(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112196
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】制御装置、基地局装置、中継局装置及びハンドオーバ制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/24 20090101AFI20240813BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20240813BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20240813BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240813BHJP
H04W 84/00 20090101ALI20240813BHJP
【FI】
H04W36/24
H04W48/16 135
H04W36/08
H04W16/26
H04W84/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017108
(22)【出願日】2023-02-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「基地局端末間の協調による動的ネットワーク制御に関する研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「高周波数帯中継通信端末の協調制御技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 健一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 一幸
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067AA23
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067JJ72
(57)【要約】
【課題】移動可能なRSを使用する無線システムにおいて、UEの通信効率を改善できる制御装置等を提供する。
【解決手段】制御装置内の第1推定部は、第2HO条件の第1UEが第1HO先にHO実行ありと仮定した状態で、第1HO先の第2UEを順次選択する。第1推定部は、選択された第2UEが第2HO先にHOを実行ありと仮定した状態での第1HO先の各UEの第1通信量と、第2HO先の各UEの第2通信量とを推定する。第1推定部は、第1UEが第1HO先にHO実行あり、第1HO先の各UEがHO実行なしと仮定した状態での第1HO先の各UEの第3通信量と第2HO先の各UEの第4通信量とを推定する。制御装置内の制御部は、UE毎の第1通信量の総和と第2通信量の総和との合計と、UE毎の第3通信量の総和と第4通信量の総和との合計とに基づき、第1UEの第1HO先へのHO及び、第2UEの第2HO先へのHOを制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局及び移動可能な中継局を制御すると共に、前記基地局又は前記中継局と無線で通信する端末装置における、前記基地局又は前記中継局であるハンドオーバ元からハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する制御装置であって、
第1のハンドオーバ条件及び第2のハンドオーバ条件が満たされた第1の端末装置が第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、前記第1のハンドオーバ先に接続されている第2の端末装置を順次選択し、選択された前記第2の端末装置が第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第1の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第2の通信量を推定すると共に、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態、かつ、前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での前記第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第3の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第4の通信量を推定する第1の推定部と、
前記端末装置毎の前記第1の通信量の総和と前記第2の通信量の総和との合計である第1のシステムスループットと、前記端末装置毎の前記第3の通信量の総和と前記第4の通信量の総和との合計である第2のシステムスループットとを算出する算出部と、
前記第1のシステムスループット及び前記第2のシステムスループットに基づき、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバ及び、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する制御部と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1の端末装置が前記ハンドオーバ元及び前記第1のハンドオーバ先から受信する無線信号の受信電力量に基づいて、前記第1の端末装置の第1のハンドオーバ条件が満たされているか否かを判定する第1の判定部と、
前記第1のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での第2の推定期間における前記ハンドオーバ元に接続している各端末装置の通信量を表す第5の通信量及び、前記第2の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第6の通信量を推定すると共に、
前記第1のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での前記第2の推定期間における前記ハンドオーバ元に接続している各端末装置の通信量を表す第7の通信量及び、前記第2の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第8の通信量を推定する第2の推定部と、
前記第1のハンドオーバ条件が満たされ、かつ、前記端末装置毎の前記第5の通信量の総和と前記第6の通信量の総和との合計が前記端末装置毎の前記第7の通信量の総和と前記第8の通信量の総和との合計を超えた場合に、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先への前記第2のハンドオーバ条件が満たされたと判定する第2の判定部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ハンドオーバ元と前記第1のハンドオーバ先と前記第2のハンドオーバ先とが第1の基地局に接続されており、
前記第1の推定部は、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、前記第1のハンドオーバ先に接続されている前記第2の端末装置を順次選択し、選択された前記第2の端末装置が前記第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での前記第1の推定期間における、前記第1の基地局及び前記第1の基地局に接続されている他の中継局に接続している各端末装置の通信量を表す第9の通信量を推定すると共に、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、かつ、前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での前記第1の推定期間における、前記第1の基地局及び前記第1の基地局に接続されている他の中継局に接続している各端末装置の通信量を表す第10の通信量を推定し、
前記算出部は、
前記端末装置毎の前記第1の通信量の総和と前記第2の通信量の総和と前記第9の通信量の総和との合計を前記第1のシステムスループット、前記端末装置毎の前記第3の通信量の総和と前記第4の通信量の総和と前記第10の通信量の総和との合計を前記第2のシステムスループットとして算出し、
前記制御部は、
前記第1のシステムスループット及び前記第2のシステムスループットに基づき、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバ及び、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1の推定部は、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、前記第1のハンドオーバ先に接続されている前記第2の端末装置を順次選択し、選択された前記第2の端末装置が前記第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での前記第1の推定期間における、前記第1の基地局とは異なる第2の基地局及び前記第2の基地局に接続されている他の中継局に接続している各端末装置の通信量を表す第13の通信量を推定すると共に、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、かつ、前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での前記第1の推定期間における、前記第2の基地局及び前記第2の基地局に接続されている他の中継局に接続している各端末装置の通信量を表す第14の通信量を推定し、
前記算出部は、
前記端末装置毎の前記第1の通信量の総和と前記第2の通信量の総和と前記第9の通信量の総和と前記第13の通信量の総和との合計を前記第1のシステムスループット、前記端末装置毎の前記第3の通信量の総和と前記第4の通信量の総和と前記第10の通信量の総和と前記第14の通信量の総和との合計を前記第2のシステムスループットとして算出し、
前記制御部は、
前記第1のシステムスループット及び前記第2のシステムスループットに基づき、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバ及び、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する
ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2のシステムスループットが前記第1のシステムスループットを超えた場合に、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバを実行すると共に、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを実行することを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第2のシステムスループットが前記第1のシステムスループットを超えたのでない場合に、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバを実行すると共に、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを実行しないことを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の制御装置。
【請求項7】
前記第2のハンドオーバ条件が満たされた場合に、前記第1のハンドオーバ先に接続している前記第2の端末装置の内、当該第1のハンドオーバ先との通信量が閾値未満の前記第2の端末装置があるか否かを判定する第3の判定部を有し、
前記第1の推定部は、
前記第3の判定部にて前記通信量が閾値未満の前記第2の端末装置がある場合に、前記第1の通信量及び前記第2の通信量及び前記第3の通信量及び前記第4の通信量を推定する推定動作を開始することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記中継局及び前記端末装置の位置を予測する位置予測部をさらに有し、
前記第1の推定部は、
前記位置予測部により予測される前記中継局及び前記端末装置の位置に基づいて、前記第1の通信量及び前記第2の通信量及び前記第3の通信量及び前記第4の通信量を推定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
基地局装置及び移動可能な中継局を制御すると共に、前記基地局装置又は前記中継局と無線で通信する端末装置における、前記基地局装置又は前記中継局であるハンドオーバ元からハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する制御装置を備えた基地局装置であって、
前記制御装置は、
第1のハンドオーバ条件及び第2のハンドオーバ条件が満たされた第1の端末装置が第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、前記第1のハンドオーバ先に接続されている第2の端末装置を順次選択し、選択された前記第2の端末装置が第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第1の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第2の通信量を推定すると共に、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態、かつ、前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での前記第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第3の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第4の通信量を推定する第1の推定部と、
前記端末装置毎の前記第1の通信量の総和と前記第2の通信量の総和との合計である第1のシステムスループットと、前記端末装置毎の前記第3の通信量の総和と前記第4の通信量の総和との合計である第2のシステムスループットとを算出する算出部と、
前記第1のシステムスループット及び前記第2のシステムスループットに基づき、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバ及び、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する制御部と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項10】
基地局及び移動可能な中継局装置を制御すると共に、前記基地局又は前記中継局装置と無線で通信する端末装置における、前記基地局又は前記中継局装置であるハンドオーバ元からハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する制御装置を備えた中継局装置であって、
前記制御装置は、
第1のハンドオーバ条件及び第2のハンドオーバ条件が満たされた第1の端末装置が第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、前記第1のハンドオーバ先に接続されている第2の端末装置を順次選択し、選択された前記第2の端末装置が第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第1の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第2の通信量を推定すると共に、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態、かつ、前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での前記第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第3の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第4の通信量を推定する第1の推定部と、
前記端末装置毎の前記第1の通信量の総和と前記第2の通信量の総和との合計である第1のシステムスループットと、前記端末装置毎の前記第3の通信量の総和と前記第4の通信量の総和との合計である第2のシステムスループットとを算出する算出部と、
前記第1のシステムスループット及び前記第2のシステムスループットに基づき、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバ及び、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する制御部と、
を有することを特徴とする中継局装置。
【請求項11】
基地局及び移動可能な中継局を制御すると共に、前記基地局又は前記中継局と無線で通信する端末装置における、前記基地局又は前記中継局であるハンドオーバ元からハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する制御装置が、
第1のハンドオーバ条件及び第2のハンドオーバ条件が満たされた第1の端末装置が第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、前記第1のハンドオーバ先に接続されている第2の端末装置を順次選択し、選択された前記第2の端末装置が第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第1の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第2の通信量を推定し、
前記第1のハンドオーバ条件及び前記第2のハンドオーバ条件が満たされた前記第1の端末装置が前記第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態、かつ、前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での前記第1の推定期間における前記第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第3の通信量及び、前記第1の推定期間における前記第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第4の通信量を推定し、
前記端末装置毎の前記第1の通信量の総和と前記第2の通信量の総和との合計である第1のシステムスループットと、前記端末装置毎の前記第3の通信量の総和と前記第4の通信量の総和との合計である第2のシステムスループットとを算出し、
前記第1のシステムスループット及び前記第2のシステムスループットに基づき、前記第1の端末装置における前記第1のハンドオーバ先へのハンドオーバ及び、前記第2の端末装置における前記第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する
各処理を実行することを特徴とするハンドオーバ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、基地局装置、中継局装置及びハンドオーバ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ミリ波やテラヘルツ波等を使用する無線通信においては、伝搬損失が大きい。このため、十分な無線カバレッジエリアを確保するためには、通信機器に利得の高いアンテナや、実効放射電力を大きくするための大電力機器を備えることが好ましい。しかしながら、例えば、スマートフォン等の端末装置であるUE(User Equipment)は、多くのケースにおいて、小型化及び低消費電力化が要求されるため、利得の高いアンテナや大電力機器を実装することは難しい。従って、十分な無線カバレッジエリアを確保できないことがある。特に、UEから基地局であるBS(Base Station)に信号を伝送する上りリンクの性能が劣化することが考えられる。この場合、上りリンクと下りリンクとで通信性能の差が大きくなる。そこで、移動可能な中継局であるRS(Relay Station)を備える無線システムが提案されている。
【0003】
RSは、例えば、車両やドローン等に実装され、BSとUEとの間の通信を中継する。RSの位置は、例えば、BSにより制御される。BSは、例えば、電波環境が悪いエリアや多数のUEが動作するエリアにRSを移動させて配置することができる。その結果、BSは、十分な無線カバレッジエリアを確保できる。特に、上りリンクの性能を改善できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-205600号公報
【特許文献2】特開2002-10314号公報
【特許文献3】特開2015-82756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
BSは、RSを適切な位置に配置することで上りリンクの性能を改善できる。ところが、RSの位置が変化すると、RSとUEとの間のパス損失も変化する。そこで、多くのケースにおいて、UEにおける受信電力量、例えば、RSRP(Reference Signal Received Power)に基づいて、UEのハンドオーバ(以下、単にHOと称する)が実行されることになる。しかしながら、RSの位置が変化する無線システムでは、HOの発生頻度が高く、HOの実行時には、UEのデータ通信が中断し、UEのスループットが低下する。すなわち、移動可能なRSを使用する無線システムでは、HOの発生頻度が高くなることで、UEのスループットが低下する。
【0006】
一つの側面では、移動可能な中継局を使用する無線システムにおいて、端末装置のスループットを改善できる制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様の制御装置は、基地局及び移動可能な中継局を制御すると共に、基地局又は中継局と無線で通信する端末装置における、基地局又は中継局であるハンドオーバ元からハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する。制御装置は、第1の推定部と、算出部と、制御部とを有する。第1の推定部は、第1のハンドオーバ条件及び第2のハンドオーバ条件が満たされた第1の端末装置が第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態で、第1のハンドオーバ先に接続されている第2の端末装置を順次選択する。第1の推定部は、選択された第2の端末装置が第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第1の通信量を推定する。第1の推定部は、選択された第2の端末装置が第2のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第2の通信量を推定する。第1の推定部は、第1の端末装置が第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態、かつ、第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での第1の推定期間における第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第3の通信量を推定する。第1の推定部は、第1の端末装置が第1のハンドオーバ先にハンドオーバを実行すると仮定した状態、かつ、第1のハンドオーバ先に接続している各端末装置がハンドオーバを実行しないと仮定した状態での第1の推定期間における第2のハンドオーバ先に接続している各端末装置の通信量を表す第4の通信量を推定する。算出部は、端末装置毎の第1の通信量の総和と第2の通信量の総和との合計である第1のシステムスループットと、端末装置毎の第3の通信量の総和と第4の通信量の総和との合計である第2のシステムスループットとを算出する。制御部は、第1のシステムスループット及び第2のシステムスループットに基づき、第1の端末装置における第1のハンドオーバ先へのハンドオーバ及び、第2の端末装置における第2のハンドオーバ先へのハンドオーバを制御する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面によれば、移動可能な中継局を使用する無線システムにおいて、端末装置のスループットを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1の無線システムの一例を示す説明図である。
【
図3A】
図3Aは、HOを実行すると仮定した状態での第2の推測期間の一例を示す説明図である。
【
図3B】
図3Bは、HOを実行しないと仮定した状態での第2の推測期間の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、#1のRSに接続中の第1のUEの第1のHO判定時の無線システムの一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、第1のHO判定に伴う第1のHO先である#2のRSに接続中の第2のUEの第2のHO判定時の無線システムの一例を示す説明図である。
【
図6A】
図6Aは、第1のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6B】
図6Bは、第1のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第1のHO実行処理に使用する第1の通信量又は第2の通信量のパターンの一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、スループットの推定値を補正するパラメータの一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、伝送路の推定方法の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、SINRの計算方法の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施例2の無線システム内のBSの一例を示す説明図である。
【
図13A】
図13Aは、実施例2の第1のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13B】
図13Bは、実施例2の第1のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施例3の無線システムの一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施例3の無線システム内の第1のBSの一例を示す説明図である。
【
図16A】
図16Aは、第2のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図16B】
図16Bは、第2のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17A】
図17Aは、第2のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17B】
図17Bは、第2のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、実施例4の無線システムの一例を示す説明図である。
【
図19】
図19は、実施例4の無線システム内の第1のBSの一例を示す説明図である。
【
図20A】
図20Aは、第3のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図20B】
図20Bは、第3のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図21A】
図21Aは、第3のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図21B】
図21Bは、第3のHO実行処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、実施例4と比較例との端末スループット及びシステムスループットのシミュレーション結果の一例を示す説明図である。
【
図23】
図23は、BSのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図24】
図24は、RSのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
無線システムの制御装置では、例えば、RSRPに基づいて、UEのHOを実行するか否かを判定する。制御装置は、HO元から受信する参照信号のRSRPに比較して、HO先から受信する参照信号のRSRPの方が大きい場合、HO元からHO先へのHOを実行すべきと判定する。尚、HO元は、HO対象のUEが接続しているソースBS/RS、HO先は、HO対象のUEがHOする先のターゲットBS/RSである。しかしながら、RSRPのみに基づいて、UEのHOを実行するか否かを判定する方法では、HOに起因してUEのスループットが低下する場合も考えられる。そこで、本出願人は、RSRPに加えて、UEのスループットも考慮して、HOを実行するか否かを判定する方法を提案している。
【0011】
BS及び移動可能なRSを含む無線システムにおいてUEのHOを制御する制御装置は、判定部と、推定部と、制御部とを有する。判定部は、UEがBS又はRSから受信する無線信号の受信電力量に基づいて、HO条件が満たされるか否かを判定する。推定部は、HOを実行すると仮定した状態での推定期間におけるUEの通信量を表す第21の通信量、及び、HOを実行しないと仮定した状態での推定期間におけるUEの通信量を表す第22の通信量を推定する。制御部は、HO条件が満たされており、かつ、第21の通信量が第22の通信量よりも多い場合に、UEにおけるHO元からHO先へのHOを実行する。その結果、移動可能なRSを使用する無線システムにおいて、UEのスループットを改善できる。
【0012】
制御装置では、HO元のUEの第21の通信量及び第22の通信量を考慮してUEのHOを実行するか否かを判定する。しかしながら、HO先に接続している他のUE等を考慮するものではなく、無線システム全体のシステムスループットを改善することが求められている。
【0013】
そこで、このような無線システム全体のシステムスループットを改善できる実施の形態につき、以下、図面に基づいて詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0014】
図1は、実施例1の無線システム1の一例を示す説明図である。
図1に示す無線システム1は、BS(Base Station)2と、複数のRS(Relay Station)3と、複数のUE(User Equipment)4とを有する。尚、無線システム1は、複数のRS3や複数のUE4に加えて複数のBS2を備えても良い。
【0015】
BS2は、1又は複数のUE4と無線で接続する基地局である。また、BS2は、1又は複数のRS3と無線で接続する。尚、BS2は、特に限定されるものではないが、例えば、4GをサポートするeNodeBや5GをサポートするgNodeB(NR基地局)である。RS3は、BS2とUE4との間の通信を中継する。また、RS3は、移動可能な、例えば、車両やドローン等に実装される。そして、RS3の位置は、BS2により制御される。よって、BS2は、例えば、電波環境が悪いエリアや多数のUE4が動作するエリアにRS3を配置できる。その結果、BS2は、十分な無線カバレッジエリアを確保できる。尚、BS2は、RS3の送信/受信ビームの方向を制御してもよい。
【0016】
BS2及びRS3は、それぞれ、定期的に参照信号を出力する。参照信号の送信電力は予め決められている。UE4は、BS2及びRS3から送信される参照信号の受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)を測定する。そして、BS2は、UE4により測定されるRSRPに基づいて、HOを実行するか否かを判定する。尚、以下の記載では、BS2及び/又はRS3を総称して「BS/RS」と呼ぶことがある。
【0017】
例えば、UE4は、RS3を介することなくBS2と無線で接続することも可能である。この際、BS2及びRS3は、それぞれ、定期的に参照信号を出力する。UE4は、BS2及びRS3から送信される参照信号のRSRPを測定する。RS3がUE4に近づくと、RS3から受信する参照信号のRSRPがBS2から受信する参照信号のRSRPよりも大きくなる。更に、RS3がUE4から離れると、RS3から受信する参照信号のRSRPがBS2から受信する参照信号のRSRPよりも小さくなる。そして、BS2は、UE4により測定されるRSRPに基づいて、HOを実行するか否かを判定する。
【0018】
尚、説明の便宜上、
図1に示す複数台のRS3は、#1のRS3、#2のRS3及び#3のRS3とする。複数台のUE4は、#1のRS3と無線で接続する2台の#11及び#12の第1のUE4と、#2のRS3と無線で接続する#21、#22及び#23の3台の第2のUE4と、#3のRS3と無線で接続する#31の1台の第3のUE4とする。BS2は、#1のRS3、#2のRS3及び#3のRS3と無線で接続するものとする。
【0019】
例えば、#1のRS3は、#11及び#12の第1のUE4と無線で接続するため、#11及び#12の第1のUE4のHO元となる。#2のRS3は、#21、#22及び#23の第2のUE4と無線で接続するため、#21、#22及び#23の第2のUE4のHO元となる。#3のRS3は、#31の第3のUE4と無線で接続するため、#31の第3のUE4のHO元となる。また、#12の第1のUE4が後述するHO条件を満たした場合、例えば、#2のRS3が#12の第1のUE4のHO先となる。
【0020】
図2は、BS2の一例を示す説明図である。
図2に示すBS2は、通信IF(Interface)11と、信号処理部12と、送信処理部13と、無線通信回路14と、受信処理部15と、アンテナ16と、メモリ17と、プロセッサ18とを有する。
【0021】
通信IF11は、ネットワークを介して他のBS2やMME(Mobility Management Entity)に接続することができる。信号処理部12は、RS3やUE4に送信するメッセージを生成する。この際、信号処理部12は、通信IF11を介して受信する情報及びメモリ17に保存されている情報を利用してメッセージを生成しても良い。また、信号処理部12は、RS3やUE4から受信するメッセージを処理する。この際、信号処理部12は、必要に応じて、メッセージの処理結果をメモリ17に保存すると共に、通信IF11を利用して他のBS2又はMMEにメッセージを送信する。
【0022】
送信処理部13は、RS3やUE4に送信すべき下りリンク信号を生成する。送信処理部13は、例えば、符号化器や変調器等を備えても良い。無線通信回路14は、送信処理部13により生成される下りリンク信号を、アンテナ16を介して出力する。また、無線通信回路14は、アンテナ16を介して入力される上りリンク信号を受信する。従って、無線通信回路14は、下りリンク信号の周波数を変換するアップコンバータ、送信アンプ、受信アンプや、上りリンク信号の周波数を変換するダウンコンバータ等を備えても良い。受信処理部15は、RS3やUE4から送信される上りリンク信号を受信する。従って、受信処理部15は、例えば、復調器や復号化器等を備えても良い。
【0023】
メモリ17には、RS3やUE4から受信する情報や、通信IF11を介して受信する情報が保存される。制御装置5は、例えば、プロセッサ18やメモリ17を含むマイクロコンピュータにより実現される。プロセッサ18は、メモリ17に保存されているHO制御プログラムを実行することで、機能として制御装置5を有する。制御装置5は、UE4のHOを実行するか否かを判定するために、位置予測部21と、伝送路推定部22と、第1の判定部23と、第2の推定部24と、第2の判定部25と、第1の推定部26と、算出部27と、制御部28とを有する。また、メモリ17には、制御装置5による判定結果が保存される。
【0024】
位置予測部21は、BS2のセル内に存在するRS3やUE4の位置を管理すると共に、RS3やUE4の位置を予測する。この際、位置予測部21は、例えば、
図3Aに示す時刻t0から時刻t0+αTまでの第2の推定期間内のRS3やUE4の位置を予測する。時刻t0は、現在時刻である。尚、BS2に無線で接続するUE4は、RS3を介してBS2に無線で接続するUE4や、RS3を介さずにBS2に無線で接続するUE4である。
【0025】
伝送路推定部22は、BS2とUE4との間の伝送路の損失と、RS3とUE4との間の伝送路の損失とを推定する。すなわち、伝送路推定部22は、UE4とサービングBS/RSとの間の伝送路の損失を推定する。サービングBS/RSは、UE4が接続しているHO元のBS2やRS3である。また、伝送路推定部22は、UE4とターゲットBS/RSとの間の伝送路の損失を推定する。ターゲットBS/RSは、BS2のセル内に存在するBS2やRS3のうち、サービングBS/RS以外の、例えば、HO先のBS2やRS3である。そして、伝送路推定部22は、伝送路の損失に基づいて、UE4における受信電力量(RSRP)を算出する。つまり、伝送路推定部22は、HO元から送信される信号の受信電力量RSRP_servと、HO先から送信される信号の受信電力量RSRP_targとを算出する。
【0026】
尚、伝送路推定部22は、位置予測部21により予測されるRS3及びUE4の位置に基づいてRS3とUE4との間の伝送路を推定する。この際、伝送路推定部22は、UE4から送信されるRSRPについての測定レポートを利用してもよい。
【0027】
第1の判定部23は、伝送路推定部22により得られるUE4における受信電力量に基づいて、受信電力量に係わるUE4の第1のHO条件が満たされているか否かを判定する。尚、第1のHO条件は、HO元に接続するUE4がHOを実行する第1のHO実行と判断するための受信電力量による判定条件である。第1の判定部23は、UE4のHO先から送信される参照信号の受信電力量RSRP_targがHO元から送信される参照信号の受信電力量RSRP_servを超えたか否かを判定する。第1の判定部23は、受信電力量RSRP_targが受信電力量RSRP_servを超えた場合、UE4の第1のHO条件が満たされていると判定する。
【0028】
第2の推定部24は、通信量HO無及び通信量HO有をUE4毎に推定する。通信量HO無は、HOを実行しないと仮定した状態での第2の推定期間におけるUE4の後述する第7の通信量又は第8の通信量である。HOを実行しないと仮定した状態とは、HO実行なしと仮定した状態である。通信量HO有は、HOを実行すると仮定した状態での第2の推定期間におけるUE4の後述する第5の通信量又は第6の通信量である。HOを実行すると仮定した状態とは、HO実行ありと仮定した状態である。尚、第2の推定部24は、伝送路推定部22により推定される伝送路の損失を利用して通信量を推定してもよい。
【0029】
第2の推定部24は、第1のHO条件が満たされた第1のUE4が第1のHO先にHOを実行すると仮定した状態での第2の推定期間におけるHO元に接続している各UE4の通信量を表す第5の通信量を推定する。尚、HO元が、例えば、#1のRS3の場合、HO元に接続している各UE4は第1のUE4である。第2の推定部24は、第1のHO条件が満たされた第1のUE4が第1のHO先にHOを実行すると仮定した状態での第2の推定期間における第1のHO先に接続している各UE4の通信量を表す第6の通信量を推定する。尚、第1のHO先が、例えば、#2のRS3の場合、第1のHO先に接続している各UE4は第2のUE4である。
【0030】
第2の推定部24は、第1のHO条件が満たされた第1のUE4がHOを実行しないと仮定した状態での第2の推定期間におけるHO元に接続している各UE4の通信量を表す第7の通信量を推定する。また、第2の推定部24は、第1のHO条件が満たされた第1のUE4がHOを実行しないと仮定した状態での第2の推定期間における第1のHO先に接続している各UE4の通信量を表す第8の通信量を推定する。
【0031】
第2の判定部25は、UE4毎の第5の通信量の総和と第6の通信量の総和との合計で第1のHO有のシステムスループットを算出する。更に、第2の判定部25は、UE4毎の第7の通信量の総和と第8の通信量の総和との合計で第1のHO無のシステムスループットを算出する。第2の判定部25は、第1のHO有のシステムスループットが第1のHO無のシステムスループットを超えたか否かを判定する。第2の判定部25は、第1のHO有のシステムスループットが第1のHO無のシステムスループットを超えた場合に、第1のUE4における第1のHO先へのシステムスループットに係る第2のHO条件が満たされたと判定する。尚、第2のHO条件は、UE4がHOを実行する第1のHO実行と判断するためのシステムスループットによる判定条件である。
【0032】
第1の推定部26は、HO元のUE4の第1のHO先への第1のHO実行と判断した場合に、第1のHO先に接続するUE4がHOを実行する第2のHO実行と判断するための推定動作を開始することになる。第1の推定部26は、例えば、第1のHO条件及び第2のHO条件が満たされた第1のUE4が第1のHO先にHOを実行すると仮定した状態で、第1のHO先に接続されている第2のUE4を順次選択する。尚、第1のHO先が、例えば、#2のRS3の場合、第1のHO先に接続している各UE4は第2のUE4である。そして、第1の推定部26は、選択された第2のUE4が第2のHO先にHOを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における第1のHO先に接続している各UE4の通信量を表す第1の通信量を推定する。尚、第2のHO先が、例えば、#3のRS3の場合、第2のHO先に接続している各UE4は第3のUE4である。また、第1の推定部26は、選択された第2のUE4が第2のHO先にHOを実行すると仮定した状態での第1の推定期間における第2のHO先に接続している各UE4の通信量を表す第2の通信量を推定する。
【0033】
第1の推定部26は、第1のUE4が第1のHO先にHOを実行、かつ、第1のHO先に接続している各UE4がHOを実行しないと仮定した状態での第1の推定期間における第1のHO先に接続している各UE4の通信量を表す第3の通信量を推定する。第1の推定部26は、第1のUE4が第1のHO先にHOを実行、かつ、第1のHO先に接続している各UE4がHOを実行しないと仮定した状態での第1の推定期間における第2のHO先に接続している各UE4の通信量を表す第4の通信量を推定する。
【0034】
算出部27は、UE4毎の第1の通信量の総和と第2の通信量の総和との合計である第2のHO有のシステムスループットを算出する。第2のHO有のシステムスループットは、第1のUE4及び第2のUE4のHOを実行すると仮定した場合の第1のシステムスループットである。更に、算出部27は、UE4毎の第3の通信量の総和と第4の通信量の総和との合計である第2のHO無のシステムスループットを算出する。第2のHO無のシステムスループットは、第1のUE4のHOのみを実行すると仮定した場合の第2のシステムスループットである。
【0035】
制御部28は、第2のHO有のシステムスループット及び第2のHO無のシステムスループットに基づき、第1のUE4における第1のHO先へのHO及び、第2のUE4における第2のHO先へのHOを制御する。制御部28は、第2のHO有のシステムスループットが第2のHO無のシステムスループットを超えたか否かを判定する。制御部28は、第2のHO有のシステムスループットが第2のHO無のシステムスループットを超えた場合、第2のHO条件を満たした第1のUE4における第1のHO先へのHOを実行すると共に、第2のUE4における第2のHO先へのHOを実行する。制御部28は、第2のHO有のシステムスループットが第2のHO無のシステムスループットを超えたのでない場合、第2のHO条件を満たした第1のUE4の第1のHO先へのHOを実行すると共に、第2のUE4の第2のHO先へのHOを実行しない。
【0036】
尚、説明の便宜上、BS2が制御装置5を実装する場合を例示したが、RS3内に制御装置5を実装しても良く、適宜変更可能である。また、制御装置5は、例えば、プロセッサ18やメモリ17を含むマイクロコンピュータにより実現される場合を例示した。しかしながら、ハードウェア回路で制御装置5の機能を実現しても良く、適宜変更可能である。
【0037】
図3Aは、HOを実行すると仮定した状態での第2の推測期間の一例を示す説明図である。
図3Bは、HOを実行しないと仮定した状態での第2の推測期間の一例を示す説明図である。尚、横軸は、時間を表す。「t0」は、現在時刻である。「k」は、HO手順が開始される時刻である。「T」は、HOに起因してUE4のデータ伝送が中断する期間を表すHO期間である。HO期間Tは、特に限定されるものではないが、例えば、10m秒程度である。「α」は、スループットを推定する期間を指定する係数であり、シミュレーション等により事前に設定される。尚、αは、1よりも大きく、例えば、αの値は、5~10であってもよい。縦軸は、UE4のスループットを表す。
【0038】
スループットに基づいてHOを実行するか否かを判定する場合、制御装置5は、時刻t0から時刻t0+αTまでの第2の推定期間における通信量を推定する。具体的には、制御装置5は、
図3Aに示すHOを実行するケース及び、
図3Bに示すHOを実行しないケースそれぞれについて、時刻t0から時刻t0+αTまでの第2の推定期間における通信量を推定する。尚、以下の記載では、時刻t0から時刻t0+αTまでの第2の推定期間を「スループット推定期間」と呼ぶことがある。スループット推定期間は、通信量(通信データ量又はスループット)を推定する期間である。
【0039】
第2の推定期間は、
図3Aに示すように、第1~第3の期間から構成される。第1の期間は、現在時刻t0から受信電力に係わる第1のHO条件が満たされる時刻kまでの期間である。第2の期間は、第1の期間の終了時刻kからHOの実行期間Tが経過するまでの期間である。第3の期間は、第2の期間の終了時刻k+Tからスループット推定期間が終了するまでの期間である。
【0040】
HOを実行すると仮定した状態では、制御装置5は、
図3Aに示すスループットTP_HO前と、スループットTP_HO中と、スループットTP_HO後とを推定する。スループットTP_HO前は、現在時刻からスループット手順が開始されるまでの期間のUE4のスループットである。スループットTP_HO中は、スループット手順が実行されている期間中のUE4のスループットである。スループットTP_HO後は、HO手順が終了したときからスループット推定期間が終了するまで期間のUE4のスループットである。尚、スループットTP_HO前は、UE4からソースBS/RS(HO元)への通信のスループットに相当し、スループットTP_HO後は、UE4からターゲットBS/RS(HO先)への通信のスループットに相当する。また、スループットTP_HO中は、本実施例では、実質的にゼロである。
【0041】
HOを実行しないと仮定した状態では、制御装置5は、
図3Bに示すスループットTP_HO無を推定する。すなわち、スループットTP_HO無は、ソースBS/RS(HO元)からターゲットBS/RS(HO先)へのHOを実行しないと仮定した場合における、スループット推定期間中のUE4からソースBS/RS(HO元)への通信のスループットである。
【0042】
スループット推定期間内の通信量は、上述したスループットから計算される。例えば、HOを実行すると仮定した状態での通信量は(数式1)で表現できる。
【0043】
【0044】
また、HOを実行しないと仮定した状態での通信量は(数式2)で表現できる。
【0045】
【0046】
尚、
図3A及び
図3Bでは、第2の推定部24で使用する第2の推定期間を例示したが、第1の推定部26で使用する第1の推定期間もほぼ同様である。
【0047】
図4は、#1のRS3に接続中の第1のUE4の第1のHO判定時の無線システム1の一例を示す説明図である。第1のHO判定時とは、HO元のUE4の第1のHO先へのHOを実行する第1のHO条件及び第2のHO条件を満たした状態である。
図4に示す無線システム1では、#1のRSの移動に応じて、#12の第1のUE4のHO元から第1のHO先である#2のRS3への第1のHO条件及び第2のHO条件を満たした状態である。
【0048】
図5は、第1のHO判定に伴う第1のHO先である#2のRS3に接続中の第2のUE4の第2のHO判定時の無線システム1の一例を示す説明図である。第2のHO判定時とは、第1のHO先のUE4の第2のHO先へのHOを実行すると判断した状態である。
図5に示す無線システム1では、#12の第1のUE4のHO元から第1のHO先である#2のRS3への第1のHO条件及び第2のHO条件を満たした状態である。更に、無線システム1では、#2のRS3への第1のHO条件及び第2のHO条件を満たした後、第1のHO先である#2のRS3に接続中の#23の第2のUE4が第2のHO先である#3のRS3へのHOを実行すると判断した状態である。そして、#12の第1のUE4は、#1のRS3から#2のRS3へのHOを実行すると共に、#23の第2のUE4は、#2のRS3から#3のRS3へのHOを実行することになる。
【0049】
図6Aは、第1のHO実行処理に関わる制御装置5の処理動作の一例を示すフローチャートである。第1のHO実行処理は、制御装置5により定期的に実行されるものである。UE4が接続しているBS2又はRS3を「サービングBS/RS」、サービングBS/RS以外のBS2又はRS3を「ターゲットBS/RS」と呼ぶことがある。第1のHO実行処理は、HO元、第1のHO先及び第2のHO先に接続する各UE4の通信量を考慮しながら、第1のHO及び第2のHOを制御する処理である。
【0050】
制御装置5内の位置予測部21は、BS2のセル内に存在する各RS3の位置を予測する(ステップS11)。具体的には、位置予測部21は、
図3A及び
図3Bに示すスループット推定期間(時刻t0から時刻t0+αT)における各RS3の位置を予測する。ここで、時刻t0は、現在時刻である。この場合、RSjの位置は(数式3)で表現できる。尚、RSjは、BS2により管理されるRS3の中の任意のRSである。
【0051】
【0052】
A_RSj(t0)は、時刻t0におけるRSjの位置を表す3次元位置ベクトルである。ここで、BS2がRSjの位置を制御する場合は、時刻t0におけるRSjの位置ベクトルは既知である。また、時刻t0におけるRSjの位置ベクトルが既知でない場合、位置予測部21は、時刻t0におけるRSjの位置を検出する。尚、位置予測部21は、RSjから送信される信号に基づいてRSjの位置を検出できる。
【0053】
V_RSj(t)は、RSjの速度を表す3次元速度ベクトルである。ここで、BS2がRSjの位置を制御する場合は、RSjの速度ベクトルは既知である。また、RSjの速度ベクトルが既知でない場合、位置予測部21は、RSjの移動を予測する。ここで、物体の移動の予測は、公知の技術により実現されるものとする。
【0054】
A_RSj(τ)は、時刻τにおけるRSjの位置を表す3次元位置ベクトルである。τは、スループット推定期間内の任意の時刻である。従って、位置予測部21は、スループット推定期間内での各RS3の位置(すなわち、移動の軌跡)を予測できる。
【0055】
位置予測部21は、BS2のセル内に存在する各UE4の位置を予測する(ステップS12)。具体的には、位置予測部21は、
図3A及び
図3Bに示す時刻t0から時刻t0+αTまでのスループット推定期間内の各UE4の位置を予測する。ここで、時刻t0は、現在時刻である。この場合、UEiの位置は、(数式4)で表現できる。尚、UEiは、BS2のセル内に存在するUE4の中の任意のUE4とする。
【0056】
【0057】
A_UEi(t0)は、時刻t0におけるUEiの位置を表す3次元位置ベクトルである。位置予測部21は、時刻t0におけるUEiの位置を検出する。尚、位置予測部21は、UEiから送信される信号又はRS3からの通知に基づき、UEiの位置を検出する。
【0058】
V_UEi(t)は、UEiの速度を表す3次元速度ベクトルである。位置予測部21は、スループット推定期間におけるUEiの移動を予測する。A_UEi(τ)は、時刻τにおけるUEiの位置を表す3次元位置ベクトルである。従って、位置予測部21は、スループット推定期間内での各UE4の位置(すなわち、移動の軌跡)を予測できる。
【0059】
伝送路推定部22は、スループット推定期間におけるHO元であるサービングBS/RSとUEiとの間の伝送路の損失を推定する(ステップS13)。そして、伝送路推定部22は、推定した伝送路の損失に基づいて、サービングBS/RSから送信される参照信号に対するUEiにおける受信電力量P_serv_UEiを計算する。この際、時刻τにおける受信電力量P_serv_UEiは、(数式5)で表現できる。
【0060】
【0061】
P_txは、サービングBS/RSから送信される参照信号の送信パワーである。尚、本実施例では、無線システム1において使用される参照信号の送信パワーは全てのBS2及びRS3において同じとする。G_servは、サービングBS/RSの送信アンテナの利得であって、既知とする。G_UEiは、UE4の受信アンテナの利得である。PL_serv_UEiは、サービングBS/RSとUEiとの間の伝送路の損失である。
【0062】
また、伝送路推定部22は、スループット推定期間におけるHO元であるターゲットBS/RSとUE4との間の伝送路の損失を推定する。そして、伝送路推定部22は、推定した伝送路の損失に基づいて、ターゲットBS/RSから送信される参照信号に対するUEiにおける受信電力量P_targ_UEiを計算する。この際、時刻τにおける受信電力量P_targ_UEiは、(数式6)で表現できる。
【0063】
【0064】
G_targは、ターゲットBS/RSの送信アンテナの利得であって、既知とする。PL_targ_UEiは、ターゲットBS/RSとUEiとの間の伝送路の損失である。
【0065】
つまり、第1の判定部23は、UE4に対するHO元であるサービングBS/RSの受信電力量P_serv_Ueiと、UE4に対するHO先であるターゲットBS/RSの受信電力量P_targ_UEiとを算出する(ステップS14)。
【0066】
無線システム1においては、各RS3及び各UE4が移動できるので、BS/RSとUE4との間の伝送路の損失は時間経過に応じて変化し得る。すなわち、UE4がBS/RSから送信される参照信号の電力は、時間経過に応じて変化し得る。尚、伝送路の損失を推定する方法については後述する。
【0067】
第1の判定部23は、HO先から送信される参照信号の受信電力量が、HO元から送信される参照信号の受信電力量に所定のマージンMを加算した値を超えたか否かを判定する(ステップS15)。具体的には、第1の判定部23は、伝送路推定部22により推定される受信電力量に基づいて、(数式7)が満たされている否かを判定する。
【0068】
【0069】
第1の判定部23は、スループット推定期間内の所定の期間((数式7)では、時刻k-xから時刻kまでの期間)において、HO先の受信電力量P_targが、HO元の受信電力量P_servに所定のマージンMを加算した値を超えたか否かを判定する。第1の判定部23は、HO先の受信電力量P_targがHO元の受信電力量P_servに所定のマージンMを加算した値を超えた場合(ステップS15:Yes)、受信電力量に係わる第1のHO条件を満たしていると判定する(ステップS16)。すなわち、第1の判定部23は、UE4がHO元に接続する状態よりもHO先に接続する状態の方が有利と判定する。この場合、第1の判定部23は、第1のHO条件を満たしていると判断した場合、第1のHO条件を満たしたUE4を指定する(ステップS17)。尚、「x」は、スループット推定期間より短い任意の期間である。また、マージンMは、シミュレーション等に基づいて決定してもよいし、「ゼロ」であってもよい。
【0070】
第1の判定部23は、HO先の受信電力量P_targがHO元の受信電力量P_servに所定のマージンMを加算した値を超えたのでない場合(ステップS15:No)、受信電力量に係わる第1のHO条件を満たしていないと判定する。すなわち、第1の判定部23は、HO元に接続する状態に比較してHO先に接続する状態の方が不利と判定する。この場合、制御装置5は、
図6Aに示す処理動作を終了する。
【0071】
第2の推定部24は、受信電力量に係わる第1のHO条件を満たすUE4を指定した後、第1のHO条件を満たしたUE4がHO実行ありと仮定した状態でのHO元に接続している各UE4の第5の通信量を推定する(ステップS18)。更に、第2の推定部24は、第1のHO条件を満たしたUE4がHO実行ありと仮定した状態での第1のHO先に接続している各UE4の第6の通信量を推定し(ステップS19)、
図6Bに示すステップS20の処理に移行する。第2の推定期間は、
図3Aに示す例では、現在時刻t0から時刻t0+αTまでの期間に相当する。この場合、HO実行ありと仮定した状態での第2の推定期間における各UE4の通信量E_HO有は、(数式8)で表現できる。
【0072】
【0073】
尚、k、T、αは、
図3A及び
図3Bを参照して説明した通りである。すなわち、kは、HO手順を開始する時刻である。例えば、時刻t0において時刻t0から時刻t0+αTまでの期間内での受信電力量の変化を推定することにより、受信電力量に係わる第1のHO条件が満たされる時刻が推定される。この場合、kは、第1のHO条件が満たされる時刻である。Tは、HO手順が実行される期間である。αは、第2の推定期間の長さを指定する係数である。ここで、第2の推定期間が長すぎると、位置予測部21による予測の精度が低くなるおそれがある。よって、αの値は、第2の推定期間の全領域において位置予測部21による予測の精度が十分に高くなるように決定することが好ましい。また、αの値は、シミュレーション等により、スループットが最も高くなるように決定してもよい。
【0074】
従って、TP_HO前は、現在時刻からHO手順の開始までの期間における、UE4からHO元への通信のスループットである。TP_HO後は、HO手順の終了から第2の推定期間の終了までの期間における、UE4からHO先への通信のスループットである。尚、この例では、HO手順が実行されている期間内のUE4のスループットはゼロとする。
【0075】
図6Bにおいて第2の推定部24は、第1のHO条件を満たしたUE4がHO実行なしと仮定した状態での第2の推定期間におけるHO元に接続している各UE4の第7の通信量を推定する(ステップS20)。更に、第2の推定部24は、第1のHO条件を満たしたUE4がHO実行なしと仮定した状態での第2の推定期間における第1のHO先に接続している各UE4の第8の通信量を推定する(ステップS21)。尚、HOを実行しないと仮定した状態での第2の推定期間内の各UE4の通信量E_HO無は、(数式9)で表現できる。尚、TP_HO無は、UE4からHO元への通信のスループットである。
【0076】
【0077】
スループットTP(TP_HO前、TP_HO後、TP_HO無)は、(数式10)で表現できる。
【0078】
【0079】
BWは、信号の帯域幅である。SINRは、TP_HO前及びTP_HO無の計算では
、HO元がUE4から受信する信号についての信号対干渉プラス雑音電力比である。SINRは、TP_HO後の計算では、HO先がUE4から受信する信号についての信号対干渉プラス雑音電力比である。ここで、RS3及びUE4は、それぞれ移動し得る。そして、SINRは、RS3及びUE4の位置に応じて変化する。従って、SINRは、一定ではなく、時間経過に応じて変化し得る。SINRの推定については後述する。
【0080】
尚、第2の推定部24は、第2の推定期間内の通信量を推定する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第2の推定期間内の平均スループットを推定してもよい。
【0081】
第2の推定部24は、第5の通信量、第6の通信量、第7の通信量及び第8の通信量を推定する。そして、第2の判定部25は、UE4毎の第5の通信量の総和と、UE4毎の第6の通信量の総和との合計で第1のHO有のシステムスループットを算出する(ステップS22)。尚、第1のHO有のシステムスループットは、第1のUE4が第1のHO先に第1のHOを実行すると仮定した場合のシステムスループットである。更に、第2の判定部25は、UE4毎の第7の通信量の総和と、UE4毎の第8の通信量の総和との合計で第1のHO無のシステムスループットを算出する(ステップS23)。尚、第1のHO無のシステムスループットは、第1のUE4が第1のHO先に第1のHOを実行しないと仮定した場合のシステムスループットである。
【0082】
第2の判定部25は、第1のHO有のシステムスループットが第1のHO無のシステムスループットを超えたか否かを判定する(ステップS24)。第2の判定部25は、第1のHO有のシステムスループットが第1のHO無のシステムスループットを超えた場合(ステップS24:Yes)、第1のUE4の第1のHO先への第2のHO条件が満たしたと判断する(ステップS25)。そして、第2の判定部25は、
図7に示すステップS31の処理に移行する。
【0083】
第2の判定部25は、第1のHO有のシステムスループットが第1のHO無のシステムスループットを超えたのでない場合(ステップS24:No)、第1のHO条件を満たした第1のUE4に対してHOを実行すべきでないと判断する。そして、
図6Bに示す処理動作を終了する。
【0084】
そして、制御装置5では、受信電力量に係わる第1のHO条件及びシステムスループットに係わる第2のHO条件の双方を考慮して、第1のUE4のHOを実行するか否かを判定する。その結果、受信電力量に係わる第1のHO条件が満たされる場合でも、システムスループットに係わる第2のHO条件が満たされない場合、制御装置5は、第1のUE4のHOを実行しない。尚、無線システム1全体のシステムスループットは、(数式11a)で表現できる。そして、スループット推定期間のシステム容量は、(数式11b)で表現できる。HOを実行したUE4のスループット推定期間のスループットは、(数11式c)で表現できる。更に、HOを実行しないUE4のスループット推定期間のスループットは、(数式11d)で表現できる。
【0085】
【0086】
図7は、第1のHO実行処理に関わる制御装置5の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図7において制御装置5内の第1の推定部26は、
図6Bに示すステップS25にて第2のHO条件を満たしたと判定されると、第2のHO条件が満たした第1のUE4の第1のHO先に接続している第2のUE4があるか否かを判定する(ステップS31)。
【0087】
第1の推定部26は、第1のHO先に接続している第2のUE4がある場合(ステップS31:Yes)、第3の通信量を推定する(ステップS32)。つまり、第1の推定部26は、第1のUE4がHO実行あり、かつ、第2のUE4のHO実行なしと仮定した状態での第1の推定期間における第1のHO先に接続している各UE4の第3の通信量を推定する。更に、第1の推定部26は、第2のHO条件を満たした第1のUE4がHO実行あり、かつ、第2のUE4のHO実行なしと仮定した状態での第1の推定期間における第2のHO先に接続している各UE4の第4の通信量を推定する。
【0088】
更に、第1の推定部26は、第1のHO先に接続している第2のUE4の内、未指定の第2のUE4を指定する(ステップS33)。第1の推定部26は、未指定の第2のUE4を指定した後、第1の通信量を推定する(ステップS34)。つまり、第1の推定部26は、第2のHO条件を満たした第1のUE4がHO実行あり、かつ、指定した第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での第1の推定期間における第1のHO先に接続している各UE4の第1の通信量を推定する。
【0089】
尚、第1の通信量は、
図1に示す無線システム1の場合、#12の第1のUE4及び#21の第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での#21~#23の第2のUE4の各通信量である。また、第1の通信量は、#12の第1のUE4及び#22の第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での#21~#23の第2のUE4の各通信量である。また、第1の通信量は、#12の第1のUE4及び#23の第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での#21~#23の第2のUE4の各通信量である。
【0090】
更に、第1の推定部26は、第2のHO条件を満たした第1のUE4がHO実行あり、かつ、指定した第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での第1の推定期間における第2のHO先に接続している各UE4の第2の通信量を推定する(ステップS35)。尚、第2の通信量は、
図1に示す無線システム1の場合、#12の第1のUE4及び#21の第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での#31の第3のUE4の通信量である。また、第2の通信量は、#12の第1のUE4及び#22の第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での#31の第3のUE4の通信量である。また、第2の通信量は、#12の第1のUE4及び#23の第2のUE4がHO実行ありと仮定した状態での#31の第3のUE4の通信量である。
【0091】
そして、第1の推定部26は、第1のHO先に接続する未指定の第2のUE4があるか否かを判定する(ステップS36)。第1の推定部26は、未指定の第2のUE4がある場合(ステップS36:Yes)、未指定の第2のUE4を指定すべく、ステップS33の処理に戻る。
【0092】
図8は、第1のHO実行処理に使用する第1の通信量又は第2の通信量のパターンの一例を示す説明図である。第1の推定部26は、HO実行ありと仮定した第1のUE4及び指定の第2のUE4の組合せのパターン毎に、推定した第1の通信量及び第2の通信量をメモリ17内に保持している。
【0093】
算出部27は、未指定の第2のUE4がない場合(ステップS36:No)、推定したUE4毎の第3の通信量の総和と、推定したUE4毎の第4の通信量の総和との合計で第2のHO無のシステムスループットを算出する(ステップS37)。尚、第2のHO無のシステムスループットは、第1のHO先への第1のUE4の第1のHOのみを実行すると仮定した場合のシステムスループットである。
【0094】
更に、算出部27は、推定したUE毎の第1の通信量の総和と、推定した第2の通信量の総和との合計で第2のHO有のシステムスループットを算出する(ステップS38)。尚、第2のHO有のシステムスループットは、第1のHO先への第1のUE4の第1のHO及び、第2のHO先への第2のUE4の第2のHOを実行すると仮定した場合のシステムスループットである。
【0095】
制御部28は、第2のHO有のシステムスループットが第2のHO無のシステムスループットを超えたか否かを判定する(ステップS39)。制御部28は、第2のHO有のシステムスループットが第2のHO無のシステムスループットを超えた場合(ステップS39:Yes)、第1のHO及び第2のHOを実行する方が有利と判断する。そして、制御部28は、最大の第1の通信量又は第2の通信量のパターンを特定する(ステップS40)。つまり、制御部28は、
図8に示す組合せパターン毎に保持している第1の通信量及び第2の通信量の中から最大の通信量を特定し、特定した通信量の組合せパターンを特定する。尚、組合せパターンは、前述した通り、HO実行ありと仮定した第1のUE4及び指定の第2のUE4の組合せである。
【0096】
そして、制御部28は、第2のHO条件を満たした第1のUE4における第1のHO先への第1のHOを実行すると共に、特定された組合せパターンに相当する第2のUE4における第2のHO先への第2のHOを実行する(ステップS41)。そして、
図7に示す処理動作を終了する。
【0097】
例えば、制御部28は、最大の通信量が、例えば、HO実行ありと仮定した#12の第1のUE4及び#23の第2のUE4の組合せパターンの第1の通信量である場合、当該組合せパターンに相当する第2のHO対象である#23の第2のUE4を特定する。そして、制御部28は、#12の第1のUE4の第1のHO先への第1のHOを実行すると共に、#23の第2のUE4の第2のHO先への第2のHOを実行することになる。
【0098】
また、制御部28は、第2のHO有のシステムスループットが第2のHO無のシステムスループットを超えたのでない場合(ステップS39:No)、第1のHOのみを実行する方が有利と判断する。そして、制御部28は、第2のHO条件を満たした第1のUE4の第1のHO先への第1のHOを実行すると共に、第2のUE4の第2のHO先への第2のHOを実行せず(ステップS42)、
図7に示す処理動作を終了する。
【0099】
第1の推定部26は、第1のHO先に接続している第2のUE4がない場合(ステップS31:No)、第1のUE4の第1のHO先への第1のHOを実行すると共に、第2のUE4の第2のHO先への第2のHOを実行せずにステップS42の処理に移行する。
【0100】
制御装置5は、HO元の第1のUE4の第2のHO条件を満たした場合、第1のUE4の第1のHO先へのHO実行あり、第1のHO先に接続する第2のHO先へのHO実行ありと仮定した状態での第1のHO先に接続する各UE4の第1の通信量を推定する。制御装置5は、HO元の第1のUE4の第2のHO条件を満たした場合、第1のUE4の第1のHO先へのHO実行あり、第1のHO先に接続する第2のHO先へのHO実行ありと仮定した状態での第2のHO先に接続する各UE4の第2の通信量を推定する。制御装置5は、HO元の第1のUE4の第2のHO条件を満たした場合、第1のUE4の第1のHO先へのHO実行あり、第1のHO先に接続する第2のHO先へのHO実行なしと仮定した状態での第1のHO先に接続する各UE4の第3の通信量を推定する。制御装置5は、HO元の第1のUE4の第2のHO条件を満たした場合、第1のUE4の第1のHO先へのHO実行あり、第1のHO先に接続する第2のHO先へのHO実行なしと仮定した状態での第2のHO先に接続する各UE4の第4の通信量を推定する。
【0101】
制御装置5は、各UE4の第1の通信量及び第2の通信量の合計である第2のHO有のシステムスループットと、各UE4の第3の通信量及び第4の通信量の合計である第2のHO有のシステムスループットとに基づき、第1のHO及び第2のHOを制御する。つまり、制御装置5は、第1のHO先への第1のUE4の第1のHO及び第2のHO先への第2のUE4の第2のHOを実行すると仮定した場合の第2のHO有のシステムスループットの方が大きい場合、第1のHO及び第2のHOを実行する。その結果、HO元、第1のHO先及び第2のHO先内の各UE4の通信量を考慮した第1のHO及び第2のHOを実現できる。
【0102】
制御装置5は、第1のHO先への第1のUE4の第1のHOのみを実行すると仮定した場合の第2のHO無のシステムスループットが第2のHO有のシステムスループット以下の場合、第1のHOのみを実行する。その結果、HO元、第1のHO先及び第2のHO先内の各UE4の通信量を考慮した第1のHOを実現できる。
【0103】
また、制御装置5は、第1のHO条件を満たした第1のUE4がHO実行ありと仮定した場合のHO元に接続する各UE4の第5の通信量及び第1のHO先に接続する各UE4の第6の通信量を推定する。更に、制御装置5は、第1のHO条件を満たした第1のUE4がHO実行なしと仮定した場合のHO元に接続する各UE4の第7の通信量及び第1のHO先に接続する各UE4の第8の通信量を推定する。制御装置5は、各UE4の第5の通信量及び第6の通信量の合計である第1のHO有のシステムスループットと、各UE4の第7の通信量及び第8の通信量の合計である第1のHO有のシステムスループットとに基づき、第1のHOの第2のHO条件を判定する。その結果、HO元及び第1のHO先内の各UE4の通信量を考慮した第1のHOのHO条件を判定できる。
【0104】
尚、制御装置5は、未来のスループットの推定値を利用してHOを制御する。ただし、現在時刻から離れるほど、RS3及びUE4の位置の予測の精度が低下し、スループットの推定の精度が低くなる。そこで、第2の推定部24は、現在時刻からの経過時間に応じて変化する補正パラメータ(または、補正係数)を利用してスループットの推定値を補正してもよい。
【0105】
図9は、スループットの推定値を補正するパラメータCorの一例を示す。横軸は、現在時刻からの経過時間γを表す。本実施例では、補正パラメータCorは、(数式12)で表現できる。
【0106】
【0107】
補正パラメータを使用する場合、HOを実行すると仮定した状態での通信量E_HO有は(数式13a)で表現できる。更に、HOを実行しないと仮定した状態での通信量E_HO無は(数式13b)で表現できる。
【0108】
【0109】
上述の補正パラメータCorを使用する場合、スループットの推定精度が低い時間帯の影響が小さくなる。よって、HOを実行するか否かの判定の精度の改善を期待できる。
【0110】
<伝送路の推定>
伝送路推定部22は、2つの無線デバイスの間の伝送路の損失を推定する。尚、無線デバイスは、例えば、BS2、RS3やUE4である。伝送路推定部22は、例えば、BS2とUE4との間の伝送路の損失と、RS3とUE4との間の伝送路の損失とを推定する。ここで、伝送路の損失は、2つの無線デバイスの間の距離と、2つの無線デバイスの周辺の電波環境とに依存する。
【0111】
図10は、伝送路の推定方法の一例を示す説明図である。この例では、RSから送信される電波は、障害物に遮られることなく、直接、UExに到達している。すなわち、RSとUExとの間の伝送路はLOS(Line of sight)である。これに対して、RSから送信される電波は、UEyに直接到達できず、その反射波(又は回折波)がUEyに到達している。すなわち、RSとUEyとの間の伝送路はNLOS(Non-Line of sight)である。但し、一般的な通信環境では、LOS及びNLOSが混在する。従って、伝送路の損失を推定するためには、2つの無線デバイス間のLOS確率及びNLOS確率を算出する必要がある。
【0112】
LOS確率は、(数式14a)で表現できる。更に、NLOS確率は、(数式14b)式で表現できる。
【0113】
【0114】
θは、
図10に示すRSとUEzとの間の仰角である。rは、RSとUEとの間の水平距離である。hは、RSが設けられている位置の高さである。「a」及び「b」は、それぞれ環境に対応する固有の値であり、既知とする。
【0115】
このように、LOS確率及びNLOS確率は、2つの無線デバイスの位置に基づき計算できる。従って、(数式3)及び(数式4)を用いてRS3及びUE4の位置を推定する場合、RS3とUE4との間のLOS確率及びNLOS確率を得る。
【0116】
LOS及びNLOSの伝搬損失は、それぞれ(数式15a)及び(数式15b)で表現できる。
【0117】
【0118】
fは、無線システム1において使用される周波数である。dは、2つの無線デバイス間の直線距離である。cは、光の速度である。(数式15a)及び(数式15b)の第1項は、それぞれ自由空間パス損失であって、LOS及びNLOSに対して同じである。これに対して、ηLOS及びηNLOSは、それぞれ、LOS及びNLOSに対応する追加パス損失である。追加パス損失は、LOS及びNLOSに対して互いに異なる。尚、LOS及びNLOSの追加パス損失は、それぞれ、2つの無線デバイスの周辺の環境に基づいて計算可能である。
【0119】
ここで、LOSの損失は、LOSの伝搬損失にLOS確率を乗算することで得られる。NLOSの損失は、NLOSの伝搬損失にNLOS確率を乗算することで得られる。そして、2つの無線デバイス間の伝送路の損失は、LOSの損失とNLOSの損失との和である。従って、LOS及びNLOSを考慮した伝送路損失PLは(数式16)で表現できる。
【0120】
【0121】
2つの無線デバイス間の伝送路の損失は、2つの無線デバイスの位置に基づいて算出される。従って、(数式5)に示すHO元であるサービングBS/RSとUE4との間の伝送路の損失は、サービングBS/RS及びUE4の位置に基づいて算出可能である。また、(数式6)に示すHO先であるターゲットBS/RSとUE4との間の伝送路の損失は、ターゲットBS/RS及びUE4の位置に基づいて算出可能である。ここで、各RS3及び各UE4の位置は、(数式3)及び(数式4)を利用して予測できる。従って、伝送路推定部22は、HO元とUE4との間の伝送路の損失と、HO先とUE4との間の伝送路の損失とを推定できる。
【0122】
なお、2つの無線デバイス間の伝送路の損失を推定する方法は、例えば、下記の文献に記載されている。Bo Hu et al., A Trajectory Prediction Based Intelligent Handover Control Method in UAV Cellular Networks, China Communications, January 2019
【0123】
また、各無線デバイス(RS3、UE4)の位置は、機械学習で予測してもよい。例えば、各無線デバイスが所定の経路に沿って移動するケースにおいて、それらの経路が互いに交わっているときには、衝突が発生すると判定される。この場合、衝突を回避するように各デバイスの移動を予測する。また、上述した文献Bo Huに記載されている方法で各無線デバイスの位置を予測してもよい。
【0124】
<スループットの推定>
本実施例では、UE4からBS/RS(BS2又はRS3)に伝送される信号のスループットを推定する。先ず、UE4から送信される信号に対するBS/RSの受信電力量を定義する。(数式17a)は、UEiから送信される信号をBS2が受信したときの受信電力量である。(数式17b)は、UEiから送信される信号をRS3が受信したときの受信電力量である。
【0125】
【0126】
尚、伝送路の損失PLは、実質的に2つの無線デバイス間の距離のみに依存するので、UE4からBS/RSに信号が送信されるケースと、BS/RSからUE4に信号が送信されるケースとで互いに同じである。
【0127】
2つの無線デバイス間のスループットは、(数式10)に示すように、SINRに依存する。SINRは、希望信号電力、干渉信号電力、及び雑音信号電力に基づいて算出される。尚、以下では、BS2のセル内に1又は複数のRS3及び、1又は複数のUE4が存在するものとする。また、以下では、UE4からRS3に伝送される信号のスループットについて記載するが、UE4からBS2に伝送される信号のスループットについても同様である。
【0128】
以下の記載では、RSkに接続するUEuが信号を送信し、RSkがその信号を希望信号として受信するケースについて説明する。この場合、時刻tにおいて、RSkにおける希望信号電力Sは、(数式18)で表現できる。なお、(数式18)の右辺は、(数式17b)を用いて算出可能である。即ち、(数式17b)を用いてRSkにおける希望信号電力Sを算出可能である。
【0129】
【0130】
時刻tにおける雑音信号電力Nは、(数式19)で表現できる。N0は、常温下での熱雑音レベルを表し、-174である。NFは、雑音指数(Noise Figure)である。BWは、信号の帯域幅である。
【0131】
【0132】
干渉信号電力は、この例では、第1の干渉信号電力と第2の干渉信号電力との和で表現できる。第1の干渉信号電力は、RSkに接続するUEのうちの、UEu以外の各UEから送信される信号に係わる干渉信号電力である。すなわち、第1の干渉信号電力は、RSkに接続する他のUEから送信される信号に係わる干渉信号電力である。具体的には、RSkに接続する他のUEがそれぞれ信号を送信し、RSkがそれらの信号を干渉信号として受信した場合、第1の干渉信号電力はそれらの干渉信号と受信電力との和である。従って、第1の干渉信号電力は、(数式20)で表現できる。尚、(数式20)中の各電力Pは、各RS及び各UEの位置を予測することにより、(数式17b)を用いて算出可能である。
【0133】
【0134】
第2の干渉信号電力は、RSk以外のRSに接続するUEから送信される信号に係わる干渉信号電力である。具体的には、RSk以外のRSに接続するUEがそれぞれ信号を送信し、RSkがそれらの信号を干渉信号として受信した場合、第2の干渉信号電力はそれらの干渉信号と受信電力との和である。従って、第2の干渉信号電力は、(数式21)で表現できる。尚、(数式21)中の各電力Pは、各RS及び各UEの位置を予測することにより、(数式17b)を用いて算出可能である。
【0135】
【0136】
従って、時刻tにおいて、RSkに接続するUEuが信号を送信し、RSkがその信号を希望信号として受信するケースにおいて、SINRは(数式22)で表現できる。
【0137】
【0138】
従って、(数式22)式で得られるSINRを(数式10)に与えれば、中継局RSkに接続するUEuが信号を送信し、RSkがその信号を希望信号として受信するケースでのスループットを算出できる。
【0139】
図11は、SINRの計算方法の一例を示す説明図である。この例では、無線リンクを介してBSにRS#1~RS#2が接続されている。RS#1には、無線リンクを介してUE#1~UE#3が接続されている。RS#2には、無線リンクを介してUE#4及びUE#5が接続されている。
【0140】
この無線システムにおいて、UE#1から信号が送信され、RS#1がその信号を希望信号として受信する。この場合、RS#1がUE#1から受信する信号の電力が希望信号電力に相当する。また、UE#2及びUE#3は、RS#1に接続する他のUEに相当する。よって、RS#1がUE#2及びUE#3から受信する信号の電力の和が第1の干渉信号電力に相当する。さらに、RS#2は、UE#1が接続していないRSに相当する。よって、RS#1がUE#4及びUE#5から受信する信号の電力の和が第2の干渉信号電力に相当する。
【0141】
尚、実施例1の制御装置5は、ステップS31にて第1のHO先に接続する第2のUE4がある場合にステップS32の処理動作を実行する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。そこで、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
第3の判定部29は、第1のHO先に接続している第2のUE4の中で、第1のHO先との通信量が閾値未満の第2のUE4があるか否かを判定する。閾値は、HO実行に際して期待する各UE4のスループットの最小値である。HOを実行した際に、HO先に接続しているUE4と、HOを実行したUE4のいずれかが閾値を下回った場合にステップS32の処理動作を開始することになる。
つまり、第1の推定部26は、第1のHO先との通信量が閾値未満の第2のUE4がある場合に、第3の通信量及び第4の通信量を推定する動作を開始することになる。言い換えると、制御装置5Aは、第1のHO先との通信量が閾値未満の第2のUE4がない場合、第1のHO先にHO対象のUE4が存在しないと判断して第1の推定部26の推定動作を実行しないということになる。
また、制御部28Aは、最小値が閾値以上でない場合(ステップS52:No)、全ての組合せパターンから通信量が最大の第1の通信量又は第2の通信量の組合せパターンを特定し(ステップS55)、ステップS54の処理に移行する。
実施例2の制御装置5Aは、第2のHO条件を満たした場合、第1のHO先に接続している第2のUE4の中で、第1のHO先との通信量が閾値未満の第2のUE4がない場合に第1の推定部26の推定動作を実行せず、第1のHOを実行する。その結果、第2のHOのシステムスループットを処理する負担を軽減できる。
制御装置5Aは、第2のHO有のシステムスループットの方が大きい場合、最小値が閾値以上の第1の通信量及び第2の通信量の中から最大の通信量を特定し、特定され最大の通信量から第2のHOを実行する第2のUE4を特定する。その結果、最小値が閾値以上の第1の通信量及び第2の通信量に絞り込むことで第2のHOを実行する第2のUE4を特定する際の処理負担を軽減できる。
尚、実施例1の制御装置5では、HOを実行するか否かを判定する際に、HO元及びHO先に接続するUE4毎の通信量を推定する場合を例示したが、これに限定されるものではない。そこで、前述した通り、無線システム1内の全てのUE4の総スループットを推定しても良い。そこで、このような実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。尚、実施例1の無線システム1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。