(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112102
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】薬剤分包装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
A61J3/00 310E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016964
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【弁理士】
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047CC15
4C047JJ01
4C047JJ03
4C047JJ06
4C047JJ10
4C047JJ12
4C047JJ13
4C047JJ20
4C047JJ23
4C047JJ26
4C047JJ31
4C047JJ32
4C047JJ33
4C047KK25
(57)【要約】
【課題】散薬と錠剤とを払い出し可能な薬剤分包装置の提供。
【解決手段】本発明の薬剤分包装置は、配置された錠剤を所定の個数ずつ包装装置まで移送する錠剤処理部と、分包される散薬が当該配分円盤上に落下されることにより前記散薬が均等に配分される配分円盤を備える散薬処理部と、を有する薬剤分包装置であって、前記薬剤分包装置は、前記包装装置の上部であって錠剤処理部の下部に配置され、前記錠剤の落下経路の途上にあって前記錠剤と前記散薬とを前記包装装置の投入口へと誘導する錠剤合流部を有し、前記蓋部は、前記落下経路を開閉するための閉鎖部材と、前記閉鎖部材から前記落下経路の背面に回り込むように形成された腕部と、を有し、前記腕部に当接して押し出すことで前記蓋部を回動させる駆動部を有することを特徴とする。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置された錠剤を所定の個数ずつ包装装置まで移送する錠剤処理部と、
分包される散薬が当該配分円盤上に落下されることにより前記散薬が均等に配分される配分円盤を備える散薬処理部と、を有する薬剤分包装置であって、
前記薬剤分包装置は、前記包装装置の上部であって錠剤処理部の下部に配置され、前記錠剤の落下経路の途上にあって前記錠剤と前記散薬とを前記包装装置の投入口へと誘導する錠剤合流部を有し、
前記錠剤合流部は、前記落下経路を開閉可能なように設けられた蓋部を有し、
前記蓋部は、前記落下経路を開閉するための閉鎖部材と、前記閉鎖部材から前記落下経路の背面に回り込むように形成された腕部と、を有し、
前記腕部に当接して押し出すことで前記蓋部を回動させる駆動部を有することを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤分包装置において、
前記駆動部は、前記腕部を前記仕切板の突出する方向へ向けて押圧するための押圧部と、
前記押圧部を当該方向へと移動させるための駆動源と、を有することを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薬剤分包装置において、
前記蓋部を閉状態に維持する方向に当該蓋部を付勢する付勢部材を有し、
前記付勢部材は、前記蓋部の上端に設けられることを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項4】
請求項3に記載の薬剤分包装置において、
前記付勢部材と前記蓋部の回転軸とを囲むように形成されたカバーを有することを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項5】
請求項1に記載の薬剤分包装置において、
前記蓋部の前記落下経路と反対側の面には、前記散薬処理部の前記配分円盤から掻き出された前記散薬の飛散を防止するための仕切板が、当該蓋部から突出する形で設けられたことを特徴とする薬剤分包装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配置された錠剤を所定の個数ずつ包装装置まで移送する錠剤処理部と、分包される散薬が当該配分円盤上に落下されることにより前記散薬が均等に配分される配分円盤を備える散薬処理部と、を有する薬剤分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤師等の操作者によって予め計量された散薬を、振動フィーダーを用いて配分円盤に散布し、1包分ずつ等分して均等に配分するための散薬分包装置が知られている(例えば特許文献1等参照)。
また、こうした散薬分包装置と、錠剤分包機とを1つの包装装置によって分包可能にした薬剤分包装置も広く知られている。
さて、このような散薬と錠剤の分包とを1つの装置によって分包する場合には、落下経路上の何処かで、錠剤と散薬とが合流する部分が必要となる。
また、散薬の落下を止めてしまうと、1包当たりの分量が変わってしまう問題が生じたり、先に排出された薬剤が後の薬剤に混ざってしまう、所謂コンタミネーション等も問題も生じてしまいかねないため、こうした錠剤合流部においては、錠剤の落下口を蓋状の部材で塞ぐことが一般的であった。
【0003】
しかしながら、こうした錠剤合流部に設けられる蓋状の部材は、錠剤が落下するたびに開閉を繰り返すものであるから、必然的に開状態と閉状態を頻繁に繰り返すこととなって、部材の劣化を招きやすいことが懸念される。
また、開状態と閉状態とを繰り返すうちに、摺動によって削れてしまい、特定の位置だけが擦り減ってしまうようなことも懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる技術的課題を解決するためのものであり、散薬と錠剤とを1つの包装装置にて分包する際の錠剤合流部を備えた薬剤分包装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の薬剤分包装置は、配置された錠剤を所定の個数ずつ包装装置まで移送する錠剤処理部と、分包される散薬が当該配分円盤上に落下されることにより前記散薬が均等に配分される配分円盤を備える散薬処理部と、を有する薬剤分包装置であって、前記薬剤分包装置は、前記包装装置の上部であって錠剤処理部の下部に配置され、前記錠剤の落下経路の途上にあって前記錠剤と前記散薬とを前記包装装置の投入口へと誘導する錠剤合流部を有し、前記錠剤合流部は、前記落下経路を開閉可能なように設けられた蓋部を有し、前記蓋部は、前記落下経路を開閉するための閉鎖部材と、前記閉鎖部材から前記落下経路の背面に回り込むように形成された腕部と、を有し、前記腕部に当接して押し出すことで前記蓋部を回動させる駆動部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このような薬剤分包装置によれば、散薬と錠剤とを扱うときにも、余計な摩耗粉や破片等が混入する虞がないため、コンタミネーション等の防止に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の一例として、薬剤分包装置の外観を示した図である。
【
図2】
図1に示した薬剤分包装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した錠剤処理部の構造を示した図である。
【
図4】
図1に示した錠剤処理部の内部構造を示した図である。
【
図5】
図1の散薬処理部のうち、散薬を分配する主要部を示す図である。
【
図6】
図5に示した振動フィーダーの駆動源及び構成の一例を示す図である。
【
図7】
図5に示した振動フィーダーのうち、移送部の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図5に示した振動フィーダーと移送部の動作の一例を示す図である。
【
図9】配分円盤と振動フィーダーとの位置関係の一例を示す図である。
【
図10】散薬を下方へと移送するための掻き出し部を拡大した図である。
【
図11】薬剤分包装置の内部構造の一例を示す図である。
【
図12】
図1に示した包装装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図13】本実施形態における分包された薬剤の一例を示す図である。
【
図14】蓋部の構成及び位置関係の一例を示す図である。
【
図15】
図14に示すカバーの内部構造の一例を示す図である。
【
図16】蓋部及び駆動部の動作の一例を示す図である。
【
図17】本発明の他の実施形態の構成の一例を示す図である。
【
図18】
図17において示した錠剤合流部の構成の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の散薬分包装置の一例である具体的な形態を、図に沿って説明する。
図においては、簡略化のため、ボルト等の締結具や、電動モータ等の駆動源、ギヤ等の伝動部材、モータドライバ等の電気回路、コントローラ等の電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示する。
また、
図1に示すように、薬剤分包装置100の操作者Pの立つ正面側から見たときに、便宜上左から右へ向かう方向をX方向、手前側から奥側に向かう方向をY方向、下から上へ向かう方向をZ方向として示している。
【0010】
まず、本発明の薬剤分包装置100について、外観図及び内部構成図を
図1、
図2に示す。
薬剤分包装置100は、
図1に示すように、筐体101の上部に位置し操作者Pが手動で錠剤等の薬剤を投入して分包に供するための手撒き部である錠剤処理部110と、手撒き部10に配置された薬剤を下部にある後述の包装装置130へと導くための搬送部12と、を備えた錠剤処理部110と、操作者Pが1処方分を秤量した散薬等の薬剤を投入して、処方箋で指示された所定の分量に分配するための配分円盤20を備えた散薬処理部120と、これら錠剤処理部110や散薬処理部120から送られてきた錠剤・散薬を含む薬剤を包装紙によって個包装するための包装装置130と、を有する分包装置であり、散薬分包装置あるいは錠剤分包装置としても機能する。
【0011】
なお、本実施形態では、錠剤処理部110と、散薬処理部120と、包装装置130と、を一体的に含む構成について述べるが、薬剤分包装置100は、他にも錠剤を保管するとともに1つずつ錠剤落下経路11へと送り出すための錠剤カセットを有している構成であっても良く、また同様に、散薬を保管するための薬剤カセットや保管棚を有する構成であっても良い。
また、薬剤分包装置100は、本実施形態においては、後述する制御部における各機能を制御するためのアプリケーション等がインストールされた制御部140を有している。
【0012】
錠剤処理部110は、
図3に示すように、薬剤分包装置100の最上部に設けられており、引き出し可能なトレイ111と、トレイ111よりも下方においてトレイ111に投入された錠剤を搬送して薬剤分包装置100の下部へと移送するコンベア112と、トレイ111を介さずに錠剤を投入可能な錠剤投入口114と、を有している。
トレイ111は、筐体101から筐体101から操作者Pの手前側に引き出し可能であって、複数に分割された各区画111aにそれぞれ錠剤を手撒きして、トレイ111を再度内部に装着することで、各区画111aの床面が開いて下部の搬送部12へと誘導可能になっている。
搬送部12は、どのような構成であっても良いが、例えば
図4に示すように、複数の薬剤容器113と、当該薬剤容器113を動かすローラとベルトとによって構成されたコンベア112と、を備えた構造の搬送部として知られている。
【0013】
このように搬送部12によって搬送された錠剤は、後述する錠剤合流部60において、散薬と合流して、包装装置130にあって図示しない投入ホッパー70へと移動し、分包処理がなされることとなる。
【0014】
次に散薬処理部120は、
図5に示すように円環状の配分円盤20と、配分円盤20の操作者側に2つ取り付けられた収容部であるホッパー21と、それぞれのホッパー21の下方に配置されて、ホッパー21に投入された散薬の移送部となるトラフ22と、ホッパー21とトラフ22とに隣接してトラフ22の移送方向と平行に配置されたフィーダー駆動部40と、を有している。
【0015】
散薬処理部120はまた、配分円盤20において、トラフ22よりも回転方向下流側に、掻き出し部50を有している。ここでは配分円盤20を上方から見たとき、回転方向を左回りであるとして説明するが、かかる構成に限定されるものではない。
本実施形態においては、ホッパー21とトラフ22は対となって複数が平行に配置されており、掻き出し部50はこのようなホッパー21とトラフ22の最も下流側に位置する。掻き出し部50は、後述するように配分円盤20上に載置された散薬を、錠剤合流部60に向けて掻き出すように動作する。
【0016】
散薬処理部120は、スライドして引き出し可能に筐体101内部に保持されている。
かかる構成によれば、薬剤分包装置100の筐体101から散薬処理部120を引き出すことで、清掃性の向上に寄与する。
【0017】
ホッパー21とトラフ22とは、フィーダー駆動部40によって後述のように振動動作することで、ホッパー21内部に投入された散薬をトラフ22を介して配分円盤20へと移送する振動フィーダーとして動作する。
【0018】
ホッパー21は、
図5、
図6に示すように、フィーダー駆動部40からホッパー保持枠41によって支持され、その側面は下方に向かって先細るようにテーパー形状となっており、投入された散薬を最下方の開口部23からトラフ22へと投入する。ホッパー21の外側側面には、外側に向かって突出した三角形の突出部21aが設けられており、ホッパー保持枠41とかかる突出部21aとが引っかかることで支持される。
トラフ22は、
図6、
図7に示すように、フィーダー駆動部40から振動部42によって支持され、後端側である操作者側から前端側である配分円盤20側に向かって緩やかに傾斜するとともに、その先端部には、散薬が配分円盤20の央部に落下するように設けられた散薬切り出し部24と、散薬切り出し部24へ向かって先細るようにかつ傾斜度が高くなるように形成された斜面部25と、を有している。
【0019】
振動部42は、フィーダー駆動部40によって振動可能な振動板であって、フィーダー駆動部40からの信号に従って細かく振動することによって、上方に載置されたトラフ22を振動させてトラフ22の延びた方向、すなわち本実施形態ではY方向へと散薬を移送する。
【0020】
ホッパー保持枠41は、円筒状のパイプで形成され、ホッパー21のY方向側の前端側が開いた矩形の枠体であって、ホッパー21の突出部21aを下方から支持する。ホッパー保持枠41は、
図8に示すように、ホッパー保持枠41が後端側を中心に上下方向に回動することで、ホッパー21を回転軸O1を中心として弧状に上下動させることができる。
図8に示すように、ホッパー保持枠41がホッパー21を上方に持ち上げるように動作させることによって、開口部23とトラフ22との間に生じている隙間が増大して、ホッパー21に収容された散薬が効率よく下方のトラフ22へと排出される。
それと同時に、トラフ22は振動部42によって振動しているので、トラフ22上に排出された散薬は、壁面に沿って斜面部25と散薬切り出し部24とを経由して配分円盤20へと落下する。
【0021】
散薬切り出し部24は、トラフ22の幅方向の中央部に形成された凹部であって、移送方向の終端に向けて散薬が収斂するように両側面が移送方向に進むにつれて窄まる狭隘部である。散薬切り出し部24は、配分円盤20の円環央部において窪んだ凹部、最も好ましくは
図5に破線で示した凹部の最低部20aの直上に位置するように配置されており、かかる構成により、トラフ22を移送された散薬は、配分円盤20の円環の央部へと落下する。このとき、振動部42の振動の制御によって、散薬切り出し部24から落下する散薬の量は調整が可能である。通常は、
図9に示すように散薬切り出し部24から所定量ずつ散薬が落下するようになっている。
従って、配分円盤20を所定の速度で一周以上回転させることで、配分円盤20上には散薬の山が一様に分布した形で散布される。
【0022】
さて、このようにして配分円盤20の円環の央部である最低部20aに落ちる散薬は、配分円盤20の回転と、振動部42の振動とによって、配分円盤20の円環上に均一に散布される。
配分円盤20上に均一に散薬が散布されると、制御部140は、配分円盤20を所定の角度毎に回動させる。具体的には360°を1処方分としたとき、10包に分割するのであれば36°毎回転させることで、1包分に適切な量だけ掻き出し部50の近傍に集められ、掻き出し部50によって投入ホッパー70へと投入される。
【0023】
掻き出し部50は、
図10に示すように配分円盤20に周縁部が当接するように配置された円板上のディスク51と、ディスク51に取り付けられて回動することで配分円盤20上であってディスク51によって堰き止められた1包分の散薬を掬い取って掻き出すスクレーパー52と、を有している。
掻き出し部50はまた、レバー53によってZ方向に上下動可能に支持されており、ディスク51が配分円盤20と当接した状態と、配分円盤20から離間して上方に取り外された状態とに切り替えることもできる。このように上下動可能な構成とすることで、操作者Pは、1処方分の分包が終わった配分円盤20の清掃を容易に行うことができる。
【0024】
錠剤合流部60は、
図11に断面を概略化して示すように、錠剤処理部110から搬送部12を介して落下してきた錠剤と、散薬処理部120において1包ずつの量に切り出された散薬と、をそれぞれ別個の経路から、共通する落下経路となる投入ホッパー70へと誘導するための合流部である。
錠剤合流部60は、筐体101内を操作者側に向かって手前方向に斜めに傾斜して延びた錠剤落下経路61と、錠剤落下経路61の落下口を塞ぐように配置された蓋部であって、回転軸O2を中心に回動することで錠剤落下経路61の落下口を開閉するための閉鎖部材62と、を有している。
錠剤合流部60は、閉鎖部材62と一体に構成されて、押圧されることで閉鎖部材62を開く方向に移動させるために錠剤落下経路61の裏側に延びた腕部63と、腕部63に当接して腕部63を前方へと押し込むことで閉鎖部材62を回動させて錠剤落下経路61の落下口を開くための押圧部64と、閉鎖部材62の上方にあって落下口を閉じる方向に向けて閉鎖部材62を付勢する付勢部材69と、を有している。
【0025】
押圧部64の筐体101の奥側には、駆動部たる押圧部64用の駆動源である駆動源65が設けられている。押圧部64は、駆動源65によって前方に駆動されることで、押圧部64の先端が腕部63に当接して、閉鎖部材62を押し出すようにして動作する。
かかる動作によって、押圧部64による力が付勢部材69による付勢力を上回ると、閉鎖部材62が開状態となることで錠剤落下経路61の落下口が開放されて、錠剤落下経路61の下端において閉じ込められていた錠剤が、投入ホッパー70へと落下する。
他方、押圧部64は常に後方に向けて引き戻すように付勢されているので、駆動源65への信号がなくなったときには付勢部材69によって閉鎖部材62が錠剤落下経路61の落下口を塞ぐ位置に戻ることとなる。
【0026】
錠剤合流部60は、初期状態である待機状態においては、閉鎖部材62を閉じた状態で維持しており、錠剤処理部110から錠剤が排出されてきたときには、排出された錠剤は、錠剤落下経路61の終端で閉鎖部材62によって堰き止められる。
錠剤合流部60がかかる錠剤を排出する際には、既に述べたように駆動源65を動作させて、閉鎖部材62を回動させて、錠剤を投入ホッパー70へと落下させる。
なお、このような錠剤の排出と、既に述べたスクレーパー52による散薬の掻き出しとは、基本的には同時に行われることはなく、閉鎖部材62が閉じている時には散薬の排出が行われ、閉鎖部材62が開放されている時には錠剤の排出が行われる。
このような制御は、例えば制御部140によって、スクレーパー52による散薬の掻き出しが終了し、包装装置130によって所定の分包が終了した後に駆動源65を駆動させるように制御を行うことで行われる。あるいは、スクレーパー52による掻き出しと、錠剤排出とを交互に行っても良いが、閉鎖部材62の開動作中に散薬が掻き出されると、錠剤落下経路61と閉鎖部材62との間に散薬が付着する等の虞が生じる他、所謂コンタミ等の懸念も大きくなるため、望ましくはない。
【0027】
さて、このようにして投入ホッパー70へと落下した錠剤あるいは散薬は、
図12に示すような包装装置130によって分包紙131に分包される。本実施形態における包装装置130は、既存の構成の薬剤用の包装装置であって良いが、一例を概略のみ説明する。
包装装置130は、分包紙131の送り経路に沿って順に、分包紙131のロールを保持するとともに適度なテンションを付与して先端から順に送り出す包装帯給送部132と、分包紙131に印刷を行うプリンタ133と、分包紙131の幅方向すなわち本実施形態においては上下方向に延びた発熱体を有し、分包紙131のシール部131aを加熱して融着させる縦シール部134と、上下動して2つ折りされた分包紙131内に先端を挿抜する投入ホッパー70と、横方向に延びた発熱体を有し分包紙131を加熱して融着させる横シール部135と、分包紙131を引っ張るローラ部136と、分包紙131にミシン目を入れたり切断したりするカッター137とが設けられている。
【0028】
分包紙131は、かかる構成により
図13に示すように、所定の長さの区画に錠剤や散薬等の薬剤を封入されるとともに、網掛けで示されたシール部131aが熱によって融着された状態で、ある程度の長さで連なり下流の排出口139へと排出される。
分包紙131は、上端が開放された状態で2つ折りに包装帯給送部132から引き出されている。ここで包装帯給送部132は、例えばロール状に巻き上げられた分包紙131をリール状に送り出す包装帯保持部である。
包装帯給送部132から送り出された分包紙131は、プリンタ133によって印字され、投入ホッパー70の下部へと移動し、縦シール部134によって搬送方向の前方及び後方が封じられた後、投入ホッパー70によって薬剤を投入され、上方を封じられてカッター137によって切り取りあるいはミシン目等が入れられて排出される。
【0029】
錠剤合流部60で示したように、投入ホッパー70には、錠剤あるいは散薬の何れか1包分の分量が落ちてくるから、分包紙131の個々の内部には、1包分の薬剤が封入されることとなる。なお、
図13においては、錠剤の入った例を挙げたが、散薬等の粉剤においても同様に、熱融着した個々の区画に散薬が封入されることとなる。
【0030】
投入ホッパー70において薬剤が分包紙131に投入されたことを検知すると、横シール部135が分包紙131の上部を封止し、ローラ部136が分包紙131を所定量だけ引き込むことで、分包紙131は1包分の長さだけ搬送される。
このような動作を繰り返し行うことで、分包紙131には、それぞれの区画に1包分の薬剤が封入された1連の薬袋として、排出口139へと搬送される。
【0031】
薬剤分包装置100は、上述のような各部の構成により、錠剤あるいは散薬等の薬剤を、分包紙131に1包分に個包装することができる分包装置である。
なお、包装装置130の構成は、本実施形態では分包紙131を横方向に搬送する形式についてのみ述べるが、その他、分包紙を所定の幅で区切って、区切られた室内に薬剤を封入可能な包装機であればどのような構成であっても良く、かかる構成に限定されるものではない。
【0032】
さて、こうした薬剤分包装置100において、1処方分の処方箋を基に錠剤及び散薬を含む薬剤を分包する際の動作について説明する。
操作者Pは、まず制御部140が外部の処方箋システム等を用いて処方情報を読み込むと、かかる処方箋に必要な薬剤を準備する。なお、本実施形態においては、1処方のうち薬剤分包装置100を用いる必要がある部分についてのみ説明するため、錠剤と散薬とのうち、特に操作者Pが計量する必要のある散薬や、所謂手撒きと呼ばれる錠剤処理部110の所定の位置に錠剤を手動で配置していく必要のある錠剤についてのみ述べる。しかしながら、本発明の薬剤分包装置100は、所謂錠剤カセットを用いた自動機を用いて錠剤を分包する方式と組み合わせても良いし、以下の構成に限定されるものではない。
【0033】
次いで、操作者Pが錠剤処理部110のトレイ111を引き出すとともに、処方箋に従ってトレイ111の所定の場所に錠剤を配置する。
トレイ111が錠剤処理部110内部に格納されると、
図11に示すようにトレイ111の下部のコンベア112が、各錠剤を薬剤容器113に入れた状態で搬送し、錠剤落下経路61の上部まで誘導する。なお、錠剤投入口114に入れた錠剤も、同様に
図11に示した落下経路115を経由して、錠剤落下経路61へと到達する点は一緒である。
【0034】
錠剤落下経路61に落ちてきた錠剤は、閉鎖部材62が開状態になるまで錠剤落下経路61の下端で閉鎖部材62にせき止められている。
【0035】
また、散薬の処方もある時には、操作者Pは別途天秤等を用いて1処方分の量を計りとった散薬を、ホッパー21に投入する。このとき、ホッパー21に投入される散薬は、混和されたものであっても良いし、1種類のみであっても良い。
ホッパー21は、ホッパー保持枠41によって上下方向に動作し、内部に投入された散薬を下方からトラフ22へと排出する。
フィーダー駆動部40は、ホッパー保持枠41を回転軸O1を中心に上下方向に回転動作させるとともに、トラフ22を振動部42によって振動させることで、配分円盤20に一様に撒くための駆動源として動作する。
【0036】
1処方分の散薬が配分円盤20に一様に撒かれると、制御部140は配分円盤20を所定の角度だけ回転させて、ディスク51によって堰き止められた散薬をスクレーパー52によって散薬落下口へと投入する。
また、散薬落下口の周囲には、散薬落下口を閉鎖部材62とともに囲うように、上方に向かって立ち上がった囲い部材80が形成されているので、スクレーパー52によって排出された散薬は、散薬落下口71に排出されて、下部の投入ホッパー70へと投入される。このように、散薬落下口71は、投入ホッパー70に散薬を投入するための投入口として機能する。
【0037】
投入ホッパー70に投入された散薬は、既に述べたように包装装置130によって分包されて、薬剤分包装置100は、投入された散薬を1包ずつに分包した状態で排出口139に排出することができる。
【0038】
このような錠剤と散薬とを両方とも1台の包装装置130を用いて包装できる薬剤分包装置100においては、錠剤合流部60において錠剤と散薬とが合流することとなる。
本実施形態においては、散薬を投入ホッパー70に投下する場合と、錠剤を投入ホッパー70に投下する場合とを切り分ける用途として、錠剤合流部60が設けられている。
かかる錠剤合流部60は、錠剤落下経路61の終端を閉鎖部材62によって塞ぐとともに、錠剤を落下させるべきタイミングで駆動源65を駆動させて閉鎖部材62を開閉させている。
【0039】
しかしながら、こうした錠剤合流部60に設けられる蓋状の閉鎖部材62は、錠剤が落下するたびに開閉を繰り返すものであるから、必然的に開状態と閉状態を頻繁に繰り返すこととなって、部材の劣化を招きやすい。
そこで、このような開閉動作によって駆動部品の破片や粉末が投入ホッパー70に混入することを避ける構造が求められていた。
また、散薬を扱う都合上、開閉部に細かい粉末が付着してしまう場合もあり、そうした粉末による駆動部品への影響を最小限にするためにも、回動部分や押圧部分など、部品同士が擦れ合うような動作をする部分は、散薬が落下する投入ホッパー70から離れた位置に設けることが望まれていた。
【0040】
そこで、本実施形態においては、
図14、
図15に示すように、錠剤合流部60は、錠剤落下経路61を開閉するための閉鎖部材62と、錠剤落下経路61とは逆方向に、閉鎖部材62から錠剤落下経路61の背面に回り込むように形成された腕部63と、を有している。
腕部63は、閉鎖部材62とは一体に形成されたものであって、当該腕部63が、薬剤分包装置100の前面側に押圧されると、連動して閉鎖部材62が
図16に示すように回転軸O2を中心に回動する。
このように、閉鎖部材62、腕部63は一体に形成された蓋部として動作する。
【0041】
図11、
図14に示す駆動源65は、例えば
図16に示すようにモータ650と、カム651と、シャフト652と、を有する駆動源であって、押圧部64をY方向に前後に移動可能なものであればよく、その子細な形態は問わない。
図16では一例として、モータ650の回転によってカム651も回転し、シャフト652が前進あるいは後退することで押圧部64が前後する動作態様で示している。
駆動源65の動作によって、押圧部64が前方(-Y方向)に移動すると、押圧部64の-Y方向前端に形成されたベアリング67が腕部63と当接して押し上げることで、付勢部材69によって抑えられる力を上回ると、閉鎖部材62が回転軸O2を中心に回転することで錠剤落下経路61が開放される。
【0042】
このように腕部63を錠剤落下経路61の背面に回り込むように形成することによって、腕部63と押圧部64とが当接する位置は、錠剤落下経路61よりも筐体の奥側となる。すなわち、散薬落下口71の上部から外れた位置に位置することとなる。
このような配置とすることで、仮にもしも開閉の際に腕部63の一部が粉末となって剥離したり、破片が落下する等のことが万一生じたとしても、投入ホッパー70には入らないためにコンタミネーション等の問題の発生を防ぐことができる。
【0043】
なお、このとき、腕部63に当接する押圧部64は、Y方向に長く伸びた略棒状の部材であれば望ましく、またかかる押圧部64の腕部63と当接する側の先端部には、ベアリング67が形成されている。
押圧部64をY方向に伸びた棒状部材とすることによれば、駆動源65と、散薬落下口71とを大きく離すことができるので、ギアや回転軸等の粉末の噛み込みの影響が出やすい駆動源65の駆動部品を散薬がこない位置まで離して、粉末による故障等の被害をも抑制することができる。
さらに、ベアリング67が腕部63と当接するので、当接の際の摩擦や衝撃を緩和する効果も見込まれる。
【0044】
また、本実施形態では、付勢部材69及び回転軸O2の周囲を囲繞するように、カバー68が設けられている。
かかる構成により、回動部分である回転軸O2と、バネである付勢部材69とへの散薬の飛散を防止することができるので、回転部分である回転軸O2周りの粉末による故障等の被害を防ぐことができる。
また、このように付勢部材69と回転軸O2とを閉鎖部材62の上方に設けたことによって、散薬落下口71からの距離を離すことができるので、回転部分である回転軸O2周りの粉末による故障等の被害を防いでもいる。
【0045】
以上述べたように、本実施形態では、駆動部を散薬落下口71と離間した位置に配置することで、コンタミネーション等の問題を防ぐとともに、粉末の噛み込み等による部材の劣化をも防ぐ効果がある。
【0046】
本発明の他の実施形態について示す。
なお、本実施形態において、薬剤分包装置100は、
図17に示すように、2つの配分円盤20を備え、かかる配分円盤20から錠剤合流部60において投入ホッパー70に向けて錠剤あるいは散薬を含む薬剤が投入される構成である。
また、薬剤分包装置100の散薬処理部120の錠剤合流部60は、
図18に示すように、錠剤落下経路61の終端を閉鎖するように設けられた閉鎖部材62と、閉鎖部材62の錠剤落下経路61とは反対側、すなわち回動方向に向かって外向きに、操作者側に向かって突出した仕切板66と、を有している。
仕切板66は、投入ホッパー70の上方において、両サイドに配置された2つのスクレーパー52によって掻き出された散薬が投入ホッパー70に落下する際に、互いの配分円盤20への飛散を抑止する機能を有している。
【0047】
また、錠剤落下経路61の下端である閉鎖部材62及び散薬落下口の周囲には、飛散防止部材である囲い部材80が、上方へと立ち上がって散薬落下口を囲むように形成されている。囲い部材80は、投入ホッパー70の上方において、スクレーパー52によって き出された散薬が投入ホッパー70に落下する際の飛散を抑止する機能を有している。
なお、囲い部材80は、その形状は図示した構成に限定されるものではなく、種々の形状を取っても良いし、左右あるいは手前等に倒れ込むように取り回し可能なものであっても良い。
【0048】
また、開閉動作を行う閉鎖部材62が、散薬落下口71側に伸びた仕切板66を有していることにより、閉鎖部材62が錠剤を堰き止めている閉状態にあるときには仕切板66がスクレーパー52から散薬落下口71に投入される散薬の飛散を防止するとともに、閉鎖部材62が開動作を行った際には、仕切板66は閉鎖部材62の開動作とともに上方へ移動するので錠剤の落下を防止しないように設けられている。
このような構成とすることで、散薬の飛散防止用に仕切板66を備えながらも、駆動部品を増やすことなく散薬の飛散防止と錠剤の落下経路の確保を同時に達成することができる。
また、仕切板66を有することにより、一方の配分円盤20においてスクレーパー52に掻き出された散薬が、他方の配分円盤20まで到達してしまうことを防いで、コンタミネーションの防止にも寄与する。
【0049】
<1>
本実施形態では、錠剤と散薬とを取り扱い可能な薬剤分包装置100であって、配置された錠剤を所定の個数ずつ包装装置130まで移送する錠剤処理部110と、分包される散薬が当該配分円盤上に落下されることにより前記散薬が均等に配分される配分円盤を備える散薬処理部120と、を有し、薬剤分包装置100は、包装装置130の上部であって錠剤処理部110の下部に配置され、錠剤の落下経路61の途上にあって錠剤と散薬とを包装装置130の投入口へと誘導する錠剤合流部60を有している。
また、錠剤落下経路61を開閉するための閉鎖部材62と、閉鎖部材62から錠剤落下経路61の背面に回り込むように形成された腕部63と、を有している。
かかる構成によれば、錠剤合流部60は、閉鎖部材62を開閉動作させる際に押圧部64と当接する部分が、錠剤落下経路61よりも奥側に位置することとなるので、投入ホッパー70に余計な摩耗粉や破片等が混入する虞がないため、コンタミネーション等の防止に効果がある。
【0050】
さらに本実施形態では、<1>で述べた構成に加えて、錠剤合流部60は、腕部63に当接して押し出すことで閉鎖部材62を回動させる駆動部として機能する押圧部64、駆動源65を有している。
かかる構成によれば、錠剤合流部60は、閉鎖部材62を開閉動作させる際に押圧部64と当接する部分が、錠剤落下経路61よりも奥側に位置することとなるので、投入ホッパー70に余計な摩耗粉や破片等が混入する虞がないため、コンタミネーション等の防止に効果がある。
【0051】
<2>
また本実施形態では、<1>で述べた構成に加えて、腕部63を仕切板66の突出する方向へ向けて押圧するための押圧部64と、押圧部64を当該方向へと移動させるための駆動源65と、を有する。かかる構成とすれば、駆動源65と、散薬落下口71とを大きく離すことができるので、ギアや回転軸等の粉末の噛み込みの影響が出やすい駆動源65の駆動部品を散薬がこない位置まで離して、粉末による故障等の被害をも抑制することができる。
【0052】
<3>
また本実施形態では、<1>または<2>で述べた構成に加えて、閉鎖部材62を閉状態に維持する方向に付勢する付勢部材69を有し、付勢部材69は、閉鎖部材62の上端に設けられている。
かかる構成によれば、付勢部材69と回転軸O2とを閉鎖部材62の上方に設けたことによって、散薬落下口71からの距離を離すことができるので、回転部分である回転軸O2周りの粉末による故障等の被害を防ぐことができる。
【0053】
<4>
また本実施形態では、<1>乃至<3>の何れかで述べた構成に加えて、付勢部材69と閉鎖部材62の回転軸O2とを囲むように形成されたカバー68を有する。
かかる構成によれば、回動部分である回転軸O2と、バネである付勢部材69とへの散薬の飛散を防止することができるので、回転部分である回転軸O2周りの粉末による故障等の被害を防ぐことができる。
【0054】
<5>
本実施形態では、錠剤合流部60は、錠剤落下経路61を開閉可能なように設けられた閉鎖部材62を有し、閉鎖部材62の錠剤落下経路61と反対側の面には、散薬処理部120の配分円盤20から掻き出された散薬の飛散を防止するための仕切板66が、当該閉鎖部材62から突出する形で設けられている。
かかる構成によれば、錠剤合流部60は、散薬の飛散防止用に仕切板66を備えながらも、駆動部品を増やすことなく散薬の飛散防止と錠剤の落下経路の確保を同時に達成することができる。
【符号の説明】
【0055】
20…配分円盤
60…錠剤合流部
61…落下経路(錠剤落下経路)
62…閉鎖部材
63…腕部
64…押圧部
65…駆動源
66…仕切板
69…付勢部材
71…投入口(散薬落下口)
100…薬剤分包装置
110…錠剤処理部
120…散薬処理部
130…包装装置
O2…回転軸