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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011214
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240118BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20240118BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61M25/09 540
A61M25/02
F16B2/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113041
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
【テーマコード(参考)】
3J022
4C267
【Fターム(参考)】
3J022EA35
3J022EB14
3J022EC17
3J022ED06
3J022ED26
3J022FA05
3J022GB23
3J022HA03
4C267AA28
4C267AA33
4C267BB05
4C267HH07
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】医療用の長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で堅固に保持可能なクリップを提供する。
【解決手段】可撓性を有する医療用の長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で保持するためのクリップ10であって、表面21と、裏面22と、を含む基板20と、表面21と平行な軸方向Yへ貫通する内腔35を備える円筒形状であり、弾性変形可能で軸方向Yの両端で開口する第1開口37と第2開口38との間に延びるスリット39を備えた円筒部31と、スリット39を形成する上方開放端40の外表面に形成された歯部33と、を含む保持部30と、表面21から延びる支持部51と、支持部51によって支持されスリット39に対向する端部に爪部52を有する開放操作部53と、を含む係合部50と、を有し、円筒部31は、内表面に、力を受けることで圧縮変形して復元力を生じる圧縮部材36を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で保持するためのクリップであって、
表面と、当該表面の反対側である裏面と、を含む基板と、
前記表面と平行な軸方向へ貫通する内腔を備える円筒形状であり、弾性変形可能で前記軸方向の両端で開口する第1開口と第2開口との間に延びる第3開口を備えた円筒部と、前記第3開口を形成するように対向する2つの開放端のうちの前記表面から離れた側に位置する上方開放端の外表面に形成された少なくとも1つの歯部と、を含む保持部と、
前記表面から延びる支持部と、前記支持部によって支持され前記第3開口に対向する端部に少なくとも1つの爪部を有する開放操作部と、を含む係合部と、を有し、
前記円筒部は、内表面に、力を受けることで圧縮変形して復元力を生じる圧縮部材を有する、クリップ。
【請求項2】
前記クリップは、前記基板の裏面に接着層を有する請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記クリップは、前記基板の表面に設けられ前記上方開放端の前記軸方向の両端にそれぞれ対向する位置に配置される2つの側壁を有する請求項1または2に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の長尺デバイスをコイル状に保持するクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療では、ガイドワイヤやカテーテルなどの様々な医療用の長尺デバイスが使用される。血管内治療の手技中、術者は、ガイドワイヤを体外に抜去し、再び血管内に挿入することがある。体外に抜去されたガイドワイヤは、再挿入されるまでの間、コイル状に巻かれ、液体で満たされた容器内に一時的に保管される。
【0003】
ガイドワイヤの基端部は、剛性および弾性が高い材料で形成されている。これにより、ガイドワイヤは、コイル状に巻かれた状態から直線の状態に戻ろうとし、液体で満たされた容器内から意図せずに飛び出して汚染されてしまうことがある。そのため、ガイドワイヤをコイル状に巻かれた状態で保持する手段が提案されている。
【0004】
特許文献1には、ハンドルで操作可能なヒンジで接続され、閉鎖位置から開放位置へと互いに可動である2つの顎部に設けられた接触表面間に可撓性の長尺デバイスを保持する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0289744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の装置は、装置が閉鎖位置にあるとき、装置の接触表面と長尺デバイスの外表面との間の摩擦によって長尺デバイスを保持する。しかしながら、長尺デバイスの表面に親水性コーティングが施されている場合、上述の装置で保持した長尺デバイスを液体で満たされた容器内に保管すると、装置の接触表面と長尺デバイスの表面との間の摩擦が小さくなり、装置の長尺デバイスに対する保持力が低下する。これにより、長尺デバイスは、長尺デバイスの長軸方向や径方向に移動して装置の接触表面間から滑り落ち、コイル状に巻かれた状態から直線の状態に戻って、容器から飛び出す可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、医療用の長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で堅固に保持可能なクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係るクリップは、可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で保持するためのクリップであって、表面と、当該表面の反対側である裏面と、を含む基板と、前記表面と平行な軸方向へ貫通する内腔を備える円筒形状であり、弾性変形可能で前記軸方向の両端で開口する第1開口と第2開口との間に延びる第3開口を備えた円筒部と、前記第3開口を形成するように対向する2つの開放端のうちの前記表面から離れた側に位置する上方開放端の外表面に形成された少なくとも1つの歯部と、を含む保持部と、前記表面から延びる支持部と、前記支持部によって支持され前記第3開口に対向する端部に少なくとも1つの爪部を有する開放操作部と、を含む係合部と、を有し、前記円筒部は、内表面に、力を受けることで圧縮変形して復元力を生じる圧縮部材を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したクリップは、開放状態にあるクリップの円筒部の内腔に、円筒部の第3開口からコイル状に巻かれた医療用の長尺デバイスのループを挿入した後、円筒部を弾性的に縮径させ、保持部の歯部と係合部の爪部とを係合させてクリップを閉鎖状態とすることにより、長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で安定して保持できる。円筒部の内表面に設けられた圧縮部材は、長尺デバイスのループ全体を取り囲み、長尺デバイスに復元力を作用させる。これにより、クリップは、長尺デバイスが親水性コーティングを有する場合であっても、長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で堅固に保持できる。
【0010】
前記クリップは、前記基板の裏面に接着層を有してもよい。これにより、長尺デバイスを保管する容器、手術用のドレープおよび手術台などの他の対象物にクリップを固定できるので、クリップによりコイル状に巻かれた状態で保持された長尺デバイスが、手術台から落下して汚染されることを防止できる。また、術者は、クリップの開閉操作を片手で行うことができる。
【0011】
前記クリップは、前記基板の表面に設けられ前記上方開放端の前記軸方向の両端にそれぞれ対向する位置に配置される2つの側壁を有してもよい。これにより、クリップは、円筒部の上方開放端の軸方向への移動を抑制できるため、長尺デバイスを安定的に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るクリップを示す正面図である。
図2】実施形態に係るクリップを示す斜視図である。
図3】実施形態に係るクリップのスリットを開いた状態を示す正面図である。
図4】実施形態に係るクリップに長尺デバイスを保持した状態を示す正面図である。
図5】クリップの変形例を示す斜視図である。
図6】クリップの他の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書における「上」「下」「横」の表現は、説明のために便宜上使用するものであり、クリップの姿勢を限定するものではない。
【0014】
本実施形態に係るクリップ10は、図4に示すように、ガイドワイヤやカテーテルなどの医療用の長尺デバイス100をループ状に複数回巻いて束ねた状態で保持するために使用される。
【0015】
クリップ10は、図1および2に示すように、基板20と、基板20に連結された円筒形状の円筒部31を備える保持部30と、基板20に連結された係合部50と、基板20に保持された接着層60とを有する。保持部30の内腔35にコイル状に巻かれた長尺デバイス100のループを挿入した状態で、保持部30と係合部50とを係合させることにより、長尺デバイス100のループが保持部30の内腔35に保持される。
【0016】
基板20は、平板形状であり、表面21と、表面21の反対側の裏面22とを有する。本実施形態において、基板20の表面21側を「上」、裏面22側を「下」と定義する。また、本実施形態において、基板20の表面21および裏面22と垂直な方向を上下方向Z、上下方向と垂直であって後述する円筒部31の軸心と垂直な方向を横方向X、上下方向と垂直であって円筒部31の軸心と平行な方向を軸方向Yと定義する。円筒部31の軸心とは、円筒の貫通孔が延びる方向である。軸方向Yは、横方向Xおよび上下方向Zと垂直である。表面21は、保持部30と、係合部50とが接続されている。裏面22は、接着層60が保持されている。接着層60の裏面22に接する面と反対側の接着面61は、接着に使用するまで、例えば、剥離可能な剥離紙62が貼り付けられて保護される。
【0017】
接着層60は、他の対象物と接着することで、クリップ10を他の対象物に固定できる。
【0018】
基板20の横方向Xの長さは、12mm~50mmである。基板20の軸方向Yの長さは、10mm~40mmである。基板20の上下方向の厚みは、0.5mm~2mmである。
【0019】
基板20は、ポリプロピレンやポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂などの樹脂により形成される。保持部30および係合部50も、基板20に適用可能な樹脂材料により形成可能であり、基板20と同じ材料により一体的に形成されてもよい。
【0020】
保持部30は、基板20の表面21に接続されている。保持部30は、円筒部31と、閉鎖操作部32と、歯部33とを有する。
【0021】
円筒部31は、弾性的に変形可能な円筒形状の部材であり、内腔35を有する円筒形状の壁34と、壁34の内表面に配置される圧縮部材36とを有する。円筒部31は、軸方向Yに沿う一端側の第1開口37から他端側の第2開口38まで円筒部31を貫通する内腔35が形成されている。円筒部31は、内腔35の軸心が基板20と平行に配置され、円筒部31の下部に位置する円筒部31の外表面の一部が、基板20の表面21に接続している。円筒部31の壁34は、第1開口37から第2開口38まで、軸心に沿って延びるスリット39(第3開口)を有する。スリット39は、円筒部31の横方向Xへ開口するように設けられる。すなわち、円筒部31の軸方向Yに直交する断面は、ほぼC形状である。円筒部31は、スリット39を挟んで上側に上方開放端40を有し、下側に下方開放端41を有する。円筒部31は、上方開放端40と下方開放端41とが離れるように変形することで、スリット39の幅が広がる(図3を参照)。また、円筒部31は、上方開放端40と下方開放端41とが近づくように変形することで、スリット39の幅が狭くなる、もしくは、上方開放端40と下方開放端41の少なくとも一部が重なり、スリット39の幅がなくなる(図4を参照)。このように、円筒部31は、弾性的に変形することにより、スリット39が開口した開放状態と、スリット39が閉じた閉鎖状態とをとることができる。外力が作用しない自然状態において、円筒部31は、開放状態であることが好ましいが、閉鎖状態であってもよい。
【0022】
外力が作用しない自然状態において、スリット39が開口した開放状態における円筒部31の内腔35の直径は、5mm~20mmである。円筒部31の軸方向Yへの長さは、5mm~20mmである。円筒部31の壁厚は、0.5mm~3mmである。
【0023】
外力が作用しない自然状態において、スリット39の幅は、長尺デバイス100の最大外径よりも大きいことが好ましい。スリット39の幅は、0.3mm~8mmである。なお、スリット39の幅は、外力が作用した状態で、長尺デバイス100の最大外径よりも大きくなればよい。
【0024】
閉鎖操作部32は、円筒部31を縮径する際に術者が把持して円筒部31を操作するための部材である。閉鎖操作部32は、円筒部31の上部(基板20と接続される下部と反対側の部分)に、上方、すなわち基板20から離間する方向に突出するように設けられている。閉鎖操作部32の、円筒部31の外表面からの突出長は、2.5mm~10mmである。閉鎖操作部32の厚みは、0.5mm~2mmである。閉鎖操作部32は、円筒部31の軸方向Yにおいてほぼ中央の位置に形成されている。すなわち、閉鎖操作部32は、円筒部31の第1開口37に近い側および第2開口38に近い側には設けられていなくてよい。なお、閉鎖操作部32は、円筒部31の第1開口37から第2開口38まで延びるように形成されていてもよい。
【0025】
歯部33は、円筒部31のスリット39よりも上方側に位置する上方開放端40の外表面に1つ以上設けられる。本実施形態において、歯部33の数は3つであるが、1つや2つであっても、4つ以上であってもよい。歯部33は、係合部50の爪部52と組み合わされてラチェット機構を形成することで、円筒部31を縮径した状態に維持する。歯部33は、円筒部31の軸方向Yにおいてほぼ中央の位置に形成されている。すなわち、歯部33は、円筒部31の第1開口37に近い側および第2開口38に近い側には設けられていなくてよい。なお、歯部33は、円筒部31の第1開口37から第2開口38まで延びるように形成されていてもよい。
【0026】
圧縮部材36は、円筒部31の内表面の少なくとも一部に配置されている。圧縮部材36は、力を受けることで柔軟に圧縮変形し、圧縮に対する復元力を生じる。なお、圧縮部材36は、円筒部31の外表面に歯部33が設けられている部分の内表面には設けられないことが好ましい。これにより、円筒部31が閉鎖状態となる際に、保持部30の歯部33と係合部50の爪部52との係合が圧縮部材36により妨げられることを抑制できる。圧縮部材36は、円筒部31が縮径する際に圧縮されて柔軟に変形可能である。圧縮部材36は、円筒部31の内表面に、複数に分割して配置される。これにより、円筒部31は、圧縮部材36により妨げられることなく縮径できる。圧縮部材36は、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの可撓性を有する樹脂により形成される。圧縮部材36は、発泡体やスポンジのような多孔質体とすることができる。これにより、圧縮部材36は、円筒部31の内腔35に配置される長尺デバイス100に対して適度な復元力を作用させることができる。圧縮部材36の復元力によって、クリップ10は、長尺デバイス100が親水性コーティングを有する場合であっても、コイル状に巻かれた状態の長尺デバイス100のループを堅固に保持できる。さらに、クリップ10は、係合部50の爪部52に係合する歯部33を適宜選択することで、圧縮部材36による長尺デバイス100の保持力を任意に調節することができる。これにより、クリップ10は、長尺デバイスの剛性や弾性、外径などの仕様が異なる各種の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持できる。圧縮部材36の厚みは、0.1mm~3mmである。圧縮部材36は、円筒部31の内表面の第1開口37から第2開口38まで設けられることが好ましい。
【0027】
係合部50は、基板20の表面21から上方に延びる支持部51と、支持部51によって支持され一方の辺に爪部52を有する開放操作部53と、を有する。
【0028】
支持部51は、弾性的に変形可能な板状の部材である。支持部51は、基板20の表面21の、横方向Xにおいて保持部30の上方開放端40を有する側に設けられ、保持部30に向かって傾斜しつつ上方に延びる。支持部51の上端は、円筒部31のスリット39とほぼ同じ位置に配置される。支持部51の軸方向Yの長さは、保持部30の歯部33が設けられる領域の軸方向Yの長さとほぼ同じである。支持部51の上端には、開放操作部53が設けられている。支持部51の厚みは、好ましくは0.5mm~2mmである。
【0029】
開放操作部53は、支持部51の上端に配置された板状の部材である。開放操作部53は、支持部51とほぼ直角をなすように配置され、保持部30の円筒部31のスリット39に対向する辺(端部)に、軸方向Yへ延びる爪部52が形成されている。開放操作部53の厚みは、好ましくは0.5mm~2mmである。爪部52は、円筒部31のスリット39に向かって板状の部材の厚みが減少するように形成されている。爪部52は、保持部30の歯部33と組み合わされてラチェット機構を形成することで、円筒部31を縮径した状態に維持する。なお、爪部52は、複数設けられていてもよい。爪部52が複数設けられる場合には、開放操作部53に設けられる爪部52の他に、支持部51の円筒部31側の面に、軸方向Yへ延びる爪部52を形成する。
【0030】
次に、本実施形態に係るクリップ10の使用方法を説明する。
【0031】
術者は、血管内治療の手技中に、一旦体外に抜去した長尺デバイス100(例えば、ガイドワイヤ)を血管内に再挿入するために一時的に保管する場合がある。このとき、術者は、血管から抜去した長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で保持するために、クリップ10を使用する。なお、クリップ10は、長尺デバイス100の先端部が患者の血管内に挿入された状態の長尺デバイス100の基端部をコイル状に巻かれた状態で保持する場合にも使用できる。
【0032】
まず、術者は、クリップ10の接着層60から剥離紙62を剥がし接着層60を露出させて、長尺デバイス100を保管する容器(例えば、ステンレス製のバット)、手術用のドレープや手術台などの他の対象物に接着層60を接着する。これにより、クリップ10が他の対象物に固定される。その結果、術者は、クリップ10の開閉操作(保持部30の円筒部31を縮径して長尺デバイス100をクリップ10に保持する操作と、係合部50の開放操作部53を操作して長尺デバイス100をクリップ10から開放する操作)を片手で容易に行うことができる。また、クリップ10が手術台から落下して、長尺デバイス100が汚染されることを防止できる。なお、接着層60による他の対象物への接着は、クリップ10にコイル状に巻かれた長尺デバイス100を保持した後であってもよい。また、接着層60は、使用されなくてもよい。
【0033】
次に、術者は、体外に抜去した長尺デバイス100をコイル状に巻き取る。これにより、長尺デバイス100に、複数のループが形成される。
【0034】
次に、術者は、図3に示すように、開放状態にあるクリップ10の閉鎖操作部32を把持して力を作用させて円筒部31の上方開放端40を下方開放端41から離間させ、スリット39の幅を広げる。次に、術者は、長尺デバイス100の複数のループをスリット39から円筒部31の内腔35に挿入する。
【0035】
次に、術者は、図4に示すように、閉鎖操作部32を下方へ押圧し、円筒部31を縮径しつつ、円筒部31の上方開放端40を係合部50の爪部52と円筒部31の下方開放端41との間に挿入する。これにより、保持部30の歯部33が係合部50の爪部52と係合して、円筒部31の内表面に設けられた圧縮部材36が、長尺デバイス100のループ全体を取り囲むように固定する。このとき、圧縮部材36は柔軟に圧縮変形し、圧縮に対する復元力を長尺デバイス100に作用させる。これにより、クリップ10は、長尺デバイス100が親水性コーティングを有する場合であっても、長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で堅固に保持できる。また、本実施形態において、クリップ10は、歯部33が複数設けられている。そのため、クリップ10は、係合部50の爪部52に係合する歯部33を適宜選択することで、圧縮部材36による長尺デバイス100の保持力を任意に調節することができる。これにより、クリップ10は、長尺デバイスの剛性や弾性、外径などの仕様が異なる各種の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持できる。なお、爪部52が複数設けられる場合には、歯部33に係合する爪部52を適宜選択することで、圧縮部材36による長尺デバイス100の保持力を任意に調節することができる。
【0036】
術者は、クリップ10から長尺デバイス100を取り外す際には、係合部50の開放操作部53を把持して下方へ押圧する。これにより、支持部51が撓み、係合部50の爪部52が円筒部31から離れる方向へ移動して、爪部52と歯部33との係合が解除される。これにより、円筒部31は、自己の弾性力により元の形状に復元し、開放状態となる。術者は、円筒部31の内腔35から、広がったスリット39を介して長尺デバイス100のループを容易に取り出すことができる。
【0037】
図5に、本実施形態の変形例を示す。変形例のクリップ10は、基板20の表面21に設けられ円筒部31の上方開放端40の軸方向Yへの移動を制限する2つの側壁23と、円筒部31の外表面に軸方向Yへ延びる少なくとも1つの凸部70とを有する。
【0038】
2つの側壁23は、基板20の表面21から上方へ突出する板状の部材である。2つの側壁23は、係合部50と下方開放端41との間に挿入される上方開放端40の軸方向Yの両端にそれぞれ対向する位置に配置される。なお、側壁23の構成は、円筒部31の上方開放端40の軸方向Yへの移動を制限できれば、限定されない。例えば、側壁23は、基板20ではなく、係合部50や円筒部31に形成されてもよい。
【0039】
術者が、円筒部31を閉鎖状態とするために係合部50と下方開放端41との間に上方開放端40を挿入すると、上方開放端40は、軸方向Yの両端が2つの側壁23に接触して保持される。なお、上方開放端40は、軸方向Yの両端と2つの側壁23との間に、微小な隙間を有するように配置されてもよい。これにより、円筒部31は、自由端である上方開放端40の軸方向Yへの移動が制限されて、円筒部31の上方開放端40の捩れを抑制できる。その結果、クリップ10は、長尺デバイス100を安定的に保持できる。また、クリップ10は、凸部70により円筒部31が補強される。これにより、術者は、円筒部31の上方開放端40を2つの側壁23の間に挿入する操作を容易に行うことができる。さらに、凸部70が円筒部31の外表面に設けられることで、術者は、クリップ10を使用する際に円筒部31を滑らずに把持することができる。
【0040】
また、図6に示す他の変形例のように、係合部50の支持部51の高さや角度、円筒部31のスリット39の位置、閉鎖操作部32の位置などは、適宜変更されてよい。また、クリップ10は、円筒部31の下方開放端41と基板20の表面21とを連結する補強壁24を有してもよい。補強壁24は、下方開放端41の撓みや捩じれを抑制し、長尺デバイス100に対するクリップ10の保持力を向上できる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る態様(1)のクリップ10は、可撓性を有する医療用の長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で保持するためのクリップ10であって、表面21と、当該表面21の反対側である裏面22と、を含む基板20と、表面21と平行な軸方向Yへ貫通する内腔35を備える円筒形状であり、弾性変形可能で軸方向Yの両端で開口する第1開口37と第2開口38との間に延びるスリット39(第3開口)を備えた円筒部31と、スリット39を形成するように対向する2つの開放端のうちの表面21から離れた側に位置する上方開放端40の外表面に形成された少なくとも1つの歯部33と、を含む保持部30と、表面21から延びる支持部51と、支持部51によって支持されスリット39に対向する端部に少なくとも1つの爪部52を有する開放操作部53と、を含む係合部50と、を有し、円筒部31は、内表面に、力を受けることで圧縮変形して復元力を生じる圧縮部材36を有する。これにより、態様(1)のクリップ10は、開放状態にあるクリップ10の円筒部31の内腔35に、円筒部31のスリット39からコイル状に巻かれた医療用の長尺デバイス100のループを挿入した後、円筒部31を弾性的に縮径させ、保持部30の歯部33と係合部50の爪部52とを係合させてクリップ10を閉鎖状態とすることにより、長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で安定して保持できる。円筒部31の内表面に設けられた圧縮部材36は、長尺デバイス100のループ全体を取り囲み、長尺デバイス100に復元力を作用させる。これにより、クリップ10は、長尺デバイス100が親水性コーティングを有する場合であっても、長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で堅固に保持できる。また、クリップ10は、歯部33が複数設けられていることにより、係合部50の爪部52に係合する歯部33を適宜選択することで、圧縮部材36による長尺デバイス100の保持力を任意に調節することができる。そのため、クリップ10は、長尺デバイスの剛性や弾性、外径などの仕様が異なる各種の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持できる。
【0042】
態様(2)のクリップ10は、態様(1)のクリップ10において、基板20の裏面22に接着層60を有する。これにより、長尺デバイス100を保管する容器、手術用のドレープおよび手術台などの他の対象物にクリップ10を固定できるので、クリップ10により保持された長尺デバイス100が、手術台から落下して汚染されることを防止できる。また、術者は、クリップ10の開閉操作を片手で行うことができる。
【0043】
態様(3)のクリップ10は、態様(1)または(2)のクリップ10において、基板20の表面21に設けられ上方開放端40の軸方向Yの両端にそれぞれ対向する位置に配置される2つの側壁23を有してもよい。これにより、クリップ10は、円筒部31の上方開放端40の軸方向Yへの移動を制限できるため、長尺デバイス100を安定的に保持できる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述の実施形態において医療用の長尺デバイス100はガイドワイヤであるが、カテーテルなど他の長尺デバイス100であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 クリップ
20 基板
21 表面
22 裏面
23 側壁
24 補強壁
30 保持部
31 円筒部
32 閉鎖操作部
33 歯部
34 壁
35 内腔
36 圧縮部材
37 第1開口
38 第2開口
39 スリット(第3開口)
40 上方開放端
41 下方開放端
50 係合部
51 支持部
52 爪部
53 開放操作部
60 接着層
61 接着面
62 剥離紙
70 凸部
100 長尺デバイス
X 横方向
Y 軸方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6