(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112175
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】メタン発酵処理装置の運転方法、およびメタン発酵処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20240813BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20240813BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
B09B3/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017066
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋弘
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004CA18
4D004CA22
4D004CB31
4D004CC07
4D004DA06
4D004DA10
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA07
4D059AA30
4D059BA12
4D059BF02
4D059BJ03
4D059BK05
4D059CA07
4D059CB10
4D059CB13
4D059DB40
4D059EA01
4D059EB01
(57)【要約】
【課題】メタン発酵処理装置における汚泥供給経路の閉塞を防止することができる技術を提供すること。
【解決手段】有機性廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵処理装置101の運転方法であって、メタン発酵槽1内のメタン発酵液を引き抜く引抜工程と、引き抜いたメタン発酵液の少なくとも一部を加温する加温工程と、加温したメタン発酵液の少なくとも一部をメタン発酵槽1へ返送する返送工程と、有機性廃棄物を加温したメタン発酵液の少なくとも一部と合流させる合流工程と、を備え、合流工程で得られる有機性廃棄物と加温したメタン発酵液との混合物の少なくとも一部を返送工程によりメタン発酵槽1へ返送する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵処理装置の運転方法であって、
メタン発酵槽内のメタン発酵液を引き抜く引抜工程と、
引き抜いたメタン発酵液の少なくとも一部を加温する加温工程と、
加温したメタン発酵液の少なくとも一部を前記メタン発酵槽へ返送する返送工程と、
前記有機性廃棄物を加温した前記メタン発酵液の少なくとも一部と合流させる合流工程と、
を備え、
前記合流工程で得られる前記有機性廃棄物と加温した前記メタン発酵液との混合物の少なくとも一部を前記返送工程により前記メタン発酵槽へ返送する、
メタン発酵処理装置の運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメタン発酵処理装置の運転方法において、
前記有機性廃棄物の固形物濃度を測定する濃度測定工程をさらに備え、
前記濃度測定工程で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である場合、前記有機性廃棄物を前記合流工程へ供給し、
前記濃度測定工程で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値未満である場合、前記有機性廃棄物を前記メタン発酵槽へ直接供給する、
メタン発酵処理装置の運転方法。
【請求項3】
請求項2に記載のメタン発酵処理装置の運転方法において、
前記濃度測定工程で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続する場合、前記メタン発酵槽から引き抜かれた前記メタン発酵液の少なくとも一部を、前記有機性廃棄物が前記メタン発酵槽へ直接供給される経路を介して前記メタン発酵槽へ供給する、
メタン発酵処理装置の運転方法。
【請求項4】
有機性廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵処理装置であって、
前記有機性廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽からメタン発酵液を引き抜く引抜手段と、
前記引抜手段で引き抜いたメタン発酵液の少なくとも一部を加温する加温手段と、
前記加温手段により加温されたメタン発酵液の少なくとも一部を前記メタン発酵槽へ返送する返送経路を含む下流側返送経路と、
前記有機性廃棄物を前記下流側返送経路へ供給する第1供給経路と、
前記第1供給経路内の前記有機性廃棄物が前記下流側返送経路内に供給されるように構成される供給部と、
を備え、
前記供給部は前記加温手段よりも下流側に位置する、
メタン発酵処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のメタン発酵処理装置において、
前記第1供給経路に設けられた前記有機性廃棄物の固形物濃度を測定する濃度測定手段と、
前記濃度測定手段と前記供給部との間から分岐して前記メタン発酵槽へ接続された第2供給経路と、
を備える、
メタン発酵処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のメタン発酵処理装置において、
前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である場合、前記有機性廃棄物を前記第1供給経路を介して前記供給部へ供給し、
前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値未満である場合、前記有機性廃棄物を前記第2供給経路を介して前記メタン発酵槽へ直接供給する、
メタン発酵処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のメタン発酵処理装置において、
前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続する場合、前記メタン発酵槽から引き抜かれた前記メタン発酵液の少なくとも一部を前記第2供給経路を介して前記メタン発酵槽へ供給する、
メタン発酵処理装置。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載のメタン発酵処理装置において、
前記第1供給経路および前記第2供給経路には、前記有機性廃棄物の供給経路を切り替えるための少なくとも一つ以上のバルブが設けられており、前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度に基づいて、前記少なくとも一つ以上のバルブの開閉を自動制御するバルブ制御装置を備える、
メタン発酵処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵処理装置の運転方法、およびメタン発酵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理で生じる汚泥やバイオマス等の有機性廃棄物の処分において、減容化・エネルギー化を目的としてメタン発酵(嫌気性発酵)が広く行われている。メタン発酵の原料である有機性廃棄物は、ポンプ等でメタン発酵槽へ供給されることが一般的であるが、固形物濃度が高い場合、供給配管内部での閉塞が生じたり、ポンプ容量の不足で搬送できなくなったりする虞がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機性汚泥をメタン発酵槽へ供給する投入汚泥管を加温することにより、有機性汚泥による投入汚泥管内の閉塞を長期間抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法の場合、投入汚泥管を加温するための設備、例えば、多重管構造の投入汚泥管とし内管に有機性汚泥を供給、内管と外管の間に温水を供給する設備を採用する必要があり、設備構成が複雑となることから設備費用や工事期間が増大する可能性がある。また、投入汚泥管を加温する必要があり、燃料や電力使用量が増大する可能性もある。一方、別の方法として閉塞時に配管内に水を注入するという方法も考えられるが、固形物濃度が低下し、後段のメタン発酵槽の水理学的滞留時間の低下を引き起こす可能性がある。更に、有機性廃棄物の固形物濃度を自動計測し、運転制御に利用しているような場合、水の注入により急激な濃度変化が生じ、運転制御に悪影響を与える虞がある。
【0006】
本発明の目的は、メタン発酵処理装置における汚泥供給経路の閉塞を防止することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願で開示するメタン発酵処理装置の運転方法は、有機性廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵処理装置の運転方法であって、メタン発酵槽内のメタン発酵液を引き抜く引抜工程と、引き抜いたメタン発酵液の少なくとも一部を加温する加温工程と、加温したメタン発酵液の少なくとも一部を前記メタン発酵槽へ返送する返送工程と、前記有機性廃棄物を加温した前記メタン発酵液の少なくとも一部と合流させる合流工程と、を備え、前記合流工程で得られる前記有機性廃棄物と加温した前記メタン発酵液との混合物の少なくとも一部を前記返送工程により前記メタン発酵槽へ返送する。
【0008】
上記構成によれば、引抜工程においてメタン発酵槽から引き抜いたメタン発酵液を、加温工程において熱交換器等の加温装置で加温し、加温したメタン発酵液を返送工程でメタン発酵槽へ返送する循環経路において、有機性廃棄物を加温したメタン発酵液と熱交換器の下流側で合流させることで、熱交換器内部の閉塞を防止することができる。また、循環経路のポンプの吐出圧を利用することで配管の閉塞を防止することができるとともに、供給された有機性廃棄物とメタン発酵液の混合を、循環経路内において促進させることができる。さらに、供給経路の閉塞解消のための注水が不要となるため、処理液中の固形分の急激な濃度変化が生じないことから、後段のメタン発酵槽の水理学的滞留時間の低下を抑制することができ、運転制御への悪影響を防ぐことができる。
【0009】
前記有機性廃棄物の固形物濃度を測定する濃度測定工程をさらに備え、前記濃度測定工程で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である場合、前記有機性廃棄物を前記合流工程へ供給し、前記濃度測定工程で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値未満である場合、前記有機性廃棄物を前記メタン発酵槽へ直接供給してもよい。
【0010】
この構成によると、濃度測定工程において有機性廃棄物の固形物濃度を測定し、その固形物濃度に基づき、有機性廃棄物の供給先を切り替えることで、閉塞が生じにくい固形物濃度のときは有機性廃棄物を循環経路を経ずに供給することになり、循環経路のポンプの負荷を軽減しつつ汚泥供給経路および循環経路における閉塞を防止することができ、有機性廃棄物をメタン発酵槽へ供給することができる。
【0011】
前記濃度測定工程で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続する場合、前記メタン発酵槽から引き抜かれた前記メタン発酵液の少なくとも一部を、前記有機性廃棄物が前記メタン発酵槽へ直接供給される経路を介して前記メタン発酵槽へ供給してもよい。
【0012】
この構成によると、定期的にメタン発酵槽から引き抜かれたメタン発酵液の少なくとも一部を有機性廃棄物がメタン発酵槽へ直接供給される経路を介してメタン発酵槽へ直接供給することで、当該経路内に固形分が固着することを防ぐことができる。
【0013】
本願で開示するメタン発酵処理装置は、有機性廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵処理装置であって、前記有機性廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽からメタン発酵液を引き抜く引抜手段と、前記引抜手段で引き抜いたメタン発酵液の少なくとも一部を加温する加温手段と、前記加温手段により加温されたメタン発酵液の少なくとも一部を前記メタン発酵槽へ返送する返送経路を含む下流側返送経路と、前記有機性廃棄物を前記下流側返送経路へ供給する第1供給経路と、前記第1供給経路内の前記有機性廃棄物が前記下流側返送経路内に供給されるように構成される供給部と、を備え、前記供給部は前記加温手段よりも下流側に位置する。
【0014】
上記構成によると、メタン発酵槽から引き抜いたメタン発酵液を、熱交換器等の加温装置で加温し、加温したメタン発酵液を下流側返送経路を介してメタン発酵槽へ返送する循環経路において、有機性廃棄物を加温したメタン発酵液と熱交換器の下流側に位置する供給部で合流させることで、熱交換器内部の閉塞を防止することができる。また、循環経路のポンプの吐出圧を利用することで配管の閉塞を防止することができるとともに、供給された有機性廃棄物とメタン発酵液の混合を、循環経路内において促進させることができる。さらに、供給経路の閉塞解消のための注水が不要となるため、処理液中の固形分の急激な濃度変化が生じないことから、後段のメタン発酵槽の水理学的滞留時間の低下を抑制することができ、運転制御への悪影響を防ぐことができる。
【0015】
また、前記第1供給経路に設けられた前記有機性廃棄物の固形物濃度を測定する濃度測定手段と、前記濃度測定手段と前記供給部との間から分岐してメタン発酵槽へ接続された第2供給経路と、を備えてもよい。
【0016】
上記構成によると、濃度測定手段により有機性廃棄物の固形物濃度を測定し、その固形物濃度に基づき、有機性廃棄物の供給先を切り替えることで、閉塞が生じにくい固形物濃度のときは有機性廃棄物を循環経路を経ずに供給することになり、循環経路のポンプの負荷を軽減しつつ汚泥供給経路および循環経路における閉塞を防止することができ、有機性廃棄物をメタン発酵槽へ供給することができる。
【0017】
また、前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である場合、前記有機性廃棄物を前記第1供給経路を介して前記供給部へ供給し、前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値未満である場合、前記有機性廃棄物を前記第2供給経路を介して前記メタン発酵槽へ直接供給してもよい。
【0018】
上記構成によると、濃度測定手段において有機性廃棄物の固形物濃度を測定し、その固形物濃度に基づき、有機性廃棄物の供給先を切り替えることで、閉塞が生じにくい固形物濃度のときは有機性廃棄物を循環経路を経ずに供給することになり、循環経路のポンプの負荷を軽減しつつ汚泥供給経路および循環経路における閉塞を防止することができ、有機性廃棄物をメタン発酵槽へ供給することができる。
【0019】
また、前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続する場合、前記メタン発酵槽から引き抜かれた前記メタン発酵液の少なくとも一部を前記第2供給経路を介して前記メタン発酵槽へ供給してもよい。
【0020】
上記構成によると、定期的にメタン発酵槽から引き抜かれたメタン発酵液の少なくとも一部を第2供給経路を介してメタン発酵槽へ直接供給することで、第2供給経路内に固形分が固着することを防ぐことができる。
【0021】
また、前記第1供給経路および前記第2供給経路には、前記有機性廃棄物の供給経路を切り替えるための少なくとも一つ以上のバルブが設けられており、前記濃度測定手段で測定した前記有機性廃棄物の固形物濃度に基づいて、前記少なくとも一つ以上のバルブの開閉を自動制御するバルブ制御装置を備えてもよい。
【0022】
上記構成によると、濃度測定手段において有機性廃棄物の固形物濃度を測定し、その固形物濃度に基づき、有機性廃棄物の供給先をバルブ制御装置によって供給経路に設置されたバルブを開閉して切り替えることで、閉塞が生じにくい固形物濃度のときは有機性廃棄物を循環経路を経ずに供給することになり、循環経路のポンプの負荷を軽減しつつ汚泥供給経路および循環経路における閉塞を防止することができ、有機性廃棄物をメタン発酵槽へ供給することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、メタン発酵処理装置における汚泥供給経路の閉塞を防止することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るメタン発酵処理装置を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るメタン発酵処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0026】
本発明の処理方法における処理対象の有機性廃棄物は、下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などである。これらの有機性廃棄物は、それぞれ単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。以下では、処理対象として下水汚泥を例にとって、その処理について説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態に係るメタン発酵処理装置101を示す図である。
図1に示すように、メタン発酵処理装置は、主に、メタン発酵槽としての消化槽1から構成される。
【0028】
(消化槽)
消化槽1は、下水汚泥(有機性廃棄物)を嫌気性発酵処理するタンクである。消化槽1に供給される原料汚泥の固形物濃度(TS:Total Solids)は、例えば、3.0~10.0%が好ましい。消化槽1は、中温発酵処理においては30~45℃で滞留時間15~30日程度、高温発酵処理においては50~60℃で滞留時間7~20日程度で運転される。消化槽1内で下水汚泥が発酵処理されると、消化汚泥(メタン発酵処理液)の固形物濃度は、メタン発酵菌の分解作用により、供給された原料汚泥の固形物濃度の約半分となる。なお、消化槽1は、鋼板製のタンクであってもよく、コンクリート製のタンクであってもよい。
【0029】
消化槽1には、消化槽1に投入された下水汚泥を攪拌するために、攪拌機5が取付けられている。
図1には、水平方向に回転する複数段の羽根5a(インペラ)で汚泥を攪拌する攪拌機5が示されている。攪拌機5の駆動源は例えば電動機5bである。攪拌機5は、一般的に、平面視において消化槽1の槽中心部に配置される。通常運転時の攪拌機5による消化槽1内の汚泥の流れを矢印Dで示すように、通常運転時、羽根5aの回転により、消化槽1の槽中心部に下降流が発生する。この下降流は消化槽1の底部で広がり反転して上昇流となる。なお、攪拌機5(羽根5a)は逆回転されてもよい。攪拌機5が逆回転されると、消化槽1内の汚泥の流れは通常運転時とは反対の流れとなる。すなわち、消化槽1の槽中心部で上昇流が発生し、この上昇流は、消化槽1の上部で広がり反転して下降流となる。なお、本実施形態のようなインペラ式の攪拌機5に代えて、スクリュー式やドラフトチューブの攪拌機など他の形式の攪拌機が用いられてもよい。
【0030】
下水汚泥の嫌気性発酵により消化槽1の中で消化ガスが発生する。消化ガスは、メタン50~60容量%、二酸化炭素が約40~50容量%のガス(バイオガス)である。発生した消化ガスは、消化槽1の中から取り出され、消化槽1の加温のための燃料として利用されたり、発電設備(不図示)の燃料として利用されたりする。すなわち、下水汚泥を嫌気性発酵処理することで、下水汚泥が有するエネルギーを消化ガス(ガスエネルギー)として回収することができる。
【0031】
(引抜装置、および引抜工程)
引抜装置2(引抜手段)は、消化槽1内から消化汚泥(メタン発酵液)を引き抜き、下流の加温装置3へ供給するための装置である。引抜工程は、消化槽1内から消化汚泥(メタン発酵液)を引き抜き、加温工程へ供給する工程である。引抜装置2は、消化槽1の側面に吸引口が配置される引抜管2aと、引抜管2aに配設されるポンプ15とを有する。
【0032】
(加温装置、加温工程)
加温装置3(加温手段)は、引抜装置2により消化槽1内から引き抜かれた消化汚泥(メタン発酵液)を加温するための装置である。加温工程は、引抜工程において消化槽1内から引き抜かれた消化汚泥(メタン発酵液)を加温する工程である。加温装置3は、加温器として熱交換器3aを有する。熱交換器3aは、消化汚泥を加温する間接式熱交換器である。熱交換器3aには、ボイラー(不図示)などの温水源から温水が供給される。ポンプ15の駆動により消化槽1から引き抜かれた消化汚泥(メタン発酵液)は、熱交換器3aにて温水との間接接触により加温された後、熱交換器3aと消化槽1の上下部とを接続する下流側返送経路4を介して、消化槽1の上部から消化槽1内に戻される。
【0033】
(供給部、および合流工程)
供給部8は、貯留槽20から第1供給経路11(汚泥供給経路10)を介して供給された下水汚泥と加温装置3により加温された消化汚泥とが合流するように、第1供給経路11と下流側返送経路4とが接続された部分である。合流工程は、貯留槽20から第1供給経路11を介して供給された下水汚泥と加温工程において加温された消化汚泥とが合流する工程である。供給部8(合流工程)において、合流した下水汚泥と加温された消化汚泥の混合物は、下流側返送経路4を介して消化槽1の上部から消化槽1内に供給される。なお、供給部8を設ける箇所は第1供給経路11を下流側返送経路4と接続できれば特に限定されないが、下流側返送経路4が垂直方向に長く伸びる箇所で閉塞が生じやすいことから、加温装置3と下流側返送経路4との接続部、または当該接続部付近(具体的には接続部から循環経路下流側へ5.0m以内)に設けることが好ましい。また、第1供給経路11内の汚泥の閉塞を防止するために、ポンプ16は、ポンプ16の吐出側を供給部8に直結するか、ポンプ16の吐出側の取合と供給部8との間の距離が5.0m以内になるように第1供給経路11に配設されることが好ましい。この構成により、下水汚泥の固形物濃度が高くなっても第1供給経路11内で閉塞が生じることなく、消化槽1の上部まで下水汚泥と加温された消化汚泥との混合物を供給することができる。
【0034】
(返送経路、及び返送工程)
返送経路は、上流側返送経路(引抜装置2)と下流側返送経路4とから構成される。上流側返送経路は、加温装置3の上流側に位置する返送経路であり、メタン発酵槽1からメタン発酵液を引き抜く引抜管2aが設けられている。また、下流側返送経路4は、加温装置3の下流側に位置する返送経路であり、供給管4aが設けられている。下流側返送経路4は、供給部8において合流した下水汚泥と加温された消化汚泥との混合物を、消化槽1の上部から消化槽1に供給する経路である。返送工程は、合流工程において合流した下水汚泥と加温された消化汚泥との混合物を、消化槽1の上部から消化槽1に供給する工程である。上記のとおり、下流側返送経路4は、供給部8の下流側に設けられ、ポンプ15および/またはポンプ16の吐出圧により、下水汚泥と加温された消化汚泥との混合物が、下流側返送経路4を介して、消化槽1に供給される。なお、本実施形態では下水汚泥と加温された消化汚泥との混合物を消化槽1の上部から消化槽1に供給したが、上部からの供給に限定されず、消化槽1の底部や中間部分から供給しても良い。
【0035】
図2は、本発明の第2実施形態に係るメタン発酵処理装置102を示す図である。第1実施形態のメタン発酵処理装置101との相違点は、第1の汚泥供給経路10(以下、第1供給経路11)から分岐する第2の汚泥供給経路10(以下、第2供給経路12)と、メタン発酵液の引抜管2aから分岐して第2供給経路12と連結する連結経路13と、下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度を測定する濃度計7とを第2実施形態のメタン発酵処理装置102がさらに備える点である。第1実施形態のメタン発酵処理装置101と、第2実施形態のメタン発酵処理装置102とで共通する機器については、同一の符号を付している。
【0036】
メタン発酵処理装置102は、下水汚泥(有機性廃棄物)を消化槽1へ直接供給する第2供給経路12を備えており、第2供給経路12は、第1供給経路11から分岐し、その下流端は、消化槽1に直接接続されている。ここで、直接供給とは、下水汚泥(有機性廃棄物)を供給部8に供給せずに、第2供給経路12を介して、消化槽1へ供給することをいう。また、メタン発酵処理装置102は、メタン発酵液の引抜管2aから分岐して第2供給経路12と連結する連結経路13を備えている。第1供給経路11、第2供給経路12、及び連結経路13には、それぞれバルブ(開閉弁)V1及びV2、V3、V4が設けられている。これらのバルブV1~V4は、自動制御によるバルブ切り替えによって、下水汚泥(有機性廃棄物)やメタン発酵液の供給先を切り替えてもよく、また、手動によるバルブの開閉によって、下水汚泥(有機性廃棄物)やメタン発酵液の供給先を切り替えてもよい。
【0037】
(濃度計、および濃度測定工程)
濃度計7(濃度測定手段)は、ポンプ16の作動により貯留槽20から排出された下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度を測定する装置である。濃度測定工程は、ポンプ16の作動により貯留槽20から排出された下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度を測定する工程である。濃度計7は、
図2に示されるように、ポンプ16と供給部8との間の第1供給経路11に設置されていてもよく、貯留槽20内部に設置されていてもよい(不図示)。また、濃度計7による測定以外での、たとえば、手動(汚泥を採取して秤量し、乾燥前後の質量差から固形物濃度を計算する等)で下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度を測定するようにしてもよい。
【0038】
濃度計7として、超音波式濃度計、マイクロ波式濃度計、近赤外光式濃度計などが用いられる。本実施形態では、一例としてインラインタイプの濃度計7が用いられており、汚泥の全量が濃度計7を通過する。濃度計7とコントローラ6とはケーブルで接続されており、濃度計7の検出信号はケーブルを介してコントローラ6に入力される。
【0039】
コントローラ6は、濃度計7の測定値に基づいて、例えば、次のように、バルブ制御部として機能してもよい。コントローラ6は、濃度計7で測定した下水汚泥の固形物濃度が所定値以上である場合、第1供給経路11に設置されたバルブV1及びバルブV2を開弁して、下水汚泥を供給部8へ供給させる。また、コントローラ6は、濃度計7で測定した下水汚泥の固形物濃度が所定値未満である場合、バルブV2を閉弁し、第2供給経路12に設置されたバルブV3を開弁して、下水汚泥を消化槽1へ直接供給させる。下水汚泥の固形物濃度に基づいて、各供給経路に設置されたバルブの開閉を制御し、下水汚泥の供給先を切り替えることで、閉塞が生じにくい固形物濃度のときは下水汚泥を循環経路を経ずに供給することになり、循環経路のポンプの負荷を軽減しつつ汚泥供給経路および循環経路における閉塞を防止することができ、下水汚泥を消化槽1へ供給することができる。
【0040】
消化槽1に供給される下水汚泥の固形物濃度の所定値は、下水汚泥の性状を考慮して適宜設定して良いが、例えば、3.0~10.0%が好ましい。また、ポンプ16の仕様を選定するときに設定された搬送物の設計濃度に対し、設計濃度の1.05~1.5倍、好ましくは1.1~1.3倍に対応する固形物濃度を所定値として設定しても良い。例えば、設計濃度が8.0%である場合は、所定値を8.4~12.0%、好ましくは8.8~10.4%の範囲内で設定される。さらに、複数の所定値を設定しても良く、例えば、第1設定値と第2設定値を設け、第1設定値が第2設定値よりも大きな値であるとき、第1設定値以上となった場合は下水汚泥を供給部8へ供給させ、第2設定値以下となった場合は下水汚泥を供給部8に供給させずに直接消化槽1へ供給させても良い。
【0041】
コントローラ6は、濃度計7の測定値で測定した固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続すると判断した場合、バルブV1及びV2を閉弁し、バルブV3と連結経路13に設置されたバルブV4とを開弁して、メタン発酵槽1から引き抜かれたメタン発酵液の少なくとも一部を、第2供給経路12を介してメタン発酵槽1へ供給させるように、制御構成されてもよい。定期的にメタン発酵槽1から引き抜かれたメタン発酵液の少なくとも一部を、連結経路13から第2供給経路12を介して消化槽1に供給することで、第2供給経路12内に固形分が固着することを防ぐことができる。ここで、所定期間とは、例えば、24時間、48時間など、あるいは1週間や2週間などに設定することも可能である。但し、所定時間をあまり長い時間に設定すると、第2供給経路12内に固形分が固着することとなるため、1週間に1回程度、メタン発酵槽1から引き抜かれたメタン発酵液の少なくとも一部を、連結経路13から第2供給経路12を介して消化槽1(メタン発酵槽)へ供給することが好ましい。
【0042】
尚、上記の実施形態において、コントローラ6は、所謂コンピュータを含み、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。コントローラ6が有する上記の各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のプログラムとが協働して構築されている。換言すれば、当該プログラムは、メタン発酵処理装置102が備えるコンピュータに各種プログラムが有する処理を実行させ、メタン発酵処理装置102の運転を制御する。このように、メタン発酵処理装置102の処理や動作をプログラムやメタン発酵処理装置の運転方法として置き換えることができる。なお、コントローラ6が含むコンピュータは一台に限定されず、複数のコンピュータに機能を分散させて設けるものであってもよい。すなわち、コントローラは複数であってもよい。なお、コントローラ6を用いずに、またはコントローラ6をそもそも設けずに、コントローラ6が行う制御(例えば運転条件の変更)を作業員が手動で行ってもよい。また、供給汚泥の固形物濃度の計測は、作業員等によって手動で行われてもよい。すなわち、作業員が、計測器の数値に基づいて、各バルブの制御を行ってもよい。
【0043】
(効果)
本実施形態のメタン発酵処理装置の運転方法は、消化槽1(メタン発酵槽)内の消化汚泥(メタン発酵液)を引き抜く引抜工程と、引き抜いた消化汚泥(メタン発酵液)を加温する加温工程と、加温した消化汚泥(メタン発酵液)を消化槽1(メタン発酵槽)へ返送する返送工程と、下水汚泥(有機性廃棄物)を加温した消化汚泥(メタン発酵液)と合流させる合流工程と、を備え、合流工程で得られる下水汚泥(有機性廃棄物)と加温した消化汚泥(メタン発酵液)との混合物を返送工程により消化槽1(メタン発酵槽)へ返送する。
【0044】
上記運転方法によると、次のような効果が得られる。
【0045】
引抜工程において消化槽1(メタン発酵槽)から引き抜いた消化汚泥(メタン発酵液)を加温し、加温工程において加温した消化汚泥(メタン発酵液)を返送工程で消化槽1(メタン発酵槽)へ返送する循環経路において、下水汚泥(有機性廃棄物)を加温した消化汚泥(メタン発酵液)と熱交換器3aの下流側で合流させることで、熱交換器3a内部の閉塞を防止することができる。なお、下水汚泥(有機性廃棄物)を消化汚泥(メタン発酵液)と熱交換器3aの上流側で合流させて熱交換器3aを通すと、下水汚泥のような有機性廃棄物には、配管閉塞の原因となる毛髪等が含まれているため、スパイラル方式等の原料流路が狭くなる熱交換器3aでは、内部で毛髪が絡みつき閉塞を引き起こす虞がある。また、農作物残渣のような有機性廃棄物には、茎や葉等の繊維状物が含まれていることがあり、こちらも同様に、有機性廃棄物とメタン発酵槽から引き抜いたメタン発酵液を熱交換器3aの上流側で合流させて熱交換器3aを通すと、熱交換器3a内部で閉塞を起こす虞がある。
【0046】
また、引抜工程において消化槽1(メタン発酵槽)から引き抜いた消化汚泥(メタン発酵液)を加温し、加温工程において加温した消化汚泥(メタン発酵液)を返送工程で消化槽1(メタン発酵槽)へ返送する循環経路において、循環経路のポンプの吐出圧を利用することで供給配管の閉塞を防止することができるとともに、供給された汚泥とメタン発酵液の混合を、循環経路内において促進させることができる。さらに、汚泥供給経路10の閉塞解消のための注水が不要となるため、処理液中の固形分の急激な濃度変化が生じないことから、後段の消化槽1(メタン発酵槽)の水理学的滞留時間の低下を抑制することができ、運転制御への悪影響を防ぐことができる。
【0047】
下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度を測定する濃度測定工程をさらに備え、濃度測定工程で測定した下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度が所定値以上である場合、下水汚泥(有機性廃棄物)を合流工程へ供給し、濃度測定工程で測定した下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度が所定値未満である場合、下水汚泥(有機性廃棄物)を消化槽1(メタン発酵槽)へ直接供給することが好ましい。これによれば、下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度によりその供給先を切り替えることで、閉塞が生じにくい固形物濃度のときは下水汚泥(有機性廃棄物)を循環経路を経ずに供給することになり、循環経路のポンプ15の負荷を軽減しつつ汚泥供給経路および循環経路における閉塞を防止することができ、下水汚泥(有機性廃棄物)を消化槽1(メタン発酵槽)へ供給することができる。
【0048】
濃度測定工程で測定した下水汚泥(有機性廃棄物)の固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続する場合、メタン発酵槽から引き抜かれたメタン発酵液の少なくとも一部を、第2供給経路12を介して消化槽1(メタン発酵槽)へ供給することが好ましい。これによれば、定期的にメタン発酵液を、第2供給経路12を介して消化槽1(メタン発酵槽)へ供給することで、第2供給経路12内に固形分が固着することを防ぐことができる。
【0049】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態の各構成を適宜組み合わせたり、上記の実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。例えば、上記の実施形態は、次のように変更可能である。
【0050】
第1実施形態の説明では、濃度計7、および濃度測定工程を備えていない例を示したが、濃度計7、濃度測定工程を備えていてもよい。
【0051】
第1実施形態の説明では、引抜装置2と熱交換器3aの間(熱交換器上流側)や熱交換器3aとメタン発酵槽1との間(熱交換器下流側)に分岐を設けていない例を示したが、他設備にメタン発酵液を送る分岐経路を別途設けてもよい。
【0052】
上記の実施形態の説明では、有機性廃棄物を固液分離する固液分離装置を備えていない例を示したが、貯留槽20の上流側に固液分離装置を設けてもよい。また、第2実施形態の説明では、濃度計7で測定した有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続する場合、メタン発酵槽1から引き抜かれたメタン発酵液の少なくとも一部を、第2供給経路12を介してメタン発酵槽1へ供給している例を示したが、濃度計7で測定した有機性廃棄物の固形物濃度が所定値以上である期間が所定期間以上継続する場合、貯留槽20の上流側に設けた固液分離装置で有機性廃棄物の固形物濃度が所定値未満となるように濃度調整を行い、濃度調整後の有機性廃棄物を第2供給経路12を介してメタン発酵槽1へ直接供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のメタン発酵処理装置の運転方法、およびメタン発酵処理装置は、下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、建築廃材、古紙・廃止などの紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などの様々な有機性廃棄物を分解処理し、その分解処理物を原料としてメタンを生成する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:消化槽(メタン発酵槽)
2:引抜装置(上流側返送経路)
3:加温装置(加温手段)
4:下流側返送経路
7:濃度計(濃度測定手段)
8:供給部
11:第1供給経路
12:第2供給経路
101、102:メタン発酵処理装置
V1~4:バルブ