの駆動源と、前記駆動源の動力を前記第一のロールおよび前記第二のロールにそれぞれ伝達する動力伝達部と、前記第一のロールの回転軸および前記第二のロールの回転軸のうちの一方に設けられ、前記第一のロールおよび前記第二のロールが前記基材に接触した際に、前記一方の回転速度を他方の回転速度に近接させるように動作するクラッチである前記速度調整部と、を有してもよい。
【0011】
また上記の表面加工システムは、前記第一のロールにおける前記接触領域に対して、前記第一のロールにおける回転方向の手前側の領域において該第一のロールの外面に対向配置され、自身と前記第一のロールとの間に前記フィルムを挟持するフィルム挟持用ロールをさらに備えてもよい。
【0012】
また上記の表面加工システムは、前記第一のロールと前記第二のロールとの間の前記対向方向の間隔を調整する間隔調整機構をさらに備えてもよい。
【0013】
また上記の表面加工システムでは、前記第一のロールにおける少なくとの表層部分は、前記第二のロールにおける表層部分にくらべて弾性率の小さい材料によって形成されていてもよい。
【0014】
また上記の表面加工システムでは、前記塗布装置は、前記基材の表面に前記塗料として紫外線硬化塗料を塗布し、前記硬化装置は、紫外線を透過可能な前記フィルムを介して、前記塗料が塗布された前記基材の表面に対して紫外線を照射してもよい。
【0015】
また上記の表面加工システムは、前記硬化装置によって前記基材の表面の前記塗料を硬化させる位置よりも前記下流側において、前記フィルムを前記基材から回収するフィルム回収装置をさらに備えてもよい。
【0016】
また上記の表面加工システムは、前記硬化装置によって前記基材の表面の前記塗料を硬化させる位置よりも前記下流側において、前記フィルムを、前記基材における前記搬送方向の長さに対応させて該基材における前記上流側の位置で切断するカッターをさらに備えてもよい。
【0017】
また上記の表面加工システムでは、前記フィルム供給部は、前記第一のロールにおける回転軸線方向に、前記基材よりも大きな幅寸法の前記フィルムを供給してもよい。
【0018】
また上記の表面加工システムでは、前記ラミネート装置は、前記対向方向の厚さ寸法が1〔mm〕以上の前記基材に対して前記フィルムを貼り付けてもよい。
【0019】
また上記の表面加工システムでは、前記ラミネート装置は、前記塗料が塗布された前記基材の表面に対向する対向面がエンボス加工された前記フィルムを、前記基材に対して貼り付けてもよい。
【0020】
また上記の表面加工システムは、前記基材として木材の表面に前記コート層を形成してもよい。
【0021】
また本発明の一態様に係るラミネート装置は、板状をなす基材を上流側から下流側に向かって搬送方向に搬送しながら該基材の表面にフィルムを貼り付けるラミネート装置であって、前記基材の表面に前記フィルムを供給するフィルム供給部と、前記基材の表面に対向するとともに該基材の表面との間に前記フィルムを挟み込み、該フィルムへの接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第一のロールと、前記基材の裏面に対向するとともに前記第一のロールに対して前記搬送方向および前記第一のロールにおける回転軸線方向に交差する対向方向に間隔をあけて配置され、前記基材の裏面への接触領域が前記下流側に向かうように回転可能な第二のロールと、前記間隔をあけて配置された前記第一のロールおよび前記第二のロールを、それぞれ略等速度で強制的に回転させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
上記の表面加工システム、およびラミネート装置によれば、厚みのある基材に対して一定の品質を担保しつつ、容易に表面加工を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る表面加工システムの概要を示す全体図である。
【
図2】上記表面加工システムにおけるラミネート装置の駆動部の詳細を示す図であって、
図1のII-II断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の変形例に係る表面加工システムの概要を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る表面加工システム100について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように表面加工システム100は、板状をなす基材Sを上流側から下流側に向かって搬送方向D1に搬送しながら基材Sの表面Xにコート層Cを形成することで、基材Sに表面加工を施す装置である。基材Sは、例えば搬送路Tおよび複数の搬送ロールRによって構成されたベルトコンベアBによって搬送される。
【0025】
(基材)
本実施形態において基材Sの厚さ寸法は1〔mm〕以上であるとよい。また基材は、紙(厚紙)、木、樹脂、ガラス、コンクリート、および石や、メラミン化粧板のような複数の材料から形成された板状物である。
【0026】
(システムの全体構成)
表面加工システム100は、基材Sの表面XにフィルムFを貼り付けるラミネート装置1と、ラミネート装置1でフィルムFが基材Sに貼り付けられる位置よりも上流側に設けられた塗布装置2と、ラミネート装置1でフィルムFが基材Sに貼り付けられる位置よりも下流側に設けられた硬化装置3およびフィルム回収装置4と、を備えている。
【0027】
(塗布装置)
塗布装置2には、本実施形態ではダイレクトコーターが採用されている。すなわち本実施形態の塗布装置2は、バックアップロール20と、塗布ロール21と、ドクターロール22とを有している。
【0028】
バックアップロール20は、搬送方向D1に交差する搬送路Tの幅方向D2(以下、単に幅方向D2とする)に延びる軸線を中心として回転可能になっている。またバックアップロール20は、搬送路Tに対して、搬送方向D1および幅方向D2に交差する上下方向D3の下方に配置されて基材Sの裏面Yに対向可能となっており、基材Sを下方から支持する。バックアップロール20には、例えば金属ロール(鉄ロール)が採用される。
【0029】
塗布ロール21は、搬送路Tに対して上下方向D3の上方に配置されて上方から基材Sの表面Xに対向可能となっている。塗布ロール21はバックアップロール20と同様に、幅方向D2に延びる軸線を中心として回転可能になっており、搬送方向D1にバックアップロール20と対応する位置(略同じ位置)に配置され、バックアップロール20との間に基材Sを挟持するようになっている。塗布ロール21とバックアップロール20との間の上下方向D3の間隔は、基材Sの厚みに応じて、基材Sがロール20、21同士の間を通過可能な値に設定されている。
【0030】
また塗布ロール21はバックアップロール20よりも摩擦係数の大きい材料によって形成されており、塗布ロール21には例えばゴムロールが採用される。塗布ロール21とバックアップロール20とが互いに対向する領域となる対向領域20a、21aにおいて、バックアップロール20と塗布ロール21とは同方向に回転する。そしてこれら塗布ロール21の対向領域21aおよびバックアップロール20の対向領域20aが搬送方向D1に下流側に向かうように、塗布ロール21およびバックアップロール20が回転する。
【0031】
ドクターロール22は搬送路Tの上方に配置されている。より具体的にドクターロール22は、塗布ロール21における対向領域21aよりも塗布ロール21の回転方向の手前側の領域において塗布ロール21に対向するように配置され、幅方向D2に延びる軸線を中心として回転可能になっている。
【0032】
ドクターロール22と塗布ロール21とが互いに対向する領域となる対向領域21b、22b同士の間には、不図示の塗布供給パイプ等を介して塗料Pが供給される。本実施形態において塗料Pは、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型塗料となっている。ドクターロール22には例えば金属ロール(鉄ロール)が採用される。対向領域21b、22bにおいて塗布ロール21とドクターロール22とは同方向に略等速度で回転し、塗布ロール21およびドクターロール22の周面に塗料Pが供給されて塗布される。
【0033】
そして周面に塗料Pが塗布された塗布ロール21は、バックアップロール20への対向領域21aにおいて、回転しながら基材Sの表面Xに塗料Pを塗布する。この際、被塗布面となる基材Sの表面Xの凹凸が吸収できる程度に十分な量の塗料Pが塗布されるとよい。
【0034】
(ラミネート装置)
次にラミネート装置1について説明する。
ラミネート装置1は、基材Sを搬送方向D1に搬送しながら基材Sの表面XにフィルムFを貼り付ける装置である。ラミネート装置1は塗布装置2において基材Sに塗料Pが塗布される位置よりも搬送方向D1の下流側において、塗料Pが塗布された状態の基材Sの表面にフィルムFを貼り付ける。
【0035】
具体的にはラミネート装置1は、基材Sの表面XにフィルムFを供給するフィルム供給部10と、フィルムFおよび基材Sを挟持する第一のロール11および第二のロール12と、第一のロール11および第二のロール12を回転させる駆動部13(
図2参照)と、第一のロール11に近接して設けられたフィルム挟持用ロール14と、第一のロール11、第二のロール12、駆動部13、フィルム挟持用ロール14、および間隔調整機構16が設けられたフレーム19とを備えている。
【0036】
(フィルム供給部)
フィルム供給部10は、フィルムFを巻装してなる巻き出しロール10aと、巻き出しロール10aから巻き出されたフィルムFを巻き出し方向の前方側に案内する少なくとも一つの供給部案内ロール10bとを有している。本実施形態では供給部案内ロール10bは二つ設けられ、少なくともフィルムFの巻き出し方向の最も前方側に配置される供給部案内ロール10bは、フィルムFのシワや縮みを除去するための弓形湾曲ロール(エキスパンダーロール)となっている。
【0037】
ここでフィルム供給部10によって供給されるフィルムFは、例えば紫外線を透過可能な樹脂によって形成され、表面に所定のパターンが形成されたシート状をなしている。フィルムFに形成されたパターンは、後述するように基材Sの表面Xへの塗料Pの塗布によって形成された塗装面Zに転写される形状であり、フィルムFのパターンの塗装面Zへの転写によって、塗装面Zに所定の表面加工(グロス加工、マッド加工、エンボス加工等)を施すものである。またフィルムFにおける幅方向D2の寸法は、基材Sの幅方向D2の寸法よりも若干大きく形成され、基材Sの幅方向D2の両縁を含め、基材Sの幅方向D2の全域を覆う程度の寸法となっていることが好ましい。
【0038】
(第一のロール)
第一のロール11は搬送路Tに対して上方に配置されて基材Sの表面X(塗装面Z)に対向し、基材Sの表面X(塗装面Z)との間にフィルム供給部10から供給されたフィルムFを挟み込む。第一のロール11は、自身のフィルムFへの接触領域11aが下流側に向かうように、幅方向D2に延びる軸線O1を中心として回転可能となっている。第一のロール11には、詳しく後述する第二のロール12にくらべて弾性率の小さい材料のロール(例えばゴムロール)が採用される。なお第一のロール11は、詳しく後述するフレーム19におけるサブサブフレーム部19aに支持されている。
【0039】
(第二のロール)
第二のロール12は搬送路Tに対して下方に配置されて基材Sの裏面Yに対向する。第二のロール12は第一のロール11に対して上下方向D3(対向方向)に間隔をあけて配置され、第一のロール11との間に基材SおよびフィルムFを挟み込む。第二のロール12は、自身の基材Sへの接触領域12aが下流側に向かうように、幅方向D2に延びる軸線O2を中心として回転可能となっている。第二のロール12における基材Sへの接触領域12aは、第一のロール11におけるフィルムFへの接触領域11aに対して搬送方向D1に同じ位置に配置される。なお第二のロール12は、詳しく後述するフレーム19におけるメインフレーム部19cに支持されている。
【0040】
第二のロール12と第一のロール11との間の上下方向D3の間隔は、基材Sの厚みに応じた値に設定され、第一のロール11および第二のロール12が基材Sに接触してこれらロール11、12によって基材Sが押圧された状態で、第一のロール11と第二のロール12との間を基材SおよびフィルムFが搬送方向D1に通過可能な程度の値となっている。第一のロール11と第二のロール12との間隔は、詳しく後述する間隔調整機構16によって、例えば少なくとも1.4〔mm〕以上5.0〔mm〕以下を含む数値範囲内で設定可能となっている。
【0041】
そして基材Sが第一のロール11と第二のロール12との間を通過することで、基材Sの表面Xに塗布された未硬化の塗料Pの塗装面ZにフィルムFが圧着される。この際、搬送方向D1に次々に搬送される複数の基材Sに対して、巻き出しロール10aから連続して延びる一枚のフィルムFが貼り付けられることになる。
【0042】
第二のロール12には、例えば金属ロール(鉄ロール)が採用される。ここで、上述したように第一のロール11には第二のロール12にくらべて弾性率の小さい材料のロールが採用されるが、第一のロール11における少なくとも表層部分が第二のロール12における表層部分にくらべて弾性率の小さい材料によって形成されていればよい。
【0043】
(フィルム挟持用ロール)
フィルム挟持用ロール14は、第一のロール11における基材Sへの接触領域11aに対して、第一のロール11における回転方向の手前側の挟持領域11bにおいて第一のロール11の周面(外面)に対向配置されている。フィルム挟持用ロール14は、幅方向D2に延びる軸線を中心として回転可能となっている。またフィルム挟持用ロール14は、詳しく後述するフレーム19におけるサブサブフレーム部19aに支持されている。
【0044】
フィルム挟持用ロール14は供給部案内ロール10bによって案内されたフィルムFを、自身と第一のロール11との間に挟持し、第一のロール11の周面にフィルムFを近接させる。本実施形態のフィルム挟持用ロール14と第一のロール11とが互いに対向する領域となる挟持領域11b、14bは、第一のロール11における接触領域11aに対して回転方向に0度より大きく90度以下離れた位置(本実施形態では90度離れた位置)に配置されている。
【0045】
フィルム挟持用ロール14には、例えばゴムロールや金属ロール(鉄ロール)が採用される。フィルム挟持用ロール14は第一のロール11に押し付けられることで第一のロール11の回転にともなって従動回転する。ここでフィルム挟持用ロール14と第一のロール11との間隔を調整可能となるように、後述するフレーム19におけるサブサブフレーム部19aに対して、フィルム挟持用ロール14を搬送方向D1に動作させる押圧調整機構(シリンダ等)15が設けられている。
【0046】
(フレーム)
フレーム19は、第一のロール11、第二のロール12、およびフィルム挟持用ロール14を支持している。具体的には
図2に示すように、フレーム19には幅方向D2に互いに間隔をあけて順に配置された複数(三つ)の軸受(第一の軸受61、第二の軸受62、第三の軸受63)が設けられている。これら複数の軸受61、62、63には第一のロール11の回転軸50が挿通され、フレーム19に対して第一のロール11が回転可能に支持されている。
【0047】
そして本実施形態では第一のロール11は、幅方向D2に隣接する第一の軸受61と第二の軸受62との間に配置されている。第三の軸受63は、第二の軸受62を挟んで第一の軸受61とは幅方向D2に反対側に配置されている。ここで第一のロール11の回転軸50は、第二の軸受62と第三の軸受63との間の位置において二つに分割されている。すなわち回転軸50は、第二の軸受62の側に配置される第一軸部51と、第三の軸受63の側に配置される第二軸部52とを有している。第一軸部51と第二軸部52とはシュミットカップリング55を介して接続されている。
【0048】
またフレーム19には、第一のロール11を下方に押圧する押圧部材17が設けられている。押圧部材17は、油圧または空圧シリンダ(バネでもよい)であって、第一の軸受61および第二の軸受62の各々に対応して対をなして設けられている。押圧部材17はこれら軸受61、62をそれぞれ押圧することで、軸受61、62を介して第一のロール11を下方に押圧している。押圧部材17は第一のロール11への押圧力を調整可能となっている。押圧部材17は、詳しく後述する間隔調整機構16によって設定される第一のロール11と第二のロール12との間の上下方向D3の間隔が大きくなる方向への第一のロール11の「逃げ」を許容しつつ、この逃げ動作に対して復元力を与える役割を有する。この第一のロール11の「逃げ」の機能は基材Sの厚みが不均一であるような場合にも、基材Sの安定搬送を行うことを可能としている。なお押圧部材17の押圧力は、軸受61、62を介して後述するフレーム19におけるサブサブフレーム部19aに作用する。
【0049】
なお第二のロール12は複数の軸受57によって、フィルム挟持用ロール14(
図1参照)は不図示の軸受によってフレーム19に支持され、第二のロール12およびフィルム挟持用ロール14も同様に、フレーム19に対して回転可能となっている。
【0050】
また
図1に戻って、フレーム19には第一のロール11の上下方向D3の位置を調整する間隔調整機構16が設けられている。
【0051】
(間隔調整機構)
間隔調整機構16は、例えば本実施形態ではラックギア16aとピニオンギア16bとによって構成されている。
ここで上述したフレーム19は、フィルム挟持用ロール14および第一のロール11を回転可能に支持するサブサブフレーム部19aと、サブサブフレーム部19aを上下方向D3に相対的にスライド移動可能に支持するサブフレーム部19bと、サブフレーム部19bを上下方向D3に相対的にスライド移動可能に支持するメインフレーム部19cとを有している。なお
図1では便宜上、フレーム19における紙面手前側の部分は透過して図示している。
【0052】
ラックギア16aはサブフレーム部19aに設けられ、ピニオンギア16bはメインフレーム部19bに設けられている。よって使用者がラックギア16aを回転させることにより、メインフレーム部19bに対してサブフレーム部19aが上下方向D3に相対移動し、第一のロール11の回転軸50がフレーム19に支持される位置と、第二のロール12の回転軸53がフレーム19に支持される位置とが上下方向D3に相対移動し、第一のロール11と第二のロール12との間の上下方向D3の間隔が、例えば上記の通り少なくとも1.4〔mm〕以上5.0〔mm〕以下を含む数値範囲内で調整可能となっている。
【0053】
なおこの際、第一のロール11の回転軸50においては、シュミットカップリング55(
図2参照)によって第一軸部51のみが上下方向D3に動作する一方で、第二軸部52の上下方向D3の位置は変化しない。すなわち、第一軸部51と第二軸部52とが相対的に上下方向D3に動作するようになっている。
【0054】
(駆動部)
図2に示すように駆動部13は、フレーム19に支持された駆動源30と、駆動源30の動力を第一のロール11および第二のロール12にそれぞれ伝達する動力伝達部31と、第一のロール11と第二のロール12との間の相対回転速度を可変に調整する速度調整部32とを有している。
【0055】
駆動源30はモータであって第二のロール12の下方に配置されている。本実施形態では駆動源30としてのモータは一つのみが設けられている。
動力伝達部31は、駆動源30の回転軸30aに設けられた駆動源側プーリー33、第二のロール12の回転軸53に設けられたロール側プーリー34、およびこれらプーリー33、34同士を接続するベルト35、第一のロール11の回転軸50の第二軸部52に設けられた第一歯車(平歯車)36、および第一歯車36に噛み合うとともに第二のロール12の回転軸53に設けられた第二歯車(平歯車)37を有している。第一歯車36および第二歯車37は略同一(歯数、径が略同一)の形状をなしている。
【0056】
そして駆動部13では、駆動源30がプーリー33、34およびベルト35を介して第二歯車37を回転させるとともに、第二歯車37が第一歯車36に噛み合うことで第一歯車36と第二歯車37とが略等速度で回転し、第一のロール11および第二のロール12の各々が略等速度(完全に等速度であってもよい)で強制的に回転させられる。
【0057】
ここで第一のロール11および第二のロール12に対して搬送方向D1の上流側の搬送路T上には、基材Sの有無を検知するセンサ70が設けられている(
図1参照)。センサ70によって基材Sの存在を検知すると、不図示の制御装置によって駆動源30が動作させられ、この結果、動力伝達部31を介して第一のロール11および第二のロール12が回転する。
【0058】
(速度調整部)
速度調整部32は、第一歯車36と、第一のロール11の回転軸50における第二軸部52との間に介在されたクラッチ(例えばパウダークラッチ)である。速度調整部32は、第一のロール11および第二のロール12が基材Sに接触した際、第一のロール11および第二のロール12と基材Sとの間の摩擦力によって、第一歯車36に対して、第二軸部52の回転方向の正方向または逆方向に第二軸部52を相対的に滑らせることで、これら第一歯車36と第二軸部52とを相対回転させる。これにより速度調整部32は、第一のロール11の回転速度と第二のロール12の回転速度とに差が生じている場合に、第一のロール11の回転速度を第二のロール12の回転速度に近接させるように動作する。
【0059】
(硬化装置)
図1に戻って、硬化装置3は不図示の紫外線ランプ等によって構成され、ラミネート装置1でフィルムFが貼り付けられた状態の基材Sの表面Xの塗装面Zに向けて、フィルムFを介して紫外線を照射する。これにより基材Sの表面X上の塗料Pを硬化させるとともに、フィルムFの表面のパターンが基材Sの表面Xの塗装面Zに転写されるようになっている。硬化装置3は、ラミネート装置1によってフィルムFが基材Sの表面Xに貼り付けられた直後に紫外線を照射可能となるように、第一のロール11に対して搬送方向D1の下流側に近接した位置に配置されるとよい。
【0060】
(フィルム回収装置)
フィルム回収装置4は、硬化装置3によって紫外線が照射される位置よりも搬送方向D1の下流側においてフィルムFを回収する。すなわちフィルム回収装置4は、フィルムFを基材Sの表面Xから引っ張り、巻き取ることで塗装面Zから剥がし、回収する巻き取りロール4aと、硬化装置3と巻き取りロール4aとの間に配置されて、フィルムFを基材Sの表面Xから巻き取りロール4aへ案内する少なくとも一つの回収部案内ロール4bとを有している。
【0061】
本実施形態では回収部案内ロール4bは三つ設けられ、少なくとも巻き取りロール4aから最も遠い側に配置される回収部案内ロール4bは、上方から搬送ロールRに対向配置され、自身と搬送ロールRとの間にフィルムFを挟持する。回収部案内ロール4bの材料は特に限定されないが、例えば金属ロール(鉄ロール)やゴムロール等が採用される。なお搬送路Tは、例えば下流側に向かって回収部案内ロール4bの下方へ傾斜して配置され、フィルムFが塗装面Zから剥がされた後の基材Sは、フィルム回収装置4から離れるように斜め下方に向かって案内されるようになっている。
【0062】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の表面加工システム100によれば、塗布装置2によって基材Sの表面Xに塗料Pを塗布し、その後、ラミネート装置1で基材Sの表面Xの塗装面ZにフィルムFを貼り付けて圧着し、硬化装置3によって基材Sの表面Xの塗料Pを硬化させ、基材Sの表面Xにコート層Cを形成するようになっている。そしてこのようにフィルムFを基材Sの表面Xに貼り付けた状態で塗料Pを硬化させるため、塗装面Zの平滑化、塗装面ZへのフィルムFのパターンの転写、および塗料Pの硬化時の酸素阻害の回避を達成でき、基材Sに対して一定の品質を担保しつつ容易にコート層Cを形成して表面加工を施すことができる。
【0063】
ここで本実施形態のラミネート装置1では、第一のロール11と第二のロール12とが互いに間隔をあけて配置され、それぞれのロール11、12が略等速度で強制的に回転させられる。したがってある程度の厚みのある木材等の基材Sであっても、第一のロール11と第二のロール12との間を通過可能となり、かつ、基材Sの表面XにフィルムFを圧着することができる。
【0064】
また第一のロール11および第二のロール12は同じ一つの駆動源30からの動力で回転させられる。このため、複数の駆動源30を同期制御させるといった複雑な構成を採用することなく、歯車等によって構成された機械的な機構である動力伝達部31のみによって容易に、第一のロール11および第二のロール12を略等速度で回転させることができる。
【0065】
ところで動力伝達部31の構成部品の摩耗等の原因で、仮に第一のロール11の回転速度と第二のロール12の回転速度との差異が大きくなってしまうような場合も想定されるが、このような場合であっても、速度調整部32としてのクラッチによって第一のロール11の回転速度を第二のロール12の回転速度に近接させ、第一のロール11および第二のロール12を略等速で回転させることができ、基材Sを第一のロール11と第二のロール12とによって挟み込みながらスムーズに下流側へ案内することができる。
【0066】
また、フィルム挟持用ロール14を第一のロール11に対向配置したことで、フィルム挟持用ロール14と第一のロール11とでフィルムFを挟み込み、フィルム供給部10からフィルムFを引き出す(繰り出す)ための張力を、フィルムFに発生させることができる。したがってスムーズにフィルムFを巻き出しロール10aから巻き出し、基材Sの表面Xにおける塗装面Zに貼り付けることができる。
【0067】
特に本実施形態では表面加工システム100の稼働時には、第一のロール11と第二のロール12とが常に間隔をあけて配置されている。このため、第一のロール11と第二のロール12との間に基材Sが存在していない状態ではフィルムFを第一のロール11と第二のロール12とによって挟み込むことができず、フィルムFに張力を発生させることが難しいが、フィルム挟持用ロール14を設けたことでフィルムFへの張力を確実に発生させることができる。
【0068】
また第一のロール11における基材Sへの接触領域11aよりも回転方向の手前側に第一のロール11およびフィルム挟持用ロール14の挟持領域11b、14bを配置したことで、この挟持領域11b、14bよりも巻き出しロール10aに近い側(巻き出し方向の手前側)におけるフィルムFへの張力を、挟持領域11b、14bにおいて一旦リセットすることができる。したがって第一のロール11における基材Sへの接触領域11aでは、フィルムFに生じる張力を最小限に抑え、フィルムFの張力が過多となることを回避でき、フィルムFの損傷を抑制しながらスムーズに基材Sの表面Xの塗装面ZにフィルムFを載置して貼り付けることが可能となる。
【0069】
また第一のロール11と第二のロール12との間隔を間隔調整機構16によって調整することができる。したがって、厚みの異なる様々な基材Sに対してラミネート装置1でフィルムFを貼り付けることが可能となる。
【0070】
また、第一のロール11が第二のロール12にくらべて弾性率の小さい材料によって形成されていることで、木材等の柔らかい基材Sに対して優しくフィルムFの押圧、圧着が可能になる。さらには、第一のロール11が弾性変形し易く柔軟性を有するため、第一のロール11とフィルム挟持用ロール14との間でフィルムFを優しく確実に挟持することができ、フィルムFの損傷も回避することができる。
【0071】
またフィルム回収装置4によって基材Sの表面XからフィルムFを回収することで、塗料Pの硬化後に、基材Sの表面Xの塗装面Zから容易にフィルムFを取り除くことができる。
【0072】
またラミネート装置1では、基材Sよりも幅方向に大きな寸法を有するフィルムFが基材Sに貼り付けられるため、基材Sの表面X(塗装面Z)の全体をフィルムFで覆うことができ、すなわち基材Sの幅方向の縁を巻き込むようにしてフィルムFで覆うことができる。この結果、基材Sの表面Xの全体に塗料Pをいきわたらせた状態で塗料Pを硬化させることができ、基材Sの表面Xの全体に、均一なコート層Cを形成することができる。
【0073】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0074】
例えば、
図3に示すようにフィルム回収装置4に代えて、基材Sの表面Xの塗装面Zに貼り付けられた状態で、フィルムFを切断するカッター84を設けてもよい。このカッター84は、硬化装置3によって基材Sの塗装面Zに紫外線が照射される位置よりも搬送方向D1の下流側に配置されている。カッター84は、搬送方向D1に搬送される複数の基材Sに対して貼り付けられた一枚のフィルムFを、各々の基材Sにおける搬送方向D1の長さに対応させて、各々の基材Sにおける搬送方向D1の上流側の位置で切断する。
【0075】
このようなカッター84を設けることでフィルムFを各々の基材Sの塗装面Zに貼り付けた状態のまま基材S毎に分割でき、フィルムFを基材Sの表面加工の目的だけでなく、基材Sの塗装面Zの保護フィルムとしてそのまま活用できる。
【0076】
さらに、上記塗料Pは紫外線硬化型塗料に限定されず、可視光によって硬化する光硬化型塗料や、熱によって硬化する熱硬化型塗料であってもよい。この場合に硬化装置3は、紫外線ランプではなく可視光の照射装置や、塗料Pに熱を加えるヒータ等を有することになる。
【0077】
またラミネート装置1では、第一のロール11と第二のロール12とがそれぞれ、別の駆動源によって回転させられ、かつ、これら二つの駆動源の動作を同期制御することで、第一のロール11と第二のロール12とを略等速度で回転させてもよい。またこの際の速度調整部32は、上述したクラッチのような機械的な機構ではなく、第一のロール11と第二のロール12との相対回転速度を検知してこれらロール11、12を回転させる二つの駆動源の動作を制御する制御装置であってもよい。
【0078】
またフレーム19の構造は上述した場合に限定されず、同様の機能を達成可能であればどのような形状、構造をなしていてもよい。
【0079】
またラミネート装置1は、上記の表面加工システム100に用いられる場合に限定されず、例えば基材Sの表面Xを保護するための保護フィルム等を基材Sの表面Xに貼り付ける装置として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の表面加工システム、およびラミネート装置によれば、厚みのある基材に対して一定の品質を担保しつつ、容易に表面加工を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…ラミネート装置
2…塗布装置
3…硬化装置
4…フィルム回収装置
10…フィルム供給部
11…第一のロール
11a…接触領域
11b…挟持領域
12…第二のロール
12a…接触領域
13…駆動部
14…フィルム挟持用ロール
14b…挟持領域
16…間隔調整機構
30…駆動源
31…動力伝達部
32…速度調整部
84…カッター
100…表面加工システム
B…ベルトコンベア
C…コート層
F…フィルム
P…塗料
R…搬送ロール
S…基材
T…搬送路
X…表面
Y…裏面
Z…塗装面
D1…搬送方向
D2…幅方向
D3…上下方向