IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-船舶推進機および船舶 図1
  • 特開-船舶推進機および船舶 図2
  • 特開-船舶推進機および船舶 図3
  • 特開-船舶推進機および船舶 図4
  • 特開-船舶推進機および船舶 図5
  • 特開-船舶推進機および船舶 図6
  • 特開-船舶推進機および船舶 図7
  • 特開-船舶推進機および船舶 図8
  • 特開-船舶推進機および船舶 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112203
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】船舶推進機および船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/28 20060101AFI20240813BHJP
   B63H 5/16 20060101ALI20240813BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20240813BHJP
   B63H 20/34 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B63H1/28 Z
B63H5/16 C
B63H5/16 D
B63H20/00 610
B63H20/34 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017120
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】谷村 圭一
(57)【要約】
【課題】ステータを含むダクトと、ステータと対向するように配置されたロータを有するリムを含むプロペラと、を備える構成において、ステータとロータとにより構成されるモータの出力を向上させることが可能な船舶推進機を提供する。
【解決手段】この船舶推進機100では、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDに基づいて、ロータ54の回転数TNを算出する。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNに基づいて、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因するロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを含むダクトと、
前記ステータと対向するように前記ステータの径方向内側に配置されたロータを有するリムと、前記リムの径方向内側に形成された羽根と、を含むプロペラと、
金属製の部材を介して前記ロータに対向するように配置され、前記ロータの磁石によって生じる磁束密度を検出可能な検出部と、
前記検出部により検出された前記磁束密度に基づいて、前記ロータの磁石位置を算出するとともに、算出した前記ロータの磁石位置に基づいて、前記ロータが最大トルクを得ることが可能なタイミングで前記ステータに電流を印加する制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記磁束密度に基づいて、前記ロータの回転数を算出するとともに、算出した前記ロータの回転数に基づいて、前記金属製の部材に生じる渦電流に起因する前記ロータの磁石位置のずれを補正する、船舶推進機。
【請求項2】
前記検出部は、前記ロータの軸方向において前記ステータと隣り合うように、かつ、前記ロータに対向するように配置されている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項3】
前記検出部は、前記金属製の部材から構成されるとともに前記ダクトのうちの上部に位置する収容部に収容されている、請求項2に記載の船舶推進機。
【請求項4】
前記ダクトの上方に配置されたハウジングをさらに備え、
前記制御部は、前記ハウジングの内部の空間に収容されており、
前記検出部が収容された前記収容部の空間は、前記制御部が収容された前記ハウジングの内部の空間と繋がっている、請求項3に記載の船舶推進機。
【請求項5】
前記ステータには、3相交流電力が供給されるように構成されており、
前記検出部は、前記ロータの磁石によって生じる3相の前記磁束密度の各々を検出するように3つ設けられており、
前記制御部は、前記3つの検出部の各々により検出された前記3相の磁束密度のうちのいずれかに基づいて、前記ロータの回転数を算出するとともに、算出した前記ロータの回転数に基づいて、前記3相の磁束密度の各々に基づいて算出したロータの磁石位置の各々のずれを補正する、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項6】
前記3つの検出部の各々は、水平面内において前記ロータの軸方向と直交する整列方向に沿って並ぶように配置されており、
前記ロータと前記3つの検出部のうちの前記整列方向における中央に配置された前記検出部との間の前記金属製の部材の厚みと、前記ロータと前記3つの検出部のうちの前記整列方向における一方側および他方側に配置された前記検出部との間の前記金属製の部材の厚みとは、互いに異なっている、請求項5に記載の船舶推進機。
【請求項7】
前記ロータの回転数と、前記ロータの磁石位置のずれを補正するための補正値との関係を示す補正情報が記憶された記憶部をさらに備え、
前記制御部は、算出した前記ロータの回転数と、前記補正情報とに基づいて、前記ロータの磁石位置のずれを補正する、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項8】
前記記憶部には、前記ロータの回転数の全域における前記補正情報が記憶されている、請求項7に記載の船舶推進機。
【請求項9】
前記記憶部には、数式、マップおよびテーブルのいずれかによって表される前記補正情報が記憶されている、請求項7に記載の船舶推進機。
【請求項10】
前記記憶部には、前記数式によって表される補正情報が記憶されており、
前記制御部は、算出した前記ロータの回転数と、前記数式によって表される補正情報とに基づいて、前記補正値を算出するとともに、前記算出された補正値に基づいて、前記ロータの磁石位置のずれを補正する、請求項9に記載の船舶推進機。
【請求項11】
船体と、
前記船体に取り付けられる船舶推進機と、を備え、
前記船舶推進機は、
ステータを含むダクトと、
前記ステータと対向するように前記ステータの径方向内側に配置されたロータを有するリムと、前記リムの径方向内側に形成された羽根と、を含むプロペラと、
金属製の部材を介して前記ロータに対向するように配置され、前記ロータの磁石によって生じる磁束密度を検出可能な検出部と、
前記検出部により検出された前記磁束密度に基づいて、前記ロータの磁石位置を算出するとともに、算出した前記ロータの磁石位置に基づいて、前記ロータが最大トルクを得ることが可能なタイミングで前記ステータに電流を印加する制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記磁束密度に基づいて、前記ロータの回転数を算出するとともに、算出した前記ロータの回転数に基づいて、前記金属製の部材に生じる渦電流に起因する前記ロータの磁石位置のずれを補正する、船舶。
【請求項12】
前記検出部は、前記ロータの軸方向において前記ステータと隣り合うように、かつ、前記ロータに対向するように配置されている、請求項11に記載の船舶。
【請求項13】
前記検出部は、前記金属製の部材から構成されるとともに前記ダクトのうちの上部に位置する収容部に収容されている、請求項12に記載の船舶。
【請求項14】
前記船舶推進機は、前記ダクトの上方に配置されたハウジングをさらに備え、
前記制御部は、前記ハウジングの内部の空間に収容されており、
前記検出部が収容された前記収容部の空間は、前記制御部が収容された前記ハウジングの内部の空間と繋がっている、請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
前記ステータには、3相交流電力が供給されるように構成されており、
前記検出部は、前記ロータの磁石によって生じる3相の前記磁束密度の各々を検出するように3つ設けられており、
前記制御部は、前記3つの検出部の各々により検出された前記3相の磁束密度のうちのいずれかに基づいて、前記ロータの回転数を算出するとともに、算出した前記ロータの回転数に基づいて、前記3相の磁束密度の各々に基づいて算出した前記ロータの磁石位置の各々のずれを補正する、請求項11に記載の船舶。
【請求項16】
前記3つの検出部の各々は、水平面内において前記ロータの軸方向と直交する整列方向に沿って並ぶように配置されており、
前記ロータと前記3つの検出部のうちの前記整列方向における中央に配置された前記検出部との間の前記金属製の部材の厚みと、前記ロータと前記3つの検出部のうちの前記整列方向における一方側および他方側に配置された前記検出部との間の前記金属製の部材の厚みとは、互いに異なっている、請求項15に記載の船舶。
【請求項17】
前記船舶推進機は、前記ロータの磁石位置のずれを補正するための補正値との関係を示す補正情報が記憶された記憶部をさらに備え、
前記制御部は、算出した前記ロータの回転数と、前記補正情報とに基づいて、前記ロータの磁石位置のずれを補正する、請求項11に記載の船舶。
【請求項18】
前記記憶部には、前記ロータの回転数の全域における前記補正情報が記憶されている、請求項17に記載の船舶。
【請求項19】
前記記憶部には、数式、マップおよびテーブルのいずれかによって表される前記補正情報が記憶されている、請求項17に記載の船舶。
【請求項20】
前記記憶部には、前記数式によって表される補正情報が記憶されており、
前記制御部は、算出した前記ロータの回転数と、前記数式によって表される補正情報とに基づいて、前記補正値を算出するとともに、前記算出された補正値に基づいて、前記ロータの磁石位置のずれを補正する、請求項19に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶推進機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータを含むダクトと、ステータと対向するように配置されたロータを有するリムを含むプロペラと、を備える船舶推進機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ステータを含むダクトと、ステータと対向するようにステータの径方向内側に配置されたロータを有するリム、および、リムの径方向内側に形成された羽根を含むプロペラと、を備える船外機(船舶推進機)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-18646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、上記特許文献1のような従来の船外機(船舶推進機)は、ロータの磁石によって生じる磁束密度を検出する検出部を備える。また、検出部により検出された磁束密度に基づいて、ロータの磁石位置を算出するとともに、算出したロータの磁石位置に基づいて、ロータが最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータに電流を印加する制御を行う制御部を備える。また、検出部が、ロータに対向する位置に配置される。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような従来の船外機(船舶推進機)では、水中で駆動する船外機の特性上、検出部を防水する必要があるため、検出部が密閉された部材に収容される。一般的に、船外機の筐体は、金属製である。すなわち、検出部が、金属製の部材を介してロータに対向するように配置される。この場合、金属製の部材に生じる渦電流に起因して、ロータの磁石位置にずれが生じる。したがって、上記特許文献1のような従来の船外機(船舶推進機)では、制御部が、算出したロータの磁石位置に基づいて、ロータが最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータに電流を印加する制御を行ったとしても、ロータが最大トルクを得ることができない。すなわち、ステータとロータとにより構成されるモータの出力が低下する。このため、ステータを含むダクトと、ステータと対向するように配置されたロータを有するリムを含むプロペラと、を備える構成において、ステータとロータとにより構成されるモータの出力を向上させることが可能な船外機(船舶推進機)および船舶が望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ステータを含むダクトと、ステータと対向するように配置されたロータを有するリムを含むプロペラと、を備える構成において、ステータとロータとにより構成されるモータの出力を向上させることが可能な船舶推進機および船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による船舶推進機は、ステータを含むダクトと、ステータと対向するようにステータの径方向内側に配置されたロータを有するリムと、リムの径方向内側に形成された羽根と、を含むプロペラと、金属製の部材を介してロータに対向するように配置され、ロータの磁石によって生じる磁束密度を検出可能な検出部と、検出部により検出された磁束密度に基づいて、ロータの磁石位置を算出するとともに、算出したロータの磁石位置に基づいて、ロータが最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータに電流を印加する制御を行う制御部と、を備え、制御部は、検出部により検出された磁束密度に基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、金属製の部材に生じる渦電流に起因するロータの磁石位置のずれを補正する。
【0009】
この発明の第1の局面による船舶推進機では、上記のように、制御部は、検出部により検出された磁束密度に基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、金属製の部材に生じる渦電流に起因するロータの磁石位置のずれを補正する。これにより、金属製の部材に生じる渦電流に起因してロータの磁石位置にずれが生じたとしても、ロータの回転数に基づいて、金属製の部材に生じる渦電流に起因するロータの磁石位置のずれを補正することができる。なお、ロータの回転数は、磁束密度の電気角360度分に基づいて算出可能なため、ロータの磁石位置にずれが生じている場合でも、正確に検出することができる。したがって、ずれを補正した状態のロータの磁石位置に基づいて、ロータが最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータに電流を印加することができる。すなわち、ロータが最大トルクを得ることができる。その結果、ステータを含むダクトと、ステータと対向するように配置されたロータを有するリムを含むプロペラと、を備える構成において、ステータとロータとにより構成されるモータの出力を向上させることができる。
【0010】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、検出部は、ロータの軸方向においてステータと隣り合うように、かつ、ロータに対向するように配置されている。このように構成すれば、ステータと対向するようにロータが配置されている場合でも、検出部を、ロータに対向するように配置することができる。
【0011】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、検出部は、金属製の部材から構成されるとともにダクトのうちの上部に位置する収容部に収容されている。このように構成すれば、検出部を、ダクトのうちの比較的上側に配置することができる。したがって、検出部が、ダクトのうちの上部に位置する収容部以外の部分に収容される場合と比較して、検出部を、一般的にダクトよりも上方に配置される制御部の比較的近くに配置することができる。その結果、検出部と制御部との間を接続する信号線の配線が複雑化するのを抑制することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、ダクトの上方に配置されたハウジングをさらに備え、制御部は、ハウジングの内部の空間に収容されており、検出部が収容された収容部の空間は、制御部が収容されたハウジングの内部の空間と繋がっている。このように構成すれば、検出部と制御部との間を接続する信号線を容易に配線することができる。
【0013】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、ステータには、3相交流電力が供給されるように構成されており、検出部は、ロータの磁石によって生じる3相の磁束密度の各々を検出するように3つ設けられており、制御部は、3つの検出部の各々により検出された3相の磁束密度のうちのいずれかに基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、3相の磁束密度の各々に基づいて算出したロータの磁石位置の各々のずれを補正する。このように構成すれば、3相交流電力が供給される構成において、ロータが最大トルクを得ることができる。
【0014】
この場合、好ましくは、3つの検出部の各々は、水平面内においてロータの軸方向と直交する整列方向に沿って並ぶように配置されており、ロータと3つの検出部のうちの整列方向における中央に配置された検出部との間の金属製の部材の厚みと、ロータと3つの検出部のうちの整列方向における一方側および他方側に配置された検出部との間の金属製の部材の厚みとは、互いに異なっている。このように構成すれば、整列方向において中央に配置された検出部に対応する位置における、金属製の部材のロータ側の表面とロータを有するリムの外周面との間の隙間の幅を、整列方向において一方側および他方側に配置された検出部に対応する位置における、金属製の部材のロータ側の表面とロータを有するリムの外周面との間の隙間の幅よりも小さくすることができる。その結果、3つの検出部の各々が、水平面内においてロータの軸方向と直交する整列方向に沿って並ぶように配置されている場合でも、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間の幅が過度に不均一になるのを抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、ロータの磁石位置のずれを補正するための補正値との関係を示す補正情報が記憶された記憶部をさらに備え、制御部は、算出したロータの回転数と、補正情報とに基づいて、ロータの磁石位置のずれを補正する。このように構成すれば、算出したロータの回転数と、記憶部に記憶された補正情報とに基づいて、ロータの磁石位置のずれを容易に補正することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、記憶部には、ロータの回転数の全域における補正情報が記憶されている。このように構成すれば、ロータの回転数の全域に亘って、ロータの磁石位置のずれを容易に補正することができる。
【0017】
上記補正情報が記憶された記憶部をさらに備える構成において、好ましくは、記憶部には、数式、マップおよびテーブルのいずれかによって表される補正情報が記憶されている。このように構成すれば、補正情報を、数式、マップおよびテーブルのいずれかによって、記憶部に容易に記憶させることができる。
【0018】
この場合、好ましくは、記憶部には、数式によって表される補正情報が記憶されており、制御部は、算出したロータの回転数と、数式によって表される補正情報とに基づいて、補正値を算出するとともに、算出された補正値に基づいて、ロータの磁石位置のずれを補正する。このように構成すれば、補正情報が数式によって記憶部に記憶されている場合に、算出したロータの回転数と、記憶部に記憶された補正情報とに基づいて、ロータの磁石位置のずれを容易に補正することができる。
【0019】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船舶は、船体と、船体に取り付けられる船舶推進機と、を備え、船舶推進機は、ステータを含むダクトと、ステータと対向するようにステータの径方向内側に配置されたロータを有するリムと、リムの径方向内側に形成された羽根と、を含むプロペラと、金属製の部材を介してロータに対向するように配置され、ロータの磁石によって生じる磁束密度を検出可能な検出部と、検出部により検出された磁束密度に基づいて、ロータの磁石位置を算出するとともに、算出したロータの磁石位置に基づいて、ロータが最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータに電流を印加する制御を行う制御部と、を備え、制御部は、検出部により検出された磁束密度に基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、金属製の部材に生じる渦電流に起因するロータの磁石位置のずれを補正する。
【0020】
この発明の第2の局面による船舶では、上記のように、制御部は、検出部により検出された磁束密度に基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、金属製の部材に生じる渦電流に起因するロータの磁石位置のずれを補正する。これにより、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、金属製の部材に生じる渦電流に起因してロータの磁石位置にずれが生じたとしても、ロータの回転数に基づいて、金属製の部材に生じる渦電流に起因するロータの磁石位置のずれを補正することができる。したがって、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、ロータが最大トルクを得ることができる。その結果、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、ステータを含むダクトと、ステータと対向するように配置されたロータを有するリムを含むプロペラと、を備える構成において、ステータとロータとにより構成されるモータの出力を向上させることが可能な船舶を提供することができる。
【0021】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、検出部は、ロータの軸方向においてステータと隣り合うように、かつ、ロータに対向するように配置されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、ステータと対向するようにロータが配置されている場合でも、検出部を、ロータに対向するように配置することができる。
【0022】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、検出部は、金属製の部材から構成されるとともにダクトのうちの上部に位置する収容部に収容されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、検出部と制御部との間を接続する信号線の配線が複雑化するのを抑制することができる。
【0023】
この場合、好ましくは、ダクトの上方に配置されたハウジングをさらに備え、制御部は、ハウジングの内部の空間に収容されており、検出部が収容された収容部の空間は、制御部が収容されたハウジングの内部の空間と繋がっている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、検出部が収容された空間と制御部が収容された空間とが繋がっているので、検出部と制御部との間を接続する信号線を容易に配線することができる。
【0024】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、ステータには、3相交流電力が供給されるように構成されており、検出部は、ロータの磁石によって生じる3相の磁束密度の各々を検出するように3つ設けられており、制御部は、3つの検出部の各々により検出された3相の磁束密度のうちのいずれかに基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、3相の磁束密度の各々に基づいて算出したロータの磁石位置の各々のずれを補正する。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、3相交流電力が供給される構成において、ロータが最大トルクを得ることができる。
【0025】
この場合、好ましくは、3つの検出部の各々は、水平面内においてロータの軸方向と直交する整列方向に沿って並ぶように配置されており、ロータと3つの検出部のうちの整列方向における中央に配置された検出部との間の金属製の部材の厚みと、ロータと3つの検出部のうちの整列方向における一方側に配置された検出部との間の金属製の部材の厚み、および、ロータと3つの検出部のうちの整列方向における他方側に配置された検出部との間の金属製の部材の厚みとは、互いに異なっている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、3つの検出部の各々が、水平面内においてロータの軸方向と直交する整列方向に沿って並ぶように配置されている場合でも、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間の幅が過度に不均一になるのを抑制することができる。
【0026】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、船舶推進機は、ロータの磁石位置のずれを補正するための補正値との関係を示す補正情報が記憶された記憶部をさらに備え、制御部は、算出したロータの回転数と、補正情報とに基づいて、ロータの磁石位置のずれを補正する。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、算出したロータの回転数と、記憶部に記憶された補正情報とに基づいて、ロータの磁石位置のずれを容易に補正することができる。
【0027】
この場合、好ましくは、記憶部には、ロータの回転数の全域における補正情報が記憶されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、ロータの回転数の全域に亘って、ロータの磁石位置のずれを容易に補正することができる。
【0028】
上記補正情報が記憶された記憶部をさらに備える構成において、好ましくは、記憶部には、数式、マップおよびテーブルのいずれかによって表される補正情報が記憶されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、補正情報を、数式、マップおよびテーブルのいずれかによって、記憶部に容易に記憶させることができる。
【0029】
この場合、好ましくは、記憶部には、数式によって表される補正情報が記憶されており、制御部は、算出したロータの回転数と、数式によって表される補正情報とに基づいて、補正値を算出するとともに、算出された補正値に基づいて、ロータの磁石位置のずれを補正する。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、補正情報が数式によって記憶部に記憶されている場合に、算出したロータの回転数と、記憶部に記憶された補正情報とに基づいて、ロータの磁石位置のずれを容易に補正することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記のように、ステータを含むダクトと、ステータと対向するように配置されたロータを有するリムを含むプロペラと、を備える構成において、ステータとロータとにより構成されるモータの出力を向上させることが可能な船舶推進機および船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態による船舶推進機の側面図である。
図2】本発明の一実施形態による船舶推進機のダクトおよびリムの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による船舶推進機のダクトおよびリムの構成を説明するための断面図である。
図4図3の部分IVの拡大図である。
図5図4のV-V線に沿った断面図である。
図6】本発明の一実施形態による船舶推進機の制御系のブロック図である。
図7】本発明の一実施形態による船舶推進機における金属製の部材に生じる渦電流に起因するロータの磁石位置のずれを説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態による船舶推進機の記憶部に記憶された補正情報を説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態による船舶推進機の制御部による制御フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
[船舶推進機および船舶の構成]
図1図8を参照して、本発明の一実施形態による船舶推進機100および船舶110について説明する。
【0034】
(船舶の全体構成)
図1に示すように、船舶110は、船体101と、ブラケット102と、船舶推進機100と、を備える。船舶推進機100は、ブラケット102を介して、船体101の船尾101aに取り付けられている。すなわち、船舶推進機100は、船舶110を推進するための船外機である。船舶110は、たとえば、遊覧や魚釣り等に用いられる比較的小型の船舶である。
【0035】
(船舶推進機の全体構成)
船舶推進機100は、カウル10と、上部ケース20と、下部ケース30と、ダクト40と、プロペラ50と、を備える。カウル10と、上部ケース20と、下部ケース30と、ダクト40およびプロペラ50とは、この順に、船舶推進機100の上方(Z1側)から下方(Z2側)に向かって並ぶように配置されている。すなわち、下部ケース30は、ダクト40の上方に配置されている。なお、下部ケース30は、特許請求の範囲の「ハウジング」の一例である。
【0036】
以下の説明では、船舶推進機100の上下方向をZ方向とする。また、船舶推進機100の上側(上方)および下側(下方)を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、後述するロータ54(図3参照)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、A方向、R方向およびC方向とする。また、ロータ54の軸方向(A方向)の一方側(船体101側)および他方側(船体101側とは反対側)を、それぞれ、A1側およびA2側とする。また、ロータ54の径方向内側および径方向外側を、それぞれ、A1側およびA2側とする。なお、プロペラ50の中心軸線90(図2参照)は、A方向に沿って延びている。
【0037】
カウル10は、ブラケット102を介して、船体101の船尾101aに取り付けられている。カウル10と上部ケース20とは固定されている。また、下部ケース30とダクト40とは固定されている。下部ケース30およびダクト40は、カウル10および上部ケース20に対して、船舶推進機100の左右方向に回動可能に構成されている。カウル10および上部ケース20に対して下部ケース30およびダクト40が回動することにより、船体101に対するプロペラ50の向きが変更される。
【0038】
図2に示すように、ダクト40は、筒状のダクトリング41と、ダクトリング41のR1側に配置されA方向に沿って延びるダクトハブ42と、ダクトハブ42とダクトリング41とを接続するようにR方向に延びる複数のフィン43と、を含む。
【0039】
プロペラ50は、環状のリム51と、リム51のR1側に配置されA方向に沿って延びるプロペラハブ52と、プロペラハブ52とリム51とを接続するようにR方向に延びる複数の羽根53と、を含む。すなわち、複数の羽根53は、リム51のR1側に形成されている。
【0040】
プロペラハブ52は、ダクトハブ42に対してC方向に回転可能に、ダクトハブ42により支持されている。すなわち、ダクトハブ42を含むダクト40に対して、プロペラハブ52を含むプロペラ50がC方向に回転可能に構成されている。プロペラ50の回転は、船舶110を推進するための推力を発生させる。
【0041】
ダクトリング41のR1側の面には、環状の凹部41aが形成されている。環状の凹部41aには、プロペラ50のリム51が配置されている。
【0042】
図3に示すように、ダクトリング41(ダクト40)は、ステータ44を含む。ステータ44は、複数のスロットを含む環状のステータコア(図示しない)と、ステータコアの複数のスロットに配置されたコイル(図示しない)と、を含む。ステータ44のコイルには、3相交流電力が供給されるように構成されている。リム51(プロペラ50)は、ロータ54を含む。ロータ54は、環状のロータコア(図示しない)と、ロータコアに埋め込まれた磁石(図示しない)を含む。ロータ54は、ステータ44と対向するようにステータ44のR1側に配置されている。ステータ44とロータ54とにより、プロペラ50を回転させるモータが構成されている。すなわち、船舶推進機100は、電動式船外機である。
【0043】
図4に示すように、R方向において、リム51の外周面51aとダクト40の内周面40aとの間には隙間Gが形成されている。隙間Gは、A方向に沿って延びるように形成されている。なお、ロータ54のA2側の端部54aとステータ44のA2側の端部44aとが、A方向にずれて配置されている。また、図5に示すように、隙間Gは、C方向に沿って延びるように形成されている。
【0044】
図4に示すように、ロータ54およびステータ44の各々は、樹脂により覆われている。これにより、ロータ54を覆う樹脂により構成されたリム51の外周面51aとステータ44を覆う樹脂により構成されたダクト40の内周面40aとにより隙間Gが形成されている。
【0045】
図6に示すように、船舶推進機100は、検出部60と、制御部70と、記憶部80と、を備える。
【0046】
検出部60は、磁気センサを含む。検出部60は、ロータ54の磁石によって生じる磁束密度MDを検出可能に構成されている。検出部60は、磁束密度MDが所定の閾値TH(図7参照)を超えたタイミング(図7の検出点)に基づく検出信号DSを制御部70に対して出力する。図4に示すように、検出部60は、A方向においてステータ44のA2側にステータ44と隣り合うように、かつ、ロータ54に対向するように配置されている。
【0047】
図5に示すように、検出部60は、ロータ54の磁石によって生じる3相の磁束密度MD(図7参照)の各々を検出するように3つ設けられている。3つの検出部60の各々は、水平面内においてA方向と直交する整列方向(W方向)に沿って並ぶように配置されている。W方向は、船舶推進機100の左右方向に沿った方向である。
【0048】
図6に示すように、制御部70は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む。制御部70は、検出部60から入力された検出信号DSに基づいて、ロータ54の磁石位置MPを算出する。すなわち、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDに基づいて、ロータ54の磁石位置MPを算出する。そして、制御部70は、算出したロータ54の磁石位置MPに基づいて、ロータ54が最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータ44のコイルに3相交流の電流を印加する制御を行う。図1に示すように、制御部70は、下部ケース30の内部の空間S1に収容されている。
【0049】
図6に示すように、記憶部80は、不揮発性メモリを含む。記憶部80には、制御部70による制御に用いられるプログラム等が記憶されている。
【0050】
(ロータの磁石位置のずれ)
図4に示すように、検出部60は、金属製(たとえば、アルミ)の部材MMを介してロータ54に対向するように配置されている。具体的には、検出部60は、金属製の部材MMから構成されるとともにダクト40のうちの上部に位置する収容部45に収容されている。なお、図1に示すように、検出部60が収容された収容部45の空間S2は、制御部70が収容された下部ケース30の内部の空間S1と繋がっている。
【0051】
このため、図7に示すように、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因して、検出部60(図6参照)により検出される磁束密度MDの位相にずれが生じる。これに伴い、検出部60から入力された検出信号DS(図6参照)に基づいて制御部70(図6参照)が算出したロータ54(図4参照)の磁石位置MP(図6参照)にずれが生じる。なお、図7では、検出部60が金属製の部材MMを介してロータ54に対向するように配置されている場合の磁束の時間変化、および、検出部60が空気を介してロータ54に対向するように配置されている場合の磁束の時間変化を、それぞれ、実線および点線で示している。
【0052】
(ロータの磁石位置のずれの補正)
図6に示すように、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDに基づいて、ロータ54の回転数TNを算出する。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNに基づいて、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因するロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。
【0053】
具体的には、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDの電気角360度分(図7参照)に基づいてロータ54の回転数TNを算出する。また、記憶部80には、ロータ54の回転数TNと、ロータ54の磁石位置MPのずれを補正するための補正値CV(図8参照)との関係を示す補正情報CIが記憶されている。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNと、記憶部80に記憶された補正情報CIとに基づいて、金属製の部材MM(図4参照)に生じる渦電流に起因するロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。
【0054】
図8に示すように、記憶部80(図6参照)には、ロータ54の回転数TNの全域における補正情報CIが記憶されている。記憶部80には、数式によって表される補正情報CIが記憶されている。すなわち、補正情報CIにおいて、ロータ54の回転数TNと補正値CVとは一次関数で表される。
【0055】
図6に示すように、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNと、数式によって表される補正情報CIとに基づいて、補正値CV(図8参照)を算出する。そして、制御部70は、算出された補正値CVに基づいて、ロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。
【0056】
図5に示すように、ロータ54と3つの検出部60のうちのW方向における中央に配置された検出部61との間の金属製の部材MMの厚みt1と、ロータ54と3つの検出部60のうちのW1側(W方向における一方側)に配置された検出部62との間の金属製の部材MMの厚みt2、および、ロータ54と3つの検出部60のうちのW2側(W方向における他方側)に配置された検出部63との間の金属製の部材MMの厚みt3とは、互いに異なっている。このため、検出部61により検出された磁束密度MD(図6参照)に基づいて算出したロータ54の磁石位置MP(図6参照)のずれと、検出部62により検出された磁束密度MDに基づいて算出したロータ54の磁石位置MPのずれ、および、検出部63により検出された磁束密度MDに基づいて算出したロータ54の磁石位置MPのずれと異なっている。
【0057】
したがって、図8に示すように、制御部70(図6参照)は、3つの検出部60(図5参照)の各々により検出された3相の磁束密度MD(図7参照)のうちのいずれかに基づいて、ロータ54の回転数TNを算出する。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNに基づいて、3相の磁束密度MDの各々に基づいて算出したロータ54の磁石位置MPの各々のずれを補正する。なお、厚みt2(図5参照)は、厚みt3(図5参照)と略同じであるので、検出部62(図5参照)により検出された磁束密度MDに基づいて算出したロータ54の磁石位置MPのずれの補正値CVは、検出部63(図5参照)により検出された磁束密度MDに基づいて算出したロータ54の磁石位置MPのずれの補正値CVと略同じである。なお、図8では、検出部61により検出された磁束密度MDに基づいて算出したロータ54の磁石位置MPのずれを補正するための補正情報CI、および、検出部62により検出された磁束密度MDに基づいて算出したロータ54の磁石位置MPのずれの補正情報CIおよび検出部63により検出された磁束密度MDに基づいて算出したロータ54の磁石位置MPのずれを補正するための補正情報CIを、それぞれ、実線および点線で示している。
【0058】
[船舶推進機の制御部による制御フロー]
図9を参照して、船舶推進機100の制御部70による制御フローについて説明する。
【0059】
図9に示すように、ステップS101において、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDに基づいて、ロータ54の磁石位置MPを算出する。具体的には、検出部60は、磁束密度MDが所定の閾値THを超えたタイミングに基づく検出信号DSを制御部70に対して出力する。そして、制御部70は、検出部60から入力された検出信号DSに基づいて、ロータ54の磁石位置MPを算出する。
【0060】
次に、ステップS102において、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDに基づいて、ロータ54の回転数TNを算出する。具体的には、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDの電気角360度分に基づいてロータ54の回転数TNを算出する。なお、ステップS102は、ステップS101の前に行われてもよい。
【0061】
次に、ステップS103において、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNに基づいて、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因するロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。具体的には、記憶部80には、ロータ54の回転数TNと、ロータ54の磁石位置MPのずれを補正するための補正値CVとの関係を示す補正情報CIが記憶されている。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNと、記憶部80に記憶された補正情報CIとに基づいて、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因するロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。
【0062】
次に、ステップS104において、制御部70は、ずれを補正した状態のロータ54の磁石位置MPに基づいて、ロータ54が最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータ44のコイルに3相交流の電流を印加する制御を行う。
【0063】
なお、制御部70がステータ44のコイルに3相交流の電流を印加する制御を終了するまで、ステップS101~ステップS104が繰り返される。
【0064】
[実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
本実施形態では、上記のように、制御部70は、検出部60により検出された磁束密度MDに基づいて、ロータ54の回転数TNを算出する。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNに基づいて、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因するロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。これにより、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因してロータ54の磁石位置MPにずれが生じたとしても、ロータ54の回転数TNに基づいて、金属製の部材MMに生じる渦電流に起因するロータ54の磁石位置MPのずれを補正することができる。なお、ロータ54の回転数TNは、磁束密度MDの電気角360度分に基づいて算出可能なため、ロータの磁石位置にずれが生じている場合でも、正確に検出することができる。したがって、ずれを補正した状態のロータ54の磁石位置MPに基づいて、ロータ54が最大トルクを得ることが可能なタイミングでステータ44に電流を印加することができる。すなわち、ロータ54が最大トルクを得ることができる。その結果、ステータ44を含むダクト40と、ステータ44と対向するように配置されたロータ54を有するリム51を含むプロペラ50と、を備える構成において、ステータ44とロータ54とにより構成されるモータの出力を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、検出部60は、A方向(ロータ54の軸方向)においてステータ44と隣り合うように、かつ、ロータ54に対向するように配置されている。これにより、ステータ44と対向するようにロータ54が配置されている場合でも、検出部60を、ロータ54に対向するように配置することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、検出部60は、金属製の部材MMから構成されるとともにダクト40のうちの上部に位置する収容部45に収容されている。これにより、検出部60を、ダクト40のうちの比較的上側に配置することができる。したがって、検出部60が、ダクト40のうちの上部に位置する収容部45以外の部分に収容される場合と比較して、検出部60を、一般的にダクト40よりも上方に配置される制御部70の比較的近くに配置することができる。その結果、検出部60と制御部70との間を接続する信号線の配線が複雑化するのを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、船舶推進機100は、ダクト40の上方に配置された下部ケース30(ハウジング)を備える。また、制御部70は、下部ケース30の内部の空間S1に収容されている。そして、検出部60が収容された収容部45の空間S2は、制御部70が収容された下部ケース30の内部の空間S1と繋がっている。これにより、検出部60と制御部70との間を接続する信号線を容易に配線することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、ステータ44には、3相交流電力が供給されるように構成されている。また、検出部60は、ロータ54の磁石によって生じる3相の磁束密度MDの各々を検出するように3つ設けられている。そして、制御部70は、3つの検出部60の各々により検出された3相の磁束密度MDのうちのいずれかに基づいて、ロータ54の回転数TNを算出する。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNに基づいて、3相の磁束密度MDの各々に基づいて算出したロータ54の磁石位置MPの各々のずれを補正する。これにより、3相交流電力が供給される構成において、ロータ54が最大トルクを得ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、3つの検出部60の各々は、水平面内においてA方向(ロータ54の軸方向)と直交するW方向(整列方向)に沿って並ぶように配置されている。そして、ロータ54と3つの検出部60のうちのW方向における中央に配置された検出部61との間の金属製の部材MMの厚みt1と、ロータ54と3つの検出部60のうちのW1側(W方向における一方側)に配置された検出部61との間の金属製の部材MMの厚みt2、および、ロータ54と3つの検出部60のうちのW2側(W方向における他方側)に配置された検出部63との間の金属製の部材MMの厚みt3とは、互いに異なっている。これにより、W方向において中央に配置された検出部61に対応する位置における、金属製の部材MMのロータ54側の表面とロータ54を有するリム51の外周面51aとの間の隙間Gの幅を、W1側に配置された検出部62に対応する位置における、金属製の部材MMのロータ54側の表面とロータ54を有するリム51の外周面51aとの間の隙間Gの幅、および、W2側に配置された検出部63に対応する位置における、金属製の部材MMのロータ54側の表面とロータ54を有するリム51の外周面51aとの間の隙間Gの幅よりも小さくすることができる。その結果、3つの検出部60の各々が、水平面内においてA方向と直交するW方向に沿って並ぶように配置されている場合でも、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gの幅が過度に不均一になるのを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、船舶推進機100は、ロータ54の磁石位置MPのずれを補正するための補正値CVとの関係を示す補正情報CIが記憶された記憶部80を備える。そして、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNと、補正情報CIとに基づいて、ロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。これにより、算出したロータ54の回転数TNと、記憶部80に記憶された補正情報CIとに基づいて、ロータ54の磁石位置MPのずれを容易に補正することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、記憶部80には、ロータ54の回転数TNの全域における補正情報CIが記憶されている。これにより、ロータ54の回転数TNの全域に亘って、ロータ54の磁石位置MPのずれを容易に補正することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、記憶部80には、数式によって表される補正情報CIが記憶されている。これにより、補正情報を、数式によって、記憶部80に容易に記憶させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、制御部70は、算出したロータ54の回転数TNと、数式によって表される補正情報CIとに基づいて、補正値CVを算出する。そして、制御部70は、算出された補正値CVに基づいて、ロータ54の磁石位置MPのずれを補正する。これにより、補正情報CIが数式によって記憶部80に記憶されている場合に、算出したロータ54の回転数TNと、記憶部80に記憶された補正情報CIとに基づいて、ロータ54の磁石位置MPのずれを容易に補正することができる。
【0075】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0076】
たとえば、上記実施形態では、記憶部80には、数式によって表される補正情報CIが記憶されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、記憶部には、マップ、テーブル等によって表される補正情報が記憶されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、記憶部80には、ロータ54の回転数TNの全域における補正情報CIが記憶されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、記憶部には、ロータの回転数の一部の領域のみにおける補正情報が記憶されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、3つの検出部60の各々が、水平面内においてA方向(ロータ54の軸方向)と直交するW方向(整列方向)に沿って並ぶように配置されており、ロータ54と3つの検出部60のうちのW方向における中央に配置された検出部61との間の金属製の部材MMの厚みt1と、ロータ54と3つの検出部60のうちのW1側(W方向における一方側)に配置された検出部62との間の金属製の部材MMの厚みt2、および、ロータ54と3つの検出部60のうちのW2側(W方向における他方側)に配置された検出部63との間の金属製の部材MMの厚みt3とが、互いに異なっている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3つの検出部の各々が、ロータの周方向に沿って並ぶように配置されており、ロータと3つの検出部のうちのロータの周方向における中央に配置された検出部との間の金属製の部材の厚みと、ロータと3つの検出部のうちのロータの周方向における一方側に配置された検出部との間の金属製の部材の厚み、および、ロータと3つの検出部のうちのロータの周方向における他方側に配置された検出部との間の金属製の部材の厚みとが、互いに等しくてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、ステータ44には、3相交流電力が供給されるように構成されており、検出部60が、ロータ54の磁石によって生じる3相の磁束密度MDの各々を検出するように3つ設けられており、制御部70が、3つの検出部60の各々により検出された3相の磁束密度MDのうちのいずれかに基づいて、ロータ54の回転数TNを算出するとともに、算出したロータ54の回転数TNに基づいて、3相の磁束密度MDの各々に基づいて算出したロータ54の磁石位置MPの各々のずれを補正する制御を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ステータには、2相交流電力が供給されるように構成されており、検出部が、ロータの磁石によって生じる2相の磁束密度の各々を検出するように2つ設けられており、制御部が、2つの検出部の各々により検出された2相の磁束密度のうちのいずれかに基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、2相の磁束密度の各々に基づいて算出したロータの磁石位置の各々のずれを補正してもよい。また、ステータには、単相交流電力が供給されるように構成されており、検出部が、ロータの磁石によって生じる単相の磁束密度を検出するように1つのみ設けられており、制御部が、1つの検出部により検出された単相の磁束密度に基づいて、ロータの回転数を算出するとともに、算出したロータの回転数に基づいて、単相の磁束密度に基づいて算出したるロータの磁石位置のずれを補正してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、検出部60が収容された収容部45の空間S2が、制御部70が収容された下部ケース30(ハウジング)の内部の空間S1と繋がっている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出部が収容された収容部の空間が、制御部が収容されたハウジングの内部の空間と繋がっていなくてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、検出部60が、金属製の部材MMから構成されるとともにダクト40のうちの上部に位置する収容部45に収容されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出部が、金属製の部材から構成されたダクトのうちの上部に位置する収容部以外の部分に収容されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、検出部60が、A方向(ロータ54の軸方向)においてステータ44と隣り合うように、かつ、ロータ54に対向するように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出部が、ロータの軸方向においてステータと隣り合わないように、かつ、ロータに対向するように配置されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ロータ54と3つの検出部60のうちのW1側(W方向(水平面内においてロータ54の軸方向に直交する整列方向)における一方側)に配置された厚みt2が、ロータ54と3つの検出部60のうちのW2側(W方向における他方側)に配置された厚みt3と略同じである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータと3つの検出部のうちの上記整列方向における一方側に配置された厚みが、ロータと3つの検出部のうちの上記整列方向の他方側に配置された厚みと略同じであってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、船舶推進機100が、船体101に取り付けられる船外機である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船舶推進機が、船体の内部に配置される船内機や、一部が船体の内部に配置されるように船体に取り付けられる船内外機であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
30 下部ケース(ハウジング)
40 ダクト
44 ステータ
45 (ダクトのうちの上部に位置する)収容部
50 プロペラ
51 リム
53 羽根
54 ロータ
60 検出部
61 (3つの検出部のうちの整列方向における中央に配置された)検出部
62 (3つの検出部のうちの整列方向における一方側に配置された)検出部
63 (3つの検出部のうちの整列方向における他方側に配置された)検出部
70 制御部
80 記憶部
100 船舶推進機
101 船体
110 船舶
CI 補正情報
CV 補正値
MD 磁束密度
MP (ロータの)磁石位置
MM 金属製の部材
S1 (下部ケース(ハウジング)の内部の)空間
S2 (ダクトのうちの上部に位置する収容部の)空間
TN (ロータの)回転数
t1 (ロータと3つの検出部のうちの整列方向における中央に配置された検出部との間の金属製の部材の)厚み
t2 (ロータと3つの検出部のうちの整列方向における一方側に配置された検出部との間の金属製の部材の)厚み
t3 (ロータと3つの検出部のうちの整列方向における他方側に配置された検出部との間の金属製の部材の)厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9