(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112070
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016911
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】東 大介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将喜
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB02
2G084BB05
2G084BB14
2G084BB29
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD55
2G084HH08
2G084HH23
2G084HH24
2G084HH30
2G084HH34
2G084HH42
2G084HH52
2G084HH54
(57)【要約】
【課題】簡便な構成により、処理室内のプラズマ状態を十分に確認することができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマ処理装置(1,201)は、少なくとも1つのアンテナ(71~73)と、プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部(PD1~PD5)と、を備え、複数の受光部は、少なくとも1つのアンテナが延びる第1方向に沿って配置された第1受光部(PD1)および第2受光部(PD2)を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にプラズマを発生させる少なくとも1つのアンテナと、
プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、を備え、
前記複数の受光部は、前記少なくとも1つのアンテナが延びる第1方向に沿って配置された第1受光部および第2受光部を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアンテナの接地側端部に接続された、インピーダンスが可変である接地側インピーダンス調整部と、
前記第1受光部が検出する第1発光強度および前記第2受光部が検出する第2発光強度に基づき、前記接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御する制御部と、をさらに備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアンテナは、第1アンテナおよび第2アンテナを備え、
前記複数の受光部は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが並ぶ第2方向に沿って配置された、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ対応する第3受光部および第4受光部をさらに備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナの接地側端部にそれぞれ接続されたインピーダンスが可変である複数の接地側インピーダンス調整部と、
前記第1アンテナまたは前記第2アンテナの高周波電源側端部に接続されたインピーダンスが可変である給電側インピーダンス調整部と、
(i)前記第1受光部が検出する第1発光強度および前記第2受光部が検出する第2発光強度に基づき、前記複数の接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御し、(ii)前記第3受光部が検出する第3発光強度および前記第4受光部が検出する第4発光強度に基づき、前記給電側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御する制御部と、をさらに備える、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナに高周波電力をそれぞれ供給する第1高周波電源および第2高周波電源と、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナの接地側端部にそれぞれ接続されたインピーダンスが可変である複数の接地側インピーダンス調整部と、
(i)前記第1受光部が検出する第1発光強度および前記第2受光部が検出する第2発光強度に基づき、前記複数の接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御し、(ii)前記第3受光部が検出する第3発光強度および前記第4受光部が検出する第4発光強度に基づき、前記第1高周波電源または前記第2高周波電源が供給する高周波電力を制御する制御部と、をさらに備える、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記複数の受光部は、前記プラズマ生成領域の発光強度として、前記真空容器に付着していた物質に起因する気体の発光強度を検出し、
前記制御部は、前記複数の受光部のうちのある受光部が検出する発光強度が、前記複数の受光部のうちの別の受光部が検出する発光強度より高い場合、前記ある受光部に対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度が、前記別の受光部に対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度より高くなるように制御する、請求項2、4、5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
真空容器内にプラズマを発生させる第1アンテナおよび第2アンテナと、
プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、を備え、
前記複数の受光部は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが並ぶ第2方向に沿っ
て配置された、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ対応する第3受光部および第4受光部を備える、プラズマ処理装置。
【請求項8】
真空容器内にプラズマを発生させる少なくとも1つのアンテナと、
プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、
前記アンテナの接地側端部に接続されたインピーダンスが可変である接地側インピーダンス調整部と、を備え、
前記複数の受光部は、前記アンテナが延びる第1方向に沿って配置された第1受光部および第2受光部を備える、プラズマ処理装置の制御方法であって、
前記第1受光部により、前記第1受光部に対応するプラズマ生成領域の第1発光強度を検出する第1検出ステップと、
前記第2受光部により、前記第2受光部に対応するプラズマ生成領域の第2発光強度を検出する第2検出ステップと、
前記第1発光強度および前記第2発光強度に基づき、前記接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御する制御ステップと、を含むプラズマ処理装置の制御方法。
【請求項9】
真空容器内にプラズマを発生させる第1アンテナおよび第2アンテナと、
プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、を備え、
前記複数の受光部は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが並ぶ第2方向に沿って配置された、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ対応する第3受光部および第4受光部を備える、プラズマ処理装置の制御方法であって、
前記第3受光部により、前記第3受光部に対応するプラズマ生成領域の第3発光強度を検出する第3検出ステップと、
前記第4受光部により、前記第4受光部に対応するプラズマ生成領域の第4発光強度を検出する第4検出ステップと、
前記第3発光強度および前記第4発光強度に基づき、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ供給される高周波電力を制御する制御ステップと、を含むプラズマ処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理室(真空容器)内に設けられたアンテナに高周波電流を流すことにより誘導結合型のプラズマを発生させて基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置が知られている。このようなプラズマ処理装置において、処理室内のプラズマ状態を検出する様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、処理室内に形成されるプラズマの発光状態をプラズマ発光状態検出部により検出し、当該プラズマ発光状態検出部の検出情報に基づいてアンテナ回路の特性を調節するプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に係るプラズマ状態検出部は、基板のセンター部およびエッジ部に対応する位置に設けられており、基板のセンター部およびエッジ部のプラズマ発光状態を検出している。このような構成では、プラズマ状態検出部は、例えば基板の一辺に沿った方向におけるプラズマ発光状態を監視することはできない。すなわち、特許文献1においては、処理室内におけるプラズマの面内分布を十分に確認できないといった問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、簡便な構成により、処理室内のプラズマ状態を十分に確認することができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプラズマ処理装置は、真空容器内にプラズマを発生させる少なくとも1つのアンテナと、プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、を備え、前記複数の受光部は、前記少なくとも1つのアンテナが延びる第1方向に沿って配置された第1受光部および第2受光部を備える。
【0007】
また、前記プラズマ処理装置は、前記少なくとも1つのアンテナの接地側端部に接続された、インピーダンスが可変である接地側インピーダンス調整部と、前記第1受光部が検出する第1発光強度および前記第2受光部が検出する第2発光強度に基づき、前記接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0008】
また、前記少なくとも1つのアンテナは、第1アンテナおよび第2アンテナを備え、前記複数の受光部は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが並ぶ第2方向に沿って配置された、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ対応する第3受光部および第4受光部をさらに備えてもよい。
【0009】
また、前記プラズマ処理装置は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナの接地側端部にそれぞれ接続されたインピーダンスが可変である複数の接地側インピーダンス調整部と、前記第1アンテナまたは前記第2アンテナの高周波電源側端部に接続されたインピーダンスが可変である給電側インピーダンス調整部と、(i)前記第1受光部が検出する第1発光
強度および前記第2受光部が検出する第2発光強度に基づき、前記複数の接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御し、(ii)前記第3受光部が検出する第3発光強度および前記第4受光部が検出する第4発光強度に基づき、前記給電側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0010】
また、前記プラズマ処理装置は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナに高周波電力をそれぞれ供給する第1高周波電源および第2高周波電源と、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナの接地側端部にそれぞれ接続されたインピーダンスが可変である複数の接地側インピーダンス調整部と、(i)前記第1受光部が検出する第1発光強度および前記第2受光部が検出する第2発光強度に基づき、前記複数の接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御し、(ii)前記第3受光部が検出する第3発光強度および前記第4受光部が検出する第4発光強度に基づき、前記第1高周波電源または前記第2高周波電源が供給する高周波電力を制御する制御部と、をさらに備えてもよい。
【0011】
また、前記複数の受光部は、前記プラズマ生成領域の発光強度として、前記真空容器に付着していた物質に起因する気体の発光強度を検出し、前記制御部は、前記複数の受光部のうちのある受光部が検出する発光強度が、前記複数の受光部のうちの別の受光部が検出する発光強度より高い場合、前記ある受光部に対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度が、前記別の受光部に対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度より高くなるように制御してもよい。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプラズマ処理装置は、真空容器内にプラズマを発生させる第1アンテナおよび第2アンテナと、プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、を備え、前記複数の受光部は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが並ぶ第2方向に沿って配置された、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ対応する第3受光部および第4受光部を備える。
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプラズマ処理装置の制御方法は、真空容器内にプラズマを発生させる少なくとも1つのアンテナと、プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、前記アンテナの接地側端部に接続されたインピーダンスが可変である接地側インピーダンス調整部と、を備え、前記複数の受光部は、前記アンテナが延びる第1方向に沿って配置された第1受光部および第2受光部を備える、プラズマ処理装置の制御方法であって、前記第1受光部により、前記第1受光部に対応するプラズマ生成領域の第1発光強度を検出する第1検出ステップと、前記第2受光部により、前記第2受光部に対応するプラズマ生成領域の第2発光強度を検出する第2検出ステップと、前記第1発光強度および前記第2発光強度に基づき、前記接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを制御する制御ステップと、を含む。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプラズマ処理装置の制御方法は、真空容器内にプラズマを発生させる第1アンテナおよび第2アンテナと、プラズマ生成領域の発光強度を検出する複数の受光部と、を備え、前記複数の受光部は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが並ぶ第2方向に沿って配置された、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ対応する第3受光部および第4受光部を備える、プラズマ処理装置の制御方法であって、前記第3受光部により、前記第3受光部に対応するプラズマ生成領域の第3発光強度を検出する第3検出ステップと、前記第4受光部により、前記第4受光部に対応するプラズマ生成領域の第4発光強度を検出する第4検出ステップと、前記第3発光強度および前記第4発光強度に基づき、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナにそれぞれ供給される高周波電力を制御する制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、簡便な構成により、処理室内のプラズマ状態を十分に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の正面断面図である。
【
図4】上記プラズマ処理装置の監視装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】上記プラズマ処理装置の受光部とアンテナ回路との配置関係を模式的に示す図である。
【
図6】上記監視装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】上記監視装置が実行する処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図8】上記監視装置が実行する処理のさらに他の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るプラズマ処理装置の受光部とアンテナ回路との配置関係を模式的に示す図である。
【
図10】上記監視装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
図1は、1つのアンテナ7を含む切断面でプラズマ処理装置1を切断した正面断面図である。
図2は、複数のアンテナ71~73がそれぞれ延びる方向に垂直な切断面でプラズマ処理装置1を切断した側面断面図である。
図3は、受光部PDを含む切断面でプラズマ処理装置1を切断した上面断面図である。なお、
図3において、プラズマ処理装置1を上面視した場合におけるプラズマ処理装置1内のステージ6および複数のアンテナ71~73の位置についても仮想的に示している。まず、プラズマ処理装置1の概略構成について
図1~
図3を参照して以下に説明する。
【0018】
<プラズマ処理装置1の構成>
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、筐体2と、フランジ3と、真空カバー4と、アンテナカバー5と、ステージ6と、アンテナ7と、高周波電源8と、受光部PDと、インピーダンス調整部と、監視装置10とを備える。プラズマ処理装置1では、アンテナ7に高周波電源8から高周波電圧を印加することにより、アンテナ7に高周波電流が流れる。これにより、筐体2内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマが生成される。プラズマ処理装置1は、このような誘導結合型のプラズマを用いて、筐体2内に配置された基板Wに所定のプラズマ処理を施すものである。
【0019】
ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブル基板などである。また、基板Wに施すプラズマ処理は、例えば、プラズマCVD(Chemical
Vapor Deposition;化学気相堆積)法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッ
タリングなどである。
【0020】
なお、このプラズマ処理装置1は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0021】
また、プラズマ処理装置1は、誘導結合型のプラズマを用いて、プラズマ処理後に筐体2の側壁に付着した物質をクリーニングするクリーニング処理を施すこともできる。
【0022】
図2および
図3に示すように、プラズマ処理装置1には、複数のアンテナ71~73(第1アンテナ71、第2アンテナ72および第3アンテナ73)が並んで設けられている。ここで、複数のアンテナ71~73を特に区別する必要がない場合は、単にアンテナ7と称する。後述する真空カバー4及びアンテナカバー5は、アンテナ7毎に設置されている。以下、プラズマ処理装置1において、アンテナ7が設けられている側を上方、ステージ6が設けられている側を下方と称する。また、複数のアンテナ7がそれぞれ延びる方向を左右方向(第1方向)、複数のアンテナ7が並ぶ方向を前後方向(第2方向)と称する。なお、本実施形態では、プラズマ処理装置1に3つのアンテナである第1アンテナ71、第2アンテナ72および第3アンテナ73が設けられている一例を示しているが、アンテナ7の数としてはこれに限定されない。
【0023】
また、
図3に示すように、プラズマ処理装置1には、プラズマ生成領域HAの発光強度を検出する複数の受光部PD1~PD5が設けられている。ここで、複数の受光部PD1~PD5を特に区別する必要がない場合は、単に受光部PDと称する。
【0024】
<筐体2>
筐体2は、基板Wに対して上記所定のプラズマ処理を行う処理室を構成するための筐体本体2aを備える。筐体本体2aは、上側が開口した箱体状の部材である。
【0025】
筐体本体2aの開口部(筐体開口部2b)には、複数の開口部を有するフランジ3が気密に取り付けられている。フランジ3の複数の開口部は、真空カバー4によって閉塞される。換言すれば、筐体2の上面側において、フランジ3及び真空カバー4が取り付けられた場合、筐体開口部2bは、フランジ3及び真空カバー4によって閉塞される。このように、フランジ3及び真空カバー4がそれぞれ筐体本体2a及びフランジ3に気密に取り付けられることにより、筐体2は、上記処理室を含んだ真空容器を構成する。
【0026】
また、筐体開口部2bの内部に後述するアンテナカバー5を取り付けることによって、当該筐体2の内部空間が画定されてプラズマ生成領域HAが筐体本体2aの内部に形成される。このプラズマ生成領域HAの内部には、ステージ6及び当該ステージ6に支持された基板Wが配置されるようになっており、プラズマ生成領域HAが上記処理室を実質的に構成している。換言すれば、筐体2では、アンテナカバー5により、プラズマ生成領域HAとプラズマ非生成領域(後述するアンテナ収容空間AK)とが互いに区切られている。
【0027】
また、
図1に示すように、筐体2では、真空ポンプPOが筐体本体2aに連結されている。プラズマ生成領域HAの内部は、真空ポンプPOにより少なくともプラズマ処理の際に所定の真空度とされる。
【0028】
また、筐体2は、上記所定のプラズマ処理に対応した処理ガスを、所定の真空度となったプラズマ生成領域HA(処理室)の内部に導入する処理ガス供給部(図示せず)を備えてもよい。処理ガスの雰囲気下で当該プラズマ処理が行われるようになっている。なお、処理ガスは、例えば、アルゴン、水素、窒素、シラン、メタン、酸素、または三フッ化窒素である。
【0029】
<フランジ3>
フランジ3は、例えば、互いに対向する2つの第1辺部3a(
図2)と、第1辺部3aに直交するとともに、互いに対向する2つの第2辺部3b(
図1)と、を有する矩形状の枠体を備える。また、フランジ3は、例えば、上記枠体の内側において一方の第2辺部3bから他方の第2辺部3bにわたって設けられた、第3辺部3c及び第4辺部3dを備える。換言すれば、これらの第3辺部3c及び第4辺部3dの各両端部は、第2辺部3bに連続して形成されている。第3辺部3c及び第4辺部3dは、2つの第1辺部3aの間に
おいて、第1辺部3aと平行となるように形成されていてよい。
【0030】
また、第1辺部3a、第2辺部3b、第3辺部3c、及び第4辺部3dはそれぞれ、筐体開口部2b側に突出する後述の突出部を有していてよい。以下、第1辺部3a、第2辺部3b、第3辺部3c、及び第4辺部3dを、辺部3hと総称する。
【0031】
<真空カバー4>
また、プラズマ処理装置1には、筐体開口部2bを閉塞する真空カバー4が、当該筐体開口部2bに脱着可能に取り付けられるように構成されている。ここで、フランジ3は、上記処理室の外部から当該処理室の内部に向かう方向において筐体開口部2bの開口面積を段階的に小さくするように形成された突出部を有していてよい。例えば、第1辺部3a、第3辺部3c及び第4辺部3dのそれぞれは、筐体開口部2bの内部において、真空カバー4の周縁部を係止するように突出する第1の支持部を有していてよい。第1の支持部は上記突出部の一部であってよい。また、真空カバー4は、外側カバーの一例であり、第2辺部3bの上面に当接するとともに、第1辺部3a、第3辺部3c、及び第4辺部3dにおける第1の支持部の上面に当接して支持される。真空カバー4は、例えば、金属製である。
【0032】
<アンテナカバー5>
また、プラズマ処理装置1には、アンテナカバー5が筐体開口部2bの内部にてフランジ3に対し取り外し可能に支持されている。具体的には、アンテナカバー5は、
図1及び
図2に示すように、例えば、断面U字状に構成されたアンテナ収容部5aを備える。また、アンテナカバー5は、カバー支持部5bと、カバー開口部5cとを備える。アンテナカバー5は、例えば、アルミナなどの誘電材料を用いて構成されており、誘電性を有する内側カバーを構成している。
【0033】
アンテナ収容部5aは、アンテナ7の形状に対応するように形成されている。アンテナ収容部5aは、アンテナ7が取り付けられた状態において、アンテナ7の外周面の一部を覆うような形状に構成されている。
【0034】
カバー支持部5bは、断面U字状のアンテナ収容部5aの2つの端部から連続的に形成されるとともに、アンテナ収容部5aの端部から外向きに張り出すように形成された鍔部である。つまり、カバー支持部5bは、外向きフランジ形状を有する。
【0035】
ここで、例えば、フランジ3の辺部3hは、筐体開口部2bの内部において、アンテナカバー5の周縁部を係止するように突出する第2の支持部を有していてよい。第2の支持部は、上記突出部の一部であり、上記第1の支持部よりも筐体開口部2bの内部側に突出している(突出長が大きい)。アンテナカバー5が筐体開口部2bの内部に支持された状態において、カバー支持部5bは、フランジ3の辺部3h(の上記第2の支持部)によって支持される。
【0036】
カバー開口部5cは、アンテナ収容部5aによって囲まれて形成された開口である。カバー開口部5cは、真空カバー4側に開口するように設けられている。
【0037】
また、筐体2には、少なくとも真空カバー4及びアンテナカバー5によって囲まれたアンテナ収容空間AKが形成されている。このアンテナ収容空間AKは、包囲空間の一例であり、誘導結合性のプラズマを発生させるためのアンテナ7が収容されている。但し、このアンテナ収容空間AKには、その空間の大きさがアンテナ7によるプラズマを維持することができない大きさに設定されているため、プラズマ非生成領域として機能する。
【0038】
<アンテナ7>
図1に示すように、アンテナ7は、長尺の直線状部と、当該直線状部の両端において上方に屈曲する屈曲部とを有する。アンテナ7は、例えば、円筒状に構成されるとともに、銅などの金属材料を用いて構成されている。また、アンテナ7の一方の端部及び他方の端部は、それぞれアンテナ絶縁部41a及び41bを介して真空カバー4に電気的に絶縁された状態で設けられており、筐体2の外部に気密に引き出されている。
【0039】
アンテナ7の一方の端部は、高周波電源8から供給される高周波電力を受け取る。アンテナ7の他方の端部は、電気的に接地されている。以下、アンテナ7の一方の端部及び他方の端部をそれぞれ給電側端部7a及び接地側端部7b(高周波電源側端部)と称する。アンテナ7の給電側端部7aには整合回路9及び給電側可変コンデンサVCa(給電側インピーダンス調整部)が接続されている。アンテナ7の接地側端部7bには接地側可変コンデンサVCb(接地側インピーダンス調整部)が接続されている。以下、給電側可変コンデンサVCaおよび接地側可変コンデンサVCbを可変コンデンサVCと総称する。なお、複数のアンテナ71~73のうち1つのアンテナには、給電側可変コンデンサVCaが接続されていなくてもよい。すなわち、本実施形態では、3つのアンテナ71~73のうち少なくとも2つのアンテナに、給電側可変コンデンサVCaが接続されていればよい。また、可変コンデンサVCは、インピーダンスが可変であるインピーダンス調整部の一例であり、これに限定されるものではない。
【0040】
高周波電源8は、例えば、13.56MHzの高周波電力を整合回路9及び給電側可変コンデンサVCaを介して給電側端部7aに供給する。また、監視装置10は、接地側可変コンデンサVCbの容量を変更することにより、アンテナ7に高周波電力が効率的に供給されるように制御する。
【0041】
<受光部PD>
図1に示すように、受光部PDは、筐体本体2aの側面において、プラズマ生成領域HAの発光強度を検出可能な高さ位置に配置される。受光部PDは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を含む。受光部PDは、筐体本体2aの側面に形成されたビューポート(貫通孔)を介してプラズマ生成領域HAのプラズマからの発光を当該撮像素子により受光することにより、プラズマ生成領域HAの発光強度を検出する。
【0042】
図3に示すように、受光部PDは、左右方向(複数のアンテナ71~73がそれぞれ延びる方向)に沿って配置された複数の受光部を備える。本実施形態では、当該複数の受光部は、2つの受光部、すなわち第1受光部PD1および第2受光部PD2である。第1受光部PD1および第2受光部PD2は、筐体本体2aの前後側面に設けられる。例えば、第1受光部PD1および第2受光部PD2はそれぞれ、筐体本体2aの前後側面における複数のアンテナ71~73の左右端部に対応する位置に設けられてもよい。この場合、第1受光部PD1および第2受光部PD2はそれぞれ、上面視において複数のアンテナ71~73の左右端部に対応する位置を含むプラズマ生成領域HAの発光強度を検出する。また、第1受光部PD1および第2受光部PD2は、複数のアンテナ71~73の左右方向中央部の位置から等距離となるように筐体本体2aの前後側面に設けられてもよい。
【0043】
また、受光部PDは、前後方向(複数のアンテナ71~73が並ぶ方向)に配置された、複数のアンテナにそれぞれ対応する複数の受光部を備えてもよい。本実施形態では、当該複数の受光部は、複数のアンテナ71~73にそれぞれ対応した3つの受光部、すなわち第3受光部PD3、第4受光部PD4および第5受光部PD5である。第3受光部PD3、第4受光部PD4および第5受光部PD5は、筐体本体2aの左右側面に設けられる。例えば、第3受光部PD3、第4受光部PD4および第5受光部PD5はそれぞれ、筐
体本体2aの左右側面における第1アンテナ71、第2アンテナ72および第3アンテナ73の延長線上に対応する位置に設けられてもよい。この場合、第1アンテナ71、第2アンテナ72および第3アンテナ73はそれぞれ、上面視において第1アンテナ71、第2アンテナ72および第3アンテナ73に沿った位置を含むプラズマ生成領域HAの発光強度を検出する。
【0044】
上記の構成によれば、受光部PDは、プラズマ生成領域HAにおけるプラズマの面内分布を検出することができる。
【0045】
特に、受光部PDは、第1受光部PD1および第2受光部PD2を備えることにより、複数のアンテナ71~73がそれぞれ延びる左右方向におけるプラズマの分布(以下、プラズマ左右分布と称する)を検出することができる。後述するように、プラズマ左右分布は、接地側インピーダンス調整部のインピーダンスを調整することで制御可能である。すなわち、受光部PDは、プラズマ面内分布を制御するための情報としてプラズマ左右分布を検出することができる。したがって、プラズマ処理装置は、左右方向に沿って複数の受光部を設けるといった簡便な構成により、処理室内のプラズマ状態を十分に確認することができる。
【0046】
また、受光部PDは、第3受光部PD3、第4受光部PD4および第5受光部PD5を備えることにより、複数のアンテナ71~73が並ぶ前後方向におけるプラズマの分布(以下、プラズマ前後分布と称する)を検出することができる。後述するように、プラズマ前後分布は、給電側インピーダンス調整部のインピーダンスを調整することで制御可能である。すなわち、受光部PDは、プラズマ面内分布を制御するための情報としてプラズマ前後分布を検出することができる。したがって、プラズマ処理装置は、前後方向に沿って複数の受光部を設けるといった簡便な構成により、処理室内のプラズマ状態を十分に確認することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、受光部PDが上記第1受光部PD1~第5受光部PD5を備える一例を示しているが、受光部PDの構成としてはこれに限定されない。例えば、受光部PDは、左右方向に沿って配置された複数の受光部のみを備えてもよい。また、受光部PDは、前後方向に沿って配置された複数の受光部のみを備えてもよい。また、本実施形態では、左右方向に沿って配置された複数の受光部の数を2としているが、これに限定されない。また、本実施形態では、前後方向に沿って配置された複数の受光部の数をアンテナ7の数に応じて3としているが、これに限定されない。
【0048】
<監視装置10>
図4は、監視装置10の要部構成を示すブロック図である。
図4に示すように、監視装置10は、取得部11、記憶部12、および制御部13を備える。制御部13は、算出部131、判定部132、および調整制御部133を備える。
【0049】
取得部11は、監視対象であるプラズマの発光スペクトルを含む、受光部PDが受光した光のスペクトルデータ(分光データ)を取得する。取得部11は、取得した当該スペクトルデータを制御部13の算出部131に出力する。記憶部12は、監視装置10が使用する各種データを記憶する。
【0050】
算出部131は、スペクトルデータから、所定の波長帯域における波長スペクトル(つまり、監視対象であるプラズマの発光スペクトル)のピーク値、またはピーク近傍における積分値をプラズマの発光強度として算出する。ここで、第1受光部PD1~第5受光部PD5から取得したスペクトルデータに基づいて算出部131が算出した、監視対象であるプラズマの発光強度をそれぞれ、第1受光部PD1~第5受光部PD5が検出した第1
発光強度I1~第5発光強度I5と称する。
【0051】
プラズマ処理装置1が上記プラズマ処理を施す場合、監視対象であるプラズマの発光スペクトルは、上記プラズマ処理の材料に対応する波長スペクトルとなる。例えば、アモルファスシリコンの成膜を基板Wに施す場合、算出部131は、プラズマ状態のシリコンに対応する波長252nm付近におけるピーク値、またはピーク近傍における積分値を算出する。
【0052】
プラズマ処理装置1が上記クリーニング処理を施す場合、監視対象であるプラズマの発光スペクトルは、処理室に付着していた物質に起因する気体に対応する波長スペクトルとなる。例えば、処理室の壁面にシリコンが付着している場合、処理室に三フッ化窒素が供給される。処理室に供給された三フッ化窒素はアンテナ7からの誘導電界によりプラズマ状態となり、当該プラズマ状態の三フッ化窒素と壁面に付着したシリコンとが反応する。これにより、処理室に付着していた物質に起因する気体としてプラズマ状態のフッ化シリコンの気体が発生する。算出部131は、プラズマ状態のフッ化シリコンに対応する波長441nm付近におけるピーク値、またはピーク近傍における積分値を算出する。
【0053】
判定部132は、第1受光部PD1~第5受光部PD5が検出した第1発光強度I1~第5発光強度I5に基づき、プラズマ面内分布が適切か否かを判定する。プラズマ処理装置1が上記プラズマ処理を施す場合、判定部132は、プラズマ面内分布(発生するプラズマ密度)が均一か否かを判定する。プラズマ処理装置1が上記クリーニング処理を施す場合、判定部132は、より高いプラズマ発光強度を検出した受光部PDを判定する。判定部132による具体的な判定方法については、
図5~
図10を参照して後述する。
【0054】
調整制御部133は、判定部132の判定結果に基づき可変コンデンサVCの容量を制御する。具体的には、調整制御部133は、左右方向に沿って配置された複数の受光部がそれぞれ検出する発光強度に基づき、上記接地側可変コンデンサVCbの容量(接地側インピーダンス調整部のインピーダンス)を制御する。本実施形態では、調整制御部133は、第1受光部PD1が検出する第1発光強度I1および第2受光部PD2が検出する第2発光強度I2に基づき、上記接地側可変コンデンサVCbの容量を制御する。ここで、接地側可変コンデンサVCbの容量を調整することにより、アンテナ7に流れる高周波電流の長さ方向(左右方向)における分布を制御できることが分かっている。したがって、プラズマ処理装置1は、接地側可変コンデンサVCbの容量を変更することにより、少なくともプラズマ左右分布を制御することができる。
【0055】
また、調整制御部133は、前後方向に沿って配置された複数の受光部がそれぞれ検出する発光強度に基づき、上記給電側可変コンデンサVCaの容量(給電側インピーダンス調整部のインピーダンス)を制御する。本実施形態では、調整制御部133は、第3受光部PD3が検出する第3発光強度I3、第4受光部PD4が検出する第4発光強度I4および第5受光部PD5が検出する第5発光強度I5に基づき、上記給電側可変コンデンサVCaの容量を制御する。少なくとも、1つのアンテナを除くアンテナ7(すなわち、本実施形態では、3つのアンテナ71~73のうち少なくとも2つのアンテナ)に接続された給電側可変コンデンサVCaの容量を調整することにより、各アンテナ7に流れる高周波電流を相対的に制御することができる。実際の複数のアンテナ7は、個体差を有し得る。したがって、仮に各アンテナ7に同じ大きさの高周波電流を流したときに発生するプラズマ密度に差異があった場合においても、プラズマ処理装置1は、給電側可変コンデンサVCaの容量を調整することにより、プラズマ前後分布を制御することができる。なお、本実施形態では、第3受光部PD3~第5受光部PD5が検出する第3発光強度I3~第5発光強度I5に基づき、3つのアンテナ71~73に接続された給電側可変コンデンサVCaの容量を制御する場合について説明する。
【0056】
また、プラズマ処理装置1が上記プラズマ処理を施す場合、調整制御部133は、プラズマ生成領域におけるプラズマ密度のばらつきを小さくするように制御してもよい。この場合の具体的な制御方法については、
図5~
図10を参照して後述する。
【0057】
また、プラズマ処理装置1が上記クリーニング処理を施す場合、調整制御部133は、より高いプラズマ発光強度を検出した受光部PDに対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度が高くなるように制御してもよい。例えば、複数の受光部PD1~PD5のうちのある受光部PDaが検出する発光強度が、複数の受光部PD1~PD5のうちの別の受光部PDbが検出する発光強度より高いとする。この場合、調整制御部133は、ある受光部PDaに対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度を増加させるよう可変コンデンサVCを制御することで、該プラズマ密度が、別の受光部PDbに対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度より高くなるようにする。
【0058】
また、プラズマ処理装置1が上記クリーニング処理を施す場合、調整制御部133は、より低いプラズマ発光強度を検出した受光部PDに対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度が低くなるように制御してもよい。例えば、複数の受光部PD1~PD5のうちのある受光部PDaが検出する発光強度が、複数の受光部PD1~PD5のうちの別の受光部PDbが検出する発光強度より低いとする。この場合、調整制御部133は、ある受光部PDaに対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度を減少させるよう可変コンデンサVCを制御することで、該プラズマ密度が、別の受光部PDbに対応するプラズマ生成領域において発生するプラズマ密度より低くなるようにする。
【0059】
上記の構成によれば、処理室の付着量の分布に基づき、発生するプラズマの分布を制御できる。具体的には、処理室の付着量が多く、高い強度のプラズマを発光する領域において、プラズマ密度を高くすることができる。同様に、処理室の付着量が少なく、低い強度のプラズマを発光する領域において、プラズマ密度を低くすることができる。したがって、プラズマ処理装置1は、効率よくクリーニング処理を実施できる。また、クリーニングが完了した処理室の内壁へのプラズマによるダメージを抑制できる。
【0060】
なお、
図4に示した監視装置10の構成要素のうち、制御部13は必須の要素ではない。監視装置10は、少なくとも筐体2の内部に生じたプラズマを監視する(すなわち、受光部PDが検出したスペクトルデータを取得する)機能を有していればよい。この場合、例えば、監視装置10が取得したスペクトルデータに基づき、ユーザがインピーダンス調整部のインピーダンスを調整してもよい。
【0061】
また、受光部PDが検出する光のスペクトルデータに対して、監視対象であるプラズマの発光スペクトルが支配的である場合、取得部11は、プラズマからの発光を分光したスペクトルデータを取得する必要はない。この場合、取得部11は、受光部PDが検出する光の発光強度をプラズマの発光強度として取得する。
【0062】
<プラズマ処理装置1の動作例>
以下、
図5および
図6を参照して、本実施形態1のプラズマ処理装置1の動作例の一例について具体的に説明する。
図5は、プラズマ処理装置1の受光部PDとアンテナ回路との配置関係を模式的に示す図である。以下、
図5に示すようなプラズマ処理装置1において、監視装置10が実行する種々の動作例について、
図6~
図8を参照して説明する。なお、以下の説明では、プラズマ処理装置1が上記プラズマ処理を施す場合について説明する。
【0063】
図5に示すように、第kアンテナの給電側端部7aおよび接地側端部7bにはそれぞれ
、第k給電側可変コンデンサVCakおよび第k接地側可変コンデンサVCbkが接続されている(k=1,2,3)。第1受光部PD1および第2受光部PD2はそれぞれ、複数のアンテナ71~73の左右端部に対応する位置に設けられている。第3受光部PD3、第4受光部PD4および第5受光部PD5はそれぞれ、第1アンテナ71、第2アンテナ72および第3アンテナ73の延長線上に対応する位置に設けられている。
【0064】
プラズマ処理装置1は、プラズマ処理の開始時に、高周波電源8からアンテナ7に高周波電圧を印加し、アンテナ7に高周波電流を流す。これにより、処理室内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマが生成される。監視装置10は、複数の受光部PD1~PD5がそれぞれ検出する、当該プラズマの第1発光強度I1~第5発光強度I5を監視する。監視装置10は、第1発光強度I1および第2発光強度I2に基づき、接地側インピーダンス調整部のインピーダンス(接地側可変コンデンサVCbの容量)を制御する。また、監視装置10は、第3発光強度I3~第5発光強度I5に基づき、第1アンテナ71~第3アンテナ73にそれぞれ供給される高周波電力を制御する。本実施形態では、監視装置10は、給電側インピーダンス調整部のインピーダンス(給電側可変コンデンサVCaの容量)を制御することで、上記高周波電力を制御する。
【0065】
図6は、監視装置10が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、S1では、判定部132が、受光部PDの検出結果に基づき、以下の第1条件を満たすか否かを判定する。
第1条件:Max{I3/Ave(I3,I4,I5),I4/Ave(I3,I4,I5),I5/Ave(I3,I4,I5)}>Max{I1/Ave(I1,I2),I2/Ave(I1,I2)}
上記第1条件を満たすとき(S1でYES)、処理はS2に進む。上記第1条件を満たさないとき(S1でNO)、処理はS3に進む。ここで、上記第1条件における「I3/Ave(I3,I4,I5)」は、第3発光強度I3を第3発光強度I3~第5発光強度I5の平均値により規格化した値である。なお、第3発光強度I3は、例えば記憶部12に格納された参照用の発光強度により規格化されてもよい。その他の発光強度についても同様である。
【0066】
S2(制御ステップ)では、調整制御部133が、Max(I3,I4,I5)が下がるように給電側可変コンデンサVCaを制御する。例えば、Max(I3,I4,I5)=I3である場合(すなわち、第3発光強度I3~第5発光強度I5のうち第3発光強度I3が最も大きい場合)、調整制御部133は、第1給電側可変コンデンサVCa1の容量を調整すればよい。
【0067】
S3(制御ステップ)では、調整制御部133が、Max(I1,I2)が下がるように接地側可変コンデンサVCbを制御する。例えば、Max(I3,I4,I5)=I3である場合、調整制御部133は、第1接地側可変コンデンサVCb1の容量を調整すればよい。
【0068】
調整制御部133による可変コンデンサVCの制御の後、S4では、判定部132が、以下の第2条件を満たすか否かを判定する。
第2条件:σ
3,4,5<5%かつσ
1,2<5%
上記第2条件を満たすとき(S4でYES)、判定部132は、プラズマ面内分布が均一になったとみなし、処理は終了する。上記第2条件を満たさないとき(S4でNO)、処理はS1に戻る。すなわち、監視装置10は、上記第2条件を満たすまで可変コンデンサVCを制御する。ここで、上記第2条件におけるσ
3,4,5は、第3発光強度I3~第5発光強度I5のばらつきを示す値であり、例えば以下の式で定義される。なお、第3発光強度I3~第5発光強度I5のばらつきを示す値としてはこれに限定されず、例えば第
3発光強度I3~第5発光強度I5の標準偏差であってもよい。
【数1】
同様に、上記第2条件におけるσ
1,2は、第1発光強度I1、第2発光強度I2のばらつきを示す値であり、例えば以下の式で定義される。
【数2】
【0069】
図7は、監視装置10が実行する処理の他の例を示すフローチャートである。
図7に示すように、S11では、算出部131が、受光部PDの検出結果に基づき算出した発光強度のばらつきσ
3,4,5、σ
1,2、および最大発光強度I
Maxを記憶部12に記憶させる。なお、最大発光強度I
Maxは、Max{I3/Ave(I3,I4,I5),I4/Ave(I3,I4,I5),I5/Ave(I3,I4,I5)}およびMax{I1/Ave(I1,I2),I2/Ave(I1,I2)}のいずれか大きい方である。
【0070】
S12(制御ステップ)では、調整制御部133が、6つの可変コンデンサVCa1,VCa2,VCa3,VCb1,VCb2,VCb3の容量またはリアクタンスを個別に所定の増減幅だけ変更する。例えば、給電側可変コンデンサVCaについて、所定の増減幅は、給電側可変コンデンサVCaの最大容量または最大容量時のリアクタンスの±σ3,4,5/2%である。例えば、接地側可変コンデンサVCbについて、所定の増減幅は、接地側可変コンデンサVCbの最大容量または最大容量時のリアクタンスの±σ1,2/2%である。このとき、調整制御部133は、最大発光強度IMaxの減少量が一番大きかった可変コンデンサVCを特定する。なお、所定の増減幅は、固定値であってもよい。
【0071】
例えば、σ1,2=10%である場合、所定の増減幅は、±σ1,2/2%=±5%となる。そのため、VCb1、VCb2、およびVCb3の変更前の容量がそれぞれ500pF、600pF、および700pFであった場合、調整制御部133は、VCb1の容量値を475pFおよび525pFに、VCb2の容量値を570pFおよび630pFに、VCb3の容量値を665pFおよび735pFに個別に変更する。仮に、VCb2の容量値を570pFに変更(その他の可変コンデンサの容量値は保持)したときにIMaxの減少量が一番大きかった(すなわち、調整制御部133は、S12において、VCb2を特定した)とする。この場合、調整制御部133は、S13において、VCb2の容量値を570pFに変更し、その他の可変コンデンサの容量値は保持する。
【0072】
S13では、調整制御部133は、特定した可変コンデンサVCの容量またはリアクタンスを上記増減幅だけ変更する。
【0073】
S14では、可変コンデンサVCの容量またはリアクタンスの変更後、発光強度のばらつきσ3,4,5およびσ1,2を更新する。すなわち、算出部131は、可変コンデンサVCの容量またはリアクタンスの変更後の受光部PDの検出結果に基づきσ3,4,5およびσ1,2を算出する。
【0074】
S15では、判定部132が、更新後のσ3,4,5およびσ1,2について、上記第2条件を満たすか否かを判定する。上記第2条件を満たすとき(S13でYES)、処理
は終了する。上記第2条件を満たさないとき(S13でNO)、処理はS11に戻る。すなわち、監視装置10は、上記第2条件を満たすまで可変コンデンサVCを制御する。
【0075】
図8は、監視装置10が実行する処理のさらに他の例を示すフローチャートである。
図8に示すように、S21では、判定部132が、以下の第3条件を満たすか否かを判定する。
第3条件:σ
3,4,5<5%
上記第3条件を満たすとき(S21でYES)、処理はS23に進む。上記第3条件を満たさないとき(S21でNO)、処理はS22を介してS23に進む。
【0076】
S22(制御ステップ)では、
図6におけるS2と同様に、調整制御部133が、Max(I3,I4,I5)が下がるように給電側可変コンデンサVCaを制御する。
【0077】
調整制御部133による給電側可変コンデンサVCaの制御の後、S23では、判定部132が、以下の第4条件を満たすか否かを判定する。
第4条件:σ1,2<5%
上記第4条件を満たすとき(S23でYES)、処理はS25に進む。上記第3条件を満たさないとき(S23でNO)、処理はS24を介してS25に進む。
【0078】
S24(制御ステップ)では、
図6におけるS3と同様に、調整制御部133が、Max(I1,I2)が下がるように接地側可変コンデンサVCbを制御する。
【0079】
調整制御部133による接地側可変コンデンサVCbの制御の後、S25では、判定部132が再び、上記第3条件を満たすか否かを判定する。上記第3条件を満たすとき(S25でYES)、処理は終了する。上記第3条件を満たさないとき(S25でNO)、処理はS21に戻る。すなわち、監視装置10は、上記第3条件および上記第4条件をともに満たすまで(すなわち、上記第2条件を満たすまで)可変コンデンサVCを制御する。
【0080】
以上のように、監視装置10は、上記第2条件を満たすまで可変コンデンサVCを制御する。これにより、監視装置10は、複数のアンテナ71~73それぞれに流れる高周波電流および各アンテナ7における長手方向の電流分布を調整することで、処理室内のプラズマ密度のばらつきを小さくすることができる。すなわち、処理室内のプラズマ面内分布を均一な状態に近づけることができる。
【0081】
また、監視装置10は、受光部PDによりプラズマからの発光を直接監視している。そのため、監視装置10は、処理室内のプラズマ状態を精度良く監視することができる。
【0082】
また、本実施形態において、仮にアンテナ7の数を増やした場合においても、プラズマ左右分布を検出する受光部PDの数を増やす必要はない。そのため、本実施形態において、アンテナの数を増やすことによる受光部PD(検出部)の必要数の増加を抑制することができる。
【0083】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0084】
図9は、実施形態2に係るプラズマ処理装置201の受光部PDとアンテナ回路との配置関係を模式的に示す図である。実施形態2に係るプラズマ処理装置201は、第1アンテナ71、第2アンテナ72および第3アンテナ73に高周波電力をそれぞれ供給する複
数の高周波電源(第1高周波電源81、第2高周波電源82および第3高周波電源83)が接続されている点において、実施形態1に係るプラズマ処理装置1と相違する。また、実施形態2に係るプラズマ処理装置201において、給電側可変コンデンサVCaはなくてもよい。
【0085】
また、実施形態2に係る調整制御部133は、前後方向に沿って配置された複数の受光部がそれぞれ検出する発光強度に基づき、上記複数の高周波電源が供給する高周波電力を制御する。本実施形態では、調整制御部133は、第3発光強度I3~第5発光強度I5に基づき、第1高周波電源81~第3高周波電源83が供給する高周波電力を制御する。
【0086】
図10は、実施形態2に係る監視装置10が実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下、
図9に示すようなプラズマ処理装置201において、監視装置10が実行する動作例の一例について、
図10を参照して説明する。なお、以下の説明では、プラズマ処理装置201が上記プラズマ処理を施す場合について説明する。
【0087】
図10に示すように、S31では、
図6におけるS1と同様に、判定部132が、受光部PDの検出結果に基づき上記第1条件を満たすか否かを判定する。上記第1条件を満たすとき(S31でYES)、処理はS32に進む。上記第1条件を満たさないとき(S31でNO)、処理はS33に進む。
【0088】
S32(制御ステップ)では、調整制御部133が、Max(I3,I4,I5)が下がるように第1高周波電源81~第3高周波電源83を制御する。例えば、Max(I3,I4,I5)=I3である場合、調整制御部133は、第1高周波電源81が供給する高周波電力を下げればよい。
【0089】
S33(制御ステップ)では、
図6におけるS3と同様に、調整制御部133が、Max(I1,I2)が下がるように接地側可変コンデンサVCbを制御する。
【0090】
調整制御部133による第1高周波電源81~第3高周波電源83または接地側可変コンデンサVCbの制御の後、S34では、判定部132が、上記第2条件を満たすか否かを判定する。上記第2条件を満たすとき(S34でYES)、処理は終了する。上記第2条件を満たさないとき(S34でNO)、処理はS1に戻る。すなわち、監視装置10は、上記第2条件を満たすまで第1高周波電源81~第3高周波電源83または接地側可変コンデンサVCbを制御する。
【0091】
以上の構成により、実施形態2に係るプラズマ処理装置201は、実施形態1のものと同様の効果を奏する。
【0092】
〔ソフトウェアによる実現例〕
監視装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に取得部11および制御部13に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0093】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0094】
上記プログラムは、一時的でなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録
媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0095】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0096】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知
能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0097】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1、201 プラズマ処理装置
7 アンテナ
7a 給電側端部(高周波電源側端部)
7b 接地側端部
8 高周波電源
10 監視装置
13 制御部
71 第1アンテナ
72 第2アンテナ
81 第1高周波電源
82 第2高周波電源
PD 受光部
PD1 第1受光部
PD2 第2受光部
PD3 第3受光部
PD4 第4受光部
VCa 給電側可変コンデンサ(給電側インピーダンス調整部)
VCb 接地側可変コンデンサ(接地側インピーダンス調整部)