(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112210
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】排紙トレイ装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 31/26 20060101AFI20240813BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B65H31/26
G03G15/00 440
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017129
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 潤也
【テーマコード(参考)】
2H072
3F054
【Fターム(参考)】
2H072FB01
2H072FB08
2H072JA02
3F054AA01
3F054AC01
3F054BA04
3F054BG08
3F054BG13
3F054CA03
3F054CA15
3F054DA16
(57)【要約】
【課題】用紙のカールを矯正しつつ積載される用紙の整合性を向上させ、用紙の落下を防ぐ。
【解決手段】排紙トレイ装置10は、排出される用紙を積載する排紙トレイ41のトレイ上面411に出没可能であって、用紙の排出方向に長く設けられたガイド部材44を備えている。ガイド部材44は、トレイ上面411における用紙の排出方向の下流側に配設され、トレイ上面411からの突出量を変更可能に設けられている。ガイド部材44は、用紙の排出方向A1の上流側から下流側に上り勾配の傾斜部451を有するように支持されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出される用紙を積載する排紙トレイを備えた排紙トレイ装置であって、
前記排紙トレイは、用紙が載置されるトレイ上面に出没可能であって、用紙の排出方向に長く設けられたガイド部材を備えており、
前記ガイド部材は、前記トレイ上面における前記排出方向の下流側に配設され、前記トレイ上面からの突出量を変更可能に設けられるとともに、前記排出方向の上流側から下流側に上り勾配の傾斜部を有するように支持されていることを特徴とする排紙トレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排紙トレイ装置において、
前記排紙トレイには前記ガイド部材を収容する収納ピットが凹状に設けられ、
前記ガイド部材は、前記収納ピット内において前記排出方向の上流側端部が回動可能に支持され、下流側端部が前記トレイ上面に対して出没可能に設けられていることを特徴とする排紙トレイ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排紙トレイ装置において、
前記ガイド部材は、前記トレイ上面からの前記突出量を複数段階に固定可能とされたことを特徴とする排紙トレイ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排紙トレイ装置において、
前記収納ピットは複数段の係合凹部を備えるとともに、前記ガイド部材は前記係合凹部に係合する突起を備えることを特徴とする排紙トレイ装置。
【請求項5】
請求項2に記載の排紙トレイ装置において、
前記ガイド部材を出没可能に駆動する駆動部が備えられ、前記駆動部により前記ガイド部材の突出量を変更可能とされたことを特徴とする排紙トレイ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の排紙トレイ装置において、
前記ガイド部材は前記傾斜部において下方に湾曲した湾曲部を備えることを特徴とする排紙トレイ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の排紙トレイ装置において、
前記ガイド部材は前記排紙トレイに複数配置されていることを特徴とする排紙トレイ装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つの請求項に記載の排紙トレイ装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排紙トレイ装置およびその排紙トレイ装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、画像の読み取りや画像形成が終了した後の用紙を排紙トレイの上に排出して積載するように構成されている。例えば、
図11に示すように、従来の画像形成装置の排紙トレイ90は、排紙ローラ92により排出方向B1に排出された用紙Pを受けるように構成されている。排紙トレイ90には、用紙Pの先端部が高く、後端部が低くなるように傾斜面91が設けられており、排出された用紙Pを安定して積載できるようになっている。また、排紙トレイ90の上部空間が十分に確保されて、複数枚の用紙Pを排紙トレイ90上に積載できるように意図されている。
【0003】
この種の画像形成装置において使用される用紙は、普通紙であるほか、厚紙であったり薄紙であったりするなど、その用紙の種類は様々であり、中にはカールした状態の用紙が含まれていることもある。そのため、排出される用紙の種類やカールの有無などによっては、例えば
図12に示すように、用紙P1が排出される際に、カールした用紙P1の先端部が、積載されている用紙P2に当接して用紙P2を排紙トレイ90から矢符B2方向に押し出すように作用することがある。用紙P2も同様にカールしているので、排紙トレイ90から先端部がはみ出したり、それによって排紙トレイ90から落下してしまったりすることがあった。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1では、排紙トレイ上に、用紙の腰付けを行うための腰付け用リブを設けた排紙トレイ装置が提案されている。また、特許文献2には、排出される用紙を受ける排紙トレイに、排出方向の上流側端部から下流側に向けて斜め上方に傾斜したシートストッパを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-313561号公報
【特許文献2】特開2017-190227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の排紙トレイ装置は、排紙される用紙に対して腰付けを行うための腰付け用リブの係合突起を、主排紙トレイの取付け用溝に着脱可能として設け、排紙される用紙の種類等によって腰付け用リブを付け替えて設置することとされている。しかしながら、腰付け用リブは主排紙トレイの中央部に設置されるので、大サイズの用紙が排出される場合に用紙に生じているカールを矯正することはできず、用紙の落下や整合性(スタック性)の悪化を招くおそれがある。また、前記特許文献2に記載のシートストッパは、排出される用紙のカールの有無にかかわらず一定の形状で設置されている。用紙によりカールの状態は変わるのに対して、一定の形状で用紙を受けることになるので、積載される用紙の整合性を保つことができないおそれがある。
【0007】
本開示は、前記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、用紙のカールを矯正しつつ積載される用紙の整合性を向上させ、用紙の落下を防ぐことが可能な排紙トレイ装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本開示の解決手段は、排出される用紙を積載する排紙トレイを備えた排紙トレイ装置であって、前記排紙トレイは、用紙が載置されるトレイ上面に出没可能であって、用紙の排出方向に長く設けられたガイド部材を備えており、前記ガイド部材は、前記トレイ上面における前記排出方向の下流側に配設され、前記トレイ上面からの突出量を変更可能に設けられるとともに、前記排出方向の上流側から下流側に上り勾配の傾斜部を有するように支持されていることを特徴としている。
【0009】
前記排紙トレイ装置における具体的な構成として次のものが挙げられる。すなわち、前記排紙トレイ装置において、前記排紙トレイには前記ガイド部材を収容する収納ピットが凹状に設けられ、前記ガイド部材は、前記収納ピット内において前記排出方向の上流側端部が回動可能に支持され、下流側端部が前記トレイ上面に対して出没可能に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記構成を有する排紙トレイ装置において、前記ガイド部材は、前記トレイ上面からの前記突出量を複数段階に固定可能とされることが好ましい。
【0011】
また、前記構成を有する排紙トレイ装置において、前記収納ピットは複数段の係合凹部を備えるとともに、前記ガイド部材は前記係合凹部に係合する突起を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記構成を有する排紙トレイ装置において、前記ガイド部材を出没可能に駆動する駆動部が備えられ、前記駆動部により前記ガイド部材の突出量を変更可能とされてもよい。
【0013】
また、前記構成を有する排紙トレイ装置において、前記ガイド部材は前記傾斜部において下方に湾曲した湾曲部を備えることが好ましい。また、前記ガイド部材は前記排紙トレイに複数配置されてもよい。
【0014】
さらに、上述した各解決手段に係る排紙トレイ装置を備える画像形成装置も本開示の技術的思想の範疇である。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る排紙トレイ装置および画像形成装置によれば、用紙のカールを矯正しつつ、積載される用紙の整合性を向上させて、用紙の落下を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の概略説明図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る排紙トレイ装置を模式的に示す正面図である。
【
図3】前記排紙トレイ装置を模式的に示す側面図である。
【
図4A】前記排紙トレイ装置の排紙トレイおよび収納ピットを示す概略正面図である。
【
図4B】前記収納ピットを拡大して示す説明図である。
【
図6】前記排紙トレイ装置への用紙排出の様子を模式的に示す正面図である。
【
図7A】前記排紙トレイ装置におけるガイド部材の退避状態を示す断面説明図である。
【
図7B】前記ガイド部材の第1突出状態を示す断面説明図である。
【
図7C】前記ガイド部材の第2突出状態を示す断面説明図である。
【
図8】本開示の実施形態2に係る排紙トレイ装置に設けられる収納ピットを拡大して示す説明図である。
【
図10】前記排紙トレイ装置におけるガイド部材の突出状態を示す説明図である。
【
図11】従来の排紙トレイを模式的に示す正面図である。
【
図12】従来の排紙トレイへの用紙排出の様子を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態に係る排紙トレイ装置およびその排紙トレイ装置を備える画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本開示の実施の形態に係る画像形成装置1の概略説明図である。
【0019】
画像形成装置1は、スキャナ機能、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能等を有する複合機であり、画像読取装置18によって読み取られた原稿の画像を外部に送信し、また、読み取られた原稿の画像または外部から受信した画像をカラーもしくは単色で用紙に画像形成する。例示の形態に係る画像形成装置1は、光走査装置11、現像装置12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、帯電器15、給紙装置17、画像読取装置18、中間転写ベルト21、定着部27、用紙搬送路31、排紙トレイ装置10等を備えている。
【0020】
画像形成装置1では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像、または単色(例えば、ブラック)を用いたモノクロ画像に応じた画像データが扱われる。画像読取装置18は、原稿載置台19の原稿または原稿搬送部(ADF)192から搬送された原稿を読み取って画像データを生成する。読み取った原稿は原稿排出トレイ193に排出される。画像形成装置1の画像転写部20には、4種類のトナー像を形成するための現像装置12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、および帯電器15が4つずつ設けられて、それぞれがブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローに対応するよう、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0021】
ドラムクリーニング装置14は、感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。帯電器15は、感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させる。光走査装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。このような一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。
【0022】
感光体ドラム13の上側には、中間転写ベルト21を介して中間転写ローラ16が配置されている。中間転写ベルト21はトナー像が形成される像担持体であり、転写駆動ローラ22および転写従動ローラ23に張架されて矢符Eの方向へ回転(周回移動)する。各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が転写(1次転写)されて重ね合わされることで、中間転写ベルト21の表面にはカラーのトナー像が形成される。
【0023】
2次転写部25の転写ローラ26は、中間転写ベルト21との間にニップ域(2次転写位置)を形成しており、用紙搬送路31を通じて搬送された用紙をニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写されて定着部27に搬送される。中間転写ベルト21上に残ったトナー等はベルトクリーニング装置24によって回収される。
【0024】
定着部27は、用紙を挟んで回転する定着ローラ28および加圧ローラ29を備えている。定着部27は、定着ローラ28および加圧ローラ29の間にトナー像が転写された用紙を挟み込んで加熱および加圧し、トナー像を用紙に定着させる。
【0025】
給紙装置17は、画像形成に使用する用紙を収容しており、光走査装置11の下側に設けられている。用紙は、ピックアップローラ33によって給紙装置17から引き出されて、用紙搬送路31を通じて搬送され、2次転写部25や定着部27を経由して、排紙ローラ36を介して排紙トレイ装置10の排紙トレイ41へと搬送される。用紙搬送路31には、用紙を一旦停止させて、用紙の先端を揃えた後、中間転写ベルト21と転写ローラ26との間のニップ域でのカラーのトナー像の転写タイミングに合わせて用紙の搬送を開始するレジストローラ35、用紙の搬送を促す複数の搬送ローラ34、および排紙ローラ36等の種々のローラ対が配置されている。
【0026】
ピックアップローラ33は、給紙装置17の端部近傍に備えられ、収容された用紙を1枚ずつ用紙搬送路31に供給する呼び込みローラである。レジストローラ35は、給紙装置17から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を転写ローラ26に搬送する。
【0027】
用紙の表面だけでなく裏面にも画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ36から用紙反転搬送路32へと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙をレジストローラ35へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ装置10の排紙トレイ41へと搬送する。排紙ローラ36は、用紙を副走査方向である排出方向(
図2に示す矢符A1方向)に排出するよう駆動されている。
【0028】
排紙トレイ装置10は、排紙ローラ36によって排出される用紙を積載する排紙トレイ41を備えている。この排紙トレイ装置10については、
図2以降に示す図面を参照して以下に詳しく説明する。
【0029】
(実施形態1)
図2および
図3は、本開示の実施形態1に係る排紙トレイ装置10を模式的に示し、
図2は正面図、
図3は側面図である。
【0030】
排紙トレイ装置10は、用紙搬送路31を経て排紙ローラ36により排出される用紙Pを受ける排紙トレイ41を備えている。排紙トレイ41は、用紙Pの排出方向(矢符A1方向)に長く設けられている。この排紙トレイ41の上面であるトレイ上面411は、用紙Pの排出方向の下流側に略水平面となる領域を含む。略水平面であるトレイ上面411の上流側には傾斜面となる領域が連続的に繋がって設けられている。これにより、排紙ローラ36の下方に空間が設けられ、排紙トレイ41上に複数の用紙Pを積載可能とされている。
【0031】
排紙トレイ41上に排出される用紙には、A4サイズやA3サイズなど複数種類のサイズが含まれる。A4サイズの用紙であれば、用紙の先端部が排紙トレイ41の途中部に配置される長さとなり、排紙トレイ41から落下するおそれは殆どないと考えられる。これに対して、例えばA3サイズなどの大サイズの用紙Pであると、用紙Pの先端部は排紙トレイ41における排出方向A1の下流側端部(図中左側端部)近くまで到達する。そのため、例えばカールを有する大サイズの用紙であれば、用紙の先端部で排紙トレイ41に安定して積載されず、落下することもあると考えられる。
【0032】
このような問題点に対して、例示の形態に係る排紙トレイ装置10では、排紙トレイ41にガイド部材44が設けられている。ガイド部材44は、トレイ上面411において、用紙Pの排出方向A1の下流側端部に配設され、用紙Pの排出方向(矢符A1方向)に長く設けられている。
図2に示すように、ガイド部材44は、排出方向A1の上流側から下流側に上り勾配(下流側から上流側に下り勾配)の傾斜部451を備えて、この傾斜部451がトレイ上面411に突出可能となるように設けられている。
【0033】
図示するように、ガイド部材44がトレイ上面411に突出した状態のとき、排紙トレイ41上の用紙Pは、排出方向A1の下流側から上流側に向かって全体的に下り勾配となる傾斜方向Dに沿った形態で載置される。用紙Pの後端部(図中右側端部)は、傾斜方向Dに沿って滑り落ち、安定した状態で排紙トレイ41に積載される。また、用紙Pの先端部は、排紙トレイ41上に存在して、積載の整合性が確保されることとなる。
【0034】
より詳しくは、ガイド部材44は、排紙トレイ41の下流側において、排出方向A1に直交する用紙Pの幅方向(主走査方向)A2の中央部付近に配設されている。設けられるガイド部材44は1つであってもよいが、
図3に示すように、複数が並設されていてもよい。例示の形態では、トレイ上面411において、排出方向A1に直交する用紙Pの幅方向A2の中央部付近に、2つのガイド部材44が間隔をあけて配置されている。2つのガイド部材44が並んでトレイ上面411に突出していることで、用紙Pの幅方向A2の略中央部が盛り上がった形状に湾曲して載置されることになる。
【0035】
また、ガイド部材44は、トレイ上面411に出没可能に設けられるとともに、トレイ上面411からの突出量を変更できるように設けられている。
図4Aは、排紙トレイ41および排紙トレイ41に設けられる収納ピット42を示す概略正面図であり、
図4Bは
図4AのF部に配置された収納ピット42を拡大して示す説明図である。
図5は、排紙トレイ41の収納ピット42およびガイド部材44の断面を示し、
図4BにおけるA-A断面図に相当する。
【0036】
図示するように、排紙トレイ41には、ガイド部材44を収容するための収納ピット42が設けられている。収納ピット42は、排紙トレイ41における排出方向A1の下流側端部で、幅方向A2の略中央部に凹状に設けられている。
【0037】
図4Bに示すように、ガイド部材44は、排出方向A1に長いリブ状の部材とされ、収納ピット42内において排出方向A1の上流側端部が回動可能に支持されるとともに、下流側端部がトレイ上面411に対して出没可能に設けられている。例示の形態では、ガイド部材44は上流側端部(図中右側端部)に回動軸49が設けられ、回動軸49を中心に回動可能に支持されている。ガイド部材44は、回動軸49を中心に回動することで、
図4Aに示すように、下流側端部(図中左側端部)がトレイ上面411に出没可能とされている。
【0038】
図5に示すように、ガイド部材44は、上方に凸状の略U字状の断面形状を有して、リブ上面45が曲面状に形成されている。リブ上面45から下方に延びるリブ側面46は、互いに対向して設けられ、各リブ側面46の下端部に外方へ突出する突起47が設けられている。
図4Bに示すように、突起47は、ガイド部材44の下端縁の近傍であって、排出方向A1の下流側寄りに突設されている。排出方向A1の下流側の面であるガイド部材44のリブ端面48と、収納ピット42の内面との間には隙間が設けられている。リブ端面48の下端部は、収納ピット42の底部に当接して配設されている。
【0039】
また、
図5に示すように、収納ピット42は、ピット内面である長手方向(排出方向A1)の内壁421に、複数段の係合凹部43を有している。例示の形態では、係合凹部43は、内壁421を貫通する矩形状の穴部として形成されているが、ピット内面に開口する凹部とされてもよい。
図4Bに示すように、係合凹部43としては、第1係合凹部431、第2係合凹部432、および第3係合凹部433が略上下方向に並んで設けられている。ガイド部材44の突起47は、これらの複数段の係合凹部43に選択的に係合可能とされて、いずれかの係合凹部43に突起47が係合されることで、ガイド部材44はトレイ上面411からの突出量を複数段階に固定可能とされている。
【0040】
例えば、
図4Bおよび
図5に示すように、ガイド部材44の突起47が、最も下方に設けられた第1係合凹部431に係合されると、ガイド部材44は収納ピット42内に収容されて、リブ上面45はトレイ上面411には突出しない状態(退避状態)となる。ガイド部材44は、回動軸49を中心として回動可能に支持されているので、各係合凹部43は突起47の回動軌跡上に位置するよう、いずれも回動軸49から等距離の位置に設けられている。
【0041】
図6は、排紙トレイ装置10への用紙排出の様子を模式的に示す正面図であり、
図7A~
図7Cはガイド部材44の出没の様子を順に示す断面説明図である。
【0042】
図7Aに示すように、ガイド部材44が退避状態であるとき、リブ端面48の下端部が収納ピット42の底面に当接して、ガイド部材44の全体が収納ピット42内に収容されている。リブ端面48の下端部には、外方へ突出する係止部482が設けられている。ガイド部材44は、リブ上面45の傾斜部451において下方に湾曲した湾曲部452を備えて、傾斜部451はリブ上面45よりも下方に窪んだ状態で配設されている。そのため、排紙トレイ41へ排出される用紙はガイド部材44には接触しない。
【0043】
図7Bに示すように、ガイド部材44の突起47を、3段階の真ん中の第2係合凹部432に係合させるとき、ガイド部材44は回動軸49を中心に回動する。係止部482は収納ピット42の底面から離れ、リブ上面45がトレイ上面411より上方に突出する(第1突出状態)。リブ端面48には操作凹部481が設けられているので、指先を操作凹部481に引っかけてガイド部材44を上方に引き上げることで、ガイド部材44を容易に操作でき、突起47をいずれかの係合凹部43に係合させることができる。
【0044】
ガイド部材44をさらに上方に引き上げることで、ガイド部材44を、回動軸49を中心にさらに回動させ、
図7Cに示すように、ガイド部材44の突起47を、3段階の上段の第3係合凹部433に係合させることができる。ガイド部材44は、突起47と第3係合凹部433との係合により、リブ上面45がトレイ上面411よりさらに上方に突出した状態(第2突出状態)となり、安定して支持される。ガイド部材44の係止部482は、収納ピット42の規制凸部422に係止して、それ以上のガイド部材44の回動が規制される。
【0045】
前記のとおり、ガイド部材44は、排紙トレイ41上の下流側の中央部付近に配設されている。副走査方向に凹状にカールしている用紙は、
図3に示したように、排紙トレイ41上でガイド部材44に接触することで、幅方向A2の略中央部が盛り上がった形状に湾曲して、主走査方向に凸状に変形される。これにより、用紙のカールを矯正することができ、積載される用紙の整合性を向上させることができる。また、
図2に示すように、ガイド部材44は傾斜部451を備えて排紙トレイ41の下流側に高さを有するように設けられるので、用紙Pの先端部を持ち上げて積載することができ、排紙トレイ41から用紙Pが落下するのを防ぐことができる。
【0046】
ここで、例えば、用紙が副走査方向にカールしている場合を考える。
図12に示したように、従来構造の排紙トレイ90において、用紙P1の先端部が下方に向く副走査方向の下向きカールを有する場合には、用紙P1が排出方向B1に送り出されるとき、積載されている用紙P2に用紙P1の先端部が干渉し、下向きカールを有する用紙P2を排紙トレイ90から押し出し、用紙P2が落下してしまう可能性がある。
【0047】
これに対して、本実施形態では、
図6に示すように、トレイ上面411にはガイド部材44が突出して設けられて、下向きカールを有する用紙P2であっても、そのカールが矯正された状態で傾斜方向Dに傾いて積載されている。そのため、排出されてくる用紙P1によって押し出されたとしても、用紙P2の先端部は落下方向を向かず、ガイド部材44に沿って積載されたまま保持される。その結果、用紙P2が落下するのを防ぐことができる。
【0048】
このように、排出される用紙が副走査方向(排出方向A1)に上向きカールまたは下向きカールを有する場合、ガイド部材44をトレイ上面411から突出されることが好ましい。上向きカールは、主に普通紙や薄紙等の所定の坪量以下である用紙に生じやすく、下向きカールは厚紙等の所定の坪量を超える腰の強い用紙に生じやすい。また、普通紙は、カールが比較的小さいが、吸湿状態ではカールが大きくなる傾向にある。薄紙は、カールが比較的大きく、目方向と直交する方向にカールしやすく、縦目横通しでは副走査方向にカールしやすい傾向がある。厚紙は、目方向にかかわらず、副走査方向に大きめのカールを生じやすい傾向がある。
【0049】
本実施形態に係る排紙トレイ装置10では、排紙トレイ41の幅方向A2の中央部付近に配設されたガイド部材44によって、用紙Pの先端部を主走査方向(排出方向A1と直交する幅方向A2)に湾曲させることができ、用紙の先端部(排紙トレイ41の下流側)におけるカールの向きを矯正することが可能とされる。これにより、積載される用紙の整合性を高めるとともに、排紙トレイ41からの用紙落下を防ぐことができる。
【0050】
また、用紙の坪量や目方向(用紙タイプ)によって、生じているカール度合い(カール量)が異なるため、ガイド部材44は用紙に応じた突出量に設定されることが好ましい。本実施形態では、ガイド部材44は、第1突出状態、第2突出状態、または退避状態に、その突出量を変更可能であるので、これを利用することができる。
【0051】
例えば、カールが小さい用紙であれば排紙トレイ41からの用紙落下のおそれが低いため、ガイド部材44の突出量を抑えた第1突出状態(
図7B)とするか、または退避状態(
図7A)とすることで、排紙トレイ41上の用紙の整合性を高め、用紙の積載量を確保することが可能となる。一方、カールが大きい用紙であれば、ガイド部材44の突出量の大きい第2突出状態(
図7C)とすることで、カールの矯正を図ることが好ましい。下向きカールを有する用紙に対しては、第2突出状態のガイド部材44によって落下防止効果が高められ、上向きカールを有する用紙に対しては、用紙の自重によりカールの向きが変えられる効果も期待でき、積載の整合性を向上させることが可能となる。
【0052】
このようなガイド部材44の突出量の変更は、前記のようにリブ端面48に設けられた操作凹部481を利用して容易に行うことができ、画像形成に使用される用紙に応じて適宜設定することが可能である。排紙トレイ装置10を備える画像形成装置1とすることで、用紙のカールを矯正しつつ、排紙トレイ41に積載される用紙の整合性を向上させることができ、用紙の落下を防いで、円滑な画像形成が可能となる。なお、排紙トレイ装置10は、画像形成装置1の排紙ローラ36の下流側に設けられるに限らず、例えば画像読取装置18の原稿排出トレイ193に同様に適用されてもよい。
【0053】
(実施形態2)
本開示の実施形態2に係る排紙トレイ装置10について、図面を参照して説明する。
図8は、実施形態2に係る排紙トレイ装置10に設けられる収納ピット42を拡大して示す説明図、
図9は、
図8におけるB-B断面図、
図10は、ガイド部材44の突出状態を示す説明図である。なお、実施形態2に係る排紙トレイ装置10は実施形態1のものと基本構成が共通することから、その共通する構成を同じ参照符号により示して重複する説明を省略する。
【0054】
画像形成装置1に設けられる排紙トレイ装置10として、前記実施形態1では、ガイド部材44の突起47と収納ピット42の係合凹部43との係合により、ガイド部材44の突出量を複数段階に変更可能とされていた。本開示に係る排紙トレイ装置10はこれに限定されるものではなく、どのように突出量が変更される構成であってもよい。
【0055】
例えば、排紙トレイ装置10には、ガイド部材44を出没可能に駆動する駆動部が設けられ、選択された用紙タイプ設定に応じてガイド部材44が所定の突出量に変更可能とされてもよい。
図8および
図9に示すように、駆動部として駆動モータ50が備えられ、駆動モータ50に連結された駆動ギヤ51、および駆動ギヤ51に噛み合う扇状ギヤ52を介してガイド部材44の回動軸49に駆動モータ50の駆動が伝達されるように構成されてもよい。
【0056】
図8に示すように、ガイド部材44が収納ピット42内に収容されて、リブ上面45および湾曲部452がトレイ上面411には突出しない状態(退避状態)から、駆動モータ50の駆動により、
図10に示すように、ガイド部材44を、回動軸49を中心に回動させて、湾曲部452がトレイ上面411より上方に突出し、係止部482が収納ピット42の規制凸部422に係止する状態まで、ガイド部材44を突出させることができる。これにより、画像形成に使用される用紙に応じて、ガイド部材44を所定の突出量に変更することができ、用紙タイプに適した突出量のガイド部材44によりカールを矯正し、排紙トレイ41からの落下を防止することが可能となる。
【0057】
さらに、図示しない画像形成装置1の操作部にガイド部材44の突出量を調整する入力部を設けてもよい。この構成によると、使用者が排紙トレイ41に排出される用紙のカール量や、積載される用紙の状況に応じて入力部を操作し、適宜ガイド部材44の突出量を変化させることができる。よって、簡単な操作で排紙トレイ41からの落下を防止することが可能となる。
【0058】
なお、このような排紙トレイ装置10を備える画像形成装置1としては、外部から伝達される画像データやスキャナなどによって原稿から読み取った画像データに応じ、記録媒体に多色または単色の画像を形成することができる複合機を例に挙げて示したが、本開示の画像形成装置はこれに限定されるものではなく、モノクロ機であるかカラー機であるかに限定されず、プリンタ装置、複写機、ファクシミリ装置またはこれらの機能を併せ持つ種々の画像形成を行う装置であってもよい。
【0059】
本開示は前記の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想に含まれる技術的事項のすべてが本開示の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であり、そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
10 排紙トレイ装置
36 排紙ローラ
41 排紙トレイ
411 トレイ上面
42 収納ピット
421 内壁
422 規制凸部
43 係合凹部
431 第1係合凹部
432 第2係合凹部
433 第3係合凹部
44 ガイド部材
45 リブ上面
451 傾斜部
452 湾曲部
46 リブ側面
47 突起
48 リブ端面
481 操作凹部
482 係止部
49 回動軸
50 駆動モータ(駆動部)
51 駆動ギヤ
52 扇状ギヤ
P、P1、P2 用紙