IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西日本電信電話株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社地域創生Coデザイン研究所の特許一覧

特開2024-112107森林クラウドを用いたカーボンクレジットの管理システム
<>
  • 特開-森林クラウドを用いたカーボンクレジットの管理システム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112107
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】森林クラウドを用いたカーボンクレジットの管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240813BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240813BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016977
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522338735
【氏名又は名称】株式会社地域創生Coデザイン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 拓也
(72)【発明者】
【氏名】湯地 裕史
(72)【発明者】
【氏名】川井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 祐二
(72)【発明者】
【氏名】藤浪 康晃
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲瀬▼ 友彬
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L049CC11
5L050CC01
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】森林所有者が利用しやすく、なおかつ森林の維持保護に繋がるカーボンクレジットの理念に即したカーボンクレジットの利用を促進させる。
【解決手段】森林情報及び前記森林情報と対応するクレジット情報を有する森林クラウドを有し、公的認証局へのクレジットプロジェクト登録に関する森林所有者の合意形成を前記森林クラウド上で実施する森林経営管理部と、クレジット認証申請に必要な情報を、前記森林クラウド内に蓄積されたデータから自動で収集・生成するクレジット発行支援部と、クレジット売却益を、当該森林情報の所在地に対応した林業施業に応じた地域ポイントとして森林所有者に還元するクレジット分配部と、を有する、クレジット管理システムを構築する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
森林情報及び前記森林情報と対応するクレジット情報を有する森林クラウドを有し、
公的認証局へのクレジットプロジェクト登録に関する森林所有者の合意形成を前記森林クラウド上で実施する森林経営管理部と、
クレジット認証申請に必要な情報を、前記森林クラウド内に蓄積されたデータから自動で収集・生成するクレジット発行支援部と、
クレジット売却益を、当該森林情報の所在地に対応した林業施業に応じた地域ポイントとして森林所有者に還元するクレジット分配部と、
を有する、クレジット管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーボンクレジットにより森林を有する地域の整備管理を促進させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラル社会を実現するために、我が国は経済産業省や環境省が中心となり、温室効果ガスの排出削減量や吸収量をカーボンクレジットと呼ばれる取引可能な排出権として運用する活動を始めている(非特許文献1)。カーボンクレジットとしては例えば非特許文献2に示すJクレジット等が挙げられる。これらのカーボンクレジットを取引可能にすることで、温室効果ガスの削減に寄与する様々な事業に対して、資金が導入されることが見込まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】経済産業省,“カーボン・クレジット・レポートの概要”,[online],2022年6月,カーボンプライシング研究会,[令和5年2月1日検索],インターネット<URL:https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_credit/pdf/004_s04_00.pdf>
【非特許文献2】経済産業省,“J-クレジット制度|J-クレジット制度とは温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度です。”,[online],2013年,[令和5年2月1日検索],インターネット<URL:https://japancredit.go.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在のカーボンクレジットの取引管理システムは、節電による排出削減量や太陽光発電による排出削減量など、事業化されやすい要素について取引されるものがほとんどであり、我が国国土において最も広大な面積を占める森林による温室効果ガスの吸収量を効果的に取引できるものが提案されてこなかった。
【0005】
一方で我が国の森林は土地所有権が多数の所有者によって細切れになっていることも多く、深山幽谷の奥にあって直に目にすることが難しいケースもあり、森林所有者本人すら自分の森林を把握しきれない場合が多かった。さらに、世代交代に伴う相続が繰り返されたり、地方の過疎化が進んだりした結果、森林所有者が地元から離れた都会に暮らしているケースが増加しつつある。そうすると森林所有者がカーボンクレジットを受け取っても、そのカーボンクレジットを森林の維持や保護に活用しにくい状況が進行しつつあり、温室効果ガスの排出削減に繋げにくいという問題もあった。
【0006】
そこでこの発明は、森林所有者が利用しやすく、なおかつ森林の維持保護に繋がるカーボンクレジットの理念に即したカーボンクレジットの利用を促進させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、森林情報及び前記森林情報と対応するクレジット情報を有する森林クラウドを有し、
公的認証局へのクレジットプロジェクト登録に関する森林所有者の合意形成を前記森林クラウド上で実施する森林経営管理部と、
クレジット認証申請に必要な情報を、前記森林クラウド内に蓄積されたデータから自動で収集・生成するクレジット発行支援部と、
クレジット売却益を、当該森林情報の所在地に対応した林業施業に応じた地域ポイントとして森林所有者に還元するクレジット分配部と、
を有するクレジット管理システムにより、上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0008】
この発明にかかる管理システムは、前記森林経営管理部により、民有林集約業務を効率化、また合意率向上により集約規模を最大化することができる。また、前記クレジット発行支援部により、クレジットの申請業務を効率化することができる。さらに、前記クレジット分配部により、生じたクレジットが当該森林所在地の林業施策に関する地域ポイントとして分配されるため、その地域ポイントが当該森林所在地における再造林や下刈りなどの森林維持及び回復のための森林整備や、地域加盟店などへと利用され、健全な森林経営の促進や地域経済循環に繋げることができる。これらが複合されることで、信頼性の高いカーボンクレジットの創出と活用のサイクルを進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明にかかる管理システムの実施形態例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明について具体的な実施形態を図1とともに詳細に説明する。この発明は、カーボンクレジットの発行を支援するとともに、カーボンクレジットに伴って地域ポイントを分配する管理システムである。
【0011】
この発明にかかるクレジット管理システムは、森林情報とクレジット情報とを有する森林クラウドを有する。森林クラウドの具体的な実装形態は単独のサーバ、サーバ群、クラウドサーバなどのいずれの形態でもよいが、ネットワークに接続されて利用者の端末や公的認証局とデータ通信できることが望ましい。
【0012】
森林情報としては緯度経度や住所番地などの土地情報と、そこにある樹木の状態、資源量、想定される温室効果ガス吸収量、植林からの経過時間、施業状況などが挙げられる。クレジット情報としては、創出されるクレジットの情報、取引されるクレジットの情報などが挙げられる。また、無人航空機、人工衛星などにより撮影された映像情報を含んでいてもよい。
【0013】
また、森林クラウドは、土地だけではなく、森林所有者、代表創出者、木材利用者、地域ポイント加盟店・企業、森林組合などのアカウントを管理するものでもよい。ただし、これらの情報は森林クラウドとは別のサーバ・サーバ群・クラウドサーバで管理してもよい。
【0014】
森林所有者は森林がある土地を所有する個人、団体又は法人である。なお、所有ではなく貸与されている者であってもよく、実際には森林からの利益を得られる権利を有する者であればよい。以下の説明では権限を有することをまとめて所有と呼ぶ。
【0015】
この発明にかかる管理システムは、公的認証局へのクレジットプロジェクト登録に関する森林所有者の合意形成を前記森林クラウド上で実施する森林経営管理部を有する。この発明にかかる管理システムでは、多数の森林所有者が参加し、複数の森林所有者が所有する森林について、その森林から得られるカーボンクレジットを集約化するため、森林管理委託を行う代表創出者のアカウントを管理する。森林所有者はクレジット創出プロジェクトを合意した上で、代表創出者などに対して森林管理委託をする。代表創出者としては自治体や森林組合などが挙げられる。代表創出者は直接のクレジット発行主体となり、委託された森林について、所有者が異なる森林であっても集約化してクレジットの発行を受けられるようにする。これにより、集約化された森林群についてのクレジット発行の意思決定を円滑に進めることができる。クレジットの単位を集約した範囲で自由に大きくすることができ、多数の森林所有者が個別にクレジット発行の同意をしなければならなかった従来の状況に比べて、合意率が大きく向上する。
【0016】
この発明にかかる管理システムは、クレジット認証申請に必要な情報を、前記森林クラウド内に蓄積されたデータから自動で収集・生成するクレジット発行支援部を有する。上記の森林クラウドに蓄積された情報から、蓄積された森林の情報と、その森林に対応するクレジットのうち既に売却された分と売却前であるクレジットなどを一括で管理する。これにより、公的認証を行うJ-クレジット制度事務局などの事務局に対するプロジェクト登録認証の申請のために必要な情報を自動的に収集し、一元化して集めておき、その集めたデータを利用して申請可能とする。申請を受けた事務局も認証をまとめることができ、業務が効率化される。
【0017】
発行されたクレジットについては森林クラウドが管理し、販売できるクレジットを検索できるようにし、受付を行ったり、購入依頼に応じたクレジットを集めて提案したりする。クレジット購入者は、たとえば自動車製造業、化学メーカー、それらのサプライチェーンといった排出権を直接に必要とする企業や、クレジットを取引する証券取引所といった直接購入者や、購入者との仲立ちを行う金融機関などが挙げられる。
【0018】
クレジット購入者がクレジットを購入すると、森林クラウドはその売却情報を登録するとともに、クレジット購入代金を受け付ける。また、クレジットが売却された旨の情報をクレジット発行主体に通知可能とする。この受け付けたクレジット購入代金を、森林クラウドはクレジット発行主体に対してクレジット売却益として渡す。ただし、自治体や森林組合であるクレジット発行主体は、このクレジット売却益を日本円等の通貨により森林所有者に還元するのではなく、地域ポイントを発行して売却益を渡すことが好ましい。このため、この発明にかかる管理システムは、クレジット売却益を、当該森林情報の所在地に対応した林業施業に応じた地域ポイントとして森林所有者に還元するクレジット分配部を有すると好ましい。
【0019】
すなわち、森林クラウドは森林所有者ごとに地域ポイント残高を管理したり、地域ポイントにより当該地域の加盟店や企業といった地域ポイントの加盟店との取引を可能な決済手段を有すると好ましい。管理システムはこれら森林所有者と加盟店・企業等のアカウントを直接的又は間接的に管理する。森林所有者は当該地域の地元の森林組合等に依頼して、再造林や下刈りなどの施業を依頼するにあたり、この地域ポイントでの支払いが可能になる。施業された情報は森林クラウドにおける当該森林情報において更新される。森林組合等は施業を含む当該森林に関してモノやサービス・体験などを木材利用者等に対して提供する。
【0020】
また、この地域ポイントを発行するクレジット発行主体は、地域ポイントを森林所有者のみに発行するのではなく、木材利用者等に対して当該森林地域での地域ポイント購入や、ふるさと納税に対する地域ポイント付与などを受けて地域ポイントを取得し、森林組合等への支払いに地域ポイントを利用可能とし、地域ポイントによる流通の促進を図ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 主に森林経営管理部に関する部位
2 主にクレジット発行支援部に関する部位
3 主にクレジット分配部に関する部位
図1