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特開2024-112058電力変換装置、機器システム及び異常診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112058
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電力変換装置、機器システム及び異常診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016889
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 明博
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】尾島 正禎
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036AA28
2G036BA46
(57)【要約】
【課題】電力変換装置において、モータにより駆動される機器の異常診断を実施する際の誤診断を防止する。
【解決手段】異常診断を実施するための診断周波数、モータ速度及び出力電圧の変調率に基づいて所定の診断条件を判定する診断条件判定部と、診断条件判定部の判定結果に基づいて変調率を低減する制御変更部と、診断条件判定部の判定結果に基づいてモータ電流から機器の異常診断を実施する異常診断部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動される機器の異常診断を実施する電力変換装置であって、
前記モータのモータ電流、前記モータのモータ速度及び前記電力変換装置の出力電圧を制御するモータ制御部と、
前記異常診断を実施するための診断周波数、前記モータ速度及び前記出力電圧の変調率に基づいて所定の診断条件を判定する診断条件判定部と、
前記診断条件判定部の判定結果に基づいて前記変調率を低減する制御変更部と、
前記診断条件判定部の前記判定結果に基づいて前記モータ電流から前記機器の前記異常診断を実施する異常診断部と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記異常診断を実施するための前記モータ速度である前記診断周波数を設定する診断周波数設定部を更に有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記異常診断部で実施された前記機器の前記異常診断の結果を知らせる表示装置又は報知装置を更に有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記異常診断部で実施された前記機器の前記異常診断の結果は、前記モータ制御部に入力されることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換装置は、
前記モータにパルス幅変調された正弦波の電圧を供給し、
前記異常診断を実施する前の前記出力電圧の波形は前記正弦波の上下が制限された方形波であり、
前記異常診断を実施する際の前記出力電圧の波形は前記正弦波になり、
前記異常診断を実施した後の前記出力電圧の波形は前記方波形に戻ることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記診断条件判定部は、
前記モータ速度が前記診断周波数と一定値以内の差で一致し、かつ前記変調率が閾値以下である場合には、前記異常診断を実行することを表す異常診断実行判定フラグを出力し、
前記モータ速度が前記診断周波数と前記一定値以内の差で一致し、かつ前記変調率が前記閾値より大きい場合には、前記変調率を低減する制御を実行することを表す変調率低減制御実行判定フラグを出力し、
前記モータ速度が前記診断周波数と前記一定値以上の差である場合には、前記異常診断及び前記変調率を低減する制御のいずれも実行しないことを表す非実行判定フラグを出力し、
前記異常診断実行判定フラグ、前記変調率低減制御実行判定フラグ及び前記非実行判定フラグを参照して前記所定の診断条件を判定し、
前記制御変更部は、
前記変調率低減制御実行判定フラグを参照して前記変調率を低減し、
前記異常診断部は、
前記異常診断実行判定フラグを参照して前記機器の前記異常診断を実施することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御変更部は、
前記モータ制御部で算出されるd軸電流指令値をマイナス側に増加させることにより前記変調率を低減することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御変更部は、
前記モータ制御部で算出されるd軸電流指令値とq軸電流指令値の少なくとも1つをゼロ以上の範囲内で増減させることにより前記変調率を低減することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御変更部は、
前記モータ制御部で算出される電圧指令値を低減させることにより前記変調率を低減することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御変更部は、
前記モータ制御部で算出される速度指令値を低減させることにより前記変調率を低減することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記異常診断部は、
前記モータ電流から抽出した特徴量を用いて異常度を算出することにより前記異常診断を実施し、
前記制御変更部にて前記変調率を低減する制御を実行している場合には、前記変調率を前記異常診断を実施する前の状態に戻すことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項12】
モータによって駆動される機器と、前記モータを制御する電力変換装置と、を有する機器システムであって、
前記電力変換装置は、
前記モータのモータ電流、前記モータのモータ速度及び前記電力変換装置の出力電圧を制御するモータ制御部と、
前記異常診断を実施するための診断周波数、前モータ速度及び前記出力電圧の変調率に基づいて、所定の診断条件を判定する診断条件判定部と、
前記診断条件判定部の判定結果に基づいて前記変調率を低減する制御変更部と、
前記診断条件判定部の結果に基づいて前記モータ電流から前記機器の前記異常診断を実施する異常診断部と、
を有することを特徴とする機器システム。
【請求項13】
前記機器は、
ファン又はポンプであることを特徴とする請求項12に記載の機器システム。
【請求項14】
前記異常診断部で実施された前記機器の前記異常診断の結果を知らせる表示装置又は報知装置を更に有することを特徴とする請求項12に記載の機器システム。
【請求項15】
モータにより駆動される機器の異常診断を実施する電力変換装置を用いた異常診断方法であって、
前記モータのモータ電流、前記モータのモータ速度及び前記電力変換装置の出力電圧を制御するモータ制御ステップと、
前記異常診断を実施するための診断周波数、前記モータ速度及び前記出力電圧の変調率に基づいて所定の診断条件を判定する診断条件判定ステップと、
前記診断条件判定部の判定結果に基づいて前記変調率を低減する制御変更ステップと、
前記診断条件判定部の結果に基づいて前記モータ電流から前記機器の前記異常診断を実施する異常診断ステップと、
を有することを特徴とする異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、機器システム及び異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の広まりやAI(Artificial Interigence)の高度化と労働人口減少という状況が重なり、保守作業の効率化や省人化を目的として機械装置の異常診断をセンサ等で取得した情報で実施する技術が開発されている。
【0003】
その中でも、センサの設置が容易であり、1つのセンサでモータ自体やモータに接続された機械部品を一括で監視できるモータ電流を用いた異常診断技術が注目されてる。
【0004】
例えば、特許文献1では、時系列データとして取得したモータ電流を周波数スペクトルに変換して、異常検知したい機械部品に起因する特定の周波数成分(振幅値)を正常時に取得した周波数成分と比較することで異常の有無を診断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-34037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法を非同期PWM(Pulse Width Modulation)制御を実行する電力変換装置(インバータ)を用いたモータシステムに適用した場合には、以下の問題が発生する可能性がある。
【0007】
電力変換装置では、モータにパルス幅変調された正弦波電圧を供給している。しかし、負荷の大きさが増加したり、電力変換装置への入力電圧が低下すると、モータへの供給電圧が過変調状態(電力変換装置内で算出される出力電圧指令値が電力変換装置の入力電圧レベルを超えた状態)となる場合がある。
【0008】
このような状態になると、電圧波形は正弦波ではなく矩形波に近づき、出力電圧の基本周波数の高調波成分(高調波ノイズ)が増加してしまう。この時、特許文献1で示された機械部品に起因する特定の周波数が前記高調波の近傍である場合には、異常が発生していない状況でも周波数成分が増加して誤診断をおこす可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、電力変換装置において、モータにより駆動される機器の異常診断を実施する際の誤診断を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の電力変換装置は、モータにより駆動される機器の異常診断を実施する電力変換装置であって、前記モータのモータ電流、前記モータのモータ速度及び前記電力変換装置の出力電圧を制御するモータ制御部と、前記異常診断を実施するための診断周波数、前記モータ速度及び前記出力電圧の変調率に基づいて所定の診断条件を判定する診断条件判定部と、前記診断条件判定部の判定結果に基づいて前記変調率を低減する制御変更部と、前記診断条件判定部の前記判定結果に基づいて前記モータ電流から前記機器の前記異常診断を実施する異常診断部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、電力変換装置において、モータにより駆動される機器の異常診断を実施する際の誤診断を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1のシステム構成図である。
図2】診断周波数設定部7の処理内容を示した図である。
図3】診断条件判定部8の処理内容を示した図である。
図4】状態遷移信号を決定する際のパターンを表した図である。
図5】制御変更部9の処理内容を示した図である。
図6】制御変更部9の他の処理内容を示した図である。
図7】制御変更部9の他の処理内容を示した図である。
図8】制御変更部9の他の処理内容を示した図である。
図9】変調率低減前後の電流波形の例を示した図である。
図10】異常診断部10の処理内容を示した図である。
図11】処理の基本的なタイミングチャートである。
図12】本発明の実施例2のシステム構成図である。
図13】本発明の実施例3のシステム構成図である。
図14】本発明の実施例4のシステム構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例0014】
本発明の実施例1では、電力変換装置から発生する高調波ノイズを低減し、誤診断の発生回数を減らす異常診断機能を備えた電力変換装置について説明する。
【0015】
図1に本実施例1のシステム構成図を示す。本例では、ファン(送風機)を駆動するシステムを例に説明を行うが、モータが駆動する機器によらず本発明は適用可能である。
【0016】
ファンシステム1は、交流もしくは直流である電源2(本例では直流で説明する)と、その電源2によって駆動される電力変換装置3、電力変換装置3から供給される3相交流電圧/電流により駆動されるモータ4とファン5から構成される。
【0017】
ここで、本実施例1における電力変換装置3の内部は、モータ制御部13と異常診断システム6とに分かれており、モータ制御部13はモータ電流や出力電圧、モータ速度、モータトルクを制御するために様々な指令値を算出している。本例において電力変換装置3の出力電圧は非同期PWM制御されたものとする。
【0018】
一方、異常検知システム6は、異常診断を実施するモータ速度(診断周波数)を設定する診断周波数設定部7と、前記診断周波数およびモータ制御部13から得られるモータ速度、電力変換装置3の出力電圧の変調率を入力として、異常診断が実施できるか、もしくは電力変換装置3の出力電圧の変調率を低減する必要があるかについて判定する診断条件判定部8、診断条件判定部8の結果に従って電力変換装置3の出力電圧の変調率を低減する制御変更部9及び異常診断部10を有する。
【0019】
そして、異常診断部10の診断結果は有線や無線などによる通信手段を用いて、ディスプレイなどを示す表示装置11や、スピーカやランプなどを示す報知装置12およびモータ制御部13へ入力される構成となっている。ここからは、各処理ブロックの詳細を述べる。
【0020】
まず、診断周波数設定部7は、外部から入力された情報に基づいて診断を実施するためのモータ速度(診断周波数)を設定する。例えば、外部入力情報としては、対象部品の名前や異常状態を入力し、図2に示したような診断周波数検索部20に保存されているデータベース21から診断周波数を検索して決定してもよい。なお、診断周波数は診断したい機械部品ごとに複数出力しても良い。以後は1つの診断周波数が設定されたとして説明を行う。
【0021】
次に、診断条件判定部8では、図3に示すような処理を行う。
【0022】
まず、診断周波数fdとモータ速度fm、電力変換装置出力電圧の変調率Mを入力する(S1)。この時に、fmは例えば、モータ速度を測定しているセンサ値やモータ速度の推定値を用いても良いし、モータ電流の基本周波数をfmとして用いても良い。
【0023】
また、変調率Mは代表的には、「出力電圧指令値の振幅(peak-to-peak)/電力変換装置の入力直流電圧値」や「出力電圧指令値の振幅(peak-to-peak)/PWMキャリア(搬送波)の振幅(peak-to-peak)」などにより定義される値である。前記情報入力後は、条件判定をモータ速度と変調率のそれぞれで行う。
【0024】
モータ速度の判定では、|fd-fm|が閾値であるΔfth(例えばfdの5%以内等)より小さいかを判定し(S2)、yesであれば、速度状態フラグを1として(S3)、noの場合は0(S4)に設定する。
【0025】
一方、変調率の判定では、変調率Mが閾値であるMth(一般的には1を設定)以下であるかを判定し(S5)、yesであれば電圧状態フラグを1に設定し(S6)、noであれば電圧状態フラグを0(S7)に設定する。この時変調率Mは瞬時的な値でも良いし、過去のある時間範囲での平均値でも良い。
【0026】
その後、状態遷移信号決定のステップ(S8)において、例えば図4のルールに従い状態遷移信号を決定する。なお、以後の処理をしている最中にモータ速度や変調率が変動しても、前記で決定したフラグの値は次の条件判定を実施するまでは維持するものとする。これは、閾値近辺でモータ速度や変調率が変動した場合に、瞬間的にフラグが変化して、状態遷移が頻繁に切り替わることを抑制するためである。そして、前記状態遷移信号に基づいて制御変更部9および異常診断部10を実行する。
【0027】
図4に示すように、速度状態フラグが0で電圧状態フラグが0の場合には、状態遷移信号(SS)は0であり、変調率低減制御も異常診断も実施しない。ここで、速度状態フラグが0の場合とは、例えば、モータ4が停止している状態を表す。
【0028】
また、速度状態フラグが0で電圧状態フラグが1の場合には、状態遷移信号(SS)は0であり、変調率低減制御も異常診断も実施はしない。
【0029】
また、速度状態フラグが1で電圧状態フラグが0の場合には、状態遷移信号(SS)は1であり、変調率低減制御を実施する。
【0030】
また、速度状態フラグが1で電圧状態フラグが1の場合には、状態遷移信号(SS)は2であり、異常診断を実施する。
【0031】
状態遷移信号SSが1であった場合、電力変換装置3の出力電圧の変調率が閾値より大きい、つまり診断に影響与えるような高調波ノイズを出している過変調状態であるため、変調率を低減しノイズを低減する必要がある。そのため、制御変更部9は、図5図6図7図8に示すような変調率低減制御を実行する。
【0032】
図5ではモータ4が磁石モータの場合を想定し、d軸電流指令値と呼ばれるモータ磁束を制御する電流成分をマイナス側に増加させる(S13)。このような制御を実行すると、モータ自体から発生する磁束が減少させることでモータの誘起電圧が低下して、電力変換装置3から出力される必要電圧が下がるため、変調率を低減させることができる。
【0033】
また、図6では、誘導モータの場合を想定して、d軸電流指令値とモータトルクを制御する電流成分であるq軸電流指令値の少なくとも1つをゼロ以上の範囲内で増減する。誘導モータにおいて電力変換装置3の出力電圧は、d軸電流、q軸電流、モータ速度の関係によって変化する。そのため、q軸電流指令値やd軸電流指令値を減少だけでなく増加させることも行い、出力電圧が低下する方向に調整を行う。
【0034】
その他、図7図8では電流指令値を変更するのではなく、電力変換装置3の出力電圧指令値の振幅やモータ速度指令値を低減して、変調率を低減する方法を示している(図7の(S53)、図8の(S43)参照)。
【0035】
出力電圧指令値の振幅は、先に記載した通り、変調率を決める直接的な値であり、振幅値を低減すれば変調率も低減する。また、モータ速度指令値も、ファンのような、速度に応じて負荷の増減が大きいアプリの場合には、変調率を下げる効果がある。
【0036】
つまり、速度を低減することで負荷を下げ、その結果として必要な電圧を低減して変調率を下げる。なお、図6図7図8に示した制御を実行する場合には、数%程度の速度低下を許容するものとする。また、このような制御変更は、ステップ的に行っても良いが、時間レートを設定して変更しても良い。
【0037】
このような制御を実施することで図9に示すように、電圧波形が方形波に近い(正弦波の上下が制限された波形)状態から正弦波波形となり、電流に重畳する高周波ノイズが低減され、診断に適したモータ電流を得る事ができる(図9は異常などの振動が発生していない理想的な波形を示している)。
【0038】
そして、変調率を低減する制御を実施後、もしくは、元々変調率が閾値より小さい事を示す状態遷移信号SSが2だった場合には、図10に示す異常診断のフローを実行する。
【0039】
異常診断においては、まず、変調率を低減してから必要時間待機を行う(S33)。これは、変調率低減の過渡的影響が落ち着くのを待つために実施するものであり、モータ制御の設定状態やモータ慣性の大きさなどにより変化するため、対象機器に応じて、あらかじめ設定しおくとよい。
【0040】
次に、モータ電流を取得(S34)したのちに、診断するための特徴量をモータ電流から抽出する(S35)。ここで、モータ電流とは、相電流やトルク電流そのもの、もしくはそれらから計算された時系列信号であっても良い。特徴量は対象機器や異常の種類によって変更する必要があるが、例えば、時系列信号の平均値やばらつきを表す統計指標や、時系列信号を周波数変換などして得られる特定の周波数成分などが候補として挙げられる。
【0041】
特徴量抽出後は、特徴量を閾値判定し正常/異常という2値情報を算出しても良いし、MT法や機械学習の1つである1class-SVMなどを用いて異常度合を数値で算出しても良い。また、異常の種類を分類するようなモデルを決定木ベースなどで用意しておき、異常の状態や種類を出力するようにしても良い(S36)。いずれに場合にも本例では異常度を算出すると呼称する。
【0042】
そして、もし異常診断実施前に変調率を低減する制御を実行していた場合は、変調率を元に戻す処理も実行する(S37、S38)。変調率を元に戻す際には、ステップ的に事項しても良いが、時間レートを設定して変更しても良い。
【0043】
最後に、算出した異常度は、表示装置11や報知装置12もしくはモータ制御装置13に有線や無線等の通信手段を用いて入力し、作業者や機械に通知を行う。例えば、正常/異常の2値状態を報知装置12の1例であるランプやスピーカに入力し、光や音で作業者に状態を伝えても良い。また。数値的な異常度を表示装置11であるディスプレイに表示しても良い。さらに、モータ制御装置13に異常診断結果を入力する場合には、異常度によって対象機器の動作を自動的に停止もしくは変更することに利用しても良い。
【0044】
ここまで示した処理の流れを図11にタイムチャートとして改めてまとめる。
【0045】
基本的な処理の流れは概ね3パターンある。1つ目は条件判定でSS=0(診断未実施)になったパターン1、2つ目はSS=1(変調率低減制御実行)からSS=2になったパターン2、3つ目はSS=2(診断実行)になったパターン3である。
【0046】
なお、条件判定のタイミングは図11では各処理パターン終了後すぐに実施しているが、特定の時間間隔をあけて実施しても良いし、非定期に実施しても良い。
【0047】
このように、実施例1によれば、電力変換装置から発生する高調波ノイズを低減し、誤診断の発生回数を減らすことが可能となる。
【実施例0048】
本発明の実施例2では、電力変換装置から発生する高調波ノイズを低減し、誤診断の発生回数を減らすもうひとつの異常診断機能を備えた電力変換装置について説明する。
【0049】
なお、実施例1と同じ処理については説明を省略し、実施例1との相違点に焦点を絞って説明を行う。
【0050】
図12に実施例2のシステム図を示す。実施例2と実施例1との相違点は、異常診断部診断部110の出力が電力変換装置103の外部にある制御装置111、表示装置112、報知装置113、監視装置114に入力されている点である。表示装置112、報知装置113は、実施例1で説明した内容と同様である。
【0051】
一方で、制御装置111はモータ制御部115の上位に位置する制御装置(例えばPLCなど)や工場全体をコントロールするような上位制御装置である。また監視装置114は、別の機器や工場全体に対する監視装置である。
【0052】
このように、実施例2によれば、実施例1に比べて電力変換装置内で持っておくべき通知機能を簡易化できるため、電力変換装置を安価に構成することができる。
【実施例0053】
本発明の実施例3では、電力変換装置から発生する高調波ノイズを低減し、誤診断の発生回数を減らすもうひとつの異常診断機能を備えた電力変換装置について説明する。
【0054】
なお、実施例1と同じ処理については説明を省略し、実施例1との相違点に焦点を絞って説明を行う。
【0055】
図13に実施例3のシステム図を示す。実施例3と実施例1との相違点は、実施例1に示した診断周波数設定部7が存在しない点である。実施例2においては、診断条件判定部208に直接診断周波数を入力する構成となっている。この場合、診断周波数は、外部にあるデータベースなどから決定すればよい。
【0056】
このように、実施例3によれば、電力変換装置203に実装する機能の一部を削除することで実施例1より処理軽くし、かつ、保存しておくべき情報量を削減する事でストレージの負担も軽減できる。
【実施例0057】
本発明の実施例4では、電力変換装置から発生する高調波ノイズを低減し、誤診断の発生回数を減らすもうひとつの異常診断機能を備えた電力変換装置について説明する。
【0058】
なお、実施例1、2、3と同じ処理については説明を省略し、実施例3との相違点に焦点を絞って説明を行う。
【0059】
図14に実施例4のシステム図を示す。実施例4と実施例3との相違点は、異常診断部診断部310の出力が電力変換装置303の外部にある制御装置311、表示装置312、報知装置313、監視装置314に入力されている点である。表示装置312、報知装置313は、実施例1で説明した内容と同様である。また、制御装置311、監視装置314は実施例2で説明した内容と同様である。
【0060】
このように、実施例4によれば、機能の一部を削除することで実施例1、2に比べて処理軽くし、かつ、保存しておくべき情報量を削減する事でストレージの負担も軽減できる。また、実施例3に比べて電力変換装置内で持っておくべき通知機能を簡易化できるため、電力変換装置を安価に構成することができる。
【0061】
ここで、例えば、図1に示す電力変換装置3は、メモリー、プロセッサ(CPU等)を有する計算機で構成される。
【0062】
図1に示す機能である「~部」は、例えば、プロセッサによりプログラムを実行することによりその「機能」が実現される。
【0063】
例えば、図1に示すモータ制御部13は、プロセッサによりプログラムを実行することによりモータ制御機能が実現される。図1に示す診断周波数設定部7は、プロセッサによりプログラムを実行することにより診断周波数設定機能が実現される。
【0064】
図1に示す診断条件判定部8は、プロセッサによりプログラムを実行することにより診断条件判定機能が実現される。図1に示す制御変更部9は、プロセッサによりプログラムを実行することにより制御変更機能が実現される。図1に示す異常診断部10は、プロセッサによりプログラムを実行することにより異常診断機能が実現される。
【0065】
上記実施例によれば、電力変換装置から発生する高調波ノイズを低減し、誤診断の発生回数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0066】
1…ファンシステム、2…電源、3…電力変換装置、4…モータ、5…ファン、6…異常診断システム、7…診断周波数設定部、8…診断条件判定部、9…制御変更部、10…異常診断部、11…表示装置、12…報知装置、13…モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14