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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112185
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240813BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017085
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
(72)【発明者】
【氏名】大谷 裕子
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信也
(72)【発明者】
【氏名】井手上 薫樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】興梠 怜士
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】ロータの空間高調波を抑制し、モータの高調波鉄損やヒス損を低減させて回転電機の効率を向上させる。
【解決手段】回転電機であって、ロータ104は、外周側から回転軸側に向かって第1磁石孔20及び第2磁石孔22の2層構造の磁石孔を備え、第1磁石孔20に第1磁石24が配置され、第2磁石孔22に第1磁石24と同じ厚さの第2磁石26が配置されており、第1磁石24と第2磁石26の幅の比率が1:2.2から1:3.0の範囲である回転電機とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータに対して相対的に回転するロータと、を備える回転電機であって、
前記ロータは、
外周側から回転軸側に向かって第1磁石孔及び第2磁石孔の2層構造の磁石孔を備え、
前記第1磁石孔に第1磁石が配置され、前記第2磁石孔に前記第1磁石と同じ厚さの第2磁石が配置されており、
前記第1磁石と前記第2磁石の幅の比率が1:2.2から1:3.0の範囲であることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記第1磁石と前記第2磁石の幅の比率が1:2.5であることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機であって、
前記第1磁石を同じ幅をもつ2つの分割磁石で構成し、
前記第2磁石を前記分割磁石と同じ幅をもつ5つの分割磁石で構成することを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、電車や自動車の電動機として適用されている。通常、回転電機は、円筒状のステータとこのステータの内側で回転自在に支持されるロータを備えている。
【0003】
ロータの外周に軸方向に沿って溝を設け、溝の最深部がロータの表面磁束密度分布を示す波形に含まれる基本波成分の正負符号と高調波成分の正負符号が一致する範囲に位置するように形成した構成が開示されている(特許文献1)。
【0004】
外周側に向かって開くV字状に配置され、永久磁石が挿入された磁石スロットが半径方向に2層構造となるように形成されたロータにおいて、中央に位置する中央ブリッジと、回転子の外面との間に位置する2個の外径ブリッジのそれぞれの外径ブリッジとの間に形成された1対のスロットで構成した回転子が開示されている(特許文献2)。ここで、各永久磁石から発生する磁束のうち、各ブリッジを磁気飽和させる磁束を除いた磁束を有効磁束としたとき、外径側の永久磁石から発生される有効磁束が内径側の永久磁石から発生する有効磁束の半分以下となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-106474号公報
【特許文献2】特許2022-157963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る回転電機では、ロータの外周表面に溝を設けるので、磁気抵抗が増加し、回転トルクの減少を招くという問題がある。
【0007】
特許文献2に係る回転電機では、1層目磁石の有効磁束に対し、2層目磁石の有効磁束を半分以下にしたときに、振動と騒音の原因となる高調波含有率が小さくなることが示されている。しかしながら、特定の高調波のみに着目すれば、更なる改善の余地がある。例えば、モータ鉄損のうち高調波渦損やヒステリシス損に影響を及ぼすために3次高調波はモータ効率を向上させることにおいて重要であり、3次高調波を効果的に低減させることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、ステータと、前記ステータに対して相対的に回転するロータと、を備える回転電機であって、前記ロータは、外周側から回転軸側に向かって第1磁石孔及び第2磁石孔の2層構造の磁石孔を備え、前記第1磁石孔に第1磁石が配置され、前記第2磁石孔に前記第1磁石と同じ厚さの第2磁石が配置されており、前記第1磁石と前記第2磁石の幅の比率が1:2.2から1:3.0の範囲であることを特徴とする回転電機である。
【0009】
ここで、前記第1磁石と前記第2磁石の幅の比率が1:2.5であることが好適である。
【0010】
また、前記第1磁石を同じ幅をもつ2つの分割磁石で構成し、前記第2磁石を前記分割磁石と同じ幅をもつ5つの分割磁石で構成することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロータの空間高調波が抑制され、モータの高調波鉄損やヒステリシス損を低減させることで回転電機の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態における回転電機の構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態におけるロータの構成を示す部分拡大図である。
図3】本発明の実施の形態におけるロータの磁気回路の等価回路を示す図である。
図4】本発明の実施の形態におけるステータとロータとの間隙(ギャップ)に生ずる磁束を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における磁石の幅の比に対する磁束の空間3次高調波成分を示す図である。
図6】本発明の実施の形態におけるロータの構成の別例を示す部分拡大図である。
図7】本発明の実施の形態におけるロータの構成の別例を示す部分拡大図である。
図8】本発明の実施の形態におけるロータの構成の別例を示す部分拡大図である。
図9】本発明の実施の形態におけるロータの構成の別例を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態における回転電機100は、図1に示すように、ステータ102及びロータ104を含んで構成される。回転電機100は、モータ、発電機及びモータ・ジェネレータとして使用することができる。
【0014】
ステータ102とロータ104は回転軸106上において同軸に配置される。ステータ102に回転磁場を発生させることで、ロータ104に回転トルクを生じさせて回転軸106を回転中心としてロータ104を回転させる。
【0015】
ステータ102は、中空の円筒形状をしている。ステータ102は、複数の電磁鋼板を回転軸方向に沿って積層して形成されている。ステータ102は、周方向にスロット10とティース12が複数交互に配置された構造を有する。スロット10には、コイルが巻回されている。ティース12は、ロータ104の外周と対向し、ロータ104からの磁束を受ける面として作用する。スロット10とティース12の外周には、バックヨーク14が配置されている。バックヨーク14は、各ティース12の間の磁束を結合するための鉄心であり、磁気回路を構成するものである。
【0016】
ロータ104は、円筒形状をしている。ロータ104は、中空円筒形状のステータ102の内部において回転軸を中心に回転可能に配置される。ロータ104は、その外周面がステータ102の内周面と隙間を空けて配置される。ロータ104は、複数の電磁鋼板を回転軸方向に沿って積層して構成されている。
【0017】
ロータ104は、第1磁石孔20及び第2磁石孔22を備える。本実施の形態における回転電機100では、ロータ104の外周側から回転軸側に向かって第1磁石孔20及び第2磁石孔22が2層構造で設けられている。第1磁石孔20及び第2磁石孔22は、ロータ104を構成する電磁鋼板よりも透磁率が低い領域であり、例えば、ロータ104の内部に設けられた空間で構成される。
【0018】
第1磁石孔20及び第2磁石孔22の内部には、それぞれ第1磁石24及び第2磁石26が配置される。第1磁石孔20及び第2磁石孔22によって、第1磁石24及び第2磁石26から出る磁束がロータ104の側面から漏れることが抑制され、ロータ104の外周面上の磁束密度を高めることができる。
【0019】
第1磁石孔20及び第2磁石孔22に埋め込まれた第1磁石24及び第2磁石26は、ロータ104における磁極を構成する。第1磁石24及び第2磁石26は、各磁極において磁束の方向がロータ104の径方向を向くように配置される。すなわち、各磁極における磁束中心はd軸と一致する。第1磁石24及び第2磁石26は、周方向に隣り合う磁極の磁化方向が反対になるように配置され、磁極対をなすS磁極とN磁極が周方向に沿って交互に形成される。ロータ104において、S磁極とN磁極の中央がq軸と一致する。
【0020】
第1磁石孔20及び第2磁石孔22は、d軸を中心としてロータ104の周方向に沿って延設され、その両側の先端部がロータ104の外周面に向かうように湾曲した形状を有することが好適である。また、第1磁石孔20及び第2磁石孔22の両端の先端領域にはブリッジ28が形成される。ブリッジ28は、第1磁石孔20及び第2磁石孔22の両端側において、第1磁石孔20及び第2磁石孔22の先端部とロータ104の外面とを繋ぐ狭小な鉄心部分である。
【0021】
図2は、本実施の形態におけるロータ104の構成を示す部分拡大図である。図2では、ロータ104において電気角0deg.から180deg.までの範囲を部分的に拡大して示している。
【0022】
ここで、第1磁石24の磁石幅をWmga、磁気抵抗をRmga、起磁力をFmgaとする。第2磁石26の磁石幅をWmgb、磁気抵抗をRmgb、起磁力をFmgbとする。なお、第1磁石24の幅Wmgaと第2磁石26の幅Wmgbは、ロータ104の周方向に沿った幅である。
【0023】
また、1層目である第1磁石孔20のロータ104側の外周の幅をWrgaとする。1層目である第1磁石孔20と2層目である第2磁石孔22のロータ104の外周の幅をそれぞれWrgb1,Wrgb2とする。2層目である第2磁石孔22のロータ104の外周の幅をWrgcとする。ロータ104の外周に沿った幅Wrgaの領域におけるステータ102とロータ104の間の間隙の磁気抵抗をRrgaとし、当該間隙を通過する磁束をφrgaとする。ロータ104の外周に沿った幅Wrgb1,Wrgb2におけるステータ102とロータ104の間の間隙の磁気抵抗をそれぞれRrgb1,Rrgb2とし、当該間隙を通過する磁束をφrgb1,φrgb2とする。
【0024】
図3は、当該構成を有するロータ104の磁気回路の等価回路を示す。図3の磁気回路より、ステータ102とロータ104の間隙を通過する磁束φrga,φrgb1,φrgb2を計算し、それぞれ幅Wrga,Wrgb1,Wrgb2で除算することで各間隙の磁束密度Brga,Brgb1,Brgb2を求めることができる。その結果を用いて、図4に示すように、ギャップ磁束密度分布を求め、当該ギャップ磁束密度分布を次数分解することで空間高調波振幅が求まる。
【0025】
図5は、ロータ104の径方向に沿った第1磁石24及び第2磁石26の厚さTが同一であり、間隙の幅Wrgaと第1磁石24の幅Wmgaとの比Wrga/Wmga=1.25、間隙の幅Wrgc=25deg.において、第1磁石24の幅Wmgaと第2磁石26の幅Wmgbの比Wmgb/Wmgaに対する空間3次高調波振幅を示す。
【0026】
図5より、空間3次高調波は第1磁石24の幅Wmgaと第2磁石26の幅Wmgbの比Wmgb/Wmgaが2.5のとき最小値を示し、破線で示すように2.2から3.0の範囲において顕著に抑制される。すなわち、空間3次高調波を低減するためには、第1磁石24と第2磁石26の幅の比率は1:2.2から1:3.0の範囲とすることが好適である。さらに、第1磁石24と第2磁石26の幅の比率は1:2.5とすることが最適である。
【0027】
なお、第1磁石24と第2磁石26の幅の比率を1:2.2~1:3.0にする構成であれば、第1磁石24及び第2磁石26の配置は変更してもよい。
【0028】
例えば、第1磁石24又は第2磁石26を複数の磁石に分割した構成としてもよい。具体例として、図6に示すように、第2磁石26を2つに分割して第2磁石孔22に配置する構成としてもよい。
【0029】
また、例えば、第1磁石24又は第2磁石26を同じ幅及び厚さを有する複数個に分割した磁石で構成するようにしてもよい。具体例として、図7に示すように、第1磁石孔20に配置する第1磁石24を同じ幅及び厚さをもつ2つの分割磁石で構成し、第2磁石孔22に配置する第2磁石26を第1磁石24と同じ幅及び厚さをもつ5つの分割磁石で構成する。すなわち、1極分の第1磁石24及び第2磁石26を7等分の分割磁石で構成する。なお、第1磁石孔20及び第2磁石孔22への分割磁石の配置は、特に限定されるものではなく、図8に示すような配置としてもよい。
【0030】
このように、第1磁石24及び第2磁石26を構成するすべての分割磁石の形状及び大きさを同じにすることで、磁石の製造コストを低減でき、これに伴って回転電機100の製造コストも抑制できる。
【0031】
また、例えば、第1磁石孔20及び第2磁石孔22の形状を変更してもよい。具体例として、図9に示すように、第1磁石孔20及び第2磁石孔22を断面が円弧形状である形状としてもよい。この場合、第1磁石24及び第2磁石26の形状は、それぞれ第1磁石孔20及び第2磁石孔22の形状に合わせて円弧形状とすることが好適である。この場合も、第1磁石24と第2磁石26の幅の比率を1:2.5にすることが好適である。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【0033】
[発明の構成]
[構成1]
ステータと、前記ステータに対して相対的に回転するロータと、を備える回転電機であって、
前記ロータは、
外周側から回転軸側に向かって第1磁石孔及び第2磁石孔の2層構造の磁石孔を備え、
前記第1磁石孔に第1磁石が配置され、前記第2磁石孔に前記第1磁石と同じ厚さの第2磁石が配置されており、
前記第1磁石と前記第2磁石の幅の比率が1:2.2から1:3.0の範囲であることを特徴とする回転電機。
[構成2]
構成1に記載の回転電機であって、
前記第1磁石と前記第2磁石の幅の比率が1:2.5であることを特徴とする回転電機。
[構成3]
構成1又は2に記載の回転電機であって、
前記第1磁石を同じ幅をもつ2つの分割磁石で構成し、
前記第2磁石を前記分割磁石と同じ幅をもつ5つの分割磁石で構成することを特徴とする回転電機。
【符号の説明】
【0034】
10 スロット、12 ティース、14 バックヨーク、28 ブリッジ、100 回転電機、102 ステータ、104 ロータ、106 回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9