IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガスバーナ 図1
  • 特開-ガスバーナ 図2
  • 特開-ガスバーナ 図3
  • 特開-ガスバーナ 図4
  • 特開-ガスバーナ 図5
  • 特開-ガスバーナ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112153
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ガスバーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/22 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
F23D14/22 E
F23D14/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017038
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】角 宗司
【テーマコード(参考)】
3K019
【Fターム(参考)】
3K019AA06
3K019BA02
3K019BB03
3K019BB05
3K019BD05
3K019BD11
(57)【要約】
【課題】窒素酸化物の生成を抑制できるガスバーナを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るガスバーナ1は、所定の噴出方向に延び、燃料ガスが供給される燃料供給管10と、前記燃料供給管10を取り囲む環状に開口し、燃焼用空気を前記噴出方向に噴出する空気ノズル30と、前記燃料供給管10から前記噴出方向視で外側に延出し、その先端部から前記燃料ガスを流出させる複数の燃料ノズル40と、前記空気ノズル30の内部、又は前記燃料供給管10の外周の前記空気ノズル30より下流側かつ前記燃料ノズル40より上流側に配設され、前記燃焼用空気の噴流を部分的に遮断する複数の乱流促進体50と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の噴出方向に延び、燃料ガスが供給される燃料供給管と、
前記燃料供給管を取り囲む環状に開口し、燃焼用空気を前記噴出方向に噴出する空気ノズルと、
前記燃料供給管から前記噴出方向視で外側に延出し、その先端部から前記燃料ガスを流出させる複数の燃料ノズルと、
前記空気ノズルの内部、又は前記燃料供給管の外周の前記空気ノズルより下流側かつ前記燃料ノズルより上流側に配設され、前記燃焼用空気の噴流を部分的に遮断する複数の乱流促進体と、
を備える、ガスバーナ。
【請求項2】
前記乱流促進体は、前記噴出方向視で前記空気ノズルの開口を径方向に横断するよう配設される、請求項1に記載のガスバーナ。
【請求項3】
前記乱流促進体は、前記空気ノズルの内部に配設される、請求項1又は2に記載のガスバーナ。
【請求項4】
前記乱流促進体は、前記噴出方向視で前記燃料ノズルと重複するよう配設される、請求項1又は2に記載のガスバーナ。
【請求項5】
前記乱流促進体の周方向の幅は、前記燃料ノズルの外径の0.1倍以上2.0倍以下である、請求項1又は2に記載のガスバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばボイラ等において、燃料ガスを燃焼用空気と混合して燃焼させるガスバーナが広く利用されている。ガスバーナでは、燃焼温度が比較的高くなりやすいので、窒素酸化物(NOx)の生成が問題となる場合がある。窒素酸化物を低減するために、炉内に高速の燃焼用空気を噴出することにより負圧を生成し、燃焼排ガスを上流側に還流させる流れを形成する自己再循環型バーナが知られている。燃焼排ガスを還流させて燃焼用空気に混合することで燃料ガスへの酸素の供給速度を低下させ、これにより燃焼温度を抑制して窒素酸化物の生成を低減できる。
【0003】
このような自己再循環型バーナとして、燃焼用空気の噴流の中に、燃焼用空気の噴き出し方向に延びる燃料配管を配設し、燃焼用空気の流れの中に燃料ガスを噴き出させるガスバーナが知られている。また特許文献1には、燃料配管に外側に延出する複数のノズルを設けることにより、燃焼用空気の噴流と燃料ガスとの混合を促進することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2022/168381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような自己再循環型バーナにより窒素酸化物の生成を抑制できるが、窒素酸化物の生成が皆無であることが理想であり、窒素酸化物の生成をさらに抑制できることが望ましい。このため、本発明は、窒素酸化物の生成を抑制できるガスバーナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るガスバーナは、所定の噴出方向に延び、燃料ガスが供給される燃料供給管と、前記燃料供給管を取り囲む環状に開口し、燃焼用空気を前記噴出方向に噴出する空気ノズルと、前記燃料供給管から前記噴出方向視で外側に延出し、その先端部から前記燃料ガスを流出させる複数の燃料ノズルと、前記空気ノズルの内部、又は前記燃料供給管の外周の前記空気ノズルより下流側かつ前記燃料ノズルより上流側に配設され、前記燃焼用空気の噴流を部分的に遮断する複数の乱流促進体と、を備える。
【0007】
上述のスバーナにおいて、前記乱流促進体は、前記噴出方向視で前記空気ノズルの開口を径方向に横断するよう配設されてもよい。
【0008】
上述のスバーナにおいて、前記乱流促進体は、前記空気ノズルの内部に配設されてもよい。
【0009】
上述のスバーナにおいて、前記乱流促進体は、前記噴出方向視で前記燃料ノズルと重複するよう配設されてもよい。
【0010】
上述のスバーナにおいて、前記乱流促進体の周方向の幅は、前記燃料ノズルの外径の0.1倍以上2.0倍以下であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガスバーナは、窒素酸化物の生成を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るガスバーナを備えるボイラの断面図である。
図2図1のボイラのガスバーナを燃焼用空気噴出方向下流側から見た図である。
図3図2のガスバーナのX-X線断面図である。
図4図12のガスバーナの乱流促進部材の燃料ノズルに対するずれ角度と窒素酸化物濃度との関係を示すグラフである。
図5図1のボイラの気流のシミュレーション結果を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るガスバーナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るガスバーナ1を備えるボイラ100の構成を示す断面図である。図2は、ガスバーナ1を燃焼用空気噴出方向下流側から見た図である。図3は、ガスバーナ1の断面図である。
【0014】
ボイラ100は、所定の燃焼用空気噴出方向(本実施形態では上下方向)に延びる火炎を形成するガスバーナ1と、ガスバーナ1の燃焼排ガスによって加熱される缶体110とを備える。
【0015】
缶体110は、ガスバーナ1を囲むように配置され、燃焼用空気噴出方向(上下方向)に延びる複数の水管111と、複数の水管111の下端を接続する下部ヘッダ112と、複数の水管111の上端を接続する上部ヘッダ113と、を有する。缶体110は、ガスバーナ1の燃焼排ガスを複数の水管111の軸方向に流す流路を画定する。
【0016】
缶体110において、複数の水管111は、ガスバーナ1の噴射方向視で二重の環状に配置される。内側の水管111のガスバーナ1と反対側の端部を除いて、周方向に隣接する水管111同士は、直接又は帯状の部材によって接続され、燃焼排ガスが通過できないように配設される。これにより、ガスバーナ1の燃焼排ガスは、内側の水管111の内側の空間を通り、ガスバーナ1と反対側の端部で水管111の隙間を通り抜け、内側の水管111と外側の水管111との間の空間を逆方向に通過してから外部に排出される。
【0017】
ガスバーナ1は、燃焼用空気噴出方向に延びる燃料供給管10と、燃料供給管10の上流部を囲むよう配置されるウインドボックス20と、ウインドボックス20に燃料供給管10を取り囲む環状に開口するよう配設され、燃焼用空気を前記噴出方向に噴出する空気ノズル30と、空気ノズル30よりも燃焼用空気噴出方向下流側で燃料供給管10から延出する複数の燃料ノズル40と、空気ノズル30の内部に配設され、燃焼用空気の噴流を部分的に遮断する複数の乱流促進体50と、燃料供給管10の内側に配置される内壁管60と、燃料供給管10の先端で燃料供給管10と内壁管60との隙間を封止する環状の封止板70と、内壁管60の内側に配置されるパイロットバーナ80と、を備える。
【0018】
燃料供給管10は、燃料ガスが供給され、燃料ガスを燃料ノズル40まで案内する流路を画定する。ガスバーナ1において使用される燃料ガスとしては、例えば水素ガス、メタンガス、プロパンガス、水素を含むガス等が想定されるが、特に燃焼速度が大きい水素ガスや水素含むガスを使用する場合おいて、本発明により窒素酸化物を低減する効果が顕著となる。
【0019】
ウインドボックス20は、燃焼用空気が供給され、供給された燃焼用空気を燃料供給管10に対する角度位置によってばらつかないように分配して空気ノズル30に導入する。
【0020】
空気ノズル30は、燃料供給管10と同心で、一定の径方向幅を有する円環状に開口することが好ましい。また、空気ノズル30は、燃料供給管10に沿う燃焼用空気の流れを効率よく形成できるよう、燃料供給管10から一定の間隔を開けて開口することが好ましい。このため、本実施形態の空気ノズル30は、ウインドボックス20から延びる主筒部31と、燃料供給管10に取り付けられる円環状のフランジ部32と、フランジ部32の外縁から主筒部31と平行に、主筒部31の先端と略同じ燃焼用空気噴出方向位置まで延びる筒状の案内筒部33と、を有する構成とされている。つまり、空気ノズル30は、主筒部31と案内筒部33の間の円環状の隙間から燃焼用空気を噴出する。
【0021】
空気ノズル30から噴出される燃焼用空気の噴流によって、該噴流近傍に低圧領域が形成される。炉内の燃焼排気ガスは周方向から噴流の流れに沿って燃料ガス供給部に向かって連続的に燃焼用空気に巻き込まれる。これにより、燃焼用空気に燃焼排ガスが混合されることで、効果的に燃焼用空気の酸素濃度を低下させられる。
【0022】
空気ノズル30の開口の外径は、燃料供給管10の外径の2倍未満であることが好ましく、1.65倍未満であることがより好ましい。燃料供給管10の外径に対して空気ノズル30の外径を必要以上に大きくしないことによって、燃焼用空気の噴流の厚みが薄くなり、体積当たりの比表面積は大きくなるので、炉内の燃焼配ガスを効率的に燃焼用空気の噴流に巻き込むことができる。
【0023】
空気ノズル30の開口の中心円(開口の径方向中心位置)の直径、缶体110の内側空間の直径D(内側の水管111のピッチ円直径、図1参照)の0.15倍より大きく0.7倍未満であることが好ましい。これにより、燃焼用空気の噴流が燃焼排ガスを巻き込む領域を確保すると共に、燃焼に必要な空間を確保し、燃焼排ガスを効率的に燃焼用空気の噴流に巻き込むことができると同時に、不完全燃焼を防止できる。
【0024】
燃料ノズル40は、その先端から燃料ガスを流出させる。燃料ノズル40の配置によって、燃料ガスの流出する位置及び方向を制御できる。また、複数の燃料ノズル40から燃料ガスを流出させることにより、ガスバーナ1の周方向の燃料分布の偏りを少なくできる。さらに、燃料ノズル40を設けることによって、燃焼停止時には炉内の燃焼排ガス或いはパージ空気が燃料供給管10の内部に拡散することを抑制できる。
【0025】
燃料ノズル40は、空気ノズル30よりも下流側に、空気ノズル30から一定の距離を空けて配設される。空気ノズル30を燃料供給管10から一定の距離を空けて設けることにより、燃焼用空気の噴流には、燃料ガスが混合される前に、炉内の燃焼排ガスが混合される。これにより、燃料ガスが混合される時点の燃焼用空気の酸素濃度が低下するので、燃焼温度が低減されることにより窒素酸化物の生成が抑制される。
【0026】
また、ガスバーナ1では、空気噴流により形成される低圧領域に燃料ノズル40の開口が配置されることにより、従来より供給圧力が低い燃料ガスであっても、必要な量を流出させられる。このため、ガスバーナ1は、例えば副生水素や低圧供給都市ガス等の供給圧力が低い燃料ガスを加圧することなく使用することができる。
【0027】
燃料ノズル40(開口の中心)の空気ノズル30からの燃焼用空気噴出方向の距離Lとしては、空気ノズル30の相当直径の3倍以上15倍以下が好ましく、6倍以上12倍以下がより好ましい。燃料ノズル40の空気ノズル30からの距離Lを前記下限以上とすることによって、窒素酸化物の生成を効果的に抑制可能な酸素濃度になった燃焼用空気に燃料ガスを混合できるので、窒素酸化物の生成を効果的に抑制できる。また、燃料ノズル40の空気ノズル30からの距離Lを前記上限以下とすることによって、燃焼用空気の酸素濃度が低下し過ぎて燃焼が不完全となることや、燃焼用空気の流速が低下して局所的な温度上昇による窒素酸化物の生成を抑制できる。
【0028】
燃料ノズル40は、燃料供給管10から燃焼用空気噴出方向視で空気ノズル30から外側に突出しないように配設されることが好ましい。燃焼用空気流れの中に燃料ガスを供給することで、空気と燃焼ガスの混合を促進できる。また、空気ノズル30から噴出する燃焼用空気の噴流が燃料供給管10の裏側に局所的に形成する低圧領域に燃料ガスが流出するため、燃料ガスの流出圧力をより小さくすることができる。
【0029】
燃料ノズル40は、燃焼用空気噴出方向下流側に傾斜して配設されることが好ましい。燃料ノズル40が傾斜していることによって、燃料ガスが燃焼用空気噴出方向の速度成分を有する状態で開口から流出する。これにより、燃料ガスが迅速に燃焼用空気噴出方向下流側に移動するため、燃焼用空気と燃焼排ガスの混合領域及び混合時間が確保されやすくなり、未燃物(未燃焼の燃料ガス及び一酸化炭素等の不完全燃焼物)の排出を抑制できる。また、燃料ノズル40により燃焼用空気噴出方向に対して鋭角な方向に燃料ガスを流出するため、径方向に燃料ガスを噴出させる場合と比べて、燃料ガスが水管111に接触しにくいので、未燃物の排出をより確実に抑制できる。
【0030】
燃料ノズル40の燃焼用空気噴出方向に対する傾斜角度αの下限としては、15°が好ましく、30°がより好ましい、一方、燃料ノズル40の傾斜角度αの上限としては、75°が好ましく、60°がより好ましい。燃料ノズル40の傾斜角度αを前記下限以上とすることによって、燃料供給管10の開口が燃焼用空気噴出方向に大きくなり過ぎないので、燃料ノズル40の取付が容易になるとともに、熱応力に対する強度を確保しやすい。また、燃料ノズル40の傾斜角度αを前記上限以下とすることによって、窒素酸化物の生成を適切に抑制できる。
【0031】
乱流促進体50は、空気ノズル30が噴射する燃焼用空気の噴流を部分的に遮断することにより、燃焼排ガスがより径方向内側まで進入可能な領域を形成すると共に、燃焼用空気の乱流を形成する。これにより、燃焼排ガスの燃焼用空気の噴流への混合が促進されることによって燃焼用空気の酸素濃度を十分に低下させられるので、窒素酸化物の生成を高度に抑制できる。乱流促進体50は、例えば板状又はブロック状に形成され得る。また、乱流促進体50の表面には、例えばフィン等の燃焼用空気の乱流の形成を促進する構造を設けてもよい。
【0032】
乱流促進体50は、燃料ノズル40と一対一に対応して、燃焼用空気噴出方向視で燃料ノズル40と重なる周方向位置に配設されることが好ましく、燃料ノズル40の中心に一致する周方向位置に配設されることがより好ましい。これにより、主に燃料ガスと混合される領域の燃焼用空気の酸素濃度を低下させられるので、より効果的に窒素酸化物の生成を抑制できる。乱流促進体50の燃料ノズル40の中心に対する周方向位置のずれ角度と燃焼排ガスにおける窒素酸化物濃度の測定値との関係を図4に示す。なお、窒素酸化物濃度は、燃焼用空気の酸素濃度5%、相対湿度0%に換算した値である。
【0033】
また、乱流促進体50体の周方向の幅の下限としては、燃料ノズル40の外径の0.1倍が好ましく、0.2倍がより好ましい。一方、乱流促進体50体の周方向の幅の上限としては、燃料ノズル40の外径の2.0倍が好ましく、1.0倍がより好ましい。乱流促進体50体の周方向の幅を前記下限以上とすることによって、確実に乱流を生じさせて燃焼排ガスの燃焼用空気への混合を促進できる。また、乱流促進体50の周方向の幅を前記上限以下とすることによって、燃焼用空気は炉内に面する燃料供給管10の表面を過剰な高温域を形成することなく冷却できるため、燃料供給管10の熱劣化等を抑制できる。
【0034】
乱流促進体50は、燃焼用空気噴出方向視で空気ノズル30の開口を径方向に横断するよう配設されることが好ましい。つまり、乱流促進体50は、空気ノズル30を周方向に複数に分割するよう設けられることが好ましい。燃焼用空気の噴流を一次的に周方向に分断することで、乱流促進体50の下流側に回り込む燃焼用空気の乱れを大きくできるので、燃焼排ガスの燃焼用空気の噴流への混合をより効率的に促進できる。特に、乱流促進体50が空気ノズル30の内部で燃焼用空気の流路を周方向に分割することで、部分的に酸素濃度を低下させ効果的に窒素酸化物の生成を抑制することができる。
【0035】
内壁管60は、燃料供給管10の内側に配置され、燃料ガスの流路断面を環状に制限する。内壁管60は、燃料ノズル40の上流側で燃料ガスの流路断面積を減少させるよう拡径する拡径部61を有する。内壁管60が拡径部61を有することによって、燃料供給管10の先端部内側における燃料ガスの流速が大きくなるので、燃焼により温度が高くなりやすい燃料供給管10の先端部を燃料ガスで冷却することができ、ガスバーナ1の耐久性を向上できる。特に、燃料ガスは空気と比べて熱伝導率が大きいため、燃料ガスの流速を大きくすることによる燃料供給管10の冷却効果の増大は小さくないものとなる。特に、燃料ガスとして水素ガスを用いる場合、水素ガスの熱伝導率は、200℃において0.257W/mkであり、空気の200℃における熱伝導率0.038W/mkの7倍近いため、拡径部61による燃料供給管10の冷却効果の増大が顕著となる。
【0036】
封止板70は、燃料ガスの流路となる燃料供給管10と内壁管60との隙間を終端する。これにより、燃料ガスは、燃料ノズル40からのみ流出する。
【0037】
パイロットバーナ80は、パイロット燃焼用空気が供給されるパイロット空気管81と、パイロット空気管81の内側に配置され、パイロット燃料が供給されるパイロット燃料管82と、を有する。パイロットバーナ80は、パイロット空気管81の先端部においてパイロット燃料とパイロット燃焼用空気とを混合し、パイロット火炎を形成する。
【0038】
パイロットバーナ80と内壁管60との隙間には、冷却用空気が供給されてもよい。これにより、冷却用空気によって内壁管60を介して燃料ガスひいては燃料供給管10を冷却できるので、ガスバーナ1の耐久性を向上できる。冷却用空気は、燃料供給管10に供給される燃料ガスの流量に応じて流量が設定される燃焼用空気の一部を利用することができる。
【0039】
以上のように、ガスバーナ1は、空気ノズル30よりも下流側で、炉内の燃焼排ガスが混合されて酸素濃度が低下した燃焼用空気によって燃料ガスの燃焼を行うため、燃焼温度を低下させて窒素酸化物の生成を抑制できる。特に、ガスバーナ1では、燃料供給管10から延出する燃料ノズル40によって、燃焼用空気の噴流の外側の燃焼排ガスを巻き込んで酸素濃度が低下している領域に燃料ガスを流出させるので、燃焼温度を低減して窒素酸化物の生成を抑制できる。さらに、ガスバーナ1では、乱流促進体50が燃焼用空気の噴流を部分的に遮断することにより燃焼排ガスがより内側まで進入可能な領域を形成すると共に、燃焼用空気の乱流を形成するので、燃焼排ガスの燃焼用空気の噴流への混合を促進できる。これにより、ガスバーナ1は、燃焼用空気の酸素濃度をより低下させられるので、窒素酸化物の生成を十分に抑制できる。
【0040】
ボイラ100では、複数の水管111によって周囲を閉鎖された空間内にガスバーナ1が配設されるため、周方向で燃焼用空気の流れに偏りを生じさせない。このため、燃焼用空気の噴流の外側に周方向で均等な低圧領域が形成され、炉内の燃焼排ガスが燃焼用空気に巻き込まれるため、確実に窒素酸化物の生成を抑制しつつ、未燃物の発生を抑制できる。また、ボイラ100は、ガスバーナ1の燃焼排ガスを複数の水管111の軸方向に流す流路を画定する缶体110を採用したことで、軸方向の流速に偏りがなく燃焼による局所的な高温部分の形成を抑制できるだけでなく、缶体110における圧損を低減でき、送風機のエネルギーを抑制する効果が得られるとともに、燃料ガスの供給圧低減にも効果がある。したがって、ボイラ100は、窒素酸化物の生成を抑制しながら効率よく水蒸気を生成できる。
【0041】
図5に、ボイラ100の炉内における燃焼用空気及び燃焼排ガスの流れのシミュレーション結果を示す。乱流促進体50が存在する位置(図面左側)では、乱流促進体50が存在しない位置(図面右側)と比べて、外側の燃焼排ガスが径方向により内側で入り込むことができている。つまり、ガスバーナ1では、燃料ノズル40の近傍に供給される燃焼用空気に比較的多くの燃焼排ガスを混合することができる。このため、ガスバーナ1を備えるボイラ100は、窒素酸化物の生成を抑制できる。
【0042】
続いて、本発明の第2実施形態に係るガスバーナ1Aについて説明する。図6は、ガスバーナ1Aの構成を示す断面図である。なお、以降の説明において、先に説明した実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略することがある。このガスバーナ1Aは、図1のボイラ100において、ガスバーナ1に換えて使用することができる。
【0043】
本実施形態のガスバーナ1Aは、所定の燃焼用空気噴出方向に延びる燃料供給管10と、燃料供給管10の上流部を囲むよう配置されるウインドボックス20と、燃料供給管10の外側に配置されるようウインドボックス20から延出する空気ノズル30と、空気ノズル30よりも燃焼用空気噴出方向下流側で燃料供給管10から延出する複数の燃料ノズル40と、燃料供給管10の外周の空気ノズル30より下流側かつ燃料ノズル40より上流側に配設され、燃焼用空気の噴流を部分的に遮断する複数の乱流促進体50Aと、燃料供給管10の内側に配置される内壁管60Aと、燃料供給管10の先端で燃料供給管10と内壁管60Aとの隙間を封止する環状の封止板70と、内壁管60Aの内側に配置されるパイロット燃料管82と、を備える。
【0044】
乱流促進体50Aは、それぞれ燃料ノズル40に対応する周方向位置に、燃料ノズル40から十分な距離を置いた上流側に配設される。乱流促進体50Aは、空気ノズル30の下流側に配置されるため、取り付けが容易であり、寸法及び形状の修正も比較的容易であるため、燃料ガスの変更等に伴って窒素酸化物抑制のための設計変更を容易に行い得る。
【0045】
内壁管60Aは、拡径部を有さず、末端まで同じ径で延びる。ガスバーナ1Aでは、内壁管60Aとパイロット燃料管82との間にパイロット燃焼用空気が供給される。つまり、本実施形態における内壁管60Aは、パイロット燃焼用空気の流路を画定する。このため、ガスバーナ1Aでは、パイロット燃焼用空気によって内壁管を介して燃料ガス冷却することによって間接的に燃料供給管10を冷却する。このため、ガスバーナ1Aでは、パイロット火炎を形成しないときにもパイロット燃焼用空気を供給することが好ましい。この場合、空気ノズル30から噴出させる燃焼用空気の流量をパイロット空気の流量分だけ小さくしてもよい。
【0046】
本実施形態のガスバーナ1Aにおいても、乱流促進体50Aが燃焼ガスの燃焼用空気への混合を促進するため、燃焼温度を抑制し、窒素酸化物の生成を効果的に抑制できる。
【0047】
以上、本発明に係るガスバーナの好ましい実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例として、上述の実施形態における燃料供給管の内側の構造等は、単なる例示であって、任意に変更し得る。
【符号の説明】
【0048】
1,1A ガスバーナ
10 燃料供給管
20 ウインドボックス
30 空気ノズル
31 主筒部
32 フランジ部
33 案内筒部
40 燃料ノズル
50,50A 乱流促進体
60,60A 内壁管
61 拡径部
70 封止板
80 パイロットバーナ
81 パイロット空気管
82 パイロット燃料管
100 ボイラ
110 缶体
111 水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6