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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011213
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240118BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20240118BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240118BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
C08G18/00 L ZBP
C08G18/40
C08G18/50 021
C08G18/73
C08G18/75
C08L101/16
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113035
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 忠史
【テーマコード(参考)】
4J034
4J200
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DA03
4J034DF01
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DF24
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG08
4J034EA04
4J034EA05
4J034EA07
4J034EA08
4J034EA11
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC08
4J034KC17
4J034KC18
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA12
4J034MA16
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA05
4J034NA06
4J034NA07
4J034NA08
4J034QA02
4J034QA05
4J034QB08
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA06
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA14
4J200AA06
4J200BA10
4J200BA13
4J200BA14
4J200BA18
4J200BA20
4J200BA35
4J200BA36
4J200BA37
4J200BA38
4J200BA39
4J200CA09
4J200DA12
4J200DA16
4J200DA17
4J200DA22
4J200DA23
4J200DA24
4J200DA28
4J200EA04
(57)【要約】
【課題】環境面において、安全性の高いポリウレタンフォームを製造する技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、生分解性ポリオールと、イソシアネートと、ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体と、を含有する組成物から得られるポリウレタンフォームを提供する。本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる前記組成物は、前記生分解性ポリオール100質量部に対して、前記ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体を0.05~5質量部含有させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリオールと、
イソシアネートと、
ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体と、
を含有する組成物から得られるポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記組成物は、前記生分解性ポリオール100質量部に対して、前記ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体を0.05~5質量部含有する、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記イソシアネートは、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートである、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記組成物は、第1級アミンを含有する、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ソファーや椅子等の家具、マットレスや枕等の寝具、下着等の衣類、食器や掃除用スポンジ等の生活必需品、車内シート等の車両・航空機内装用製品、玩具、雑貨に至るまで、様々な分野で幅広く使用されている。そして、それぞれの分野や目的に応じて、品質を向上させたり、新たな機能を付与したりと、様々な開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2,4-ジメチル-6-オクチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)および2,2-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)以外のフェノール系酸化防止剤を大量に用いることにより、アルデヒド放出が軽減されたポリウレタンの製造技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、(A)2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン化合物、(B)ラクトン、(C)フェノール性化合物、(D)任意でトコフェロール、及び(E)任意でホスファイト化合物を含む、スコーチ阻害剤組成物を用いることで、製造後のポリウレタンフォームブロック内部に現れるスコーチとして知られる現象を低減させる技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、特定の成分(A)および成分(B)を特定量で含有し、かつ、ジメチルポリシロキサンを成分(A)の質量以上含有しない、ポリエーテル-ポリシロキサンブロック共重合体組成物を整泡剤として用いるポリウレタン発泡体の製造技術が開示されている。
【0006】
特許文献4には、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン組成物を合成する工程〔A〕およびポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン組成物を、特定の酸性無機塩の存在下で処理することにより、臭気原因物質を除去する工程〔B〕を含む製造方法により得られたポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン組成物を整泡剤として用いることにより、アルデヒド等の臭気原因物質の発生を効果的に抑制し、極めて着臭および臭気の少ないポリウレタンフォームを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2019-526689号公報
【特許文献2】特表2019-529669号公報
【特許文献3】国際公報第2016/166979号
【特許文献4】特開2020-2382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリウレタンフォームは、イソシアネートとポリオールとを、触媒、発泡剤、整泡剤等と一緒に混合して、樹脂化反応、及び泡化反応等が進行することにより得られるが、反応時の発熱により、フォーム内部の温度が上昇し、原反中心部でスコーチ(黄色~茶色に変色)が発生する場合がある。このスコーチを防止するために、酸化防止剤が使用されることが多い。
【0009】
一方で、近年では、環境面が非常に重要視されており、環境に優しい材料を用いたポリウレタンフォームが望まれている。しかしながら、スコーチ防止のために一般的に使用されている酸化防止剤は難分解性であり、環境面や安全面から更なる開発が望まれているのが実情である。
【0010】
そこで、本技術では、環境面において、安全性の高いポリウレタンフォームを製造する技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術では、まず、生分解性ポリオールと、
イソシアネートと、
ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体と、
を含有する組成物から得られるポリウレタンフォームを提供する。
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる前記組成物は、前記生分解性ポリオール100質量部に対して、前記ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体を0.05~5質量部含有させることができる。
本技術において、前記イソシアネートとしては、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることができる。
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる前記組成物には、第1級アミンを含有させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
1.組成物
本技術に係るポリウレタンフォームは、生分解性ポリオールと、イソシアネートと、分解性酸化防止剤と、を含有する組成物から得られる。また、本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる組成物は、必要に応じて、第1級アミン、発泡剤、触媒、整泡剤、生分解促進剤等を含有させることもできる。以下、各成分について、詳細に説明する。
【0014】
(1)生分解性ポリオール
本技術に用いることができる生分解性ポリオールとしては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる生分解性ポリオールを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、セルロース、酢酸セルロース、キトサン、澱粉、加工澱粉、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ヒマシ油系ポリオール等の天然由来エステル等が挙げられる。この中でも、本技術では、下記の化学式(1)で表されるポリカプロラクトン(PCL)や、下記の化学式(2)で表されるヒマシ油系ポリオール等の天然由来エステルを選択することが好ましい。
【0015】
【化1】

(m、nは、1以上の整数)
【0016】
【化2】
【0017】
(2)イソシアネート
本技術に用いることができるイソシアネートは、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるイソシアネートを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び脂環族イソシアネートから1種以上を自由に組み合わせて用いることができる。
【0018】
本技術に用いることができる芳香族イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
本技術では、イソシアネートとして、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることが好ましい。脂肪族イソシアネートや脂環族イソシアネートは、分解性が高いといった特徴を有するため、環境面で貢献することができる。後述の通り、本技術に係るポリウレタンフォームは、ポリオール由来のエステル結合部分が加水分解し、ポリオール及びイソシアネート由来のウレタン結合が加水分解することによりイソシアネート由来のアミンとポリオールに分解される。本技術では、ポリオールとして生分解性ポリオールを用いるため、分解されたポリオールは微生物等によって分解され得る。そこで、イソシアネートとしても、分解性を有する脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることで、分解性の高いポリウレタンフォームを製造することができる。
【0020】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネ-ト、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、デカメチレンジイソシアネート、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0021】
脂環族イソシアネートとしては、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート(水加TMXDI)等の単環式脂環族イソシアネート;ノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、ビシクロヘプタントリイソシアネート、シイソシアナートメチルビシクロヘプタン、ジ(ジイソシアナートメチル)トリシクロデカン等の架橋環式脂環族イソシアネート、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0022】
更に、上記脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートの三量体(ヌレート)が挙げられる。
【0023】
この中でも、本技術では、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の誘導体である下記化学式(3)で表されるHDIイソシアヌレート(HDIトリマー、2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリイルトリス(6,1-ヘキサンジイル)トリイソシアナート)や、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)の誘導体である下記化学式(4)で表される1,5-PDIイソシアヌレートを選択することが好ましい。
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
本技術に用いるイソシアネートの量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中のイソシアネートの下限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは40質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上である。なお、生分解性ポリオールに対して、イソシアネートの量が少なすぎる場合は、製造されたポリウレタンフォームの強度が低下し、また、ポリウレタンフォームにブリードや変色を引き起こす場合がある。
【0027】
本技術では、組成物中のイソシアネートの含有量の上限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。組成物中のイソシアネートの含有量の上限値を、この範囲とすることにより、コスト削減のメリットがある。なお、ポリウレタンフォームの硬度
が硬くなりすぎて脆くなり柔軟性が損なわれ、軟質ポリウレタンフォームの弾性を確保で
きなくなる場合がある。
【0028】
(3)分解性酸化防止剤
本技術では、分解性酸化防止剤を用いることを特徴とする。後述の通り、本技術に係るポリウレタンフォームは、加水分解することによりイソシアネート由来のアミンと生分解性ポリオールに分解されるが、ポリウレタンフォーム製造時に用いる酸化防止剤も分解性を有するものを採用することで、環境面において貢献することができる。
【0029】
本技術に用いることができる分解性酸化防止剤としては、本技術の効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができ、かつ、分解性のある酸化防止剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、天然由来の分解性酸化防止剤、ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体から1種又は2種類以上を自由に組み合わせて用いることができる。
【0030】
本技術では、分解性酸化防止剤として、天然由来の分解性酸化防止剤が好ましく、ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体を用いることがより好ましい。ビタミンE及びビタミンE誘導体は、合成することも可能ではあるが、一般的には天然由来成分からの抽出物であり、生分解性を有するにも関わらず、難分解性である一般的な酸化防止剤と同等以上のスコーチ防止(変色防止)効果を有する。また、分解性酸化防止剤の分解によりpHが低下してしまう等、分解性酸化防止剤の種類によっては、ポリウレタンフォームからイソシアネート由来のアミンと生分解性ポリオールへの加水分解に影響を及ぼす場合がある。しかしながら、ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体は、分解によるpH変動がほとんどないため、分解を担う微生物の活性に影響がなくイソシアネート由来のアミンと生分解性ポリオールへの加水分解を妨げることがない。換言すると、酸化防止剤としてビタミンE及び/又はビタミンE誘導体を用いることにより、ポリウレタンフォームからイソシアネート由来のアミンと生分解性ポリオールへの加水分解、および、イソシアネート由来のアミンと生分解性ポリオールの分解が順調に進むため、ポリウレタンフォームの分解性を向上させることができる。
【0031】
ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体としては、例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール;α-トコトリエノール、β-トコトリエノール,γ-トコトリエノール,δ-トコトリエノール;ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート、α-トコフェロール2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル等のビタミンE誘導体、及びこれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、本技術では、高い酸化防止効果を有する観点から、α-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール,γ-トコトリエノール,δ-トコトリエノール、及びこれらの誘導体並びにこれらの塩から1種以上選択することが好ましく、α-トコフェロール、及びδ-トコフェロールから1種以上選択することがより好ましい。
【0032】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の分解性酸化防止剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の分解性酸化防止剤の含有量の下限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。組成物中の分解性酸化防止剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、スコーチ防止による変色防止効果を向上させることができる。
【0033】
本技術では、組成物中の分解性酸化防止剤の含有量の上限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。組成物中の分解性酸化防止剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、コスト削減に貢献することができる。
【0034】
(4)第1級アミン
本技術に係るポリウレタンフォームの製造には、第1級アミンを用いることができる。特に、本技術では、少なくとも1個の第1級アミノ基を有し、水酸基等の活性水素基を含んだ官能基数が2~4官能の第1級アミンを用いることができる。
【0035】
ポリウレタンフォームを製造する際は、樹脂化反応と泡化反応のバランスが非常に重要である。例えば、泡化反応に比べて樹脂化反応が遅いと、ポリウレタンフォーム製造用組成物の増粘も遅いため、泡化反応で発生したガスが抜けやすくなってしまい、発泡挙動が安定しないといった問題があった。また、キュアタイム(硬化時間)も長くなり、一般的なモールド成型に合わなくなり、量産性が悪く、製造されたポリウレタンフォームの意匠性も悪くなるといった問題があった。しかし、第1級アミンを用いることで、初期の増粘(クリームタイム)を早め、内部発熱を促進し、樹脂化反応の反応性を向上させると共に、泡化反応の反応性を高めてライズタイムも短縮することができる。その結果、例えば、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートや、生分解性ポリオール等、製造時の反応性が低い原料を用いた場合であっても、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができる。
【0036】
また、製造時の反応性が低い原料を用いてポリウレタンフォームを製造する場合、反応性を高めるために、触媒を増量する手法があるが、触媒を増量すると樹脂化反応や泡化反応が不安定化するといった問題があった。また、予めポリオール及び/又はイソシアネートの一部を反応させたプレポリマーを原料として用いることにより、反応時間の短縮を図る手法もあるが、プレポリマーは粘度が高いため、原料混合物の粘度上昇によって撹拌性が低下する問題があった。しかし、第1級アミンを用いることで、触媒を増量する必要がないため、樹脂化反応や泡化反応が安定化する。また、プレポリマーを用いなくても反応性が高いため、原料混合物の粘度上昇を抑制して撹拌性低下を防止することができる。
【0037】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の第1級アミンの量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の第1級アミンの含有量の下限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。組成物中の第1級アミンの含有量の下限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応及び泡化反応の反応性を向上させることができる。その結果、例えば、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートや、生分解性ポリオール等、製造の反応性が悪い原料を用いた場合であっても、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、ひいては、機械的特性、及び意匠性の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0038】
本技術では、組成物中の第1級アミンの含有量の上限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。組成物中の第1級アミンの含有量の上限値を、この範囲とすることにより、製造時の反応性が高すぎることによる樹脂化反応及び泡化反応の不安定化を防止し、また、プレポリマー化の粘度上昇による撹拌性低下を防止することができる。また、泡化反応に比べて樹脂化反応が早すぎると、泡化反応が進行する前に、硬化が進んでしまうため、発泡ムラや硬度ムラができたり、発泡不良となる場合があるが、組成物中の第1級アミンの含有量の上限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、発泡ムラや硬度ムラ、及び発泡不良等を防止することができる。
【0039】
本技術に用いることができる第1級アミンの数平均分子量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができる第1級アミンの数平均分子量の下限値としては、例えば、800以上、好ましくは1800以上、より好ましくは2400以上である。また、本技術に用いることができる第1級アミンの重量平均分子量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができる第1級アミンの重量平均分子量の下限値としては、例えば、800以上、好ましくは1800以上、より好ましくは2400以上である。本技術に用いることができる第1級アミンの数平均分子量及び/又は重量平均分子量の下限値を、この範囲とすることにより、製造時の反応性が高すぎることによる樹脂化反応及び泡化反応の不安定化を防止し、また、プレポリマー化の粘度上昇による撹拌性低下を防止することができる。また、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、発泡ムラや硬度ムラ、及び発泡不良等を防止することができる。
【0040】
本技術に用いることができる第1級アミンの数平均分子量の上限値としては、例えば、12000以下、好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下である。また、本技術に用いることができる第1級アミンの重量平均分子量の上限値としては、例えば、12000以下、好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下である。本技術に用いることができる第1級アミンの数平均分子量及び/又は重量平均分子量の上限値を、この範囲とすることにより、製造時の反応性を向上させることができる。その結果、例えば、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートや、生分解性ポリオール等、製造時の反応性が低い原料を用いた場合であっても、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、ひいては、機械的特性、及び意匠性の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0041】
本技術に用いることができる第1級アミンにおけるオキシアルキレン繰り返し単位の数も、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができる第1級アミンにおけるオキシアルキレン繰り返し単位の数の下限値としては、例えば、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上である。本技術に用いることができる第1級アミンにおけるオキシアルキレン繰り返し単位の数の下限値を、この範囲とすることにより、製造時の反応性が高すぎることによる樹脂化反応及び泡化反応の不安定化を防止し、また、プレポリマー化の粘度上昇による撹拌性低下を防止することができる。また、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、発泡ムラや硬度ムラ、及び発泡不良等を防止することができる。
【0042】
本技術に用いることができる第1級アミンにおけるオキシアルキレン繰り返し単位の数限値としては、例えば、200以下、好ましくは160以下、より好ましくは120以下、更に好ましくは100以下である。本技術に用いることができる第1級アミンにおけるオキシアルキレン繰り返し単位の数の上限値を、この範囲とすることにより、製造時の反応性を向上させることができる。その結果、例えば、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートや、生分解性ポリオール等、製造時の反応性が悪い原料を用いた場合であっても、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、ひいては、機械的特性、及び意匠性の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0043】
本技術に用いることができる第1級アミンの動粘度も、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができる第1級アミンの動粘度の下限値は、例えば、25℃において、100cSt以上、好ましくは200cSt以上、より好ましくは300cSt以上である。
【0044】
本技術に用いることができる第1級アミンの動粘度の上限値は、例えば、25℃において、2000cSt以下、好ましくは1500cSt以下、より好ましくは1000cSt以下である。
【0045】
本技術に用いることができる第1級アミンのアミン水素当量(AHEW)は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り特に限定されない。本技術に用いることができる第1級アミンのアミン水素当量(AHEW)の下限値としては、例えば、100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上である。本技術に用いることができる第1級アミンのアミン水素当量(AHEW)の下限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応時の反応性が高すぎることによる樹脂化反応の不安定化を防止し、また、プレポリマー化の粘度上昇による撹拌性低下を防止することができる。また、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、発泡ムラや硬度ムラ、及び発泡不良等を防止することができる。
【0046】
本技術に用いることができる第1級アミンのアミン水素当量(AHEW)の上限値としては、例えば、2000以下、好ましくは1500以下、より好ましくは1000以下である。本技術に用いることができる第1級アミンのアミン水素当量(AHEW)の上限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応の反応性を向上させることができる。その結果、例えば、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートや、生分解性ポリオール等、樹脂化反応時の反応性が低い原料を用いた場合であっても、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、ひいては、機械的特性の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0047】
なお、本技術において、第1級アミンのアミン水素当量(AHEW:Amine Hydrogen Equivalent Weight)とは、1分子当りの活性アミン水素の数で除されたポリエーテルアミンの分子量として定義される。第1級アミンのアミン水素当量(AHEW)は、当業者に既知且つ従来の技術に従い算出することができるが、好ましくは、ISO9702に記載の手順を用いてアミン基窒素の含量を決定することにより算出することができる。
【0048】
本技術に用いることができる第1級アミンの具体例としては、例えば、ポリエステル第1級アミン及び下記の化学式(5)で表されるオキシアルキレンを付加重合したポリエーテルトリアミン、ポリ(プロピレングリコール)トリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、等のポリエーテル第1級アミン等から選択される1以上の第1級アミンが挙げられ、これらの第1級アミンを1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0049】
【化5】

(x、y、zは、1以上の整数)
【0050】
なお、本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる組成物には、第1級アミンの他に、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、第2級アミンや第3級アミンを用いることも可能である。この場合、全アミンにおける第1級アミンの割合としては、90%以上が好ましく、94%以上がより好ましい。全アミンにおける第1級アミンの割合をこの範囲とすることで、樹脂化反応の反応性を向上させることができる。その結果、例えば、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートや、生分解性ポリオール等、樹脂化反応時の反応性が悪い原料を用いた場合であっても、樹脂化反応と泡化反応とのバランスを良好に保つことができ、ひいては、機械的特性の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0051】
(5)発泡剤
本技術に係るポリウレタンフォームを製造には、発泡剤を用いることができる。本技術に用いることができる発泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる発泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0052】
発泡剤としては、例えば、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等を挙げることができる。炭化水素としては、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等を挙げることができる。前記ハロゲン系化合物としては、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等を挙げることができる。本技術では、これらの中でも発泡剤として水を用いることが好ましい。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水等の何れでもよい。
【0053】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の発泡剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の発泡剤の含有量の下限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。組成物中の発泡剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、発泡性を向上させることができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0054】
本技術では、組成物中の発泡剤の含有量の上限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。組成物中の発泡剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、発泡過剰による形成不良を抑制することができ、また、コスト削減に貢献することもできる。
【0055】
(6)触媒
本技術に係るポリウレタンフォームの製造には、触媒を用いることができる。本技術に用いることができる触媒としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる触媒を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0056】
触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒)が挙げられる。また、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルグアニジン、ジエタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N′,N″,N″-ペンタメチルジエチレントリアミン、イミダゾール系化合物、ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン系アミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のモルホリン系アミン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ-[4,3,0]-ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ-[5,3,0]-デセン-7(DBD)、1,4-ジアザビシクロ-[3,3,0]オクテン-4(DBO)等のDBU同属体と称されるアミン等のアミン触媒も用いることができるが、これらのアミン触媒のうち、3級アミン触媒、2級アミン触媒が好ましく、さらに分子量700未満が好ましく、分子量500未満がより好ましく、分子量300未満がさらに好ましい。
【0057】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の触媒の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の触媒の含有量の下限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。組成物中の触媒の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応や泡化反応を促進させることができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0058】
本技術では、組成物中の触媒の含有量の上限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。組成物中の触媒の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応や泡化反応の不安定化を防止し、樹脂化反応と泡化反応のバランスを良好に保つことができる。その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0059】
(7)整泡剤
本技術に係るポリウレタンフォームの製造には、整泡剤を用いることができる。本技術に用いることができる整泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる整泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0060】
整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤、界面活性剤等を挙げることができる。シリコーン系整泡剤としては、シロキサン鎖主体からなるもの、シロキサン鎖とポリエーテル鎖が線状の構造をとるもの、分岐し枝分かれしたもの、ポリエーテル鎖がシロキサン鎖にペンダント状に変性されたもの等が挙げられる。
【0061】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の整泡剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の整泡剤の含有量の下限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。組成物中の整泡剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、発泡反応を安定化することができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0062】
本技術では、組成物中の整泡剤の含有量の上限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。組成物中の整泡剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、コスト削減に貢献することができる。
【0063】
(8)生分解促進剤
本技術に係るポリウレタンフォームの製造には、生分解促進剤を用いることができる。生分解促進剤を用いることで、本技術に係るポリウレタンフォームの原料として生分解性の原料を用いた場合に、生分解性を向上させることができる。
【0064】
本技術に用いることができる生分解促進剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームに用いることができる生分解促進剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0065】
生分解促進剤としては、例えば、グルコース、キシロース、ガラクトース、マルトース、スクロース、キチン、セルロース等の糖類;澱粉類;アミノ酸;ペプチド;タマリンドガム等のガム質;リグニン等を挙げることができる。
【0066】
本技術に係るポリウレタンフォーム製造に用いる組成物中の生分解促進剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の生分解促進剤の含有量の下限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。
【0067】
本技術では、組成物中の生分解促進剤の含有量の上限値は、生分解性ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0068】
(9)その他
本技術に係るポリウレタンフォームの製造には、本技術の目的や効果を損なわない限り、その他の成分として、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0069】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造に用いることができる成分としては、例えば、難燃剤、安定剤、可塑剤、着色剤、架橋剤、抗菌剤、分散剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0070】
2.ポリウレタンフォーム
本技術に係るポリウレタンフォームは、前述した本技術に係るポリウレタンフォーム製造用の組成物を用いて製造される。
【0071】
本技術に係るポリウレタンフォームは、下記の化学反応式(6)に示すように、加水分解することによりイソシアネート由来のアミンとポリオールに分解される。
【0072】
【化6】
【0073】
そして、本技術では、ポリオールとして生分解性ポリオールを用いるため、加水分解により生成されたポリオールは微生物等によって二酸化炭素や水に分解される。前述の通り、イソシアネートとして、分解性を有する脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることで、加水分解により生成されたイソシアネート由来のアミンも分解性を有するため、分解性の高いポリウレタンフォームを製造することができる。
【0074】
更に、前述の通り、ポリウレタンフォーム製造時に用いる酸化防止剤として、分解性を有する酸化防止剤を採用することで、ポリウレタンフォーム中の酸化防止剤も分解されるため、分解性の高いポリウレタンフォームを製造することができる。また、分解性酸化防止剤としてビタミンE及び/又はビタミンE誘導体を用いることにより、ポリウレタンフォームからイソシアネート由来のアミンと生分解性ポリオールへの加水分解、および、イソシアネート由来のアミンと生分解性ポリオールの分解が順調に進むため、ポリウレタンフォームの分解性を向上させることができる。
【0075】
本技術に係るポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォームのいずれであっても良いが、特に、軟質ポリウレタンフォームとすることが好ましい。具体的には、伸びが50%以上のものが好ましく、伸びが90%以上のものがより好ましい。この範囲の伸びを有するポリウレタンフォームは、半硬質、硬質ポリウレタンフォームに比べ、十分に柔軟であり、軟質ポリウレタンフォームといえる。
【0076】
3.ポリウレタンフォームの用途
本技術に係るポリウレタンフォームは、その品質の高さを利用して、あらゆる分野であらゆる用途に用いることができる。例えば、ソファーや椅子等の家具、マットレスや枕等の寝具、下着等の衣類、食器や掃除用スポンジ等の生活必需品、車内シート等の車両・航空機内装用製品、建築目地材、建築用緩衝材、建築用シール材、家電用シール材、防音材、梱包材、車両用断熱材、結露防止材、内装材、家電断熱材、配管断熱材、各種カバー、クッション材、玩具、雑貨等に好適に用いることができる。
【0077】
4.ポリウレタンフォームの製造方法
本技術に係るポリウレタンフォームは、前述した組成物の各成分を混合して組成物を調製し、樹脂化反応及び泡化反応を進行させることにより製造することができる。樹脂化反応及び泡化反応の方法は、本技術の目的や効果を損なわない限り、一般的は方法を自由に組み合わせて採用することができる。
【0078】
本技術に係るポリウレタンフォームの製造方法における発泡は、スラブ発泡及びモールド発泡のいずれを採用することもできる。スラブ発泡は、ポリウレタンフォーム製造用組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合してベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。一方、モールド発泡は、モールド(金型)のキャビティにポリウレタンフォーム製造用組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合して注入し、キャビティ形状に発泡させる方法である。
【0079】
本技術は、特に、スラブ発泡を行う製造方法において、好適に用いることができる。スラブ発泡は、発泡時の内部発熱が大きく、フォーム内部の温度が上昇することから、原反中心部でスコーチが発生しやすく、そのため、変色も起こりやすい。そこで、本技術では、分解性酸化防止剤を用いることで、スコーチを防止して、変色を防止しつつ、分解性があり、環境面で安全性の高いポリウレタンフォームを製造することができる。
【0080】
なお、本技術は、以下の構成とすることもできる。
(1)
生分解性ポリオールと、
イソシアネートと、
分解性酸化防止剤と、
を含有する組成物から得られるポリウレタンフォーム。
(2)
前記組成物は、前記生分解性ポリオール100質量部に対して、前記分解性酸化防止剤を0.05~5質量部含有する、(1)に記載のポリウレタンフォーム。
(3)
前記分解性酸化防止剤は、ビタミンE及び/又はビタミンE誘導体である、(1)又は(2)に記載のポリウレタンフォーム
(4)
前記イソシアネートは、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートである、(1)から(3)のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
(5)
前記組成物は、第1級アミンを含有する、(1)から(4)のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
【実施例0081】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0082】
(1)原料
ポリオール:天然由来エステル系ポリオール(精製ヒマシ油:分子量950、官能基数
2.7、水酸基価160mg/g)50部、セバシン酸エステルポリオール(分子量20
00、官能基数2、水酸基価56mg/g)50部の混合物
第1級アミン:ポリエーテル第1級アミン(重量平均分子量(Mw):5000、官能
基数3、粘度819cSt(25℃)、アミン水素当量(AHEW)952g/eq、全
アミンに対する1級アミンの比率97%以上、前記化学式(5)におけるx+y+z=8
5)
金属触媒:スズ触媒
アミン触媒:三級アミン触媒(分子量96~152の混合物)
整泡剤:シリコーン系整泡剤
発泡剤:水
生分解促進剤:マルトース
イソシアネート:HDIイソシアヌレート(HDIトリマー)
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン株式会社「Irganox 1135」)
分解性酸化防止剤:ビタミンE(理研ビタミン株式会社製「理研Eオイルスーパー80」)
【0083】
(2)ポリウレタンフォームの製造
下記表1に示す各原料を撹拌混合して組成物を調製後した後、調製した組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡(スラブ発泡)させることにより、各ポリウレタンフォームを製造した。
【0084】
(3)評価
製造したポリウレタンフォームのフォームについて、JIS Z8722に基づく方法に準拠して色差計を用いて黄色度(YI)を測定し、その値を用いて変色性の評価を行った。なお、JIS Z8722に基づく方法に準拠して測定されたYI値は、3以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。尚、YI値は、通常-3以上である。YI値は、その値が高いほど黄色の度合いが高いことを示している。
【0085】
(4)結果
結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0086】
(5)考察
表1に示す通り、分解性酸化防止剤を用いた実施例1及び2は、分解性を有するにも関わらず、分解性のない酸化防止剤を用いた比較例2と同等のスコーチ抑制に伴う変色防止効果を有することが確認された。