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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112179
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】アームレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20240813BHJP
   B60N 3/10 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017072
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151760
【氏名又は名称】株式会社東洋シート
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡川 雅則
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B087DC01
3B087DE03
3B088LA02
3B088LB02
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制した上で、使用時に表皮材が強く押されて引っ張られた場合であっても、表皮材に形成されている係止孔が物品ホルダーの周縁部からはみ出さないようにして見栄えを良好に保てるようにする。
【解決手段】アームレスト本体部10には、ホルダー収容凹部10aが設けられている。表皮材20におけるホルダー収容凹部10aに対応する部分には、ホルダー挿入孔20Aが形成されている。表皮材20には、第1係止孔21及び第2係止孔22が形成されている。表皮材20のホルダー挿入孔20A内には、第1係止孔21近傍から物品ホルダー30の底部31外面を通って第2係止孔22近傍まで延びる第1連結片25が表皮材20と同一の部材で構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品ホルダーを有するアームレスト本体部と、前記アームレスト本体部を覆う表皮材とを備えたアームレストであって、
前記アームレスト本体部には、前記物品ホルダーが収容されるホルダー収容凹部が形成され、
前記表皮材における前記ホルダー収容凹部に対応する部分には、前記物品ホルダーが挿入されるホルダー挿入孔が形成され、
前記表皮材には、前記アームレスト本体部に係止する第1係止孔及び第2係止孔が形成され、
前記表皮材の前記ホルダー挿入孔内には、前記第1係止孔が形成された部分から前記物品ホルダーの底部外面を通って前記第2係止孔が形成された部分まで延びる第1連結片が当該表皮材と同一の部材で構成されていることを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
請求項1に記載のアームレストにおいて、
前記第1連結片は、前記表皮材に設けられた切れ込みによって形成されていることを特徴とするアームレスト。
【請求項3】
請求項1に記載のアームレストにおいて、
前記物品ホルダーは、平面視で所定方向に長い形状を有しており、
前記第1係止孔は、前記物品ホルダーの一方の長辺部分の中間部に対応するように配置され、
前記第2係止孔は、前記物品ホルダーの他方の長辺部分の中間部に対応するように配置され、
前記第1連結片は、前記物品ホルダーの底部外面の長手方向中間部を通るように配置されることを特徴とするアームレスト。
【請求項4】
請求項3に記載のアームレストにおいて、
複数の前記第1連結片が前記物品ホルダーの長手方向に並ぶように設けられていることを特徴とするアームレスト。
【請求項5】
請求項3に記載のアームレストにおいて、
前記表皮材には、前記アームレスト本体部に係止する第3係止孔及び第4係止孔が形成され、
前記第3係止孔は、前記物品ホルダーの一方の短辺部分の中間部に対応するように配置され、
前記第4係止孔は、前記物品ホルダーの他方の短辺部分の中間部に対応するように配置され、
前記表皮材の前記ホルダー挿入孔内には、前記第3係止孔近傍から前記物品ホルダーの底部外面を通って前記第4係止孔近傍まで延びる第2連結片が当該表皮材と同一の部材で構成されていることを特徴とするアームレスト。
【請求項6】
請求項5に記載のアームレストにおいて、
前記第1連結片の中間部と前記第2連結片の中間部とは一体化されていることを特徴とするアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車等で使用されるアームレストに関し、特に物品ホルダーを有する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車には、物品ホルダーを有するアームレストが設けられることがある。特許文献1のアームレストは、ウレタン製のアームレスト本体部と、アームレスト本体部を覆う表皮材とを備えている。アームレスト本体部には物品ホルダーが収容されるホルダー収容凹部が形成されており、また、表皮材にはホルダー収容凹部に対応する部分にホルダー挿入孔が形成されている。表皮材のホルダー挿入孔の周囲には、アームレスト本体部に設けられている爪部に係止する複数の係止孔が開口部の周方向に互いに間隔をあけて形成されており、係止孔の周縁部が爪部に係止することにより表皮材におけるホルダー挿入孔の周囲の部分がアームレスト本体部に固定される。また、物品ホルダーは、表皮材のホルダー挿入孔からアームレスト本体部のホルダー収容凹部に挿入された状態で取り付けられる。
【0003】
また、特許文献1では、表皮材のホルダー挿入孔の周縁部における互いに離れた部分同士を連結する連結片が表皮材の一部を利用して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3206101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、表皮材の連結片が物品ホルダーの底部を通るように形成されているので、物品ホルダーを取り付けることで連結片が物品ホルダーの底部によって下へ向けて押圧される。これにより、表皮材のホルダー挿入孔の周縁部が物品ホルダーの周縁部からはみ出さないようになると考えられる。また、特許文献1では、連結片が表皮材の一部で構成されているので、部品点数を削減できるという効果を奏することもできる。
【0006】
ところが、表皮材におけるホルダー挿入孔の周縁部には複数の係止孔が設けられており、各係止孔はアームレスト本体部に設けられている爪部に係止した状態になっている。この状態で、例えば乗員が表皮材を強く押して表皮材が引っ張られると、係止孔はホルダー挿入孔の周囲に位置していることから、係止孔の周縁部の一部が物品ホルダーのフランジ部からはみ出してしまい、見栄えが悪化するおそれがある。
【0007】
ここで、特許文献1の連結片は、複数の係止孔の間の部分同士を連結するように設けられているため、係止孔から離れた部分同士を連結するものに留まっている。したがって、係止孔の周縁部の一部が物品ホルダーのフランジ部からはみ出してしまうことを連結片によって抑制するのは困難であった。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、部品点数の増加を抑制した上で、使用時に表皮材が強く押されて引っ張られた場合であっても、表皮材に形成されている係止孔が物品ホルダーの周縁部からはみ出さないようにして見栄えを良好に保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示では、物品ホルダーを有するアームレスト本体部と、前記アームレスト本体部を覆う表皮材とを備えたアームレストを前提とすることができる。前記アームレスト本体部には、前記物品ホルダーが収容されるホルダー収容凹部が形成されている。前記表皮材における前記ホルダー収容凹部に対応する部分には、前記物品ホルダーが挿入されるホルダー挿入孔が形成されている。前記表皮材には、前記アームレスト本体部に係止する第1係止孔及び第2係止孔が形成されている。前記表皮材の前記ホルダー挿入孔内には、前記第1係止孔が形成された部分から前記物品ホルダーの底部外面を通って前記第2係止孔が形成された部分まで延びる第1連結片が当該表皮材と同一の部材で構成されている。
【0010】
この構成によれば、表皮材の第1係止孔及び第2係止孔をそれぞれアームレスト本体部に係止させるとともに、物品ホルダーを表皮材のホルダー挿入孔からアームレスト本体部のホルダー収容凹部に収容することで、アームレストが得られる。表皮材の第1連結片は物品ホルダーの底部によって下方へ押されるので、第1連結片には下向きの引っ張り力が作用した状態になる。この第1連結片は、表皮材における第1係止孔が形成された部分及び第2係止孔が形成された部分を連結しているので、第1係止孔近傍と第2係止孔近傍とが第1連結片によって連結されることになる。これにより、乗員によって表皮材が強く押されて引っ張られたとしても、第1係止孔及び第2係止孔の周縁部が物品ホルダーの周縁部からはみ出しにくくなり、見栄えが良好に保たれる。また、第1連結片は表皮材と同一の部材で構成されているので、部品点数の増加が抑制され、縫製作業が不要になり、その結果、製造コストが低減される。
【0011】
前記第1連結片は、前記表皮材における前記ホルダー挿入孔内に設けられた切れ込みによって形成することができる。これにより、縫製が不要な第1連結片を簡単に得ることができる。
【0012】
前記物品ホルダーは、平面視で所定方向に長い形状を有していてもよく、所定方向とは例えば車幅方向とすることができる。この場合、前記第1係止孔は、前記物品ホルダーの一方の長辺部分の中間部に対応するように配置することができ、さらに、前記第2係止孔は、前記物品ホルダーの他方の長辺部分の中間部に対応するように配置することができる。そして、前記第1連結片は、前記物品ホルダーの底部外面の長手方向中間部を通るように配置することができる。複数の前記第1連結片を前記物品ホルダーの長手方向に並ぶように設けることもできる。
【0013】
前記表皮材には、前記アームレスト本体部に係止する第3係止孔及び第4係止孔が形成されていてもよい。前記第3係止孔は、前記物品ホルダーの一方の短辺部分の中間部に対応するように配置することができ、また、前記第4係止孔は、前記物品ホルダーの他方の短辺部分の中間部に対応するように配置することができる。前記表皮材の前記ホルダー挿入孔内には、前記第3係止孔が形成された部分から前記物品ホルダーの底部外面を通って前記第4係止孔が形成された部分まで延びる第2連結片が当該表皮材と同一の部材で構成されている。これにより、表皮材における第3係止孔が形成された部分及び第4係止孔が形成された部分、即ち、第3係止孔近傍と第4係止孔近傍とを第2連結片で連結できる。そして、表皮材の第2連結片は物品ホルダーの底部によって下方へ押されるので、乗員によって表皮材が強く押されて引っ張られたとしても、第3係止孔及び第4係止孔の周縁部が物品ホルダーの周縁部からはみ出しにくくなり、見栄えが良好に保たれる。前記第1連結片の中間部と前記第2連結片の中間部とは一体化されていてもよく、これにより、第1連結片と第2連結片との相対的な位置がずれにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、表皮材の第1係止孔近傍から物品ホルダーの底部を通って当該表皮材の第2係止孔近傍まで延びる連結片が当該表皮材と同一の部材で構成されているので、部品点数の増加を抑制して製造コストを低減できるとともに、使用時には、表皮材が強く押されて引っ張られたとしても、第1係止孔や第2係止孔が物品ホルダーの周縁部からはみ出さないようにして見栄えを良好に保つことができる。また、連結片が表皮材と同一の部材で構成されているので、廃棄物を削減する効果を奏することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係るアームレストの平面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3図1におけるIII-III線断面図である。
図4】第1連結片が下方に配置された物品ホルダーを下から見た図である。
図5】切れ込みが入った表皮材の平面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る図4相当図である。
図7】本発明の実施形態2に係る図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るアームレスト1の平面図である。アームレスト1は、例えば自動車の後部座席の車幅方向中央部に設けられるものであるが、これに限らず、自動車の前席に設けられるものであってもよいし、自動車以外の車両や船舶、航空機等に設けられるものであってもよい。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。また、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。左右方向は車幅方向に一致している。
【0018】
アームレスト1の後端部には、左右方向に突出する支軸2が設けられている。支軸2は、例えば後席等に対して回動可能に支持されている。これにより、アームレスト1は、支軸2を中心として上下方向に回動自在となり、図1に示す使用状態と、上方へ跳ね上げた非使用状態とに切り替えられる。また、アームレスト1の前後方向の寸法は、当該アームレスト1の左右方向の寸法よりも長く設定されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、アームレスト1は、物品ホルダー30を有するアームレスト本体部10と、アームレスト本体部10を覆う表皮材20とを備えている。本実施形態の物品ホルダー30は、アームレスト本体部10の一部を構成する部材であり、具体的には乗員がカップ(図示せず)を収容することが可能なカップホルダーで構成されているが、これに限らず、例えばペットボトル、飲料が入った缶、携帯電話等の小物類等の物品が収容されるホルダーであってもよい。
【0020】
図1に示すように、物品ホルダー30には、2つのカップ(図示せず)を左右方向に並べて収容することが可能になっている。したがって、物品ホルダー30は、平面視で左右方向に長い形状を有することになり、物品ホルダー30の長手方向に延びる長辺部分は、当該物品ホルダー30の前側及び後側にそれぞれ位置付けられ、また、物品ホルダー30の短手方向に延びる短辺部分は、当該物品ホルダー30の左側及び右側にそれぞれ位置付けられる。
【0021】
図2及び図3に示すように、アームレスト本体部10は、例えば発泡ウレタン等の弾性材料で構成されたパッド10Cを有しており、平面視では前後方向に長い矩形に近い形状をなしている。アームレスト本体部10はフレーム10Aも有している。フレーム10Aは、例えば金属製の高強度かつ高剛性なパイプ材からなるフレーム本体10Bを有している。フレーム本体10Bは、平面視で矩形の枠状をなすように成形してなるものであり、パッド10Cの上下方向中央部よりも上寄りの部分に埋設されている。フレーム10Aが有する剛性によりアームレスト1の形状が所期の形状で保持されるようになる。尚、フレーム10Aは必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0022】
パッド10Cの前後方向中央部よりも前寄りの部分には、物品ホルダー30が収容されるホルダー収容凹部10aが上方に開放するように形成されている。ホルダー収容凹部10aが形成された部分は、フレーム10Aで囲まれた部分となっている。ホルダー収容凹部10aは、物品ホルダー30の形状に対応するように、左右方向に長い形状とされている。よって、ホルダー収容凹部10aの左右方向の寸法は、前後方向の寸法よりも長くなっている。また、パッド10Cの上面には、ホルダー収容凹部10aの上方への開放部分を囲むように段部10bが形成されている。
【0023】
フレーム10Aは、金属製の板材等を成形してなるホルダーブラケット40を有している。ホルダーブラケット40は、フレーム本体10Bに固定され、パッド10Cの段部10b内に配置されている。ホルダーブラケット40は、平面視でホルダー収容凹部10aの上方への開放部分を囲む枠型をなしており、左右方向に長い形状とされている。
【0024】
図2に示すように、ホルダーブラケット40の前側部分には、左右方向中央部に前側係止孔41が形成されている。ホルダーブラケット40の後側部分には、左右方向中央部に後側係止孔42が形成されている。前側係止孔41及び後側係止孔42は、ホルダーブラケット40を上下方向に貫通する貫通孔で構成されている。
【0025】
物品ホルダー30は、上方に開放されており、底部31と、底部31の周縁部から上方へ延びる周壁部32と、周壁部32の上端部から水平方向へ延出するフランジ部33とを有している。底部31、周壁部32及びフランジ部33は、例えば硬質樹脂材によって一体成形することができる。物品ホルダー30の内部には、ゴム等の弾性材で構成された保持部材34が設けられているが、保持部材34が必要に応じて設ければよい。
【0026】
底部31は左右方向に長い形状を有している。物品ホルダー30がホルダー収容凹部10aに収容されると、底部31はホルダー収容凹部10aの底面に接近した位置に配置される。図1に示すように、底部31の左右方向中央部は、当該底部31の左側部分31a及び右側部分31bに比べて前後方向の寸法が短く設定されており、狭小部31cとされている。周壁部32は、底部31の形状に対応している。すなわち、周壁部32の前側部分の左右方向中央部には、物品ホルダー30内(後方)へ向けて膨出する前側膨出部32aが形成され、また、周壁部32の後側部分の左右方向中央部には、物品ホルダー30内(前方)へ向けて膨出する後側膨出部32bが形成されている。前側膨出部32a及び後側膨出部32bの形成により、周壁部32の左右方向中央部の前後方向の寸法が、当該周壁部32の左側部分及び右側部分に比べて短くなるとともに、周壁部32の前側部分が後へ窪み、また周壁部32の後側部分が前へ窪むような形状になる。
【0027】
図2及び図3に示すように、物品ホルダー30がホルダー収容凹部10aに収容されると、フランジ部33は、ホルダーブラケット40の上方に配置されるとともに、パッド10Cの段部10b内に位置付けられるようになっている。フランジ部33の周壁部32よりも前側部分には、左右方向中央部に前側係止爪(第1係止爪)11が下方へ突出するように設けられている。物品ホルダー30がホルダー収容凹部10aに収容されると、前側係止爪11はホルダーブラケット40の前側係止孔41に上方から差し込まれ、前側係止孔41よりも下へ突出するように、前側係止爪11の上下方向の寸法が設定されている。前側係止爪11の下端部には、前方へ突出する前側凸部11aが形成されている。前側凸部11aが前側係止孔41の周縁部に下方から係止することで、前側係止爪11の前側係止孔41からの抜けが阻止される。
【0028】
フランジ部33の周壁部32よりも後側部分には、左右方向中央部に後側係止爪(第2係止爪)12が下方へ突出するように設けられている。物品ホルダー30がホルダー収容凹部10aに収容されると、後側係止爪12はホルダーブラケット40の後側係止孔42に上方から差し込まれ、後側係止孔42よりも下へ突出するように、後側係止爪12の上下方向の寸法が設定されている。後側係止爪12の下端部には、後方へ突出する後側凸部12aが形成されている。後側凸部12aが後側係止孔42の周縁部に下方から係止することで、後側係止爪12の後側係止孔42からの抜けが阻止される。
【0029】
図3に示すように、物品ホルダー30の周壁部32の左側部分には、2つの左側係止爪(第3係止爪)13(図3では1つのみ示す)が前後方向に互いに間隔をあけて設けられている。各左側係止爪13は、周壁部32の左側部分の外面から左側へ突出するとともに、上方へ突出しており、フランジ部33の左側部分の真下に位置している。左側係止爪13の上端部には、左側へ突出する左側凸部13aが形成されている。物品ホルダー30がホルダー収容凹部10aに収容されると、左側係止爪13の上端部がホルダーブラケット40の左縁部近傍の下面に当接して係止される。
【0030】
物品ホルダー30の周壁部32の右側部分には、2つの右側係止爪(第4係止爪)14(図3では1つのみ示す)が前後方向に互いに間隔をあけて設けられている。各右側係止爪14は、周壁部32の右側部分の外面から右側へ突出するとともに、上方へ突出しており、フランジ部33の右側部分の真下に位置している。右側係止爪14の上端部には、右側へ突出する右側凸部14aが形成されている。物品ホルダー30がホルダー収容凹部10aに収容されると、右側係止爪14の上端部がホルダーブラケット40の右縁部近傍の下面に当接して係止される。尚、左側係止爪13及び右側係止爪14は1つであってもよい。
【0031】
このように物品ホルダー30には、ホルダーブラケット40に係止する前側係止爪11、後側係止爪12、左側係止爪13及び右側係止爪14が物品ホルダー30の周方向に互いに間隔をあけて設けられている。また、前側係止爪11は、物品ホルダー30の前側に位置する長辺部分の左右方向中央部に配置され、また、後側係止爪12は、物品ホルダー30の後側に位置する長辺部分の左右方向中央部に配置される。また、左側係止爪13は、物品ホルダー30の左側に位置する短辺部分の前後方向中央部に配置され、また、右側係止爪14は、物品ホルダー30の右側に位置する短辺部分の前後方向中央部に配置される。
【0032】
表皮材20は、例えば合成皮革、天然皮革、布材等で構成されている。表皮材20は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。表皮材20を複層構造とする場合には、表皮層と、表皮層の裏面に積層されたクッション層とで表皮材20を構成することができる。
【0033】
表皮材20におけるホルダー収容凹部10aに対応する部分には、物品ホルダー30が挿入されるホルダー挿入孔20Aが形成されている。物品ホルダー30が左右方向に長い形状であることから、ホルダー挿入孔20Aも左右方向に長い形状となっている。
【0034】
図2及び図3に示すように、表皮材20は、ホルダーブラケット40の上面に重なるように配置される。表皮材20におけるホルダー挿入孔20Aの周囲の部分には、アームレスト本体部10に係止する前側係止孔(第1係止孔)21、後側係止孔(第2係止孔)22、左側係止孔(第3係止孔)23及び右側係止孔(第4係止孔)24が形成されている。前側係止孔21、後側係止孔22、左側係止孔23及び右側係止孔24は、表皮材20を厚み方向に貫通するように形成されている。
【0035】
図2に示すように、前側係止孔21は、ホルダーブラケット40の前側係止孔41の真上に位置付けられる。物品ホルダー30の前側係止爪11は、表皮材20の上方から当該表皮材20の前側係止孔21に挿入された後、ホルダーブラケット40の前側係止孔41に挿入される。物品ホルダー30の前側係止爪11が表皮材20の前側係止孔21に挿入されると、表皮材20の前側係止孔21の周縁部が前側係止爪11に係止した状態になる。物品ホルダー30は、アームレスト本体部10の一部を構成する部材であることから、物品ホルダー30の前側係止爪11に表皮材20の前側係止孔21の周縁部が係止した状態は、表皮材20の前側係止孔21の周縁部がアームレスト本体部10に係止したことになる。
【0036】
後側係止孔22は、ホルダーブラケット40の後側係止孔42の真上に位置付けられる。物品ホルダー30の後側係止爪12は、表皮材20の上方から当該表皮材20の後側係止孔22に挿入された後、ホルダーブラケット40の後側係止孔42に挿入される。物品ホルダー30の後側係止爪12が表皮材20の後側係止孔22に挿入されると、表皮材20の後側係止孔22の周縁部が後側係止爪12に係止した状態になる。この場合も、表皮材20の後側係止孔22の周縁部がアームレスト本体部10に係止したことになる。
【0037】
図3に示すように、左側係止孔23は、ホルダーブラケット40の左側部分に配置される。物品ホルダー30の左側係止爪13は、表皮材20の上方から当該表皮材20の左側係止孔23に挿入された後、ホルダーブラケット40の左縁部近傍の下面に当接して係止される。物品ホルダー30の左側係止爪13が表皮材20の左側係止孔23に挿入されると、表皮材20の左側係止孔23の周縁部が左側係止爪13に係止した状態になる。この場合も、表皮材20の左側係止孔23の周縁部がアームレスト本体部10に係止したことになる。左側係止孔23は、左側係止爪13の数と同じだけ設けられている。
【0038】
右側係止孔24は、ホルダーブラケット40の右側部分に配置される。物品ホルダー30の右側係止爪14は、表皮材20の上方から当該表皮材20の右側係止孔24に挿入された後、ホルダーブラケット40の右縁部近傍の下面に当接して係止される。物品ホルダー30の右側係止爪14が表皮材20の右側係止孔24に挿入されると、表皮材20の右側係止孔24の周縁部が右側係止爪14に係止した状態になる。この場合も、表皮材20の右側係止孔24の周縁部がアームレスト本体部10に係止したことになる。右側係止孔24は、右側係止爪14の数と同じだけ設けられている。
【0039】
このように表皮材20におけるホルダー挿入孔20Aの周囲の部分には、前側係止孔21、後側係止孔22、左側係止孔23及び右側係止孔24が周方向に互いに間隔をあけて設けられる。前側係止孔21は、物品ホルダー30の前側に位置する長辺部分の左右方向中央部に配置され、また、後側係止孔22は、物品ホルダー30の後側に位置する長辺部分の左右方向中央部に配置される。また、左側係止孔23は、物品ホルダー30の左側に位置する短辺部分の前後方向中央部に配置され、また、右側係止孔24は、物品ホルダー30の右側に位置する短辺部分の前後方向中央部に配置される。
【0040】
表皮材20のホルダー挿入孔20A内には、前側係止孔21が形成された部分から物品ホルダー30の底部31外面を通って後側係止孔22が形成された部分まで延びる第1連結片25が設けられている。すなわち、第1連結片25の前側部分は前側係止孔21近傍と一体化し、第1連結片25の後側部分は後側係止孔22近傍と一体化しており、第1連結片25により前側係止孔21近傍と後側係止孔22近傍とを連結することができる。
【0041】
第1連結片25は、底部31の長手方向中間部、即ち狭小部31cの外面を通るように配置されている。底部31外面は、ホルダー収容凹部10aの下面と対向するように配置されるので、第1連結片25は、底部31外面とホルダー収容凹部10aの下面との間に配置されることになる。また、第1連結片25は、周壁部32における前側膨出部32aの外側及び後側膨出部32bの外側を通るように配置されるので、周壁部32の窪み内を通っている。
【0042】
この実施形態では、2つの第1連結片25が物品ホルダー30の左右方向(長手方向)に並ぶように設けられている。すなわち、2つの第1連結片25のうち、左側に配置される第1連結片25は、左側第1連結片25と呼ぶことができ、また、右側に配置される第1連結片25は、右側第1連結片25と呼ぶことができる。第1連結片25の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0043】
第1連結片25は、表皮材20と同一の部材で構成されている。具体的には、表皮材20の構成する部材の一部を利用ことによって第1連結片25が構成されており、第1連結片25と表皮材20の本体部分とは一つの部材から形成されている。これにより、表皮材20に別部材を縫い付けることなく、第1連結片25を得ることができるので、縫製作業が不要になる。
【0044】
図5は、第1連結片25を表皮材20に縫い付けることなく得る手法の一例として切れ込みを形成する例について説明する図であり、表皮材20の平面図である。表皮材20には、前側係止孔21を形成するための前側切れ込み21A、後側係止孔22を形成するための後側切れ込み22A、左側係止孔23を形成するための左側切れ込み23A及び右側係止孔24を形成するための右側切れ込み24Aが形成されている。前側切れ込み21Aが形成されていることで、表皮材20における前側切れ込み21Aが形成されている部分を押して開くことができ、これにより、前側係止孔21が形成される。後側係止孔22、左側係止孔23及び右側係止孔24も同様に形成できる。尚、表皮材20の一部を抜くことによって前側係止孔21を形成してもよい。後側係止孔22、左側係止孔23及び右側係止孔24も同様に表皮材20の一部を抜くことによって形成してもよい。
【0045】
表皮材20には、ホルダー挿入孔20A及び第1連結片25を形成するための切れ込み28、29が形成されている。切れ込み28、29は、左右方向に延びる部分及び前後方向に延びる部分が組み合わされて構成されている。切れ込み28は、左側と右側とに形成されており、互いに繋がっていない。切れ込み29は、左右方向中央部に形成されており、切れ込み28とは繋がっていない。
【0046】
表皮材20に切れ込み28、29を形成した後、図4に示すように物品ホルダー30を押し込むことで、切れ込み28、29が開いて物品ホルダー30の挿入が可能な大きさのホルダー挿入孔20Aが形成されるとともに、物品ホルダー30の底部31下面を通るように第1連結片25が形成される。第1連結片25の前端部は、前側切れ込み21Aの後側近傍に位置しており、第1連結片25の前端部と前側切れ込み21Aとが接近しているとともに、第1連結片25の前端部と前側切れ込み21Aとの間には切れ込みが形成されていない。また、第1連結片25の後端部は、後側切れ込み22Aの前側近傍に位置しており、第1連結片25の後端部と後側切れ込み22Aとが接近しているとともに、第1連結片25の後端部と後側切れ込み22Aとの間には切れ込みが形成されていない。切れ込み28、29は、例えば刃物やレーザ光等によって形成することができる。
【0047】
第1連結片25の長さは、任意に設定することができる。第1連結片25の長さの長くする場合には、切れ込み28、29の長さを長くすればよく、反対に、第1連結片25の長さの短くする場合には、切れ込み28、29の長さを短くすればよい。また、ホルダー挿入孔20Aの大きさも、任意に設定することができる。ホルダー挿入孔20Aの大きさを大きくする場合には、切れ込み28、29の長さを長くすればよく、反対に、ホルダー挿入孔20Aの大きさを小さくする場合には、切れ込み28、29の長さを短くすればよい。
【0048】
この実施形態では、第1連結片25が、ホルダー挿入孔20Aに正規の組付位置まで挿入された物品ホルダー30の底部31下面に接触して下方へ押圧されるように、第1連結片25の長さを設定している。
【0049】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、表皮材20の前側係止孔21、後側係止孔22、左側係止孔23及び右側係止孔24をそれぞれアームレスト本体部10に係止させるとともに、物品ホルダー30を表皮材20のホルダー挿入孔20Aからアームレスト本体部10のホルダー収容凹部10aに収容することで、アームレスト1が得られる。表皮材20の第1連結片25は物品ホルダー30の底部31によって下方へ押されるので、第1連結片25には下向きの引っ張り力が作用した状態になる。この第1連結片25は、表皮材20における前側係止孔21近傍及び後側係止孔22近傍を連結しているので、乗員によって表皮材20が強く押されて引っ張られたとしても、前側係止孔21及び後側係止孔22の周縁部が物品ホルダー30の周縁部からはみ出しにくくなり、見栄えが良好に保たれる。また、第1連結片25は表皮材20と同一の部材で構成されているので、部品点数の増加が抑制され、縫製作業が不要になり、その結果、製造コストが低減される。
【0050】
また、第1連結片25は、表皮材20に設けられた切れ込み28、29によって形成することができるので、縫製が不要な第1連結片25を簡単に得ることができる。
【0051】
(実施形態2)
図6及び図7は、本発明の実施形態2に係る図である。実施形態2では、第1連結片25に加えて第2連結片50が設けられている点で実施形態1のものとは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0052】
図6に示すように、第2連結片50は、表皮材20のホルダー挿入孔20A内に設けられており、左側係止孔23(図3に示す)が形成された部分から物品ホルダー30の底部31外面を通って右側係止孔24が形成された部分まで延びている。よって、表皮材20における左側係止孔23近傍と右側係止孔24とが第2連結片50によって連結されることになる。第2連結片50も第1連結片25と同様に表皮材20と同一の部材で構成されている。
【0053】
第2連結片50が左右方向に延びる一方、第1連結片25は前後方向に延びているので、第2連結片50と第1連結片25とは互いに交差する関係となる。この実施形態では、第1連結片25の中間部と第2連結片50の中間部とが一体化されており、第1連結片25と第2連結片50との相対的な位置関係がずれにくくなっている。また、図7に示すように、表皮材20に切れ込み51、52、53を形成することで、第1連結片25の中間部と第2連結片50を同一部材に形成できる。
【0054】
この実施形態2によれば、実施形態1と同様な効果を奏することができるのに加えて、表皮材20の第2連結片50が物品ホルダー30の底部31によって下方へ押されるので、乗員によって表皮材20が強く押されて引っ張られたとしても、左側係止孔23及び右側係止孔24が物品ホルダー30の周縁部からはみ出しにくくなり、見栄えが良好に保たれる。
【0055】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明に係るアームレストは、例えば自動車等で利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 アームレスト
10 アームレスト本体部
10a ホルダー収容凹部
20 表皮材
21 前側係止孔(第1係止孔)
22 後側係止孔(第2係止孔)
23 左側係止孔(第3係止孔)
24 右側係止孔(第4係止孔)
25 第1連結片
20A ホルダー挿入孔
28、29 切れ込み
30 物品ホルダー
50 第2連結片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7