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  • 特開-ビット及び削孔機 図1
  • 特開-ビット及び削孔機 図2
  • 特開-ビット及び削孔機 図3
  • 特開-ビット及び削孔機 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112211
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ビット及び削孔機
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
E21B10/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017130
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】三上 登
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB21
2D129BA03
2D129GA07
(57)【要約】
【課題】削孔水や注入材の流路を十分に大きく確保することができるビット及びこれを備える削孔機を提供する。
【解決手段】内部に流路21が設けられ、外周面に収容凹部22が設けられた中空筒状のビット本体部2と、一端部31が収容凹部22において回転可能に軸支され、他端部32に爪部321が設けられた板状の拡径翼3と、を備え、拡径翼3は、収容凹部22内に収容された閉状態と、収容凹部22内から突出した開状態との間で変位可能であり、閉状態において爪部321が収容凹部22内から突出した状態になるビット1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が設けられ、外周面に収容凹部が設けられた中空筒状のビット本体部と、
一端部が前記収容凹部において回転可能に軸支され、他端部に爪部が設けられた板状の拡径翼と、
を備え、
前記拡径翼は、前記収容凹部内に収容された閉状態と、前記収容凹部内から突出した開状態との間で変位可能であり、前記閉状態において前記爪部が前記収容凹部内から突出した状態になるビット。
【請求項2】
前記爪部は前記閉状態において前記ビット本体部の径方向外側に向く面が傾斜面になっている請求項1に記載のビット。
【請求項3】
複数の前記拡径翼が前記ビット本体部に対して周方向に等間隔で配置されている請求項1に記載のビット。
【請求項4】
前記拡径翼を貫通する窓部が設けられている請求項1に記載のビット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のビットと、
内部に流路が設けられ、一端側に前記ビットを取り付け可能なロッドパイプと、
前記ロッドパイプの他端側が固定され、前記ロッドパイプを第1方向及び前記第1方向と逆の方向である第2方向に回転可能であり、前記ロッドパイプを前後方向に移動可能であり、更に前記ロッドパイプ及び前記ビットに液体を供給可能である装置本体と、
を備える削孔機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の削孔時に用いられるビット及びこれを備える削孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を削孔し地盤改良材等を地中に注入する工法では、一般的に、削孔深度に応じて所定の本数が繋ぎ合わされるロッドパイプと、ロッドパイプの先端に取り付けられるビットを備える削孔機が用いられている。こうした削孔機を用いた地盤の削孔や地盤改良は、ロッドパイプ及びビットを回転させると共に、これらの中に形成された流路を経て削孔水や、セメントミルク等の注入材を孔内に導入することにより行われる。
【0003】
また、こうした削孔機では、例えば特許文献1に記載されているように、開閉可能な拡径翼を備え、拡径翼を開くことで削孔の途中で拡径することが可能なビットやロッドパイプが用いられる場合がある。このような拡径可能なビット等を用いることにより、例えば削孔内で改良材と破砕された地盤とを攪拌混合することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5746577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ビットに拡径翼を設ける場合には、ビットの内部に拡径翼を開閉する油圧式等の開閉機構を設けるスペースを確保する必要があるため、削孔水や注入材の流路を設けるためのスペースが狭くなってしまい、削孔水や注入材の導入を十分に行えないおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決することを課題とするものであって、削孔水や注入材の流路を十分に大きく確保することができるビット及びこれを備える削孔機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部に流路が設けられ、外周面に収容凹部が設けられた中空筒状のビット本体部と、一端部が前記収容凹部において回転可能に軸支され、他端部に爪部が設けられた板状の拡径翼と、を備え、前記拡径翼は、前記収容凹部内に収容された閉状態と、前記収容凹部内から突出した開状態との間で変位可能であり、前記閉状態において前記爪部が前記収容凹部内から突出した状態になるビットであることを特徴とする。
【0008】
上記発明において、前記爪部は前記閉状態において前記ビット本体部の径方向外側に向く面が傾斜面になっていることが好ましい。
【0009】
上記発明において、複数の前記拡径翼が前記ビット本体部に対して周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。
【0010】
上記発明において、前記拡径翼を貫通する窓部が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記ビットと、内部に流路が設けられ、一端側に前記ビットを取り付け可能なロッドパイプと、前記ロッドパイプの他端側が固定され、前記ロッドパイプを第1方向及び前記第1方向と逆の方向である第2方向に回転可能であり、前記ロッドパイプを前後方向に移動可能であり、更に前記ロッドパイプ及び前記ビットに液体を供給可能である装置本体と、を備える削孔機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のビット及びこれを備える削孔機によると、回転方向に応じて周囲の地盤から加わる反力により拡径翼を開閉することができ、拡径翼の開閉機構としてビット内部に油圧式等の開閉機構を設ける必要が無いため、ビット内部において当該開閉機構を設けるためのスペースを削減することができ、削孔水や注入材の流路を十分に大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るビットであって、拡径翼が閉状態にある様子を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るビットであって、拡径翼が開状態にある様子を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るビットの軸方向に垂直な面による断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るビットをロッドパイプに接続した状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に従うビットの実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るビット1であって、拡径翼3が閉状態にある様子を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係るビット1であって、拡径翼3が開状態にある様子を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係るビット1の軸方向に垂直な面による断面図である。
【0016】
本発明の実施形態に係るビット1は、削孔機に用いられる掘削用の部材であり、図1及び図2に示すように、ビット本体部2と、ビット本体部2に対して開閉可能に取り付けられた拡径翼3とを備えて構成されている。
【0017】
ビット本体部2は、内部に流路21が設けられ、外周面に収容凹部22が設けられた中空筒状の部材である。ビット本体部2の先端部(図1図2及び図4における紙面下方)には図示しない掘削歯が形成されている。
【0018】
流路21は、削孔水や注入材であるセメントミルク等、削孔機の装置本体からロッドパイプ7(図4参照)を経て供給される液体が通過する孔である。
【0019】
収容凹部22は、ビット本体部2の外周面を凹ませて形成されている凹部であり、閉状態にある拡径翼3を収容可能になっている。収容凹部22は、ビット本体部2の軸方向に平行な平面である第1底面221と、第1底面221と平行であり第1底面221よりも深い位置(ビット本体部2の径方向内側により近い位置)にある平面である第2底面222と、第1底面221から第2底面222の方向に向かう傾斜面である傾斜底面223と、傾斜底面223と第2底面222の間にありビット本体部2の軸方向に沿う円弧状の溝である軸用凹溝部224とを有して形成されている。また、収容凹部22の第2底面222の軸用凹溝部224がある側と反対側の端部には、第2底面222に対して垂直な垂直面225が形成されている。更に、軸用凹溝部224の長手方向の両端面には、それぞれ第1軸孔(不図示)が形成されている。
【0020】
拡径翼3は、一端部31が収容凹部22において回転可能に軸支され、他端部32に爪部321が設けられた板状の部材であり、収容凹部22内に収容された閉状態(図1の状態)と、収容凹部22内から突出した開状態(図2の状態)との間で変位可能になっている。拡径翼3は、ビット本体部2に対して周方向に等間隔で配置されていて、本実施形態においては3つの拡径翼3がビット本体部2に対して周方向に等間隔で配置されている。
【0021】
一端部31は、拡径翼3が閉状態にあるときに傾斜底面223に当接する部位であり、傾斜底面223に当接する第1平坦面314が形成されている。また、一端部31には、第1平坦面314に垂直な垂直面311が形成されている。更に、一端部31の第1平坦面314と反対側にある表面には、第1平坦面314と平行な第2平坦面315が形成されている。
【0022】
また、一端部31には、ビット本体部2の軸方向に沿って形成され、収容凹部22の軸用凹溝部224に嵌合する軸用円柱部312が形成されている。軸用円柱部312内には第2軸孔313が形成されていて、収容凹部22に形成された第1軸孔(不図示)と第2軸孔313に回転軸4が挿入されることにより、拡径翼3が収容凹部22に対して軸支され、開閉可能になっている。
【0023】
拡径翼3の他端部32には、櫛歯状の爪部321が形成されている。爪部321の先端部部分は、拡径翼3が閉状態にある際に収容凹部22内から突出した状態になる。爪部321は、拡径翼3が閉状態においてビット本体部2の径方向外側に向く面が傾斜面321aになっている。他端部32の傾斜面321aが形成されている側と反対側の面は、拡径翼3が閉状態にあるときに収容凹部22の第1底面221に当接する第3平坦面322になっている。また、他端部32には、他端部32を貫通する窓部324が設けられている。
【0024】
図4は、本発明の実施形態に係るビット1をロッドパイプ7に接続した状態を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、上述した構成を備えるビット1は、削孔機において、中継部材6を介してビット1よりも直径が小さいロッドパイプ7に接続されて使用される。なお、図4は模式的な図であり、拡径翼3の窓部324は省略されている。
【0025】
中継部材6は、円錐台状の中空な部材であり、内部に流路61が設けられている。中継部材6はその上端部においてロッドパイプ7と図示しない接続機構を用いて接続され、その下端部において同じく図示しない接続機構を用いて接続されている。中継部材6は、上端部と下端部で直径が異なり、本実施形態のように、ビット1とロッドパイプ7との径が異なる場合に使用することで、径の異なる両者の接続を可能にすることができる。中継部材6の流路61の直径は、ビット1の流路21と同一の直径を有していて、中継部材6とビット1とを接続した状態において、流路61と流路21は連通した状態になる。なお、本発明においては、中継部材6は必須の構成ではなく、ビット1とロッドパイプ7の直径が同一である場合には、中継部材6を省略することも可能である。
【0026】
ロッドパイプ7は、一端側に中継部材6を介してビット1を取り付け可能な円筒状の部材であり、内部に流路71が設けられている。ロッドパイプ7の流路71は、ビット1の流路21及び中継部材6の流路61と同一の直径を有していて、中継部材6とロッドパイプ7を接続した状態において、流路71と流路61は連通した状態になる。ロッドパイプ7の他端側は図示しない削孔機の装置本体に着脱可能に固定され、当該装置本体によりロッドパイプ7は第1方向及び第1方向と逆の方向である第2方向に回転されると共に、前後方向に移動される。また、装置本体から供給される削孔水や注入材等の液体は、ロッドパイプ7の流路71、中継部材6の流路61及びビット1の流路21へと供給される。
【0027】
上述した構成を備えるビット1は、削孔機の装置本体によりロッドパイプ7を第1方向(図3において時計回りの方向)に回転することにより、第1方向に回転する。この第1方向への回転時、周囲の地盤の反力により拡径翼3の第1平坦面314と第3平坦面322が収容凹部22の傾斜底面223と第1底面221とに押し付けられて、図3の実線で示すように、拡径翼3が閉状態になる。このように、装置本体によりビット1が閉状態になるように第1方向にロッドパイプ7を回転しつつ前進することにより、ビット1の直径に応じた削孔径で削孔を行うことができる。
【0028】
一方、装置本体によりロッドパイプ7を第1方向と逆の方向である第2方向(図3において反時計回りの方向)に回転すると、ビット1も第2方向に回転するが、この際、周囲の地盤に爪部321の先端部分が食い込みつつ回転することで、地盤からの反力が拡径翼3に加わり、拡径翼3が開く方向に回動する。そして、拡径翼3の垂直面311と第2平坦面315がそれぞれ収容凹部22の第2底面222と垂直面225とに当接した状態に至り拡径翼3の開く動作がこれ以上行えない状態になることで、拡径翼3は完全に開いた開状態になる。このように、装置本体によりビット1が開状態になるように第2方向にロッドパイプ7を回転しつつ前進することにより、開状態になった拡径翼3の回転半径に応じた削孔径で、拡径して削孔を行うことができる。このとき、複数の拡径翼3がビット本体部2に対して周方向に等間隔で配置されていることにより、掘削中にビット1が削孔の軸心位置からずれることを防止することができる。
【0029】
また、拡径翼3が開状態になったビット1を引き抜く場合等、拡径翼3を閉じる必要がある場合には、ロッドパイプ7及びビット1を再び第1方向に回転させることにより、周囲の地盤から拡径翼3に対してこれを閉じる方向に力が加わり、拡径翼3を閉状態にすることができる。このとき、拡径翼3に窓部324が設けられていることにより、閉じつつある拡径翼3と収容凹部22の間に位置する砂礫等をこの窓部324から外側に逃がすことができ、拡径翼3と収容凹部22との間に砂礫等が挟まり拡径翼3が閉状態にならなくなるという問題が生じることを防止することができる。
【0030】
このように、上述した実施形態に係るビット1及びこのビット1を備えた削孔機によると、ビット1の内部に拡径翼3を開閉するための特段の機構を要しないため、ビット1の内部に削孔水や注入材の流路21を十分に大きく確保することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されず、種々の変形を採用することができる。
【0032】
例えば、上述した実施形態に係るビット1では、3枚の拡径翼3が設けられていたが、本発明においては2枚や、4枚以上の拡径翼3を設けてもよい。拡径翼3の枚数が少ないほどビット本体部2に設ける拡径翼3の回転軸4から爪部321までの長さを長く確保することができるため、開状態における掘削径を大きく確保することができる一方で、掘削中の削孔内における掘削位置の安定性が低下したり、掘削に必要なトルクが増加したりする。そのため、掘削条件に応じて設ける拡径翼3の枚数を適宜調節することが好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1:ビット
2:ビット本体部
3:拡径翼
4:回転軸
6:中継部材
7:ロッドパイプ
21:流路
31:一端部
32:他端部
61:流路
71:流路
22:収容凹部
221:第1底面
222:第2底面
223:傾斜底面
224:軸用凹溝部
225:垂直面
311:垂直面
312:軸用円柱部
313:第2軸孔
314:第1平坦面
315:第2平坦面
321:爪部
321a:傾斜面
322:第3平坦面
324:窓部
図1
図2
図3
図4