(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112105
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04L 45/243 20220101AFI20240813BHJP
H04W 28/02 20090101ALI20240813BHJP
H04W 4/42 20180101ALI20240813BHJP
【FI】
H04L45/243
H04W28/02
H04W4/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016974
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友治
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和也
(72)【発明者】
【氏名】石岡 圭介
【テーマコード(参考)】
5K030
5K067
【Fターム(参考)】
5K030GA11
5K030HC09
5K030JL01
5K030JT09
5K030LB06
5K067AA33
5K067CC04
5K067DD17
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】通信の確実性と効率性とを高められる無線通信システムを提供する。
【解決手段】本開示は、移動体と基地局との間で無線通信を行う無線通信システムである。無線通信システムは、移動体に配置された移動体サーバと、移動体に配置された複数の移動体通信機と、基地局に配置された基地局サーバと、地上に配置されると共に、複数の移動体通信機と無線通信するように構成された複数の地上通信機とを備える。移動体サーバ及び基地局サーバのうち送信側となる送信サーバは、初期パケットを、ヘッダに識別情報が追加された伝送用パケットに加工する。移動体サーバ及び基地局サーバのうち受信側となる受信サーバは、伝送用パケットを、識別情報に基づいて最終パケットに加工する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と地上に設置された基地局との間で無線通信を行う無線通信システムであって、
前記移動体に配置された移動体サーバと、
前記移動体に配置された複数の移動体通信機と、
前記基地局に配置された基地局サーバと、
地上に配置されると共に、前記複数の移動体通信機と無線通信するように構成された複数の地上通信機と、
を備え、
前記移動体サーバ及び前記基地局サーバのうち送信側となる送信サーバは、
送信側の通信端末から少なくとも1つの初期パケットを受信するように構成された第1受信部と、
前記少なくとも1つの初期パケットを、それぞれのヘッダに識別情報が追加された複数の伝送用パケットに加工するように構成された送信前処理部と、
前記複数の伝送用パケットを前記複数の移動体通信機及び前記複数の地上通信機を介して複数の経路で送信するように構成された第1送信部と、
を有し、
前記移動体サーバ及び前記基地局サーバのうち受信側となる受信サーバは、
前記送信サーバから送信された前記複数の伝送用パケットを受信するように構成された第2受信部と、
前記複数の伝送用パケットを、前記識別情報に基づいて少なくとも1つの最終パケットに加工するように構成された受信後処理部と、
前記少なくとも1つの最終パケットを受信側の通信端末に送信するように構成された第2送信部と、
を有し、
前記送信前処理部は、
1つの初期パケットに第1タイプを示す前記識別情報を付与すると共に、前記識別情報が付与された前記1つの初期パケットを複製することで前記複数の伝送用パケットを生成する第1処理と、
複数の初期パケットに対し、第2タイプを示すと共にソート順を含む前記識別情報をそれぞれ付与することで前記複数の伝送用パケットを生成する第2処理と、
を実行し、
前記受信後処理部は、
前記第1タイプを示す前記識別情報を有する前記複数の伝送用パケットのうち、前記識別情報を削除した1つのパケットを、前記少なくとも1つの最終パケットとする第3処理と、
前記第2タイプを示す前記識別情報を有する前記複数の伝送用パケットに対し、前記ソート順に基づくソートと前記識別情報の削除とを行った複数のパケットを、前記少なくとも1つの最終パケットとする第4処理と、
を実行する、無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記識別情報は、前記ソート順を表す特定コードを含み、
前記受信後処理部は、前記複数の伝送用パケットが同一の前記特定コードを有する場合に前記識別情報が前記第1タイプを示すと判断する、無線通信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無線通信システムであって、
前記移動体は、鉄道車両である、無線通信システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の無線通信システムであって、
前記複数の移動体通信機と通信する前記複数の地上通信機は、前記移動体の移動に合わせて変化する、無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車両等の移動体において、移動体の外部との間で無線通信を行うためのシステムが利用される(特許文献1参照)。無線通信には、電話、インターネット等の通信回線、移動体の各種機器の監視又は制御用の回線等が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信では、情報は複数のパケットに分割され、発信側から1つずつ送信される。そのため、すべてのパケットの受信によって情報を完全に受け取るには一定の時間が必要となる。また、通信状況によっては一部のパケットが受信側に到達しない可能性がある。
【0005】
本開示の一局面は、通信の確実性と効率性とを高められる無線通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、移動体と地上に設置された基地局との間で無線通信を行う無線通信システムである。無線通信システムは、移動体に配置された移動体サーバと、移動体に配置された複数の移動体通信機と、基地局に配置された基地局サーバと、地上に配置されると共に、複数の移動体通信機と無線通信するように構成された複数の地上通信機と、を備える。
【0007】
移動体サーバ及び基地局サーバのうち送信側となる送信サーバは、送信側の通信端末から少なくとも1つの初期パケットを受信するように構成された第1受信部と、少なくとも1つの初期パケットを、それぞれのヘッダに識別情報が追加された複数の伝送用パケットに加工するように構成された送信前処理部と、複数の伝送用パケットを複数の移動体通信機及び複数の地上通信機を介して複数の経路で送信するように構成された第1送信部と、を有する。
【0008】
移動体サーバ及び基地局サーバのうち受信側となる受信サーバは、送信サーバから送信された複数の伝送用パケットを受信するように構成された第2受信部と、複数の伝送用パケットを、識別情報に基づいて少なくとも1つの最終パケットに加工するように構成された受信後処理部と、少なくとも1つの最終パケットを受信側の通信端末に送信するように構成された第2送信部と、を有する。
【0009】
送信前処理部は、1つの初期パケットに第1タイプを示す識別情報を付与すると共に、識別情報が付与された1つの初期パケットを複製することで複数の伝送用パケットを生成する第1処理と、複数の初期パケットに対し、第2タイプを示すと共にソート順を含む識別情報をそれぞれ付与することで複数の伝送用パケットを生成する第2処理と、を実行する。
【0010】
受信後処理部は、第1タイプを示す識別情報を有する複数の伝送用パケットのうち、識別情報を削除した1つのパケットを、少なくとも1つの最終パケットとする第3処理と、第2タイプを示す識別情報を有する複数の伝送用パケットに対し、ソート順に基づくソートと識別情報の削除とを行った複数のパケットを、少なくとも1つの最終パケットとする第4処理と、を実行する。
【0011】
このような構成によれば、複数の移動体通信機及び複数の地上通信機により、確実性を重視した通信と、効率性を重視した通信とを選択的に実行できる。つまり、確実性を重視する第1タイプの識別情報を有する複数のパケットは、異なる通信経路から同じパケットが送信された上で重複するパケットが削除されるため、情報伝達の安全性が向上する。
【0012】
また、効率性を重視する第2タイプの識別情報を有する複数のパケットは、複数の通信経路を使って並列に送信された上でソートされるため、情報伝達速度が向上する。さらに、識別情報は送信サーバによってパケットに付された上で、受信サーバによって削除される。そのため、通信を行う端末において識別情報に関する特別な処理を行う必要がない。
【0013】
本開示の一態様では、識別情報は、ソート順を表す特定コードを含んでもよい。受信後処理部は、複数の伝送用パケットが同一の特定コードを有する場合に識別情報が第1タイプを示すと判断してもよい。このような構成によれば、識別情報の情報量を低減できると共に、送信サーバ及び受信サーバの処理量も低減できる。
【0014】
本開示の一態様では、移動体は、鉄道車両であってもよい。このような構成によれば、確実性を重視する通信と、効率性を重視する通信とが混在する鉄道車両において、鉄道車両の走行安全性と搭乗者の利便性とを高めることができる。
【0015】
本開示の一態様では、複数の移動体通信機と通信する複数の地上通信機は、移動体の移動に合わせて変化してもよい。このような構成によれば、長距離移動又は高速移動を行う移動体において、通信の確実性と効率性とを高められる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態における無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2Aは、
図1の無線通信システムにおける移動体サーバの構成を概略的に示すブロック図であり、
図2Bは、
図1の無線通信システムにおける基地局サーバの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、移動体通信機と地上通信機との関係を示す模式図である。
【
図4】
図4Aは、初期パケットの構造を示す模式図であり、
図4Bは、伝送用パケットの構造を示す模式図であり、
図4Cは、最終パケットの構造を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図1の無線通信システムにおける通信手順を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、
図1の無線通信システムにおける通信手順を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、
図1の無線通信システムにおける通信手順を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す無線通信システム1は、移動体100と地上に設置された基地局200との間で無線通信を行う。
【0018】
移動体100としては、鉄道車両、自動車、船舶、航空機、ドローン等が挙げられる。これらの中でも、確実性が求められる制御用の通信と、効率性の優先度が高い汎用的な通信とが行われ、かつ、予め定められた路線を走行する鉄道車両において、無線通信システム1の機能が効果的に発揮される。つまり、確実性を重視する通信と、効率性を重視する通信それぞれの性能を同時に高めることができる。
【0019】
無線通信システム1は、移動体サーバ110と、複数の移動体通信機121,122と、基地局サーバ210と、複数の地上通信機221,222,223,224,225,226とを備える。
【0020】
<移動体サーバ>
移動体サーバ110は、移動体100に配置されている。移動体サーバ110は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。
【0021】
移動体サーバ110は、
図2Aに示すように、第1受信部111と、送信前処理部112と、第1送信部113と、第2受信部114と、受信後処理部115と、第2送信部116とを有する。
【0022】
第1受信部111は、移動体サーバ110が送信側である送信サーバとなる際に機能する。第1受信部111は、送信側となる移動体側通信端末T1(
図1参照)から少なくとも1つの初期パケットを受信するように構成されている。
【0023】
移動体側通信端末T1は、移動体100に設置されている。移動体側通信端末T1は、例えば、移動体100の監視装置、インターネット接続端末等が挙げられる。なお、
図1では、2つの移動体側通信端末T1が例示されているが、移動体サーバ110と通信する移動体側通信端末T1の数は2つに限定されない。また、移動体側通信端末T1は、発信専用の端末であってもよいし、送受信用の端末であってもよい。
【0024】
移動体側通信端末T1は、少なくとも1つの初期パケットを地上側通信端末T2に向けて送信する。初期パケットは、送信対象となるデータが送信用サイズにブロック分割された一般的なパケットデータである。移動体側通信端末T1が送信するデータの大きさによっては、初期パケットの数が1つの場合もある。
【0025】
初期パケットは、公知のプロトコル(例えばIPプロトコル)に沿った構造を有する。具体的には、初期パケットは、ヘッダと情報本体(つまりデータ部)とを有する。ヘッダには、送信元(つまり移動体側通信端末T1)のアドレス、宛先(つまり地上側通信端末T2)のアドレス、及びその他の情報が含まれる。
【0026】
図2Aに示す送信前処理部112は、移動体サーバ110が送信サーバとなる際に機能する。送信前処理部112は、第1受信部111が受信した少なくとも1つの初期パケットを、それぞれのヘッダに識別情報が追加された複数の伝送用パケットに加工するように構成されている。伝送用パケットの詳細については後述する。
【0027】
第1送信部113は、移動体サーバ110が送信サーバとなる際に機能する。第1送信部113は、複数の伝送用パケットを複数の移動体通信機121,122及び複数の地上通信機221-226を介して複数の経路で送信するように構成されている。
【0028】
第2受信部114は、移動体サーバ110が受信側である受信サーバとなる際に機能する。第2受信部114は、送信サーバ(つまり基地局サーバ210)から送信された複数の伝送用パケットを受信するように構成されている。
【0029】
受信後処理部115は、移動体サーバ110が受信サーバとなる際に機能する。受信後処理部115は、第2受信部114が受信した複数の伝送用パケットを、識別情報に基づいて少なくとも1つの最終パケットに加工するように構成されている。最終パケットの詳細については後述する。
【0030】
第2送信部116は、移動体サーバ110が受信サーバとなる際に機能する。第2送信部116は、少なくとも1つの最終パケットを受信側の移動体側通信端末T1に送信するように構成されている。
【0031】
<基地局サーバ>
基地局サーバ210は、基地局200に配置されている。基地局サーバ210は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。
【0032】
基地局サーバ210は、
図2Bに示すように、第1受信部211と、送信前処理部212と、第1送信部213と、第2受信部214と、受信後処理部215と、第2送信部216とを有する。
【0033】
第1受信部211、送信前処理部212及び第1送信部213は、基地局サーバ210が送信側である送信サーバとなる際に機能する。基地局サーバ210の第1受信部211、送信前処理部212及び第1送信部213は、それぞれ、移動体サーバ110の第1受信部111、送信前処理部112及び第1送信部113と同様の機能を有する。
【0034】
第1受信部211は、送信側となる地上側通信端末T2(
図1参照)から少なくとも1つの初期パケットを受信するように構成されている。地上側通信端末T2は、基地局200に設置されている。
【0035】
地上側通信端末T2は、例えば、移動体100の管理装置、インターネット接続端末等が挙げられる。なお、
図1では、2つの地上側通信端末T2が例示されているが、基地局サーバ210と通信する地上側通信端末T2の数は2つに限定されない。また、地上側通信端末T2は、発信専用の端末であってもよいし、送受信用の端末であってもよい。さらに、地上側通信端末T2は、基地局200の外部に配置されてもよい。地上側通信端末T2は、少なくとも1つの初期パケットを移動体側通信端末T1に向けて送信する。
【0036】
図2Bに示す送信前処理部212は、第1受信部211が受信した少なくとも1つの初期パケットを、それぞれのヘッダに識別情報が追加された複数の伝送用パケットに加工するように構成されている。第1送信部213は、複数の伝送用パケットを複数の移動体通信機121,122及び複数の地上通信機221-226を介して複数の経路で送信するように構成されている。
【0037】
第2受信部214、受信後処理部215及び第2送信部216は、基地局サーバ210が受信側である受信サーバとなる際に機能する。第2受信部214は、送信サーバ(つまり移動体サーバ110)から送信された複数の伝送用パケットを受信するように構成されている。
【0038】
受信後処理部215は、第2受信部214が受信した複数の伝送用パケットを、識別情報に基づいて少なくとも1つの最終パケットに加工するように構成されている。第2送信部216は、少なくとも1つの最終パケットを受信側の地上側通信端末T2に送信するように構成されている。
【0039】
<移動体通信機及び地上通信機>
図1に示すように、複数の移動体通信機121,122は、移動体100に配置されている。複数の地上通信機221-226は、地上に設置されている。複数の地上通信機221-226は、複数の移動体通信機121,122と双方向に無線通信するように構成されている。
【0040】
複数の移動体通信機121,122は、移動体サーバ110で生成された複数の伝送用パケットのいずれかを、複数の地上通信機221-226のいずれかに無線で送信する。つまり、移動体サーバ110で生成された複数の伝送用パケットは、複数の経路で並列的に基地局サーバ210に送信される。
【0041】
同様に、複数の地上通信機221-226は、基地局サーバ210で生成された複数の伝送用パケットのいずれかを、複数の移動体通信機121,122のいずれかに無線で送信する。つまり、基地局サーバ210で生成された複数の伝送用パケットは、複数の経路で並列的に移動体サーバ110に送信される。
【0042】
複数の移動体通信機121,122は、例えば移動体100内の無線又は有線のLAN(ローカルエリアネットワーク)によって移動体サーバ110と接続されている。複数の地上通信機221-226は、例えばWAN(広域ネットワーク)によって基地局サーバ210と接続されている。
【0043】
図3A及び
図3Bに示すように、複数の移動体通信機121,122と通信する複数の地上通信機221-226は、移動体100の移動に合わせて変化する。例えば、
図3Aでは、通信機A-Hのうち、移動体100の無線通信範囲にある通信機B-Gが地上通信機221-226として移動体通信機121,122と通信する。
【0044】
図3Bに示すように、移動体100の移動によって移動体100の無線通信範囲が変化すると、通信機A-Hのうち、移動体100の無線通信範囲にある通信機A-Fが地上通信機221-226として移動体通信機121,122と通信する。
【0045】
移動体通信機121,122と、地上通信機221-226との間の無線通信の周波数は特に限定されない。また、
図1、
図3A,3B等では、移動体通信機の数が2、地上通信機の数が6とされているが、それぞれの通信機の数が2以上であれば、通信機の数は特に限定されない。
【0046】
<送信前のパケット処理>
移動体サーバ110の送信前処理部112及び基地局サーバ210の送信前処理部212は、第1受信部111,211が受信した初期パケットに対し、第1処理及び/又は第2処理を行う。
【0047】
第1処理は、1つの初期パケットを重複して送信することで、通信の確実性を高めるための加工処理である。第1処理では、送信前処理部112,212は、1つの初期パケットに第1タイプを示す識別情報を付与すると共に、識別情報が付与された1つの初期パケットを複製することで、複数の伝送用パケットを生成する。
【0048】
第2処理は、複数の初期パケットを同時並列に送信することで、通信の効率性を高めるための加工処理である。第2処理では、送信前処理部112,212は、複数の初期パケットに対し、第2タイプを示すと共にソート順を含む識別情報をそれぞれ付与することで複数の伝送用パケットを生成する。
【0049】
初期パケットP1は、
図4Aに示すように、ヘッダJと情報本体Kとを有する。送信前処理部112,212は、
図4Bに示すように、初期パケットP1のヘッダJに対し、識別情報Iを埋め込むことで伝送用パケットP2を生成する。識別情報Iは、例えば数十バイトのデータである。
【0050】
第1処理で付与される識別情報及び第2処理で付与される識別情報は、共通のデータ形式を有する。具体的には、識別情報は、第2タイプにおけるソート順を示す特定コードを含む。
【0051】
例えば、第2処理で加工される複数の初期パケットの数が6の場合(つまり、送信するデータが6のパケットに分割されている場合)、これらの初期パケットには、元のデータの配列に対応して、「1」から「6」までの特定コードが個別に付与される。
【0052】
一方、第1処理では、初期パケットの数が1であり、ソート順は存在しないため、送信前処理部112,212は、例えば初期パケットに「1」を特定コードとして付与する。
【0053】
送信前処理部112,212は、例えば、初期パケットの発信元(つまり移動体側通信端末T1又は地上側通信端末T2)の種類によって、第1処理、第2処理、及び第1処理と第2処理との組み合わせ処理のうち、いずれを実行するか判断する。
【0054】
初期パケットの発信元の種類は、例えば初期パケットのヘッダに含まれる送信元のアドレスによって識別される。また、送信前処理部112,212が実行する処理は、初期パケットのヘッダに含まれるアドレス以外の情報によって判断されてもよい。
【0055】
<受信後のパケット処理>
移動体サーバ110の受信後処理部115及び基地局サーバ210の受信後処理部215は、第2受信部114,214が受信した複数の伝送用パケットの識別情報に応じて、第3処理及び/又は第4処理を行う。
【0056】
第3処理は、第1タイプの複数の伝送用パケットを1つの初期パケットに戻す処理である。第3処理では、受信後処理部115,215は、第1タイプを示す識別情報を有する複数の伝送用パケットのうち、識別情報を削除した1つのパケットを、最終パケットとする。
【0057】
つまり、受信後処理部115,215は、重複して受信した複数の伝送用パケットの1つを残し、残りの複数の伝送用パケットを廃棄する。なお、受信サーバが受信した伝送用パケットが1つのみの場合は、伝送用パケットの廃棄は行われない。
【0058】
また、
図4Cに示すように、受信後処理部115,215は、残った伝送用パケットP2のヘッダJから識別情報Iを取り除くことで、1つの最終パケットP3を得る。最終パケットP3のデータ構造は、初期パケットP1のデータ構造と同じである。
【0059】
第4処理は、第2タイプの複数の伝送用パケットをソートされた複数の初期パケットに戻す処理である。第4処理では、受信後処理部115,215は、第2タイプを示す識別情報を有する複数の伝送用パケットに対し、ソート順に基づくソートと識別情報の削除とを行った複数のパケットを、複数の最終パケットとする。
【0060】
例えば、複数の伝送用パケットが「1」から「6」の特定コードを有する場合、受信後処理部115,215は、これらの伝送用パケットを特定コード順にソートし、さらに識別情報を取り除いたものを最終パケットとする。
【0061】
受信後処理部115,215は、複数の伝送用パケットが同一の特定コード(例えば「1」)を有する場合に識別情報が第1タイプを示すと判断する。つまり、特定コードは、第2タイプにおけるソート順として機能するほかに、第1タイプか第2タイプかを示す識別コードとしても機能する。
【0062】
<通信例>
図5に、第1タイプの初期パケットP1の通信例を示す。なお、
図5では説明を容易にするために、6つの移動体通信機121-126を備えた無線通信システム1を用いる。
【0063】
以下では移動体サーバ110から基地局サーバ210にデータが送信される手順を説明するが、基地局サーバ210から移動体サーバ110にデータが送信される手順も同じである。
【0064】
まず、移動体側通信端末T1が、通信の確実性を高めたい初期パケットP1を移動体サーバ110に送信する。移動体サーバ110は、初期パケットP1に、識別情報として特定コード「1」を付与する。さらに、移動体サーバ110は、識別情報が付与された初期パケットP1を複製することで、複数の伝送用パケットP2を生成する。
【0065】
複数の伝送用パケットP2は、それぞれ異なる移動体通信機121-126から、それぞれ異なる地上通信機221-226に無線で送信される。伝送用パケットP2は、さらに地上通信機221-226から基地局サーバ210に送信される。
【0066】
基地局サーバ210は、受信した複数の伝送用パケットP2のうち、1つのパケットを残して残りのパケットを廃棄する。さらに、基地局サーバ210は、残したパケットから識別情報を削除することで最終パケットP3を生成し、この最終パケットP3を地上側通信端末T2に送信する。
【0067】
これによって、基地局サーバ210に複数の伝送用パケットP2の一部が到達しなかった場合でも、移動体側通信端末T1から発信された情報が地上側通信端末T2に伝達される。
【0068】
図6に、第2タイプの初期パケットP1の通信例を示す。なお、
図6でも説明を容易にするために、6つの移動体通信機121-126を備えた無線通信システム1を用いる。
以下では移動体サーバ110から基地局サーバ210にデータが送信される手順を説明するが、基地局サーバ210から移動体サーバ110にデータが送信される手順も同じである。
【0069】
まず、移動体側通信端末T1が、通信の効率性を高めたい複数の初期パケットP1を移動体サーバ110に送信する。移動体サーバ110は、複数の初期パケットP1それぞれに、ソート順を示す「1」-「6」の特定コードを付与することで、複数の伝送用パケットP2を生成する。
【0070】
複数の伝送用パケットP2は、それぞれ異なる複数の移動体通信機121-126から、それぞれ異なる地上通信機221-226に無線で送信される。伝送用パケットP2は、さらに地上通信機221-226から基地局サーバ210に送信される。
【0071】
複数の伝送用パケットP2が基地局サーバ210に受信される順序は、必ずしも移動体側通信端末T1が発信した順序と一致しない。例えば、特定コード「2」の伝送用パケットP2が、特定コード「1」の伝送用パケットP2よりも先に基地局サーバ210に到達する可能性がある。そこで、基地局サーバ210は、受信した複数の伝送用パケットP2の特定コードを参照して、複数の伝送用パケットP2をソートする。
【0072】
さらに、基地局サーバ210は、これらの伝送用パケットP2から識別情報を削除することで複数の最終パケットP3を生成し、これらの最終パケットP3を地上側通信端末T2に送信する。複数の最終パケットP3は、ソートされた順序で地上側通信端末T2に送信される。
【0073】
これによって、移動体側通信端末T1が発信した複数のパケットが、同時並行で無線送信されつつ、移動体側通信端末T1が発信した順序で地上側通信端末T2に伝達される。
【0074】
なお、送信サーバは、第1タイプの初期パケットの処理及び送信を行う第1送信サブサーバと、第2タイプの初期パケットの処理及び送信をする第2送信サブサーバとで構成されていてもよい。同様に、受信サーバは、第1タイプの伝送用パケットの受信及び処理を行う第1受信サブサーバと、第2タイプの伝送用パケットの受信及び処理をする第2受信サブサーバとで構成されていてもよい。
【0075】
図7に、第1タイプと第2タイプとの双方を組み合わせたタイプの初期パケットP1の通信例を示す。なお、
図7では
図1と同様に、2つの移動体通信機121,122を備えた無線通信システム1を用いる。
【0076】
まず、移動体側通信端末T1が、通信の確実性及び効率性を高めたい複数の初期パケットP1を移動体サーバ110に送信する。移動体サーバ110は、複数の初期パケットP1それぞれに、ソート順を示す「1」、「2」の特定コードを付与する。
【0077】
さらに、移動体サーバ110は、「1」の特定コードが付された初期パケットP1、及び「2」の特定コードが付された初期パケットP1それぞれを複製することで、複数の伝送用パケットP2を生成する。つまり、移動体サーバ110は、第1処理と第2処理との双方を実行する。
【0078】
複数の伝送用パケットP2は、特定コードによって複数の移動体通信機121,122に振り分けられる。つまり、同じ内容の伝送用パケットP2が、同じ移動体通信機121,122から、それぞれ異なる地上通信機221-226に無線で送信される。伝送用パケットP2は、さらに地上通信機221-226から基地局サーバ210に送信される。
【0079】
基地局サーバ210は、受信した複数の伝送用パケットP2の特定コードを参照して、複数の伝送用パケットP2をソートする。このとき、同じ特定コードの伝送用パケットP2が存在する場合は、1つの伝送用パケットP2を残し、残りを削除する。つまり、基地局サーバ210は、第3処理と第4処理との双方を実行する。
【0080】
さらに、基地局サーバ210は、これらの伝送用パケットP2から識別情報を削除することで複数の最終パケットP3を生成し、これらの最終パケットP3を地上側通信端末T2に送信する。複数の最終パケットP3は、ソートされた順序で地上側通信端末T2に送信される。
【0081】
これによって、基地局サーバ210に複数の伝送用パケットP2の一部が到達しなかった場合でも、移動体側通信端末T1が発信した順序で、複数のパケットが地上側通信端末T2に伝達される。
【0082】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)複数の移動体通信機及び複数の地上通信機により、確実性を重視した通信と、効率性を重視した通信とを選択的に実行できる。つまり、確実性を重視する第1タイプの識別情報を有する複数のパケットは、異なる通信経路から同じパケットが送信された上で重複するパケットが削除されるため、情報伝達の安全性が向上する。
【0083】
また、効率性を重視する第2タイプの識別情報を有する複数のパケットは、複数の通信経路を使って並列に送信された上でソートされるため、情報伝達速度が向上する。さらに、識別情報は送信サーバによってパケットに付された上で、受信サーバによって削除される。そのため、通信を行う端末において識別情報に関する特別な処理を行う必要がない。
【0084】
(1b)受信後処理部115,215がソート順を表す特定コードによって第1タイプの判断を行うことで、識別情報の情報量を低減できると共に、送信サーバ及び受信サーバの処理量も低減できる。
【0085】
(1c)複数の移動体通信機と通信する複数の地上通信機が移動体の移動に合わせて変化することで、長距離移動又は高速移動を行う移動体において、通信の確実性と効率性とを高められる。
【0086】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0087】
(2a)上記実施形態の無線通信システムにおいて、受信後処理部は、必ずしもソート順を表す特定コードによって第1タイプの判断を行わなくてもよい。例えば、識別情報に、第1タイプ又は第2タイプを示すコードと、ソート順とが独立して含まれてもよい。この場合、第1タイプでは、受信後処理部によってソート順は参照されなくてもよい。
【0088】
(2b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0089】
1…無線通信システム、100…移動体、110…移動体サーバ、
111…第1受信部、112…送信前処理部、113…第1送信部、
114…第2受信部、115…受信後処理部、116…第2送信部、
121-126…移動体通信機、200…基地局、210…基地局サーバ、
211…第1受信部、212…送信前処理部、213…第1送信部、
214…第2受信部、215…受信後処理部、216…第2送信部、
221-226…地上通信機、I…識別情報、J…ヘッダ、K…情報本体
P1…初期パケット、P2…伝送用パケット、P3…最終パケット、
T1…移動体側通信端末、T2…地上側通信端末。