IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フタバ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-移動式除草装置 図1
  • 特開-移動式除草装置 図2
  • 特開-移動式除草装置 図3
  • 特開-移動式除草装置 図4
  • 特開-移動式除草装置 図5
  • 特開-移動式除草装置 図6
  • 特開-移動式除草装置 図7
  • 特開-移動式除草装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112122
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】移動式除草装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/04 20060101AFI20240813BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240813BHJP
【FI】
A01M21/04 Z
G06T7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016996
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆
【テーマコード(参考)】
2B121
5L096
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121DA17
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA26
2B121FA02
2B121FA14
5L096CA02
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】移動式除草装置の構成を簡素化する。
【解決手段】移動式除草装置が位置する仮想平面には、レーザ部から照射される少なくとも1つのビームの各々に対応して、少なくとも1つの円弧経路が設けられている。ビームのレーザヘッドと、該ビームに対応する円弧経路との間の円弧距離は、該ビームに設定可能なワーキングディスタンスと一致する。円弧経路に対応して、該円弧経路を含む円弧領域が設けられている。制御部は、円弧領域に位置する植物に対しビームを照射するよう構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式除草装置であって、
前記移動式除草装置の下方の対象領域を撮影し、画像を生成するよう構成されるカメラと、
少なくとも1つのビームを照射するよう構成されるレーザ部と、
前記ビームが照射される照射位置を変更するよう構成される調整部と、
前記画像に基づき前記対象領域に位置する予め定められた植物を検出すると共に、前記調整部を介して前記ビームの前記照射位置を変更し、検出した前記植物に前記ビームを照射するよう構成される制御部と、を備え、
前記移動式除草装置が位置する仮想平面には、それぞれの前記ビームに対応して、円弧状の経路である少なくとも1つの円弧経路が設けられており、それぞれの前記ビームを照射するレーザヘッドと、該ビームに対応する前記円弧経路に含まれる全ての点との間の距離である円弧距離は、該ビームに設定可能なワーキングディスタンスと一致し、
それぞれの前記円弧経路に対応して、該円弧経路を含み、且つ、円弧状に延びる領域である円弧領域が設けられており、
前記対象領域における前記移動式除草装置の進行方向に直交する左右方向の全ての位置には、少なくとも1つの前記円弧領域が位置し、
前記制御部は、前記円弧領域に位置する前記植物に対し、該円弧領域に含まれる前記円弧経路に対応する前記ビームを照射するよう構成される、
移動式除草装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式除草装置であって、
前記レーザ部は、前記ビームとして、前記ワーキングディスタンスが固定された少なくとも1つの固定ビームを照射するよう構成されており、
前記固定ビームに対応して、1つの前記円弧経路が設けられている
移動式除草装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動式除草装置であって、
前記レーザ部は、前記ビームとして、前記ワーキングディスタンスを変更可能な少なくとも1つの可変ビームを照射するよう構成されており、
前記可変ビームに対応して、前記円弧距離が異なる前記円弧経路である複数の可変円弧経路が設けられており、それぞれの前記可変円弧経路の前記円弧距離は、当該可変円弧経路に対応する前記可変ビームに設定可能な前記ワーキングディスタンスと一致し、
前記可変円弧経路を含む前記円弧領域を、可変円弧領域とし、
前記制御部は、それぞれの前記可変円弧領域に位置する前記植物に対し、前記ワーキングディスタンスを該可変円弧領域に含まれる前記可変円弧経路の前記円弧距離に応じて設定した状態で、該可変円弧経路に対応する前記可変ビームを照射するよう構成される
移動式除草装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動式除草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耕地を走行し、三次元イメージャにより生成された画像に基づき不要植物を検出すると共に、検出した不要植物にビームを照射することで該不要植物を除去する自走式の不要植物の除去システムが知られている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-53941号公報
【特許文献2】特開2015-53942号公報
【特許文献3】特開2015-62412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に開示された除去システムでは、ビームの光源までの距離が異なる様々な位置で捕捉された不要植物に対し、ビームを照射する。このため、不要植物とビームの光源との間の距離に応じて、ビームのワーキングディスタンスを大きく変更することが必要となる可能性がある。これにより、除草に要する時間が長くなったり、システムの構成が複雑化したりする恐れがある。
【0005】
本開示の一態様では、移動式除草装置の構成を簡素化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、移動式除草装置であって、カメラと、レーザ部と、調整部と、制御部と、を備える。カメラは、移動式除草装置の下方の対象領域を撮影し、画像を生成するよう構成される。レーザ部は、少なくとも1つのビームを照射するよう構成される。調整部は、ビームが照射される照射位置を変更するよう構成される。制御部は、画像に基づき対象領域に位置する予め定められた植物を検出すると共に、調整部を介してビームの照射位置を変更し、検出した植物にビームを照射するよう構成される。移動式除草装置が位置する仮想平面には、それぞれのビームに対応して、円弧状の経路である少なくとも1つの円弧経路が設けられており、それぞれのビームを照射するレーザヘッドと、該ビームに対応する円弧経路に含まれる全ての点との間の距離である円弧距離は、該ビームに設定可能なワーキングディスタンスと一致する。それぞれの円弧経路に対応して、該円弧経路を含み、且つ、円弧状に延びる領域である円弧領域が設けられている。対象領域における移動式除草装置の進行方向に直交する左右方向の全ての位置には、少なくとも1つの円弧領域が位置する。制御部は、円弧領域に位置する植物に対し、該円弧領域に含まれる円弧経路に対応するビームを照射するよう構成される。
【0007】
上記構成によれば、ワーキングディスタンスに基づき定められた円弧領域に位置する植物に対し、ビームが照射される。このため、ワーキングディスタンスを変更するための構成が無くても、ワーキングディスタンスが適切な状態でビームを植物に照射できる。あるいは、ワーキングディスタンスが適切な状態にするために必要となるワーキングディスタンスの変更量を低減でき、その結果、ワーキングディスタンスを変更するための構成を簡素化できる。したがって、移動式除草装置の構成を簡素化できる。
【0008】
本開示の一態様では、レーザ部は、ビームとして、ワーキングディスタンスが固定された少なくとも1つの固定ビームを照射するよう構成されていてもよい。固定ビームに対応して、1つの円弧経路が設けられていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、固定ビームのワーキングディスタンスを変更するための構成が不要となる。したがって、移動式除草装置の構成を簡素化できる。
本開示の一態様では、レーザ部は、ビームとして、ワーキングディスタンスを変更可能な少なくとも1つの可変ビームを照射するよう構成されていてもよい。可変ビームに対応して、円弧距離が異なる円弧経路である複数の可変円弧経路が設けられており、それぞれの可変円弧経路の円弧距離は、当該可変円弧経路に対応する可変ビームに設定可能なワーキングディスタンスと一致してもよい。可変円弧経路を含む円弧領域を、可変円弧領域としてもよい。制御部は、それぞれの可変円弧領域に位置する植物に対し、ワーキングディスタンスを該可変円弧領域に含まれる可変円弧経路の円弧距離に応じて設定した状態で、該可変円弧経路に対応する可変ビームを照射するよう構成されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、植物に対し好適にビームを照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の移動式除草装置を側方から視認した説明図である。
図2】第1実施形態の移動式除草装置を上方から視認した説明図である。
図3】第1実施形態の除草処理のフローチャートである。
図4】第2実施形態の対象領域の説明図である。
図5】第3実施形態の対象領域の説明図である。
図6】第3実施形態の対象領域の説明図である。
図7】第3実施形態の対象領域の説明図である。
図8】第4実施形態の対象領域の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0013】
[1.第1実施形態]
[(1)概要]
第1実施形態の移動式除草装置1は、作物P1を栽培する耕地2にて、作物P1以外の植物(例えば、雑草等)である不要植物P2を除去する(図1参照)。移動式除草装置1は、自走式であり、耕地2を走行しながら不要植物P2を検出すると共に、検出した不要植物P2にビームBを照射することで、除草作業を行う。以後、移動式除草装置1の進行方向に平行な方向を、前後方向とも記載し、前後方向に直交する方向を、左右方向とも記載する。
【0014】
移動式除草装置1は、制御部10、レーザ部11、カメラ12、照明部13、筐体14、カバー15、及び車輪16と、図示しない電源、及びモータとを備える(図1、2参照)。
【0015】
筐体14は、移動式除草装置1の上部に位置し、制御部10及び電源を収容する。
カバー15は、筐体14における四角形状の下面の各辺から下方に突出するように設けられる壁状の部位であり、筐体14の下側の空間を四方から囲む。筐体14の真下の地面には、カバー15により囲まれた一例として四角形の対象領域20が位置する。なお、移動式除草装置1は、カバー15を備えない構成であっても良い。
【0016】
制御部10は、移動式除草装置1を統括制御する部位であり、CPU及びメモリを備える。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行し、これにより、移動式除草装置1の各種機能が実現される。なお、制御部10により実現される各種機能は、プログラムの実行によって実現することに限るものではなく、その一部又は全部について、1つ又は複数のハードウェアを用いて実現してもよい。
【0017】
この他にも、制御部10は、移動式除草装置1の位置(以後、現在地)を検出するよう構成される。具体的には、制御部10は、例えば、GPSにより現在地を検出しても良いし、センサにより移動式除草装置1の速度及び進行方向を検出し、これらの検出結果に基づき、現在地を検出しても良い。
【0018】
レーザ部11は、筐体14の下部に設けられており、対象領域20に位置する不要植物P2に対しビームBを照射する(詳細は後述する)。
カメラ12は、筐体14の下部に設けられており、上方から対象領域20を撮影し、対象領域20の画像を生成する。
【0019】
照明部13は、筐体14の下部に設けられており、上方から対象領域20を照らす。
車輪16は、カバー15の下部に設けられており、移動式除草装置1を走行させるため、車輪16の付近に設けられたモータにより駆動される。しかし、これに限らず、車輪16に替えて、例えば、少なくとも1つの電動式クローラーが用いられても良いし、移動式除草装置1は、飛行により移動しても良い。
【0020】
電源は、充電式のバッテリとして構成され、移動式除草装置1の各部位に電力を供給する。
[(2)レーザ部]
第1実施形態では、レーザ部11は、1つのレーザヘッド11Cと、レーザ発振器11Aと、光学系11Bとを備え、1つのビームBを照射するよう構成される(図1、2参照)。
【0021】
レーザヘッド11Cは、筐体14の下面に設けられ、一例として、左右方向の中央の位置から、対象領域20に向けて、レーザ発振器11Aにて生成されたビームBを照射する。
【0022】
光学系11Bは、制御部10からの指示に応じてビームBの照射方向を調整する調整部としての機能を有しており、一例として、ガルバノミラーを有する。光学系11BがビームBの照射方向を変更することで、対象領域20におけるビームBの照射位置が変更される。
【0023】
第1実施形態のレーザ部11では、ビームBのワーキングディスタンスの変更が不可能な構成となっており、ワーキングディスタンスが所定の値に固定されている。ワーキングディスタンスとは、レーザヘッド11Cにおける出力部と、出力部を通過して照射されたビームBの焦点の位置との間の距離である。なお、出力部とは、ビームBがレーザヘッド11Cの外部に出力される直前に通過する部分であり、例えば、保護カバー等であっても良い。出力部とは、レーザヘッド11CにおけるビームBの光源に相当する。つまり、レーザ部11から照射されたビームB(換言すれば、固定ビーム)の焦点は、レーザヘッド11Cの光源からワーキングディスタンスを隔てた位置に形成される。
【0024】
[(3)円弧経路及び円弧領域]
移動式除草装置1が、仮想平面3(図1参照)を走行して除草作業を行うと仮定する。仮想平面3における筐体14の下方の領域には、対象領域20の右端から左端まで延びる円弧状の経路である円弧経路30が、ビームBに対応して設けられる(図2参照)。円弧経路30は、レーザヘッド11CにおけるビームBの光源よりも前側に位置する。また、移動式除草装置1の停止中において、円弧経路30に含まれる全ての点と、ビームBの光源との間の距離は、ワーキングディスタンスと一致する。つまり、円弧経路30の位置は、レーザヘッド11Cの位置を基準として定められており、移動式除草装置1の移動に伴い円弧経路30は変位する。
【0025】
また、仮想平面3における円弧経路30を含む領域を、円弧領域31とする。円弧領域31は、対象領域20における右端から左端まで、円弧領域31に沿って円弧状に延びる。一例として、円弧領域31は、幅が一定の帯状の形状であり、円弧領域31の幅方向の中央に円弧経路30が位置する。しかし、これに限らず、円弧領域31の幅や、円弧経路30に対する円弧領域31の相対的な位置は、適宜定められ得る。
【0026】
そして、レーザ部11は、光学系11BによりビームBの照射方向を変更することで、円弧領域31内の全ての位置を、ビームBの照射位置として設定可能となっている。円弧領域31に照射されるビームBは、前方に向かうに従い下方に向かうよう仮想平面3に対し傾斜する。
【0027】
なお、円弧経路30の中心角は、一例として60°であると共に、対象領域20の左右方向の距離は、一例として600mmとなっている。つまり、ビームBの照射方向が傾斜していることで、光学系11BがビームBの照射方向を変更する範囲を抑えつつ、対象領域20の右端から左端まで、広い範囲でビームBが照射可能となっている。
【0028】
また、レーザヘッド11CのビームBの光源と仮想平面3との距離(換言すれば、高さ)は、一例として400mmであり、仮想平面3上におけるビームBの光源と円弧経路30との距離は、一例として450mmである。つまり、ビームBの角度により、ビームBの光源の高さが該距離よりも低くなっており、移動式除草装置1の高さが抑制されている。
【0029】
[(4)除草作業について]
移動式除草装置1は、制御部10のメモリに記憶されている除草経路に従い耕地2を走行し、除草作業を行う(図1、2参照)。移動式除草装置1は、耕地2における作物P1の栽培エリア(例えば、畝)の上方に筐体14が位置する状態で耕地2を走行する。これにより、除草が行われる対象領域20が作物P1の栽培エリアに配置される。
【0030】
そして、移動式除草装置1は、除草経路の始点から終点まで走行しながら対象領域20に存在する不要植物P2を検出し、不要植物P2にビームBを照射することで、該不要植物P2を除去する。以下では、除草経路に沿って耕地2を走行する移動式除草装置1が除草作業を行うために実行する除草処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
S100では、除草経路に沿って耕地2を走行している移動式除草装置1の制御部10は、カメラ12により撮影された対象領域20の画像を解析し、不要植物P2を検出すると共に、検出された不要植物P2の位置を特定する(S105)。
【0032】
なお、制御部10は、一例として、統計学的手法によって構築されたAI(人工知能)を用いて上記画像から不要植物P2を識別し、不要植物P2の位置を特定する。統計学的手法としては、例えば、教師あり機械学習、多変量解析等が挙げられる。さらに、制御部10は、AIによって識別した不要植物P2の成長点を判定し、成長点の位置を特定しても良い。成長点は、主に植物の茎の先端にある細胞分裂の活発な組織を含む部位であり、植物の種類に応じて特定が可能である。
【0033】
続くS110では、制御部10は、カメラ12により撮影された画像に基づき、少なくとも1つの不要植物P2が円弧領域31(図2参照)に位置するか否かを判定する。そして、制御部10は、肯定判定が得られた場合には(S110:Yes)、S115に移行し、否定判定が得られた場合には(S110:No)、S100に移行する。
【0034】
S115では、制御部10は、移動式除草装置1を停止させる。そして、制御部10は、光学系11Bを介してビームBの照射方向を変更し、ビームBの照射位置を円弧領域31にあるいずれかの不要植物P2に合わせ、所定時間にわたり該不要植物P2にビームBを照射する(S120)。このとき、制御部10は、不要植物P2の成長点にビームBを照射しても良い。
【0035】
制御部10は、不要植物P2へのビームBの照射が終了すると、円弧領域31にビームBが照射済でない他の不要植物P2が存在する場合には、同様にしてビームBの照射位置を該他の不要植物P2に合わせ、ビームBを照射する。そして、円弧領域31に存在する全ての不要植物P2へのビームBの照射が終了すると、制御部10は、移動式除草装置1の走行を再開し、S125に移行する。なお、制御部10は、移動式除草装置1を走行させたまま、円弧領域31にある不要植物P2にビームBを照射しても良い。
【0036】
S125では、制御部10は、移動式除草装置1が除草経路の終点に到達したか否かを判定する。そして、制御部10は、肯定判定が得られた場合には(S125:Yes)、本処理を終了し、否定判定が得られた場合には(S125:No)、S100に移行する。
【0037】
[(5)変形例]
第1実施形態の変形例では、レーザ部11の光学系11Bは、ビームB(換言すれば、可変ビーム)のワーキングディスタンスを、XminからXmaxの範囲で変更可能な構成を有する可変光学系として構成されている。円弧経路30の円弧距離は、XminからXmaxの範囲のいずれかの値(例えば、XminとXmaxとの間の中央値)となっている。
【0038】
そして、除草処理のS120において、制御部10は、カメラ12により撮影された画像に基づき、円弧領域31にある不要植物P2とビームBの光源との間の距離(以後、照射距離)を計測する。制御部10は、円弧領域31にある不要植物P2にビームBを照射する際、該不要植物P2の照射距離に応じてビームBのワーキングディスタンスを変更した後に、該不要植物P2にビームBを照射する。一例として、ワーキングディスタンスは、ビームBが照射される不要植物P2の照射距離に設定されても良い。こうすることにより、不要植物P2に対しより効果的にダメージを与えることができる。
【0039】
[2.第2実施形態]
[(1)概要]
第2実施形態の移動式除草装置1は、第1実施形態と同様に構成されているが、レーザ部11の光学系11Bは、第1実施形態の変形例と同様、可変光学系として構成されている。また、第2実施形態の移動式除草装置1は、ビームB(換言すれば、可変ビーム)に対応して、円弧経路(換言すれば、可変円弧経路)及び円弧領域(換言すれば、可変円弧領域)が複数(一例として、3つ)設けられている点で、第1実施形態と相違する(図4参照)。以下では、第1実施形態との相違点を中心に、第2実施形態の移動式除草装置1の構成について説明する。
【0040】
[(2)円弧経路及び円弧領域]
第2実施形態では、一例として、ビームBに対応して第1~第3円弧経路30A~30Cが設けられていると共に、第1~第3円弧領域31A~31Cが設けられている(図4参照)。第1~第3円弧経路30A~30Cの円弧距離は、互いに異なっていると共に、ビームBに設定可能なワーキングディスタンスと同じ値となっている。また、第1~第3円弧領域31A~31Cは、それぞれ、第1~第3円弧経路30A~30Cを含んでおり、第1円弧領域31Aが最も前側に位置し、第3円弧領域31Cが最も後側に位置する。なお、一例として、各円弧領域は、隣接する円弧領域と接している。しかし、隣接する円弧領域の間に隙間が設けられていても良い。
【0041】
そして、レーザ部11は、第1~第3円弧領域31A~31Cの各々に向けてビームBを照射可能となっている。また、各円弧領域にビームBを照射する際、光学系11Bにより、ビームBのワーキングディスタンスは、ビームBが照射される円弧領域に含まれる円弧経路の円弧距離に応じた値に設定される。具体的には、該ワーキングディスタンスは、該円弧距離と同じ値や、略同一の値に設定されても良い。
【0042】
[(3)除草作業について]
第2実施形態においても、移動式除草装置1は、第1実施形態と同様、耕地2を走行しながら除草処理(図3参照)を実行することで、除草作業を行う。しかし、第2実施形態の除草処理は、S110、S120において第1実施形態と相違する。以下では、該相違点について説明する。
【0043】
S110では、ビームBが照射済でない少なくとも1つの不要植物P2が、第1~第3円弧領域31A~31C(図4参照)に位置するか否かが判定される。
S120では、第1~第3円弧領域31A~31Cにある不要植物P2に対しビームBが照射される。この時、ビームBを照射する不要植物P2が位置する円弧領域に含まれる円弧経路の円弧距離に応じて、ビームBのワーキングディスタンスが設定される。そして、第1~第3円弧領域31A~31Cに存在する全ての不要植物P2へのビームBの照射が終了すると、S125に移行する。
【0044】
なお、S120において、第1実施形態の変形例と同様、制御部10は、カメラ12により撮影された画像に基づき、第1~第3円弧領域31A~31Cにある不要植物P2の照射距離を計測しても良い。そして、制御部10は、該不要植物P2にビームBを照射する際、該不要植物P2の照射距離に応じてビームBのワーキングディスタンスを変更した後に、該不要植物P2にビームBを照射しても良い。
【0045】
[3.第3実施形態]
[(1)概要]
第3実施形態の移動式除草装置1は、第1実施形態と同様に構成されているが、レーザ部11が複数(一例として、2つ)のビームBを照射するよう構成されている点で、第1実施形態と相違する(図5参照)。そして、各ビームBに対応して、1つの円弧経路及び円弧領域が設けられている。つまり、第3実施形態では、複数の円弧領域が設けられており、対象領域20における左右方向の全ての位置には、少なくとも1つの円弧領域31が位置する。以下では、第1実施形態との相違点を中心に、第3実施形態の移動式除草装置1の構成について説明する。
【0046】
[(2)レーザ部]
レーザ部11には、2セットのレーザ発振器11A、光学系11B、及びレーザヘッド11Cが設けられており、各セットにより1つのビームBが照射される(図5参照)。各レーザヘッド11Cは、左右方向に並ぶように配置される。なお、第1実施形態と同様、レーザ部11は、各ビームBのワーキングディスタンスの変更が不可能な構成となっている。また、一例として、各ビームB(換言すれば、固定ビーム)のワーキングディスタンスは、同じ値となっている。
【0047】
[(3)円弧経路及び円弧領域]
各レーザヘッド11Cの前方に、該レーザヘッド11Cから照射されるビームBに対応する円弧経路が設けられる(図5参照)。これらの第1及び第2円弧経路30A、30Bの各々の円弧距離は、該円弧経路に対応するビームBのワーキングディスタンスと一致する。また、第1円弧経路30Aを含む第1円弧領域31Aと、第2円弧経路30Bを含む第2円弧領域31Bとが設けられる。
【0048】
一例として、第1及び第2円弧領域31A、31Bは、それぞれ、右側、左側に位置すると共に、第1円弧領域31Aの右端R1は、対象領域20の右端に位置し、第2円弧領域31Bの左端L2は、対象領域20の左端に位置する。また、第1円弧領域31Aの左端L1は、第2円弧領域31Bの右端R2と繋がっている。このため、対象領域20における左右方向の全ての位置には、少なくとも1つの円弧領域31が位置する。
【0049】
なお、各ビームBのワーキングディスタンスは、異なっていても良い。この場合、図6、7に示すように、各ビームBに対応する第1及び第2円弧経路30A、30Bの円弧距離は、異なるものとなる。
【0050】
また、第1円弧領域31Aの左端L1と第2円弧領域31Bの右端R2とは、繋がっていても良いし、図6、7に示すように離れていても良い。また、第1円弧領域31Aの左端L1と第2円弧領域31Bの右端R2とが離れている場合、左端L1の位置と右端R2の位置とは、左右方向において一致していても良い(図6参照)。この外にも、第1円弧領域31Aの左端L1を含む部分と第2円弧領域31Bの右端R2を含む部分とは、前後方向に重なっていても良い(図7参照)。左端L1と右端R2とをこれらのように配置することで、対象領域20における左右方向の全ての位置には、少なくとも1つの円弧領域31が位置する。
【0051】
[(4)除草作業について]
第3実施形態においても、移動式除草装置1は、第1及び第2実施形態と同様、耕地2を走行しながら除草処理(図3参照)を実行することで、除草作業を行う。しかし、第3実施形態の除草処理は、S110、S120において第1及び第2実施形態と相違する。以下では、該相違点について説明する。
【0052】
S110では、ビームBが照射済でない少なくとも1つの不要植物P2が、第1及び第2円弧領域31A、31B(図5~7参照)に位置するか否かが判定される。
S120では、第1及び第2円弧領域31A、31Bにある不要植物P2に対し、該不要植物P2が位置する円弧領域に対応するビームBが照射される。第1及び第2円弧領域31A、31B存在する全ての不要植物P2へのビームBの照射が終了すると、制御部10は、S125に移行する。
【0053】
[(3)変形例]
第3実施形態の変形例1では、レーザ部11における各光学系11Bは、第1実施形態の変形例や第2実施形態と同様、可変光学系として構成されている。つまり、レーザ部11から照射される各ビームB(換言すれば、可変ビーム)は、ワーキングディスタンスの変更が可能となっている。
【0054】
そして、除草処理(図3参照)のS120において、制御部10は、カメラ12により撮影された画像に基づき、不要植物P2と、該不要植物P2が位置する円弧領域31に対応するビームBの光源との間の照射距離を計測する。制御部10は、各円弧領域31にある不要植物P2にビームBを照射する際、該不要植物P2の照射距離に応じて、該円弧領域31に対応するビームBのワーキングディスタンスを変更した後に、該不要植物P2にビームBを照射する。
【0055】
なお、レーザ部11における各光学系11Bの一部が、可変光学系として構成されていてもよい。そして、除草処理のS120において、制御部10は、ワーキングディスタンスを変更可能なビームBを不要植物P2に照射する場合には、該不要植物P2に対する照射距離に応じて該ビームBのワーキングディスタンスを変更しても良い。
【0056】
[4.第4実施形態]
[(1)概要]
第4実施形態の移動式除草装置1は、第3実施形態と同様に構成されているが、レーザ部11の各光学系11Bは、第1実施形態の変形例や第2実施形態と同様、可変光学系として構成されている点で相違する。なお、各ビームB(換言すれば、可変ビーム)に設定可能なワーキングディスタンスの範囲は、同じであっても良いし、異なっていても良い。また、第4実施形態の移動式除草装置1は、各ビームBに対応して、円弧経路(換言すれば、可変円弧経路)及び円弧領域(換言すれば、可変円弧領域)が複数(一例として、2つ)設けられている点で、第3実施形態と相違する(図8参照)。以下では、第3実施形態との相違点を中心に、第4実施形態の移動式除草装置1の構成について説明する。
【0057】
[(2)円弧経路及び円弧領域]
第4施形態では、一例として、各ビームBに対応して、第2実施形態と同様にして第1及び第2円弧経路30A、30Bが設けられていると共に、第1及び第2円弧領域31A、31Bが設けられている(図8参照)。第1及び第2円弧経路30A、30Bの円弧距離は、互いに異なっている共に、対応するビームBに設定可能なワーキングディスタンスと同じ値となっている。また、第1及び第2円弧領域31A、31Bは、それぞれ、第1及び第2円弧経路30A、30Bを含んでおり、第1円弧領域31Aが前側に位置し、第2円弧領域31Bが後側に位置する。
【0058】
また、一例として、各第1円弧距離30Aの円弧距離は同じ値であると共に、各第2円弧距離30Bの円弧距離は同じ値となっている。しかし、これに限らず、各第1円弧距離30Aの円弧距離は互いに異なっていても良いし、各第2円弧距離30Bの円弧距離は互いに異なっていても良い。
【0059】
ここで、右側のレーザヘッド11Cから照射されるビームBを右ビームBとし、左側のレーザヘッド11Cから照射されるビームBを左ビームBとする。一例として、右ビームBに対応する第1及び第2円弧領域31A、31Bの右端R1は、対象領域20の右端に位置し、左ビームBに対応する第1及び第2円弧領域31A、31Bの左端L2は、対象領域20の左端に位置する。また、右ビームBに対応する第1及び第2円弧領域31A、31Bの左端L1は、それぞれ、左ビームBに対応する第1及び第2円弧領域31A、31Bの右端R2と繋がっている。このため、対象領域20における左右方向の全ての位置には、少なくとも1つの円弧領域31が位置する。
【0060】
また、第3実施形態と同様、右ビームBに対応する第1円弧領域31Aの左端L1は、左ビームBに対応する第1円弧領域31Aの右端R2繋がっていても良いし、離れていても良い。右ビームBに対応する第1円弧領域31Aと、左ビームBに対応する第1円弧領域31Aとは、第3実施形態と同様、対象領域20における左右方向の全ての位置に、少なくとも1つの第1円弧領域31が位置するように配置される。また、右ビームBに対応する第2円弧領域31Bと、左ビームBに対応する第2円弧領域31Bもまた、右ビームB及び左ビームBに対応する各第1円弧領域31Aと同様に配置される。
【0061】
そして、第2実施形態と同様、レーザ部11は、各ビームBを、該ビームBに対応する第1及び第2円弧領域31A、31Bに照射可能となっている。なお、各円弧領域にビームBを照射する際、光学系11Bにより、ビームBのワーキングディスタンスは、ビームBが照射される円弧領域に含まれる円弧経路の円弧距離に応じた値に設定される。
【0062】
[(3)除草作業について]
第4実施形態においても、移動式除草装置1は、第1~第3実施形態と同様、耕地2を走行しながら除草処理(図3参照)を実行することで、除草作業を行う。しかし、第4実施形態の除草処理は、S110、S120において第1~第3実施形態と相違する。以下では、該相違点について説明する。
【0063】
S110では、ビームBが照射済でない少なくとも1つの不要植物P2が、各ビームBに対応する第1及び第2円弧領域31A、31B(図8参照)に位置するか否かが判定される。
【0064】
S120では、各ビームBに対応する第1及び第2円弧領域31A、31Bにある不要植物P2に対し、該不要植物P2が位置する円弧領域に対応するビームBが照射される。この時、ビームBを照射する不要植物P2が位置する円弧領域に含まれる円弧経路の円弧距離に応じて、ビームBのワーキングディスタンスが設定される。これらの円弧領域に存在する全ての不要植物P2へのビームBの照射が終了すると、制御部10は、S125に移行する。
【0065】
なお、S120において、第1実施形態の変形例と同様、制御部10は、カメラ12により撮影された画像に基づき、第1及び第2円弧領域31A、31Bにある不要植物P2の照射距離を計測しても良い。そして、制御部10は、該不要植物P2にビームBを照射する際、該不要植物P2の照射距離に応じてビームBのワーキングディスタンスを変更した後に、該不要植物P2にビームBを照射しても良い。
【0066】
[(4)変形例]
レーザ部11における各光学系11Bの一部が、可変光学系として構成されていても良い。つまり、レーザ部11からは、ワーキングディスタンスの変更が可能なビームBと、ワーキングディスタンスが固定されたビームBとが照射されても良い。
【0067】
そして、ワーキングディスタンスが固定されたビームB(換言すれば、固定ビーム)に対応する円弧経路及び円弧領域は、第1及び第3実施形態と同様に構成されていても良い。また、ワーキングディスタンスが変更可能なビームB(換言すれば、可変ビーム)に対応する円弧経路及び円弧領域は、第4実施形態と同様に構成されていても良い。
【0068】
また、除草処理においても、固定ビームに対応する円弧領域に位置する不要植物P2については、第1及び第3実施形態と同様にして固定ビームが照射されても良い。一方、可変ビームに対応する円弧領域に位置する不要植物P2については、第4実施形態と同様にして可変ビームが照射されても良い。
【0069】
[5.効果]
ビームBを不要植物P2に照射する際、不要植物P2に効果的にダメージを与えるためには、ビームBの光源と不要植物P2との間の照射距離と、ビームBのワーキングディスタンスとが一致又は略一致することが好ましい。これに対し、第1~第4実施形態によれば、ワーキングディスタンスに基づき定められた円弧領域に位置する不要植物P2に対し、ビームBが照射される。
【0070】
このため、第1及び第3実施形態のように、ワーキングディスタンスを変更するための構成が無くても、ワーキングディスタンスが適切な状態でビームBを不要植物P2に照射できる。また、第2及び第4実施形態においては、ワーキングディスタンスが適切な状態とするために必要となるワーキングディスタンスの変更量を低減でき、その結果、ワーキングディスタンスを変更するための光学系11Bの構成を簡素化できる。したがって、移動式除草装置1の構成を簡素化でき、その結果、移動式除草装置1のコストを低減できる。
【0071】
さらに、ワーキングディスタンスが不要となったり、ワーキングディスタンスの変更量が低減したりすることで、不要植物P2にビームBを照射するための処理時間を短縮できる。
【0072】
[6.他の実施形態]
(1)第1~第4実施形態では、レーザ部11における光学系11BによりビームBの照射方向を変更することで、ビームBの照射位置が調整される。しかし、例えば、レーザ部11の光学系11Bを用いること無く、レーザヘッド11Cの位置及び/又は向きを機械的に変更する調整部により、ビームBの照射位置を調整しても良い。また、例えば、光学系11BによりビームBの照射方向を変更しつつ、さらに、レーザヘッド11Cの位置及び/又は向きを機械的に変更することで、ビームBの照射位置を変更しても良い。
【0073】
(2)第1~第4実施形態では、ビームBの照射方向は、下方に傾斜しながら前側に向かっており、レーザヘッド11Cの前方に、円弧経路及び円弧領域が設けられる。しかし、これに限らず、ビームBの照射方向は、下方に傾斜しながら後側、右側、又は左側に向かってもよい。そして、ビームBの照射方向に応じて円弧経路及び円弧領域の位置が定められても良い。
【0074】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…移動式除草装置、10…制御部、11…レーザ部、11A…レーザ発振器、11B…光学系、11C…レーザヘッド、12…カメラ、13…照明部、14…筐体、15…カバー、16…車輪、2…耕地、20…対象領域、3…仮想平面、30…円弧経路、31…円弧領域、B…ビーム、P1…作物、P2…雑草。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8