(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112204
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240813BHJP
G16H 30/20 20180101ALI20240813BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240813BHJP
【FI】
A61B5/00 G
G16H30/20
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017122
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 朝輝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
(72)【発明者】
【氏名】中津川 実
【テーマコード(参考)】
4C117
5L096
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB09
4C117XB12
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE17
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE44
4C117XE45
4C117XE46
4C117XJ13
4C117XJ34
4C117XJ52
4C117XK14
4C117XL12
4C117XQ18
4C117XR07
4C117XR08
4C117XR09
4C117XR10
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096GA51
5L096KA04
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】遺伝子変異分類モデルの一貫性を評価すること。
【解決手段】本実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、生成部と、判定部とを備える。前記取得部は、少なくとも第1時相と第2時相とで取得された第1の医用画像と第2の医用画像とを取得する。前記生成部は、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像とを遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する。前記判定部は、前記第1の遺伝子変異分類結果と前記第2の遺伝子変異分類結果とに基づいて、前記遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1時相と第2時相とで取得された第1の医用画像と第2の医用画像とを取得する取得部と、
前記第1の医用画像と前記第2の医用画像とを遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する生成部と、
前記第1の遺伝子変異分類結果と前記第2の遺伝子変異分類結果とに基づいて、前記遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する判定部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、医学的な遺伝子変異の妥当性に更に基づいて、前記遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1の遺伝子変異分類結果と前記第2の遺伝子変異分類結果との間での変化を前記妥当性に基づいて評価することにより、前記一貫性を判定する、請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記妥当性は、腫瘍が遺伝子変異を継続しながら新たな遺伝子変異を獲得することが医学的に妥当であることと、前記腫瘍の遺伝子変異が複雑化しながら継続することが医学的に妥当であることと、前記腫瘍の遺伝子変異の消滅が希であり医学的に妥当でないこととを含んでおり、
前記変化は、遺伝子毎に、変異の獲得、変異なしの継続、変異の継続、及び変異の消滅、のうちのいずれかを示す、請求項3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記変化が前記妥当性に整合する度合を評価して遺伝子毎の一貫性スコアを算出することにより、前記一貫性を判定する、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記変化が前記変異なしの継続又は前記変異の継続である場合、前記変異なし又は前記変異が継続した期間に応じた正の値とするように前記一貫性スコアを算出する、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記変化が前記変異の消滅である場合、前記変異が継続した期間に応じた負の値とするように前記一貫性スコアを算出する、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記変化が前記変異の獲得である場合、予め定めた正の値に基づいて前記一貫性スコアを算出する、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記変化が前記変異の獲得であり、且つ当該変異を獲得した遺伝子が所定の共起関係を満たす場合、前記正の値に一定値を加算した値とするように前記一貫性スコアを算出する、請求項8に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記変化が前記変異の獲得であり、且つ当該変異を獲得した遺伝子が所定の排他的関係を満たさない場合、前記正の値に一定値を減算した値とするように前記一貫性スコアを算出する、請求項8に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記変化が前記変異なしの継続又は前記変異の消滅である一方、遺伝子検査の結果が変異ありを示す場合、予め定めた負の最大値とするように前記一貫性スコアを算出する、請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記遺伝子毎の一貫性スコアを合計して前記遺伝子変異分類モデルに対するモデル一貫性スコアを算出し、前記モデル一貫性スコアと閾値とに基づいて、前記一貫性を判定する、請求項5乃至11のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記第1時相と前記第2時相との間に遺伝子変異の治療が行われた場合、前記一貫性の判定を保留する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
選択部を更に備え、
前記生成部は、複数の遺伝子変異分類モデルの各々毎に、前記第1の遺伝子変異分類結果と前記第2の遺伝子変異分類結果とを生成し、
前記判定部は、前記複数の遺伝子変異分類モデルの各々毎に、前記一貫性を判定し、
前記選択部は、前記一貫性を判定した結果に基づいて、前記複数の遺伝子変異分類モデルのうち、前記一貫性をもつ遺伝子変異分類モデルを選択する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
前記取得部は、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像のうちの不足した医用画像に対応する時相で取得された超音波画像を画像生成モデルへ入力することで医用画像を生成し、前記生成した医用画像を前記不足した医用画像として取得する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項16】
少なくとも第1時相と第2時相とで取得された第1の医用画像と第2の医用画像とを取得することと、
前記第1の医用画像と前記第2の医用画像とを遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成することと、
前記第1の遺伝子変異分類結果と前記第2の遺伝子変異分類結果とに基づいて、前記遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定することと、
を備える医用情報処理方法。
【請求項17】
コンピュータに、
少なくとも第1時相と第2時相とで取得された第1の医用画像と第2の医用画像とを取得する取得機能と、
前記第1の医用画像と前記第2の医用画像とを遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する生成機能と、
前記第1の遺伝子変異分類結果と前記第2の遺伝子変異分類結果とに基づいて、前記遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する判定機能と、
を実現させるための医用情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線画像から遺伝子変異の有無を分類する遺伝子変異分類モデルが知られている。この種の遺伝子変異分類モデルは、非侵襲な手法であるため、遺伝子変異のモニタリング技術として注目されている。
【0003】
一方、係る遺伝子変異分類モデルは、本発明者の検討によれば、必ずしも正しい分類を行えないため、モニタリング時に腫瘍学的に妥当でない分類をする場合がある。例えば、遺伝子変異分類モデルは、治療行為がないにも関わらず、遺伝子変異の傾向が大きく異なる分類や、遺伝子変異が消滅してしまう分類をする場合がある。従って、本発明者の検討によれば、遺伝子変異分類モデルの一貫性を評価する手法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、遺伝子変異分類モデルの一貫性を評価することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、生成部と、判定部とを備える。前記取得部は、少なくとも第1時相と第2時相とで取得された第1の医用画像と第2の医用画像とを取得する。前記生成部は、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像とを遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する。前記判定部は、前記第1の遺伝子変異分類結果と前記第2の遺伝子変異分類結果とに基づいて、前記遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置及びその周辺構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるステップST30の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における動作を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の変形例に係る動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態における動作を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る医用情報処理装置及びその周辺構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図12は、第3の実施形態における動作を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、第4の実施形態におけるステップST10の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図14】
図14は、第4の実施形態における動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各実施形態について図面を用いて説明する。以下の各実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置及びその周辺構成を示すブロック図である。
図1中、画像データベース10が医用情報処理装置20に接続されている。
【0010】
ここで、画像データベース10は、患者の医用画像や患者情報といったデジタルデータを互いに関連付けて保存する記憶装置である。医用画像としては、CT (Computed Tomography)画像、MRI (Magnetic Resonance Imaging)画像、超音波画像、及びPET (Positron Emission Tomography)画像などの任意のモダリティ画像が使用可能となっている。各々の医用画像は、撮影日時を示す時相を付帯情報に含んでいる。患者情報は、患者固有の情報であり、例えば、患者ID、患者氏名、生年月日、性別及び年齢を含んでいる。また、画像データベース10は、患者の診療データを更に保存してもよい。診療データは、診療の過程で、患者の身体状況、病状、及び治療等について、医療従事者が知り得た情報である。診療データは、例えば、検査履歴情報、画像情報、心電図情報、バイタルサイン情報、薬歴情報、レポート情報、カルテ記載情報、及び看護記録情報等を含む。検査履歴情報は、例えば、患者に対して検体検査、及び細菌検査等が行われた結果取得される検査結果の履歴を表す情報である。画像情報は、例えば、患者を撮影等することにより取得された医用画像の所在を表す情報である。心電図情報は、例えば、患者から計測された心電図波形に関する情報である。バイタルサイン情報は、例えば、患者の生命に関わる基本的な情報である。バイタルサイン情報には、例えば、脈拍数、呼吸数、体温、血圧、及び意識レベル等が含まれる。薬歴情報は、例えば、患者に投与された薬剤の量の履歴を示す情報である。レポート情報は、例えば、診療科の診療医からの検査依頼に対して、放射線科の読影医がX線画像、CT画像、MRI画像、及び超音波画像等の医用画像を読影し、患者の状態及び疾患についてまとめた情報である。カルテ記載情報は、例えば、診療医等により電子カルテに入力された情報である。カルテ記載情報には、例えば、入院時の診療記録、患者の病歴、及び薬の処方履歴等が含まれる。看護記録情報は、例えば、看護師等により電子カルテに入力された情報である。看護記録情報には、入院時の看護記録等が含まれる。
【0011】
一方、医用情報処理装置20は、処理回路21、メモリ22、入力インタフェース23、ディスプレイ24及び通信インタフェース25を備えている。
【0012】
処理回路21は、ユーザにより入力インタフェース23を介してから入力された指示に基づいて、メモリ22に記憶された情報やプログラムを読み出し、これらに従って医用情報処理装置20を制御する。例えば、処理回路21は、メモリ22から読み出したプログラムに従って、各機能を実現させるプロセッサである。ここで、各機能としては、例えば、取得機能211、生成機能212及び判定機能213などがある。
【0013】
取得機能211は、少なくとも第1時相と第2時相とで取得された第1の医用画像と第2の医用画像とを取得する。なお、少なくとも第1時相と第2時相とで取得することは、複数時相で取得することを意味している。医用画像としては、非侵襲で撮影され、遺伝子毎の遺伝子変異の有無を分類可能な医用画像であれば、任意のものが使用可能となっている。係る医用画像としては、例えば、CT画像等の放射線画像や、MRI画像が知られている。取得機能211は、取得部の一例である。
【0014】
生成機能212は、第1の医用画像と第2の医用画像とを遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する。生成機能212は、生成部の一例である。
【0015】
判定機能213は、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とに基づいて、遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。例えば、判定機能213は、遺伝子変異分類モデルが出力する着目時相の医用画像に対する遺伝子変異分類結果と、他の1つ以上の時相の遺伝子変異分類結果とを用い、着目時相における遺伝子変異分類モデル出力の一貫性を評価(判定)する。一貫性は、遺伝子変異分類モデルの出力(遺伝子変異分類結果)が一貫して医学的な妥当性(腫瘍学的特性、遺伝学的知見)と一致する特性を意味する。一貫性は、遺伝子変異分類モデルの複数の遺伝子変異分類結果に対して、既知の医学的な妥当性と比較することで評価される。すなわち、判定機能213は、医学的な遺伝子変異の妥当性に更に基づいて、遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定してもよい。例えば、判定機能213は、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果との間での変化を妥当性に基づいて評価することにより、一貫性を判定してもよい。ここで、妥当性は、例えば、次の(a)~(c)を含んでもよい。
【0016】
(a)腫瘍が遺伝子変異を継続しながら新たな遺伝子変異を獲得することが医学的に妥当であること。上記(a)は、例えば、腫瘍が特定の遺伝子変異を引き継ぎながら、新たな遺伝子変異を獲得する、という腫瘍学的特性に対応する。
【0017】
(b)腫瘍の遺伝子変異が複雑化しながら継続することが医学的に妥当であること。上記(b)は、例えば、ドライバー遺伝子変異によって、腫瘍の生存に有利な方向に変異が複雑化しながら継続する、という腫瘍学的特性に対応する。
【0018】
(c)腫瘍の遺伝子変異の消滅が希であり医学的に妥当でないこと。上記(c)は、例えば、腫瘍の進展に伴って、腫瘍全体ではドライバー遺伝子変異が不可逆的に増加し複雑さを増す、という腫瘍学的特性に対応する。補足すると、上記(c)は、例えば、腫瘍細胞の生存競争によって特定のドライバー遺伝子変異が消滅する場合もあるが、支配的要素とは考えられていないことに対応する。
【0019】
また、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果との間での変化は、遺伝子毎に、変異の獲得、変異なしの継続、変異の継続、及び変異の消滅、のうちのいずれかを示すものとしてもよい。ここで、「変化」は、「移行」又は「組合せ」と呼んでもよい。
【0020】
判定機能213は、上記変化が妥当性に整合する度合を評価して遺伝子毎の一貫性スコアを算出することにより、一貫性を判定してもよい。例えば、判定機能213は、変化が変異なしの継続又は変異の継続である場合、変異なし又は変異が継続した期間に応じた正の値とするように一貫性スコアを算出してもよい。また、判定機能213は、変化が変異の消滅である場合、変異が継続した期間に応じた負の値とするように一貫性スコアを算出してもよい。また、判定機能213は、変化が変異の獲得である場合、予め定めた正の値に基づいて一貫性スコアを算出してもよい。また、判定機能213は、遺伝子毎の一貫性スコアを合計して遺伝子変異分類モデルに対するモデル一貫性スコアを算出し、モデル一貫性スコアと閾値とに基づいて、一貫性を判定してもよい。判定機能213は、判定部の一例である。
【0021】
メモリ22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路から構成されている。メモリ22は、医用情報処理装置20の医用情報処理プログラム等の各種プログラムと、画像データベース10から取得した患者情報、医用画像、予め保存する遺伝子変異分類モデル、処理途中のデータ等の各種データとを記憶する。医用情報処理プログラムは、例えば、取得機能211、生成機能212及び判定機能213をコンピュータに実現させるためのプログラムとしてもよい。遺伝子変異分類モデルは、例えば、医用画像を入力データとし、遺伝子変異分類結果を出力データとしたデータセットを機械学習した学習済みモデルである。この遺伝子変異分類モデルは、患者の医用画像に基づいて、当該患者の遺伝子変異分類結果を出力する。遺伝子変異分類結果は、遺伝子毎に遺伝子変異の有無を示すデータである。
【0022】
入力インタフェース23は、ユーザからの各種指示・命令・情報・選択・設定を医用情報処理装置20に入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース23は、処理回路21等に接続されており、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路21へと出力する。以下の医用情報処理装置20に関する説明中、「ユーザの操作」は、「ユーザによる入力インタフェース23の操作」を意味する。なお、本明細書において入力インタフェース23はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路21へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース23の例に含まれる。
【0023】
ディスプレイ24は、任意の医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。ディスプレイ24は、処理回路21に制御され、医用画像などを表示する表示部の一例である。
【0024】
通信インタフェース25は、医用情報処理装置20と画像データベース10との間で種々のデータを通信する。通信規格として、例えば医用画像情報に関する通信にはDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)が使用可能であり、医用文字情報に関する通信にはHL7(Health Level 7)が使用可能である。
【0025】
次に、以上のように構成された医用情報処理装置の動作について
図2及び
図3のフローチャート並びに
図4乃至
図6の模式図を用いて説明する。以下の説明では、医用画像の例として、CT画像等の放射線画像を用いている。但し、医用画像としては、放射線画像に限らず、例えば、MRI画像を用いてもよい。
【0026】
ステップST10において、医用情報処理装置20の処理回路21は、ユーザの操作により、複数時相の放射線画像を取得する。
【0027】
ステップST10の後、ステップST20において、処理回路21は、各時相の放射線画像毎に、メモリ22内の遺伝子変異分類モデルを実行する。例えば、処理回路21は、第1時相の放射線画像を遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果を生成する。また、処理回路21は、第2時相の放射線画像を遺伝子変異分類モデルへ入力することで、第2の遺伝子変異分類結果を生成する。以下同様に、処理回路21は、各々の時相の放射線画像を遺伝子変異分類モデルへ入力することで、各々の遺伝子変異分類結果を生成する。
【0028】
ステップST20の後、ステップST30~ST40において、処理回路21は、各々の遺伝子変異分類結果に基づいて、遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。詳しくは、処理回路21は、医学的な遺伝子変異の妥当性に更に基づいて、遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。例えば、処理回路21は、各時相の遺伝子変異分類結果に基づいて、遺伝子変異の妥当性を評価したモデル一貫性スコアを算出し(ステップST30)、モデル一貫性スコアに基づいて遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する(ステップST40)。ここで、ステップST30は、例えば、
図3に示すように、ステップST31~ST34により実行される。
【0029】
ステップST31において、処理回路21は、例えば
図4(a)に示すように、各時相の遺伝子変異分類結果の変化を腫瘍学的に評価する。補足すると、
図4(a)中、撮影タイミングt内の各々の時相t1~t3の放射線画像g1~g3から遺伝子変異分類モデルMdにより、各々の遺伝子変異分類結果が生成されている。各々の遺伝子変異分類結果は、7つの遺伝子の各々毎に、変異有り「+」又は変異なし「-」を表している。なお、符号「+」、「-」は、他の符号「1」、「0」等に読み替えてもよい。ここで、2つの時相間の遺伝子変異分類結果の変化は、E1:変異の獲得、E2:変異なしの継続、E3:変異の継続、E4:変異の消滅、の4通りに評価することができる。
【0030】
例えば、時相t1、t2間において、遺伝子ALK、EGFR、BRAFにおける遺伝子変異分類結果の変化は、変異なし「-」から変異有り「+」への移行を表すため、E1:変異の獲得であると腫瘍学的に評価される。上記E1の評価は、時相t2、t3間の遺伝子ROS1についても同様である。
【0031】
また、時相t1、t2間において、遺伝子RET、ROS1、TP53における遺伝子変異分類結果の変化は、変異なし「-」から変異なし「-」への移行を表すため、E2:変異なしの継続であると腫瘍学的に評価される。上記E2の評価は、時相t2、t3間の遺伝子RET、TP53についても同様である。
【0032】
また、時相t1、t2間において、遺伝子KRASにおける遺伝子変異分類結果の変化は、変異有り「+」から変異有り「+」への移行を表すため、E3:変異の継続であると腫瘍学的に評価される。上記E3の評価は、時相t2、t3間の遺伝子KRAS、ALK、EGFRについても同様である。
【0033】
また、時相t2、t3間において、遺伝子BRAFにおける遺伝子変異分類結果の変化は、変異有り「+」から変異なし「-」への移行を表すため、E4:変異の消滅であると腫瘍学的に評価される。
【0034】
なお、時相t1~t3における遺伝子変異分類結果は、
図4(b)のように、模式的に表される。
図4(b)中、縦軸は撮影タイミングtを表し、三角形の横幅は、生存期間に応じた変異の複雑さを表している。黒丸印は、遺伝子の変異の獲得を表し、×印は、遺伝子の変異の消滅を表している。いま、
図4(b)に示すように、時相t1の前に遺伝子KRASが変異を獲得し、時相t3まで変異が継続している。また、時相t1、t2間において、遺伝子ALK、EGFR、BRAFが変異を獲得し、時相t3まで遺伝子ALK、EGFRの変異が継続している。また、時相t2、t3間において、遺伝子ROS1が変異を獲得し、遺伝子BRAFの変異が消滅している。
【0035】
ステップST31の後、ステップST32において、処理回路21は、2つの時相間の遺伝子変異分類結果の変化に基づいて、変異なしの継続期間と、変異の継続期間とを評価する。例えば、処理回路21は、
図5に示すように、2つの時相の差分として、変異なしの継続期間と、変異の継続期間とを遺伝子毎に算出する。なお、
図5中、変異消滅の場合、変異を獲得した時相t2と、変異が消滅した時相t3との差分(t3-t2)を、変異の継続期間として算出している。また、
図5中、変異獲得の場合、変異の継続期間の起点なので、回数をカウントしている。
【0036】
ステップST32の後、ステップST33において、処理回路21は、遺伝子変異分類結果の変化と、各々の継続期間とに基づいて、遺伝子毎に一貫性スコアGcs_t,nを算出する。ここで、添字tは、放射線画像の撮影タイミング又は時相を表す。
図4及び
図5の例の場合、一貫性スコアGcs_t,nは、時相t3について算出されるため、t=t3となる。添字nは、遺伝子の識別番号である。
図4の例の場合、7つの遺伝子の各々をn=1からn=7までの番号で識別する。例えば、n=1で遺伝子KRASを表し、n=2で遺伝子ALKを表し、・・・、n=7で遺伝子BRAFを表す。
【0037】
従って、処理回路21は、
図5及び
図6に示すように、腫瘍学的な評価と、変異なしの継続期間と、変異の継続期間とに応じて、7つの一貫性スコアGcs_t,1~Gcs_t,7を算出する。また、Gcs_t,nは、遺伝子変異分類結果の変化が腫瘍学的な妥当性に整合する度合を評価した値であり、例えば、E1~E4のスコアの合計である。
図6中、「t=T」は、撮影タイミングtが一貫性判定の対象の時相Tであることを示す。「t=T-1」は、撮影タイミングtが時相Tの1回前の時相(T-1)であることを示す。腫瘍学的評価がE1:変化が変異の獲得である場合、予め定めた正の値に基づいて一貫性スコアが算出される。腫瘍学的評価がE2:変異なしの継続又はE3:変異の継続である場合、変異なし又は変異が継続した期間に応じた正の値とするように一貫性スコアが算出される。腫瘍学的評価がE4:変異の消滅の場合、変異が継続した期間に応じた負の値とするように一貫性スコアを算出する。但し、E1~E4のうち、該当しないスコアはゼロである。
図5の場合、遺伝子KRASの一貫性スコアGcs_t,1は、E1~E4のうち、E3のみのスコアとなる。従って、
図5及び
図6の場合、一貫性スコアGcs_t,1は、変異の継続期間に応じた重みをWaとしたとき、次式に示すように算出される。
【0038】
Gcs_t,1=0.2×(t3-t1)×Wa
同様に、各遺伝子の一貫性スコアGcs_2,t3~Gcs_7,t3は、変異なしの継続期間に応じた重みをWbとしたとき、次式に示すように算出される。
【0039】
Gcs_t,2=0.1+0.2×(t3-t2)×Wa
Gcs_t,3= 0.2×(t3-t1)×Wb
Gcs_t,4=0.1+0.2×(t2-t1)×Wb
Gcs_t,5= 0.2×(t3-t1)×Wb
Gcs_t,6=0.1+0.2×(t3-t2)×Wa
Gcs_t,7=0.1-0.5×(t3-t2)×Wa
ステップST33の後、ステップST34において、処理回路21は、遺伝子毎の一貫性スコアに基づいて、モデル一貫性スコアを算出する。例えば、処理回路21は、次の式(1)に示すように、遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,1~Gcs_t,7を合計してモデル一貫性スコアMcs(t)を算出する。
【0040】
【0041】
ステップST34の終了により、ステップST30が終了する。
【0042】
ステップST30の後、ステップST40において、処理回路21は、モデル一貫性スコアと閾値とに基づいて、遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。例えば、モデル一貫性スコアが閾値を超えた場合、処理回路21は、遺伝子変異分類モデルの一貫性があることを判定する。ステップST40の後、処理を終了する。
【0043】
上述したように第1の実施形態によれば、処理回路21は、少なくとも第1時相と第2時相とで取得された第1の医用画像と第2の医用画像とを取得する。処理回路21は、第1の医用画像と第2の医用画像とを遺伝子変異分類モデルMdへ入力することで、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する。処理回路21は、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とに基づいて、遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。従って、複数時相の遺伝子変異分類結果によって、遺伝子変異分類モデルMdの一貫性を評価することができる。また、医師は、遺伝子変異分類モデルの一貫性を評価できるため、遺伝子変異分類モデルを臨床応用しやすくなる可能性がある。補足すると、医師は、仮に、遺伝子変異分類モデルが腫瘍学的に妥当でない分類をした場合の変異推定の誤りに起因する医療過誤を引き起こす可能性を考慮し、遺伝子変異分類モデルを臨床応用しにくい状況にある。これに対し、本実施形態では、遺伝子変異分類モデルMdの一貫性評価を通じて、医師が遺伝子変異分類モデルの臨床応用可能性を検討できるため、遺伝子変異分類モデルを臨床応用しやすくなる可能性がある。
【0044】
また、第1の実施形態によれば、処理回路21は、医学的な遺伝子変異の妥当性に更に基づいて、遺伝子変異分類モデルMdの一貫性を判定する。従って、前述した効果に加え、遺伝子変異の医学的な妥当性に裏付けられた判定結果を得ることができる。
【0045】
また、第1の実施形態によれば、処理回路21は、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果との間での変化を当該妥当性に基づいて評価することにより、一貫性を判定する。従って、前述した効果に加え、医学的な妥当性の評価を踏まえた判定結果を得ることができる。
【0046】
また、第1の実施形態によれば、妥当性は、腫瘍が遺伝子変異を継続しながら新たな遺伝子変異を獲得することが医学的に妥当であることと、腫瘍の遺伝子変異が複雑化しながら継続することが医学的に妥当であることと、腫瘍の遺伝子変異の消滅が希であり医学的に妥当でないこととを含んでいる。また、遺伝子変異分類結果の変化は、遺伝子毎に、変異の獲得、変異なしの継続、変異の継続、及び変異の消滅、のうちのいずれかを示す。従って、前述した効果に加え、妥当性と変化の内容を示したので、一貫性の判定精度の向上を図ることができる。
【0047】
また、第1の実施形態によれば、処理回路21は、変化が妥当性に整合する度合を評価して遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを算出することにより、一貫性を判定する。従って、前述した効果に加え、定量的なスコアに基づいて、一貫性を判定することができる。
【0048】
また、第1の実施形態によれば、処理回路21は、変化が変異なしの継続又は変異の継続である場合、変異なし又は変異が継続した期間に応じた正の値とするように一貫性スコアGcs_t,nを算出する。従って、前述した効果に加え、医学的に妥当な継続期間に応じて、高い値の一貫性スコアGcs_t,nを算出することができる。
【0049】
また、第1の実施形態によれば、処理回路21は、変化が変異の消滅である場合、変異が継続した期間に応じた負の値とするように一貫性スコアを算出する。従って、前述した効果に加え、医学的に妥当でない変異の消滅を契機として、変異の消滅前の継続期間に応じて、低い値の一貫性スコアGcs_t,nを算出することができる。
【0050】
また、第1の実施形態によれば、処理回路21は、変化が変異の獲得である場合、予め定めた正の値に基づいて一貫性スコアGcs_t,nを算出する。従って、前述した効果に加え、医学的に妥当な変異の獲得を定量化して、一貫性スコアGcs_t,nを算出することができる。
【0051】
また、第1の実施形態によれば、処理回路21は、遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを合計して遺伝子変異分類モデルMdに対するモデル一貫性スコアMcs(t)を算出し、モデル一貫性スコアMcs(t)と閾値とに基づいて、一貫性を判定する。従って、前述した効果に加え、遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを合計して定量的に、遺伝子変異分類モデルMdの一貫性を判定することができる。
【0052】
(変形例)
第1の実施形態では、既知の遺伝学的知見を考慮せずに、遺伝子変異分類結果の変化から遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを算出したが、これに限定されない。例えば、処理回路21は、遺伝子検査の結果や、遺伝子変異の共起/排他的関係といった遺伝学的知見を考慮してもよい。遺伝子検査は、1つから5つ程度の遺伝子の変異を確定できる検査である。すなわち、遺伝子検査に係る遺伝子は、遺伝子変異分類結果が得られる複数の遺伝子のうちの少なくとも一つと同じ遺伝子であればよい。
【0053】
例えば、処理回路21は、上記変化が変異なしの継続又は変異の消滅である一方、遺伝子検査の結果が変異ありを示す場合、予め定めた負の最大値とするように、遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを算出してもよい。すなわち、処理回路21は、
図7の下から3行目に示すように、確定診断である遺伝子検査の結果に対し、遺伝子変異分類結果の変化が矛盾する場合に、負の最大値となるように遺伝子毎の一貫性スコアを算出する。このような変形例によれば、前述した効果に加え、遺伝子検査の結果と矛盾する場合に、遺伝子毎の一貫性スコアが負の最大値となることにより、他の遺伝子毎の一貫性スコアを足したとしても、モデル一貫性スコアMcs(t)が閾値以下となる。従って、遺伝子検査の結果と矛盾する場合に、遺伝子変異分類モデルの一貫性がないことを判定することができる。
【0054】
また例えば、処理回路21は、
図7の下から4行目に示すように、遺伝子結果の結果に対し、遺伝子変異分類結果の変化が整合する場合に、変異の継続期間に応じた、より大きな重み付けを行った正の値とするように遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを算出してもよい。このような変形例によれば、前述した効果に加え、遺伝子検査の結果と整合する場合に、遺伝子毎の一貫性スコアがより大きな正の値となることにより、モデル一貫性スコアMcs(t)がより大きな値となる。従って、遺伝子検査の結果と整合する場合に、遺伝子変異分類モデルに一貫性があると判定される確率を増加させることができる。
【0055】
また例えば、処理回路21は、
図7の下から2行目に示すように、上記変化が変異の獲得であり、且つ当該変異を獲得した遺伝子が所定の共起関係を満たす場合、上記正の値に一定値βを加算した値とするように遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを算出してもよい。補足すると、既に変異した遺伝子G1との共起性が確認されている遺伝子G2が変異を獲得した際に、当該変異を獲得した遺伝子G2が所定の共起関係を満たすことになる。従って、所定の共起関係と整合する場合に、遺伝子毎の一貫性スコアが一定値だけ大きくなることにより、遺伝子変異分類モデルに一貫性があると判定される確率を増加させることができる。
【0056】
また例えば、処理回路21は、
図7の下から1行目に示すように、上記変化が変異の獲得であり、且つ当該変異を獲得した遺伝子が所定の排他的関係を満たさない場合、上記正の値に一定値βを減算した値とするように遺伝子毎の一貫性スコアGcs_t,nを算出してもよい。補足すると、既に変異した遺伝子G1との排他的関係が確認されている遺伝子G2が変異を獲得した際に、当該変異を獲得した遺伝子G2が所定の排他的関係を満たさないことになる。従って、所定の排他的関係と整合しない場合に、遺伝子毎の一貫性スコアが一定値だけ小さくなることにより、遺伝子変異分類モデルに一貫性があると判定される確率を低下させることができる。
【0057】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態の構成に加え、遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する際に、遺伝子変異の治療の有無を考慮した構成となっている。
【0058】
これに伴い、処理回路21の判定機能213は、前述した機能に加え、第1時相と第2時相との間に遺伝子変異の治療が行われた場合、一貫性の判定を保留する。補足すると、遺伝子変異の治療が遺伝子変異を消滅させるため、遺伝子変異の治療後には、遺伝子変異分類結果に一貫性がなくなる。これは、一貫性をもつ遺伝子変異分類モデルによる遺伝子変異分類結果でも同様である。このため、遺伝子変異の治療後には、遺伝子変異分類モデル一貫性の判定を保留している。
【0059】
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0060】
以上のような構成によれば、前述同様に、ステップST10~ST34の実行によりモデル一貫性スコアMcs(t)が算出された後、
図8に示すように、ステップST40が開始される。ステップST40は、ステップST41~ST46を含んでいる。
【0061】
ステップST41において、処理回路21は、モデル一貫性スコアMcs(t)が閾値を超えたか否かを判定し、閾値を超えた場合にはステップST42に移行する。例えば
図9に示すように、処理回路21は、各々の時相t11、t12、t14、t15の放射線画像g11、g12、g14、g51から遺伝子変異分類モデルMdにより、各々の遺伝子変異分類結果が生成されている。また、各々の遺伝子変異分類結果の変化から、各々の時相のモデル一貫性スコアMcs(t11)、Mcs(t12)、Mcs(t14)、Mcs(t15)が生成されている。閾値αを0.6とすると、モデル一貫性スコアMcs(t11)、Mcs(t12)、Mcs(t15)を判定した場合、処理回路21はステップST42に移行する。また、ステップST41の判定の結果、否の場合にはステップST44に移行する。例えば、モデル一貫性スコアMcs(t14)を判定した場合、処理回路21はステップST44に移行する。
【0062】
ステップST41の後、ステップST42において、処理回路21は、時相Tのモデル一貫性スコアMcs(T)が前時相(T-1)のモデル一貫性スコアMcs(T-1)より増えたか否かを判定し、増えた場合にはステップST43に移行する。例えば、モデル一貫性スコアMcs(t11)、Mcs(t12)、Mcs(t15)を判定した場合、処理回路21はステップST43に移行する。また、ステップST42の判定の結果、否の場合にはステップST44に移行する。
【0063】
ステップST42の後、ステップST43において、処理回路21は、時相Tのモデル一貫性スコアMcs(T)に対応する遺伝子変異分類モデルの一貫性があることを判定する。例えば、処理回路21は、モデル一貫性スコアMcs(t11)、Mcs(t12)、Mcs(t15)に対応する遺伝子変異分類モデルMdの一貫性があることを判定する。ステップST43の後、処理を終了する。
【0064】
一方、ステップST44において、処理回路21は、時相Tのモデル一貫性スコアMcs(T)が、治療した時相(T-1)に続く時相Tのモデル一貫性スコアMcs(T)か否かを判定し、判定結果が肯定的な場合には、ステップST45に移行する。例えば、モデル一貫性スコアMcs(t14)が、分子標的薬を投与して治療した時相t13に続く時相t14のモデル一貫性スコアであるため、処理回路21はステップST45に移行する。また、ステップST44の判定の結果、否の場合にはステップST46に移行する。
【0065】
ステップST45において、処理回路21は、治療した時相(T-1)に続く時相Tのモデル一貫性スコアMcs(T)に対応する遺伝子変異分類モデルMdの一貫性の判定を保留する。例えば、時相t12の遺伝子変異分類結果から時相t14の遺伝子変異分類結果への変化は、遺伝子RET、TP53における変異の消滅(E4)を示しており、一見した限りでは一貫性がない。しかしながら、時相t12、t14間の変異の消滅(E4)は、中間の時相t13における分子標的薬投与という治療の影響を受けた可能性がある。このため、処理回路21は、分子標的薬を投与して治療した時相t13に続く時相t14のモデル一貫性スコアMcs(t14)に基づく一貫性の判定を保留する。ステップST45の後、処理を終了する。
【0066】
ステップST46において、処理回路21は、時相Tのモデル一貫性スコアMcs(T)に対応する遺伝子変異分類モデルの一貫性がないことを判定する。ステップST46の後、処理を終了する。
【0067】
上述したように第2の実施形態によれば、処理回路21は、第1時相と第2時相との間に遺伝子変異の治療が行われた場合、一貫性の判定を保留する。従って、前述した効果に加え、遺伝子変異の治療が行われた場合の治療効果の影響を除去できるので、遺伝子変異分類モデルの一貫性評価をより正確に行うことができる。
【0068】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第1又は第2の実施形態の構成に加え、複数の遺伝子変異分類モデルのうち、適切な遺伝子変異分類モデルを選択する構成となっている。
【0069】
これに伴い、処理回路21の生成機能212は、前述した機能に加え、複数の遺伝子変異分類モデルの各々毎に、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する。
【0070】
処理回路21の判定機能213は、前述した機能に加え、複数の遺伝子変異分類モデルの各々毎に、一貫性を判定する。
【0071】
また、処理回路21は、
図10に示すように、前述した構成に加え、選択機能214が付加されている。選択機能214は、一貫性を判定した結果に基づいて、複数の遺伝子変異分類モデルのうち、当該一貫性をもつ遺伝子変異分類モデルを選択する。選択機能214は、選択部の一例である。
【0072】
他の構成は、第1又は第2の実施形態と同様である。
【0073】
次に、以上のように構成された医用情報処理装置の動作について
図11のフローチャート及び
図12の模式図を用いて説明する。
【0074】
ステップST2において、処理回路21は、複数の遺伝子変異分類モデルを準備する。例えば、処理回路21は、
図12に示す如き、複数の遺伝子変異分類モデルMd1、Md2を外部サーバ等から取得してメモリ22に保存する。例えば、遺伝子変異分類モデルMd1は、アジア系の患者のCT画像で学習した学習済みモデルである。遺伝子変異分類モデルMd2は、ヨーロッパ系の患者のCT画像で学習した学習済みモデルである。
【0075】
ステップST2の後、ステップST10において、処理回路21は、ユーザの操作により、複数時相t1,・・・,tmの放射線画像gtを取得する。例えば、放射線画像gtは、アフリカ系の患者のCT画像である。
【0076】
ステップST10の後、ステップST20において、処理回路21は、各時相t1,・・・,tmの放射線画像gt毎に、メモリ22内のいずれかの遺伝子変異分類モデルを実行する。
【0077】
ステップST20の後、ステップST30において、処理回路21は、各時相の遺伝子変異分類結果に基づいて、遺伝子変異の妥当性を評価したモデル一貫性スコアを算出する。
【0078】
ステップST30の後、ステップST40において、処理回路21は、モデル一貫性スコアに基づいて遺伝子変異分類モデルの一貫性を判定する。
【0079】
ステップST40の後、ステップST51において、処理回路21は、準備した全ての遺伝子変異分類モデルMd1、Md2を判定したか否かを判定する。この判定の結果、否の場合にはステップST20に戻り、未判定の遺伝子変異分類モデルの1つについてステップST20~ST51の処理を繰り返し実行する。一方、ステップST51の判定の結果、全ての遺伝子変異分類モデルMd1、Md2を判定した場合には、ステップST52に移行する。
【0080】
ステップST51の後、ステップST52において、処理回路21は、各々の遺伝子変異分類モデルの判定結果に基づいて、遺伝子変異分類モデルを選択する。例えば、
図12に示すように、遺伝子変異分類モデルMd1の判定結果が一貫性なしを示し、遺伝子変異分類モデルMd2の判定結果が一貫性ありを示すとする。この場合、処理回路21は、一貫性ありを示す遺伝子変異分類モデルMd2を選択する。なお、全ての遺伝子変異分類モデルMd1、Md2に一貫性がない場合、処理回路21は、遺伝子変異分類モデルを使用しないことを選択する。また、各々の遺伝子変異分類モデルMd1、Md2に一貫性がある場合、処理回路21は、例えば、モデル一貫性スコアMcs(tm)が高い方の遺伝子変異分類モデルを選択する。いずれにしても、ステップST52の後、処理を終了する。
【0081】
上述したように第3の実施形態によれば、処理回路21は、複数の遺伝子変異分類モデルの各々毎に、第1の遺伝子変異分類結果と第2の遺伝子変異分類結果とを生成する。処理回路21は、複数の遺伝子変異分類モデルの各々毎に、一貫性を判定する。処理回路21は、一貫性を判定した結果に基づいて、複数の遺伝子変異分類モデルのうち、当該一貫性をもつ遺伝子変異分類モデルを選択する。従って、前述した効果に加え、複数の遺伝子変異分類モデルのうち、適切な遺伝子変異分類モデルを選択することができる。例えば、同じ遺伝子を対象とした複数の遺伝子変異分類モデルがあり、入力に対してどのモデルが適切であるか判断できない場合、各々の遺伝子変異分類モデルの一貫性評価を行うことで、適切な遺伝子変異分類モデルを選択することができる。
【0082】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、第1乃至第3のいずれかの実施形態の構成に加え、複数時相の医用画像を準備できない場合、不足した時相の医用画像を他モダリティ画像から生成する構成となっている。
【0083】
これに伴い、処理回路21の取得機能211は、前述した機能に加え、第1の医用画像と第2の医用画像のうちの不足した医用画像に対応する時相で取得された超音波画像を画像生成モデルへ入力することで医用画像を生成する。また、取得機能211は、生成した医用画像を、当該不足した医用画像として取得する。
【0084】
他の構成は、第1乃至第3のいずれかの実施形態の構成と同様である。
【0085】
次に、以上のように構成された医用情報処理装置の動作について
図13のフローチャート及び
図14の模式図を用いて説明する。
【0086】
処理回路21は、複数時相の放射線画像を取得するステップST10を実行する。ステップST10は、ステップST11~ST15を含んでいる。
【0087】
ステップST11において、処理回路21は、取得可能な時相について、放射線画像を取得する。
【0088】
ステップST11の後、ステップST12において、処理回路21は、放射線画像が不足しているか否かを判定し、否の場合にはステップST13~ST15をスキップしてステップST10を終了する。一方、ステップST12の判定の結果、不足している場合、ステップST13に移行する。
【0089】
ステップST12の後、ステップST13において、処理回路21は、不足した放射線画像の時相でノイズ情報、患者情報、超音波画像をメモリ22から取得する。ノイズ情報は、超音波画像に含まれるノイズを示す情報である。患者情報は、取得された放射線画像が撮像された患者を示す情報である。超音波画像は、当該患者から超音波診断装置(他モダリティ)で撮像された医用画像である。
【0090】
ステップST13の後、ステップST14において、処理回路21は、
図14に示すように、ノイズ情報、患者情報、超音波画像に基づいて、メモリ22内の画像生成モデルMd_Gを実行する。例えば、処理回路21は、ノイズ情報、患者情報、超音波画像を画像生成モデルMd_Gへ入力することで放射線画像gGを生成する。
【0091】
ステップST14の後、ステップST15において、処理回路21は、生成した放射線画像gGを、不足した放射線画像として取得する。これにより、ステップST11~ST15からなるステップST10を終了する。
【0092】
ステップST10の終了後、前述同様に、ステップST20以降の処理を実行する。
【0093】
上述したように第4の実施形態によれば、処理回路21は、第1の医用画像と第2の医用画像のうちの不足した医用画像に対応する時相で取得された超音波画像を画像生成モデルへ入力することで医用画像を生成し、生成した医用画像を、不足した医用画像として取得する。従って、前述した効果に加え、複数時相の医用画像を準備できない場合であっても、不足した医用画像を他モダリティ画像から生成することができる。
【0094】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、遺伝子変異分類モデルの一貫性を評価することができる。
【0095】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス等の回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等が挙げられる。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1及び
図10における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0096】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
10 画像データベース
20 医用情報処理装置
21 処理回路
211 取得機能
212 生成機能
213 判定機能
214 選択機能
22 メモリ
23 入力インタフェース
24 ディスプレイ
25 通信インタフェース