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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112073
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】パール状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240813BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240813BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/42
A61K8/63
A61K8/81
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016914
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺西 諒真
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB051
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD491
4C083AD492
4C083CC03
4C083DD02
4C083EE01
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】セラミドやフィトステロールズのような難溶性美容成分を安定的に配合し、かつ、高温での保存安定性に優れたパール状化粧料を提供することを課題とする。
【課題手段】セラミドやフィトステロールズを高級アルコールではなく特定のPOE鎖長のポリオキシエチン硬化ヒマシ油でパール化し、その際にジプロピレングリコール若しくはペンチレングリコール及びカルボキシポリマー若しくはアルキル変性カルボキシビニルポリマーを配合することでパール状の外観を与える物質の形成(パール化)及び当該パール状の外観を与える物質の安定化に優れたパール状化粧料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)~(E)成分を含むパール状化粧料。
(A)水
(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が80~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコール
(D)セラミド類及び/又はフィトステロールズ
(E)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー
【請求項2】
(E)成分の配合量が0.01~0.2%である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(D)成分のセラミドの配合量が0.01~1.0%、フィトステロールズの配合量が0.01~1.0%である請求項1又は2に記載の化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール状化粧料に関する。特に、高温での安定化に優れたパール状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは角質細胞脂質の主成分としてバリア膜形成の重要な役割を担っていることから、セラミド類を化粧料に配合するための様々な技術が知られている。しかし、セラミドは結晶性が高く難溶解性であることから、化粧料中に安定的に配合することは難しかった。
ここで、セラミドをパール状の光沢を付与することができるパール状化粧料として利用する技術が特許文献1に開示されている。
特許文献1には、セラミド類、高級アルコール、特定の界面活性剤、多価アルコール及び水を含み、特定の界面活性剤の含有量がセラミドに対して1.5倍以上とし、セラミド類の結晶を生成させたことを特徴とするパール剤組成物について記載されている。
ところが、当該パール剤組成物は、パール化のために高級アルコールの配合を必須としているため、当該高級アルコールの融点により化粧料を高温状態にした場合にパール状(光沢)の外観が消失してしまうおそれがあり、保存安定性に欠けるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5064659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、セラミドやフィトステロールズのような難溶性美容成分を安定的に配合し、かつ、高温での保存安定性に優れたパール状化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セラミドやフィトステロールズをPOE鎖の平均重合度が特定範囲のポリオキシエチン硬化ヒマシ油でパール化し、その際にジプロピレングリコール若しくはペンチレングリコール及びカルボキシポリマー若しくはアルキル変性カルボキシビニルポリマーを配合することでパール状の外観を与える物質の形成(すなわち、パール化)及び当該パール状の外観を与える物質の安定化が図れることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明のパール状化粧料はパール化に高級アルコールを利用しないことから高温条件下でのパール状の外観を与える物質の保存安定性に優れることをも見出した。
すなわち、具体的には本発明は、以下の構成を有する。
<1>
以下の(A)~(E)成分を含むパール状化粧料。
(A)水
(B)POE鎖の平均重合度が80~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコール
(D)セラミド類及び/又はフィトステロールズ
(E)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー
<2>
(E)成分の配合量が0.01~0.2%である<1>に記載の化粧料。
<3>
(D)成分のセラミドの配合量が0.01~1.0%、フィトステロールズの配合量が0.01~1.0%である<1>又は<2>に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、セラミドやフィトステロールズのような難溶性美容成分を安定的に配合し、かつ、高温での保存安定性に優れたパール状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、以下の(A)~(E)成分を含むパール状化粧料に関する。
(A)水
(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が80~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコール
(D)セラミド類及び/又はフィトステロールズ
(E)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー
以下に、本発明のパール状化粧料に含まれる成分(A)~(E)及びその他の任意成分について説明する。
【0008】
<(A)水>
本発明の(A)成分は、水である。水は、化粧料に使用されるものであればよく、精製水、脱イオン水などが用いられる。パール状化粧料を100質量%としたとき、後述する成分(B)~(E)及び任意成分の合計量の残余量を水の含有量とする。水の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0009】
<(B)POE鎖の平均重合度が80~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油>
本発明の(B)成分は、ポリオキシエチレン(POE)鎖の平均重合度が80~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、非イオン界面活性剤の一種である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、医薬部外品の場合の表示名称でありポリオキシエチレン水添ヒマシ油と同義である。また、POE鎖の平均重合度80~100を、POE鎖長80~100と表現することがあるが同義である。
本発明におけるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のPOE鎖の平均重合度は、80~100であり、より好ましくは80である。POE鎖の平均重合度が80未満であるとパール状の外観を与える物質の形成が行われずに凝集物が生成してしまうからである。
本発明において、上記鎖長の範囲内であれば、POE鎖の異なるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を2種以上組み合わせて使用することもできる。
POE鎖の平均重合度が80~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、PEG-100水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油を例示できる。PEG-100水添ヒマシ油の市販品としては、NIKKOL HCO-100(日光ケミカルズ社製、HLB16.5)、EMALEX HC-100(日本エマルジョン社製、HLB15)が例示できる。PEG-80水添ヒマシ油の市販品としては、NIKKOL HCO-80(日光ケミカルズ社製、HLB15)、 EMALEX HC-80(日本エマルジョン社製、HLB15)が例示できる。
本発明の化粧料におけるPOE鎖の平均重合度が80~100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%、特に好ましくは0.5~1.5質量%である。なお、本明細書において、「a~b」(a,bは数値)とは、a以上b以下を意味する。
【0010】
<(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコール>
本発明の(C)成分は、ジプロピレングリコール(表示名称:DPG)及び/又はペンチレングリコールである。これらは、主に界面活性剤(B)を溶解する目的で配合される多価アルコールであるが、DPG及び/又はペンチレングリコールを配合することで、パール状の外観を与える物質が形成されて凝集物の生成を抑制し、かつ、長期間当該パール状の外観を与える物質を保持することができる。また、本発明で用いる多価アルコールは、高級アルコールではないため、化粧料を高温状態にした場合でもパール状の外観を与える物質が消失するおそれがなく安定したパール状の外観を与える物質を保持できる。
本発明の化粧料におけるジプロピレングリコール又はペンチレングリコールの含有量は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは、5~20質量%、よりいっそう好ましくは5~15質量%、もっとも好ましくは10質量%である。また、ジプロピレングリコール及びペンチレングリコールの両方を含む場合は、合計量が上記含有量の範囲内であればよい。
【0011】
<(D)セラミド類及び/又はフィトステロールズ>
本発明の(D)成分は、セラミド類及び/又はフィトステロールズであり、これらは単独でも組み合わせて用いることもできる。
<(D1)セラミド類>
本発明で用いるセラミド類とは、セラミド、セラミド誘導体、セラミド類似物質である。セラミドは、人の皮膚(角層)に存在する細胞間脂質の約50%を占めるアミド誘導体である。セラミドとしてはN-アシルスフィンゴシン(セラミド)、N-アシルジヒドロスフィンゴシン(ジヒドロセラミド)、N-アシルフィトスフィンゴシン(フィトセラミド)等が挙げられる。なお前記のスフィンゴシンの化学名は(2S,3R,4E)-2- アミノ-4-オクタデセン-1,3-ジオール、ジヒドロスフィンゴシンの化学名は(2S,3R)-2-アミノオクタデカン-1,3-ジオール、フィトスフィンゴシンの化学名は(2S,3S,4R)-2-アミノ-1,3,4-オクタデカントリオールである。
本発明の化粧料に含有されるセラミド類としては、皮膚外用剤中でも通常化粧品に使用されるものが好ましく、難溶性のセラミドといわれるものがより好ましい。このようなセラミド類としては、セラミド1~6を例示できるがこのうちでも、セラミド2、セラミド3又はセラミド6が特に好ましい。セラミド類は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
セラミド類の市販品としては、セラミド1;(コスモファーム社製、セラミドI、N-(27-オクタデカノイルオキシ-ヘプタコサノイル)-フィトスフィンゴシン)、セラミド2;(高砂香料工業株式会社製、セラミドTIC-001、N-ステアロイルジヒドロキシスフィンゴシン)、セラミド3;(コスモファーム社製、CeramidoIII、N-ステアロイルフィトスフィンゴシン)、セラミド3;(コスモファーム社製、CeramidoIIIA、N-リノレオイルフィトスフィンゴシン)、セラミド3;(コスモファーム社製、CeramidoIIIB、N-オレオイルフィトスフィンゴシン)、セラミド6;(コスモファーム社製、CeramidoVI、N-2-ヒドロキシステアロイルフィトスフィンゴシン)が挙げられる。
本発明の化粧料におけるセラミド類の含有量は、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0012】
<(D2)フィトステロールズ>
フィトステロールズは植物由来ステロールの総称であり、成分としてβ-シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール等を含有するものである。フィトステロールズは、単独あるいは組み合わせて使用することができる。
フィトステロールズの市販品としてはタマ生化学株式会社製フィトステロールSが例示できる。
本発明の化粧料におけるフィトステロールズの含有量は、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0013】
<(E)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー>
本発明の(E)成分は、カルボキシビニルポリマー(略してカルボマーということがある)及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーであり、これらはそれぞれ単独でも組み合わせて用いることもできる。
本発明の化粧料において、(E)成分は塩基性物質によって中和することで増粘剤として作用する。また、後述する製造方法で述べる、高温状態で一定時間以上静置した際に形成されるパール状の外観を与える物質の均一性を高める作用がある。
塩基性物質としては水酸化Na、水酸化K、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルギニンなどが使用可能である。
カルボキシビニルポリマーの市販品としては、NOVEON社製のカーボポール940、カーボポール941、カーボポール981や、(株)和光純薬工業社製のハイビスワコー104、ハイビスワコー105などが挙げられる。アルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品としては、NOVEON社製CARBOPOL 1342、CARBOPOL ETD2020、PEMULEN TR-1、PEMULEN TR-2などが挙げられる。
本発明の化粧料において、カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量は、好ましくは0.01~0.2質量%、より好ましくは0.01~0.1質量%、もっとも好ましくは0.01~0.05質量%である。上記範囲にすることでより、パール状の外観を与える物質の均一性及び安定性が向上する。組み合わせて配合する場合は合計量が上記範囲になるように配合すればよい。
【0014】
(製造方法)
本発明のパール状化粧料の調製方法の一例について説明する。(D)セラミド類及び/又はフィトステロールズと(B)界面活性剤を(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコールに溶解し加熱して均一溶解させた後に、加熱した(A)水に添加すると「半透明の均一溶液」が得られる。これを氷浴で30℃まで冷却した後に(E)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを添加し、アルカリ中和によりpHを6.0程度に調整する。それを50℃に24時間静置することでパール化させる。前記加熱温度は好ましくは80~ 90℃、より好ましくは85℃~90℃である。
上記製造方法におけるパール化の作用機序について説明する。上記前記「半透明の均一溶液」は、セラミドを保持した界面活性剤粒子を含むものであり、それを50℃に静置することで、界面活性剤粒子の状態が徐々に変化し、最終的にはセラミドを含んだパール状の外観を与える構造体へと変化する。本願明細書中、前記セラミドを保持した界面活性剤粒子からセラミドを含んだパール状の外観を与える物質への状態変化のことをパール化、パール状の外観を与える構造体のことを単にパール状の外観を与える物質ということがある。また、パール状の外観を与える物質を含む化粧料をパール状化粧料という。また、パール状とは、パールのような光沢の外観をいう。
パール状の外観、パールの均一性及びパールの安定性は、成分(B)、(C)、(D)、(E)の配合量又は配合比率を変更することにより調整することが可能である。例えば、(D)成分に対する(B)成分と(C)成分の比率を変更することでパールの均一性及び安定性を向上させることができる。より具体的には、 [(B)+(C)]/(D)は好ましくは20~250であり、さらに好ましくは50~150であり、よりいっそう好ましくは100~120である。
また、(E)成分の配合量を変更することによりパールの均一性を向上させることができる。
【0015】
(任意成分)
本発明の上記成分(A)~(E)を含むパール状化粧料は、そのままで化粧料となるが、目的に応じて、任意成分として化粧料に常用される各種原料を本発明のパール状の外観を与える物質の形成及び安定性を損なわない範囲で配合することができる。例えば、有機粉体、水溶性高分子、塩類、pH調整剤、防腐剤、金属イオン 封鎖剤、薬効成分、香料等を配合することができる。また、アスコルビン酸誘導体、植物 抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0016】
有機粉体としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のポリマービーズやポリシリコーン1クロスポリマーなどのシリコーン樹脂粉体、ポリウレタン粉体等を配合することができる。
【0017】
水溶性高分子としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等を例示できる。
【0018】
塩類としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等を例示できる。
【0019】
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム等を例示できる。
【0020】
防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン等を例示できる。
【0021】
金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を例示できる。
【0022】
薬効成分としては、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB6類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD6、コレカルシフェロール等のビタミンD類、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL-α-トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を例示できる。例えば、エタノール等の水溶性有機溶剤、キレート剤、美白剤、エモリエント剤、保湿剤、酸化防止剤、色剤、防腐剤、香料(精油含む)、各種の油性成分、各種の水性成分などを挙げることができる。
【0023】
<パール状化粧料の評価方法>
パール状化粧料の評価は、「パール状の外観評価試験」、「パールの均一性評価試験」及び「パールの安定性評価試験」により行うことができる。パール状の外観評価試験は、パール化させた後に水で薄め、目視でパール状の外観が見られるか否かにより判断できる。パールの均一性評価試験は、パール化させた後に水で薄め、目視で凝集物が見られるか否かにより判断できる。また、パールの安定性評価試験は、パールの均一性評価試験の評価が「〇」の検体について、高温で一定期間保管した後、目視で凝集物が見られるか否か、また、パール状の外観を与える物質が消失せずに保持され、パール状の外観を有するか否かにより判断できる。上記評価試験は、具体的には後述する実施例の評価試験が挙げられる。
【0024】
本発明のパール状化粧料は、使用性や使用感を考慮して様々な剤形に設計される。好ましい態様として、液状あるいはジェル状の形態を採用することができる。
【実施例0025】
1.パール化前化粧料の調製
(D)セラミド類及び/又はフィトステロールズと(B)界面活性剤を(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコールに溶解し80~90℃に加温して均一溶解させた後に、加温した(A)水に添加し、半透明の均一溶液を得た。これを氷浴で30℃まで冷却した後に(E)カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを添加し、アルカリ中和によりpHを6.0程度に調整した。
【0026】
2.評価試験方法
調整したパール化前化粧料を、50℃で1日熟成した後、水で10%に薄めて直径約4cmの規格瓶に入れ、パール状の外観及びパールの均一性について評価した。次に、パールの均一性評価試験の評価が「〇」の検体について、さらにそのまま50℃で1ヶ月間保管し、安定性について評価した。各試験の評価基準を以下に示す。
(1)パール状の外観評価試験
〇:目視でパール状の外観を有する
×:目視でパール状の外観を有しない
(2)パールの均一性評価試験
〇:目視で凝集物が認められない
×:目視で凝集物が認められる
(3)パールの安定性評価試験
〇:パール状の外観を有し、目視で凝集物が認められない
×:パール状の外観を有しない、もしくは、目視で凝集物が認められる
【0027】
[試験例1]
多価アルコールの種類を変更してパールの形成及び安定性に与える影響について検討を行った。
表1に示す実施例1(多価アルコールとしてDPG)、実施例2(同ペンチレングリコール),比較例1(同BG),比較例2(同グリセリン)の材料をそれぞれ混合して、各パール化前化粧料を調製し、上記パール状の外観評価試験、パールの均一性評価試験及びパールの安定性評価試験(以下、これらをまとめてパールの評価試験等という)を行った。結果を表1に示す。
本結果によれば、DPG又はペンチレングリコールを処方した化粧料は凝集物が見られずパールの均一性に優れる物であった。一方、BG又はグリセリンを処方した化粧料は、凝集物が見られ、パールの均一性に欠けるものであった。
【0028】
【表1】
【0029】
[試験例2]
パール化粧料に処方するフィトステロールズの配合量について検討を行った。
表2に示す実施例1(フィトステロールズ0.1質量%),実施例3(同0.05質量%),実施例4(同0.2質量%)の材料をそれぞれ混合して、各パール化前化粧料を調製し、上記パールの価試験等を行った。結果を表2に示す。
本結果によれば、実施例1、実施例3、実施例4のフィトステロールズの配合量の化粧料はいずれも凝集物が見られずパールの均一性に優れるものであった。
【0030】
【表2】
【0031】
[試験例3]
パール化粧料に処方するセラミドの配合量について検討を行った。
表3に示す実施例5(セラミド2 0.05質量%)、実施例6(同0.1質量%)、実施例7(同0.5質量%)の材料をそれぞれ混合して、各パール化前化粧料を調製し、上記パールの評価試験等を行った。参考としてフィトステロールズを配合した実施例1の結果と併せて表3に示す。
本結果によれば、実施例5、実施例6、実施例7のセラミドの配合量の化粧料はいずれも凝集物が見られずパールの均一性に優れるものであった。
【0032】
【表3】
【0033】
[試験例4]
パール化粧料に処方するポリオキシエチレン(POE)硬化ヒマシ油のPOE鎖の平均重合度について検討を行った。
表4に示す実施例1(平均重合度80)、実施例8(同100)、比較例3(同60)の材料をそれぞれ混合して、各パール化前化粧料を調製し、上記パールの評価試験等を行った。結果を表4に示す。
本結果によれば、平均重合度が80及び100のPOE硬化ヒマシ油を処方した化粧料はいずれも凝集物が見られずパールの均一性に優れるものであった。一方、POE鎖の平均重合度が60のPOE硬化ヒマシ油処方した化粧料は、凝集物が見られ、パールの均一性に欠けるものであった。
【0034】
【表4】
【0035】
[試験例5]
パール化粧料に処方する増粘剤の種類について検討を行った。
表5に示す実施例1(増粘剤としてカルボマー),実施例6(同アルキル変性カルボキシビニルポリマー)の材料をそれぞれ混合して、各パール化前化粧料を調製し、上記パールの評価試験等を行った。結果を表5に示す。
本結果によれば、増粘剤としてカルボマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを処方した化粧料いずれも凝集物が見られずパールの均一性に優れるものであった。
【0036】
【表5】
【0037】
[試験例6]
パール化粧料に処方する増粘剤の配合量について検討を行った。
表6に示す実施例1(増粘剤を0.1質量%配合)、実施例10(同0.05質量%)、実施例11(同0.1質量%)の材料をそれぞれ混合して、各パール化前化粧料を調製し、上記パールの評価試験等を行った。結果を表6に示す。
本結果によれば、実施例1、実施例10、実施例11の増粘剤の配合量の化粧料はいずれも凝集物が見られずパールの均一性に優れるものであった。
【0038】
【表6】
【0039】
[試験例7]
パール化粧料に処方するセラミドの種類について検討を行った。
表7に示す実施例12(セラミドとしてセラミド3),実施例13(同セラミド6)の材料をそれぞれ混合して、各パール化前化粧料を調製し、上記パールの評価試験等を行った。参考としてフィトステロールズを配合した実施例1の結果と併せて表7に示す。
本結果によれば、セラミドとしてセラミド3又はセラミド6を処方した化粧料いずれも凝集物が見られずパールの均一性に優れるものであった。
【0040】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、セラミドやフィトステロールズのような難溶性美容成分を安定的に配合し、かつ、高温での保存安定性に優れたパール状化粧料を提供することができる。したがって、本発明の化粧料は、外観に優れ、また日常的な使用に適しており、継続して使用することにより皮膚のバリア機能を高めることが期待できる。