(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112207
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】締結構造及び分解方法
(51)【国際特許分類】
F21S 43/37 20180101AFI20240813BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20240813BHJP
F21S 41/39 20180101ALI20240813BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20240813BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240813BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240813BHJP
【FI】
F21S43/37
F16B5/02 E
F21S41/39
F21W103:00
F21W103:20
F21W102:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017125
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】大塚 靖史
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001JA03
3J001KA19
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】部品同士の分解が容易な新たな技術を提供する。
【解決手段】締結構造100は、車両用灯具の一部を構成する第1の部品と、車両用灯具の一部を構成する第2の部品と、第1の部品と第2の部品とを締結する締結部材と、を備える。締結部材は、第2の部品に形成された孔を貫通し第1の部品に設けられたボス20aにネジ止めされており、ボス20aは、周囲にリブ20bが形成されており、リブ20bは、工具26が係合した状態で工具をボス20aを中心に回転することでボス20aとともに第1の部品から外れるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具の一部を構成する第1の部品と、
車両用灯具の一部を構成する第2の部品と、
前記第1の部品と前記第2の部品とを締結する締結部材と、を備え、
前記締結部材は、前記第2の部品に形成された孔を貫通し前記第1の部品に設けられたボスにネジ止めされており、
前記ボスは、周囲にリブが形成されており、
前記リブは、工具が係合した状態で工具を前記ボスを中心に回転することで該ボスとともに前記第1の部品から外れるように構成されていることを特徴とする締結構造。
【請求項2】
前記リブは、前記ボスから放射状に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
前記ボスは、前記第1の部品に形成された円錐状の凹部の底部から上方に向かって形成されており、
前記リブは、前記凹部の内周面と前記ボスの外周面とをつなぐ三角形状であることを特徴とする請求項2に記載の締結構造。
【請求項4】
前記第1の部品は、前記底部と前記ボスとの連結部分の厚みが、前記底部の外側の部分の厚みより薄いことを特徴とする請求項3に記載の締結構造。
【請求項5】
前記連結部分は、前記リブに工具が係合した状態で工具を前記ボスを中心に回転する際に応力が集中する領域又はその近傍領域に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の締結構造。
【請求項6】
車両用灯具の一部を構成する第1の部品と、車両用灯具の一部を構成する第2の部品とを締結する締結部材がネジ止めされた前記第1の部品に設けられたボスを該第1の部品から分離することで部品同士を分解する分解方法であって、
前記ボス及び該ボスの周囲に形成されているリブに、前記ボスと前記リブとが入り込む凹部が先端に形成されている工具を嵌め、該工具を前記ボスを中心に回転することで、前記リブ及び前記ボスを前記第1の部品から分離することを特徴とする分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品同士の分解技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でカーボンニュートラルを目標とした開発が進められている。そのため、車両に用いられている各部品についても、リサイクルが可能な部品は分解して選別することが望ましい。しかしながら、多くの部品は、組立ての容易さや組み立てた部品同士が外れないことを優先して設計されており、必ずしも分解されることを前提に設計されていない。そのため、部品同士の分解に多くの時間や労力が必要となり、部品のリサイクルコストの上昇やリサイクル率の低下を招くことになる。
【0003】
そこで、部品の設計には分解されることが前提の工夫が必要となる。例えば、特許文献1には、ハウジング及びレンズの一方に設けられた係合突起と他方に設けられた係合孔とを係合することで、ハウジングとレンズとが固定される車両用灯具が開示されている。この車両用灯具は、前述の係合突起又は係合孔が形成された舌片がハウジング又はレンズに設けられており、舌片に折れ手段としてのスリットが形成されている。これにより、ハウジングとレンズとを分解する際に、スリットを基点として舌片を簡単に折ることができるため、係合した係合突起と係合孔の係合が解除され、ハウジングとレンズとの分解が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の舌片は、ハウジングとレンズとの係合部であり、分解作業が比較的容易な領域に設けられている。しかしながら、部品同士の接合箇所や接合方法は様々であり、複数の部品が組み立てられた状態から組み立てた順番と逆の順番で分解することが容易でない場合もある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、部品同士の分解が容易な新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の締結構造は、車両用灯具の一部を構成する第1の部品と、車両用灯具の一部を構成する第2の部品と、第1の部品と第2の部品とを締結する締結部材と、を備える。締結部材は、第2の部品に形成された孔を貫通し第1の部品に設けられたボスにネジ止めされており、ボスは、周囲にリブが形成されており、リブは、工具が係合した状態で工具をボスを中心に回転することで該ボスとともに第1の部品から外れるように構成されている。
【0008】
この態様によると、ネジ等の締結部材をボスから外すことなくボスごと第1の部品から外すことで、第1の部品と第2の部品との締結が解除されるため、部品同士の分解が解除しやすくなる。
【0009】
リブは、ボスから放射状に複数形成されていてもよい。これにより、工具の回転による力が複数のリブを介して分散してボス周辺にかかるため、一つのリブだけに過大な力がかかってリブのみが変形し、ボスが第1の部品から外れないという状況が低減される。
【0010】
ボスは、第1の部品に形成された円錐状の凹部の底部から上方に向かって形成されており、リブは、凹部の内周面とボスの外周面とをつなぐ三角形状であってもよい。これにより、工具を回転する際に底部に応力が集中しやすくなる。
【0011】
第1の部品は、底部とボスとの連結部分の厚みが、底部の外側の部分の厚みより薄い。これにより、底部とボスとの連結部分からボスが外れやすくなる。
【0012】
連結部分は、リブに工具が係合した状態で工具をボスを中心に回転する際に応力が集中する領域又はその近傍領域に設けられていてもよい。これにより、再現性よく連結部分で破断しやすくなる。
【0013】
本発明の別の態様は、分解方法である。この方法は、車両用灯具の一部を構成する第1の部品と、車両用灯具の一部を構成する第2の部品とを締結する締結部材がネジ止めされた第1の部品に設けられたボスを該第1の部品から分離することで部品同士を分解する分解方法であって、ボス及び該ボスの周囲に形成されているリブに、ボスとリブとが入り込む凹部が先端に形成されている工具を嵌め、該工具をボスを中心に回転することで、リブ及びボスを第1の部品から分離する。
【0014】
この態様によると、ネジ等の締結部材をボスから外すことなくボスごと第1の部品から外すことで、第1の部品と第2の部品との締結が解除されるため、部品同士の分解が解除しやすくなる。
【0015】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法、灯具や照明などの装置、発光モジュール、光源などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品同士の分解が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態に係るリヤ側灯具の正面図である。
【
図2】
図1に示すリヤ側灯具のA-A断面図である。
【
図7】本実施の形態に係る工具の先端部の拡大図である。
【
図8】
図3に示すボディに相当する試験片のボスに工具を位置合わせした状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す状態から工具を回転させることでボスの周辺がボディから分離された状態を示す図である。
【
図10】ボディのボスとリブに工具を係合させた状態を説明するための断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本実施の形態では車両用灯具としてリヤ側灯具を例に説明するが、車両用灯具が前照灯であっても本願発明を適用できる。
図1は、本実施の形態に係るリヤ側灯具の正面図である。
図2は、
図1に示すリヤ側灯具のA-A断面図である。
【0020】
図1に示すリヤ側灯具10は、ターンシグナルランプやテールランプであり、樹脂材料からなる複数の部品を組み立てたものである。
図2に示すように、リヤ側灯具10は、部品として、外側のレンズカバー12と、レンズカバー12の内部に設けられているエクステンション14と、エクステンション14の下方に設けられているインナーレンズ16a,16bと、インナーレンズ16bの後方(車両前方側)に配置されたリフレクタ18と、リフレクタ18の後方に配置されているボディ20と、を備える。
【0021】
また、本実施の形態に係る締結構造100は、エクステンション14と、リフレクタ18と、ボディ20と、エクステンション14、リフレクタ18及びボディ20を締結する締結部材としてのスクリューネジ22と、を備える。スクリューネジ22は、エクステンション14に形成された孔14a及びリフレクタ18に形成された孔18aを貫通し、ボディ20に設けられたボス20aにネジ止めされている。前述のように、車両の廃車、解体に伴い様々な部品のリサイクルを進めるに際し、部品を分解する必要がある。
【0022】
そこで、ボディ20のボス20aは、周囲にリブ20bが形成されており、リブ20bは、工具26が係合した状態で工具26をボス20aを中心に回転することでボス20aとともにボディ20から外れるように構成されている。これにより、スクリューネジ22をボス20aから外すことなくボス20aごとボディ20から外すことで、ボディ20とエクステンション14やリフレクタ18との締結が解除されるため、部品同士の分解が解除しやすくなる。
【0023】
次に、締結構造100を構成するボディ20側のボス20aの近傍形状について説明する。
図3乃至
図6に示す部品は、締結構造の破壊試験のためにボディ20の一部を模したものである。また、ボス20aに固定するスクリューネジ22やエクステンション14等の第2の部品については説明の便宜上図示を省略している。以下では、
図3乃至
図6に示す部品をボディ20の一部として説明する。
図3は、破壊試験のための部品の斜視図である。
図4は、
図3に示す部品の上面図である。
図5(a)は、
図4に示すB-B断面図、
図5(b)は、
図5(a)に示すC領域の拡大図である。
図6は、ボスを含む凹部の拡大上面図である。
図7は、本実施の形態に係る工具の先端部の拡大図である。
【0024】
図3や
図4に示すように、ボス20aは、ボディ20に形成された円錐状の凹部20cの底部の中央から上方に向かって形成されている。リブ20bは、ボス20aの中心からずれた位置から放射状に3つ形成されている。各リブ20bは同じ形状であり、
図3に示すように、凹部20cの内周面20dとボス20aの外周面20eとをつなぐ三角形状である。これにより、後述する工具26の回転による力が複数のリブ20bを介して分散してボス20a周辺にかかるため、一つのリブだけに過大な力がかかってリブのみが変形し、ボス20aがボディ20から外れないという状況が低減される。
【0025】
一方、
図7に示すように、工具26の先端は、ボス20aが入り込む円柱状の穴26aと、穴26aの外周壁に等間隔に形成されている3つのスリット26cと、各スリット26cの外側に広がる扇状の切り欠き26dと、切り欠き同士の間にある扇形の係合部26eと、が形成されている。これにより、工具26を回転する際に底部に応力が集中しやすくなる。
【0026】
次に、締結構造100の破壊方法について説明する。
図8は、
図3に示すボディ20に相当する試験片のボス20aに工具26を位置合わせした状態を示す斜視図である。
図9は、
図8に示す状態から工具を回転させることでボス20aの周辺がボディ20から分離された状態を示す図である。
【0027】
図8に示す状態から工具26を矢印の方向に回転すると、工具26の係合部26eがリブ20bと係合することでリブ20bに大きな応力がかかる。その結果、
図9に示すように、リブ20bとつながっているボス20aごと、ボディ20からねじ切れるように破断され分離される。この破断のメカニズムについて更に詳述する。
【0028】
図10は、ボディ20のボス20aとリブ20bに工具26を係合させた状態を説明するための断面斜視図である。
図10に示すように、工具26の係合部26eが回転しながらリブ20bを押すことで、リブ20bの底部近傍に応力が集中するD領域が発生する。D領域は各リブ20bに発生するため、ボス20aの根本を囲むように生じる剪断応力によってボス20aがねじ切れやすくなる(
図9参照)。
【0029】
なお、本実施の形態に係るボディ20は、
図5(b)に示すように、底部20fとボス20aとの連結部分20gの厚みが、底部20fの外側の部分20hの厚みより薄い。これにより、底部20fとボス20aとの連結部分20gからボス20aが外れやすくなる。また、連結部分20gは、リブ20bに工具26が係合した状態で工具26をボス20aを中心に回転する際に応力が集中するD領域又はその近傍領域に設けられている。これにより、再現性よく連結部分20gで破断しやすくなる。
【0030】
なお、凹部20cの内周面20dとボス20aの外周面20eとの成す角は、例えば、40~50°の範囲である。また、連結部分20gの厚みは0.8~1.5mmの範囲であり、その外側の部分20hの厚みは1.2~2.0mmの範囲である。また、連結部分20gの径方向の長さは0.8~1.5mmの範囲である。また、ボス20aの外径は7~9mmの範囲である。
【0031】
上述の締結構造に係る発明を分解方法として捉えることもできる。例えば、本実施の形態に係る分解方法は、リヤ側灯具10の一部を構成するボディ20と、リヤ側灯具10の一部を構成するエクステンション14やリフレクタ18とを締結するスクリューネジ22がネジ止めされたボディ20に設けられたボス20aをボディ20から分離することで部品同士を分解する分解方法である。また、この方法は、ボス20a及びボス20aの周囲に形成されているリブ20bに、ボス20aとリブ20bとが入り込む凹部(穴26a、スリット26c、切り欠き26d)が先端に形成されている工具26を嵌め、工具26をボス20aを中心に回転することで、リブ20b及びボス20aをボディ20から分離する。これにより、ネジ等の締結部材をボス20aから外すことなくボス20aごとボディ20から外すことで、ボディ20とエクステンション14やリフレクタ18との締結が解除されるため、部品同士の分解が解除しやすくなる。
【0032】
なお、締結させる部品の組合せは、上述のボディとリフレクタ及びエクステンションとの場合だけでなく、ボディとリフレクタ、ボディとエクステンションの場合であってもよい。また、上述の締結構造を設ける灯具は、リヤ側灯具だけでなく、フロント側灯具であってもよい。
【0033】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0034】
10 リヤ側灯具、 12 レンズカバー、 14 エクステンション、 14a 孔、 18 リフレクタ、 18a 孔、 20 ボディ、 20a ボス、 20b リブ、 20c 凹部、 20d 内周面、 20e 外周面、 20f 底部、 20g 連結部分、 22 スクリューネジ、 26 工具、 26a 穴、 26c スリット、 26d 切り欠き、 26e 係合部、 100 締結構造。