(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011220
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240118BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20240118BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20240118BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240118BHJP
C08K 5/3435 20060101ALI20240118BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L33/10
C08L33/08
C08L83/04
C08K5/3435
C08J3/12 A CEY
C08J3/12 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113049
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】太田 茂樹
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA32
4F070AA50
4F070AC46
4F070AE03
4F070DA55
4J002BG043
4J002BG05X
4J002CG00W
4J002CP034
4J002EU076
4J002FD046
4J002FD050
4J002GB00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 撥水性と、発色性と、耐候性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、アクリル共重合体(C)1~10質量部と、芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)0.05~3質量部とを含み、前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位とアルキルメタクリレート単位を含み、前記アクリル共重合体(C)は、アルキルメタクリレート単位とアルキルアクリレート単位を含む、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、
アクリル共重合体(C)1~10質量部と、
芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)0.05~3質量部とを含み、
前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位とアルキルメタクリレート単位を含み、
前記アクリル共重合体(C)は、アルキルメタクリレート単位とアルキルアクリレート単位を含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、紫外線吸収剤(E)0.1~1質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(F)0.1~1質量部とを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)の数平均分子量が1000以上である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)は、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
式(HALS-1)
【化1】
(式(HALS-1)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
【請求項5】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)は、数平均分子量が1000以上であり、かつ、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
式(HALS-1)
【化2】
(式(HALS-1)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
【請求項6】
前記アクリル共重合体(C)の重量平均分子量が50000~200000である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記アクリル共重合体(C)は、メチルメタクリレート単位10~50質量%と、ブチルアクリレート単位50~90質量%を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位60~90質量%と、メチルメタクリレート単位10~40質量%を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、メタクリル共重合体(B)の割合が、10~60質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)は、数平均分子量が1000以上であり、かつ、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含み、
前記アクリル共重合体(C)の重量平均分子量が50000~200000であり、
前記アクリル共重合体(C)は、メチルメタクリレート単位10~50質量%と、ブチルアクリレート単位50~90質量%を含み、
前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位60~90質量%と、メチルメタクリレート単位10~40質量%を含み、
前記ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、メタクリル共重合体(B)の割合が、10~60質量部である、請求項2に記載の樹脂組成物。
式(HALS-1)
【化3】
(式(HALS-1)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項13】
請求項11に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)は、透明性や耐熱性、耐候性、機械的物性、電気的特性に優れる樹脂であり、例えば、自動車材料や航空機材料、電気・電子機器材料、住宅材料、医療機器材料、その他の工業分野における材料等に幅広く利用されている。
従来、さらなる材料の高機能化や低価格化を目的に、ポリカーボネート樹脂と他の種類の樹脂とを配合させたポリマーアロイの開発が幅広い分野で行われてきた。例えば、自動車の分野においては、ポリカーボネート樹脂にアクリル樹脂やスチレン樹脂などを配合させたアロイの開発が広く行われ、自動車のフロントエアダムやピラー、ルーフレール、スポイラー、リアゲートガーニッシュ、ドアミラーハウジング等の自動車の外装材料に実際に利用されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂を配合させたアロイとしては、特許文献1~4が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/078273号
【特許文献2】特開2015-078284号公報
【特許文献3】特開2013-147651号公報
【特許文献4】国際公開第2021/039895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリカーボネート樹脂の各種性能を高めるために、アクリル樹脂やスチレン系樹脂を配合することが行われている。しかしながら、配合する樹脂の種類によっては、色相(発色性)や耐候性が劣ってしまう。
また、ポリカーボネート樹脂組成物は、用途によっては、撥水性が求められることがある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、撥水性と、発色性と、耐候性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、所定のメタクリル共重合体とアクリル共重合体を用い、かつ、所定のポリオルガノシロキサンを用いることにより、上記課題は解決された。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、アクリル共重合体(C)1~10質量部と、芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)0.05~3質量部とを含み、前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位とアルキルメタクリレート単位を含み、前記アクリル共重合体(C)は、アルキルメタクリレート単位とアルキルアクリレート単位を含む、樹脂組成物。
<2>さらに、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、紫外線吸収剤(E)0.1~1質量部と、ヒンダードアミン系光安定剤(F)0.1~1質量部とを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)の数平均分子量が1000以上である、<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)は、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含む、<2>または<3>に記載の樹脂組成物。
式(HALS-1)
【化1】
(式(HALS-1)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
<5>前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)は、数平均分子量が1000以上であり、かつ、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含む、<2>に記載の樹脂組成物。
式(HALS-1)
【化2】
(式(HALS-1)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
<6>前記アクリル共重合体(C)の重量平均分子量が50000~200000である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記アクリル共重合体(C)は、メチルメタクリレート単位10~50質量%と、ブチルアクリレート単位50~90質量%を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位60~90質量%と、メチルメタクリレート単位10~40質量%を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、メタクリル共重合体(B)の割合が、10~60質量部である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記ヒンダードアミン系光安定剤(F)は、数平均分子量が1000以上であり、かつ、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含み、前記アクリル共重合体(C)の重量平均分子量が50000~200000であり、前記アクリル共重合体(C)は、メチルメタクリレート単位10~50質量%と、ブチルアクリレート単位50~90質量%を含み、前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位60~90質量%と、メチルメタクリレート単位10~40質量%を含み、前記ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、メタクリル共重合体(B)の割合が、10~60質量部である、<2>に記載の樹脂組成物。
式(HALS-1)
【化3】
(式(HALS-1)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<13><11>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、撥水性と、発色性と、耐候性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、アクリル共重合体(C)1~10質量部と、芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)0.05~3質量部とを含み、前記メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位とアルキルメタクリレート単位を含み、前記アクリル共重合体(C)は、アルキルメタクリレート単位とアルキルアクリレート単位を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、撥水性と、発色性と、耐候性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物が得られる。さらに、耐湿熱性にも優れた樹脂組成物が得られる。
耐候性は、メタクリル共重合体(B)およびアクリル共重合体(C)を用いたことに加え、所定のポリオルガノシロキサン(D)を用いたことによって達成される。所定のポリオルガノシロキサン(D)を用いたことによって、耐候性が向上した理由は、耐候性が悪化する一因が耐水性であることに由来すると推測された。すなわち、所定のポリオルガノシロキサン(D)を用いることにより、耐候性に影響する耐水性を向上させることができたためと推測された。特に、所定のポリオルガノシロキサン(D)が芳香族基を有する場合、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性に優れるため、優れた発色性を効果的に達成することができると推測された。また、所定のポリオルガノシロキサン(D)がアルコキシ基を有する場合、アルコキシ基は極性が高いため、ポリカーボネート樹脂(A)との親和性を高くすることができ、優れた発色性を効果的に達成することができると推測された。これに対し、ポリオルガノシロキサンが、芳香族基およびアルコキシ基を有さない場合、例えば、アルキル基のみを有する場合、ポリカーボネート樹脂(A)との親和性や相溶性を達成できず、優れた発色性が達成されなかったためと推測された。
発色性は、主に、芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)(本明細書において、単に、「ポリオルガノシロキサン(D)」ということがある)を配合することによって達成される。
撥水性は、ポリオルガノシロキサン(D)を所定量配合することによって達成される。
以下、本実施形態の詳細について説明する。
【0010】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)を含む。
ポリカーボネート樹脂は、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC(=O)]-単位(Rが、炭化水素基、具体的には、脂肪族基、芳香族基、または、脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されない。本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂がより好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を用いることにより、より優れた耐熱性と靱性が達成される。本実施形態においては、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂は、全構成単位の90モル%以上がビスフェノール骨格を有する構成単位であることが好ましく、全構成単位の90モル%以上がビスフェノールA由来の構成単位であることがより好ましい。
【0011】
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐久性がより向上する傾向にある。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、50,000以下であることが好ましく、より好ましくは40,000以下であり、さらに好ましくは30,000以下であり、一層好ましくは、25,000以下である。前記上限値以下とすることにより、成形品の成形加工性がより向上する傾向にある。
粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4×Mv0.83、から算出される値を意味する。
2種以上のポリカーボネート樹脂を用いる場合は、混合物の粘度平均分子量とする。
【0012】
また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の250℃、荷重2.16kgにおけるメルトボリュームレート(MVR)は、10cm3/10min以上であることが好ましく、また、70cm3/10min以下であることが好ましく、65cm3/10min以下であることがより好ましく、50cm3/10min以下であることがさらに好ましく、40cm3/10min以下であることが一層好ましく、30cm3/10min以下であることがより一層好ましく、20cm3/10min以下であることがさらに一層好ましい。
MVRは、メルトインデクサーのシリンダー内に、測定するサンプルのペレット内に入れて、ISO-1133規格に従い、260℃、荷重5kgの条件で、4分間加熱後の値を測定する。
2種以上のポリカーボネート樹脂を用いる場合は、混合物のMVRとする。
【0013】
上記の他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2021-084942号公報の段落0013~0041の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0014】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、55質量%以上であることが一層好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、透明性の維持効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、75質量%以下であることが一層好ましく、70質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の良流動性、低吸水率、耐候性、高硬度、低比重(軽量化)効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0015】
<メタクリル共重合体(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、スチレン単位とアルキルメタクリレート単位を含む、メタクリル共重合体(B)を含む。メタクリル共重合体(B)を含むことにより、ポリカーボネート樹脂組成物の良流動性、低吸水率、耐候性、高硬度、低比重(軽量化)効果がより向上する傾向にある。
メタクリル共重合体(B)に含まれるアルキルメタクリレート単位におけるアルキル基は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基およびプロピル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
本実施形態においては、メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位を60質量%以上含むことが好ましく、65質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましく、75質量%以上含むことが一層好ましく、また、90質量%以下含むことが好ましく、85質量%以下含むことがより好ましい。一方、メタクリル共重合体(B)は、アルキルメタクリレート単位(好ましくはメチルメタクリレート単位)を10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましく、また、40質量%以下含むことが好ましく、35質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以下含むことがさらに好ましく、25質量%以下含むことが一層好ましい。
本実施形態においては、メタクリル共重合体(B)は、スチレン単位とアルキルメタクリレート単位(好ましくはメチルメタクリレート単位)の合計が、メタクリル共重合体(B)の末端基を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0016】
メタクリル共重合体(B)の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましく、150,000以上であることがさらに好ましく、180,000以上であることが一層好ましく、200,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度の維持効果がより向上する傾向にある。メタクリル共重合体(B)の重量平均分子量は、また、400,000以下であることが好ましく、350,000以下であることがより好ましく、320,000以下であることがさらに好ましく、300,000以下であることが一層好ましく、280,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート(A)との相溶性の向上と樹脂組成物の流動性の維持効果がより向上する傾向にある。
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
【0017】
本実施形態の樹脂組成物におけるメタクリル共重合体(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の良流動性、低吸水率、耐候性、高硬度、低比重(軽量化)効果がより向上する傾向にある。また、前記メタクリル共重合体(B)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、45質量部以下であることがさらに好ましく、40質量部以下であることが一層好ましく、35質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、透明性の維持効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、メタクリル共重合体(B)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0018】
<アクリル共重合体(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、アルキルメタクリレート単位とアルキルアクリレート単位を含む、アクリル共重合体(C)を含む。アクリル共重合体(C)を含むことにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。
【0019】
アクリル共重合体(C)に含まれるアルキルメタクリレート単位におけるアルキル基は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基およびプロピル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
アクリル共重合体(C)に含まれるアルキルアクリレート単位におけるアルキル基は、炭素数2~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~6のアルキル基であることがより好ましく、プロピル基、ブチル基、ペンチル基がより好ましく、ブチル基がさらに好ましい。
【0020】
本実施形態において、アクリル共重合体(C)は、アルキルメタクリレート単位(好ましくはメチルメタクリレート単位)を10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましく、また、50質量%以下含むことが好ましく、40質量%以下含むことがより好ましく、35質量%以下含むことがさらに好ましく、30質量%以下含むことが一層好ましく、25質量%以下含むことがより一層好ましい。
一方、アクリル共重合体(C)は、アルキルアクリレート単位(好ましくはブチルアクリレート単位)を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、65質量%以上含むことがさらに好ましく、70質量%以上含むことが一層好ましく、75質量%以上含むことがより一層好ましく、また、90質量%以下含むことが好ましく、85質量%以下含むことがより好ましい。
本実施形態においては、アクリル共重合体(C)は、アルキルメタクリレート単位(好ましくはメチルメタクリレート単位)とアルキルアクリレート単位(好ましくはブチルアクリレート単位)の合計が、アクリル共重合体(C)の末端基を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0021】
アクリル共重合体(C)の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、60,000以上であることがより好ましく、70,000以上であることがさらに好ましく、80,000以上であることが一層好ましく、90,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度の維持という効果がより向上する傾向にある。アクリル共重合体(C)の重量平均分子量は、また、200,000以下であることが好ましく、180,000以下であることがより好ましく、160,000以下であることがさらに好ましく、140,000以下であることが一層好ましく、120,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)との相溶性向上とポリカーボネート樹脂組成物の透明性維持効果がより向上する傾向にある。
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
【0022】
本実施形態の樹脂組成物におけるアクリル共重合体(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、1質量部以上であり、2質量部以上であることが好ましく、2.5質量部以上であることがさらに好ましく、3質量部以上であることが一層好ましく、3.5質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、前記アクリル共重合体(C)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、10質量部以下であり、8質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがさらに好ましく、6質量部以下であることが一層好ましく、5質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の機械的強度と耐熱性、低吸水性の維持効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、アクリル共重合体(C)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0023】
<芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)0.05~3質量部とを含む。このようなポリオルガノシロキサン(D)を含むことにより、撥水性と共に、発色性を向上させることができる。
【0024】
本実施形態で用いるポリオルガノシロキサン(D)は、芳香族基および/またはアルコキシ基を有する。これらの基を有することにより、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性ないし親和性が向上し、撥水性と共に、発色性を向上させることができる。
ポリオルガノシロキサン(D)が有する芳香族基は、フェニル基が好ましい。また、ポリオルガノシロキサン(D)が有するアルコキシ基は、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0025】
本実施形態で用いるポリオルガノシロキサン(D)は、粘度が10mPa・s以上であることが好ましく、20mPa・s以上であることがより好ましく、50mPa・s以上であることがさらに好ましく、80mPa・s以上であることが一層好ましく、100mPa・s以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、揮発成分量が低減し、成形時の金型汚染を抑制し、また、表面の撥水成分の減少をより効果的に抑制できる傾向にある。また、前記粘度は、10000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以下であることがより好ましく、3000mPa・s以下であることがさらに好ましく、2000mPa・s以下であることが一層好ましく、1000mPa・s以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形体中で表面に偏析しやすく、その結果、表面の撥水性がより向上する傾向にある。
ポリオルガノシロキサン(D)の粘度は、JIS Z 8803:2011によるウッベローデ粘度計に従って測定される。
【0026】
本実施形態で用いるポリオルガノシロキサン(D)の重量平均分子量(Mw)は特段限定されないが、好ましくは500以上であり、より好ましくは600以上であり、さらに好ましくは700以上であり、特に好ましくは800以上である。また、好ましくは60000以下であり、より好ましくは40000以下であり、さらに好ましくは30000以下であり、一層好ましくは20000以下であり、より一層好ましくは10000以下であり、さらには、5000以下、2000以下、1800以下、1700以下、1600以下、1100以下であってもよい。重量平均分子量を上記下限値以上とすることで、揮発成分量が低減し、滞留成形性が向上し、また、表面の水滴接触角に影響する成分の減少をより効果的に抑えるため好ましい。また、重量平均分子量を上記上限値以下とすることで、ポリオルガノシロキサン(D)の粘度が低下し、成形体中で表面に偏析しやすく、その結果、水滴接触角がより向上する傾向にあり好ましい。また、重量平均分子量を上記上限値以下とすることで、ポリオルガノシロキサンの(A)ポリカーボネート樹脂への相溶性が向上し、より透明な樹脂組成物が得られやすいため好ましい。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.05質量部以上であり、0.08質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましく、0.6質量部以上であることが一層好ましく、0.8質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の撥水性および耐候性がより向上する傾向にある。また、前記ポリオルガノシロキサン(D)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、3質量部以下であり、2.5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の発色性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(D)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
<他の撥水剤>
本実施形態の樹脂組成物は、所定のポリオルガノシロキサン(D)以外の他の撥水剤を含んでいてもよい。
他の撥水剤としては、高級脂肪族炭化水素が例示され、パラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスを含むことにより、撥水性に加え、耐候性がより向上する傾向にある。
パラフィンワックスとしては、主成分がn-パラフィンおよび/またはi-パラフィン等の飽和脂肪族炭化水素、あるいは低分子量のポリエチレンで末端に水酸基を有し、蝋状の外観を有する物質が挙げられる。
パラフィンワックスのGPC法で測定された分子量は、好ましくは300~1500、より好ましくは300~1000である。上記パラフィンワックスは、常法の有機反応によって容易に製造でき、また、市販品を使用することもできる。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物が所定のポリオルガノシロキサン(D)以外の他の撥水剤(好ましくは、パラフィンワックス)を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.15質量部以上であることが一層好ましく、0.2質量部以上であることがより一層好ましい。また、前記所定のポリオルガノシロキサン(D)以外の他の撥水剤(好ましくは、パラフィンワックス)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、1質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましく、0.3質量部以下であることが一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、所定のポリオルガノシロキサン(D)以外の他の撥水剤(好ましくは、パラフィンワックス)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0030】
<紫外線吸収剤(E)>
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤(E)を、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.1~1.0質量部の割合で含むことが好ましい。紫外線吸収剤(E)を含むことにより、耐候性に優れた成形品が得られる。
紫外線吸収剤(E)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、および、トリアジン系紫外線吸収剤が例示され、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(t-ブチル)フェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、(2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4,6-ジ(tert-ペンチル)フェノール)、3-[3-tert-ブチル-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]オクチルプロピオネート、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-[(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4,6-ビス-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]等が好ましく挙げられる。
【0031】
本実施形態では、下記式(UV)で表される紫外線吸収剤が好ましい。
式(UV)
【化4】
(式(UV)中、R
1は、炭素数4~20のアルキル基であり、R
2は水素原子または有機基である。)
【0032】
R
1は、直鎖、分岐もしくは環状アルキル基のいずれであってもよいが、分岐アルキル基であることが好ましい。R
1を構成する炭素数は、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、また、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。R
1はt-オクチル基であることが好ましい。
R
2は、水素原子または有機基であり、水素原子またはベンゾトリアゾール環を含む有機基であることがより好ましく、ベンゾトリアゾール環を含む有機基であることがさらに好ましい。ベンゾトリアゾール環を含む有機基は、オクチルフェニルベンゾトリアゾール環を含む有機基であることがさらに好ましく、下記式(UV-1)で表される構造を含む基であることがより好ましい。
式(UV-1)
【化5】
(式(UV-1)中、R
1は、炭素数4~20のアルキル基である。Lは単結合または2価の連結基であり、*は式(UV)との結合位置である。)
式(UV-1)中、R
1は、式(UV)におけるR
1と同義であり、好ましい範囲も同様である。Lは、単結合または1~10のアルキレン基が好ましく、単結合またはメチレン基がより好ましい。
【0033】
本実施形態で用いる紫外線吸収剤(E)は、上記の他、特開2021-041614号公報の段落0051および特開2020-158596号公報の段落0053に記載のものを採用することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物における紫外線吸収剤(E)の含有量は、含有する場合、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐候性がより向上する傾向にある。また、紫外線吸収剤(E)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、1質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以下であることがさらに好ましく、0.5質量部以下であることが一層好ましく、0.4質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、初期色相・機械物性・耐熱性を下げることなく得られる成形品の耐候性がより向上する傾向にある。特に、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.2質量部以上とすることにより、耐湿熱性の維持効果が顕著に向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、紫外線吸収剤(E)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0035】
<ヒンダードアミン系光安定剤(F)>
本実施形態の樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤(F)を、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.1~1質量部の割合で含む。ヒンダードアミン系光安定剤(F)を用いることにより、耐候性および耐湿熱性に優れた成形品を提供可能になる。
【0036】
本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤(F)は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよいが、高分子化合物が好ましい。本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤(F)の数平均分子量は1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましく、2500以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、低分子化合物の場合と比較して、反応部位の濃度が相対的に低くなる傾向にあり、ポリカーボネート樹脂のカーボネート結合を攻撃する確率を低くすることができる。結果として、滞留安定性、耐衝撃性、耐湿熱性等を向上させることができる。本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤(F)の数平均分子量は、また、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂成分との相溶性がより向上する傾向にある。数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
【0037】
本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤は、下記に示すN-H型、N-Me型、N-OR型のいずれであってもよい。
【化6】
ここで、上記Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、メチル基が好ましく、mは0~4の整数であり、0または1が好ましい。また、*は他の部位との結合位置である。
【0038】
本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤(F)は、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含むことがより好ましい。NR型を用いることにより、NH型と比較して、アルカリ度が中性寄りとなり、ポリカーボネート樹脂のカーボネート結合を加水分解しにくくすることができる。結果として、ポリカーボネート樹脂の劣化を効果的に抑制し、各種性能を向上させることができる。
式(HALS-1)
【化7】
(式(HALS-1)中、Rは有機基である。R
xは炭素数1~5のアルキル基であり、mは0~4の整数であり、*は他の部位との結合位置である。)
【0039】
本実施形態で用いるヒンダードアミン系光安定剤(F)は、式(HALS-2)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含むことがさらに好ましい。
式(HALS-2)
【化8】
(式(HALS-2)中、Lは有機基である。Tは末端基である。nは10~200の数である。)
Lは、炭素数1~10のアルキレン基、または、1つまたは2つ以上の炭素数1~10のアルキレン基と、1つまたは2つ以上の、-O-および/または-C(=O)-との組み合わせからなる基である。Tは末端基であり、*-O-炭化水素基であることが好ましい。ここで、*はLとの結合部位である。炭化水素基は、炭素数1~10のアルキル基、または、フェニル基が好ましい。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物におけるヒンダードアミン系光安定剤(F)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であり、0.2質量部以上であることが好ましく、0.25質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の耐候性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるヒンダードアミン系光安定剤(F)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、1質量部以下であることが好ましく、0.9質量部以下であることが好ましく、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.7質量部以下であることがさらに好ましく、用途等に応じては、0.6質量部以下であることが一層好ましく、0.5質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の耐湿熱性、滞留熱安定性の維持効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤(F)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、特に、前記紫外線吸収剤(E)の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.2~1質量部であり、前記紫外線吸収剤(E)とヒンダードアミン系光安定剤(F)の質量比率である、(E)/(F)の質量比が1.1以下であることが好ましい。さらに、ヒンダードアミン系光安定剤(F)が、数平均分子量が1000以上であり、かつ、式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を含むことがより好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0042】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、離型剤、色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
難燃剤としては、特開2016-216534号公報の段落0068~0075の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
安定剤としては、また、フェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系などが挙げられる。中でも本実施形態においては、フェノール系酸化防止剤(G)および/またはリン系熱安定剤(H)が好ましい。
【0044】
<<フェノール系酸化防止剤(G)>>
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール系酸化防止剤(G)を含むことが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0045】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物におけるフェノール系酸化防止剤(G)(好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。フェノール系酸化防止剤(G)の含有量を前記範囲とすることにより、フェノール系酸化防止剤(G)の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール系酸化防止剤(G)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0047】
<<リン系熱安定剤(H)>>
本実施形態の樹脂組成物は、リン系熱安定剤(H)を含むことが好ましい。
リン系熱安定剤(H)としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0048】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物におけるリン系熱安定剤(H)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。リン系熱安定剤(H)の含有量を前記範囲とすることにより、熱安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、リン系熱安定剤(H)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態の樹脂組成物においては、リン系熱安定剤(H)とフェノール系酸化防止剤(G)の質量比率である、リン系熱安定剤(H)/フェノール系酸化防止剤(G)が0.1~1.0であることが好ましく、0.3~0.8であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、得られる成形品の光劣化をより効果的に抑制することができる。特に、フェノール系酸化防止剤(G)によって、リン系熱安定剤(H)由来の過酸化物を無害化することができる。
【0051】
<<離型剤(I)>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤(I)を含んでいてもよい。
離型剤(I)としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましく、脂肪族カルボン酸の塩がより好ましい。
離型剤(I)の詳細は、特開2018-095706号公報の段落0055~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が離型剤(I)を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~0.8質量%であることがより好ましく、0.1~0.6質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤(I)を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0052】
<<色剤(J)>>
本実施形態の樹脂組成物は、色剤(J)(染料および/または顔料)を用いてもよい。
本実施形態で用いてもよい色剤(J)としては、酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料、有機染料、有機顔料等が例示される。
【0053】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染料または顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染料または顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染料または顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染料または顔料などが挙げられる。
【0054】
本実施形態で用いる樹脂組成物における色剤(J)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、色剤(J)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル共重合体(B)の合計100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましい。
前記樹脂組成物は、色剤(J)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0055】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物から形成される成形品は、発色性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を2mmの厚さに成形したときの、JIS Z7822に従い、反射法、C光源、2°視野に設定したときの色相L*が8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。下限は、0が理想であるが、0.1以上、さらには、1以上であっても十分に要求性能を満たす。
色相L*は後述する実施例の記載に従って測定される。
このような色相は、ポリカーボネート樹脂(A)にメタクリル共重合体(B)とアクリル共重合体(C)を配合することによって達成される。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物から形成される成形品は、大きな水滴接触角を有していることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を2mmの厚さの平板に成形したときの水滴接触角は、75°以上がより好ましく、77°以上がさらに好ましく、79°以上が一層好ましく、80°以上がより一層好ましい。水滴接触角の上限値としては、特に限定はないが105°以下とすることができ、100°以下とすることもでき、98°以下とすることもできる。
このような高い水滴接触角は、(D)撥水剤を配合することによって達成される。
水滴接触角は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物は、耐候性に優れていることが望ましい。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を2mm厚の試験片に成形し、積算照射量が150MJ/m2となるように光照射を行ったときの前後の色差ΔEが8.0以下であることが好ましく、7.5以下であることがより好ましく、6.5以下であることがさらに好ましく、5.5以下であることが一層好ましい。
このような高い耐候性は、ヒンダードアミン系光安定剤(F)を配合すること、特に、分子量が大きい(例えば、数平均分子量が1000以上である)ヒンダードアミン系光安定剤を用いること、さらには、分子量が大きい(例えば、数平均分子量が1000以上である)NR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いることによって達成される。
耐候性は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物は耐湿熱性に優れていることが好ましい。
特に、本実施形態の樹脂組成物をISO規格多目的試験片(ISO 3167 typeA)に成形し、80℃、相対湿度95%の湿熱環境下に125時間静置した後の引張破壊点歪みの保持率((湿熱処理後の引張破壊点歪み/初期の引張破壊点歪み)×100)が35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましい。前記保持率の上限は、100%が理想であるが、99%以下が実際的である。このような高い湿熱処理後の耐衝撃性は、ヒンダードアミン系光安定剤(F)として、数平均分子量が1000以上もの、さらには、数平均分子量が1000以上であり、かつ、上述の式(HALS-1)で表されるNR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いることにより達成される。
耐湿熱性は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0059】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、メタクリル共重合体(B)、アクリル共重合体(C)、芳香族基および/またはアルコキシ基を有する、直鎖または分岐のポリオルガノシロキサン(D)、さらには、紫外線吸収剤(E)、ヒンダードアミン系光安定剤(F)、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
また、色剤(J)は、マスターバッチとして配合してもよい。色剤(J)をマスターバッチ化する場合、スチレン樹脂が好ましい。色剤(J)のマスターバッチにおいて、色剤(J)の濃度は、10~50質量%が好ましい。
【0060】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物ないしペレットから形成される。上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。すなわち、本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から成形される。成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。
【0061】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0062】
本実施形態の成形品は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂を含む成形品、特に、撥水性と、色相と、耐候性が求められる用途に広く用いることができる。
具体的には、電気電子機器/部品、OA機器/部品、情報端末機器/部品、機械部品、家電製品、車輌部品(自動車内外装)、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器などに好ましく用いられる。
特に、自動車のフロントエアダムやピラー、ルーフレール、スポイラー、リアゲートガーニッシュ、ドアミラーハウジング等の自動車の外装材料に好ましく用いられる。
【実施例0063】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
1.以下の原料を用いた
【0064】
【0065】
【0066】
(F1):Uvinul 5050H 下記に構造を示す。下記において、p
1は6~9である。
【化9】
(F2):Tinuvin 622SF 下記に構造を示す。
【化10】
【0067】
2.実施例1~23、比較例1~5
<コンパウンド>
表1および表2に記載した各成分を下記表4~9に記載した量(各成分は全て質量部で表記している)で、タンブラーミキサーにて20分間混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機TEX30αに供給し、スクリュー回転数250rpm、吐出量40kg/時間、バレル温度260℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0068】
<発色性(初期色相)>
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、芝浦機械社製、射出成形機EC50SXIIを用いて、シリンダー温度260℃、1mm/2mm/3mm厚の段付き金型、金型温度80℃で射出成形し、1mm/2mm/3mm厚の3段プレート(60mm×100mm)を成形した。
日本電色工業社製分光色差計SE6000を用い、反射法、C光源、2°視野に設定し、上記で得られたプレートの2mm厚の中央部で測定した。
【0069】
<水滴接触角>
上記で得られた3段型プレートの厚み2mmの部分について、静電気除去し、表面温度を23℃に調整したのち、マイクロシリンジを用いて、液滴直径1.0mmのイオン交換水を滴下し、接触角(水滴接触角)(単位:degree)を測定した。
測定装置には、協和界面科学製固液界面解析装置DropMaster 300を用いた。
【0070】
<耐候性>
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、芝浦機械社製、射出成形機EC50SXIIを用いて、シリンダー温度260℃、1mm/2mm/3mm厚の段付き金型、金型温度80℃で射出成形し、1mm/2mm/3mm厚の3段プレート(60mm×100mm)を成形した。
上述の方法で得られた1mm/2mm/3mm厚の3段プレートを、キセノンウエザオメーターを用い、以下の耐候性試験条件で耐候処理を行い、300~400nmの波長域における積算照射量における耐候処理前後の色相を測定し、色差ΔE
*を比較した。
<<耐候性試験条件>>
【表3】
【0071】
<耐湿熱性>
上記で得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、日精樹脂工業社製射出成形機NEX140IIIを用いて、シリンダー温度260℃、ISO規格多目的試験片(ISO 3167 typeA)金型、金型温度80℃で射出成形し、ISO規格多目的試験片(ISO 3167 typeA)を成形した。
得られたISO試験片(4mm厚)を用い、ISO527に準拠して、引張破壊点歪み(単位:%)を測定した。
得られた試験片を、それぞれ、80℃、相対湿度95%の雰囲気下に、125時間、250時、375時間、500時間静置した(湿熱処理)。
耐湿熱性は、湿熱処理前後の引張破壊点歪みを比較することにより、評価した。
具体的には、初期の引張破壊点歪みに対する湿熱処理後の引張破壊点歪みの保持率を以下の式に従い算出した。
保持率(%)=(湿熱処理後の引張破壊点歪み/初期の引張破壊点歪み)×100
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
上記表4~9において、N.A.は測定していないことを意味する。
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の樹脂組成物からは、撥水性と、発色性と、耐候性に優れた成形品が得られた。さらに、本実施形態の樹脂組成物からは耐湿熱性に優れた成形品が得られた。これに対し、撥水剤(D)であるポリオルガノシロキサンが芳香族基およびアルコキシ基のいずれも有さない場合(比較例1、2)、驚くべきことに、発色性が劣っていた。特に、所定のポリオルガノシロキサンを配合せず、かつ、パラフィンワックスも配合していない場合(比較例1)、耐候性も劣っていた。また、撥水剤(D)の含有量が多い場合(比較例3)、耐候性が劣っていた。撥水剤(D)を含まない場合(D)(比較例4)、撥水性が劣ると共に、やはり耐候性が劣っていた。さらに、所定のメタクリル共重合体(B)およびアクリル共重合体(C)を含まない場合(比較例5)、耐候性に劣っていた。