(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112069
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】洗浄液付着装置、クリーニング装置、インクジェットプリンター、および噴出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/165 503
B41J2/165 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016910
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧井 厚人
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC23
2C056FA13
2C056JB04
2C056JB05
2C056JB12
2C056JB15
(57)【要約】
【課題】長尺ヘッドを有するインクジェットプリンターの機内に拡散してしまう洗浄液の量を低減可能な洗浄液付着装置を提供する。
【解決手段】洗浄液付着装置は、インクジェットプリンターの長尺ヘッドのインク吐出面に洗浄液を付着させるために、インク吐出面に対向した状態でインク吐出面に洗浄液を噴出する噴出装置と、噴出装置を制御する制御装置とを備える。噴出装置の長尺ヘッドに対する相対位置が長尺ヘッドの長手方向に変化することにより、インク吐出面における噴出装置に対向する対向領域は長手方向に変化する。制御装置は、噴出装置の一部がインク吐出面に対向する状態のとき、噴出装置のうちインク吐出面に対向する部位からインク吐出面に対向しない部位よりも多くの量の洗浄液を噴出するように、噴出装置を制御する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンターにおける長尺ヘッドのインク吐出面に洗浄液を付着させるために、前記インク吐出面に対向した状態で前記インク吐出面に対して洗浄液を噴出する噴出装置と、
前記噴出装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記噴出装置の前記長尺ヘッドに対する相対位置が前記長尺ヘッドの長手方向に変化することにより、前記インク吐出面における前記噴出装置に対向する対向領域は前記長手方向に変化し、
前記制御装置は、前記噴出装置の一部が前記インク吐出面に対向する状態のときには、前記インク吐出面に対向しない部位よりも多くの量の前記洗浄液を前記インク吐出面に対向する部位から噴出するように、前記噴出装置を制御する、洗浄液付着装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記インク吐出面に対向しない部位から前記洗浄液を噴出しないように前記噴出装置を制御する、請求項1に記載の洗浄液付着装置。
【請求項3】
前記噴出装置は、前記洗浄液をミスト化にして前記インク吐出面に対向する部位から噴出する、請求項2に記載の洗浄液付着装置。
【請求項4】
前記噴出装置は、前記洗浄液をミスト化する振動子を少なくとも1つ有する、請求項3に記載の洗浄液付着装置。
【請求項5】
前記噴出装置は、前記振動子を複数有し、
各前記振動子は、前記長手方向に並んで配置されており、
前記制御装置は、各前記振動子の動作を個別に制御する、請求項4に記載の洗浄液付着装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記複数の振動子のうち、前記インク吐出面に対向する振動子のみを駆動させる、請求項5に記載の洗浄液付着装置。
【請求項7】
各前記振動子は、複数の貫通孔が形成された振動板と、前記振動板を振動させる圧電素子とを含み、
前記制御装置は、前記圧電素子の駆動を制御する、請求項6に記載の洗浄液付着装置。
【請求項8】
前記噴出装置は、前記振動子を複数有し、
各前記振動子は、前記長手方向に並んで配置されており、
前記制御装置は、連続する2つ以上の前記振動子を含むグループ単位で、前記振動子の動作を制御する、請求項4に記載の洗浄液付着装置。
【請求項9】
前記対向領域の前記長手方向の最大長は、前記インク吐出面の前記長手方向の長さよりも短い、請求項1に記載の洗浄液付着装置。
【請求項10】
前記洗浄液が収容された容器をさらに備え、
前記容器には、第1の開口が形成されており、
前記噴出装置は、前記第1の開口を覆い、かつ、所定の位置に第2の開口が形成された幕を有し、
前記制御装置は、前記幕を前記長手方向に移動させて前記第2の開口の前記第1の開口への重なり領域を制御することにより、前記インク吐出面に対向する部位から前記洗浄液を噴出させ、かつ、前記インク吐出面に対向しない部位からは前記洗浄液を噴出させない、請求項4に記載の洗浄液付着装置。
【請求項11】
前記相対位置が前記長手方向に連続的に変化することにより、前記対向領域は前記長手方向に連続的に変化する、請求項1に記載の洗浄液付着装置。
【請求項12】
前記長尺ヘッドは、前記インク吐出面から吐出されたインクが付着する記録材の幅方向に移動することなく、前記記録材の幅方向の全域にわたって前記インクを吐出可能なラインヘッドである、請求項1から11のいずれか1項に記載の洗浄液付着装置。
【請求項13】
請求項1に記載の洗浄液付着装置と、
払拭部材を有し、かつ、前記払拭部材で前記インク吐出面を払拭する払拭装置とを備える、クリーニング装置。
【請求項14】
請求項13に記載のクリーニング装置と、
前記長尺ヘッドとを備える、インクジェットプリンター。
【請求項15】
前記長手方向は、前記インク吐出面から吐出されたインクが付着する記録材の幅方向であり、
前記長尺ヘッドは、前記記録材の幅方向に移動することなく、前記記録材の幅方向の全域にわたって前記インクを吐出可能なラインヘッドであり、
前記噴出装置から前記洗浄液を噴出可能な前記長手方向の最大長は、前記ラインヘッドの前記インク吐出面の前記長手方向の長さの6%以上である、請求項14に記載のインクジェットプリンター。
【請求項16】
前記インク吐出面は、前記長手方向に間隔を開けて並んだ複数のノズル面を有する、請求項14に記載のインクジェットプリンター。
【請求項17】
洗浄液を噴出する噴出装置の制御方法であって、
前記噴出装置が、インクジェットプリンターにおける長尺ヘッドのインク吐出面に洗浄液を付着させるために、前記インク吐出面に対向した状態で前記インク吐出面に対して洗浄液を噴出するステップと、
前記制御方法は、前記噴出装置の前記長尺ヘッドに対する相対位置を前記長尺ヘッドの長手方向に変化させることにより、前記インク吐出面における前記噴出面に対向する対向領域を前記長手方向に変化させるステップとを備え、
前記洗浄液を前記噴出面から噴出するステップでは、前記噴出装置の一部が前記インク吐出面に対向する状態のときには、前記インク吐出面に対向しない部位よりも多くの量の前記洗浄液を前記インク吐出面に対向する部位から噴出させる、噴出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄液付着装置、クリーニング装置、インクジェットプリンター、および噴出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターにおける長尺ヘッドのインク吐出面に対して洗浄液付着装置によって洗浄液を付着させた後に、インク吐出面を払拭装置で払拭することが行われている。たとえば、特開2008-254200号公報(特許文献1)および特開2019-59100号公報(特許文献2)には、洗浄液をミスト化(液滴化)してインク吐出面に噴霧する構成が開示されている。
【0003】
詳しくは、特許文献1では、ミスト状の微液滴を噴霧する微液滴発生装置を移動させることにより、インク吐出面の全面に対して洗浄液を噴霧している。特許文献2では、ヘッドを移動させることにより、インク吐出面の全面に対して洗浄液を噴霧している。より詳しくは、特許文献2の洗浄液付着装置では、容器の開口全面から洗浄液を噴霧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-254200号公報
【特許文献2】特開2019-59100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に示すような長尺ヘッドを有するインクジェットプリンターの場合、上述したように、洗浄液付着装置のうち洗浄液を噴出する部分(以下、「噴出装置」とも称する)の長尺ヘッドに対する相対位置を長尺ヘッドの長手方向に変化させることにより、インク吐出面の全面に洗浄液を付着させることができる。
【0006】
この場合、インク吐出面に固着したインクを払拭するには、インク吐出面に対して、単位面積あたり一定量以上の洗浄液を付着させる必要がある。しかしながら、噴出装置においては、単位時間および単位面積当たりに噴出可能な洗浄液の量にも上限がある。したがって、必要な量の洗浄液をインク吐出面に迅速に付着させるためには、長尺ヘッドの長手方向において広範囲な領域から同時に洗浄液を噴出することが好ましい。
【0007】
このような観点からは、特許文献1のよりも広範囲な領域から洗浄液を噴出する特許文献2の構成が好ましい。しかしながら、特許文献2の構成では、インク吐出面に均一に洗浄液を付着させるためには、噴出装置は、インク吐出面に対向する直前から洗浄液を噴出する必要がある。このような構成の場合には、開口のうちインク吐出面に対向していない領域(開口全面または一部)から噴出された洗浄液は、インクジェットプリンターの機内に拡散してしまうことになる。
【0008】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、長尺ヘッドを有するインクジェットプリンターの機内に拡散してしまう洗浄液の量を低減可能な洗浄液付着装置、洗浄液付着装置を備えたクリーニング装置、クリーニング装置を備えたインクジェットプリンター、および、噴出装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面に従うと、洗浄液付着装置は、インクジェットプリンターにおける長尺ヘッドのインク吐出面に洗浄液を付着させるために、インク吐出面に対向した状態でインク吐出面に対して洗浄液を噴出する噴出装置と、噴出装置の動作を制御する制御装置とを備える。噴出装置の長尺ヘッドに対する相対位置が長尺ヘッドの長手方向に変化することにより、インク吐出面における噴出装置に対向する対向領域は長手方向に変化する。制御装置は、噴出装置の一部がインク吐出面に対向する状態のときには、インク吐出面に対向しない部位よりも多くの量の洗浄液をインク吐出面に対向する部位から噴出するように、噴出装置を制御する。
【0010】
好ましくは、制御装置は、インク吐出面に対向しない部位から洗浄液を噴出しないように噴出装置を制御する。
【0011】
好ましくは、噴出装置は、洗浄液をミスト化にしてインク吐出面に対向する部位から噴出する。
【0012】
好ましくは、噴出装置は、洗浄液をミスト化する振動子を少なくとも1つ有する。
好ましくは、噴出装置は、振動子を複数有する。各振動子は、長手方向に並んで配置されている。制御装置は、各振動子の動作を個別に制御する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、複数の振動子のうち、インク吐出面に対向する振動子のみを駆動させる。
【0014】
好ましくは、各振動子は、複数の貫通孔が形成された振動板と、振動板を振動させる圧電素子とを含む。制御装置は、圧電素子の駆動を制御する。
【0015】
好ましくは、噴出装置は、振動子を複数有する。各振動子は、長手方向に並んで配置されている。制御装置は、連続する2つ以上の振動子を含むグループ単位で、振動子の動作を制御する。
【0016】
好ましくは、対向領域の長手方向の最大長は、インク吐出面の長手方向の長さよりも短い。
【0017】
好ましくは、洗浄液付着装置は、洗浄液が収容された容器をさらに備える。容器には、第1の開口が形成されている。噴出装置は、第1の開口を覆い、かつ、所定の位置に第2の開口が形成された幕を有する。制御装置は、幕を長手方向に移動させて第2の開口の第1の開口への重なり領域を制御することにより、インク吐出面に対向する部位から洗浄液を噴出させ、かつ、インク吐出面に対向しない部位からは洗浄液を噴出させない。
【0018】
好ましくは、相対位置が長手方向に連続的に変化することにより、対向領域は長手方向に連続的に変化する。
【0019】
好ましくは、長尺ヘッドは、インク吐出面から吐出されたインクが付着する記録材の幅方向に移動することなく、記録材の幅方向の全域にわたってインクを吐出可能なラインヘッドである。
【0020】
本開示の他の局面に従うと、クリーニング装置は、上記の洗浄液付着装置と、払拭部材を有し、かつ、払拭部材でインク吐出面を払拭する払拭装置とを備える。
【0021】
本開示のさらに他の局面に従うと、インクジェットプリンターは、上記のクリーニング装置と、上記の長尺ヘッドとを備える。
【0022】
好ましくは、長手方向は、インク吐出面から吐出されたインクが付着する用紙の幅方向である。長尺ヘッドは、用紙の幅方向に移動することなく、用紙の幅方向の全域にわたってインクを吐出可能なラインヘッドである。噴出装置から洗浄液を噴出可能な長手方向の最大長は、ラインヘッドのインク吐出面の長手方向の長さの6%以上である。
【0023】
好ましくは、インク吐出面は、長手方向に間隔を開けて並んだ複数のノズル面を有する。
【0024】
本開示のさらに他の局面に従うと、洗浄液を噴出する噴出装置の制御方法は、噴出装置が、インクジェットプリンターにおける長尺ヘッドのインク吐出面に洗浄液を付着させるために、インク吐出面に対向した状態でインク吐出面に対して洗浄液を噴出するステップと、噴出装置の長尺ヘッドに対する相対位置を長尺ヘッドの長手方向に変化させることにより、インク吐出面における噴出面に対向する対向領域を長手方向に変化させるステップをさらに備える。対向領域の長手方向の最大長は、インク吐出面の長手方向の長さよりも短い。洗浄液を噴出面から噴出するステップでは、噴出装置の一部がインク吐出面に対向する状態のときには、インク吐出面に対向しない部位よりも多くの量の洗浄液をインク吐出面に対向する部位から噴出させる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、インクジェットプリンターの機内に拡散してしまう洗浄液の量を低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】インクジェットプリンターの全体構成を説明するための図である。
【
図2】
図1のインクジェットプリンターを
図1の矢印II方向から視た側面図である。
【
図3】
図1のインクジェットプリンターを
図1の矢印III方向から視た上面図である。
【
図4】ラインヘッドを用紙搬送装置2側から視た図である。
【
図5】クリーニング装置のハードウェア構成を説明するための模式図である。
【
図6】
図5の洗浄液付着装置を矢印VI方向から視た上面図である。
【
図8】振動子を
図7の矢印VIII方向から見た平面図である。
【
図10】振動板の要部を拡大した要部拡大図である。
【
図11】クリーニング装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図12】洗浄液をラインヘッドのインク吐出面に付着させる工程の序盤部分を示した図である。
【
図13】洗浄液をラインヘッドのインク吐出面に付着させる工程の終盤部分を示した図である。
【
図14】洗浄液付着装置の制御の流れを示したフロー図である。
【
図15】他のインクジェットプリンターの要部を説明するための図である。
【
図17】洗浄液をラインヘッドのインク吐出面に付着させる工程の序盤部分を示した図である。
【
図18】洗浄液をラインヘッドのインク吐出面に付着させる工程の終盤部分を示した図である。
【
図19】洗浄液付着装置の制御の流れを示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
各実施の形態におけるラインヘッド式のインクジェットプリンターについて、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している箇所がある。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0028】
[実施の形態1]
<A.インクジェットプリンターの全体構成>
本実施の形態に係るインクジェットプリンターは、商業印刷、企業内印刷等の分野で使用されるプロダクションプリント機である。だだし、インクジェットプリンターは、プロダクションプリント機に限定されるものではない。
【0029】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの全体構成を説明するための図である。
図2は、
図1のインクジェットプリンターを
図1の矢印II方向から視た側面図である。
図3は、
図1のインクジェットプリンターを
図1の矢印III方向から視た上面図である。なお、各図において、鉛直上向きの方向をZ軸方向(Z軸正方向)としている。
【0030】
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、用紙搬送装置2と、クリーニング装置3と、ヘッド待機部4と、ラインヘッド10と、ヘッド移動装置11とを備える。詳細については後述するが、インクジェットプリンター1は、複数のラインヘッド10を有する。ラインヘッドは、典型的には複数のヘッド部(
図4参照)を収容する構成であるため、「ヘッドステーション」とも称される。ラインヘッド10は、長尺ヘッドの一例である。
【0031】
ヘッド待機部4は、キャップ41と、廃液タンク42とを有する。詳細については後述するが、ヘッド待機部4は、複数のキャップ41を有する。
【0032】
用紙搬送装置2は、搬送ベルト20と、従動ローラー21と、駆動ローラー22(
図2)とを有する。記録材の一例としての用紙900は、搬送ベルト20によって搬送される。
【0033】
ラインヘッド10は、ヘッド移動装置11に固定されている。ラインヘッド10は、ヘッド移動装置11の移動によって、少なくとも、矢印990の方向(X軸正方向)および矢印991の方向(X軸負方向)に移動可能である。
【0034】
ラインヘッド10の下側には、用紙搬送装置2が配置されている。ラインヘッド10が矢印990に移動した場合、クリーニング装置3と、ヘッド待機部4とは、ラインヘッド10の下方に位置する。
【0035】
図2に示すように、ヘッド移動装置11が用紙搬送装置2の直上にある場合、搬送ベルト20は、駆動ローラー22および従動ローラー21の矢印992方向の回転によって、回動する。これにより、搬送ベルト20の表面に密着した用紙900は、矢印993方向に搬送される。用紙900がラインヘッド10を通過する際に、ラインヘッド10からインクが射出され、用紙900上に画像が形成される。
【0036】
ラインヘッド10は、一連の印刷ジョブの期間は、搬送ベルト20上に位置している。印刷ジョブが終了すると、ラインヘッド10は、ラインヘッド10用の制御装置(図示せず)からの指令により、クリーニング装置3が待機する位置、さらにはキャップ41が待機する位置に移動する。
【0037】
図3に示すように、インクジェットプリンター1は、複数のラインヘッド10を有する。詳しくは、ヘッド移動装置11は、インク種または色毎に複数のラインヘッド10を有する。各ラインヘッド10は、Y軸方向に一列に並んでいる。各ラインヘッド10は、ラインヘッド10の短手方向に沿って、一列に並んでいる。
【0038】
各ラインヘッド10の対応する位置(X軸方向の位置)に、クリーニング装置3と、キャップ41とが設置されている。このように、インクジェットプリンター1は、ラインヘッド10の個数だけ、クリーニング装置3とキャップ41とを有する。インクジェットプリンター1では、各ラインヘッド10のメンテナンスを、ラインヘッド10に対応するクリーニング装置3とキャップ41とが行う。
【0039】
再び
図1を参照して、ラインヘッド10が一連の印刷ジョブを実行した後、ヘッド移動装置11によってラインヘッド10の先端がクリーニング装置3の直上に移動する。その後、クリーニング装置3によるラインヘッド10のクリーニングが行われる。具体的には、ラインヘッド10のインク吐出面101(
図4)に対する洗浄液(クリーニング液)の噴霧と、ウェブと呼ばれるクリーニング部材(接触させ拭く部材)によるインク吐出面101の払拭とが行われる。ラインヘッド10のZ軸方向の位置を印字のときの位置からZ軸負方向に所定距離だけ移動させた状態で、クリーニング装置3によるクリーニングを行ってもよい。
【0040】
詳しくは、ヘッド移動装置11のX軸方向(本例では、X軸正方向)の移動、および、クリーニング装置3のウェブ移動の少なくとも一方によって、ウェブとラインヘッド10との間で相対移動が生じる。これにより、ノズルプレートがウェブで擦られる。その結果、ノズルプレートの表面に付着したインク等による汚れが除去される。
【0041】
ラインヘッド10がジョブを実行せず待機する場合、ヘッド移動装置11は、ラインヘッド10をキャップ41に対向する位置に移動させる。キャップ41は、ラインヘッド10を覆う形状(容器状)となっている。キャップ41は、ノズルプレートを密封状態にする。密封状態にする理由は、ノズル近傍のインクの乾燥に伴う、ノズル近傍箇所の曲がり(反り)および欠損を防ぐためである。
【0042】
キャップ41に覆われたノズルプレートとキャップ底面との間には空間がある。この空間は、湿潤状態が保たれるように、保管液などで満たされている。保管液は、インクの溶媒が蒸発することを防ぐ組成であればよい。また、ノズルプレートがキャップ41で覆われているときに、パージ(インクを射出する)処理が行えるように、キャップ41の下には廃液タンク42が設置されている。キャップ41の底面には、配管(図示せず)が設けられている。また、インクジェットプリンター1には、廃液タンク42にパージしたインクを排出する機構も備わっている。
【0043】
なお、パージ処理が終了した後にヘッド移動装置11はクリーニング装置3に移動して、パージしたインクで汚れたノズルプレートをクリーニングすることもできる。
【0044】
図4は、ラインヘッド10を用紙搬送装置2側から視た図である。
図4に示されるように、ラインヘッド10は、X軸正方向側の端部(以下、「先端部102」と称する)と、X軸負方向側の端部(以下、「後端部103」と称する)とを備える。
【0045】
ラインヘッド10は、インクを用紙900に吐出するインク吐出面101を含む。詳しくは、ラインヘッド10は、用紙搬送装置2側(用紙900側)に、複数のヘッド部110を有する。
【0046】
ラインヘッド10では、ヘッド部110が、ラインヘッド10の長手方向(X軸方向)に複数個(
図4の例では5個)、かつ、短手方向(Y軸方向)に2列に並んでいる。なお、ラインヘッド10の長手方向は、用紙900の幅方向である。用紙900の幅方向とは、用紙900の搬送方向対して垂直な方向である。このような構成により、ラインヘッド10では、X軸方向に移動することなく、用紙900の用紙幅方向の全領域に対してインクを同時に吐出できる。用紙900には、インク吐出面101から吐出されたインクが付着する。
【0047】
詳しくは、各ヘッド部110の底面部には、ノズルプレート111が設けられている。ノズルプレート111は、複数のノズルの開口が形成されたノズル面111aを有する。具体的には、ラインヘッド10の長手方向において、複数のヘッド部110の各ノズル面111aが間隔を開けて並んでいる。
【0048】
本例では、インク吐出面101は、複数のノズル面111aを含んで構成されている。すなわち、インク吐出面101では、長手方向において、間隔を開けて並んだ複数のノズル面111aが設けられている。インク吐出面101は、X軸正方向側の端部(以下、「先端部101f」と称する)と、X軸負方向側の端部(以下、「後端部101r」と称する)とをさらに含む。
【0049】
ヘッド部110には、インク供給および回収用の配管(図示せず)が設けられている。ヘッド部110は、当該配管を通じて、インクを供給し循環させることができる。さらに、ヘッド部110には、インクにかかる圧力を制御する装置(図示せず)が設けられている。当該装置によって、ヘッド部110は、ノズル面(ノズル出口)でのインクメニスカス形成を行っている。パージ処理の際には、当該圧力を制御することよって、ノズル面111aからインクを排出させる。
【0050】
なお、上記においては、ラインヘッド10の長手方向に、間隔を開けて複数のヘッド部110が並んでいる構成を例に挙げたが、これに限定されるものではない。複数のヘッド部110が隣接した状態でラインヘッド10の長手方向に並んでいてもよい。
【0051】
<B.クリーニング装置>
図5は、クリーニング装置3のハードウェア構成を説明するための模式図である。
図5に示されるように、クリーニング装置3は、洗浄液付着装置5と、払拭装置6とを備える。本例では、ヘッド移動装置11によってラインヘッド10をX軸正方向(ラインヘッド10の長手方向)に移動させることにより、ラインヘッド10のインク吐出面101に洗浄液を付着させる。その後、インク吐出面101をウェブ32で払拭する。
【0052】
(b1.払拭装置)
払拭装置6は、ウェブ32を搬送するウェブ搬送装置30を有する。ウェブ搬送装置30は、バックアップローラー31と、駆動ローラー33と、搬送ローラー34a,34bと、ウェブ供給ローラー35と、ウェブ巻き上げローラー36とを含む。
【0053】
ウェブ32は、シート状をしている。ウェブ32は、木綿、化繊などの織物、編み物でもよい。また、ウェブ32は、不織布であってもよい。ウェブ32は、使用開始時には、ロール状で払拭装置6に設置される。ウェブ32は、ウェブ供給ローラー35から供給される。ウェブ32は、搬送ローラー34bと、バックアップローラー31と、搬送ローラー34aと、駆動ローラー33とを、この順に経て、ウェブ巻き上げローラー36に巻き上げられる。
【0054】
ウェブ32の移動(搬送)は、駆動ローラー33で行われる。駆動ローラー33は、ローラー対である。駆動ローラー33は、片側にモーター38a(
図11参照)が連結されている。
【0055】
ウェブ供給ローラー35は、駆動ローラー33でウェブ32が矢印995の方向に引っ張られることにより回転する。これにより、ウェブ32が払拭位置Jに供給される。ウェブ供給ローラー35の回転軸には、トルクリミッター(図示せず)が連結されている。払拭装置6では、トルクリミッターによって一定の動摩擦力を発生することにより、ウェブ32の張力を安定させている。また、トルクリミッターによって、ウェブ32を停止した際に慣性で回転し続けることを防止する。
【0056】
ウェブ巻き上げローラー36の回転軸には、モーター38b(
図11参照)が連結されている。さらに、モーター38bとウェブ巻き上げローラー36の回転軸との間には、トルクリミッター(図示せず)が備わっている。
【0057】
ウェブ巻き上げローラー36によって巻き上げられたウェブ32の表面速度が、実際のウェブ32の搬送速度(搬送ローラー34a,34bによるウェブ32の搬送速度)よりも速くなるように、ウェブ巻き上げローラー36を駆動するモーター38bの回転速度を設定する。このような設定を行うことにより、ウェブ巻き上げローラー36によって巻き上げられたウェブ32の堆積量(厚み)に関わらず、ウェブ32の搬送速度とウェブ巻き上げローラー36に巻き上げられたウェブの表面速度とが、トルクリミッターの働きで一定となる。
【0058】
なお、駆動ローラー33の駆動源(本例では、モーター38a)と、巻き上げローラーの駆動源(本例では、モーター38b)とは同一のモーターとしてもよい。
【0059】
クリーニング装置3では、ウェブ32でヘッド部110のノズルプレート111を払拭する場合、ノズルプレート111のノズル面111aに洗浄液を付着しておく。特に、ノズル面111aに付着したインクが乾燥して固着した場合にも、ノズル面111aに洗浄液を付着させておかないと、固着したインクを拭き取れない。それゆえ、クリーニング装置3では、複数のノズル面111aを有するインク吐出面101(
図4)に洗浄液を噴霧する。なお、洗浄液としては、様々な液体を用いることができるが、水でも構わない。水を用いることにより、洗浄液のコストを下げることができる。
【0060】
(b2.洗浄液付着装置)
洗浄液付着装置5は、ラインヘッド10のインク吐出面101に洗浄液を付着させる。洗浄液付着装置5は、インク吐出面101に洗浄液を供給する。詳しくは、洗浄液付着装置5は、噴霧装置50Aと、噴霧装置50B(
図6)と、噴霧装置50A,50Bの動作を制御する制御装置9A(
図11)とを備える。洗浄液付着装置5では、噴霧装置50Aと噴霧装置50BとがY軸方向に並んでいる(
図6)。
【0061】
噴霧装置50Aは、振動装置51と、多孔質体52と、洗浄液タンク53とを含む。洗浄液タンク53には、洗浄液54が蓄えられている。多孔質体52には、洗浄液タンク53の洗浄液54が含侵する。噴霧装置50Aは、多孔質体52に含侵された洗浄液54を高周波振動によりミスト状(小液滴粒子の集合体)にして、インク吐出面101に噴霧する。このように、噴霧装置50Aは、噴霧装置として機能する。なお、噴霧装置50A,50Bは、本発明の「噴出装置」の一例である。洗浄液タンク53は、本発明の「容器」一例である。
【0062】
図6は、
図5の洗浄液付着装置5を矢印VI方向から視た上面図である。詳しくは、
図6は、噴霧装置50A,50Bの上面図である。
図7は、
図6のVI-VI線矢視断面図である。
図7は、噴霧装置50Aの構造を説明するための部分断面図である。
【0063】
図6および
図7に示されるように、噴霧装置50Aは、振動装置51(
図7)と、多孔質体52と、洗浄液タンク53とに加えて、固定板55と、複数の固定部材56と、複数本のネジ57と、洗浄液供給口58と、センサー509とを備える。振動装置51は、複数の振動子51a,51b,51c,51dを含んで構成されている。複数の振動子51a,51b,51c,51dは、互いに同一の形状を有する。固定部材56は、典型的には、ネジである。
【0064】
本例では、振動子51aと、振動子51bと、振動子51cと、振動子51dとが、この順に、X軸正方向に向かって並んでいるものとする。すなわち、4つの振動子51a~51dのうち、振動子51dが、ウェブ搬送装置30に最も近い振動子とする。
【0065】
図7に示すとおり、多孔質体52は、一部が洗浄液タンク53から上方に飛び出している。本例では、多孔質体52は、洗浄液タンク53の内壁面のうちの底面まで達しない状態で、図示しない部材を用いて洗浄液タンク53に固定されている。なお、これに限定されず、多孔質体52は、洗浄液タンク53の内壁面のうちの底面まで達していてもよい。この場合、洗浄液タンク53に多孔質体52を固定するための部材は特に必要ではない。
【0066】
ラインヘッド10には、
図4に示したように、ヘッド部110が2列に並べられている。それゆえ、洗浄液付着装置5は、各々が互いに異なる1列のヘッド部110に対応した、2つの噴霧装置50A,50Bを有する。本例では、噴霧装置50Aと噴霧装置50Bとの各々において、4つの振動子51a~51dがラインヘッド10の搬送方向(X軸方向)に並んで配置されている。なお、振動子の大きさによっては、2つの噴霧装置50A,50Bを用いずに、1つの噴霧装置を用いてもよい。なお、噴霧装置50Bは、センサー509を備えていない点において、噴霧装置50Aと異なる。
【0067】
固定板55は、固定部材56によって、洗浄液タンク53に固定されている。固定板55は、振動子51a~51dの上方に設けられている。固定板55は、振動子51a~51dを洗浄液タンク53に対して位置決めする。詳しくは、固定板55のネジ穴に挿入される複数のネジ57によって振動子51a~51dが多孔質体52に押し付けられることにより、振動子51a~51dが位置決めされる。各振動子51a~51dは、当該位置にて振動する。
【0068】
固定板55には、振動子51a~51dに対向する位置に貫通穴59が形成されている。振動子51a~51dにより噴霧されたミストが貫通穴59を通過する。これにより、ミストを噴霧装置50A,50Bの上方(Z軸正方向)に噴き出させることができる。
【0069】
洗浄液供給口58から洗浄液タンク53に洗浄液54が供給される。センサー509は、ラインヘッド10の先端部102(
図4)と後端部103(
図4)とを検出するために利用される。なお、センサー509にて、インク吐出面101の先端部101fと後端部101rとを検出してもよい。
【0070】
上述したように複数の振動子51a,51b,51c,51dは互いに同一の形状を有するため、以下では、振動子51aに着目して説明する。
【0071】
図8は、振動子51aを
図7の矢印VIII方向から見た平面図である。
図9は、
図8のIX-IX線矢視断面図である。
図8および
図9に示すように、振動子51aは、圧電素子511と、振動板512とを備える。振動板512は、中央部5122と、中央部5122を囲う周辺部5121とを含む。
【0072】
圧電素子511は、中空円柱状である。圧電素子511は、中空円の端面511aと端面511aとは反対側の端面511b(
図9)とを有する。端面511bは、端面511aよりも、多孔質体52に近い。
【0073】
振動板512は、金属製の薄い円板である。すなわち、振動板512の外形は、円形である。振動板512は、圧電素子511の端面511bの少なくとも一部を覆うように配置されている。本例では、振動板512は、端面511bの全部を覆っている。詳しくは、振動板512は、圧電素子511に接着されている。
【0074】
振動板512は、第1面512aと、第1面512aとは反対側の第2面512bと有する。第1面512aが圧電素子511の端面511bに接着されている。第2面512bは、洗浄液を含んだ多孔質体52に接触している。
【0075】
振動板512の中央部5122は凸状になっている。詳しくは、中央部5122は、周辺部5121に対してZ軸正方向に凸状となっている。より詳しくは、中央部5122は、圧電素子511の内周面511cの方向に凸状である。
【0076】
振動板512の材質は、典型的には、ニッケル合金、鉄合金、アルミ合金である。振動板512の厚みは、50μm以上かつ500μm以下である。振動板512の外径は、圧電素子511の外径と概ね同じである。
【0077】
詳しくは、圧電素子511は、上面と底面との各々に電極(図示せず)を備える。本例では、端面511aと、端面511bとが、電極部分となっている。これらの電極に接続されている。高周波電圧を両電極間に印加することにより、圧電素子511は、Z軸方向(Z軸正方向およびZ軸負方向)へ伸縮する振動と、中空円の径方向に伸縮する振動とを生じる。
【0078】
圧電素子511は、典型的には、電極以外はセラミックで構成されている。圧電素子511は、典型的には、厚さ(z軸方向)が1~5mmであり、外径は10~30mmである。圧電素子511の固有振動数は、振動板512を備えた状態で30kHz~500kHzであればよい。
【0079】
図10は、主として、振動板512の要部を拡大した要部拡大図である。
図10に示すように、少なくとも中央部5122には、複数の貫通孔550が形成されている。中央部5122の全体にわたり、貫通孔550が形成されていてもよいし、中央部5122の一部(典型的には、中央部の中心付近の領域)のみに貫通孔550が形成されていてもよい。また、周辺部5121の一部にも貫通孔550が形成されていてもよい。
【0080】
貫通孔550は、微細孔である。貫通孔550の開口の面積は、1μm2以上かつ10000μm2以下であることが好ましい。開口の直径は、1μm以上かつ100μm以下であることが好ましい。なお、開口の直径が0.1μm~100μmであれば、ミストが発生する。
【0081】
振動板512には、1cm2当たり10個以上かつ10000個の貫通孔550が形成されている。貫通孔550の密度は、500個/cm2以上かつ5000個/cm2以下であることが好ましい。
【0082】
圧電素子511を高周波振動させることにより、振動板512の中央部5122がZ軸正方向およびZ軸負方向に振動する。本例では、各振動子51a~51dの固有振動数は、約100kHzである。振動板512が振動すると、振動板512の背面の洗浄液(多孔質体52の洗浄液)が各貫通孔550を通じて、洗浄液が、霧状の粒子(ミスト)となり空中へ散布される。
【0083】
詳しくは、振動板512の中央部5122が凸状になっているため、振動板512の上下方向(Z軸正方向およびZ軸負方向)の振動が安定する。これにより、均一なミストを発生させることが可能となる。なお、中央部が平面形状の場合には、振動の強弱分布が現れて、強く振動する場所と弱い場所とが出現するため、均一なミストは発生しない。
【0084】
(b3.ブロック図)
図11は、クリーニング装置3のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図11に示されるように、クリーニング装置3は、洗浄液付着装置5と、払拭装置6とを備える。
【0085】
洗浄液付着装置5は、噴霧装置50A,50Bと、制御装置9Aとを備える。噴霧装置50Aは、複数の振動子51a~51dと、洗浄液タンク53と、振動子駆動回路507と、センサー509とを有する。噴霧装置50Aは、複数の振動子51a~51dと、洗浄液タンク53と、振動子駆動回路507とを有する。
【0086】
制御装置9Aは、上述したように、噴霧装置50A,50Bの動作を制御する。具体的には、制御装置9Aは、噴霧装置50A,50Bの各々の振動子51a~51dの動作を制御する。
【0087】
振動子駆動回路507は、制御装置9Aからの指令に基づき動作する。振動子駆動回路507は、各振動子51a~51dの圧電素子511を個別に駆動する。典型的には、振動子駆動回路507では、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御が行われる。センサー509による検出結果は、制御装置9Aに送られる。
【0088】
払拭装置6は、ウェブ32と、ウェブ搬送装置30と、制御装置9Bとを備える。制御装置9Bは、ウェブ搬送装置30の動作を制御する。ウェブ搬送装置30は、バックアップローラー31と、駆動ローラー33と、搬送ローラー34a,34bと、ウェブ供給ローラー35と、ウェブ巻き上げローラー36とに加え、ローラー駆動装置37をさらに含む。ローラー駆動装置37は、上述したモーター38aと、モーター38aを駆動するモーター駆動回路39aと、上述したモーター38bと、モーター38bを駆動するモーター駆動回路39bとを有する。モーター駆動回路39a,39bは、制御装置9Bからの指令に基づき動作する。
【0089】
本例では、洗浄液付着装置5用の制御装置9Aと、払拭装置6用の制御装置9Bとが別々に設けられている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。クリーニング装置3用の1つの制御装置によって、振動子駆動回路507と、モーター駆動回路39a,39bとを制御してもよい。また、インクジェットプリンター1の全体の動作を制御する制御装置が、振動子駆動回路507と、モーター駆動回路39a,39bとを制御してもよい。
【0090】
<C.動作>
図12は、洗浄液54をラインヘッド10のインク吐出面101に付着させる工程の序盤部分を示した図である。
図13は、洗浄液54をラインヘッド10のインク吐出面101に付着させる工程の終盤部分を示した図である。なお、
図12および
図13では、便宜上、ミスト状になった洗浄液54(すなわち、霧)に対して、参照符号“800”を付与している。
【0091】
図12に示されるように、状態(A)は、ラインヘッド10がX軸正方向に移動することにより、洗浄液付着装置5のセンサー509(
図7)によってラインヘッド10の先端部102が検出される直前の状態を表した図である。
【0092】
図3等に示した状態からラインヘッド10がX軸方向に移動を開始した直後は、洗浄液付着装置5は、洗浄液54を噴霧しない。ラインヘッド10の先端部102が検出されたことを条件に、洗浄液付着装置5は、洗浄液54の噴霧を開始する。
【0093】
図12の状態(B)に示すように、ラインヘッド10の先端部102が振動子51aの上方に位置するときには、洗浄液付着装置5は、振動子51a~51d(
図7参照)のうち振動子51aのみから洗浄液54を噴霧する。すなわち、状態(B)では、洗浄液付着装置5は、振動子51b,51c,51dからは洗浄液54を噴霧しない。
【0094】
状態(C)に示すように、ラインヘッド10の先端部102が振動子51bの上方に位置するときには、洗浄液付着装置5は、2つの振動子51a,51bから洗浄液54を噴霧する。すなわち、状態(C)では、洗浄液付着装置5は、振動子51c,51dからは洗浄液54を噴霧しない。
【0095】
状態(D)に示すように、ラインヘッド10の先端部102が振動子51cの上方に位置するときには、洗浄液付着装置5は、3つの振動子51a,51b,51cから洗浄液54を噴霧する。すなわち、状態(C)では、洗浄液付着装置5は、振動子51dからは洗浄液54を噴霧しない。
【0096】
状態(E)に示すように、ラインヘッド10の先端部102が振動子51dの上方に位置するときには、洗浄液付着装置5は、全ての振動子51a,51b,51c,51dから洗浄液54を噴霧する。洗浄液付着装置5は、その後、所定の間、全ての振動子51a~51dからの洗浄液54の噴霧を継続する。
【0097】
図13に示されるように、状態(A)は、洗浄液付着装置5のセンサー509(
図7)によってラインヘッド10の後端部103が振動子51aの上方に位置する直前の状態を表した図である。状態(A)では、洗浄液付着装置5は、全ての振動子51a~51dから洗浄液54を噴霧している。
【0098】
状態(B)に示すように、ラインヘッド10の後端部103が振動子51bの上方に位置するときには、洗浄液付着装置5は、3つの振動子51b,51c,51dから洗浄液54を噴霧する。詳しくは、後端部103が振動子51bの上方に位置すると、洗浄液付着装置5は、振動子51aからの洗浄液54の噴霧を停止する。
【0099】
状態(C)に示すように、ラインヘッド10の後端部103が振動子51cの上方に位置するときには、洗浄液付着装置5は、2つの振動子51c,51dから洗浄液54を噴霧する。詳しくは、後端部103が振動子51cの上方に位置すると、洗浄液付着装置5は、振動子51bからの洗浄液54の噴霧をさらに停止する。
【0100】
状態(D)に示すように、ラインヘッド10の後端部103が振動子51dの上方に位置するときには、洗浄液付着装置5は、1つの振動子51dのみから洗浄液54を噴霧する。詳しくは、後端部103が振動子51dの上方に位置すると、洗浄液付着装置5は、振動子51cからの洗浄液54の噴霧をさらに停止する。
【0101】
状態(E)に示すように、ラインヘッド10の後端部103が振動子51dの上方を通過すると、洗浄液付着装置5は、振動子51dからの洗浄液54の噴霧をさらに停止する。これにより、全ての振動子51a~51dからの洗浄液54の噴霧が行われなくなる。
【0102】
噴霧装置50A,50Bから洗浄液54を噴出可能な長手方向(X軸方向)の最大長は、噴霧時間を短縮する観点から、ラインヘッド10のインク吐出面101の長手方向の長さの6%以上であることが好ましい。
【0103】
<D.小括>
(1)以上のように、洗浄液付着装置5は、ラインヘッド方式のインクジェットプリンター1におけるラインヘッド10のインク吐出面101(
図4)に洗浄液54を付着させるために、インク吐出面101に対向した状態でインク吐出面101に対して洗浄液54をミスト化して噴霧する噴霧装置50A,50Bと、噴霧装置50A,50Bの動作を制御する制御装置9A(
図11)とを備える。
【0104】
本例では、ラインヘッド10のX軸正方向への移動により、噴霧装置50A,50Bのラインヘッド10に対する相対位置がラインヘッド10の長手方向(X軸方向)に変化する。これにより、
図12および
図13に示したように、インク吐出面101における噴霧装置50A,50Bに対向する対向領域は長手方向に変化する。たとえばラインヘッド10の下面視(Z軸負方向側から正方向側を視て)において、インク吐出面101における噴霧装置50A,50Bに対向する対向領域は長手方向に連続的に変化する。
【0105】
制御装置9Aは、
図12の状態(B)~(D)および
図13の状態(B)~(D)に示すように、噴霧装置50A,50Bの一部がインク吐出面101に対向する状態のときには、噴霧装置50A,50Bのうちインク吐出面101に対向する部位(本例では、振動子51a~51dのうちの少なくとも1つ)から単位時間当たり所定量の洗浄液54を噴霧し、かつ、噴霧装置50A,50Bのうちインク吐出面101に対向しない部位(本例では、振動子51a~51dのうちの少なくとも1つ)から洗浄液54を噴霧しないように、噴霧装置50A,50Bを制御する。
【0106】
このような構成によれば、噴霧装置50A,50Bの一部がインク吐出面101に対向する状態において、噴霧装置50A,50Bのうちインク吐出面101に対向しない部位(以下、「非対向部位」とも称する)からは、洗浄液54を噴霧しないため、当該非対向部位からも洗浄液54を噴霧する構成に比べて、インクジェットプリンター1の機内に拡散してしまう洗浄液54の量を低減可能となる。
【0107】
さらに、噴霧装置50A,50Bの長手方向の長さを長くしても、インクジェットプリンター1の機内に拡散してしまう洗浄液54の量を低減できるため、インク吐出面101に洗浄液54を付着させるための時間を短くすることが可能となる。
【0108】
また、ラインヘッド10のX軸正方向への移動を停止することなく連続的に変化させることができるため、当該移動を一時的に停止させる構成に比べて短い時間で、インク吐出面101に洗浄液54を付着させることができる。
【0109】
(2)噴霧装置50A,50Bは、ラインヘッド10の長手方向に並んで配置された、洗浄液54をミスト化する複数の振動子51a~51dを有する。制御装置9Aは、各振動子51a~51dの動作を個別に制御する。
【0110】
このような構成によれば、噴霧装置50A,50Bのうちインク吐出面101に対向する部位(以下、「対向部位」とも称する)から洗浄液54を噴霧させる一方、非対向部位からは洗浄液54を噴霧させないようにできる。
【0111】
(3)制御装置9Aは、複数の振動子51a~51dのうち、インク吐出面101に対向する振動子のみを駆動させる。これにより、対向部位のみから洗浄液54を噴霧することができる。
【0112】
(4)
図9および
図10に示すように、各振動子51a~51dは、複数の貫通孔550が形成された振動板512と、振動板512を振動させる圧電素子511とを含む。制御装置9Aは、圧電素子511の駆動を制御する。これにより、噴霧装置50A,50Bは、洗浄液54をミスト化することができる。すなわち、噴霧装置50A,50Bは、洗浄液54をインク吐出面101に対して噴霧できる。
【0113】
(5)上記対向領域の上記長手方向(X軸方向)の最大長は、インク吐出面101の上記長手方向(X軸方向)の長さよりも短い。これによれば、ラインヘッド10のX軸正方向への移動により、噴霧装置50A,50Bのラインヘッド10に対する相対位置がラインヘッド10の長手方向(X軸方向)に変化する。
【0114】
(6)ラインヘッド10のX軸正方向への移動により、噴霧装置50A,50Bのラインヘッド10に対する相対位置がラインヘッド10の長手方向(X軸方向)に連続的に変化する。これにより、
図12および
図13に示したように、インク吐出面101における噴霧装置50A,50Bに対向する対向領域は長手方向に連続的に変化する。このような構成によれば、噴霧装置50A,50Bのラインヘッド10に対する相対位置が連続的に変化しない構成(途中で一旦停止する構成)に比べて、ラインヘッド10のクリーニングに要する時間を短くすることができる。
【0115】
<E.制御構造>
図14は、洗浄液付着装置5の制御の流れを示したフロー図である。
図14に示されるように、ラインヘッド10の動作を制御する制御装置によって、クリーニング開始が指示されると、当該制御装置は、ラインヘッド10のX軸正方向への移動を開始させる(ステップS1)。制御装置9A(
図11)は、噴霧装置50Aに設けられたセンサー509(
図7)によって、ラインヘッド10の先端部102がセンサー509の位置に到達したことを検知する(ステップS2)。
【0116】
制御装置9Aは、噴霧装置50Aにおけるセンサー509の位置および各振動子51a~51dの位置と、ラインヘッド10の移動速度とから、ラインヘッド10の先端部102が振動子51aの上方に到達する時間を算出する。制御装置9Aは、ラインヘッド10の先端部102が振動子51aの上方に到達する直前に、振動子51aを駆動する(ステップS3)。
【0117】
同様に、制御装置9Aは、ラインヘッド10の先端部102が振動子51bの上方に到達する時間を算出する。制御装置9Aは、ラインヘッド10の先端部102が振動子51bの上方に到達する直前に、振動子51bをさらに駆動する(ステップS4)。
【0118】
さらに、同様の手法によって、制御装置9Aは、ラインヘッド10の先端部102が振動子51cの上方に到達する直前に振動子51cをさらに駆動する(ステップS5)。その後、制御装置9Aは、ラインヘッド10の先端部102が振動子51dの上方に到達する直前に振動子51dをさらに駆動する(ステップS6)。
【0119】
以上の制御により、複数の振動子51a~51dのうち、ラインヘッド10のインク吐出面101(
図4)に対向する振動子のみを駆動することができる。したがって、インク吐出面101に対向していない振動子から洗浄液54を上方(Z軸正方向)に噴霧することを防止できる。
【0120】
なお、厳密には、洗浄液54を付着させる必要があるのは、ラインヘッド10のヘッド部110のノズルプレート111(より詳しくは、ノズル面111a)であるため、制御装置9Aは、ノズルプレート111の位置にあわせて、各振動子51a~51dの駆動を制御してもよい。このような構成によれば、洗浄液54の消費量をさらに削減できる。また、インクジェットプリンター1の機内にミストが拡散することをより一層防止できる。
【0121】
制御装置9B(
図11)は、制御装置9Aからセンサー509の検知結果を取得する。制御装置9Bは、検知結果に基づき、インク吐出面101の先端部101fが払拭位置J(
図5)に到達するタイミングを判断し、先端部101fが払拭位置Jに到達する前に、駆動ローラー33と巻き上げローラー36との駆動を開始する(ステップS7)。これにより、ウェブ32が駆動される。
【0122】
その後、インクジェットプリンター1は、ラインヘッド10の移動と、振動子51a~51dの駆動と、ウェブ32の駆動とを継続する。これにより、インク吐出面101(詳しくは、各ノズル面111a)は、付着量が均一な洗浄液が供給された状態で払拭される。
【0123】
なお、上記においては、全ての振動子51a~51dが駆動された後にウェブ32が駆動される例を説明した。しかしながら、これに限定されず、噴霧装置50A,50Bと払拭装置6との距離が近い場合、個々の振動子51a~51dの駆動開始の間(ステップS2以降、かつステップS6迄)に、ウェブ32の駆動を開始する必要がある。基本的には、制御装置9Bは、インク吐出面101の先端部101fが払拭位置Jに到達する前に、駆動ローラー33と、巻き上げローラー36との駆動を開始すればよい。
【0124】
制御装置9Aは、噴霧装置50A,50Bに対するラインヘッド10の後端部103の通過にあわせて、各振動子51a~51dの駆動を、この順に停止する(ステップS8~S11)。制御装置9Aは、ラインヘッド10の先端部102がセンサー509に到達したタイミングを元に、各振動子51a~51dの駆動停止のタイミングを算出すればよい。
【0125】
次いで、制御装置9Bは、インク吐出面101の後端部101rが払拭位置Jを通過した後に、駆動ローラー33と、巻き上げローラー36との駆動を停止する(ステップS12)。これにより、ウェブ32の搬送が停止する。ラインヘッド10が所定の位置まで移動したことが検知されると、ラインヘッド10の移動を制御する制御装置は、ラインヘッド10の移動を停止する(ステップS13)。以上により、一連のクリーニング処理が終了する。
【0126】
このような一連の制御により、複数の振動子51a~51dのうち、ラインヘッド10のインク吐出面101に対向する振動子のみを駆動することができる。したがって、インク吐出面101に対向していない振動子から洗浄液54を上方(Z軸正方向)に噴霧することを防止できる。詳しくは、ラインヘッド10の後端部103が噴霧装置50A,50Bに非対向状態にあるにも関わらず、ミスト化した洗浄液54が上方に噴霧されることを防止できる。
【0127】
上記においては、ラインヘッド10の先端部102の到達を基準に、各振動子51a~51dの駆動を開始したが、これに限定されるものではない。インク吐出面101の先端部101f(
図4)の到達を基準に、各振動子51a~51dの駆動を開始してもよい。あるいは、X軸方向に一列に並んだ複数のヘッド部110のうち先頭のヘッド部110(
図4において、各列の最も右側のヘッド部110)の移動方向側の端部110f(
図4)の到達を基準に、各振動子51a~51dの駆動を開始してもよい。あるいは、当該先頭のヘッド部110のノズル面111aの到達を基準に、各振動子51a~51dの駆動を開始してもよい。
【0128】
同様に、各振動子51a~51dの駆動の停止についても、インク吐出面101の後端部101r(
図4)の通過、複数のヘッド部110のうち後端のヘッド部110(
図4において、各列の最も左側のヘッド部110)の通過、または、当該後端のヘッド部110のノズル面111aの通過を基準としてもよい。
【0129】
<F.具体例>
各々が、中央部5122の直径が3mmの振動板512と、内径が8mmの圧電素子511とで構成される振動子51a~51dを用い、各振動子51a~51dの上面とノズル面111aとの距離を25mmとし、電圧70V、周波数100kHzの高周波電圧を印加した場合、各振動子51a~51dを15mm間隔で設けるとインク吐出面101(詳しくは、ノズル面111a)に均一にミストを供給できる。
図6のように、4つの振動子51a~51dを一列に並べると、ラインヘッド10の長手方向(X軸方向)における洗浄液54の供給幅は60mmとなる。
【0130】
ラインヘッド10の長手方向の長さを500mm、ラインヘッド10の先頭のヘッド部110の移動方向側の端部110f(
図4参照)と払拭位置Jとの距離を300mmとすると、ラインヘッド10に含まれる全てのヘッド部110をクリーニングするには、ラインヘッド10は、X軸正方向に、約800mm移動する必要がある。ラインヘッド10の移動速度を10mm/sとすると、クリーニングするために必要な時間は、少なくとも80秒必要となる。
【0131】
本例のように、4つの振動子51a~51dをラインヘッド10の長手方向に一列並べ、かつ、ラインヘッド10を10mm/sで移動させた場合、各ノズル面111aに十分な洗浄液が供給可能であるため、ノズル面111a上のインクをクリーニングできる。仮に、上記条件で振動子の数を1個だけ減らして3個(たとえば、振動子51a,51b,51c)とした場合、ノズル面111aへの洗浄液54の供給量が不足し、クリーニング残が生じる。
【0132】
クリーニング時間を短くするにはラインヘッド10の移動速度を速くすればよいが、速くすると払拭に必要な洗浄液54の供給量が減少し、クリーニング残が生じる。それを補うためには、振動子の数を増やせばよい。たとえば、クリーニング時間を短くするために、ラインヘッド10を20mm/sで移動させる場合、8個の振動子を一列に並べればよい。このようにすることでクリーニングに必要な時間を短くでき、生産性向上につながる。
【0133】
振動子の数を増やす代わりに単位時間当たりに発生するミスト量を増やすことも考えられる。しかしながら、振動子の数を増やすことには限界があり、数を増やす方が効果的である。
【0134】
ラインヘッド10の移動速度を5mm/sとした場合、振動子は2個でよい。ただし、この場合、クリーニングに必要な時間は、少なくとも160秒必要となる。クリーニングに必要な時間が長くなると、インクジェットプリンターの生産性が低下するため、クリーニング性を確保する観点からラインヘッド10の移動速度を遅くすることは好ましくない。
【0135】
<G.変形例>
(1)上記においては、センサー509を用いてラインヘッド10の先端部102を検知する場合について述べたが、これに限定されない。制御装置9Aは、ラインヘッド10を駆動するモーター(図示せず)の制御信号から、ラインヘッド10の先端部102の位置を算出してもよい。同様に、制御装置9Aは、当該制御信号から、ラインヘッド10の後端部103の位置を算出してもよい。なお、制御装置9Aは、当該制御信号から、先頭のヘッド部110(あるいはノズル面111a)の位置と、後端のヘッド部110(あるいはノズル面111a)の位置も算出可能である。
【0136】
(2)一般的に、
図4に示したように、ヘッド部110の幅(X軸方向の幅)よりもノズルプレート111の幅の方が狭い。さらに、本例のように、ラインヘッド10の移動方向(X軸方向)に対して、ヘッド部110が間隔を置いて設けられている場合(
図4)、互いに隣り合うヘッド部110同士のノズルプレート111間の距離が広くなる。すなわち、互いに隣り合うノズル面111a同士の間の距離が広くなる。このような場合、制御装置9Aは、ノズルプレート111同士の間の領域に対して洗浄液54を噴霧しないように、振動子の動作を一時的に停止してもよい。この場合にも、制御装置9Aは、各振動子51a~51dを個別に駆動することが好ましい。
【0137】
特に、ノズルプレート111間の距離が1つの振動子が供給するミストの幅(X軸方向の幅)以上ある場合に、上記の制御を行うことが好ましい。このような構成によれば、洗浄液54の消費をさらに低減できる。
【0138】
このように、振動子51a~51dのうち、インク吐出面101のうちのノズル面111aに対向している振動子から洗浄液54を噴霧するように、洗浄液付着装置5を構成すればよい。
【0139】
(3)上記においては、
図12の状態(B)~(D)および
図13の状態(B)~(D)に示すように噴霧装置50A,50Bの一部がインク吐出面101に対向する状態のときには、噴霧装置50A,50Bの対向部位(本例では、振動子51a~51dのうちの少なくとも1つ)から単位時間当たり所定量の洗浄液54を噴霧し、かつ、噴霧装置50A,50Bのうちインク吐出面101に対向しない非対向部位(本例では、振動子51a~51dのうちの少なくとも1つ)から洗浄液54を噴霧しないように、噴霧装置50A,50Bを制御した。すなわち、インク吐出面101に対向しない部位からの洗浄液54の噴霧量をゼロとした。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0140】
噴霧装置50A,50Bの一部がインク吐出面101に対向する状態のときに、噴霧装置50A,50Bの非対向部位(本例では、振動子51a~51dのうちの少なくとも1つ)から、上記所定量よりも少ない量の洗浄液54を噴霧してもよい。すなわち、制御装置9Aが、噴霧装置50A,50Bの一部がインク吐出面101に対向する状態のときには、噴霧装置50A,50Bの非対向部位よりも多くの量の洗浄液54を噴霧装置50A,50Bの対向部位から噴出するように、噴霧装置50A,50Bを制御する構成であればよい。
【0141】
たとえば、振動子51a~51dのうち振動子51a~51cがインク吐出面101に対向し、振動子51dがインク吐出面101に対向しないときには、制御装置9Aは、振動子51a~51cから単位時間当たりに所定量の洗浄液54が噴霧され、振動子51dから当該単位時間当たりに所定量よりも少ない量の洗浄液54が噴霧されるように、各振動子51a~51dを制御すればよい。なお、各振動子51a~51dに供給される電圧および/または周波数を変えることにより、発生するミストの量を少なくすることができる。
【0142】
(4)上記においては、複数の振動子51a~51dの制御を個別に行う場合について説明したが、これに限定されるものではない。ラインヘッド10の移動速度が速い場合、洗浄液54の供給量を確保する観点から、連続する2つ以上の振動子を含むグループ単位で、振動子の動作を制御してもよい。たとえば、制御装置9Aは、振動子51aと振動子51bとを同じタイミングで動作させ、その後、振動子51cと振動子51dとを同じタイミングで動作させてもよい。
【0143】
(5)各振動子51a~51dとして、複数の貫通孔を設けた振動板512と、圧電素子511とを備えた構成について説明したが、これに限定されるものではない。洗浄液タンク53の中に、ラインヘッド10の長手方向に複数の圧電素子を設け、制御装置9Aにより当該圧電素子を個別に駆動してもよい。
【0144】
(6)上記においては、洗浄液54をミスト状して噴出する構成を例に挙げて説明した。すなわち、洗浄液54を噴霧する構成を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。洗浄液54をミスト化せずに、インク吐出面101に対して吐出する構成であってもよい。
【0145】
(7)上記においては、上記長手方向に並んだ複数のヘッド部110によって、ラインヘッド10を構成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。単一のヘッド部によってラインヘッド10を構成していもよい。
【0146】
(8)上記においては、ラインヘッド方式のインクジェットプリンター1について説明した。すなわち、インクジェットプリンター1が長尺ヘッドの一例としてラインヘッド10を備える構成を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではない。シリアルヘッド方式のインクジェットプリンターに対しても、シリアルヘッドが長尺ヘッドである限り、上述した噴霧処理を適用できる。なお、「シリアルヘッド方式」とは、ヘッドを用紙などの記録材上で左右に高速で往復移動させ、少しずつ記録材を送って記録材全体に印刷する方式である。
【0147】
(9)制御装置9Aは、噴霧装置50A,50Bの一部がインク吐出面101に対向する状態のときには、噴霧装置50A,50Bのうちインク吐出面101に対向する部位(対向部位)から単位時間かつ単位面積当たり所定量(第1の量)の洗浄液を噴出し、かつ、噴霧装置50A,50Bのうちインク吐出面101に対向しない部位(非対向部位)から当該単位時間かつ単位面積当たり上記第1の量よりも少ない第2の量の洗浄液を噴出するように、噴霧装置50A,50Bを制御してもよい。
【0148】
(10)上記においては、インク吐出面101を払拭部材の一例であるウェブ32で払拭する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、払拭部材として、ウェブ32の代わりに弾性ブレードを用いてもよい。
【0149】
(11)上記においては、インクジェットプリンター1が、ラインヘッド10の個数だけ、クリーニング装置3を有する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、クリーニング装置3を1つとし、当該1つのクリーニング装置3を移動させることにより各ラインヘッド10をクリーニングするように、インクジェットプリンター1を構成してもよい。
【0150】
(12)上記においては、複数のラインヘッド10が1つのヘッド移動装置11に設けられている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。複数のヘッド移動装置11を有し、かつ、複数のラインヘッド10の各々が互いに異なるヘッド移動装置11に設けられるように、インクジェットプリンター1を構成してもよい。たとえば、インクの色毎に、個別のヘッド移動装置11を備えていてもよい。このような構成によれば、複数のラインヘッド10のうち、クリーニングが必要なラインヘッド10のみをクリーニングすることができる。
【0151】
[実施の形態2]
本実施の形態に係るインクジェットプリンターについて説明する。
図15は、本実施の形態のインクジェットプリンター1Aの要部を説明するための図である。
図15に示されるように、インクジェットプリンター1Aは、洗浄液付着装置5Aを備える。インクジェットプリンター1Aは、洗浄液付着装置5の代わりに洗浄液付着装置5Aを備える点において、実施の形態1のインクジェットプリンター1と異なる。以下では、洗浄液付着装置5Aについて説明する。
【0152】
<A.洗浄液付着装置>
洗浄液付着装置5Aは、噴霧装置50Cと、制御装置9A(
図11)とを備える。本例では、制御装置9Aは、噴霧装置50Cの動作を制御する。噴霧装置50Cは、シャッター機構200を含む。シャッター機構200は、幕201と、駆動ローラー202,203とを有する。噴霧装置50Cは、噴霧装置50Aと同様に、センサー509(
図15では図示せず)を有する。なお、センサー509は、センサー509から上方(Z軸正方向)へ照射される光と当該光の反射光とが、幕201によって遮られない位置に取り付けられる。
【0153】
駆動ローラー202が矢印996の方向に回転すると、幕201が駆動ローラー202に巻き取られる。この場合、駆動ローラー203は、幕201の移動に伴い、矢印997の方向に回転する。駆動ローラー203が矢印997とは反対の方向に回転すると、幕201が駆動ローラー203に巻き取られる。この場合、駆動ローラー202は、幕201の移動に伴い、矢印996とは反対の方向に回転する。
【0154】
洗浄液タンク53は、駆動ローラー202側の端部531と、駆動ローラー203側の端部532とを備える。洗浄液タンク53には、洗浄液54が蓄えられている。洗浄液タンク53には、上方に開口Pが形成されている。幕201によって、開口Pを覆うことができる。
【0155】
洗浄液タンク53内には、洗浄液54に浸かる位置に振動子205が設置されている。本例では、振動子205として、10kHz以上かつ20MHz以下の範囲で駆動される圧電素子が用いられる。振動子205の振動により洗浄液54の液面から洗浄液54のミストが発生する。本例では、振動子の数を1個としている。
【0156】
洗浄液タンク53の開口Pのラインヘッド10の長手方向の長さ(X軸方向の長さ)は、ノズル面111aに供給される洗浄液54の量が確保できる長さとしている。開口Pのラインヘッド10の短手方向の長さ(Y軸方向の長さ)は、インク吐出面101の短手方向の長さと略同一である。
【0157】
なお、実施の形態1のように、2つの噴霧装置50A,50Bを用いて1つのインク吐出面101に洗浄液54を付着させる場合には、噴霧装置50A,50Bのように、噴霧装置50Cを2つ並べればよい。この場合、開口Pのラインヘッド10の短手方向の長さ(Y軸方向の長さ)は、インク吐出面101の短手方向の長さの略半分とすればよい。1つの噴霧装置50Cでラインヘッド10に対して洗浄液54を付着させる場合には、開口Pのラインヘッド10の短手方向の長さを、インク吐出面101の短手方向の長さと略同一とすればよい。
【0158】
図16は、幕201の構成を示した図である。
図16に示されるように、幕201には、所定の位置に開口Qが形成されている。本例では、開口Qは、容器の開口Pと同じ形状を有する。幕201は、駆動ローラー202側の開口端Qaと、駆動ローラー203側の開口端Qbとを備える。
【0159】
幕201は、駆動ローラー202が矢印996(
図15)の方向に回転すると、開口Qは、矢印998の方向に移動する。幕201は、本例では、合成樹脂等を薄い膜状に成型したフィルムである。
【0160】
幕201の移動により、上面視において、開口Qが洗浄液タンク53の開口P(
図15)に重なると、噴霧装置50Cは、重なった領域からミスト状の洗浄液54を幕201の上方に噴霧することができる。幕201は、インクジェットプリンター1Aでの画像形成時には開口Qが開口Pに重ならないように、駆動ローラー202または駆動ローラー203によって巻き取られている。幕201は、ラインヘッド10のインク吐出面101のクリーニング時に、開口Qの全部または一部が開口Pに重なるように、駆動ローラー202によって矢印998の方向に搬送される。なお、幕201の開口Qの位置もセンサー(図示せず)で検知することができるため、制御装置9Aは、開口Qの位置調整が可能である。
【0161】
<B.動作>
図17は、洗浄液54をラインヘッド10のインク吐出面101に付着させる工程の序盤部分を示した図である。
図18は、洗浄液54をラインヘッド10のインク吐出面101に付着させる工程の終盤部分を示した図である。なお、
図17および
図18では、実施の形態1の
図12および
図13と同様に、ミスト状になった洗浄液54(すなわち、霧)に対して、参照符号“800”を付与している。
【0162】
図17に示されるように、状態(A)は、ラインヘッド10がX軸正方向に移動することにより、洗浄液付着装置5Aのセンサー509によってラインヘッド10の先端部102が検出される直前の状態を表した図である。少なくとも状態(A)では、制御装置9Aは、振動子205を駆動し、洗浄液タンク53内を、洗浄液をミスト化した霧800で満たしておく。この場合、幕201の開口端Qa(
図16)を、洗浄液タンク53の端部532上に位置させておく。すなわち、開口端Qaを端部532に重ならせる。
【0163】
ラインヘッド10の先端部102が検出されると、制御装置9Aは、幕201を移動させる。詳しくは、制御装置9Aは、先端部102が洗浄液タンク53の端部532を通過するタイミングで、駆動ローラー202を駆動させることにより、幕201の移動を開始する。
【0164】
より詳しくは、制御装置9Aは、幕201を駆動ローラー202によって矢印998の方向に移動させて開口Qの開口Pへの重なり領域を制御する。状態(B),状態(C)に示すように、制御装置9Aは、ラインヘッド10の上面視において、ラインヘッド10の先端部102と、幕201の開口端Qa(
図16)とのX軸方向の位置が一致するように、駆動ローラー202の駆動を制御する。すなわち、制御装置9Aは、幕201を、ラインヘッド10の移動速度と同じ速度で移動させる。
【0165】
その後、ラインヘッド10の先端部102が洗浄液タンク53の端部531に到達すると、制御装置9Bは、幕201の移動を停止させる。これにより、状態(D)に示すように、開口Qの全体が開口Pに重なった状態となる。この状態においても、制御装置9Aは、振動子205を駆動し続ける。なお、ラインヘッド10は、一定速度で移動を続けている。
【0166】
図18に示されるように、ラインヘッド10の後端部103が洗浄液タンク53の端部532に到達すると、制御装置9Bは、幕201の移動を再開する。状態(A),状態(B)に示すように、制御装置9Aは、ラインヘッド10の上面視において、ラインヘッド10の後端部103と、幕201の開口端Qb(
図16)とのX軸方向の位置が一致するように、駆動ローラー202の駆動を制御する。
【0167】
その後、状態(C)に示すように、ラインヘッド10の後端部103が洗浄液タンク53の端部531に到達すると、制御装置9Bは、幕201の移動を停止させる。さらに、制御装置9Aは、振動子205の駆動を停止させる。状態(C)では、洗浄液タンク53の開口Pが幕201で塞がれるため、ミスト化した洗浄液54が外部に漏れることを防止できる。
【0168】
以上の一連の制御により、噴霧装置50Cは、インク吐出面101に対向した部位からのみ、ミスト化した洗浄液54(霧800)を噴霧することが可能となる。さらに、ミスト化した洗浄液54が、インクジェットプリンター1Aの機内に拡散することを防止できる。また、噴霧装置50Cは、1つの振動子205しか備えないため、複数の振動子を制御する構成に比べて、振動子の制御を簡素化できる。
【0169】
なお、クリーニング動作が終了した後、次回のクリーニング動作に向けて駆動ローラー203を矢印997と反対の方向に回転させて幕201を巻き戻してもよい。あるいは、幕201に、幕の長手方向に、互いに間隔を開けて複数の開口Qを連続して形成しておき、駆動ローラー202の回転によって次の開口Qを利用してもよい。幕201を巻き戻して使用する場合には、駆動ローラー202,203と、駆動ローラー202,203を駆動するモーター(図示せず)との連結部にワンウェイクラッチを設け、駆動ローラー202,203が当該モーターの回転とは逆方向に回転できるようにしておくことが必要となる。
【0170】
<C.小括>
以上のように、制御装置9Aは、幕201をラインヘッド10の長手方向に移動させて開口Qの開口Pへの重なり領域を制御することにより、インク吐出面101に対向するの部位(対向部位)から洗浄液54を噴霧させ、かつ、インク吐出面101に対向しない部位(非対向部位)からは洗浄液を噴霧させないようにする。
【0171】
このような構成によれば、噴霧装置50Cの一部がインク吐出面101に対向する状態において、噴霧装置50Cの非対向部位からは、洗浄液54を噴霧しないため、当該非対向部位からも洗浄液54を噴霧する構成に比べて、インクジェットプリンター1Aの機内に拡散してしまう洗浄液54の量を低減可能となる。
【0172】
<D.制御構造>
図19は、洗浄液付着装置5Aの制御の流れを示したフロー図である。
図19に示されるように、ラインヘッド10の動作を制御する制御装置によって、クリーニング開始が指示されると、当該制御装置は、ラインヘッド10のX軸正方向への移動を開始させる(ステップS21)。その後、制御装置9Aは、振動子205を駆動させる(ステップS22)。次いで、制御装置9Aは、噴霧装置50Cに設けられたセンサー509によって、ラインヘッド10の先端部102がセンサー509の位置に到達したことを検知する(ステップS23)。
【0173】
先端部102を検知すると、制御装置9Aは、ラインヘッド10の先端部102と同期して、駆動ローラー202の駆動を開始する(ステップS24)。開口端Qaが洗浄液タンク53の駆動ローラー202側の端部531に到達すると、制御装置9Aは、駆動ローラー202の駆動を停止させる(ステップS25)。
【0174】
その後、ラインヘッド10の上面視において、ラインヘッド10の後端部103と、幕201の開口端QbとのX軸方向が同期するように、駆動ローラー202の駆動を再開する(ステップS26)。制御装置9Aは、開口端Qbが洗浄液タンク53の駆動ローラー202側の端部531を通過すると、駆動ローラー202の駆動を停止させる(ステップS27)。その後、制御装置9Aは、振動子205の駆動を停止させる(ステップS28)。
【0175】
ラインヘッド10が所定の位置まで移動したことが検知されると、ラインヘッド10の移動を制御する制御装置は、ラインヘッド10の移動を停止する(ステップS29)。以上により、一連のクリーニング処理が終了する。
【0176】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0177】
1,1A インクジェットプリンター、2 用紙搬送装置、3 クリーニング装置、4 ヘッド待機部、5,5A 洗浄液付着装置、6 払拭装置、9A,9B 制御装置、10 ラインヘッド、11 ヘッド移動装置、20 搬送ベルト、21 従動ローラー、22,33,202,203 駆動ローラー、30 ウェブ搬送装置、31 バックアップローラー、32 ウェブ、34a,34b 搬送ローラー、35 ウェブ供給ローラー、36 ローラー、37 ローラー駆動装置、38a,38b モーター、39a,39b モーター駆動回路、41 キャップ、42 廃液タンク、50A,50B,50C 噴霧装置、51 振動装置、51a,51b,51c,51d,205 振動子、52 多孔質体、53 洗浄液タンク、54 洗浄液、55 固定板、56 固定部材、57 ネジ、58 洗浄液供給口、59 貫通穴、101 インク吐出面、101f,102 先端部、101r,103 後端部、110 ヘッド部、110f,531,532 端部、111 ノズルプレート、111a ノズル面、200 シャッター機構、201 幕、507 振動子駆動回路、509 センサー、511 圧電素子、511a,511b 端面、511c 内周面、512 振動板、512a 第1面、512b 第2面、550 貫通孔、800 霧、900 用紙、5121 周辺部、5122 中央部、J 払拭位置、P,Q 開口、Qa,Qb 開口端。