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▶ 西浦 志比兵衛の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112131
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】育成シート
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017010
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】303048330
【氏名又は名称】西浦 志比兵衛
(72)【発明者】
【氏名】西浦 志比兵衛
(72)【発明者】
【氏名】西浦 眞奈美
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024DB01
2B024DB03
2B024DD01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植え付ける野菜の望ましい植付け間隔に現場で汎用的に対応できる育成シートを提案する。
【解決手段】連続的に1枚ずつ重ね継ぎして植栽床を覆う育成シートであり、中央部に植付開口域11が設けられている。該シートは左辺、右辺が凹凸状であり拡幅部12と狭窄部13で構成されている。拡幅部12の左右側辺に該狭窄部13の幅以上離れて対で小孔15が設けられている。後から敷接するシートA2の拡幅部12が隣りの下のシートA1の狭窄部13を覆うように重ねて敷設し、小孔15を通してピン等で固定する。ピンは下のシートA1にブロックされることなく床に届く。これにより、隣に敷設しているシートの植付開口域11との間隔を自由に調整して確保することができる。同時に植栽床の全面を覆うことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の側辺と前後一対の端辺を有し、中程に植付開口域が1以上設けられた略矩形の育成シートであって、該左右の側辺間の幅が広い拡幅部及び該拡幅部を挟む拡幅部側辺と、該植付開口域を挟んで反対側に幅が狭い狭窄部及び該狭窄部を挟む狭窄部側辺があり、
該拡幅部の左右側辺縁に、前期狭窄部の左右の側辺間の幅以上離れた間隔で左右一対の拡幅部側辺小孔が設けられていることを特徴とする育成シート。
【請求項2】
拡幅部側の端辺の辺縁に1以上の小孔を設けて捲れ止め小孔とし、反対側の狭窄部に、シートの左右側辺間の中心軸に略平行で且つ該捲れ止め小孔を通る線上で植付間隔調整スリットを1以上設けていることを特徴とする請求項1に記載の育成シート。
【請求項3】
拡幅部側の端辺の辺縁に1以上の小孔を設けて捲れ止め小孔とし、反対側の狭窄部に、シートの左右側辺間の中心軸に略平行で且つ該捲れ止め小孔を通る線上で1以上の植付間隔調整小孔で構成された列を1列以上設けていることを特徴とする請求項1に記載の育成シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物の育成シートに関する。
【背景技術】
【0002】
露地での野菜栽培ではフイルム製のマルチシートを使用することが多くなった。特に夏野菜の果菜類や芋類の栽培に利用されている。
発明は一歩ずつ人類を新しいステージに導く。問題点を解消し、新しい提案をして、生活を豊かにする。栽培技術の面では極小さい一歩だが、マルチシートは地温調節、雑草抑制、土壌内水分維持、病気予防や害虫防御、土壌内肥料成分の保全等の効果があり便利である。
栽培農家は長方形長尺の畝をマルチシートで全長的に覆い、その後上から穴を空けながら植付けをしている。
【0003】
一方一般家庭では野菜を自給し加えて栽培を楽しむ人が多くなった。栽培する品種も非常に多くなった。限られた広さの圃場で、少数ずつ、できれば多くの種類、多くの品種の野菜を栽培したり、1本ずつ自分流に工夫しながら栽培したいと思う人が多くなった。
家庭菜園は大規模でないため人手が無いことから容易に敷設できる育成シートを用いるようになった。1本の苗に1枚の育成用シートを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-289729
【特許文献2】意匠登録第1694013号
【特許文献3】意匠登録第1709293号
【特許文献4】意匠登録第1715869号
【0005】
これ等文献では育成シートの四隅や辺縁に小孔が設けられており、そこにピンや杭を挿してシートを植栽床に固定する。植物を1本ずつ順に植え付けるときに便利である。
略長方形の形状をした長い畝に一定の間隔で植え付ける場合は、シートの隅角に設けられている小孔と隣のシートの隅角の小孔を合致させてそこにピンや杭を挿して植栽床に固定しシートを植栽床面上で連続させることが可能である。この場合は隣りに敷設したシートの植付開口域との距離が植付けの間隔となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、野菜の種類ごとに葉や枝や根の開帳に違いがあり望ましい植え付け間隔はまちまちである。たとえばナスの場合は植え付け間隔は60cm、ピーマンは45cm~50cmといったところである。一般に栽培されている夏野菜の場合は植付け間隔に広いものから狭いものまで20cm程の差がある。
植物の種類に合わせて其々の植付け間隔に合うシートを前もって多種類用意しておくのは困難なことである。
また、限られた区画形状の菜園やミニ菜園では、植栽床の形状や面積に合わせて植える必要があるため、植え付ける野菜の植付け間隔は現地の状況を優先しなければならない。
そこで、其々の望ましい植付け間隔に現場で汎用的に対応できる育成シートを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の育成シートは、左右一対の側辺と前後一対の端辺を有し、
中程に植物の植付開口域が1以上設けられた略矩形の育成シートであって、
該左右の側辺間の幅が広い拡幅部及び該拡幅部を挟む拡幅部側辺と、
該植付開口域を挟んで反対側に幅が狭い狭窄部及び該狭窄部を挟む狭窄部側辺があり、
該拡幅部の該左右側辺縁に、
前期狭窄部の左右の側辺間の幅以上離れた間隔で左右一対の拡幅部側辺小孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
植え付け間隔を容易に調整することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「第1実施形態」
第1実施形態の育成シートについて、図1で説明する。第1実施形態の育成シート(A)は図1の平面図で示すように、シートの略中央部に植物を植付けるための植付開口域(11)が設けられている。
該シートには左右の側辺間の幅が広い部分(以下「拡幅部(12)」)と、該植付開口域を挟んで反対側に左右の側辺間の幅が狭い部分(以下「狭窄部(13)」)が設けられている。
また、該シートの拡幅部(12)あるいはその直近を横断するように拡幅部サイドの端辺(以下「拡幅部端辺(14)」)があり、もう一つの端辺は植付開口域(11)を挟んで反対側にある。
前記拡幅部(12)の左右の両側辺縁に該シートを植栽床に固定するピンを挿すための拡幅部側辺小孔(15)が設けられている。また、左右の該拡幅部側辺小孔(15)は該狭窄部の左右の側辺間の幅以上離れて設けられている。
【0010】
図2は該シート(A)の敷設例であり、植栽床の畝を上から見た図である。シートの略中央部に植物を植付けるための植付開口域(11)が設けられている。該植付開口域(11)は円系でも矩形でもよく形状等を問わない。
畝の中心線とシートの中心線を粗一致させ、それを挟むように該シート(A1,A2,A3)の左側辺、右側辺が配置されている。
前もって先に敷設したシート(A1)の狭窄部(13)を隣りの後から敷設するシート(A2)の拡幅部(12)が覆うようにして上から被さり、上のシート(A2)の拡幅部側辺小孔(15)に挿したピンが下のシートの狭窄部(13)の外側を通過して植栽床に届き、上のシート(A2)を植栽床に定着させている。このとき下のシート(A1)の狭窄部(13)も上のシート(A2)の拡幅部(12)に上から押さえられて植栽床に固定される。
シートには拡幅部(12)と狭窄部(13)があって、左右の該拡幅部側辺小孔(15)が該狭窄部の左右の側辺間の幅以上離れて設けられているため、該拡幅部側辺小孔(15)から挿すピンは下のシート(A1)にブロックされることなく植栽床に届くことが出来ている。
【0011】
下のシート(A1)の狭窄部(13)は植付け間隔の調整域であり、上のシート(A2)の拡幅部端辺(14)をどれだけ下のシート(A1)の植付開口域(11)に近づけて敷設するかで植付け間隔を調節する。
また、これにより連続して敷設されたシートは植栽床全面を途切れることなく覆い防草、保温、保湿等に効果的である。加えて、雨によって肥料等が流乏するのを防ぐのに役立つ。土壌内の希少成分の保全がなされる。
【0012】
「第2実施形態」
一方、ナスやピーマンの畝幅は70cm前後であるのに対して、トマトやキュウリは2条で植えることが多いことから、その場合は畝の幅を100cm~120cmほど確保しそれに合ったシートを用意する必要がある。その場合は、拡幅部側辺小孔のピンによる固定のみでは、畝面で下のシートと上のシートの重ね代部分に風が入り込んで上のシートを捲り上げてしまうことが考えられる。上のシートの捲れ上がりを止めるためには固定用のピンをもう1本増して畝面に挿し上のシートを押さえ込む必要がある。カボチャなどの畝幅が200cmにもなる場合は更に増す必要がある。
【0013】
図3で示すように、拡幅部側の端辺(14)の辺縁に1以上の小孔を設けて捲れ止め小孔(18)とし、反対側の狭窄部(13)に、シートの左右側辺間の中心軸に略平行で且つ該捲れ止め小孔(18)を通る線上で植付間隔調整スリット(19)を1以上設ける。なお、他の部分は第1実施形態と同じであるため省略する。
【0014】
図4で示すように、使用法としては先に敷設した下のシート(B1)の狭窄部(13)を後から敷設する上のシート(B2)の拡幅部(12)が覆うようにして上から押え込み、上のシート(B2)の拡幅部側辺小孔(15)に挿したピンが上下のシート(B1、B2)を固定する。このとき上のシート(B2)の捲れ止め小孔(18)と、先に敷設した下のシート(B1)の植付間隔調整スリット(19)とを上下で一致させてそこにピン等を挿してシートの捲れ上がりを防止する。
植付間隔調整スリット(19)の長さは該シートを使用する野菜の種類に合わせて必要となる最長の重ね合わせ長以上にしておくとよい。また、狭窄部側辺(13a)はそれ以上にしておく必要がある。
【0015】
効果としては上のシートが風で捲れないようにすることが出来る。また、植付間隔調整スリット(19)のどの部分にピンを挿しても良いので微妙に植付け間隔(X1)を調整することができる。また、長尺の畝に連続させて全面敷設することが出来る。
【0016】
図4で示すように、上のシート(B2)の拡幅部端辺(14)と該シート中央の植付開口域(11)との間(Y)、下のシート(B1)の狭窄部サイドの端辺(以下「狭窄部端辺(16)」)と該シート中央の植付開口域(11)との間(Z)が両者の重ね代部分である。両者の重ね合わせ長(Y,Z)に大きな差があると、植付け間隔を十分狭くしなければならない場合は上のシート(B2)の拡幅部側重ね代部分(Y)が下のシート(B1)の植付開口域(11)を覆って塞ぐ、又は上のシート(B2)の植付開口域(11)の下に下のシート(B1)の狭窄部側重ね代部分(Z)が有って上のシート(B2)の植付開口域(11)で植付けが出来ないようなことが起こるので、無駄無く最大限に調整可能長を確保するためには両方の長さ(Y,Z)を略同じにしておくと良い。
【0017】
図3の例のように、当該植付間隔調整スリット(19)を長くして狭窄部端辺(16)から植付開口域(11)に届くようにすることも提案できる。植栽床で苗が根付き葉や枝が開帳してから気候や雑草の発生状況を観ながら本シートを敷設するような場合などに、狭窄部(13)の左右を捲り広げて本シートを根元に挿入し、隣の植物との間合いを該植付間隔調整スリット(19)を利用して取ることで敷設することができる。
【0018】
なお、狭窄部端辺(16)の両側に設けられた狭窄部側辺小孔(17)は、植付け間隔を限度いっぱい広く取る必要から上下シートの重ね合わせが少なくなったときなど、先ず下のシートが風などで捲れないように固定しておく必要があるとき等に使用する。図3、4の狭窄部端辺(16)の中心部近くの植付間隔調整スリット(19)両側の小孔も同様の目的で設けられている。
【0019】
「第3実施形態」
図5参照。拡幅部側の端辺(14)の辺縁に1以上の小孔を設けて捲れ止め小孔(18)とし、反対側の狭窄部に、シートの左右側辺間の概中心軸に略平行で且つ該捲れ止め小孔(18)を通る線上に1以上の植付間隔調整小孔(20)で構成された列を1列以上設ける。なお、他の部分は第1実施形態と同じであるため省略する。
【0020】
図6で示すように、下のシート(C1)の狭窄部(13)の植付間隔調整小孔(20)の列の中の1孔を上のシート(C2)の捲れ止め小孔(18)から挿されたピンが通過する。
【0021】
植付間隔調整小孔(20)の列の内の1孔を選択することで、下のシート(C1)の狭窄部(13)と上のシート(C2)の拡幅部(12)との重ね合わせ長を選んで、植付け間隔(X1)を自由に決めることができ、合わせて風で捲れないようにすることが出来る。
【0022】
図5の例では、植付開口域(11)に植付孔の周辺部分を抱えるように扉スリット(22)で構成された扉部が設けられている。該扉部はフラップ式に開閉ができ、植付け、根元への追肥、水遣り等の時に捲って作業ができるようになっている。
【0023】
「他の実施形態」
また、図7図8は他の実施形態の例であり、このシートでは拡幅部(12)、狭窄部(13)が其々複数設けられている。従って該シートの左側辺 、右側辺は其々複数の凹凸で構成され、左右対称ともなっている。また、捲れ止め小孔(18)が複数設けられ、これに合わせて該捲れ止め小孔(18)を通る線上で対称軸方向の植付間隔調整スリット(19)が複数列設けられている。さらに、該植付間隔調整スリット(19)が分断されてもいる。
【0024】
この例ではシート中央部に複数の植付開口域(11)が設けられている。植付け間隔の調整対象は両端辺に最も近い植付開口域(11)となる。
【0025】
前述のカボチャのように、畝幅が広い場合はこのように拡幅部端辺(14)の辺縁に捲れ止め小孔(18)を2以上設ける。
植付間隔調整スリット(19)が途切れている部分はシートの左右の連続的繋がり部分として残ることからシートの面性が確保され丈夫で扱いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る第1実施形態のシートの平面図
図2】本発明に係る第1実施形態のシートの使用状況を説明する図
図3】本発明に係る第2実施形態のシートの平面図
図4】本発明に係る第2実施形態のシートの使用状況を説明する図
図5】本発明に係る第3実施形態のシートの平面図
図6】本発明に係る第3実施形態のシートの使用状況を説明する図
図7】本発明に係る他の実施形態のシートの平面図
図8】本発明に係る他の実施形態のシートの使用状況を説明する図
【産業上の利用可能性】
【0027】
このシートは前もって植付け用の開口がなされているので便利である。また、適度な広さなので高齢者や一般家庭人にも扱いやすい。一人で容易に敷設できる。日を変えて少ない本数を植え付ける家庭菜園、多くの種類の野菜を狭い菜園に植え付けしたいとき、1本ずつ或いは少ない本数のグループにして多様な育て方で栽培したいときなどに利用すると便利である。
また、野菜のみならず公園等の樹木や花卉類等植物全般の植栽にも利用できる。意匠的な配置で植え替えるガーデニングなどに利用することも出来る。
マルチシートは便利で優れてはいるが使用後の処分に問題がある。基本的に1回使いであるだけでなく泥等が混入して再生利用が困難である。本育成シートはポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等製の少し厚みがある織布や不織布で製造することが可能で、数年にわたって繰り返し使用することが出来る。
また、本シートが連続している長尺の形状で製作しておき、現場で切断分割して使用することも可能である。
【符号の説明】
【0028】
A 第1実施形態のシート
B 第2実施形態のシート
C 第3実施形態のシート
D 他の実施形態のシート
11 植付開口域
12 拡幅部
12a 拡幅部側辺
13 狭窄部
13a 狭窄部側辺
14 拡幅部端辺
15 拡幅部側辺小孔
16 狭窄部端辺
17 狭窄部側辺小孔
18 捲れ止め小孔
19 植付間隔調整スリット
20 植付間隔調整小孔
22 扉スリット
30 管理通路
X1 植付け間隔
X2 植付け間隔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8