(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112111
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】スタンド、該スタンドの製造方法、及びキーボード・スタンドセット
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20240813BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G06F1/16 313F
G06F1/16 312E
G06F1/16 312T
H05K5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016985
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細貝 達哉
(72)【発明者】
【氏名】森 英久
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB12
4E360AC05
4E360AC24
4E360BB02
4E360BB12
4E360GB45
4E360GC20
(57)【要約】
【課題】可撓性を有する部材の柔軟性を向上させる。
【解決手段】スタンドは、電子機器を起立状態に支持するスタンドであって、前記電子機器の背面を支持する支持面を有する支持部と、前記支持部に対してヒンジを介して回動可能に接続された脚部と、可撓性を有するシート状に形成され、前記支持部の一縁から突出するように該一縁に沿って設けられた可撓性部材と、可撓性を有し、前記支持部及び前記可撓性部材の表面を形成する表面材と、前記支持部において前記表面材を固定する第1接着層と、前記第1接着層よりも接着剤の塗布密度が小さく形成され、前記可撓性部材において前記表面材を固定する第2接着層と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を起立状態に支持するスタンドであって、
前記電子機器の背面を支持する支持面を有する支持部と、
前記支持部に対してヒンジを介して回動可能に接続された脚部と、
可撓性を有するシート状に形成され、前記支持部の一縁から突出するように該一縁に沿って設けられた可撓性部材と、
可撓性を有し、前記支持部及び前記可撓性部材の表面を形成する表面材と、
前記支持部において前記表面材を固定する第1接着層と、
前記第1接着層よりも接着剤の塗布密度が小さく形成され、前記可撓性部材において前記表面材を固定する第2接着層と、
を備える
ことを特徴とするスタンド。
【請求項2】
請求項1に記載のスタンドであって、
前記第2接着層は、凹凸形状又は穴形状を含む
ことを特徴とするスタンド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスタンドであって、
前記可撓性部材は、2枚の前記表面材を前記第2接着層で貼り合わせた構成であり、
前記第2接着層は、1層構造である
ことを特徴とするスタンド。
【請求項4】
請求項3に記載のスタンドであって、
さらに、前記可撓性部材の前記支持部の一縁側とは逆側の先端縁に沿って設けられ、磁石と吸着可能な材質で形成されたバーを備え、
前記可撓性部材は、前記バーに巻付けられて折り返された2枚の前記表面材を前記第2接着層で貼り合わせて形成されている
ことを特徴とするスタンド。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のスタンドであって、
前記可撓性部材は、前記電子機器の側面を支持可能な幅を有し、
前記電子機器は、前記側面にマイク孔を有するものであり、
前記可撓性部材は、少なくとも前記電子機器の側面を支持した状態で、前記マイク孔を覆わずに露出させる切り抜き穴を有する
ことを特徴とするスタンド。
【請求項6】
電子機器を起立状態に支持するスタンドの製造方法であって、
シート状に形成された表面材の内面に接着剤を設け、第1接着部と、該第1接着部よりも前記接着剤の塗布密度を小さくした第2接着部とを形成する接着部形成工程と、
前記接着部形成工程の後、前記表面材を前記第1接着部を介してプレート状部材に貼り付けることで、前記電子機器の背面を支持する支持部を形成する支持部形成工程と、
前記接着部形成工程の後、2枚の前記表面材を前記第2接着部を介して貼り合わせることで、可撓性を有するシート状に形成され、前記支持部の一縁から突出するように該一縁に沿って設けられた可撓性部材を形成する可撓性部材形成工程と、
前記支持部形成工程の後、前記支持部に対してヒンジを介して脚部を回動可能に取り付ける脚部取付工程と、
を有する
ことを特徴とするスタンドの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のスタンドの製造方法であって、
前記接着部形成工程では、
前記第1接着部は、フィルム状の前記接着剤を前記表面材の内面に設けて形成し、
前記第2接着部は、多数の穴を有するフィルム状の前記接着剤を前記表面材の内面に設けて形成する
ことを特徴とするスタンドの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のスタンドの製造方法であって、
前記接着部形成工程は、前記可撓性部材形成工程で貼り合わせる前記2枚の表面材のうち、一方の表面材の内面のみに前記第2接着部を設け、他方の表面材の内面には前記接着剤を塗布しないものであり、
前記可撓性部材形成工程は、前記一方の表面材の内面に設けられた前記第2接着部を介して、該一方の表面材と前記他方の表面材とを貼り合わせる
ことを特徴とするスタンドの製造方法。
【請求項9】
電子機器に対して無線形式で入力を行うキーボード、及び前記電子機器を起立状態に支持するスタンドを備えるキーボード・スタンドセットであって、
前記スタンドは、
前記電子機器の背面を支持する支持面を有する支持部と、
前記支持部に対してヒンジを介して回動可能に接続された脚部と、
可撓性を有するシート状に形成されると共に、前記支持部の一縁から突出するように該一縁に沿って設けられ、当該スタンドと前記キーボードの一縁との間を回動可能に接続するフレキシブルヒンジとして機能する可撓性部材と、
可撓性を有し、前記支持部及び前記可撓性部材の表面を形成する表面材と、
前記支持部において前記表面材を固定する第1接着層と、
前記第1接着層よりも接着剤の塗布密度が小さく形成され、前記可撓性部材において前記表面材を固定する第2接着層と、
を備える
ことを特徴とするキーボード・スタンドセット。
【請求項10】
請求項9に記載のキーボード・スタンドセットであって、
前記キーボードの一縁には、磁石が設けられ、
前記スタンドは、前記可撓性部材の前記支持部の一縁側とは逆側の先端縁に沿って設けられ、前記磁石と吸着可能な材質で形成されたバーを有することで、前記キーボードに対して着脱可能に構成され、
前記可撓性部材は、前記バーに巻付けられて折り返された2枚の前記表面材を前記第2接着層で貼り合わせた構成である
ことを特徴とするキーボード・スタンドセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を起立状態に支持するスタンド、該スタンドの製造方法、及びキーボード・スタンドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式のディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないノート型PC或いはタブレット型PC等の薄型の電子機器が普及している。この種の電子機器は、持ち運びが容易で入力作業もタッチパネルによって行うことができるため操作が容易である。しかしながら、このような電子機器は、一般的なクラムシェル型のノート型のように自立させて使用することができない。そこで本出願人は特許文献1において、電子機器を起立状態に支持するキックスタンド式のスタンドを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスタンドは、例えば電子機器の側面を支持する部分に可撓性を有する部材を設ける場合がある。また、このような可撓性を有する部材は、電子機器或いは他の機器とスタンドとを接続するためのフレキシブルヒンジとして利用される場合も想定される。従って、可撓性を有する部材は、折曲時等の操作性を確保するため、高い柔軟性が求められる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、可撓性を有する部材の柔軟性を向上させることができるスタンド、該スタンドの製造方法、及びキーボード・スタンドセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るスタンドは、電子機器を起立状態に支持するスタンドであって、前記電子機器の背面を支持する支持面を有する支持部と、前記支持部に対してヒンジを介して回動可能に接続された脚部と、可撓性を有するシート状に形成され、前記支持部の一縁から突出するように該一縁に沿って設けられた可撓性部材と、可撓性を有し、前記支持部及び前記可撓性部材の表面を形成する表面材と、前記支持部において前記表面材を固定する第1接着層と、前記第1接着層よりも接着剤の塗布密度が小さく形成され、前記可撓性部材において前記表面材を固定する第2接着層と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様に係るスタンドの製造方法は、電子機器を起立状態に支持するスタンドの製造方法であって、シート状に形成された表面材の内面に接着剤を設け、第1接着部と、該第1接着部よりも前記接着剤の塗布密度を小さくした第2接着部とを形成する接着部形成工程と、前記接着部形成工程の後、前記表面材を前記第1接着部を介してプレート状部材に貼り付けることで、前記電子機器の背面を支持する支持部を形成する支持部形成工程と、前記接着部形成工程の後、2枚の前記表面材を前記第2接着部を介して貼り合わせることで、可撓性を有するシート状に形成され、前記支持部の一縁から突出するように該一縁に沿って設けられた可撓性部材を形成する可撓性部材形成工程と、前記支持部形成工程の後、前記支持部に対してヒンジを介して脚部を回動可能に取り付ける脚部取付工程と、を有する。
【0008】
本発明の第3態様に係るキーボード・スタンドセットは、電子機器に対して無線形式で入力を行うキーボード、及び前記電子機器を起立状態に支持するスタンドを備えるキーボード・スタンドセットであって、前記スタンドは、前記電子機器の背面を支持する支持面を有する支持部と、前記支持部に対してヒンジを介して回動可能に接続された脚部と、可撓性を有するシート状に形成されると共に、前記支持部の一縁から突出するように該一縁に沿って設けられ、当該スタンドと前記キーボードの一縁との間を回動可能に接続するフレキシブルヒンジとして機能する可撓性部材と、可撓性を有し、前記支持部及び前記可撓性部材の表面を形成する表面材と、前記支持部において前記表面材を固定する第1接着層と、前記第1接着層よりも接着剤の塗布密度が小さく形成され、前記可撓性部材において前記表面材を固定する第2接着層と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、可撓性を有する部材の柔軟性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るキーボード・スタンドセットの平面図である。
【
図2】
図2は、キーボード及びスタンドを裏側から見た分解斜視図である。
【
図4】
図4は、起立している状態のスタンドの斜視図である。
【
図5】
図5は、電子機器を縦置きにしてスタンドに立てかけた状態を示す模式斜視図である。
【
図6】
図6は、
図3中のVI-VIに沿う模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、支持部及び可撓性部材を構成する表面材の模式的な展開図である。
【
図8】
図8は、スタンドの製造方法の一手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例に係るスタンドの正面図である。
【
図10】
図10は、電子機器を縦置きにして
図9に示すスタンドに立てかけた状態を示す一部拡大模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るスタンド及びキーボード・スタンドセットについての好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るキーボード・スタンドセット10の平面図である。
図2は、キーボード12及びスタンド14を裏側から見た分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のキーボード・スタンドセット10は、キーボード12と、スタンド14とを備える。
【0013】
先ず、キーボード12について説明する。
【0014】
キーボード12は、電子機器に対して無線形式で入力を行う装置である。電子機器としては主に物理的なキーボードを持たない携帯型コンピュータが対象となり、例えばフォルダブルPC、タブレット式PC、及びスマートフォンなどの薄型の電子機器が挙げられる。キーボード12と電子機器との間で行われる無線通信は、例えばブルートゥース(登録商標)がある。
【0015】
キーボード12は一般的なサイズの偏平な箱形状となっている。キーボード12の上面には、整列配置された複数のキー12aと、タッチパッド12bと、ポインティングスティック12cとが設けられている。
図1で例示するキーボード12は、テンキーのないコンパクト式であるが、テンキーや独立配置のカーソルキーなどを有するフルサイズ式であってもよい。キーボード12はバッテリーを有している。キーボード12は、タッチパッド12b及びポインティングスティック12cの一方又は両方を省略してもよい。
【0016】
キーボード12は、後側の縁部12dに凹部16が形成されている。凹部16は、縁部12dに沿って延在し、下面側に臨んで開口している。凹部16は、後述するバー30を挿入及び装着可能な高さと長さを有する。凹部16の上面16aには複数の磁石18が設けられている。本実施形態の場合、磁石18は、上面16aの両端近傍に2つずつ、中央部に1つで合計5つが設けられている(
図2参照)。磁石18の数、位置及び大きさはこれに限られない。磁石18は、上面16aを形成する薄いカバーで覆われている。
【0017】
次に、スタンド14について説明する。
【0018】
図3は、スタンド14の正面図である。
図4は、起立している状態のスタンド14の斜視図である。
図5は、電子機器50を縦置きにしてスタンド14に立てかけた状態を示す模式斜視図である。スタンド14は、例えば
図5に示すような薄型の電子機器50を起立状態に支持するものである。
図1~
図4に示すように、スタンド14は、支持部24と、脚部26と、可撓性部材28と、バー30とを備える。
【0019】
支持部24は、矩形枠状の薄いプレート部材である。支持部24は、内側に矩形状の開口部32が形成されることで矩形枠状に形成される。支持部24の一面は、電子機器50の背面50aが当接し、これを支持する支持面24aとなる。支持部24の外周輪郭は、平面視でキーボード12と略同一である。支持部24には、複数の磁石34が分散した位置に埋め込まれている。各磁石34は、支持面24aを臨んでいる。電子機器50の背面50aには磁石が設けられており、磁石34は電子機器50の磁石と吸着可能な位置に設けられている。
【0020】
脚部26は、キックスタンドとして機能する矩形状のプレートである。脚部26は、開口部32の内側で支持部24に対してトルクヒンジ36を介して接続され、支持部24に対して相対的に回動可能である。本実施形態の場合、トルクヒンジ36は、支持部24の一方の長辺枠24bに左右一対設けられている。長辺枠24bは、支持部24における可撓性部材28から遠い側の縁を形成している。
【0021】
図1に示すように、トルクヒンジ36は、例えば支持部24に対してはブラケット36aを用いて長辺枠24bに連結され、脚部26に対してはブラケット36bを用いて基端縁26bに連結されている。ブラケット36a,36bは、例えば薄い金属プレートであり、ねじ、両面テープ、又は接着剤等を用いて支持部24及び脚部26に固定される。
【0022】
脚部26は、少なくとも第1角度位置と第2角度位置との間で回動可能である。第1角度位置は、脚部26が開口部32の内側に収容され、開口部32を略隙間なく塞ぐ位置である(
図1及び
図6参照)。第1角度位置において、スタンド14は、支持部24及び脚部26が全体として薄いプレート状に構成される。
【0023】
第2角度位置は、脚部26のトルクヒンジ36側とは逆側の先端縁26aが載置面Gに当接し、スタンド14を起立させるための位置である(
図4参照)。載置面Gは、例えば机やテーブルの上面である。第2角度位置は、例えば支持部24の面方向と脚部26の面方向とが略90度(
図3参照)となる位置である。なお、脚部26は、先端縁26aと反対側の基端縁26bにトルクヒンジ36が接続される。
【0024】
脚部26は、第2角度位置よりも小さい角度、例えば
図5に示す30度程度の角度でもキックスタンドとして機能させることができる。脚部26は、第2角度位置よりも大きい角度、例えば120度程度でキックスタンドとして機能させることもできる。トルクヒンジ36は、少なくとも脚部26がキックスタンドとして機能する角度、例えば30度以上とされた際に所定の回転トルクを発生する。これにより脚部26は、支持部24に対して任意の角度に維持することができる。なお、本実施形態のスタンド14は、脚部26が支持部24に対して実質的に一方向にのみ開くように構成されているが、に両方向に開くように構成してもよい。脚部26は矩形以外の形状であってもよい。
【0025】
図1及び
図4に示すように、スタンド14は、支持部24に埋め込まれた複数の第1磁石38N,38Sと、脚部26に埋め込まれた複数の第2磁石39N,39Sとを有する。磁石38N,38S,39N,39Sは、互いに吸着して脚部26を収容状態(第1角度位置)に保持するためのストッパとなる。本実施形態において、第1磁石38Nは、磁石の所望の吸着面がN極となる態様で配置されるものを示し、第1磁石38Sは、磁石の所望の吸着面がS極となる態様で配置されるものを示し、第2磁石39N,39Sについても同様である。磁石38N,38S,39N,39Sの設置数や配置順は
図1及び
図4に示すものに限定されないことは勿論である。
【0026】
図1~
図5に示すように、可撓性部材28は、可撓性を有するシート状の部材である。可撓性部材28は、上記の長辺枠24bとは反対側の長辺枠24cの外縁に沿って設けられ、この外縁から突出した帯形状を有する。可撓性部材28は、長辺枠24cの全長より僅かに短い全長と、電子機器50の側面50bを支持可能な幅とを有する。
【0027】
可撓性部材28は、支持面24aから連続する第1面28aに複数筋の滑り止め部材51が設けられている。滑り止め部材51は、第1面28aの長手方向に沿って延在しており、例えば棒状のラバーである。本実施形態の滑り止め部材51は、第1面28aの裏面である第2面28bには設けられていないが、第2面28bにも設けてもよい。
図4及び
図5に示すスタンド14の使用状態姿勢において、支持部24は適度な角度に維持された状態で、可撓性部材28は長辺枠24cから曲げられて載置面Gに載置される。
【0028】
バー30は、可撓性部材28の支持部24側の基端縁28cとは逆の先端縁28dに沿って設けられている。バー30は磁石に対して吸着する材質であり、本実施の形態では鉄材(ステンレス材等の合金を含む)の丸棒である。バー30は、可撓性部材28よりやや長く、該可撓性部材28から突出している箇所にはキャップ30aが被せられている。バー30は上記の凹部16に挿入される部分であり、該凹部16に挿入可能な太さと長さになっている。凹部16とバー30との長さは略等しく、該バー30は凹部16の内部で長尺方向にずれることがない。可撓性部材28は、先端縁28dがキーボード12と着脱不能に接続されていてもよい。
【0029】
図6は、
図3中のVI-VIに沿う模式的な断面図である。
図6に示すように、本実施形態のスタンド14は、支持部24及び可撓性部材28の表面が表面材40で形成され、脚部26の表面が表面材41で形成されている。表面材40,41は、例えばスエード、フェルト、又は皮革等の生地材であり、厚み方向に多少の弾性を有している。本実施形態の表面材40,41は、スエードで構成している。
【0030】
先ず、支持部24は、内側に開口部32を設けた矩形枠状のプレート状部材42と、プレート状部材42の表面の略全面を覆う表面材40とで構成されている。プレート状部材42は、硬質の樹脂プレートで形成するとよい。プレート状部材42は、金属プレートや硬質のラバープレート等で形成してもよい。表面材40は、プレート状部材42の表面に第1接着層44を介して固定され、プレート状部材42を包み込むように覆っている。
【0031】
可撓性部材28は、2枚の表面材40,40を第2接着層45を介して貼り合わせた構成である。これにより可撓性部材28は、可撓性及び柔軟性を有するシート状部材として形成されている。
図6中に1点鎖線で囲んだ拡大図で模式的に示すように、第2接着層45は、各所に凹凸形状46a或いは穴形状46bが形成されている。一方、第1接着層44は、このような凹凸形状46aや穴形状46bを形成していない。つまり第2接着層45は、第1接着層44よりも接着剤の塗布密度が小さいが、詳細は後述する。また、本実施形態の第2接着層45は1層構造である。つまり第2接着層45は、互いに貼り合わせる2枚の表面材40,40のうち、一方の内面40aのみに接着剤を設け、他方の内面40aには接着剤を設けていない状態で、2枚の表面材40,40同士を貼り合わせた構造である。
【0032】
本実施形態の表面材40は、1枚のシートで形成され、この1枚のシートで支持部24及び可撓性部材28の表面を形成している。具体的には、表面材40は、支持部24の支持面24aから可撓性部材28の第1面28aまで延在し、バー30の外周に巻付けられて折り返されている。表面材40は、バー30に対しては第3接着層48を介して貼り付けられる。バー30で折り返された表面材40は、可撓性部材28の第2面28bから支持部24の支持面24aとは逆の裏面24dまで延在している。さらに表面材40は、支持部24の外周縁部において、支持面24a側から裏面24d側へと折り曲げられ、支持部24の外周側面も覆っている。可撓性部材28は、芯材となる樹脂等の可撓性シートの表面に表面材40を貼り付けた構成等としてもよい。
【0033】
表面材40は、例えば2枚のシートを用い、支持面24a及び第1面28aと、裏面24d及び第2面28bとをそれぞれの別のシートで形成するようにしてもよい。また、表面材40は、支持部24と、可撓性部材28とをそれぞれ別のシートで形成するようにしてもよい。
【0034】
次に、脚部26は、矩形状のプレート状部材26cと、プレート状部材26cの表面の略全面を覆う表面材41とで構成されている。プレート状部材26cは、上記したプレート状部材42と同一又は同様な材質のプレートで形成されることができる。表面材41は、プレート状部材26cの表面に脚部接着層49を介して固定され、プレート状部材26cを包み込むように覆っている。表面材41は、1枚のシートで形成され、この1枚のシートで脚部26の表面を形成している。表面材41は、例えば2枚のシートでプレート状部材26cの各面を覆う構成としてもよい。
【0035】
次に、スタンド14の製造方法の一手順を説明する。
【0036】
図7は、支持部24及び可撓性部材28を構成する表面材40の模式的な展開図である。
図7は、表面材40を接着層44,45が設けられる内面40a側から見た図である。
図8は、スタンド14の製造方法の一手順を示すフローチャートである。
【0037】
先ず、
図7に示すように、表面材40を内面40aを表向きに載置する。この表面材40は、支持部24の裏面24dを形成する裏面形成部40bと、支持面24aを形成する支持面形成部40cと、可撓性部材28の第1面28aを形成する第1面形成部40dと、第2面28bを形成する第2面形成部40eと、バー30に巻き付けられるバー巻付部40fとを有する。なお、支持面形成部40cは、プレート状部材42の外周側面も覆うため、その外周輪郭は裏面形成部40bよりも一回り大きい。また、裏面形成部40b及び支持面形成部40cには、それぞれ開口部32を構成する矩形の開口40gが形成されている。
【0038】
そして、
図7に示すように載置した表面材40の内面40aに接着剤を設け、第1接着部44a及び第2接着部45aを形成する(
図8中のステップS1)。本実施形態では、フィルム状の接着剤を内面40aに貼り付けるように敷設し、これにより各接着部44a,44bを形成する方法を採用している。接着部44a,44bは、フィルム状の接着剤以外で形成してもよく、例えば液状の接着剤を塗布する方法等によって形成してもよい。
【0039】
第1接着部44aは、第1接着層44となる部分である。従って、第1接着部44aは、裏面形成部40bの内面40aと、支持面形成部40cの内面40aとにそれぞれ形成される。
【0040】
第2接着部45aは、第2接着層45となる部分である。上記したように、本実施形態の第2接着層45は1層構造である。従って、第2接着部45aは、互いに貼り合わされて可撓性部材28を構成する第1面形成部40d及び第2面形成部40eのうち、一方の第2面形成部40eの内面40aのみに形成され、他方の第1面形成部40dの内面40aには形成されない。このように、第1面形成部40dの内面40aは、接着剤が設けられない非接着領域R1となる。一方で、第2面形成部40eの内面40aは、接着剤が設けられた接着領域R2であり、この接着領域R2が第2接着部45aを形成している。
【0041】
図7に示すように、第2接着部45aは、多数の穴部46を設けた多孔構造のフィルム状接着剤で形成されている。穴部46は、第2接着部45aを介して表面材40同士が貼り合わされて第2接着層45を形成した場合に、上記した凹凸形状46aや穴形状46bを形成する部分である。穴部46は第1接着部44aには設けられていない。このように、本実施形態では、第2接着部45aが多数の穴部46を有することで、第2接着部45aでの接着剤の塗布密度を第1接着部44aよりも小さくなり、結果として第1接着層44よりも第2接着層45の塗布密度が小さくなる。
【0042】
なお、本実施形態の場合、第2接着部45aを形成する接着剤がフィルム状であるため、内面40aに液状の接着剤を塗布する場合に比べ、穴部46の形成が容易であるという利点がある。穴部46の形状は、円形以外でもよく、第2接着部45aはメッシュ状に接着剤が塗布された構成等でもよい。
【0043】
図7に示すように、バー巻付部40fの内面40aは、上記した第1接着部44aと同様に、穴部46を設けていないフィルム状の接着剤を設けて第3接着部48aを形成している。第3接着部48aは、第3接着層48となる部分である。
【0044】
次に、ステップS2において、裏面形成部40bを第1接着部44aを介してプレート状部材42の裏面24d側の表面に貼り付ける。続いて、ステップS3において、バー巻付部40fをバー30の外周面に巻き付けると共に、表面材40を折り返す。そして、折り返した2枚の表面材40,40同士、つまり第1面形成部40dと第2面形成部40eとを第2接着部45aを介して貼り付け、可撓性部材28を形成する。なお、滑り止め部材51は、予め第1面形成部40dの外面に固着しておいてもよいし、ステップS4又はS5の後に第1面形成部40dの外面に固着してもよい。
【0045】
ステップS4では、支持面形成部40cを第1接着部44aを介してプレート状部材42の支持面24a側の表面に貼り付ける。そして、支持面形成部40cの外周縁部を適宜折り曲げてプレート状部材42の外周側面を覆うことで支持部24を形成する。なお、ステップS2とS4の実施順は逆でもよい。
【0046】
最後に、トルクヒンジ36を介して脚部26を支持部24に連結する(ステップS5)。これによりスタンド14の製造が完了する。なお、脚部26は、上記ステップS1~S4とは別工程にて、プレート状部材26cの表面に表面材41を脚部接着層49を介して貼り付けることで、予め製造しておくとよい。この際、脚部26を構成する表面材41は、例えば表面材40から開口40gを切り抜いた端材を用いると、材料コストを削減することができる。
【0047】
次に、キーボード・スタンドセット10の使用方法の一例を説明する。
【0048】
このようなスタンド14を備えるキーボード・スタンドセット10において、スタンド14をキーボード12に装着する際には、
図2に示すように、バー30を凹部16に挿入すると該バー30が磁石18によって吸着されて固定される。これによりキーボード12とスタンド14とが組み合わされる。この状態において、スタンド14とキーボード12との間をつなぐ可撓性部材28は、フレキシブルヒンジとして機能することもできる。つまりキーボード・スタンドセット10は、可撓性部材28を折り曲げることで、スタンド14をキーボード12の上面に重ねるように折り畳むことができ、持ち運び時等にコンパクトに構成することができる。一方、スタンド14をキーボード12から引っ張ると、バー30が磁石18との吸着力に抗して凹部16から抜ける。これにより、スタンド14はキーボード12から取り外される。
【0049】
本実施形態に係るスタンド14で支持される電子機器50の一例としては、
図5に示すように、いわゆるフォルダブルPCを例示できる。勿論、スタンド14及びキーボード・スタンドセット10は、タブレット式PCやスマートフォン等の他の薄型電子機器にも適用可能である。
【0050】
電子機器50はフォルダブルPCであり、中央のヒンジ部52でつながった第1筐体54と第2筐体56とを備える。電子機器50の背面50aの裏側には、第1筐体54から第2筐体56にかけての略全面に亘る折り畳み可能なディスプレイ58を備える(
図10参照)。ディスプレイ58は、例えばタッチパネル式の有機ELである。電子機器50はディスプレイ58に表示されるソフトウェアキーボードによって入力が可能であるとともに、キーボード12からの入力も可能である。第1筐体54と第2筐体56とをヒンジ部52で折り畳むとディスプレイ58も折り折り畳まれる。
【0051】
図5に示すように、キーボード・スタンドセット10は電子機器50を縦に起立した状態で保持することができる。第1筐体54には支持部24の磁石34に対応する位置に磁石又は鉄材等の吸着体が設けられている。この場合、スタンド14の支持部24は第1筐体54だけを支持しており、第2筐体56はスタンド14から突出していて重心がやや高い位置にあるが、スタンド14は第1筐体54を磁力により吸着しており、電子機器50は安定する。勿論、キーボード・スタンドセット10は電子機器50を横に起立した状態で保持することもできる。この場合、スタンド14と第1筐体54との間で磁力による吸着作用はないが、筐体54,56が左右に並ぶことで重心が低い位置にあるため電子機器50は安定する。
【0052】
電子機器50は、側面50bが可撓性部材28の第1面28aに当接し、滑り止め部材51の作用によって滑ることなく安定する。脚部26はトルクヒンジ36の作用により任意の角度に維持することができるため、ディスプレイ58が見やすいように支持部24の傾斜角度を調整することができる。
【0053】
キーボード12は無線式であることから電子機器50との有線接続は不要である。そのため、キーボード12はスタンド14から取り外してある程度離れた箇所に置いてもキー入力等の操作が可能である。
【0054】
以上のように、本実施形態のスタンド14は、支持部24と、脚部26と、可撓性部材28と、支持部24及び可撓性部材28の表面を形成する表面材40とを備える。ここで、表面材40を固定する接着層44,45は、支持部24において表面材40を固定する第1接着層44よりも、可撓性部材28において表面材40を固定する第2接着層45における接着剤の塗布密度が小さく形成されている。
【0055】
このように当該スタンド14は、柔軟性が要求される可撓性部材28における第2接着層45での接着剤の塗布密度を支持部24における第1接着層44での接着剤の塗布密度よりも小さく構成している。このため、可撓性部材28は、表面材40の接着後に硬化した第2接着層45によって柔軟性が損われることが抑制され、高い柔軟性が得られる。その結果、可撓性部材28は、例えば載置面G上で電子機器50の側面50bを支持し、或いはキーボード12との間のフレキシブルヒンジとして機能させる際、高い柔軟性が得られるため、折曲時の操作性や載置面Gに対する追従性が向上する。また可撓性部材28の柔軟性が向上することで、可撓性部材28を折り曲げてスタンド14をキーボード12の上面に重ねるように折り畳む際、磁石18からバー30が脱落することも抑制できる。しかも可撓性部材28は、外観上で視認されない第2接着層45を利用してその柔軟性を向上させているため、例えば外面に切り込み等の柔軟性向上のための構造を設ける必要がない。一方で、剛性が要求される支持部24における第1接着層44での接着剤の塗布密度は、第2接着層45よりも高いことで、スタンド14の起立時の安定性が向上し、電子機器50の起立時のぐらつきを一層抑制することができる。
【0056】
特に、本実施形態の可撓性部材28は、例えばスエードのような生地材で形成される2枚の表面材40,40同士を第2接着層45で貼り合わせた構成である。このため、可撓性部材28は、第2接着層45での接着剤の塗布密度が小さいことで、表面材40の材質が本来持つ柔軟性が損なわれず、一層高い柔軟性を確保できる。
【0057】
この際、第2接着層45は、2枚の表面材40,40の一方のみに接着剤を設けた1層構造とされている。このため、可撓性部材28は、第2接着層45の厚みを最小限に抑えることができ、柔軟性が一層向上する。なお、上記では、可撓性部材28の第1面28aを形成する表面材40の第1面形成部40dに接着剤を設けず、第2面28bを形成する第2面形成部40eのみに接着剤を設ける製造方法を例示したが、接着剤は形成部40d,40eのいずれに設けてもよい。但し、第1面形成部40dは、その外面に滑り止め部材51が設けられる。このため、仮に第1面形成部40dに接着剤を設けると、形成部40d,40eの貼り合わせ時に滑り止め部材51の凹凸に起因して接着圧力が不均等になり、形成部40d,40e間を均等に貼り付けることができなくなる可能性もある。この点、本実施形態では、滑り止め部材51を持たない第2面形成部40eに接着剤を設けているため、このような不具合の発生を抑制できるという利点がある。
【0058】
図9は、変形例に係るスタンド14Aの正面図である。
図10は、電子機器50を縦置きにして
図9に示すスタンド14Aに立てかけた状態を示す一部拡大模式斜視図である。なお、
図9及び
図10において、
図1~
図8に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0059】
図9及び
図10に示すスタンド14Aは、上記したスタンド14と比べて、可撓性部材28が切り抜き穴60を備える点が異なる。切り抜き穴60は、例えば可撓性部材28の長手方向で略中央に形成され、ある程度の長さと幅を有する矩形の繰り抜き穴である。
【0060】
図10に示すように、電子機器50の側面50bには、例えば一対のマイク孔62a,62bが形成されている。マイク孔62a,62bは、電子機器50の第2筐体56内に設置されたマイクに向かって外部の音を通過させるための微細な孔部である。切り抜き穴60は、可撓性部材28の第1面28aに側面50bが載置された際、マイク孔62a,62bとオーバーラップする位置に設けられ、マイク孔62a,62bを覆わない。
図10中の参照符号64は、電子機器50の上面に設けられ、筐体54,56間を折り畳んだ際に、この折り畳み状態を保持するために筐体54,56間を吸着する磁石である。
【0061】
従って、スタンド14Aでは、可撓性部材28の第1面28aに側面50bを載置して電子機器50を支持した際、例えばバー30が磁石64に吸着し、可撓性部材28が巻き付くように側面50bを覆った場合であっても、マイク孔62a,62bが切り抜き穴60を通して露出する。
【0062】
すなわち、切り抜き穴60を持たない上記のスタンド14では、脚部26の角度調整やディスプレイ58に対するタッチ操作等で可撓性部材28が微細な振動を生じた場合には、この振動がマイク孔62a,62bに影響を及ぼす懸念もある。そうすると、電子機器50のマイクのゲインが低下し、周囲の音声等を適切に集音することができなくなる可能性があった。この点、当該スタンド14Aは、切り抜き穴60でマイク孔62a,62bが露出することで、このようなゲインの低下を抑制できる。特に、スタンド14Aは、上記のスタンド14と同じく、高い柔軟性を有する可撓性部材28を備える。このため、可撓性部材28は、側面50bに巻き付き易く、切り抜き穴60は一層効果的である。切り抜き穴60は、スタンド14Aの使用が想定される電子機器のマイク孔を覆わない形状や配置であれば、その形状や配置は適宜変更可能である。
【0063】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0064】
上記では、スタンド14,14Aは、キーボード12と接続される構成を例示したが、スタンド14,14Aは、キーボード12と接続されない単独のスタンドとして用いることもできる。この場合、スタンド14,14Aは、例えば
図10に示すスタンド14Aのように、バー30を電子機器50の磁石64に吸着させて用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 キーボード・スタンドセット
12 キーボード
14,14A スタンド
24 支持部
26 脚部
28 可撓性部材
30 バー
40,41 表面材
44 第1接着層
45 第2接着層
46 穴部
50 電子機器
60 切り抜き穴