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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112121
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20240813BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240813BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016995
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】日立Astemo上田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕
(72)【発明者】
【氏名】野村 信之
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB02
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505GG05
5H505HA07
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ22
5H505JJ28
5H505MM06
5H770BA01
5H770DA03
5H770EA01
(57)【要約】
【課題】電圧制限が厳しくても、ワインドアップ現象および制御性能の低下を防止することができる駆動装置の提供。
【解決手段】駆動装置は、電圧指令値V1と電圧指令値V2との差Δ1に基づく値K・Δ1を、積分器120へフィードバックする加算器102および増幅部103と、偏差σから値K・Δ1を減算して差分Δ2を算出する加算器101と、差分Δ2を出力Δ3に変換して積分器120へ出力するリミット処理部200と、を備え、リミット処理部200は、出力Δ3の正負を偏差σの正負と一致させ、かつ、出力Δ3の絶対値を、偏差σの絶対値|σ|を上限値として制限する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動指令と前記電動機の駆動情報との偏差に基づく比例制御および積分制御を行い生成される第1電圧指令を、所定値以下に制限するリミット処理を施して第2電圧指令に変換する電圧制限部を備え、前記第2電圧指令に基づいて前記電動機を制御する駆動装置において、
前記第1電圧指令と前記第2電圧指令との差に基づくフィードバック値を、前記積分制御の積分器へフィードバックするフィードバック部と、
前記偏差から前記フィードバック値を減算して第1差分を算出する演算部と、
前記第1差分を第2差分に変換して前記積分器へ出力する差分変換部と、を備え、
前記差分変換部は、前記第2差分の正負を前記偏差の正負と一致させ、かつ、前記第2差分の絶対値を、前記偏差の絶対値を上限値として制限する、駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記積分器は、該積分器の出力値の上限を制限するリミット処理部を備える、駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記差分変換部は、
前記第1差分を、前記偏差の絶対値を上限値とする正の値に変換して出力する第1変換部と、
前記第1差分を、絶対値が前記偏差の絶対値と等しい負の値を下限値とする負の値に変換して出力する第2変換部と、
前記偏差が正である場合には前記第1変換部の出力を前記第2差分として積分器へ出力し、前記偏差が負である場合には前記第2変換部の出力を前記第2差分として積分器へ出力する切替部と、
を備える、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のステアリングやブレーキ装置などの補機系部品の電動化が進んでいる。補器系の電動化によって、装置の高応答化や、自動車の操作性・制御性の向上が期待されている。このような電動化補機は、一般に補機用バッテリの直流電力をインバータなどの電力変換装置によって交流電力に変換し、電動機を駆動することでステアリングやブレーキなどのアクチュエータを動作させている。また、電動機には小型化・高出力密度化といった観点から、永久磁石を回転子に備えた永久磁石型同期電動機(以下、同期電動機)を用いることが多い。
【0003】
ステアリングやブレーキなど自動車の重要部品を、電力変換装置および同期電動機によって電動化する場合、それらの制御性能はもちろんのこと、低コスト化を実現することも重要である。制御性能といった観点では、ステアリングやブレーキなどのアクチュエータを駆動するための駆動指令である同期電動機の位置指令や速度指令に応じて、実際の同期電動機の位置や速度といった駆動情報を高速かつ高精度に制御することが重要である。特に、高速に制御するためには、電力変換装置や同期電動機の許容電流を最大限に活用してアクチュエータの性能を最大限に引き出す必要がある。
【0004】
また、低コスト化といった観点では、ステアリングやブレーキを構成するハードウェアのコスト削減が望まれる。例えば、低コスト化を実現する手段の一つとして、電力変換装置のスイッチ素子である半導体素子を低価格な素子で構成する方法がある。しかしながら、低価格な素子で電力変換装置を構成する場合、素子の電気的・熱的制約が厳しくなってしまい、半導体素子に流すことができる電流の連続定格が通常の素子よりも制限されてしまうことがある。
【0005】
これに対し、電力変換装置を駆動する電圧指令値を制限することで電流を制限する手法がある。電圧が制限される場合には、同期電動機の駆動指令に対し実際の駆動情報が追従できなくなり制御偏差が生じることがある。このとき、制御に積分要素があると積分器に制御偏差が蓄積され続け、蓄積した偏差を解消するのに時間を要する。そのため、駆動指令に対してオーバーシュートや応答の不安定化等のワインドアップ現象を招くおそれがある。
【0006】
このようなワインドアップ現象への対策として、従来からアンチワインドアップ手法として種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1では、制御出力の制限前後の差を演算し、積分器へ負帰還することでワインドアップ現象の対策を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-097864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、出力電圧の制限が厳しい場合には、上述のように制御出力の制限前後の差を負帰還すると、元々の制御偏差よりも大きな値を負帰還してしまう可能性がある。その場合、元々の偏差の符号が負帰還によって反転してしまい、制御偏差に対して逆方向に制御出力してしまい、制御が不安定になるという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様による駆動装置は、電動機の駆動指令と前記電動機の駆動情報との偏差に基づく比例制御および積分制御を行い生成される第1電圧指令を、所定値以下に制限するリミット処理を施して第2電圧指令に変換する電圧制限部を備え、前記第2電圧指令に基づいて前記電動機を制御する駆動装置において、前記第1電圧指令と前記第2電圧指令との差に基づくフィードバック値を、前記積分制御の積分器へフィードバックするフィードバック部と、前記偏差から前記フィードバック値を減算して第1差分を算出する演算部と、前記第1差分を第2差分に変換して前記積分器へ出力する差分変換部と、を備え、前記差分変換部は、前記第2差分の正負を前記偏差の正負と一致させ、かつ、前記第2差分の絶対値を、前記偏差の絶対値を上限値として制限する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電圧制限が厳しい駆動装置において、ワインドアップ現象および制御性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態にかかる駆動装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、制御回路の要部を示すブロック図である。
図3図3は、第1のリミッタの一例を説明するための図である。
図4図4は、第2のリミッタの一例を説明するための図である。
図5図5は、比較例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態における制御回路の要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる駆動装置1の概略構成を示す図である。駆動装置1は、電力変換装置とも呼ばれる。駆動装置1は、制御回路10、ドライバ回路11および電力変換回路12を備えている。制御回路10には、モータ(例えば、同期電動機などの電動機)3を駆動するための駆動指令Scが入力される。制御回路10は、駆動指令Scと実際の駆動情報との差(偏差)に基づいて、駆動指令Scと駆動情報が一致するように制御信号(PWM信号)を生成する。PWM信号はドライバ回路11へ入力される。ドライバ回路11はPWM信号に基づいて電力変換回路12のスイッチ素子のオンオフを制御する。その結果、直流電源2の直流電力が交流電力に変換され、モータ3に供給される。
【0014】
図2は、制御回路10の要部を示すブロック図である。制御回路10は内部に不図示のCPU、RAM、ROM、通信回路等を備えている。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行することにより図2に示す各部の機能を実現する。ROMは、電気的に書き換え可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュROMでも良い。
【0015】
制御回路10は、アンチワインドアップ機能部100、比例ゲイン110、積分器120、積分ゲイン130および電圧制限部140を備えている。さらに、アンチワインドアップ機能部100は、加算器101,102、増幅部103およびリミット処理部200を備えている。
【0016】
駆動指令Scと実際の駆動情報Siとの差である偏差σは、比例制御の比例ゲイン110と、アンチワインドアップ機能部100の加算器101とにそれぞれ入力される。加算器101は、偏差σと増幅部103の出力K・Δ1との差分Δ2(=σ-K・Δ1)を演算する。その差分Δ2はリミット処理部200へ入力される。
【0017】
リミット処理部200は、リミッタ201,202および切替器203を備える。なお、詳細は後述するが、リミット処理部200は、偏差σの正負に応じてリミッタ201の出力Aまたはリミッタ202の出力Bのいずれか一方を、出力Δ3として積分器120へ出力する。積分器120は、入力された出力Δ3を時間積分演算し、演算結果を積分ゲイン130に入力する。
【0018】
比例ゲイン110の出力と積分ゲイン130の出力とは加算され、電圧指令値V1として電圧制限部140に入力される。電圧制限部140は、電力変換回路12やモータ3を保護する目的で電圧指令値V1の値を制限値以下に制限するものである。例えば、電力変換回路12にコスト削減の目的で安価な半導体素子を用いた場合には、そのような制限が必要となる場合がある。電圧制限部140からは、制限値以下に制限された電圧指令値V2が出力される。制御回路10は、電圧指令値V2に基づくPWM信号を不図示のPWM信号生成部で生成し、図1のドライバ回路11に出力する。
【0019】
また、制限前の電圧指令値V1および制限後の電圧指令値V2は加算器102に入力され、加算器102においてそれらの差分Δ1=V1-V2が算出される。差分Δ1は増幅部103でK・Δ1に増幅された後に、加算器101に入力される。
【0020】
<リミット処理部200の説明>
リミット処理部200は、加算器101の出力信号の正負を偏差σの正負と一致させ、かつ、加算器101の出力信号の絶対値の大きさを、偏差σの絶対値を上限として制限する機能を有するものである。リミット処理部200からは、入力(差分Δ2)に対して、偏差σと同符号であって、かつ、絶対値の大きさが偏差σの絶対値以下である出力Δ3が出力される。本実施形態では、一例として、上述したように、2種類のリミッタ201,202と、リミッタ201,202の出力A,Bの内のいずれを使用するかを切り替える切替器203とで、リミット処理部200を構成している。なお、リミット処理部200の具体的な構成は、図2に示す構成に限定されるものではなく、上述した機能を有する種々の構成が可能である。
【0021】
リミッタ201,202には偏差σおよび差分Δ2が入力される。図3は、第1のリミッタ201の一例を説明するための図である。図3において、横軸は差分Δ2を縦軸は出力Aをそれぞれ表し、リミッタ201は、入力される差分Δ2に対して値Aを出力する。出力Aの上限は正の値である|σ|に設定され、下限は正の値である2h-|σ|に設定される。なお、|σ|は偏差σの絶対値を表す。
【0022】
出力Aは、差分Δ2がΔ2>xの場合にはA=|σ|となり、Δ2<-xの場合にはA=2h-|σ|となる。このように、入力される差分Δ2に対して、出力Aは|σ|を上限とする正の値をとる。このように設定されたリミッタ201は、差分Δ2を、偏差σの絶対値|σ|を上限値とする正の値に変換して出力する変換部として機能するものである。
【0023】
図4は、第2のリミッタ202の一例を説明するための図である。図4において、横軸は差分Δ2を縦軸は出力Bをそれぞれ表し、リミッタ202は、入力される差分Δ2に対して値Bを出力する。出力Bの下限は負の値である-|σ|に設定され、上限は負の値である|σ|-2hに設定される。すなわち、入力される差分Δ2に対して、出力Bは-|σ|を下限とする負の値をとる。出力Bは、差分Δ2がΔ2<-xの場合にはB=-|σ|となり、Δ2>xの場合にはB=|σ|-2hとなる。このように設定されたリミッタ202は、差分Δ2を、-|σ|を上限値とする負の値に変換して出力する変換部として機能するものである。
【0024】
図2に戻って、リミッタ201,202の出力A,Bは、切替器203に入力される。切替器203は、入力される偏差σがσ≧0の場合には値Aをリミット処理部200の出力Δ3として出力し、σ<0の場合には値Bをリミット処理部200の出力Δ3として出力する。すなわち、リミット処理部200によって、差分Δ2は、偏差σと同符号であって、絶対値の大きさが偏差σの絶対値を上限とする出力Δ3に変換される。リミット処理部200の出力Δ3は、積分器120に入力される。
【0025】
ところで、図2に示すアンチワインドアップ機能部100を備えない従来の構成の場合には、次のような不都合が生じる。電圧制限部140における電圧制限が厳しい場合、制御の指令値(Sc)に対してフィードバック値(Si)が追従できず、偏差σが生じやすくなる。そのため、積分器120に偏差σが蓄積され続け、蓄積した偏差を解消するのに時間を要するため、応答遅れや不安定化をもたらすワインドアップ現象が生じやすくなる。
【0026】
そのため、前述したように、制御出力の制限前後の差分を積分器へ負帰還することでワインドアップ現象の対策を行う方法が知られている。例えば、図5の比較例に示すようにアンチワインドアップ機能部300を設けて、電圧制限部140の前後の電圧指令値の差分Δ1を、増幅部103を介して積分器120へ負帰還する。これにより、電圧指令値V1が電圧制限を超過する場合には、超過した分を偏差σから差し引くことで積分器120の飽和が防止される。しかしながら、電圧制限が厳しい場合には、差分Δ2の符号(正負)が偏差σの符号(正負)と逆になって積分制御が不安定になるおそれがあった。
【0027】
一方、本実施の形態では、図2に示すように、積分器120の前段にリミット処理部200を設けたので、積分器120に入力される信号の符号は偏差σの符号と一致する。そのため、図5の構成で生じたような積分器120への入力が不安定となるという現象を、本実施形態では防止することができる。さらに、加算器101から出力される差分Δ2に対して、偏差σが正の場合は|σ|=σを上限値とし、偏差σが負の場合は-|σ|=σを下限値とする。それにより、積分器120のワインドアップ現象を防ぎつつ積分制御を行うことができ、制御性能の低下が防止される。
【0028】
以上のように、本実施形態では、電圧制限が厳しい場合であってもワインドアップ現象を防ぎつつ制御を安定させるように構成したので、低価格な半導体素子を用いつつ制御性能の最大化を実現することができ、装置の低コスト化・高性能化につなげることができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態における制御回路10の要部を示すブロック図である。なお、第1の実施形態と同様の機能を持つ構成には、同一の符号を付している。第2の実施形態では、制御回路10において、図2の積分器120に代えて積分器420を設けた点が第1の実施形態と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0030】
積分器420は、乗算器421、加算器422、保持器423およびリミッタ424を備える。乗算器421は、リミット処理部200から入力された出力Δ3に対して積分時間Tcを乗じる。保持器423は、積分器420の出力値を保持して前回値として加算器422へ出力する。加算器422は、保持器423の出力と乗算器421の出力を加算することで積分演算する。リミッタ424は、加算器422の出力を所定の値の範囲内に制限して積分器420の演算結果として出力する。
【0031】
以上のように、第2の実施形態では、積分器420にリミッタ424を設けている。そのため、保持器423の出力と乗算器421の出力を加算器422で加算演算して得られる積分値がリミッタ424に設定される制限値を超過した場合、積分器420の出力は一定に保たれて積分演算を停止することができる。その結果、上述した第1の実施形態と比較して積分器420の蓄積が減り、積分器420に蓄積した偏差を解消する時間をより短縮することができる。なお、リミッタ424における制限値については、電圧制限部140の制限値と等しく設定するのが好ましい。また、図6に示す積分器420の構成は一例であり、出力に上限値を有する構成であれば図6の構成に限定されない。
【0032】
なお、上述した実施形態における駆動指令および駆動情報は、例えば、モータ3の位置指令・位置や、速度指令・速度、電流指令・電流など、モータ3の駆動にかかわる情報であればよい。
【0033】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0034】
(C1)図1,2等に示すように、駆動装置1は、モータ3の駆動指令Scとモータ3の駆動情報Siとの偏差σに基づく比例制御および積分制御を行い生成される電圧指令値V1を、所定値以下に制限するリミット処理を施して電圧指令V2に変換する電圧制限部140を備え、電圧指令値V2に基づいてモータ3を制御する。そして、駆動装置1は、電圧指令値V1と電圧指令値V2との差Δ1に基づくフィードバック値(K・Δ1)を、積分制御の積分器120へフィードバックするフィードバック部(加算器102および増幅部103)と、偏差σからフィードバック値K・Δ1を減算して第1の差分Δ2を算出する演算部(加算器101)と、第1の差分Δ2を第2の差分(出力Δ3)に変換して積分器120へ出力する差分変換部(リミット処理部200)と、を備え、リミット処理部200は、出力Δ3の正負を偏差σの正負と一致させ、かつ、出力Δ3の絶対値を、偏差σの絶対値|σ|を上限値として制限する。
【0035】
上記のように、積分器120に入力される出力Δ3に関して、出力Δ3の正負を偏差σの正負と一致させることにより、積分器420への入力が不安定となるという現象を防止することができる。さらに、出力Δ3の絶対値を、偏差σの絶対値|σ|を上限値として制限することで、積分器120のワインドアップを防ぎつつ積分制御を行うことができ、制御性能の低下を防止することができる。
【0036】
(C2)上記(C1)において、図6等に示すように、積分器420は、該積分器420の出力値の上限を制限するリミット処理部(リミッタ424)を備えるようにしても良い。積分器420にリミッタ424を設けることで、積分器420で演算される積分値がリミッタ424に設定される制限値を超過した場合に、積分器420の出力は一定に保たれて積分演算を停止することができる。その結果、積分器420の蓄積が減少し、積分器420に蓄積した偏差を解消する時間をより短縮することができる。
【0037】
(C3)上記(C1)において、図2に示すように、差分変換部としてのリミット処理部200は、第1の差分Δ2を、偏差σの絶対値|σ|を上限値とする正の値に変換して出力する第1変換部(リミッタ201)と、第1の差分Δ2を、絶対値が偏差σの絶対値|σ|と等しい負の値を下限値とする負の値に変換して出力する第2変換部(リミッタ202)と、偏差σが正である場合にはリミッタ201の出力Aを第2差分(出力Δ3)として積分器120へ出力し、偏差σが負である場合にはリミッタ202の出力Bを出力Δ3として積分器120へ出力する切替部203と、を備える。
【0038】
リミット処理部200をこのような構成とすることで、出力Δ3の正負が偏差σの正負と一致するとともに、出力Δ3の絶対値を偏差σの絶対値|σ|を上限値として制限することができる。その結果、積分器120のワインドアップを防ぎつつ積分制御を行うことが可能となり、制御性能の低下を防止することができる。
【0039】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…駆動装置、2…直流電源、3…モータ、10…制御回路、11…ドライバ回路、12…電力変換回路、100…アンチワインドアップ機能部、110…比例ゲイン、101,102,422…加算器、103…増幅部、120,420…積分器、130…積分ゲイン、140…電圧制限部、200…リミット処理部、201,202,424…リミッタ、203…切替器、421…乗算器、423…保持器
図1
図2
図3
図4
図5
図6