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特開2024-112135情報処理方法、プログラム及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112135
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240813BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017017
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】木通 秀樹
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】電池の劣化診断の結果を、電池の良否が分かり易く提示することができる情報処理方法等を提供する。
【解決手段】コンピュータは、複数の電気自動車の走行距離又は各電気自動車に搭載されている車載用電池の使用期間と、各車載用電池の劣化度合との関係に基づいて設定された車載用電池に対する評価基準を取得する。また、コンピュータは、評価対象の車載用電池の使用期間又は前記車載用電池が搭載された電気自動車の走行距離と、前記車載用電池の劣化度合とを取得する。そして、コンピュータは、評価対象の車載用電池の使用期間又は走行距離、及び評価対象の車載用電池の劣化度合と、前記評価基準とに基づき、評価対象の車載用電池の評価値を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気自動車の走行距離又は各電気自動車に搭載されている車載用電池の使用期間と、各車載用電池の劣化度合との関係に基づいて設定された前記車載用電池に対する評価基準を取得し、
評価対象の車載用電池の使用期間又は前記車載用電池が搭載された電気自動車の走行距離と、前記車載用電池の劣化度合とを取得し、
前記評価対象の車載用電池の使用期間又は前記走行距離、及び前記評価対象の車載用電池の劣化度合と、前記評価基準とに基づき、前記評価対象の車載用電池の評価値を特定する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記評価対象の車載用電池の使用期間又は前記電気自動車の走行距離に応じた劣化度合の前記評価基準からの乖離度に基づいて、前記車載用電池の評価値を特定する
処理を前記コンピュータが実行する請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記車載用電池に対する評価基準は前記車載用電池の種類に応じて設定されている
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記車載用電池の使用期間又は前記電気自動車の走行距離を第1軸とし、前記車載用電池の劣化度合を第2軸とし、複数の車載用電池の使用期間又は各車載用電池が搭載されている電気自動車の走行距離に対する各車載用電池の劣化度合をプロットしたグラフを表示し、
前記各車載用電池の劣化度合のうちで、各使用期間又は走行距離に対する劣化度合が、各車載用電池の劣化度合の平均値よりも小さい車載用電池の劣化度合の変化を前記評価基準として前記グラフ上にプロットする
処理を前記コンピュータが実行する請求項1~3のいずれかひとつに記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記各車載用電池の劣化度合のうちで、前記評価基準とした前記車載用電池よりも使用期間又は走行距離に対する劣化度合が大きい車載用電池の劣化度合の変化を、前記評価基準よりも低い第2評価基準として前記グラフ上にプロットする
処理を前記コンピュータが実行する請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記複数の車載用電池の使用期間又は各車載用電池が搭載された電気自動車の走行距離毎に、各車載用電池の劣化度合に基づく評価値が所定範囲である劣化度合の範囲を示す評価基準ゾーンを前記グラフ上に表示する
処理を前記コンピュータが実行する請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記評価対象の車載用電池の使用期間又は前記車載用電池が搭載されている電気自動車の走行距離に応じた劣化度合を前記グラフ上にプロットする
処理を前記コンピュータが実行する請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記評価対象の車載用電池の使用期間又は前記車載用電池が搭載されている電気自動車の走行距離に応じた前記車載用電池の劣化度合を時系列で取得し、
取得した複数の劣化度合に基づいて、前記車載用電池の劣化速度を算出する
処理を前記コンピュータが実行する請求項1~3のいずれかひとつに記載の情報処理方法。
【請求項9】
複数の電気自動車の走行距離又は各電気自動車に搭載されている車載用電池の使用期間と、各車載用電池の劣化度合との関係に基づいて設定された前記車載用電池に対する評価基準を取得し、
評価対象の車載用電池の使用期間又は前記車載用電池が搭載された電気自動車の走行距離と、前記車載用電池の劣化度合とを取得し、
前記評価対象の車載用電池の使用期間又は前記走行距離、及び前記評価対象の車載用電池の劣化度合と、前記評価基準とに基づき、前記評価対象の車載用電池の評価値を特定する
処理をコンピュータに実行されるプログラム。
【請求項10】
制御部を備える情報処理装置において、
前記制御部は、
複数の電気自動車の走行距離又は各電気自動車に搭載されている車載用電池の使用期間と、各車載用電池の劣化度合との関係に基づいて設定された前記車載用電池に対する評価基準を取得し、
評価対象の車載用電池の使用期間又は前記車載用電池が搭載された電気自動車の走行距離と、前記車載用電池の劣化度合とを取得し、
前記評価対象の車載用電池の使用期間又は前記走行距離、及び前記評価対象の車載用電池の劣化度合と、前記評価基準とに基づき、前記評価対象の車載用電池の評価値を特定する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法、プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)及び電気自動車(EV:Electric Vehicle)が普及するにつれて、これらの自動車に搭載される二次電池(単に「電池」ともいう)の劣化診断が重要になってきている。特に、これらの自動車が中古車として販売される場合には、電池の劣化度合が車両価格に影響を与えるので、適正な劣化診断が行われることが必要である。特許文献1には、電池を有し、モータにより走行可能な自動車に搭載され、電池の温度が所定の温度閾値範囲内であり、かつ、電池の残存容量が所定の容量閾値範囲内のときに電池の劣化を判定する電池劣化判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-152551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、例えば診断対象の電池の内部抵抗の大小に基づいて電池の劣化具合が診断される。このような診断結果は、自動車及び電池に詳しくないユーザにとっては理解し難く、診断結果から自身の自動車及び電池の良否を判断することは容易ではない。
【0005】
本開示は、電池の劣化診断の結果を、電池の良否が分かり易く提示することができる情報処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る情報処理方法は、複数の電気自動車の走行距離又は各電気自動車に搭載されている車載用電池の使用期間と、各車載用電池の劣化度合との関係に基づいて設定された前記車載用電池に対する評価基準を取得し、評価対象の車載用電池の使用期間又は前記車載用電池が搭載された電気自動車の走行距離と、前記車載用電池の劣化度合とを取得し、前記評価対象の車載用電池の使用期間又は前記走行距離、及び前記評価対象の車載用電池の劣化度合と、前記評価基準とに基づき、前記評価対象の車載用電池の評価値を特定する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電池の劣化診断の結果を、電池の良否が分かり易く提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理システムの構成例を示す模式図である。
図2】ノード装置の構成例を示す模式図である。
図3】ノード装置に記憶される電池関連情報の構成例を示す模式図である。
図4】端末装置、車載計測機器及び診断機器の構成例を示すブロック図である。
図5】電池管理サーバの構成例を示すブロック図である。
図6】電池管理サーバが記憶するDBの構成例を示す模式図である。
図7】診断サーバの構成例を示すブロック図である。
図8】診断サーバが記憶するDBの構成例を示す模式図である。
図9】入力画面例を示す模式図である。
図10】車載計測機器による計測データの蓄積処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】整備事業者での診断結果の蓄積処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12】診断結果に対する評価処理の説明図である。
図13】画面例を示す模式図である。
図14】画面例を示す模式図である。
図15】診断結果の提供処理手順の一例を示すフローチャートである。
図16】アドバイスDBの構成例を示す模式図である。
図17】実施形態2の診断結果の蓄積処理手順の一例を示すフローチャートである。
図18】画面例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の情報処理方法、プログラム及び情報処理装置について、その実施形態を示す図面に基づいて詳述する。以下の実施形態では、HEV又はEVに搭載される電池(車載用電池)に関する各種の情報を管理する情報処理システムについて説明する。なお、以下では自動車又は車両は、HEV、EV(電気自動車)であるとする。以下の実施形態において、車両は、新しく製造された電池が搭載されて使用され、車載用電池として利用できない程度に電池が劣化した場合、新しく製造された電池に交換されて使用される。また、以下の実施形態では、各電池について、製造されて車両に搭載されてから車両から取り外されるまでの間における各種の情報を管理する。電池は、電池パックと呼ばれ、複数の電池モジュールで構成されており、各電池モジュールは、複数の電池セルが直列に、又は直列かつ並列に接続されて構成されている。以下の実施形態において電池は電池パックを意味し、電池パック単位で電池の情報の管理及び劣化度合の診断を行う構成とするが、電池モジュール単位又は電池セル単位で各処理を行う構成でもよい。
【0010】
(実施形態1)
図1は情報処理システムの構成例を示す模式図である。本実施形態の情報処理システムでは、分散型台帳技術の1つであるブロックチェーンシステムを利用して、電池に関する各種の情報を分散記憶して管理する。ブロックチェーンシステムは、ピアツーピア(P2P)のネットワーク1に接続された複数のノード装置10を有し、複数のノード装置10が電池に関する各種の情報を分散して共有するシステムである。それぞれのノード装置10には、電池メーカの端末装置20、EVメーカの端末装置30、車両管理者の車載計測機器40、整備・中古車事業者の診断機器50、電池管理事業者の電池管理サーバ60、診断事業者の診断サーバ70等が接続されている。本実施形態の情報処理システムでは、ブロックチェーンシステムは必須の構成ではなく、電池に関する各種の情報を各サーバ60,70に記憶させておき、各機器又は他のサーバからの要求に応じた情報を各サーバ60,70が提供する構成でもよい。
【0011】
電池メーカの端末装置20は、電池メーカの事業所やオフィス等に設けられ、電池メーカの担当者が使用する端末である。EVメーカの端末装置30は、EVメーカの事業所やオフィス等に設けられ、EVメーカの担当者が使用する端末である。車載計測機器40は、車両に搭載され、車両の走行距離、車両に搭載されている電池の使用時間(放電時間)、充電時間及び充電回数等の充電に関する情報を計測し、走行距離、電池の使用時間及び充電に関する充電データを含む計測データを取得する。車両管理者は、車両の所有者に加えて、車両のリース・シェアリング事業者等、車両を管理する事業者を含む。整備・中古車事業者の診断機器50は、整備事業者や中古車事業者の整備場やオフィス等に用意され、車両又は電池の整備を行う担当者が使用する機器である。診断機器50は、例えばハンディ型の診断機器であり、整備・中古車事業者に搬入された車両に搭載されている電池の電流値及び電圧値等のデータを計測すると共に、電池の劣化度合を推定する。診断機器50は、例えば電池(電池パック)の電流値、電圧値、温度、及びSOC(State of Charge)を計測し、電池の劣化度としてSOH(State of Health)を推定する。なお、電池の劣化度として、診断機器50は、SOHに加えて又はSOHの代わりに、電池の電流値及び電圧値からインピーダンス(電池の内部抵抗)を算出してもよい。また、診断機器50は、電池の劣化度合として、電池の残存寿命(何年後に寿命になるか)等を算出してもよく、電池の放電特性を示す放電曲線(放電カーブ)又は電池の充電特性を示す充電曲線(充電カーブ)を算出してもよい。放電カーブは、放電容量に対する電圧値の変化特性を示すデータであり、充電カーブは、充電容量に対する電圧値の変化特性を示すデータである。
【0012】
電池管理サーバ60は、例えば電池販売用のマーケットプレースを運営する電池管理事業者の事業所やオフィス等に設置される。電池管理サーバ60は、車載用電池の仕様及び材料の情報、電池が搭載された車両の情報等、車載用電池に関連する電池情報を電池DB62a(図6A参照)に記憶して管理している。また、電池管理サーバ60は、車載計測機器40によって計測した車載用電池の計測データを計測DB62b(図6B参照)に記憶して管理している。更に、電池管理サーバ60は、車載用電池情報、及び車載用電池の計測データをブロックチェーンシステムに出力して記憶させる処理を行う。
【0013】
診断サーバ70は、車載用電池の劣化度合を診断する診断事業者の事業所やオフィス等に設置される。診断サーバ70は、診断機器50によって計測した車載用電池の計測データ、及び診断機器50が計測データに基づいて診断した車載用電池の劣化度合(診断結果)を診断DB72a(図8A参照)に記憶して管理している。なお、診断サーバ70は、車載用電池の劣化度合を診断する機能を備える。よって、本実施形態では、電池の劣化度合の診断処理は診断機器50で行う構成とするが、診断事業者の診断サーバ70で行う構成でもよい。この場合、診断サーバ70は、診断機器50から取得した車載用電池の計測データに基づく診断処理を実行し、計測データと共に診断結果を診断DB72aに記憶する。また、診断サーバ70は、各車両について、車両に搭載されている車載用電池の劣化度合と車両の走行距離とを車両DB72b(図8B参照)に記憶して管理している。
【0014】
電池管理サーバ60及び診断サーバ70は、1つの装置として記載するが、複数台設けられて分散処理されてもよく、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよく、クラウドサーバを用いて実現されてもよい。また、診断事業者が複数いる場合、診断サーバ70は複数設けられる。更に、電池メーカ、EVメーカ、車両管理者、及び整備・中古車事業者が複数いる場合、端末装置20,30、車載計測機器40、診断機器50は複数設けられる。
【0015】
本実施形態のブロックチェーンシステムでは、電池管理サーバ60及び診断サーバ70において実行される処理に関する情報、サーバ60,70から提供される情報を複数のノード装置10が分散して記憶する。また、ブロックチェーンシステムは、複数のノード装置10で記憶する情報を各サーバ60,70に提供することができる。
【0016】
図2はノード装置10の構成例を示す模式図である。ノード装置10は、コンピュータ又はコンピュータシステムで構成することができる。ノード装置10は、電池メーカ、EVメーカ、車両管理者の事業所又はオフィス等、整備・中古車事業者の整備場、工場又はオフィス等、電池管理事業者、診断事業者の事業所又はオフィス等に設けられる。なお、ノード装置10は、端末装置20,30、車載計測機器40、診断機器50、電池管理サーバ60、又は診断サーバ70として機能してもよい。また、車載計測機器40、及び診断機器50は、ノード装置10に接続された所定のサーバ又は端末装置と通信するように構成されていてもよい。この場合、各機器40,50は、所定のサーバ又は端末装置を介してノード装置10との間で情報の送受信を行う。
【0017】
ノード装置10は、通信部11、情報生成部12、情報記録部13、情報参照部14、及びデータベース15を備える。通信部11は、ネットワーク1に接続された他のノード装置10との通信を行う機能を備える。また通信部11は、端末装置20,30、車載計測機器40、診断機器50、電池管理サーバ60、及び診断サーバ70との通信を行う機能を備える。
【0018】
データベース15は、記録内容の書き換えが可能な不揮発性の半導体メモリや、ハードディスク等で構成することができる。データベース15は、ノードリスト16、及び電池関連情報17を記録している。ノードリスト16は、ブロックチェーンシステムにおいて適正に登録されたノード装置10を識別する識別情報に対応付けて、当該ノード装置10のIPアドレス及び電子証明書が登録されている。電子証明書には、各ノード装置10の公開鍵及び電子署名が記録されている。新たなノード装置10が適正に登録されると、ノードリスト16に当該登録が反映される。
【0019】
図3はノード装置10に記憶される電池関連情報17の構成例を示す模式図である。電池関連情報17は、図3に示すように複数のブロック170を備える。複数のブロック170は、チェーン状に連結され、いわゆるブロックチェーンの構造を有する情報である。図3には、n番目及びn+1番目のブロック170が連なった例を示す。各ブロック170は、タイムスタンプ171、直前のブロック170のハッシュ値172、及び記録情報173を含む。タイムスタンプ171は、当該ブロック170が生成された日時を示す情報である。ハッシュ値172は、直前のブロック170から予め設定されたハッシュ関数に基づいて生成される値である。記録情報173は、ブロック170に登録する情報の本体部分である。記録情報173には、例えば、電池ID(電池を識別するための識別情報)に対応付けて、電池の製造時点から廃棄されるまでの期間に亘る、電池の製造、EVへの搭載、整備、廃棄等の各イベント時における電池の情報が含まれる。具体的には、記録情報173には、各イベントにおける電池の計測データ、劣化度合の診断データ等が含まれる。また、記録情報173には、電池の使用履歴、電池が搭載された車両の走行履歴等の情報が含まれてもよい。なお、記録情報173は、電池が車両に搭載された時点から車両から取り外されるまでの期間に亘る電池の情報を含む構成でもよい。
【0020】
例えば、EVメーカ又はEVの販売店、あるいはEVの車両管理者(例えば所有者)は、車両管理者によるEVの利用開始時に、電池IDに対応付けて、電池の仕様に関する情報、車両に関する情報をブロックチェーンシステムに出力して記憶させる。この場合、図3左下に示すように記録情報173には、電池ID、電池の仕様情報、車両ID、車両の情報、車両管理者の情報等が含まれる。また、車両に搭載された車載計測機器40は、定期的に、電池IDに対応付けて、車両の走行距離、電池の使用時間、充電時間及び充電回数をブロックチェーンシステムに出力して記憶させる。この場合、図3右下に示すように記録情報173には、電池ID、走行距離、電池使用時間、充電時間及び充電回数等が含まれる。このように、ブロック170には、電池の製造時点から廃棄されるまでの期間における電池に関する各種の情報が、電池IDに対応付けて記録される。
【0021】
情報生成部12は、通信部11を介して、端末装置20,30、車載計測機器40、診断機器50、電池管理サーバ60、及び診断サーバ70から取得する情報を用いて、ブロックチェーンシステムに登録するブロック170を生成する。なお、上述したような電池関連情報は、ブロック170の記録情報173に記憶されるほかに、電池管理サーバ60、及び診断サーバ70の各DBに記憶され、ブロック170にはハッシュ値172のみが記憶される構成でもよい。このような構成においても、ハッシュ値172に基づいて改ざんの有無の検証が可能である。
【0022】
情報記録部13は、他のノード装置10にて新たに生成されたブロック170がブロックチェーンシステムにおいて予め設定された合意規則を満たしているか否かを判定する。情報記録部13は、所定の合意規則を満たすブロック170をブロックチェーンシステムに記録する。この場合、情報記録部13は、新たなブロックを、縦列接続されたブロック170の末尾に追加する。なお、ブロックチェーンシステムにおいて、参加者間でやり取りされる情報の信頼性は、参加者全体で形成されるネットワーク内での合意形成のプロセスによって担保されており、改ざん等の不正をシステム全体で防ぐことで、ブロックチェーンの健全性が保たれる。合意形成のプロセスは、例えばプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work)又はプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake)等のコンセンサス・アルゴリズムを用いることができる。
【0023】
情報参照部14は、通信部11を介して、電池管理サーバ60、及び診断サーバ70からブロックチェーンシステムの記憶内容を参照する要求を受信すると、当該要求に対応するブロック170から記録情報173を読み出し、読み出した記録情報173を要求元へ送信する。なお、記録情報173の内容が各サーバ60,70のDBに記憶されている場合、情報参照部14は、各DBから各情報を読み出して要求元へ送信する。これにより、ブロックチェーンシステムに記録された情報が、各サーバ60,70に提供可能となる。
【0024】
図4は端末装置20、車載計測機器40及び診断機器50の構成例を示すブロック図である。端末装置20は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等である。図4Aに示すように端末装置20は、端末全体を制御する制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24、表示部25等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。制御部21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備える。制御部21のCPUは、ROM又は記憶部22に予め記憶された制御プログラム22PをRAMに展開して実行することにより、上述したハードウェアの動作を制御し、端末装置20が行うべき処理を実行する。なお、制御部21は、CPU、ROM及びRAMを備える構成とするが、1又は複数のCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)等を含む任意の演算制御装置であってもよい。
【0025】
記憶部22は、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等で構成される。記憶部22には、制御部21によって実行される制御プログラム22P(プログラム製品)、制御プログラム22Pの実行に必要な各種のデータ等が記憶される。なお、記憶部22に記憶されるプログラムは、例えば端末装置20の製造段階において記憶部22に書き込まれてもよく、当該プログラムを読み取り可能に記憶した非一時的な記録媒体により提供されてもよい。記録媒体は、例えばCD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)メモリ、マイクロSDカード等の可搬型メモリである。この場合、制御部21は、不図示の読取装置を用いて記録媒体から各種プログラムを読み取り、読み取った各種プログラムを記憶部22にインストールすることが可能である。また、記憶部22に記憶されるプログラムは、通信部23を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部21は、通信部23を通じて各種プログラムを取得し、取得した各種プログラムを記憶部22にインストールすることができる。
【0026】
通信部23は、ノード装置10との通信を行う機能、ネットワーク1を介して各機器との通信を行う機能を備える。また通信部23は、インターネット等を介して、例えば電池管理サーバ60との通信を行う機能を備える。通信部23は、ネットワーク1を介して各種の情報を受信した場合、受信した情報を制御部21へ出力し、制御部21は、通信部23を介して受信した情報に基づき適宜の処理を実行する。通信部23は、ネットワーク1を介して所望の宛先へ送信すべき情報が制御部21から入力された場合、入力された情報をネットワーク1を介して前記宛先へ送信する。
【0027】
操作部24は、キーボード又はマウス等の入力インタフェースを備え、端末装置20を使用するユーザによる操作入力を受け付け、操作内容に対応した制御信号を制御部21へ送出する。表示部25は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部21からの指示に従って各種の情報を表示する。操作部24及び表示部25は一体として構成されたタッチパネルであってもよい。
【0028】
端末装置20は、電池メーカが製造した電池に関する電池情報の入力を操作部24から受け付けた場合、受け付けた電池情報を通信部23を介して電池管理サーバ60へ送信する。電池管理サーバ60は、端末装置20から取得した電池情報を例えば電池DB62aに記憶し、更にブロックチェーンシステムに出力してブロックチェーンシステムに記憶させる。電池情報は、例えば電池の仕様に関する情報、使用された材料に関する情報、最適な運用方法等の情報を含む。
【0029】
端末装置30は、端末装置20と同様の構成を有するので、構成についての説明は省略する。端末装置30は、EVメーカが製造したEVに関する車両情報の入力を操作部から受け付けた場合、受け付けた車両情報を通信部を介して電池管理サーバ60へ送信する。電池管理サーバ60は、端末装置30から取得した車両情報を例えば電池DB62aに記憶し、更にブロックチェーンシステムに出力してブロックチェーンシステムに記憶させる。車両情報は、例えば電池が搭載された車両に関する情報等を含む。
【0030】
図4Bに示すように車載計測機器40は、例えば車載用電池が搭載された車両が車両管理者に販売された場合、又は車両の製造段階で車載用電池が車両に搭載された場合に、車両に搭載されて車両内の電池に接続される。車載計測機器40は、車両に搭載されている電池の状態を計測する機能を備える。車載計測機器40は、機器全体を制御する制御部41、記憶部42、通信部43、及び計測部44等を有する。制御部41、記憶部42、通信部43は、図4Aに示す端末装置20の制御部21、記憶部22、通信部23と同様の構成を有するので詳細な説明は省略する。計測部44は、電池を接続するための端子を備え、接続された電池の使用時間(放電時間)、充電時間及び充電回数等を計測する。また計測部44は、車両の走行距離を計測する。走行距離は、例えば車両に搭載された機器から取得してもよく、計測部44自身が計測する構成を有していてもよい。車載計測機器40は、例えば所定時間毎又は1日に1回等の定期的なタイミング、あるいは車両の走行終了時等の所定のタイミングで計測部44による計測処理を実行し、得られた計測データを通信部43にて電池管理サーバ60へ送信する。電池管理サーバ60は、車載計測機器40から取得した計測データを例えば計測DB62bに記憶し、更にブロックチェーンシステムに出力してブロックチェーンシステムに記憶させる。上述した構成により、車両に搭載された車載計測機器40にて計測された電池の計測データが所定のタイミングで電池管理サーバ60及びブロックチェーンシステムに蓄積される。
【0031】
図4Cに示すように診断機器50は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等で構成することができる。診断機器50は、整備事業者又は中古車事業者に搬送された整備対象の車両に搭載されている電池の状態を診断する機能を備える。診断機器50は、制御部51、記憶部52、通信部53、操作部54、表示部55、診断部56、及びRFID(Radio Frequency Identifier)リーダ57等を有する。制御部51、記憶部52、通信部53、操作部54、表示部55は、図4Aに示す端末装置20の制御部21、記憶部22,通信部23、操作部24、表示部25と同様の構成を有するので詳細な説明は省略する。
【0032】
RFIDリーダ57は、通信可能な範囲内にあるICタグから、ICタグに記憶してある情報を読み取る。本実施形態の情報処理システムでは、例えば電池に割り当てられた電池IDを記憶させたICタグが電池に取り付けられている。よって、診断機器50は、RFIDリーダ57によって、電池に取り付けられたICタグから電池IDを読み取ることにより、診断対象の電池の電池IDを取得することができる。なお、診断機器50はRFIDリーダ57を備えている必要はなく、例えばRFIDリーダの機能を有する端末装置(例えばスマートフォン)を用いてICタグから電池IDを読み取り、読み取った電池IDを操作部54を介して入力してもよい。なお、ICタグの代わりに、電池IDから生成された一次元コード又は二次元コードが電池に印刷又は貼付される構成でもよい。この場合、コードリーダによって一次元コード又は二次元コードから電池IDを読み取ることができる。
【0033】
診断部56は、診断対象の電池を接続するための端子を備え、接続された電池の電流値、電圧値、温度、SOC等を計測し、計測データを取得することができる。また、診断部56は、所定の診断アルゴリズムに従って電池パックの劣化度合を推定することができる。劣化度合は、例えばSOH(State of Health)で表され、SOHは、新品の状態の電池を100%とした場合に電池の容量が何%であるかを示す値である。診断部56は、例えば完全充放電時の放電電流積算法による診断アルゴリズムに従ってSOHを推定する。当該診断アルゴリズムは、完全充放電を用いた容量計測を行うものであり、一度電池を満充電(SOCが100%)まで充電した後で、SOCが0%になるまで放電させ、放電する際に電流積算法を用いて満充電容量を求め、初期満充電容量で除算してSOHを推定するものである。また診断部56は、例えば充電曲線解析法による診断アルゴリズム、放電曲線解析法による診断アルゴリズム等、上述の診断方法よりも簡易な診断方法を用いてSOHを推定してもよい。診断部56は、例えば診断サーバ70から指示された診断アルゴリズム、又は、操作部54を介して指定された診断アルゴリズムに従って電池(電池パック)のSOHを推定する。なお、診断部56は、電池から分解された電池モジュール単位、又は電池モジュールから分解された電池セル単位で計測処理及び診断処理を行ってもよく、電池モジュール単位又は電池セル単位で得られた計測結果及び診断結果から電池(電池パック)に対する計測結果及び診断結果を取得してもよい。また、診断部56は、劣化度合として、SOHに加えて又はSOHの代わりに、電池のインピーダンス(内部抵抗)を算出してもよい。
【0034】
診断機器50は、診断部56で計測した電池の計測データ(電流値、電圧値、温度、及びSOC)及び劣化度合(例えばSOH)を含む診断データを、通信部53にて診断サーバ70へ送信する。診断サーバ70は、診断機器50から取得した診断データを例えば診断DB72aに記憶し、更にブロックチェーンシステムに出力してブロックチェーンシステムに記憶させる。これにより、診断機器50にて診断された電池の診断データが診断DB72a及びブロックチェーンシステムに蓄積される。なお、電池の劣化度合(SOH及びインピーダンス等)は、診断サーバ70で推定されてもよく、この場合、診断サーバ70は、診断機器50から取得した計測データと、推定した劣化度合とを対応付けて診断DB72a及びブロックチェーンシステムに記憶させる。診断サーバ70は、電池に対する診断データに基づいて、電池の継続使用の可否、及び新しい電池への交換の要否を判断する。例えば、劣化度合を示すSOHが所定の閾値以下である場合、又は、インピーダンが所定閾値以上である場合に、新しい電池への交換が必要であるとすることができる。ここで、閾値は、電池が車両に搭載されて利用することができない程度の値とすることができる。また、診断サーバ70は、診断DB72aに蓄積してある過去の診断データも考慮して、電池の継続使用の可否を判断してもよい。電池の継続使用の可否の判断は、診断機器50が行う構成でもよい。
【0035】
整備・中古車事業者は、診断機器50を用いて、診断対象の電池の電池情報、当該電池の計測データを電池管理サーバ60(電池DB62a、計測DB62b)から取得することができる。また整備・中古車事業者は、整備場に車両が搬入された場合に、診断機器50を用いて、電池の劣化度合の診断処理を行うことができ、診断結果(計測データ及び劣化度合)を診断サーバ70へ送信して診断DB72aに記憶する。上述した構成により、整備・中古車事業者に車両が搬送された場合に、車両に搭載された電池の計測データ及び劣化度合が診断機器50にて計測され、診断サーバ70及びブロックチェーンシステムに蓄積される。
【0036】
図5は電池管理サーバ60の構成例を示すブロック図である。電池管理サーバ60は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等である。電池管理サーバ60は、サーバ全体を制御する制御部61、記憶部62、通信部63、操作部64、表示部65等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。制御部61は、例えばCPU、ROM及びRAM等を備える。制御部61のCPUは、ROM又は記憶部62に予め記憶された制御プログラム62PをRAMに展開して実行することにより、上述したハードウェアの動作を制御し、電池管理サーバ60が行うべき処理を実行する。なお、制御部61は、CPU、ROM及びRAMを備える構成とするが、1又は複数のCPU、マルチコアCPU、GPU等を含む任意の演算制御装置であってもよい。
【0037】
記憶部62は、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD等で構成される。記憶部62には、制御部61によって実行される制御プログラム62P(プログラム製品)、制御プログラム62Pの実行に必要な各種のデータ等が記憶される。なお、記憶部62に記憶されるプログラムは、例えば電池管理サーバ60の製造段階において記憶部62に書き込まれてもよく、当該プログラムを読み取り可能に記憶した非一時的な記録媒体60Mにより提供されてもよい。この場合、制御部61は、不図示の読取装置を用いて記録媒体60Mから各種プログラムを読み取り、読み取った各種プログラムを記憶部62にインストールすることが可能である。また、記憶部62に記憶されるプログラムは、通信部63を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部61は、通信部63を通じて各種プログラムを取得し、取得した各種プログラムを記憶部62にインストールすることができる。また、記憶部62は、後述する電池DB(データベース)62a及び計測DB62bを記憶する。
【0038】
通信部63は、ノード装置10との通信を行う機能、ネットワーク1を介して各機器との通信を行う機能を備える。また通信部63は、インターネット等を介して診断サーバ70との通信を行う機能を備える。操作部64は、キーボード又はマウス等の入力インタフェースを備え、電池管理サーバ60を使用するユーザによる操作入力を受け付け、操作内容に対応した制御信号を制御部61へ送出する。表示部65は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部61からの指示に従って各種の情報を表示する。操作部64及び表示部65は一体として構成されたタッチパネルであってもよい。なお、本実施形態では、電池管理サーバ60は操作部64及び表示部65を備える構成とするが、操作部64及び表示部65は必須ではなく、外部に接続されたコンピュータを通じて操作を受け付け、表示すべき情報を外部の表示装置へ出力する構成であってもよい。
【0039】
電池管理サーバ60は、電池メーカが製造した電池に関する電池情報を端末装置20から取得した場合、取得した電池情報を電池DB62aに記憶する。また電池管理サーバ60は、EVメーカが電池を搭載した車両に関する車両情報を端末装置30から取得した場合、取得した車両情報を電池DB62aに記憶する。更に電池管理サーバ60は、車載計測機器40が電池を計測した計測データを取得した場合、取得した計測データを計測DB62bに記憶する。電池管理サーバ60は、電池DB62a及び計測DB62bに記憶した各情報をノード装置10へ出力してブロックチェーンシステムに記憶させてもよい。
【0040】
図6は電池管理サーバ60が記憶するDB62a~62bの構成例を示す模式図である。図6Aは電池DB62aを、図6Bは計測DB62bをそれぞれ示す。電池DB62aは、電池に関する電池情報、及び電池が搭載された車両に関する車両情報等を記憶する。図6Aに示す電池DB62aは、電池ID列、仕様情報列、材料情報列、車両情報列等を含み、電池に割り当てられた識別情報(電池ID)に対応付けて各情報を記憶する。仕様情報は、電池の種類、サイズ、使用条件、最適な運用方法等、電池の仕様に関する情報を含む。材料情報は、電池の製造に使用された材料の種類及び使用量、リサイクルされた材料が使用されている場合にリサイクル材料の種類及び使用量等の情報を含む。車両情報は、製造された電池が搭載された車両に関する情報であり、例えば、車両の製造年月日(電池が車両に搭載された年月日)、車両ID、メーカ名、車種、年式、管理者情報等が対応付けて車両情報列に記憶される。車両IDは、車両に割り当てられた識別情報であり、管理者情報は、車両の購入者等の所有者の氏名、連絡先等の情報を含む。なお、車両情報は、車両番号(メーカの製造番号等)、車両の利用状況(例えば、走行距離、使用年数、使用頻度、1日の平均走行距離等)を含んでもよい。
【0041】
計測DB62bは、電池が車両に搭載されている期間に車載計測機器40によって計測された電池の計測データを記憶する。図6Bに示す計測DB62bは、電池ID列、車両ID列、計測データ列等を含み、電池IDに対応付けて、電池が搭載されている車両の車両IDと、車載計測機器40から取得した計測データとを記憶する。計測データは、車載計測機器40が計測処理を実行した日時、車載計測機器40に関する機器情報、車載計測機器40が計測した車両の走行距離、電池の使用時間、充電時間及び充電回数等を含む。機器情報は、車載計測機器40を特定するための情報、車載計測機器40の属性及び車両管理者の属性等の情報を含む。電池管理サーバ60は、電池が車両に搭載されている期間における電池に関する情報を電池DB62aに記憶して管理する。また、電池管理サーバ60は、電池が車両に搭載されている期間において車載計測機器40によって計測された電池の計測データを計測DB62bに記憶して管理する。
【0042】
図7は診断サーバ70の構成例を示すブロック図である。診断サーバ70は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等である。診断サーバ70は、サーバ全体を制御する制御部71、記憶部72、通信部73、切替部74、診断部75等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。制御部71、記憶部72、及び通信部73は、図5に示す電池管理サーバ60の制御部61、記憶部62,通信部63と同様の構成を有するので詳細な説明は省略する。なお、記憶部72は、制御部71が実行する制御プログラム72Pに加えて診断DB72a及び車両DB72bを記憶する。
【0043】
診断部75は、第1診断アルゴリズム75a、第2診断アルゴリズム75b、第3診断アルゴリズム75cを備える。図7の例では3つの診断アルゴリズムを備える構成を示しているが、4つ以上の診断アルゴリズムを有していてもよい。第1~第3診断アルゴリズム75a~75cは、電池のSOHを推定する際の診断アルゴリズムであり、例えば、完全充放電時の放電電流積算法による診断アルゴリズム、充電曲線解析法による診断アルゴリズム、放電曲線解析法による診断アルゴリズムを含む。充電曲線解析法は、初めに充電中の電池の電圧、電流、及び温度を測定し、これらのデータを充電曲線として記録し、電池の内部状態を表すパラメータの初期値を設定し、回帰計算によってパラメータの推定を行って電池の状態(例えば、電池容量)を算出するものである。放電曲線解析法は、放電曲線を電圧で微分する等により特徴づけて、電池の正極と負極の各活物質の容量変化を抽出し、電池の状態(例えば、電池容量)を算出するものである。
【0044】
なお、第1~第3診断アルゴリズム75a~75cは、上述した診断アルゴリズムのほかに、内部抵抗からのテーブルルックアップを用いた診断アルゴリズム、モデルに基づく診断アルゴリズム等を含んでもよい。内部抵抗からのテーブルルックアップによる診断は、SOHと内部抵抗との関係を予め取得してテーブル化しておき、計測した内部抵抗からテーブルルックアップにてSOHを求めるものである。モデルに基づく診断は、SOC推定で用いるモデルの中の特定のパラメータとSOHとを関連付けた上で、そのパラメータを推定することにより、SOHを推定するものである。例えば、電池の満充電容量を等価回路モデル内のコンデンサの容量で表して、その容量を推定することで、SOHを求めることができる。診断アルゴリズムは上述したものに限定されない。また診断アルゴリズムは、例えば電池メーカ毎、EVメーカ毎、電池の種類毎に用意されてもよい。
【0045】
切替部74は、診断対象の電池の電池情報(例えば電池管理サーバ60の電池DB62aに記憶してある電池情報)、又はユーザの選択に応じて、所要の診断アルゴリズムを選択する。切替部74は、例えば診断機器50から診断対象の電池の情報を取得した場合、当該電池の電池情報を電池管理サーバ60から取得し、電池情報に基づいて、当該電池の劣化度合(SOH)の診断に用いる診断アルゴリズムを選択する。例えば電池メーカ又は電池の種類毎に予め診断アルゴリズムが設定されている場合、切替部74は、診断対象の電池の電池メーカ又は種類に応じた診断アルゴリズムを選択する。診断部75は、切替部74によって選択された診断アルゴリズムに従った診断処理の実行を診断機器50に指示する。なお、診断部75は、診断機器50によって計測された電池の計測データを取得し、取得した計測データに基づいて、切替部74によって選択された診断アルゴリズムに従って当該電池の劣化度合を診断してもよい。また、診断部75は、電池から分解された電池モジュール単位、又は電池モジュールから分解された電池セル単位で診断処理を行ってもよく、電池モジュール単位又は電池セル単位で得られた診断結果から電池(電池パック)に対する診断結果を取得してもよい。また、診断部75は、劣化度合として、SOHに加えて又はSOHの代わりに、電池のインピーダンスを算出してもよい。
【0046】
診断サーバ70は、診断機器50が電池の診断処理を行う際に、診断対象の電池に応じた診断アルゴリズムを決定して診断機器50に提示する。また診断サーバ70は、診断機器50による診断処理の結果(診断データ)を取得して診断DB72aに記憶して管理する。診断サーバ70は、診断DB72aに記憶した各情報をノード装置10へ出力してブロックチェーンシステムに記憶させてもよい。また診断サーバ70は、各電池の診断データを診断DB72aに記憶した後、各電池が車両に搭載されてから、ここでの診断処理が実行された時点までの車両の走行距離(累積走行距離)を算出し、各電池の劣化度合と車両の累積走行距離とを対応付けて車両DB72bに記憶して管理する。なお、診断サーバ70は、車両DB72bに記憶した各情報をノード装置10へ出力してブロックチェーンシステムに記憶させてもよい。
【0047】
図8は診断サーバ70が記憶するDB72a~72bの構成例を示す模式図である。図8Aは診断DB72aを、図8Bは車両DB72bをそれぞれ示す。診断DB72aは、車載用電池に対する診断データを記憶する。図8Aに示す診断DB72aは、電池ID列、診断データ列等を含み、電池のIDに対応付けて当該電池に対する診断処理結果を記憶する。診断データは、診断機器50を用いて行われた診断処理毎に診断DB72aに記憶される。診断データは、診断データを識別するための識別情報(診断ID)、診断処理の実行日時、イベント、診断機器50に関する機器情報、診断機器50による電池の計測データ(電流値、電圧値、温度、SOC)、電池に対する診断結果(SOH)等を含む。イベントは、診断処理の実行事由であり、例えば整備・中古車事業者に搬入された車両を整備する際に診断機器50による診断処理が行われた場合は「車両整備」が記憶され、EVメーカで車両に搭載された際に診断機器(図示せず)による診断処理が行われた場合は「車両搭載」が記憶される。機器情報は、診断機器50を特定するための情報、診断機器50の属性及び各事業者等の情報を含む。診断結果は、診断機器50による計測データに基づいて診断機器50又は診断サーバ70で判定された電池に対する診断結果を含み、例えば診断に使用した診断アルゴリズム、電池に対するSOH、並びに診断事業者(診断機関)を特定する情報等を含む。
【0048】
車両DB72bは、車両に搭載された電池の劣化度合と当該電池が搭載されてからの車両の累積走行距離とを記憶する。図8Bに示す車両DB72bは、車両ID列、電池ID列、日時列、SOH列、累積走行距離列、使用期間列等を含み、車両IDに対応付けて、当該車両に搭載されている電池の電池ID、当該電池に対する劣化診断処理の実行日時、当該電池のSOH、車両の累積走行距離、当該電池が車両に搭載されてからの期間(使用期間)を記憶する。累積走行距離及び使用期間は、当該電池が車両に搭載された時点を0とし、電池の劣化診断が行われる時点までに車両が走行した距離及び電池を使用した期間を示す。日時、SOH、累積走行距離及び使用期間は、電池に対して診断処理が実行されたタイミング毎に車両DB72bに記憶される。
【0049】
以下に、電池に関する電池関連情報を電池管理サーバ60に登録する処理について説明する。ここでの電池関連情報は、電池に関する電池情報、車両に関する車両情報、及び、車載計測機器40によって計測された電池の計測データとする。
【0050】
電池メーカが電池を製造した場合に、電池に関する電池情報を電池管理サーバ60の電池DB62aに登録する処理について説明する。図9は入力画面例を示す模式図であり、図9Aは電池情報の入力画面例を示し、図9Bは車両情報の入力画面例を示す。図9Aに示す画面は、例えば端末装置20が所定のアプリケーションを実行することによって表示部25に表示される。図9Aに示す入力画面は、登録対象の電池(電池パック)に使用されている電池モジュールの数、各電池モジュールに使用されている電池セルの数、仕様情報、材料情報等の各情報を入力するための入力欄を有する。各入力欄は、各情報が直接入力される構成でもよく、複数の選択肢を表示して任意のものを選択することにより入力される構成でもよい。仕様情報は、電池の種類、サイズ、使用条件、最適な運用方法等の情報を含む。材料情報は、電池の製造に使用された材料の種類及び使用量、リサイクルされた材料が使用されている場合にリサイクル材料の種類及び使用量等の情報を含む。なお、仕様情報及び材料情報の入力欄には、それぞれ仕様情報及び材料情報が入力されてもよく、仕様情報又は材料情報が記載されたファイル(例えばテキストファイル)のファイル名が入力されてもよい。端末装置20は、電池情報入力画面を介して各情報が入力されて登録ボタンが操作された場合、入力された電池情報を電池管理サーバ60へ送信して電池DB62aに記憶する。これにより、電池メーカで電池が製造された場合、電池に関する電池情報が電池管理サーバ60に登録される。なお、電池管理サーバ60は、端末装置20から受信した電池情報を電池DB62aに登録する際に、当該電池パックに対して電池IDを発行し、発行した電池ID及び電池情報を電池DB62aに記憶する。電池管理サーバ60は、電池IDを発行した場合、発行した電池IDを端末装置20に送信して電池メーカに通知する。なお、電池管理サーバ60は、電池DB62aに記憶した電池情報をノード装置10へ出力し、ノード装置10に対して電池情報のブロックチェーンシステムへの格納を指示してもよい。この場合、ノード装置10は、電池管理サーバ60から取得した電池情報を用いてブロック170を生成し、生成したブロック170が所定の合意規則を満たす場合にブロックチェーンシステムに記憶する。
【0051】
次に、EVメーカがEVを製造した場合に、EVに関する車両情報を電池管理サーバ60の電池DB62aに登録する処理について説明する。図9Bに示す画面は、例えば端末装置30が所定のアプリケーションを実行することによって表示部に表示される。図9Bに示す入力画面は、電池ID、年月日、メーカ、車種、年式、管理者(車両の所有者)の氏名及び連絡先情報等の各情報を入力するための入力欄を有する。各入力欄は、各情報が直接入力される構成でもよく、複数の選択肢を表示して任意のものを選択することにより入力される構成でもよい。電池IDは、電池メーカが電池情報を電池管理サーバ60に登録した際に電池管理サーバ60によって発行されたIDである。年月日は、電池が車両に搭載された日であってもよく、車両情報が電池DB62aに登録される日であってもよい。端末装置30は、車両情報入力画面を介して各情報が入力されて登録ボタンが操作された場合、入力された車両情報を電池管理サーバ60へ送信して電池DB62aに車両情報として記憶する。これにより、EVメーカでEVが製造された場合(EVに電池が搭載された場合)、EVに関する車両情報が電池管理サーバ60に登録される。なお、電池管理サーバ60は、端末装置30から受信した車両情報を電池DB62aに登録する際に、当該車両に対して車両IDを発行し、発行した車両ID及び車両情報を電池DB62aに記憶する。また、電池管理サーバ60は、電池DB62aに記憶した車両情報をノード装置10へ出力し、ノード装置10によってブロックチェーンシステムに記憶してもよい。上述した車両情報は、EVメーカの担当者が端末装置30を用いて電池DB62aに登録するほかに、EVを購入した購入者(車両管理者)が自身の端末装置を用いて電池DB62aに登録してもよい。例えば、車両管理者は車両の使用開始時に車両情報を電池DB62aに登録し、車両IDの発行を受けてもよい。
【0052】
上述したように電池メーカ及びEVメーカによって電池情報及び車両情報が電池管理サーバ60に登録された車両は、購入者(車両管理者)によって購入されて使用される。なお、例えばEVメーカは、車両を販売する際に、車両に車載計測機器40を搭載して車両内の電池に接続する。その際、EVメーカは、車両に搭載された電池に割り当てられた電池IDを記憶させたICタグを電池に取り付ける。これにより、RFIDリーダによってICタグから電池IDを読み取ることができる。
【0053】
次に、車載計測機器40が取得する計測データを電池管理サーバ60の計測DB62bに蓄積する処理について説明する。車載計測機器40は、所定のタイミングで、車両の走行距離と、接続された電池の使用時間、充電時間及び充電回数とを計測し、計測データを取得する。図10は車載計測機器40による計測データの蓄積処理手順の一例を示すフローチャートである。図10では左側に車載計測機器40が行う処理を、右側に電池管理サーバ60が行う処理をそれぞれ示す。
【0054】
車載計測機器40は、定期的に又は所定のタイミングで計測処理を行うように構成されており、制御部41は、計測処理を実行するタイミング(計測タイミング)であるか否かを判断する(S11)。例えば所定時間毎に計測処理を実行する場合、制御部41は、直近の計測処理の実行から所定時間が経過したか否かを判断する。また、例えば1日に1回所定時刻に計測処理を実行する場合、制御部41は、所定時刻が到来したか否かを判断する。計測タイミングでないと判断した場合(S11:NO)、制御部41は、計測タイミングが到来するまで待機する。計測タイミングであると判断した場合(S11:YES)、制御部41は、計測処理を実行し(S12)、直近の計測処理からこの時点までの期間における車両の走行距離、電池の使用時間、充電時間及び充電回数を計測する。制御部41は、計測対象の電池の電池IDに対応付けて、取得した計測データを電池管理サーバ60へ送信する(S13)。なお、制御部41は、この時点の日時(計測日時)と、車載計測機器40を特定できる機器情報(例えば機器に割り当てられた機器ID)とを計測データに含めて電池管理サーバ60へ送信する。機器情報は、例えば予め記憶部42に記憶されている。なお、電池IDは、例えば車載計測機器40が車両に搭載された際に、操作部(図示せず)を介して入力されて記憶部42に記憶されてもよく、車載計測機器40がRFIDリーダの機能を有する場合、電池に取り付けられたICタグから読み取ってもよい。
【0055】
電池管理サーバ60の制御部61は、車載計測機器40から計測データを受信した場合、受信した計測データを計測DB62bに記憶する(S14)。ここでは、制御部61は、車載計測機器40から受信した電池IDに対応付けて、計測日時及び機器情報を含む計測データを計測DB62bに記憶する。また制御部61は、計測データをブロックチェーンシステムに記憶させる(S15)。ここでは、制御部61は、電池ID及び計測データを対応付けてノード装置10へ出力し、ノード装置10に対して、計測データのブロックチェーンシステムへの格納を指示する。ノード装置10は、電池管理サーバ60から取得した電池ID及び計測データを用いてブロック170を生成し、生成したブロック170が所定の合意規則を満たす場合にブロックチェーンシステムに記録する。これにより、車載計測機器40によって計測された計測データが電池IDに対応付けてブロックチェーンシステムに記憶される。なお、制御部61は、計測データを計測DB62bに記憶させずにブロックチェーンシステムのみに記憶させる構成でもよく、計測データを計測DB62bに記憶させ、ブロックチェーンシステムには、記憶させた計測データに対応するブロック170にハッシュ値172のみを記憶させる構成でもよい。
【0056】
車載計測機器40の制御部41は、ステップS13の処理後、ステップS11に戻り、計測タイミングが到来する都度、計測処理及び計測データの送信処理を繰り返す。電池管理サーバ60は、車載計測機器40から計測データを受信する都度、計測データを計測DB62b及びブロックチェーンシステムに記憶する。これにより、車載計測機器40が所定のタイミングで計測した電池の計測データが、電池管理サーバ60及びブロックチェーンシステムに蓄積されるので、電池の状態をトレースすることができる。
【0057】
次に、整備事業者が診断機器50を用いて電池の診断処理を行い、得られた診断結果(診断データ)が診断サーバ70の診断DB72aに蓄積されると共に整備事業者に提示される処理について説明する。図11は整備事業者での診断結果の蓄積処理手順の一例を示すフローチャート、図12は診断結果に対する評価処理の説明図、図13及び図14は画面例を示す模式図である。図11では左側に整備事業者の診断機器50が行う処理を、右側に診断サーバ70が行う処理をそれぞれ示す。
【0058】
車両の整備又は点検を行うために整備事業者に車両が搬入された場合、整備事業者は、車両に搭載されている電池に診断機器50を接続し、診断機器50による電池の計測処理及び診断処理を実行する。診断機器50は、例えば車両の給電口に挿入することにより電池に接続される接続インタフェースを有する。診断機器50の制御部51は、接続された診断対象の電池(車載用電池)の電池IDを取得する(S21)。ここでは、制御部51は、RFIDリーダ57によって、電池に取り付けられたICタグから電池IDを読み取る。本実施形態では、電池管理サーバ60の電池DB62aに、電池IDに対応付けて電池情報及び車両情報が登録してあるので、診断機器50は電池IDのみを取得すればよいが、電池情報及び車両情報の各情報が、操作部54を介して診断機器50に入力される構成でもよい。
【0059】
制御部51は、取得した電池IDを診断サーバ70へ送信し、当該電池の診断処理に用いる診断アルゴリズムの提示を要求する(S22)。診断サーバ70の制御部71は、診断機器50から診断アルゴリズムの提示を要求された場合、予め登録してある診断アルゴリズムの中から、当該電池の診断に用いるべき診断アルゴリズムを選択する(S23)。例えば制御部71は、診断機器50から受信した電池IDに基づいて、電池管理サーバ60の電池DB62aから当該電池に関する電池情報及び車両情報を取得し、電池情報又は車両情報に基づいて、使用すべき診断アルゴリズムを選択する。なお、診断サーバ70において、例えば電池メーカに応じた診断アルゴリズム、EVメーカに応じた診断アルゴリズム、電池の仕様又は型番に応じた診断アルゴリズムが予め設定されており、制御部71は、診断対象の電池又は電池が搭載してある車両に応じて、使用すべき診断アルゴリズムを決定してもよい。
【0060】
制御部71は、選択した診断アルゴリズムを診断機器50に送信して提示する(S24)。診断機器50の制御部51は、診断部56によって電池の電流値、電圧値、温度、SOCを計測する計測処理を行う(S25)。また、制御部51は、診断部56によって電池の劣化度合(例えばSOH)を推定する診断処理を行う(S26)。ここでは、制御部51は、診断サーバ70から提示された診断アルゴリズムに従った診断処理を行い、電池の劣化度合(SOH)を推定する。なお、診断アルゴリズムは整備事業者等によって指定されてもよく、この場合、診断機器50は、操作部54を介して診断アルゴリズムの指定を受け付け、指定された診断アルゴリズムに従った診断処理を行う。また、診断部56は、電池モジュール単位又は電池セル単位で劣化度合(SOH)の推定を行ってもよく、電池モジュール毎又は電池セル毎に得られた劣化度合から電池全体(電池パック)の劣化度合を推定してもよい。例えば、各セルのSOHの値と、SOHのばらつきとに基づいて、電池パックに対する劣化度合を算出してもよい。また、各セルのSOHのうちの最小値を電池に対するSOHとしてもよく、各セルのSOHの平均値を電池に対するSOHとしてもよい。
【0061】
制御部51は、診断対象の電池の電池IDに対応付けて、診断処理の結果(電流値、電圧値、温度、SOCを含む計測データ、及びSOH)と、診断処理に用いた診断アルゴリズムを示す情報とを含む診断データを診断サーバ70へ送信する(S27)。なお、制御部51は、この時点の日時(診断日時)、イベント(診断処理の実行事由)、診断機器50を特定できる機器情報(例えば機器に割り当てられた機器ID)等を診断データに含めて診断サーバ70へ送信してもよい。イベントは、例えば整備事業者によって操作部54を介して入力され、ここでは「車両整備」とされる。機器情報は、例えば予め記憶部52に記憶されている。
【0062】
診断サーバ70の制御部71は、診断機器50が送信した診断データを取得し、取得した診断データを診断DB72aに記憶する(S28)。ここでは、制御部71は、診断機器50から受信した電池IDに対応付けて、診断日時、イベント、機器情報、計測データ及びSOH、SOHの診断に使用した診断アルゴリズムの情報を含む診断データを診断DB72aに記憶する。なお、制御部71は、ここでの診断処理に対して診断IDを発行し、診断IDを診断データに付与して診断DB72aに記憶する。
【0063】
制御部71は、上述した診断データをブロックチェーンシステムに記憶させる(S29)。ここでは、制御部71は、電池ID及び診断データを対応付けてノード装置10へ出力して、診断データのブロックチェーンシステムへの格納を指示し、ノード装置10によってブロックチェーンシステムに記録される。これにより、診断機器50が診断対象の電池に接続された場合に計測した電池の計測データと、計測データに基づいて診断された電池の劣化度合とを含む診断データが、診断サーバ70及びブロックチェーンシステムに記録される。よって、このような診断データに基づいて、電池の状態をトレースすることができる。なお、制御部71は、診断データを診断DB72aに記憶させずにブロックチェーンシステムのみに記憶させる構成でもよく、診断データを診断DB72aに記憶させ、ブロックチェーンシステムには、記憶させた診断データに対応するブロック170にハッシュ値172のみを記憶させる構成でもよい。計測データに基づく診断処理は、診断機器50が行う構成のほかに、診断サーバ70が行ってもよい。この場合、診断サーバ70は、診断機器50から計測データを取得し、取得した計測データに基づいて、ステップS23で選択した診断アルゴリズムに基づく診断処理を行い、電池の診断データを取得する。ここでも、診断サーバ70は、電池モジュール単位又は電池セル単位で劣化度合(SOH)の推定を行ってもよく、電池モジュール毎又は電池セル毎に得られた劣化度合から電池全体(電池パック)の劣化度合を推定してもよい。また診断サーバ70は、診断対象の電池に対する過去の計測データ(例えば車載計測機器40による計測データ)も考慮して電池に対する劣化度合を診断してもよい。この場合、制御部71は、電池管理サーバ60又はブロックチェーンシステムから、診断対象の電池の計測データを取得すればよい。
【0064】
診断サーバ70の制御部71は、診断データを診断DB72aに記憶した後、当該電池のSOHと、当該電池が車両に搭載されてからこの時点までの車両の累積走行距離とを車両DB72bに記憶する(S30)。具体的には、制御部71は、診断DB72aに記憶した診断データの電池ID、診断処理の実行日時及びSOHを取得し、当該電池が搭載されている車両の車両ID及び走行距離を電池管理サーバ60の計測DB62bから取得する。制御部71は、車両DB72bにおいて、取得した車両ID及び電池IDに対応付けて、取得した実行日時及びSOHを記憶する。また制御部71は、車両DB72bに記憶してある直近の日時に対応する累積走行距離に、取得した走行距離を加算して、電池が車両に搭載されてから当該実行日時までの累積走行距離を算出し、実行日時に対応付けて車両DB72bに記憶する。なお、累積走行距離は、直近の日時に対応する累積走行距離に、今回計測された走行距離を加算して算出する構成に限定されない。例えば、制御部71は、計測DB62bに記憶してある各計測日時に対応する走行距離を全て加算することにより累積走行距離を算出してもよい。また、制御部71は、当該車両の製造年月日(電池が車両に搭載された年月日)を電池DB62aから取得し、製造年月日からこの時点までの期間(電池の使用期間)を算出し、実行日時に対応付けて車両DB72bに記憶する。
【0065】
次に、制御部71は、ステップS30で車両DB72bに記憶した累積走行距離と同じ累積走行距離に対応付けて車両DB72bに記憶してある他の電池のSOHを車両DB72bから読み出す(S31)。そして、制御部71は、読み出した他の電池のSOH(累積走行距離が同じである他の電池のSOH)に基づいて、ステップS30で車両DB72bに記憶したSOHに対する評価スコアを算出する(S32)。
【0066】
ここで、累積走行距離とSOHとの関係について説明する。図12は累積走行距離とSOHとの関係を示すグラフである。図12Aに示すグラフにおいて、横軸は累積走行距離を示し、縦軸はSOHを示し、車両DB72bに登録してある各電池の累積走行距離に対応するSOHをプロットした散布図を示している。なお、SOHは上端が100%を示し、下方向に向かうほど小さい値(劣化した状態を示す値)を示し、累積走行距離は左端が0を示し、右方向に向かうほど大きい値を示す。図12Bは、図12Aに示すグラフにおいて、任意の累積走行距離Dに対応する各電池のSOHの頻度(車両数)を示すグラフであり、このグラフは、十分な数の電池を母集団とした場合に正規分布で表現することができる。なお、図12Aのグラフにおいて、破線は各累積走行距離におけるSOHの平均値(偏差値50のSOH)を示しており、実線で囲んだ閉領域は、各累積走行距離において偏差値が30~75のSOHを含む領域を示しており、実線閉領域の上端の太実線は、偏差値75のSOHを示している。なお、偏差値75のSOHは、理想的な劣化速度で劣化した場合のSOHを示す。電池は、走行距離又は使用期間が増加するにつれて劣化し、ある程度の走行距離又は使用期間に到達した後に急速に劣化することが知られている。例えば、図12Aに示す例では、累積走行距離がD1に到達した後、電池のSOHの劣化速度が速くなっており、偏差値50のSOHを示す破線の傾きが、累積走行距離がD1の前後で変化している。よって、図12Aに示すように、偏差値30~75のSOHを含む領域は、累積走行距離がD1よりも大きい箇所で、SOHが低い値となる方向に伸びた状態となる。
【0067】
よって、本実施形態では、評価対象(診断対象)の電池が搭載されている車両の累積走行距離と同じ累積走行距離における他の電池のSOHを母集団として、評価対象の電池のSOHに対する偏差値を評価スコア(評価値)として算出する。具体的には、制御部71は、ステップS31で車両DB72bから読み出した他の電池のSOHを、評価対象の電池に対する評価基準として取得し、ステップS30で車両DB72bに記憶した評価対象の電池のSOHを取得する。そして、制御部71は、評価基準である他の電池のSOHと、評価対象の電池のSOHとに基づいて、評価対象の電池の評価値を特定する。具体的には、制御部71は、評価基準である他の電池のSOHの平均値及び標準偏差を算出し、算出した平均値及び標準偏差と、評価対象の電池のSOHとに基づいて、評価対象の電池のSOHの偏差値を算出する。制御部71は、算出したSOHの偏差値を車両DB72bに記憶してもよい。また、制御部71は、車両DB72bに記憶した診断対象の電池の各情報をブロックチェーンシステムに記憶させてもよい。
【0068】
本実施形態では、評価対象の電池の評価スコアとして、累積走行距離が同じ他の電池のSOHを母集団とし、評価対象の電池のSOHの偏差値を算出するが、この構成に限定されない。累積走行距離が同じ他の電池のSOHに基づいて設定された評価基準(例えば偏差値75のSOH、偏差値50のSOH等)からの乖離度(例えば差分値)を、評価対象の電池の評価スコアとしてもよい。なお、診断サーバ70は、図8Bに示す車両DB72bを、車両のメーカ、車種、車両の製造年月日等の車両の種類、並びに、電池のメーカ、型番、材料等の電池の種類毎に記憶部72に記憶しており、電池の評価スコアを算出する際に評価対象の電池の種類及び電池が搭載されている車両の種類に応じた車両DB72bに登録されている各電池の情報を使用する。これにより、車両及び電池の種類毎に、評価スコアを算出する際の母集団を切り替えることができ、適切な評価スコアの算出が可能となる。
【0069】
制御部71は、算出した評価スコア(偏差値)を表示する診断結果画面を生成して診断機器50へ送信する(S33)。図13は診断結果画面例を示す。図13Aに示す診断結果画面は、診断対象の電池の電池IDと、診断結果として診断日時、診断処理に用いた診断アルゴリズム、車両の累積走行距離、電池の劣化度合(例えばSOH)、劣化度合(SOH)に対する偏差値、及び診断事業者の情報とを表示する。なお、制御部71は、例えば診断結果から、当該電池の取引価格を算定し、診断結果画面に取引価格を表示させてもよい。例えば、電池の劣化度合と取引価格との関係を定めた算定式を予め登録しておくことにより、劣化度合を診断した電池の取引価格を算定できる。
【0070】
図13Bは診断結果画面の変形例を示す。制御部71は、図13Bに示すような診断結果画面を生成して診断機器50へ送信してもよい。図13Bに示す画面は、図13Aに示す構成に加えて、車両DB72bに記憶してある各電池の各累積走行距離に対応するSOHをプロットしたグラフを表示する。図13Bに示すグラフは、車両の累積走行距離を横軸(第1軸)とし、電池の劣化度合を示すSOHを縦軸(第2軸)とし、各電池の累積走行距離に対応するSOHをプロットしたものである。なお、評価対象(診断対象)の電池の現在の評価スコアは白丸でプロットしてある。また、図13Bの画面は、グラフ上に、理想的な劣化速度で劣化した劣化度合が小さい電池のSOH(偏差値75のSOH)の時間的変化を評価基準として表示している。なお、評価基準とする偏差値75のSOHは、1つの電池におけるSOHの時間的変化である必要はなく、母集団のうちの偏差値75のSOHを実線で結んだものであってもよい。また、図13Bの画面は、グラフ上に、偏差値75のSOHよりも劣化度合が大きい(劣化速度が速い)電池のSOH(例えば偏差値50のSOH、偏差値30のSOH)の時間的変化を第2評価基準として表示している。更に、図13Bの画面は、グラフ上に、偏差値30~75のSOHの範囲を示す評価基準ゾーンを表示している。このように、グラフ上に、他の電池のSOHを評価基準として表示することにより、診断対象の電池のSOHがどの程度の劣化度合であるかを容易に判断できる。
【0071】
図14A及び図14Bは診断結果画面の変形例を示す。制御部71は、図13A又は図13Bに示す構成に加えて、図14Aに示すグラフを表示する画面を生成してもよい。図14Aに示すグラフは、診断対象の電池の累積走行距離と同じ累積走行距離である他の電池のSOHの頻度分布を示しており、この頻度分布上に、診断対象の電池の現在のSOHを示している。このようなグラフを提示することにより、各事業者及び車両管理者は、電池の劣化度合の程度を他のユーザの電池の劣化度合との比較によって判断することができる。
【0072】
また、制御部71は、図14Bに示すような診断結果画面を生成してもよい。図14Bは、図13Bの画面と同じ構成を有し、更に、診断対象の電池のSOHの時間的変化を示している。このような画面を生成する場合、制御部71は、診断対象の電池のSOH及び累積走行距離を車両DB72bから取得し、各累積走行距離に対応するSOHをプロットし、プロットした各点を結ぶ。これにより、診断対象の電池のSOHの時間的変化(劣化曲線)を提示できる。このような画面を生成する場合、制御部71は、診断対象の電池に対して時系列で計測されたSOHに基づいて、電池の劣化速度を算出することができ、劣化速度を図14Bの画面に表示してもよい。
【0073】
診断機器50の制御部51は、診断サーバ70が送信した診断結果画面を受信して表示部55に表示する(S34)。これにより、例えば整備事業者は、診断対象の電池の劣化度合を把握できるだけでなく、他の車両の電池の劣化度合と比較して診断対象の電池の劣化度合の程度(劣化速度の速い/遅い)を容易に把握できる。また、整備事業者は、診断サーバ70から提供された診断結果画面を車両管理者に提供することができ、車両に搭載されている電池の劣化度合と、この劣化度合に対する偏差値とを車両管理者に提供できる。よって、車両管理者は、整備事業者に車両の整備を依頼することにより、自身の車両に搭載されている電池の劣化度合と、自身の車両と同程度の累積走行距離の他の車両の電池の劣化度合を母集団とした場合の偏差値とを把握することができる。このような偏差値を提示することにより、車両管理者は、自身の電池の劣化度合を容易に判断できる。また、車両管理者は、自身の電池の劣化速度を低減させて劣化度合の偏差値を向上させるために、電池及び車両の使用方法を改善する等を行うことが期待される。
【0074】
上述した処理により、車両に対して整備事業者による整備が行われる場合に、診断機器50及び診断サーバ70による診断処理が行われる。また、診断処理の結果(診断データ)は、診断サーバ70及びブロックチェーンシステムに蓄積される。よって、蓄積された診断データを以降の診断処理に利用できると共に、電池の状態をトレースすることができる。
【0075】
上述した処理において、例えば診断サーバ70が実行する電池に対する評価スコアの算出処理は、ブロックチェーンシステムにおけるスマートコントラクトによって実現することができる。例えば電池の診断データの登録を条件として診断データに基づいて電池に対する評価スコアの算出処理が行われるプログラムをノード装置10に定義しておき、ノード装置10がプログラムを実行することにより、電池の診断処理が行われると自動的に診断対象の電池に対する評価スコアの算出処理が実行され、診断結果画面が診断機器50へ送信されるように構成することができる。
【0076】
次に、電池に対する診断結果を、車両管理者からの依頼に応じて診断サーバ70が車両管理者に提供する処理について説明する。例えば車両管理者は、自身の車両に搭載されている電池の劣化度合を把握したい場合、あるいは自身の車両の売却を検討している場合、自身の端末装置を用いて診断サーバ70に対して電池に対する診断結果を要求する。図15は診断結果の提供処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0077】
車両管理者は、自身の端末装置に対して、診断結果の要求対象の電池(以下では、診断対象の電池という)の電池IDを入力する。例えば車両管理者は、端末装置の操作部を介して電池IDを入力してもよく、端末装置がRFIDリーダの機能を有する場合、RFIDリーダによって、電池に取り付けられたICタグから電池IDを読み取ってもよい。車両管理者の端末装置は、診断対象の電池の電池IDを取得し(S41)、取得した電池IDを診断サーバ70へ送信し、当該電池に対する診断結果の要求を送信する(S42)。
【0078】
診断サーバ70の制御部71は、診断結果の要求を受信した場合、要求された診断対象の電池の直近に計測されたSOHと、このSOHの計測時の累積走行距離とを取得する(S43)。具体的には、制御部71は、受信した電池IDに対応付けて車両DB72bに記憶してあるSOH及び累積走行距離のうちで、直近のSOH及び累積走行距離を読み出す。そして、制御部71は、図11中のステップS31~S33と同じ処理を行う(S44~S46)。具体的には、制御部71は、ステップS43で取得した診断対象の電池の累積走行距離と同じ累積走行距離に対応付けて車両DB72bに記憶してある他の電池のSOHを車両DB72bから読み出し(S44)、読み出した他の電池のSOHに基づいて、診断対象の電池のSOHに対する評価スコア(偏差値)を算出する(S45)。そして、制御部71は、算出した評価スコア(偏差値)を表示する診断結果画面を生成して、要求元の端末装置へ送信する(S46)。
【0079】
車両管理者の端末装置は、診断サーバ70が送信した診断結果画面を受信して表示する(S47)。これにより、車両管理者は、任意のタイミングで、自身の車両に搭載されている電池の劣化度合を把握できると共に、自身の車両と同程度の累積走行距離の他の車両の電池を母集団とした場合の自身の電池の劣化度合の程度(劣化速度の速い/遅い)を把握できる。よって、車両管理者は、正規のディーラー等に依頼しなくても、自身の車両に搭載されている電池の劣化度合を簡単に把握することができる。
【0080】
本実施形態は、電池の劣化度合としてSOHを用い、SOHの偏差値によって電池に対する評価スコアを提示する構成であるが、SOHの代わりに電池のインピーダンス(内部抵抗)を用いてもよく、SOH及びインピーダンスの両方を用いて劣化度合を算出(評価)する構成でもよい。また、本実施形態は、電池が搭載されてからの車両の累積走行距離と当該電池のSOHとに基づいて、SOHの評価スコア(具体的には偏差値)を算出する構成であるが、この構成に限定されない。例えば、電池が搭載されてからの期間(電池の使用期間)と当該電池のSOHとに基づいて、SOHの評価スコア(具体的には偏差値)を算出する構成でもよい。具体的には、診断対象の電池の使用期間と同じ使用期間の各電池のSOHを母集団として、診断対象の電池のSOHの偏差値を評価スコアとして算出してもよい。電池の使用期間に基づくSOHの偏差値(評価スコア)を算出する場合、経年劣化、自然環境、車両の駐車環境及び走行環境に応じた劣化状況を把握することが可能となる。例えば、累積走行距離が短い車両について、電池の使用期間に基づくSOHの評価スコアを他の電池と比較することにより、各車両の駐車環境(屋根付きの駐車場又は屋内駐車場、あるいは、屋外駐車場等)による劣化速度(速い/遅い)を管理することができる。よって、電池の劣化速度をより遅くするための使用環境を考察することが可能となる。また、車両の累積走行距離及び車両に搭載されてからの電池の使用期間の両方を考慮して、SOHの評価スコアを算出してもよい。
【0081】
上述した構成の本実施形態の情報処理システムでは、車載用電池として製造された電池が1つの車両に搭載されてから取り外されるまでの期間において、車載計測機器40及び診断機器50によって適宜のタイミングで計測された電池の計測データと、電池の劣化度合の診断データとが、電池IDに対応付けてブロックチェーンシステムに記録される。このような電池に関する情報がブロックチェーンシステムを介して各事業者で共有されるので、異なる電池メーカが製造した電池の情報についても各事業者間で共有することができる。電池に関する各種の情報をブロックチェーンシステムに蓄積しておき、蓄積された情報を用いて診断処理を行うことにより、信頼性の高い処理の実行が可能となる。
【0082】
本実施形態の情報処理システムにおいて、診断対象の電池は、複数の電池メーカが製造した電池であってもよく、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ等の複数種類の電池であってもよい。よって、本実施形態の情報処理システムでは、複数種類の電池に対して診断処理が行われ、それぞれの診断結果が蓄積される。このように蓄積された診断結果を集計することにより、電池に対して、例えば電池メーカ毎の評価、電池の種類毎の評価が可能となる。また、任意の電池メーカの任意の型式の電池に対する評価を抽出して総合的な評価を提示することもできる。また、診断サーバ70は、例えば図8Bに示す車両DB72bを、車両のメーカ、車種、車両の製造年月日等の車両の種類毎に、あるいは、電池のメーカ、型番、材料等の電池の種類毎に記憶部72に記憶しているので、車両及び電池の種類毎に、評価スコアを算出する際の母集団を切り替えることができ、適切な評価スコアの算出が可能である。よって、車両及び電池の種類毎に、各電池に対する評価を行うことができ、各電池のSOHがプロットされた図12Aに示すグラフを生成することができる。これにより、車両及び電池の種類毎に各電池の劣化度合の比較が可能となり、車両又は電池の種類が異なる場合であっても、何らかの同一基準に基づいて各電池の比較が可能となる。
【0083】
本実施形態において、車載計測機器40は、車両の走行距離、車両に搭載されている電池の使用時間、充電時間及び充電回数等の計測データに加えて、電池周辺の温度及び湿度等の電池の使用環境に関する計測データを計測する構成を有していてもよい。また、使用環境に関する計測データも、車両の走行距離、電池の使用時間、充電時間及び充電回数等の計測データと共にブロックチェーンシステムに蓄積することにより、電池が使用された環境をトレースできるように構成されていてもよい。同様に、診断機器50は、電池の電流値、電圧値、温度、SOC及びSOHの診断データに加えて、電池周辺の温度及び湿度等の電池の使用環境に関する計測データを計測する構成でもよい。この場合にも、使用環境に関する計測データを診断データと共にブロックチェーンシステムに蓄積することにより、電池が使用された環境をトレースできるように構成されていてもよい。
【0084】
(実施形態2)
本実施形態では、電池に対する診断結果に加えて、診断結果に応じて電池の使用方法に関するアドバイスを提供する情報処理システムについて説明する。本実施形態では、診断サーバ70は、図7に示す実施形態1の構成に加えて、記憶部72にアドバイスDB72cを記憶している。その他の構成については実施形態1と同じであるので説明を省略する。
【0085】
図16はアドバイスDB72cの構成例を示す模式図である。アドバイスDB72cは、電池に対する診断結果に応じて整備事業者又は中古車事業者、あるいは、電池のユーザ(車両管理者)に提供すべきアドバイスを記憶する。図16に示すアドバイスDB72cは、アドバイスID列、アドバイス内容列、提供条件列等を含み、アドバイスを識別するための識別情報(アドバイスID)に対応付けて、アドバイスの内容と、各アドバイスを提供すべき提供条件とを記憶する。アドバイスは、例えば電池の劣化度合(例えばSOH)に応じた電池又は車両の使用方法に関する内容であり、車両の運転方法、車両の駐車環境、及び電池の充電方法等に関する内容を含む。車両の運転方法に関するアドバイスには、例えば急発進及び急ブレーキ(急停車)を控えること、ゆるやかな加速及びブレーキ操作を行うこと等がある。駐車環境に関するアドバイスには、例えば車両に直射日光が当たらないように屋根付きの駐車場又は屋内駐車場を利用すること等がある。電池の充電方法に関するアドバイスには、例えば急速充電を控えること、充電量がある程度(例えばSOCが30%程度)まで少なくなってから充電すること等がある。また、アドバイスは、車両の走行距離、電池の使用時間(放電時間)、充電時間及び充電回数に関する内容を含んでもよい。提供条件は、例えば電池のSOHに基づく条件、SOHに対して算出された偏差値に基づく条件を用いることができる。
【0086】
図17は実施形態2の診断結果の蓄積処理手順の一例を示すフローチャート、図18は画面例を示す模式図である。図17に示す処理は、図11に示す処理において、ステップS32,S33の間にステップS51を追加したものである。図11と同じステップについては説明を省略する。
【0087】
本実施形態の情報処理システムにおいて、診断機器50の制御部51及び診断サーバ70の制御部71は、図11中のステップS21~S32と同じ処理を実行する。そして、制御部71は、ステップS30で車両DB72bに記憶したSOH、及び、ステップS32で算出したSOHに対する評価スコア(偏差値)に応じたアドバイスをアドバイスDB72cから特定する(S51)。例えば制御部71は、アドバイスDB72cに記憶してある提供条件の中から、診断対象の電池のSOH及び/又は偏差値に合致する条件を特定し、特定した条件に対応するアドバイスをアドバイスDB72cから読み出す。
【0088】
制御部71は、電池の診断結果及び診断結果に応じたアドバイスを表示する診断結果画面を生成して診断機器50へ送信する(S33)。ここでの診断結果画面は図18に示す構成を有する。図18に示す診断結果画面は、図13Aに示す構成に加えて、電池の使用に関するアドバイスを表示する。なお、診断サーバ70は、診断結果画面を車両管理者の端末装置に送信してもよい。この場合、電池の診断結果に応じたアドバイスを電池のユーザに提供することができる。具体的には、図15に示す処理において、ステップS45,S46の間にステップS51の処理を追加してもよい。
【0089】
診断機器50の制御部51は、診断サーバ70から受信した診断結果画面を表示部55に表示し(S34)、整備事業者又は中古車事業者に診断結果及び電池の使用に関するアドバイスを提示する。上述した処理により、診断機器50と診断サーバ70とによって電池に対する診断処理が行われた場合に、診断結果に加えて診断結果に基づくアドバイスを提供することができる。よって、整備事業者及び中古車事業者は、電池の劣化度合の診断結果を確認できると共に、例えば電池の寿命をのばすような使用方法のアドバイスを受けることができる。なお、電池の診断結果に応じたアドバイスは、各事業者及び電池のユーザが端末装置を用いて診断サーバ70に要求することによって提供されてもよい。
【0090】
本実施形態の情報処理システムでは、上述した実施形態1と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、車両管理者は、電池の診断結果だけでなく、診断結果に基づくアドバイスの提供を受けることができるので、電池及び車両の取り扱い方法に対して効率よく改善することが可能となる。本実施形態においても、上述した実施形態1で適宜説明した変形例の適用が可能である。
【0091】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【0092】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
10 ノード装置
20 端末装置
30 端末装置
40 車載計測機器
50 診断機器
60 電池管理サーバ
70 診断サーバ
71 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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図16
図17
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