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特開2024-112195電池パック及び電池パックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112195
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電池パック及び電池パックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/653 20140101AFI20240813BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240813BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240813BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20240813BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M10/653
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017107
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】浦野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】ドウ クンケツ
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 心一
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE04
5H031KK01
(57)【要約】
【課題】電池セルの温度分布のばらつきを抑制する。
【解決手段】電池パック10は、電池セル102と、電池セル102の所定部分と熱的に結合されたレフトカバー112及びライトカバー114と、電池セル102の他の所定部分と熱的に結合されたフィラー150と、を備えている。フィラー150の少なくとも一部分の量は、電池セル102の当該所定部分に近づくほど減少している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、
前記電池セルの所定部分と熱的に結合された熱伝導要素と、
前記電池セルの他の所定部分と熱的に結合されたフィラーと、
を備え、
前記フィラーの少なくとも一部分の量が、前記電池セルの前記所定部分に近づくほど減少している、電池パック。
【請求項2】
前記熱伝導要素が、所定方向に積層された複数の前記電池セルの両側の少なくとも一方に位置する、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
電池セルの所定部分と熱伝導要素とを熱的に結合する工程と、
前記電池セルの他の所定部分とフィラーとを互いに熱的に結合する工程と、
を備え、
前記フィラーの少なくとも一部分の量が、前記電池セルの前記所定部分に近づくほど減少している、電池パックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及び電池パックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電池モジュールを備える様々な電池パックが開発されている。例えば特許文献1に記載の電池モジュールでは、電池モジュールが収容体に固定されている。この電池モジュールでは、電池モジュールと収容体との間に熱伝導部材が設けられている。熱伝導部材は、塗布によって形成されている。
【0003】
特許文献2には、電池セル同士を接着剤によって互いに接合する方法について記載されている。この方法において、接着剤は、電池セルの長手方向に平行なストライプパターン状に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/47211号
【特許文献2】特開2006-172994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィラーを介して収容体に搭載された電池セルは、フィラー以外の熱伝導要素にも熱的に結合していることがある。フィラーは、電池セルに対して均一に設けられていることがある。よって、フィラーを介して電池セルから熱が均一に伝導したり、フィラーを介して電池セルへ熱が均一に伝導したりする。しかしながら、この場合、電池セルから熱導電要素への熱の伝導や、熱伝導要素から電池セルへの熱の伝導によって、電池セルの温度分布のばらつきが生じることがある。電池セルの温度分布のばらつきは、電池セルの特性に影響を及ぼすことがある。
【0006】
本発明の目的の一例は、電池セルの温度分布のばらつきを抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、以下のとおりである。
[1]
電池セルと、
前記電池セルの所定部分と熱的に結合された熱伝導要素と、
前記電池セルの他の所定部分と熱的に結合されたフィラーと、
を備え、
前記フィラーの少なくとも一部分の量が、前記電池セルの前記所定部分に近づくほど減少している、電池パック。
[2]
前記熱伝導要素が、所定方向に積層された複数の前記電池セルの両側の少なくとも一方に位置する、[1]に記載の電池パック。
[3]
電池セルの所定部分と熱伝導要素とを熱的に結合する工程と、
前記電池セルの他の所定部分とフィラーとを互いに熱的に結合する工程と、
を備え、
前記フィラーの少なくとも一部分の量が、前記電池セルの前記所定部分に近づくほど減少している、電池パックの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、電池セルの温度分布のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電池パックの斜視図である。
図2】実施形態に係る電池パックからアッパケースが取り外された状態の平面図である。
図3】実施形態に係る電池モジュールの平面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5】実施形態に係るフィラーの平面図である。
図6】実施形態に係るフィラーの形成方法の第1例を説明するための図である。
図7】実施形態に係るフィラーの形成方法の第2例を説明するための図である。
図8】実施形態に係るフィラーの形成方法の第3例を説明するための図である。
図9】実施形態に係るフィラーの形成方法の第4例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
以下、A及びBが互いに熱的に結合されているとは、例えば、A及びBが互いに直接接触していることや、A及びBが、例えば熱伝導接着剤等、10W/m・K以上、例えば100W/m・K以上の熱伝導率を有する要素を介して互いに接合していることを意味する。ただし、A及びBが熱的に結合されているとは、この例に限定されない。
【0012】
A及びBが互いに熱的に絶縁されているとは、例えば、A及びBの間に、例えば空気等、0.50W/m・K未満、例えば0.10W/m・K未満の熱伝導率を有する要素が存在していることを意味する。ただし、A及びBが熱的に絶縁されているとは、この例に限定されない。
【0013】
図1は、実施形態に係る電池パック10の斜視図である。図2は、実施形態に係る電池パック10からアッパケース220が取り外された状態の平面図である。
【0014】
実施形態において、電池パック10は、自動車に搭載されている。具体的には、電池パック10は、自動車の前輪及び後輪の間に搭載されている。以下、特に断りがない限り、電池パック10が自動車に搭載されているものとして説明する。ただし、電池パック10は、自動車以外の用途にも適用可能である。
【0015】
各図には、説明のため、X方向、Y方向及びZ方向が示されている。X方向は、電池パック10の前後方向を示している。Y方向は、X方向に直交している。Y方向は、電池パック10の左右方向を示している。Z方向は、X方向及びY方向の双方に直交している。Z方向は、電池パック10の上下方向を示している。X方向を指し示す矢印、Y方向を指し示す及びZ方向を指し示す矢印は、それぞれ、電池パック10の前方向、左方向及び上方向を示している。図2において、Z方向を示す黒点付き白丸は、Z方向を指し示す矢印が紙面の奥から手前に向けて延びていることを示している。ただし、X方向、Y方向及びZ方向と、電池パック10の前後方向、左右方向及び上下方向と、の関係はこの例に限定されない。
【0016】
実施形態において、電池パック10の前後方向、左右方向及び上下方向は、電池パック10が搭載される自動車によって決定されている。X方向、Y方向及びZ方向は、それぞれ、自動車の前後方向、左右方向及び上下方向を示している。X方向を指し示す矢印、Y方向を指し示す矢印及びZ方向を指し示す矢印は、それぞれ、自動車の前方向、左方向及び上方向を示している。ただし、電池パック10の前後方向、左右方向及び上下方向と、自動車の前後方向、左右方向及び上下方向と、の関係はこの例に限定されない。
【0017】
以下、必要に応じて、Z方向に垂直な方向を水平方向という。
【0018】
電池パック10は、4つの電池モジュール100及び収容体200を備えている。4つの電池モジュール100は、X方向に並ぶ左側の一対の電池モジュール100と、X方向に並ぶ右側の一対の電池モジュール100と、を含んでいる。収容体200は、ロアケース210及びアッパケース220を有している。ロアケース210は、概して、例えば、トレイ又は本体部とも称されることがある。ロアケース210は、ロアプレート212及びサイドフレーム214を含んでいる。アッパケース220は、概して、例えば、カバー又は蓋部とも称されることがある。後述するように、各電池モジュール100は、複数の電池セル102を有している。
【0019】
サイドフレーム214の前方には、一対のターミナル104が設けられている。一対のターミナル104は、Y方向に略平行に並んでいる。各ターミナル104の前端部は、サイドフレーム214の前面から前方に向けて突出している。電気的な経路において、一対のターミナル104の間において、4つの電池モジュール100は直列に接続されている。
【0020】
ロアケース210及びアッパケース220は、シール材230を介して互いに取り付けられている。ロアケース210、アッパケース220及びシール材230は、収容空間250を形成している。収容空間250には、4つの電池モジュール100が収容されている。
【0021】
ロアプレート212は、収容空間250の底部を画定している。サイドフレーム214は、収容空間250の側方部を画定している。具体的には、Z方向から見て、サイドフレーム214は、ロアプレート212の最外周に沿って設けられている。アッパケース220は、収容空間250の頂部を画定している。
【0022】
シール材230は、例えば、ゴム等の弾性材である。Z方向から見て、シール材230は、サイドフレーム214の全周に亘って設けられている。これによって、Z方向から見て、シール材230は、収容空間250を囲んでいる。したがって、シール材230によって収容空間250を収容体200の外部の空間から封止することができる。
【0023】
電池モジュール100の数及び配置は、実施形態に係る例に限定されない。例えば、電池モジュール100の数は2つのみ、3つのみ又は5つ以上であってもよい。
【0024】
図3は、実施形態に係る電池モジュール100の平面図である。図4は、図3のA-A断面図である。図5は、実施形態に係るフィラー150の平面図である。図4において、X方向を示すX付き白丸は、X方向を指し示す矢印が紙面の手前から奥に向けて延びていることを示している。
【0025】
図4に示すように、電池モジュール100は、セル積層体102G及び収容ケース110を有している。
【0026】
セル積層体102Gは、複数の電池セル102を含んでいる。図4に示す例において、複数の電池セル102は、Y方向に略平行に積層されている。Y方向に隣り合う電池セル102の間には、所定の熱伝導率を有する不図示の材料が設けられている。所定の熱伝導率を有する材料としては、ウレタンが例示されるが、これに限定されない。或いは、Y方向に隣り合う電池セル102は、互いに直接接触している。よって、複数の電池セル102は、互いに熱的に結合されている。さらに、複数の電池セル102は、互いに電気的に接続されている。例えば、セル積層体102Gでは、並列に接続された複数の電池セル102を含む電池セル群が複数直列に接続されている。或いは、単一の電池セル102が複数直列に接続されていてもよい。
【0027】
収容ケース110は、セル積層体102Gを収容している。収容ケース110は、レフトカバー112、ライトカバー114、ロアカバー116、アッパカバー118、不図示のフロントカバー及び不図示のリアカバーを含んでいる。
【0028】
レフトカバー112は、セル積層体102Gの左側面を覆っている。レフトカバー112の右側面と、セル積層体102Gの左端に位置する電池セル102の左側面と、は、直接又は上述の所定の熱伝導率を有する材料を介して、互いに接触している。レフトカバー112は、熱伝導率が比較的高い材料からなっている。よって、レフトカバー112は、セル積層体102Gに熱的に結合された熱伝導要素となっている。
【0029】
ライトカバー114は、セル積層体102Gの右側面を覆っている。レフトカバー112の右側面と、セル積層体102Gの左端に位置する電池セル102の左側面と、は、直接又は上述の所定の熱伝導率を有する材料を介して、互いに接触している。レフトカバー112は、熱伝導率が比較的高い材料からなっている。よって、レフトカバー112は、セル積層体102Gに熱的に結合された熱伝導要素となっている。
【0030】
ロアカバー116は、熱伝導性接着剤116aを介してセル積層体102Gの下面を覆っている。よって、セル積層体102Gの下面及びロアカバー116の上面は、熱伝導性接着剤116aを介して熱的に結合されている。
【0031】
アッパカバー118は、隙間を介して、セル積層体102Gの上面を覆っている。よって、セル積層体102Gの上面と、アッパカバー118と、は熱的に絶縁されている。
【0032】
不図示のフロントカバーは、隙間を介して、セル積層体102Gの前面を覆っている。よって、セル積層体102Gの前面及びフロントカバーの後面は、熱的に絶縁されている。
【0033】
不図示のリアカバーは、隙間を介して、セル積層体102Gの後面を覆っている。よって、セル積層体102Gの後面及びリアカバーの前面は、熱的に絶縁されている。
【0034】
ロアプレート212は、アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bを含んでいる。アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bは、例えば、金属からなっている。具体的には、アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bは、例えば、アルミニウムを主成分として含んでいる。アッパ冷却プレート212a及びロア冷却プレート212bは、Z方向に重なっている。アッパ冷却プレート212aの下面及びロア冷却プレート212bの上面の間の領域では、冷媒212cが流れている。冷媒212cは、例えば水等の液体である。
【0035】
ロアケース210は、支持フレーム216を含んでいる。Z方向から見て、支持フレーム216は、セル積層体102Gの少なくとも一部分を囲む囲繞体となっている。支持フレーム216は、アッパ冷却プレート212aの上面に設けられている。支持フレーム216の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面は、互いに熱的に結合している。以下、必要に応じて、支持フレーム216のセル積層体102Gの左側に位置する部分をレフト支持部216aという。以下、必要に応じて、支持フレーム216のセル積層体102Gの右側に位置する部分をライト支持部216bという。
【0036】
レフトカバー112の左外側面にはレフト突起122が設けられている。レフトカバー112の左側面及びレフト突起122の右端部は、互いに熱的に結合している。レフト突起122は、レフトカバー112の左方に向けて突出している。レフト突起122は、レフト支持部216aの上面に配置されている。レフト突起122及びレフト支持部216aは、複数のレフトボルト162によって互いに締結されている。よって、レフト突起122の下面及びレフト支持部216aの上面は、互いに接触して、互いに熱的に結合している。図3に示すように、複数のレフトボルト162は、X方向に略平行に並んでいる。ただし、レフトボルト162の数及び配置は、図3に示す例に限定されない。例えば、単一のレフトボルト162のみによってレフト突起122及びレフト支持部216aは互いに締結されていてもよい。
【0037】
ライトカバー114の右外側面にはライト突起124が設けられている。ライトカバー114の右側面及びライト突起124の左端部は、互いに熱的に結合している。ライト突起124は、ライトカバー114の右方に向けて突出している。ライト突起124は、ライト支持部216bの上面に配置されている。ライト突起124及びライト支持部216bは、複数のライトボルト164によって互いに締結されている。よって、ライト突起124の下面及びライト支持部216bの上面は、互いに接触して、互いに熱的に結合している。図3に示すように、複数のライトボルト164は、X方向に略平行に並んでいる。ただし、ライトボルト164の数及び配置は、図3に示す例に限定されない。例えば、単一のライトボルト164のみによってライト突起124及びライト支持部216bは互いに締結されていてもよい。
【0038】
電池モジュール100は、フィラー150を介してロアプレート212上に搭載されている。フィラー150は、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面の間に配置されている。フィラー150は、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面によってZ方向に圧縮されている。
【0039】
実施形態において、フィラー150は、熱伝導性接着剤である。フィラー150としては、変性シリコーン系の塗布フィラー、ウレタン系の塗布フィラー、アクリル系の塗布フィラー等が例示される。したがって、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面は、フィラー150を介して物理的に接合されている。このため、フィラー150が設けられていない場合と比較して、ロアカバー116及びアッパ冷却プレート212aが互いにずれにくくすることができる。さらに、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面は、フィラー150を介して熱的に結合されている。このため、フィラー150が設けられていない場合と比較して、電池モジュール100において発生した熱が、熱伝導性接着剤116a、ロアカバー116及びフィラー150を介してロアケース210に向けて伝導しやすくすることができる。
【0040】
図5に示すように、Z方向から見て、フィラー150のパターンは、後述する図6及び図7によって例示される略ジグザグパターンや、後述する図8及び図9によって例示される略ストライプパターンに塗布されたフィラーをZ方向に圧縮して水平方向に延ばすことで形成されている。フィラー150は、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面によってZ方向に圧縮されている。
【0041】
図5に示すように、フィラー150は、幅広領域152、第1幅狭領域154及び第2幅狭領域156を含んでいる。幅広領域152のX方向の幅は、第1幅狭領域154及び第2幅狭領域156の各々のX方向の幅より広くなっている。図5に示す例において、第1幅狭領域154及び第2幅狭領域156の各々のX方向の幅は、互いに略等しくなっている。ただし、第1幅狭領域154及び第2幅狭領域156の各々のX方向の幅は、互いに異なっていてもよい。幅広領域152は、Y方向において第1幅狭領域154及び第2幅狭領域156の間に位置している。第1幅狭領域154は、幅広領域152に対して左側に位置している。第2幅狭領域156は、幅広領域152に対して右側に位置している。
【0042】
フィラー150の左半分部分のX方向の幅は、Y方向においてセル積層体102Gの左端部分に近づくほど幅広領域152から第1幅狭領域154にかけて減少している。すなわち、幅広領域152から第1幅狭領域154にかけてのフィラー150の量は、Y方向においてセル積層体102Gの左端部分に近づくほど減少している。フィラー150の右半分部分のX方向の幅は、Y方向においてセル積層体102Gの右端部分に近づくほど幅広領域152から第2幅狭領域156にかけて減少している。すなわち、幅広領域152から第2幅狭領域156にかけてのフィラー150の量は、Y方向においてセル積層体102Gの右端部分に近づくほど減少している。したがって、フィラー150内のY方向の位置によらずフィラー150の量が一定である場合と比較して、セル積層体102Gの温度分布のばらつきを抑制することができる。理由は、以下のとおりである。
【0043】
まず、セル積層体102Gから発生した熱がロアケース210に向けて伝導する場合を検討する。
【0044】
セル積層体102Gから発生した熱は、主に、セル積層体102Gの下面から、熱伝導性接着剤116a、ロアカバー116及びフィラー150を介してロアケース210の上面に向けて伝導しやすくなっている。さらに、セル積層体102Gの左側面及び右側面は、それぞれ、レフトカバー112及びライトカバー114に熱的に結合している。よって、セル積層体102Gから発生した一部の熱が、セル積層体102Gの左側面から、レフトカバー112、レフト突起122及びレフト支持部216aを経由してロアプレート212の左側部分に向けて伝導するとともに、セル積層体102Gの右側面から、ライトカバー114、ライト突起124及びライト支持部216bを経由してロアプレート212の右側部分に向けて伝導することがある。しかしながら、セル積層体102Gの前面及び後面は、それぞれ、不図示のフロントカバー及びリアカバーから熱的に絶縁されている。よって、セル積層体102GからのZ方向の熱伝導を考慮しない場合、セル積層体102Gには、X方向よりもY方向に熱が伝導しやすくなっている。したがって、セル積層体102Gの下面から均一に熱が伝導すると、セル積層体102GのY方向の両端部の温度は、セル積層体102GのY方向の中央部の温度よりも、低くなりやすくなる。
【0045】
実施形態では、セル積層体102GのY方向の両端部とZ方向に重なる領域において、フィラー150の量が部分的に少なくなっている。よって、セル積層体102GのY方向の両端部では、セル積層体102GのY方向の中央部よりも、フィラー150を介してのセル積層体102Gからの熱の伝導が抑制されている。したがって、フィラー150内のY方向の位置によらずフィラー150の量が一定である場合と比較して、セル積層体102Gの温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0046】
次に、ロアケース210から発生した熱がセル積層体102Gに向けて伝導する場合を検討する。
【0047】
ロアプレート212から発生した熱は、主に、ロアプレート212の上面からフィラー150、ロアカバー116及び熱伝導性接着剤116aを介してセル積層体102Gの下面に向けて伝導しやすくなっている。さらに、ロアプレート212から発生した一部の熱が、ロアプレート212の左側部分から、レフト支持部216a、レフト突起122及びレフトカバー112を経由してセル積層体102Gの左側面に向けて伝導するとともに、ロアプレート212の右側部分から、ライト支持部216b、ライト突起124及びライトカバー114を経由してセル積層体102Gの右側面に向けて伝導することがある。しかしながら、上述した理由と同様の理由によって、セル積層体102GへのZ方向の熱伝導を考慮しない場合、セル積層体102Gには、X方向よりもY方向に熱が伝導しやすくなっている。よって、セル積層体102Gの下面へ均一に熱が伝導すると、セル積層体102GのY方向の両端部の温度は、セル積層体102GのY方向の中央部の温度よりも、高くなりやすくなる。
【0048】
実施形態では、セル積層体102GのY方向の両端部とZ方向に重なる領域において、フィラー150の量が部分的に少なくなっている。よって、セル積層体102GのY方向の両端部では、セル積層体102GのY方向の中央部よりも、フィラー150を介してのセル積層体102Gへの熱の伝導が抑制されている。したがって、フィラー150内のY方向の位置によらずフィラー150の量が一定である場合と比較して、セル積層体102Gの温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0049】
フィラー150のどの部分の量を少なくするかは、セル積層体102Gのいずれの部分が熱伝導要素に熱的に結合しているかによって決定することができる。実施形態では、セル積層体102Gの左側面及び右側面が、熱伝導要素として機能するレフトカバー112及びライトカバー114にそれぞれ熱的に結合している。よって、フィラー150の左側部分の量及びフィラー150の右側部分の量が、フィラー150のY方向の中央部分の量より少なくなっている。しかしながら、セル積層体102Gの左側面が熱伝導要素と熱的に結合され、セル積層体102Gの右側面が熱的に絶縁されている場合、フィラー150の左側部分の量がフィラー150の他の部分の量より少なくなっていてもよい。この例においても、フィラー150の量がフィラー150内のY方向の位置によらず一定である場合と比較して、セル積層体102Gの温度分布のばらつきを抑制することができる。或いは、セル積層体102Gの左側面及び右側面が熱的に絶縁され、セル積層体102Gの前面及び後面が熱伝導要素に熱的に結合されていることがある。この場合、フィラー150の前側部分の量及びフィラー150の後側部分の量がフィラー150のX方向の中央部分の量より少なくなっていてもよい。この例においても、フィラー150の量がフィラー150内のX方向の位置によらず一定である場合と比較して、セル積層体102Gの温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0050】
実施形態において、フィラー150の各部分の量は、フィラー150の各部分の水平方向の幅によって調整している。しかしながら、フィラー150の各部分の量は、フィラー150の各部分のZ方向の厚さによって調整してもよい。この例では、フィラー150のZ方向の厚さが厚くなるほどフィラー150の量が多くなり、フィラー150のZ方向の厚さが薄くなるほどフィラー150の量が少なくなっている。
【0051】
実施形態では、セル積層体102Gの下面及びセル積層体102GのY方向の両側面が、同一の熱伝導要素たるロアプレート212に熱的に結合している。しかしながら、セル積層体102Gの下面及びセル積層体102GのY方向の両側面は、互いに異なる熱伝導要素に熱的に結合されていてもよい。
【0052】
図6は、実施形態に係るフィラー150の形成方法の第1例を説明するための図である。この第1例では、以下のようにして、フィラー150が形成されている。
【0053】
まず、不図示のノズルから塗布フィラー150Aをアッパ冷却プレート212aの上面に塗布する。塗布フィラー150Aは、第1パターン部152A、第2パターン部154A及び第3パターン部156Aを含んでいる。第1パターン部152Aは、Y方向において、第2パターン部154A及び第3パターン部156Aの間に位置している。第2パターン部154Aは、第1パターン部152Aに対して右方に位置している。第3パターン部156Aは、第1パターン部152Aに対して左方に位置している。
【0054】
第1パターン部152A、第2パターン部154A及び第3パターン部156Aの各々は、略ジグザグ形状となっている。第1パターン部152A、第2パターン部154A及び第3パターン部156Aの各々は、セル積層体102GのX方向の中心に対してX方向の両側に交互に配置された複数の折返し部TAを含んでいる。
【0055】
第1パターン部152AのX方向の幅は、第2パターン部154A及び第3パターン部156Aの各々のX方向の幅より広くなっている。塗布フィラー150Aの各パターンのX方向の幅とは、各パターンのX方向の両側の折返し部TAの間のX方向の距離である。
【0056】
次いで、塗布フィラー150Aを介してアッパ冷却プレート212aの上面上に電池モジュール100を搭載する。次いで、レフト突起122及びレフト支持部216aをレフトボルト162によって互いに締結する。同様に、ライト突起124及びライト支持部216bをライトボルト164によって互いに締結する。これによって、塗布フィラー150Aは、ロアカバー116の下面及びアッパ冷却プレート212aの上面によってZ方向に圧縮される。このため、塗布フィラー150Aは、水平方向に延びる。よって、塗布フィラー150Aの各パターンの折返し部TAの間の隙間がフィラーによって埋め込まれてフィラー150が形成される。幅広領域152は、第1パターン部152Aに相当している。第1幅狭領域154は、第2パターン部154Aに相当している。第2幅狭領域156は、第2幅狭領域156に相当している。
【0057】
図7は、実施形態に係るフィラー150の形成方法の第2例を説明するための図である。図7を用いて説明する第2例は、以下の点を除いて、図6を用いて説明した第1例と同様である。
【0058】
図7に示す塗布フィラー150Bは、第1パターン部152B、第2パターン部154B及び第3パターン部156Bを含んでいる。第1パターン部152Bは、X方向において第2パターン部154B及び第3パターン部156Bの間に位置している。第2パターン部154Bは、第1パターン部152Bに対して前方に位置している。第3パターン部156Bは、第1パターン部152Bに対して後方に位置している。
【0059】
第1パターン部152B、第2パターン部154B及び第3パターン部156Bの各々は、略ジグザグ形状となっている。第1パターン部152B、第2パターン部154B及び第3パターン部156Bの各々は、セル積層体102GのY方向の中心に対してY方向の両側に交互に配置された折返し部TBを含んでいる。
【0060】
第1パターン部152BのY方向の幅は、第2パターン部154B及び第3パターン部156Bの各々のY方向の幅より広くなっている。塗布フィラー150Bの各パターンのY方向の幅とは、各パターンのY方向の両側の折返し部TBの間のY方向の距離である。よって、第1パターン部152Bは、中央領域152Ba、左方領域152Bb及び右方領域152Bcを含んでいる。中央領域152Baは、X方向において第2パターン部154B及び第3パターン部156Bと重なる領域に位置している。左方領域152Bbは、中央領域152Baに対して左方に位置している。右方領域152Bcは、中央領域152Baに対して右方に位置している。
【0061】
図6を用いて説明した第1例と同様にして、塗布フィラー150BがZ方向に圧縮されてフィラー150が形成されている。幅広領域152は、中央領域152Ba、第2パターン部154B及び第3パターン部156Bに相当している。第1幅狭領域154は、左方領域152Bbに相当している。第2幅狭領域156は、右方領域152Bcに相当している。
【0062】
図8は、実施形態に係るフィラー150の形成方法の第3例を説明するための図である。図8を用いて説明する第3例は、以下の点を除いて、図6を用いて説明した第1例と同様である。
【0063】
図8に示す塗布フィラー150Cは、第1パターン部152C、第2パターン部154C及び第3パターン部156Cを含んでいる。第1パターン部152Cは、Y方向において第2パターン部154C及び第3パターン部156Cの間に位置している。第2パターン部154Cは、第1パターン部152Cに対して左方に位置している。第3パターン部156Cは、第1パターン部152Cに対して右方に位置している。
【0064】
第1パターン部152C、第2パターン部154C及び第3パターン部156Cは、略ストライプ形状となっている。第1パターン部152C、第2パターン部154C及び第3パターン部156Cの各々は、X方向に対して略平行に延在する複数の線状部LCを含んでいる。
【0065】
第1パターン部152CのX方向の幅は、第2パターン部154C及び第3パターン部156Cの各々のX方向の幅より広くなっている。塗布フィラー150Cの各パターンのX方向の幅とは、各パターンの線状部LCのX方向の長さである。
【0066】
図6を用いて説明した第1例と同様にして、塗布フィラー150CがZ方向に圧縮されてフィラー150が形成されている。幅広領域152は、第1パターン部152Cに相当している。第1幅狭領域154は、第2パターン部154Cに相当している。第2幅狭領域156は、第3パターン部156Cに相当している。
【0067】
図9は、実施形態に係るフィラー150の形成方法の第4例を説明するための図である。図9を用いて説明する第4例は、以下の点を除いて、図6を用いて説明した第1例と同様である。
【0068】
図9に示す塗布フィラー150Dは、第1パターン部152D、第2パターン部154D及び第3パターン部156Dを含んでいる。第1パターン部152Dは、X方向において第2パターン部154D及び第3パターン部156Dの間に位置している。第2パターン部154Dは、第1パターン部152Dに対して前方に位置している。第3パターン部156Dは、第1パターン部152Dに対して後方に位置している。
【0069】
第1パターン部152D、第2パターン部154D及び第3パターン部156Dは、略ストライプ形状となっている。第1パターン部152D、第2パターン部154D及び第3パターン部156Dの各々は、Y方向に対して略平行に延在する複数の線状部LDを含んでいる。
【0070】
第1パターン部152DのY方向の幅は、第2パターン部154D及び第3パターン部156Dの各々のY方向の幅より広くなっている。塗布フィラー150Dの各パターンのX方向の幅とは、各パターンの線状部LDのY方向の長さである。よって、第1パターン部152Dは、中央領域152Da、左方領域152Db及び右方領域152Dcを含んでいる。中央領域152Daは、X方向において第2パターン部154D及び第3パターン部156Dと重なる領域に位置している。左方領域152Dbは、中央領域152Daに対して左方に位置している。右方領域152Dcは、中央領域152Daに対して右方に位置している。
【0071】
図6を用いて説明した第1例と同様にして、塗布フィラー150DがZ方向に圧縮されてフィラー150が形成されている。幅広領域152は、中央領域152Da、第2パターン部154D及び第3パターン部156Dに相当している。第1幅狭領域154は、左方領域152Dbに相当している。第2幅狭領域156は、右方領域152Dcに相当している。
【0072】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
10 電池パック、100 電池モジュール、102 電池セル、102G セル積層体、104 ターミナル、110 収容ケース、112 レフトカバー、114 ライトカバー、116 ロアカバー、116a 熱伝導性接着剤、118 アッパカバー、122 レフト突起、124 ライト突起、150 フィラー、150A,150B,150C,150D 塗布フィラー、152 幅広領域、152A,152B,152C,152D 第1パターン部、152Ba,152Da 中央領域、152Bb,152Db 左方領域、152Bc,152Dc 右方領域、154 第1幅狭領域、154A,154B,154C,154D 第2パターン部、156 第2幅狭領域、156A,156B,156C,156D 第3パターン部、162 レフトボルト、164 ライトボルト、200 収容体、210 ロアケース、212 ロアプレート、212a アッパ冷却プレート、212b ロア冷却プレート、212c 冷媒、214 サイドフレーム、216 支持フレーム、216a レフト支持部、216b ライト支持部、220 アッパケース、230 シール材、250 収容空間、LC,LD 線状部、TA,TB 折返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9