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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112132
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】アイロンパーマ方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/22 20060101AFI20240813BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20240813BHJP
   A45D 7/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61K8/22
A61Q5/04
A45D7/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017011
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
(72)【発明者】
【氏名】中井 雄也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB082
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC532
4C083AC552
4C083AC712
4C083AD042
4C083CC34
4C083CC35
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE25
4C083EE26
4C083EE27
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、毛髪のダメージを低減可能なアイロンパーマ方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明のアイロンパーマ方法は、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程と、
前記酸化剤で処理した後、アイロンパーマ処理を行う工程と、
前記アイロンパーマ処理中に、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減する工程と、を含むことを特徴とする。また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程において、前記酸化剤を含むブリーチ剤で処理することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程と、
前記酸化剤で処理した後、アイロンパーマ処理を行う工程と、
前記アイロンパーマ処理中に、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減する工程と、を含むことを特徴とするアイロンパーマ方法。
【請求項2】
過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程において、前記酸化剤を含むブリーチ剤で処理することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程において、前記酸化剤を含むヘアカラー剤で処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アイロンパーマ処理中に、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減する工程において、アイロンパーマ処理の温度は、140℃~180℃であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブリーチ剤は、第1剤及び第2剤からなることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘアカラー剤は、第1剤及び第2剤からなることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記過酸化水素は、前記酸化剤を含むブリーチ剤の第2剤の量に対して、又は前記酸化剤を含むヘアカラー剤の第2剤の量に対して、1~6質量%であることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイロンパーマ方法に関し、特に、毛髪のダメージを低減可能なアイロンパーマ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、縮毛矯正やアイロンブロー、トリートメント施術などの整髪に、ヘアーアイロンが使用されている。このようなヘアーアイロンは、一対のアーム部材の一端が回動可能に連結され、両アーム部材の他端側に対面する発熱板が設けられている。加熱した両発熱板で毛髪を狭んだ状態で、毛先に向かってヘアーアイロンを摺動させることにより、毛髪全体を加熱して整髪を行うことができる。
【0003】
例えば、ヘアーアイロンとして、ハンドヘルド式のトリートメントユニット(2)を含むヘアスタイリング装置(1)であって、前記ハンドヘルド式のトリートメントユニット(2)は、2つのアーム(3、4)を有しており、前記2つのアーム(3、4)は、互いに向き合っている2つの表面(5、6)を備えるクランプを形成するように構成されているとともに、髪の房がクランプされることを可能にし、前記ハンドヘルド式のトリートメントユニットは、スチームを拡散させる手段(7)を含み、前記スチームを拡散させる手段(7)は、前記2つの表面のうちの第1の表面(5)から前記2つの表面のうちの第2の表面(6)へスチームを拡散させるように構成されている、ヘアスタイリング装置(1)において、前記アーム(3、4)のうちの1つが、前記アーム(3、4)の前記表面(5、6)のうちの1つの上流にまたは下流に位置付けされているくし(19)を有することを特徴とするヘアスタイリング装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-515590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を含め従来技術においては、ヘアーアイロンの使用以前に、ヘアカラー、ヘアトリートメント、ブリーチ処理などを含めて、種々の薬剤、例えば酸化剤、還元剤等を使用する場合がある。
【0006】
かかる場合、酸化剤や還元剤等の本来の目的を達成した後には、かえって、毛髪にダメージを与える場合が生じている。毛髪にダメージを極力与えないものを使用したり、長時間の使用を避けるなどして、毛髪のダメージを低減する試みがあるものの、十分に達成できない場合もあった。
【0007】
例えば、ブリーチ剤に使用される過酸化水素は、良好なカラーリングを提供し得るものの、毛髪の主成分であるケラチンにも作用して、分解する結果、毛髪にダメージを与えるという問題点を有していた。しかし、毛髪のダメージを低減可能なアイロンパーマ方法はこれまで知られていない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、毛髪のダメージを低減可能なアイロンパーマ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、アイロンパーマ方法について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明のアイロンパーマ方法は、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程と、
前記酸化剤で処理した後、アイロンパーマ処理を行う工程と、
前記アイロンパーマ処理中に、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程において、前記酸化剤を含むブリーチ剤で処理することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程において、前記酸化剤を含むヘアカラー剤で処理することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記アイロンパーマ処理中に、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減する工程において、アイロンパーマ処理の温度は、140℃~180℃であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記酸化剤は、アンモニア水を含有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記ブリーチ剤は、第1剤及び第2剤からなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記ヘアカラー剤は、第1剤及び第2剤からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記過酸化水素は、前記酸化剤を含むブリーチ剤の第2剤の量に対して、又は前記酸化剤を含むヘアカラー剤の第2剤の量に対して、1~6質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアイロンパーマ方法によれば、毛髪のダメージを低減可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施態様におけるアイロンパーマ方法の効果を示す図である。図では分かりにくいが、棒グラフは、左から、毛先、真ん中、根元の順に表示されている。
図2図2は、本発明の一実施態様におけるアイロンパーマ方法に使用可能なヘアーアイロンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のアイロンパーマ方法は、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程と、
前記酸化剤で処理した後、アイロンパーマ処理を行う工程と、
前記アイロンパーマ処理中に、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減する工程と、を含むことを特徴とする。例えば、酸化剤を含むブリーチ剤又はヘアカラー剤等に使用される過酸化水素は、良好なカラーリングを提供し得るものの、毛髪の主成分であるケラチンにも作用して、分解する結果、毛髪にダメージを与えるという問題点を有していたが、本発明においては、過酸化水素の濃度を低減することが可能であり、毛髪へのダメージを軽減することが可能となる。また、本発明において、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤に関しては、特に限定されない。本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程において、前記酸化剤を含むブリーチ剤で処理することを特徴とする。ブリーチ剤としては、特に限定されないが、通常、ブリーチ剤の主要な成分は、過酸化水素水とアンモニア水(アルカリ性物質)で構成することができる。アンモニア水は毛髪表面のキューティクルに作用し、毛髪を膨潤・軟化させる。この膨潤・軟化した毛髪の内部に過酸化水素が浸透し、過酸化水素がメラニンと化学反応する。黒髪をブリーチ剤で脱色すると、赤褐色→赤みの強いオレンジ色→黄みの強いオレンジ色→黄色と塗布時間により変化していく。これは黒褐色の「ユーメラニン」が分解され、橙赤色の「フェオメラニン」は分解されにくいのが大きな要因である。
【0021】
本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記ブリーチ剤は、第1剤及び第2剤からなることを特徴とする。通常、これらのブリーチ第1剤及びブリーチ第2剤を混合して、ブリーチ剤として使用することができる。例えば、ブリーチ第1剤の成分としては、水、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、エデト酸四ナトリウム四水塩等を挙げることができる。
【0022】
また、例えば、ブリーチ第2剤の成分としては、水、過酸化水素、過酸化水素水等を挙げることができる。
【0023】
好ましい態様において、前記過酸化水素は、前記酸化剤を含むブリーチ剤の第2剤の量に対して、脱色と毛髪を傷めないという観点から、1~6質量%であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤で毛髪を処理する工程において、前記酸化剤を含むヘアカラー剤で処理することを特徴とする。酸化剤を含むヘアカラー剤は、一般に酸化染料と呼ばれるものを挙げることができる。例えば、酸化染料としては酸化染料中間体、カプラーを挙げることができる。酸化染料中間体としては、例えば、p-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノールなどのフェニルアミン類及びそれらの塩を挙げられる。
【0025】
塩としては、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩などを挙げられる。酸化染料中間体の配合量は、必要に応じて適宜に設定することができる。
【0026】
カプラーとしては、主としてm-のジアミン類、アミノフェノール類又はジフェノール類が挙げられ、具体的にはレゾルシン、ピロガロール、フロログルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、α-ナフトール、2,6-ジアミノピリジン、ハイドロキノン、ジフェニルアミン、1,5-ジヒドロキシナフタレン及びそれらの塩等が挙げられる。酸化染毛剤におけるカプラーの配合量は、必要に応じて適宜に設定すれば良い。酸化染料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、酸化染料の配合量は、ヘアカラー剤の全量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。
【0028】
その他、ヘアカラー剤には、ACID RED 51、ACID RED 52、ACID RED 87、FOOD RED 1、ACID ORANGE 7、ACID YELLOW 3、ACID VIOLET 43からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸性直接染料を含むことができる。
【0029】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記ヘアカラー剤は、第1剤及び第2剤からなることを特徴とする。通常、これらのヘアカラー第1剤及びヘアカラー第2剤を混合して、ブリーチ剤として使用することができる。ヘアカラー第1剤には、上述の酸化染料のほか、アルカリ剤を含んでも良い。
【0030】
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩;リン酸ナトリウムなどの金属リン酸塩;アンモニア水;炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン;などを挙げることができる。
【0031】
また、アルカリ剤の配合量は、ヘアカラー剤の全量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましい。
【0032】
酸化剤は、通常、ヘアカラー第2剤に含むことができる。なお、酸化剤には、過酸化水素の他に、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどを含んでも良い。
【0033】
好ましい態様において、前記過酸化水素は、前記酸化剤を含むヘアカラー剤の第2剤の量に対して、発色と毛髪を傷めないという観点から、1~6質量%であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記アイロンパーマ処理中に、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減する工程において、アイロンパーマ処理の温度は、より効率的に、過酸化水素を低減するという観点から、140℃~180℃であることを特徴とする。
【0035】
また、本発明のアイロンパーマ方法において、適用可能なヘアーアイロンを例示すると以下の通りである。
【0036】
すなわち、本発明に適用可能なヘアーアイロンは、開閉可能に連結された第一のアーム及び第二のアームと、
前記第一のアームの内側に設けられた第一の挟持面と、
前記第二のアームの内側に設けられた第二の挟持面と、
前記第一及び第二の挟持面に設けられた毛髪を加熱するための加熱手段と、を有するヘアーアイロンであって、前記第一及び/又は第二のアームに過酸化水素低減装置を備えることを特徴とする。本発明に適用可能なヘアーアイロンにおいて、第一のアーム及び第二のアームは、開閉可能に連結されていれば足り、特に限定されるものではない。本発明においては、第一のアームの内側に設けられた第一の挟持面と、第二のアームの内側に設けられた第二の挟持面と、を利用して毛髪を挟むことが可能である。第一及び第二の挟持面に設けられた毛髪を加熱するための加熱手段によって、両挟持面を介して毛髪を施術することが可能である。また、本発明に適用可能なヘアーアイロンにおいて、前記第一及び/又は第二のアームに過酸化水素低減装置を備えることができる。これにより、本発明においては、例えば、ブリーチ剤に使用される過酸化水素であって、余分となった過酸化水素を効率的に除去することが可能となり、ひいては、毛髪のダメージを極力抑えることが可能となる。過酸化水素低減装置は、アームに設置されていれば足り、場所等は特に限定されない。好ましい実施態様において、加熱手段により高温化することが予想される挟持面を避けるという観点から、アームの中央部からアームの取っ手側にかけて、いずれかの場所に設置することができる。
【0037】
また、本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、前記過酸化水素低減装置は、温度設定により過酸化水素を低減することを特徴とする。本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、前前記温度は、過酸化水素が低減し始めるという観点から、80℃以上であることを特徴とする。また、本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、より効率的に、過酸化水素を低減するという観点から、前記温度は、140℃~180℃であることを特徴とする。
【0038】
また、本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、さらに、前記第一及び/又は第二のアームには、温度制御装置を備えることを特徴とする。温度設定装置は、アームに設置されていれば足り、場所等は特に限定されない。好ましい実施態様において、加熱手段により高温化することが予想される挟持面を避けるという観点から、アームの中央部からアームの取っ手側かけていずれかの場所に設置することができる。
【0039】
ヘアーアイロン本体から出る電源コードの中間部に温度制御装置が設置されている場合もあるが、この場合、電源オン・オフする際はコードを手繰って操作する必要がある。一方、本発明においては、アーム内部に、過酸化水素低減装置や、温度制御装置を設置しており、後述するように、スイッチ機能をアーム内部に設置すれば、ヘアーアイロンを右手に持った状態で電源オン・オフが可能であり、かつダイヤル状の調節機構とすれば、過酸化水素の調節、及び温度調節も親指で簡単にダイヤルで回すことが出来るので操作性の向上を図ることが可能である。
【0040】
また、本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、さらに、前記第一のアームと前記第二のアームとを接続する接続部材を有することを特徴とする。両アームの間に両者を接続する接続部材によって、アイロン先端部分のブレ(すなわち、アイロン先端側から見た時の左右のブレ)を抑える役目を達成することが可能である。具体的には、アイロンをプレスした時にプレート面がズレなく合うようにすることが可能となる。また、本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、前記接続部材は、操作性という観点から、一つ又はそれ以上であることを特徴とする。
【0041】
また、本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、前記過酸化水素低減装置及び温度制御装置は、操作性という観点から、一体型であることを特徴とする。また、本発明に適用可能なヘアーアイロンの好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二のアームには、前記過酸化水素低減装置及び温度制御装置のスイッチを備えることを特徴とする。上述のように、ヘアーアイロン本体から出る電源コードの中間部に温度制御装置が設置されている場合もあるが、この場合、電源オン・オフする際はコードを手繰って操作する必要がある。一方、本発明においては、アーム内部に、過酸化水素低減装置や、温度制御装置を設置しており、スイッチも備えることができるので、操作性の向上を図ることが可能である。
【0042】
なお、ヘアーアイロンを適用する前に、ブリーチ処理などを行っても良い。ブリーチ剤による処理は、アルカリ剤を使って毛髪を軟化させるところにある。ブリーチ剤の主要な成分は、過酸化水素水とアンモニア水(アルカリ性物質)で構成されている。アンモニア水は毛髪表面のキューティクルに作用し、毛髪を膨潤・軟化させる。この膨潤・軟化した毛髪の内部に過酸化水素が浸透し、過酸化水素がメラニンと化学反応する。黒髪をブリーチ剤で脱色すると、赤褐色→赤みの強いオレンジ色→黄みの強いオレンジ色→黄色と塗布時間により変化していく。これは黒褐色の「ユーメラニン」が分解され、橙赤色の「フェオメラニン」は分解されにくいのが大きな要因である。
【0043】
ところが、過酸化水素によって酸化するのは、メラニンだけではない。すなわち、毛髪の主成分であるケラチンを分解し、毛髪にダメージを与える可能性を有する。
【0044】
本発明においては、当該過酸化水素を早めに除去することによって毛髪のダメージを極力抑えることが可能である。
【実施例0045】
以下では本発明のアイロンパーマ方法についての一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0046】
実施例1
本発明においては、一例として以下のヘアーアイロンを用いて、過酸化水素の低減を調べた。なお、本例においては、ヘアーアイロンを使用しているが、温度設定により、過酸化水素を低減可能であるため、ヘアーアイロンを使用しなくてもよい。
【0047】
図1に本発明に適用可能な一実施態様におけるヘアーアイロンを示す。図中、1は第一のアーム、2は第二のアーム、3は第一の挟持面、4は第二の挟持面、5は過酸化水素低減装置、6は温度制御装置、7は接続部材、8は接続部材、9はスイッチを、それぞれ示す。このヘアーアイロンでアイロンを行う場合について、簡単に説明すれば以下の通りである。電源プラグをコンセントに差し込み、ヒーター(加熱手段)によって、挟持面(3,4)を発熱させる。第一及び第二のアームによる挟持動作により毛髪を挟持面(3,4)に挟み、かつ、加熱手段による加熱により、挟み込んだ毛髪に対して挟持面(3,4)の処理面に沿ってへアーアイロンの施術を行うことができる。この例において、過酸化水素低減装置5は、アーム内部に、設置されており、また、スイッチ9機能をアーム内部に設置している。したがって、ヘアーアイロンを右手に持った状態で電源オン・オフが可能である。また、この例においては、過酸化水素低減装置5、及び温度制御装置6は一体型となっており、ダイヤル状の調節機能となっている。したがって、過酸化水素の調節、及び温度調節も親指で簡単にダイヤルで回すことが出来るので操作性の向上を図ることが可能である。なお、過酸化水素低減装置5、及び温度制御装置6等の温度調節は、ダイヤル状に限定されず、押しボタン、レバー等により行うことができ、特に限定されない。
【0048】
なお、「過酸化水素除去」モード設置ヘアーアイロンとして、アイロンのダイヤル位置に「過酸化水素除去」というモードを設け、150℃となるようにすることも可能である。
【0049】
このようなヘアーアイロンを用いて、実際に、過酸化水素が除去可能か否かも調べた。
【0050】
<過酸化水素の分解温度>
約1gの人毛白髪100%毛束(品番:BM-W-A、ビューラックス社製)をブリーチ処理し、毛髪内部に過酸化水素が残留した状態を評価用毛束とした。毛髪内部の過酸化水素の分解温度を以下の方法で決定し、その温度を「過酸化水素除去モード」とした。
【0051】
<アイロン処理温度における過酸化水素濃度の測定>
処方例1のブリーチ第1剤と処方例2のブリーチ第2剤を1:1の割合で均一になるまで混合し、毛束に塗布後室温で30分間放置。その後、温水ですすぎ、当社のウーロンシャンプー(販売名:ナノサプリクレンジングシャンプーOT)で洗浄し温水ですすぎ、ドライヤーで乾かした。そして本発明のヘアーアイロンを80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180℃に設定し3回毛束を通した。その後、各毛束を水で濡らし、過酸化水素濃度試験紙(三菱ガス化学トレーディング株式会社:過酸化水素濃度試験紙)を毛束の毛先、真ん中、根元に5秒間押し当て、目視による濃度測定、分光測色計における色彩測定を行った。表1に、処方例1を示した(ブリーチ第1剤)。また、表2に、処方例2を示した(ブリーチ第2剤)。なお、ブリーチ第2剤中の過酸化水素の含有量は、6質量%である。(30%の過酸化水素水を20質量%用いているので、過酸化水素は、0.30×0.20×100=6.0質量%となる。)
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
<ヘアーアイロンにおける過酸化水素分解温度の判定>
次いで、過酸化水素濃度試験紙を目視にて確認し、表3に示した。
【0055】
【表3】
【0056】
過酸化水素濃度試験紙を分光測色計(型番:CM-36dG,コニカミノルタ社製)を用いてL*a*b*色空間を測定し、表4、図1に示した。過酸化水素濃度試験紙は、過酸化水素濃度が高いとより青く発色する。そのため、分光測色計で測定した際に、b*値が低いほど過酸化水素濃度が高くなる。表3、4より、過酸化水素濃度が大幅に減少する150℃以上が適切である。そのため、「過酸化水素除去」というモードは150℃とすることができる。
【0057】
【表4】
【0058】
これらの結果、ヘアーアイロンを操作しながら、過酸化水素を効率的に低減することが可能となり、毛髪のダメージを極力抑えることが可能であることが判明した。
【0059】
実施例2
次に、過酸化水素を含むヘアカラー剤についても、本発明の効果を調べた。過酸化水素を含むヘアカラー剤として、以下のものを用いた。なお、ヘアカラー第2剤中の過酸化水素の含有量は、6質量%である。(30%の過酸化水素水を20質量%用いているので、過酸化水素は、0.30×0.20×100=6.0質量%となる。)ヘアカラー第1剤(酸化染毛1剤)の処方例3を表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
また、ヘアカラー第2剤(酸化染毛2剤)の処方例4を表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
このように調整した過酸化水素を少なくとも含有する酸化剤を含有するヘアカラー剤で毛髪を処理した後、アイロンパーマ処理を行った。アイロンパーマ処理中に、アイロンパーマ処理の温度は、80℃~180℃に設定して、毛髪中の前記過酸化水素の濃度を低減することを試みた結果、ヘアカラー剤を用いた場合においても、毛髪のダメージを極力抑えることが可能であることが判明した。
【符号の説明】
【0064】
1 第一のアーム
2 第二のアーム
3 第一の挟持面
4 第二の挟持面
5 過酸化水素低減装置
6 温度制御装置
7 接続部材
8 接続部材
9 スイッチ
図1
図2