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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112060
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20240813BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01S15/931
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016891
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 和美
(72)【発明者】
【氏名】海老名 喜賛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 遼
【テーマコード(参考)】
5H181
5J083
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC11
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5J083AA02
5J083AB12
5J083AC29
5J083AF05
5J083BE21
5J083CA01
5J083CA10
(57)【要約】
【課題】超音波センサからの波幅を用いて、超音波センサの不要な共振と障害物とを正しく判別する制御装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係る制御装置20は、取得回路22と判定回路23とを備える。取得回路22は波幅を取得する。判定回路23は、取得回路22から受け取った波幅の大きさに基づいて判定を行うことで、超音波センサ10の共振と障害物とを正しく判別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサにより送波された超音波の波幅を取得する取得回路と、
前記取得回路により取得された前記超音波の波幅が閾値より小さい場合には、共振であると判定する判定回路と
を有する制御装置。
【請求項2】
前記取得回路は、車両の前後または側面に設けられた前記超音波センサにより送波された前記超音波の前記波幅を取得する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記閾値は、残響終了時間の5分の2の値である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記取得回路は、さらに、超音波センサにより送波された超音波の残響終了時間と残響周波数とを取得し、
前記判定回路は、さらに、前記取得回路により取得された前記超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか否か判定し、長いと判定した場合には、所定の固有周波数と前記残響周波数とに基づいて、前記超音波センサに異物が付着しているか、または、前記超音波センサの近傍に物体が存在するかを判定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記判定回路は、さらに、前記固有周波数と前記残響周波数との差が所定の範囲以内であるか否かを判定し、前記所定の範囲以内である場合には、前記超音波センサの近傍に前記物体が存在すると判定し、前記所定の範囲を超える場合には、前記超音波センサに異物が付着していると判定する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
制御装置が実施する方法であって、
超音波センサにより送波された超音波の波幅を取得し、
取得された前記超音波の波幅が閾値より大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合には、物体が存在すると判定し、前記閾値以下である場合には、共振であると判定する、
制御方法。
【請求項7】
超音波センサにより送波された超音波の波幅を取得する取得ステップと、
取得された前記超音波の波幅が閾値より大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合には、物体が存在すると判定し、前記閾値以下である場合には、共振であると判定する判定ステップと
をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された超音波センサ等の測距センサによって、先行車両、障害物、または歩行者等の物体を検知する既存の技術が知られている。また、測距センサによる物体検知結果に基づいて、車両の走行安全性を向上させるための各種制御、例えば、自動ブレーキの作動や、運転者への報知等を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-081050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既存の技術では、超音波センサの不要な共振と障害物からの反射音とを正しく判別することが困難であった。例えば、超音波センサへの付着物や、温度変動や、超音波センサ自体のばらつきなどによって発生する共振と、障害物からの反射音とを正しく判別することが困難であった。
【0005】
本開示は、超音波センサの不要な共振と障害物からの反射音とを正しく判別することができる制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る制御装置は、超音波センサにより送波された超音波の波幅を取得する取得回路と、前記取得回路により取得された前記超音波の波幅が閾値より小さい場合には、共振であると判定する判定回路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
開示の装置は、超音波センサからの波幅を用いて、超音波センサの不要な共振と障害物とを正しく判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る検知システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る計測部の構成の一例を示す図である。
図3図3は、共振と障害物の反射音を説明するための図である。
図4図4は、不要な共振と障害物の判定に用いる閾値について説明するための図である。
図5図5は、不要な共振と障害物の判定に用いる閾値について説明するための図である。
図6図6は、不要な共振と障害物の判定に用いる閾値について説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る計測部の構成の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係る近距離物体の検知の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る異物付着の検知の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る検知システムの実施形態について説明する。なお、以下において、検知システム1は、車両に搭載される例について説明するが、これに限定されない。
【0010】
〔1.第1の実施形態〕
〔1-1.検知システムの構成例〕
図1が示すように、検知システム1は、超音波センサ10と、制御装置20と、表示装置30と、警報装置40とを備える。本実施形態においては、検知システム1は、超音波センサ10と、制御装置20と、表示装置30と、警報装置40とを含むものとする。なお、検知システム1には、さらに別の部分を搭載してもよい。
【0011】
また、図1では、超音波センサ10と、制御装置20と、表示装置30と、警報装置40とを別個の部として図示しているが、これらの部分の一部または全てが統合されてもよい。超音波センサ10は、マイクロフォン11と、送信部12と、受信部13と、計測部14とを含む。
【0012】
送信部12は、マイクロフォン11に超音波を送波させる。例えば、送信部12は、送信制御部21からの信号を受け取ってマイクロフォン11に超音波を送波させる。
【0013】
マイクロフォン11は、超音波の送波と、受け取りを行う。例えば、マイクロフォン11は、送信部12からの信号を受けて超音波を送波し、超音波が物体にぶつかって返ってきた反射音を受け取る。
【0014】
受信部13は、超音波の反射音を受信する。例えば、受信部13は、マイクロフォン11が受け取った超音波の反射音を受信して電気信号に変換する。
【0015】
計測部14は、送信部12から受け取ったマイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号と、受信部13から受け取った超音波の反射音の電気信号に基づいて、超音波の反射音の波幅を取得する。
【0016】
制御装置20は、送信制御部21と、取得部22と、判定部23と、出力部24と、記憶部25とを含む。以下、制御装置20が有する各部について説明する。
【0017】
送信制御部21は、送信部12に電気信号を送り、マイクロフォン11による超音波の送波を制御する。
【0018】
取得部22は、超音波センサにより送波された超音波の波幅を取得する。また、取得部22は、超音波センサにより送波された超音波の残響終了時間を取得する。例えば、取得部22は、超音波センサにより送波された超音波の波幅と、超音波の残響終了時間とを、後述する計測部14から取得する。
【0019】
ここで、残響終了時間とは、後述する送信部12からマイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号が送られてから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値より小さくなるまでの時間をいう。なお、残響終了時間は、これに限定されるものではなく、マイクロフォン11の振動が終了してから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値より小さくなるまでの時間でもよい。
【0020】
判定部23は、取得部22により取得された超音波の波幅が閾値より小さい場合には、共振であると判定する。例えば、判定部23は、取得部22により取得された超音波の波幅が、残響時間の5分の2の値未満である場合には、共振であると判定する。
【0021】
具体例を挙げると、判定部23は、取得部22により取得された超音波の波幅「100μs」が、残響時間「1700μs」の5分の2の値「680μs」未満であることから、共振であると判定する。また、例えば、判定部23は、取得部22により取得された超音波の波幅「700μs」が、残響時間「1700μs」の5分の2の値「680μs」以上であることから、共振でないと判定する。
【0022】
出力部24は、判定部23により判定された結果を、表示装置30や警報装置40などの外部装置に出力する。例えば、出力部24は、判定部23により超音波センサ10の共振が起こっていると判定された場合には、表示装置30に、超音波センサ10に共振が起こっていることを通知するメッセージを表示させる。なお、検知システム1は、判定部23により超音波センサ10の共振が起こっていると判定された場合には、検知システム1による検知処理を停止させてもよい。
【0023】
また、例えば、出力部24は、判定部23により障害物を検知した場合には、表示装置30に、障害物があることを通知するメッセージを表示させる。また、例えば、出力部24は、判定部23により障害物を検知した場合には、警報装置40に、物体があることを通知する警報を出力させる。
【0024】
記憶部25は、判定部23で行われる判定に用いられる値を記憶する。例えば、記憶部25は、波幅、残響終了時間、波幅の閾値を記憶する。例えば、記憶部25は、波幅「170μs」、残響終了時間「1700μs」、波幅の閾値「残響時間の5分の2」といった値を記憶する。なお、当該記憶している値は一例であり、これに限定されるものではない。
【0025】
表示装置30は、出力部24からの出力を受けて、判定部23により判定された検知結果に基づいた内容を表示する。例えば、表示装置30は、判定部23により共振が起こっていると判定された場合には、出力部24からの出力を受けて、共振の発生を伝えるメッセージを、車両内に搭載されたモニタ部分に表示する。このとき、表示装置30は、併せて、検知システム1による検知処理を停止したことを伝えるメッセージを表示してもよい。
【0026】
警報装置40は、出力部24からの出力を受けて、判定部23により判定された検知結果に基づいた警告をする。例えば、警報装置40は、判定部23により障害物があると判定された場合には、出力部24からの出力を受けて、「ピー」という警告音を発して警報を出力してもよい。また、例えば、警報装置40は、判定部23により共振が起こっていると判定された場合には、出力部24からの出力を受けて、「ピッ」という警告音を発して警報を出力してもよい。なお、警報装置40は、出力部24からの出力または操縦者に伝える内容に応じた警告音を発することができる。
【0027】
〔1-2.計測部の構成〕
次に、図2を用いて、第1の実施形態に係る制御装置100の計測部14について説明する。図2に示すように、本実施形態の計測部14は、波幅計測部14aと、残響時間計測部14bと、送受信号処理部14dとを含む。以下、計測部14が含む各部について説明する。
【0028】
波幅計測部14aは、送信部12からのマイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号と、受信部13からの超音波の残響と反射音との電気信号とに基づいて、超音波の波幅を計測する。例えば、波幅計測部14aは、受信部13で変換される電気信号が示す値が上昇を開始してから下降し終えるまでの時間を計ることによって、波幅を計測する。なお、波幅計測部14aは、波幅計測時の、受信部13で変換される電気信号が示す値の上昇の開始および下降の終了の判定に、所定の閾値、または、値の所定の変動を用いることができる。
【0029】
残響時間計測部14bは、送信部12からのマイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号と、受信部13からの超音波の残響の電気信号に基づいて、残響終了時間を計測する。例えば、残響時間計測部14bは、送信部12からマイクロフォン11へ送られ、マイクロフォン11に超音波を送波させる電気信号が送られてから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値より小さくなるまでの時間を計ることによって、残響終了時間を計測する。
【0030】
送受信号処理部14dは、送信部12と受信部13とから電気信号を受け取って処理する。例えば、送受信号処理部14dは、送信部12と受信部13とからの電気信号とを受け取って、波幅計測部14aと、残響時間計測部14bとが計測を行えるように電気信号を処理する。
【0031】
〔1-3.共振の検知〕
次に、図3―6を用いて、実施形態に係る検知システム1による共振の検知について説明する。以下の例では、検知システム1が車両に搭載されており、検知システム1により超音波センサ10の共振を検知する。
【0032】
まず、送信制御部21は、超音波を送波させる電気信号を、送信部12を介してマイクロフォン11に送る。次に、マイクロフォン11は、電気信号を受け取って超音波を送波する。
【0033】
次に、マイクロフォン11は、超音波が障害物にぶつかった反射音を受けとって受信部13に送る。次に、受信部13は、超音波の残響と反射音とを電気信号に変換する。次に、送受信号処理部14dは、送信部12と受信部13とから電気信号を受け取って、波幅計測部14aが扱えるように電気信号を処理する。こうして、波幅計測部14aと、残響時間計測部14bとは、送受信号処理部14dにより処理された電気信号を受け取って、波幅を計測する。
【0034】
ここで、図3は、超音波センサ10から超音波を送波した際の波形を示す図である。図3の(1)で示すように、障害物が存在する場合には、障害物にぶつかった反射音が大きな波幅として測定される。
【0035】
一方、温度変化や超音波センサ10への付着物、超音波センサ10のばらつき等の原因により、図3の(2)で示すように、超音波の送波後から残響終了時間までの間に、小さな波幅(不要な共振)が発生する。
【0036】
続いて、取得部22は、波幅計測部14aから波幅と、残響時間計測部14bから残響終了時間とを取得する。続いて、判定部23は、取得部22により取得された、波幅と、残響終了時間とに基づいて判定を行う。
【0037】
次に、図4を用いて、不要な共振と障害物の判定に用いる閾値について説明する。図4は、不要な共振により得られる並幅と、障害物の反射音により得られる波幅とを、障害物との距離ごとにプロットした図である。判定部23は、波幅により不要な共振と障害物の反射音とを判定するために、所定の閾値を用いることができる。例えば、図4の(1)より上の領域が、障害物の反射音により得られる波幅の領域であり、図4の(2)より下の領域が、不要な共振により得られる波幅の領域である。そこで、判定部23は、図4の(3)に示すように、不要な共振と障害物の反射音とを判定することのできる判定閾値を用いる。
【0038】
なお、判定部23が波により不要な共振と障害物の反射音とを判定する際に用いる閾値は、図5で示すように、様々な距離と角度に配置した障害物に対して超音波を送波する実験により得られた値である。この実験により、波幅が、残響終了時間の5分の2の値よりも小さいか否かによって不要な共振と障害物の反射音とを判定することができることがわかった。
【0039】
なお、図6に示すように、超音波の波幅は、障害物の大きさにより変化する。例えば、障害物が正対した壁である場合には、図6の(1)に示すように約900μsの波幅が得られるが、障害物が直径100mmのポールである場合には、図6の(2)に示すように、約800μsの波幅が得られ、さらに、障害物直径30mmのポールである場合には、図6の(3)に示すように、約750μsの波幅が得られる。
【0040】
そして、判定部23は、実験により得られた閾値を用いて判定を行う。例えば、判定部23は、取得部22により取得された超音波の波幅が残響終了時間の5分の2の値よりも小さい場合には、共振であると判定する。一方、判定部23は、取得部22により取得された超音波の波幅が残響終了時間の5分の2の値よりも大きい場合には、障害物の反射音であると判定する。
【0041】
〔1-4.フローチャート〕
次に、以上のように構成された検知システム1で実行される検知処理の流れについて図7を用いて説明する。なお、下記の各ステップは、異なる順序で実行することもでき、省略される処理があってもよい。
【0042】
まず、取得部22は、超音波センサ10により送波された超音波の波幅を取得する(ステップS101)。例えば、取得部22は、超音波センサ10により送波された超音波の波幅を、計測部14から取得する。
【0043】
続いて、判定部23は、取得された超音波の波幅が閾値より小さいか否かを判定する(ステップS102)。このとき、取得された超音波の波幅が閾値よりも小さくない場合には(ステップS102“No”)、判定部23は、障害物の反射音と判定する(ステップS103)。
【0044】
一方、取得された超音波の波幅が閾値よりも小さい場合には、(ステップS102“Yes”)、超音波センサ10の共振が起こっていると判定する(S104)。
【0045】
〔1-5.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る制御装置20は、超音波センサ10により送波された超音波の波幅を取得する取得部22と、取得部22により取得された超音波の波幅が閾値より小さい場合には、共振であると判定する判定部23とを有する。
【0046】
これにより、実施形態に係る制御装置20は、超音波の波幅を、閾値を用いて判定することで、超音波センサ10の不要な共振と障害物からの反射音とを正しく判別することができる。
【0047】
また、実施形態に係る制御装置20における取得部22は、車両の前後または側面に設けられた超音波センサ10により送波された超音波の波幅を取得する。これにより実施形態に係る制御装置20は、車両の前後または側面に設けられた超音波センサにより送波された超音波の波幅を、閾値を用いて判定することで、超音波センサの不要な共振と障害物からの反射音とを正しく判別することができる。
【0048】
また、実施形態に係る制御装置20における判定部23は、閾値として、残響終了時間の5分の2の値を用いる。これにより実施形態に係る制御装置20は、超音波の並幅を、残響終了時間の5分の2という閾値を用いて、超音波センサ10の不要な共振と障害物からの反射音とを正しく判別することができる。
【0049】
〔2.第2の実施形態〕
ここまで第1の実施形態について説明したが、以下では、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の説明については適宜省略する。第2の実施形態では、制御装置100は、さらに、残響時間と残響周波数との情報を用いて、異物付着と超音波センサ10の近傍に存在する障害物とを判別する。なお、残響周波数とは、マイクロフォン11の振動が終了してから、受信部13で変換される電気信号が所定の閾値よりも小さくなるまでの時間中の周波数をいう。
【0050】
〔2-1.検知システムの構成例〕
次に、図1を用いて、制御装置100の構成について説明する。以下、制御装置100が有する各部について説明するが、第1の実施形態と同様の処理については説明を省略する。
【0051】
取得部22は、さらに、残響終了時間と、残響周波数とを取得する。例えば、取得部22は、残響終了時間と残響周波数とを、計測部14から取得する。
【0052】
判定部23は、取得部22から取得された残響終了時間と残響周波数とに基づいて、超音波センサ10に異物が付着しているか、超音波センサ10の近傍に近距離物体が存在するか否かの判定を行う。例えば、判定部23は、超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか判定する。この結果、判定部23は、残響終了時間が所定の閾値より長い場合には、残響周波数とマイクロフォン11の固有周波数との差が所定の範囲内であるかを判定する。一方、判定部23は、超音波音の残響終了時間が所定の閾値より短い場合には、実施形態1に記載した処理を行う。
【0053】
判定部23は、さらに、マイクロフォン11の固有周波数と残響周波数との差が所定の範囲内である場合には、近距離物体があると判定する。このとき、判定部23は、マイクロフォン11の固有周波数と残響周波数との差が所定の範囲を超える場合には、超音波センサ10に異物が付着していると判定する。また、例えば、判定部23は、超音波の残響終了時間が所定の閾値より短いか判定する。このとき、判定部23は、残響終了時間が所定の閾値よりも短い場合には、超音波センサ10に薄氷があると判定する。
【0054】
具体例を挙げると、取得部22が、残響終了時間として「2100μs」を、残響周波数として「54950Hz」を取得し、マイクロフォン11の固有周波数が「55000Hz」である場合について説明する。まず、判定部23は、取得部22から取得された残響終了時間2100μsが閾値の1700μsよりも長いと判定する。そして、判定部23は、マイクロフォン11の固有周波数55000Hzと残響周波数54950Hzとの差が、マイクロフォン11の固有周波数55000Hzの±0.1%以内であると判定する。このようにして、判定部23は、超音波センサ10の近傍に近距離物体があると判定する。
【0055】
なお、前記の閾値は、これに限定されるものではない。また、判定部23は、残響終了時間や残響周波数といった残響特性に基づいて、超音波センサ10の近傍に存在する近距離物体以外にも、超音波センサ10への異物付着、超音波センサ10に薄氷が張るなど、超音波センサ10の状態を検知することができる。
【0056】
出力部24は、判定部23により判定された結果を、表示装置30や警報装置40などの外部装置に出力する。例えば、出力部24は、判定部23により超音波センサ10への異物付着を検知した場合には、表示装置30に、超音波センサ10に異物が付着していることを通知するメッセージを表示させる。また、例えば、出力部24は、判定部23により近距離物体を検知した場合には、表示装置30に、近距離物体があることを通知するメッセージを表示させる。また、例えば、出力部24は、判定部23により近距離物体を検知した場合には、警報装置40に、近距離物体があることを通知する警報を出力させる。
【0057】
次に、記憶部25は、判定部23で行われる判定に用いられる値を記憶する。例えば、記憶部25は、残響終了時間の閾値として「1700μs」と「800μs」とを、マイクロフォン11の固有周波数として「55000Hz」とを記憶する。なお、当該記憶している値は一例であり、これに限定されるものではない。
【0058】
次に、表示装置30は、出力部24からの出力を受けて、判定部23により判定された検知結果に基づいた内容を表示する。例えば、表示装置30は、判定部23により超音波センサ10に異物が付着していると判定された場合には、出力部24からの出力を受けて、異物付着の検知結果を伝えるメッセージを、車両内に搭載されたモニタ部分に表示する。また、例えば、表示装置30は、判定部23により近距離物体があると判定された場合には、近距離物体の検知結果を伝えるメッセージを、車両内に搭載されたモニタ部分に表示する。
【0059】
そして、警報装置40は、出力部24からの出力を受けて、判定部23により判定された検知結果に基づいた警告をする。例えば、警報装置40は、判定部23により近距離物体があると判定された場合には、出力部24からの出力を受けて、「ピー」という警告音を発して警報を出力する。
【0060】
〔2-2.計測部の構成〕
次に、図8を用いて、第2の実施形態に係る制御装置100の計測部14について説明する。第2の実施形態委に係る制御装置100の計測部14は、残響周波数計測部14cをさらに有する点で、図2に示した計測部14と相違する。
【0061】
第2の実施形態の計測部14は、図8に示すように、波幅計測部14aと、残響時間計測部14bと、残響周波数計測部14cと、送受信号処理部14dとを含む。以下、計測部14が有する各部について説明する。なお、第1の実施形態と同様の説明については適宜省略する。
【0062】
残響周波数計測部14cは、受信部13からの電気信号に基づいて、残響周波数を計測する。例えば、残響周波数計測部14cは、残響時間計測部14bにより測定された残響時間中の周波数を測ることにより残響周波数を測定する。
【0063】
送受信号処理部14dは、送信部12と受信部13とから電気信号を受け取って処理する。例えば、送受信号処理部14dは、送信部12と受信部13からの電気信号とを受け取って、波幅計測部14aと、残響時間計測部14bと、残響周波数計測部14cとが計測を行えるように電気信号を処理する。
【0064】
〔2-3.近距離物体の検知〕
次に、図9を用いて、実施形態に係る近距離物体の検知について説明する。以下の例では、検知システム1が車両に搭載されており、検知システム1により超音波センサ10の近傍に存在する近距離物体を検知する。まず、送信制御部21は、超音波を送波させる電気信号を、送信部12を介してマイクロフォン11に送る。次に、マイクロフォン11は、電気信号を受け取って超音波を送波する。
【0065】
次に、マイクロフォン11は、超音波を送波した際に発生する残響と、超音波が壁にぶつかった反射音とを受けとって受信部13に送る。次に、受信部13は、超音波の送波による残響と反射音とを電気信号に変換する。次に、送受信号処理部14dは、送信部12と受信部13とから電気信号を受け取って、残響時間計測部14bと、残響周波数計測部14cとが扱えるように電気信号を処理する。
【0066】
こうして、残響時間計測部14bは、送受信号処理部14dにより処理された電気信号を受け取って、残響が終了する時間を計測する。また、残響周波数計測部14cは、送受信号処理部14dにより処理された電気信号を受け取って、残響周波数を計測する。
【0067】
このとき、図9の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に近距離物体が存在しない場合、図9の(2)で示すように、残響終了時間は、近距離物体からの反射音の影響を受けない。一方、図9の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に壁が存在する場合には、図9の(5)で示すように、残響終了時間は、超音波の送波によって発生する残響と、超音波が車両近傍に存在する近距離物体である壁にぶつかった反射音とが重なることにより、長くなる。
【0068】
また、図9の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に近距離物体が存在しない場合、図9の(3)で示すように、残響周波数は、マイクロフォン11の固有周波数に対して、ほとんど変動しない。また、図9の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の近傍に壁が存在する場合、図9の(6)で示すように、残響周波数は、マイクロフォン11の固有周波数に対して、ほとんど変動しない。
【0069】
次に、取得部22は、残響時間計測部14bから残響終了時間と、残響周波数計測部14cから残響周波数とを取得する。次に、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間と残響周波数とに基づいて判定を行う。具体例を挙げると、取得部22が、残響終了時間として「2100μs」を、残響周波数として「54950Hz」を取得し、マイクロフォン11の固有周波数が「55000Hz」である場合について説明する。まず、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間2100μsが、記憶部25に記憶された残響終了時間の閾値1700μsより長いと判定する。
【0070】
そして、判定部23は、記憶部25に記憶されたマイクロフォン11の固有周波数55000Hzと、取得部22により取得された残響周波数54950Hzとの差が、閾値であるマイクロフォン11の固有周波数55000Hzの±0.1%以内であると判定する。これによって、検知システム1は、近距離物体があることを検知する。
【0071】
一方、判定部23により、残響終了時間が閾値よりも短いと判定された場合には、第1の実施形態に記載した処理と同様の処理を行うことができる。
【0072】
〔2-4.異物付着の検知〕
次に、実施形態に係る異物付着の検知について説明する。以下の例では、検知システム1が車両に搭載されており、検知システム1により超音波センサ10への異物付着を検知する。
【0073】
まず、送信制御部21は、超音波を送波させる電気信号を、送信部12を介してマイクロフォン11に送る。次に、マイクロフォン11は、電気信号を受け取って超音波を送波する。
【0074】
次に、マイクロフォン11は、超音波を送波した際に発生する残響を受けとって受信部13に送る。次に、受信部13は、超音波を送波した際に発生する残響を電気信号に変換する。次に、送受信号処理部14dは、送信部12と受信部13から電気信号を受け取って、残響時間計測部14bと残響周波数計測部14cとが扱えるように電気信号を処理する。こうして、残響時間計測部14bは、送受信号処理部14dにより処理された電気信号を受け取って、残響終了時間を計測する。また、残響周波数計測部14cは、送受信号処理部14dにより処理された電気信号を受け取って、残響周波数を計測する。
【0075】
このとき、図10の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサ10に異物が付着していない場合、図10の(2)で示すように、残響終了時間は、異物付着の影響を受けない。一方、図10の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサ10に異物が付着している場合には、図10の(5)で示すように、残響終了時間は、超音波センサ10への異物付着の影響を受けて長くなる。
【0076】
また、図10の(1)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサ10に異物が付着していない場合、図10の(3)で示すように、残響周波数は、マイクロフォン11の固有周波数に対して、ほとんど変動しない。一方、図10の(4)で示すように、検知システム1を搭載した車両の超音波センサ10に異物が付着している場合には、図10の(6)で示すように、残響周波数は、超音波センサ10への異物付着の影響を受けて、マイクロフォン11の固有周波数に対して変動する。
【0077】
次に、取得部22は、残響時間計測部14bから残響終了時間と、残響周波数計測部14cから残響周波数とを取得する。次に、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間と残響周波数とに基づいて判定を行う。具体例を挙げると、取得部22が、残響終了時間として「2100μs」を、残響周波数として「54000Hz」を取得し、マイクロフォン11の固有周波数が「55000Hz」である場合について説明する。まず、判定部23は、取得部22により取得された残響終了時間2100μsが、記憶部25に記憶された残響終了時間の閾値1700μsより長いと判定する。
【0078】
そして、判定部23は、記憶部25に記憶されたマイクロフォン11の固有周波数55000Hzと、取得部22により取得された残響周波数54000Hzとの差が、閾値であるマイクロフォン11の固有周波数55000Hzの±0.1%以内でないと判定する。これによって、検知システム1は、超音波センサ10に異物が付着していることを検知する。
【0079】
〔2-5.フローチャート〕
次に、以上のように構成された検知システム1で実行される検知処理の流れについて図11を用いて説明する。なお、下記の各ステップは、異なる順序で実行することもでき、省略される処理があってもよい。
【0080】
まず、取得部22は、超音波の波幅と、残響終了時間と、残響周波数とを取得する(ステップS201)。例えば、取得部22は、超音波の波幅と、残響終了時間と、残響周波数とを、計測部14から取得する。
【0081】
次に、判定部23は、残響終了時間が閾値より長いか判定する(ステップS202)。このとき、残響終了時間が閾値よりも短い場合(ステップS202“No”)、続いて、判定部23は、波幅が閾値よりも小さいか判定する(ステップS203)。ここで、判定部23は、波幅が閾値より小さくない場合には(ステップS202“No”)、障害物の反射音であると判定する(ステップS204)。一方、判定部23は、波幅が閾値よりも小さい場合には(ステップS202“YES”)、共振であると判定する(ステップS205)。
【0082】
一方、判定部23により、残響終了時間が閾値より長いと判定された場合(ステップS202“YES”)、続いて、判定部23は、残響周波数が閾値の範囲内にあるか判定する(ステップS206)。ここで、判定部23は、残響周波数が閾値の範囲内にない場合(ステップS206“NO”)、超音波センサ10に異物が付着していると判定する(ステップS207)。
【0083】
一方、判定部23は、残響周波数が閾値の範囲内にある場合(ステップS206“YES”)、超音波センサ10の近傍に近距離物体があると判定する(ステップS208)。
【0084】
〔2-6.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る制御装置20における取得部22は、さらに、超音波センサ10により送波された超音波の残響終了時間と、残響周波数とを取得し、判定部23は、取得部22により取得された超音波の残響終了時間が所定の閾値より長いか否か判定し、長いと判定した場合には、所定の固有周波数と残響周波数とに基づいて、超音波センサ10に異物が付着しているか、または、超音波センサ10の近傍に物体が存在するかを判定する。
【0085】
これにより、実施形態に係る制御装置20は、超音波の波幅と、残響終了時間と、残響周波数とを取得し、超音波の残響終了時間と残響周波数とに基づいて、異物付着と近距離物体とを正しく判別した上で、超音波センサ10の不要な共振と障害物からの反射音とを正しく判別することができる。
【0086】
また、実施形態に係る制御装置20における判定部23は、さらに、固有周波数と残響周波数との差が所定の範囲以内であるか否かを判定し、所定の範囲以内である場合には、超音波センサの近傍に物体が存在すると判定し、所定の範囲を超える場合には、超音波センサに異物が付着していると判定する。
【0087】
これにより、実施形態に係る制御装置20は、超音波の波幅と、残響終了時間と、残響周波数とを取得し、超音波の残響終了時間と残響周波数と差を用いて、異物付着と近距離物体とを正しく判別した上で、超音波センサ10の不要な共振と障害物からの反射音とを正しく判別することができる。
【0088】
〔3.ハードウェア構成〕
次に、制御装置20のハードウェア構成について図12を用いて説明する。図12に示すように、制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)1100A、ROM(Read Only Memory)1100B、RAM(Random Access Memory)1100C、I/F(インタフェース)1100D、フラッシュメモリ1100E等がバス1100Fにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0089】
CPU1100Aは、制御装置20全体を制御する演算装置である。なお、CPU1100Aは、プロセッサの一例であり、他のプロセッサまたは処理回路がCPU1100Aの代わりに設けられても良い。ROM1100Bは、CPU1100Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM1100Cは、例えば制御装置20の主記憶装置であり、CPU1100Aによる各種処理に用いるデータを記憶する。I/F1100Dは、データを送受信するためのインタフェースである。また、フラッシュメモリ1100Eは書き込み可能な不揮発性の記憶媒体の一例である。ROM1100B、RAM1100C、およびフラッシュメモリ11Eは、記憶部ともいう。なお、制御装置20は、フラッシュメモリ1100Eの代わり、あるいはフラッシュメモリ1100Eに加えて、HDD(Hard Disk Drive)等の他の記憶装置を備えても良い。
【0090】
〔4.その他〕
以上、一つまたは複数の態様に係る検知システム等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示に含まれてもよい。
【0091】
フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、上記ステップの一部は実行されなくてもよい。
【0092】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0093】
なお、上述の実施形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、または、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 検知システム
10 超音波センサ
11 マイクロフォン
12 送信部
13 受信部
14 計測部
14a 波幅計測部
14b 残響時間計測部
14c 残響周波数計測部
14d 送受信号処理部
20 制御装置
21 送信制御部
22 取得部
23 判定部
24 出力部
25 記憶部
30 表示装置
40 警報装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12