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特開2024-112212電池電極スラリー処理装置および電池電極スラリー処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112212
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電池電極スラリー処理装置および電池電極スラリー処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240813BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240813BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240813BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
B05C11/10
B05C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017132
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尋史
(72)【発明者】
【氏名】河手 昌大
(72)【発明者】
【氏名】井口 隆康
【テーマコード(参考)】
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
4F042AA06
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA02
4F042BA12
4F042BA15
4F042CA01
4F042CA05
4F042CA06
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB20
4F042CB25
4F042CB27
4F042DH09
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電池電極スラリーの品質を安定して維持することができる電池電極スラリー処理装置を提供する。
【解決手段】電池電極スラリー作製用の複数の材料を供給する供給手段11~13と、複数の材料を輸送する第1輸送手段21~23と、複数の材料を混練して連続的に排出する第1混練手段14と、前記混練物を受け取り輸送する入口部241と、前記混練物を排出する出口部251と、を備え、前記第1混練手段14から排出された混練物を輸送する第2輸送手段24、25と、前記混練物の一部を貯留する第1貯留部41と、前記混練物の一部を貯留する第2貯留部181~183を有し、当該第2貯留部181~183に貯留されている前記混練物を電極用板に塗布する塗布手段と、前記第2貯留部181~183の内部の前記混練物の量を監視し、前記第1貯留部41の貯留量を調整するように前記供給手段11~13を制御する輸送量制御手段61と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池電極スラリーを作製して塗布する電池電極スラリー処理装置であって、
前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料を供給する供給手段と、
前記供給手段から供給された複数の材料を輸送する第1輸送手段と、
前記第1輸送手段により輸送された複数の材料を混練して連続的に排出する第1混練手段と、
前記第1混練手段から排出された混練物を受け取り輸送する入口部と、前記入口部を経由して輸送された前記混練物を排出する出口部と、を備え、前記第1混練手段から排出された前記混練物を輸送する第2輸送手段と、
前記第2輸送手段の途中に設けられ、前記混練物の一部を貯留する第1貯留部と、
前記第2輸送手段に接続されて、当該第2輸送手段により輸送された前記混練物の一部を貯留する第2貯留部を有し、当該第2貯留部に貯留されている前記混練物を電極用板に塗布する塗布手段と、
前記第2貯留部の内部の前記混練物の量を監視し、この監視量に基づいて、前記第1貯留部の貯留量を調整するように前記供給手段を制御する輸送量制御手段と、
を備えることを特徴とする電池電極スラリー処理装置。
【請求項2】
前記第1貯留部は前記入口部の途中に設けられており、前記入口部と前記出口部との間には当該入口部から輸送された前記混練物をさらに混練して当該出口部に向かって連続的に排出する第2混練手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電池電極スラリー処理装置。
【請求項3】
前記第1混練手段および前記第2混練手段のうち少なくともいずれかは、複数設けられ、
前記第1混練手段が複数設けられている場合には、前記複数の第1混練手段は並列あるいは直列に設けられ、
前記第2混練手段が複数設けられている場合には、前記複数の第2混練手段は並列あるいは直列に設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電池電極スラリー処理装置。
【請求項4】
前記第1混練手段は、前記複数の材料を粗混練し、
前記第2混練手段は、前記第2輸送手段により輸送された材料を本混練することを特徴とする請求項2に記載の電池電極スラリー処理装置。
【請求項5】
前記塗布手段を複数備え、
前記第2輸送手段の前記出口部が複数に分岐し、前記分岐した複数の前記出口部のそれぞれに前記塗布手段が接続されている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電池電極スラリー処理装置。
【請求項6】
前記輸送量制御手段は、複数の前記塗布手段の電極用板への塗布状況を監視し、塗布可能な前記塗布手段の数に応じて、前記第1貯留部における貯留量を調整する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電池電極スラリー処理装置。
【請求項7】
前記輸送量制御手段は、複数の前記塗布手段への供給を、各塗布手段における塗布状況に応じて優先順位を付けて制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電池電極スラリー処理装置。
【請求項8】
前記第2輸送手段により輸送される前記混練物を循環させる循環手段をさらに具備する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電池電極スラリー処理装置。
【請求項9】
電池電極スラリーを作製して塗布する電池電極スラリー処理装置における電池電極スラリー処理方法であって、
前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料を供給し、
供給された前記複数の材料を輸送し、
輸送された前記複数の材料を混練し、混練物を連続的に排出し、
前記混練物の一部を第1貯留部に貯留しつつ輸送し、
輸送された前記混練物の一部を第2貯留部に貯留するとともに、前記混練物を電極用板に塗布するに際し、
前記第2貯留部で貯留されている前記混練物の量を監視し、この監視量に基づいて、前記第2貯留部の貯留量を調整するように前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料の供給量を制御する、
ことを特徴とする電池電極スラリー処理方法。
【請求項10】
前記混練物を前記第1貯留部から前記第2貯留部へ輸送する途中で、再混練して、再混練した前記混練物を連続的に輸送する、
ことを特徴とする請求項9に記載の電池電極スラリー処理方法。
【請求項11】
前記混練を、前記複数の材料の粗混練とし、
前記再混練を、本混練とする、
ことを特徴とする請求項10に記載の電池電極スラリー処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池電極スラリー処理装置および電池電極スラリー処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の材料を混練してスラリーを得る方法として、バッチ混練が一般的である。バッチ混練とは、スラリーの作製に必要な複数の材料を全て大釜に投入し、これら複数の材料が均一に混ざるまで混練を行うことである。
【0003】
ただ、バッチ混練では、大釜に複数の材料を一度にまとめて投入してから均一に混ぜるため、混練時間を長くとる必要がある。また、大釜の取り替え等の作業を人手で行う必要があるなど、バッチ混練は、スラリーの作製過程における工数増加の原因になっていた。
【0004】
また、バッチ混練では、大釜に複数の材料を全て投入してから、スラリーが得られるまでに、時間がかかってしまう。このため、ある程度の量のスラリーを短時間で得るためには、1度のバッチ混練で得られるスラリー量を増加させる必要があり、スラリー量の増加に応じて大きくした大釜を用意する必要がある。したがって、バッチ混練では装置の小型化が困難であった。
【0005】
また、バッチ混練では、大釜の取り替え作業といった人手で行う必要のある工程が上述のように存在するため、スラリーの作製工程の完全自動化が困難であった。
【0006】
さらに、バッチ混練では、作製するスラリー量の自由度が低く、スラリーが不足しないよう多めに作製するなどによって、大量に得られたスラリーを使用するまでのタイムラグが問題になることがあった。
【0007】
そこで、所定量ずつ連続的に投入した複数の材料を粗混練する予備混練部と、予備混練部で粗混練された材料を本混練する本混練部と、を備え、予備混練部で粗混練された材料を、モーノポンプにより本混練部に供給して連続的にスラリーを作製する混練装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、電池電極スラリーを作製して塗布する電池電極スラリー処理装置であって、前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料を供給する供給手段と、前記供給手段から供給された複数の材料を輸送する第1輸送手段と、前記第1輸送手段により輸送された複数の材料を混練して連続的に排出する第1混練手段と、前記第1混練手段から排出された材料を輸送する第2輸送手段と、前記第2輸送手段により輸送された材料を循環させる循環手段と、前記循環手段により循環している材料の一部を貯留する、当該循環手段に接続された貯留部と、当該貯留部に貯留されている材料を電極用板に塗布する塗布手段と、を備えた電池電極スラリー処理装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-33924号公報
【特許文献2】特開2017-147190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した電池電極スラリー処理装置では、二次電池の電池電極(正極や負極)を構成する電極板(正極板や負極板)を形成する際、必要な材料を混練して得られた電池電極スラリーを電極用板である金属シート(正極用板であればアルミシート、負極用板であれば銅シート)上に塗布し、乾燥させることで、電極板を形成することができる。
【0011】
このような電池電極スラリー処理装置では、完全自動化の要望がある。
しかしながら、安定した品質の電池電極スラリーを生成・塗布処理できるようにすべく、装置全体の運用のさらなる自動化を進めていくにあたっては、前述の先行技術文献に開示の処理装置に対して、どのような装置構成としてどのような制御をすればよいかについてまだ検討の余地がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電池電極スラリー処理装置において、混練処理を自動化しつつ品質が安定したスラリーを生成し、塗布処理することを課題とし、電池電極スラリーの品質を安定して維持することができる電池電極スラリー処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
第1の態様は、
電池電極スラリーを作製して塗布する電池電極スラリー処理装置であって、
前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料を供給する供給手段と、
前記供給手段から供給された複数の材料を輸送する第1輸送手段と、
前記第1輸送手段により輸送された複数の材料を混練して連続的に排出する第1混練手段と、
前記第1混練手段から排出された混練物を受け取り輸送する入口部と、前記入口部を経由して輸送された前記混練物を排出する出口部と、を備え、前記第1混練手段から排出された前記混練物を輸送する第2輸送手段と、
前記第2輸送手段の途中に設けられ、前記混練物の一部を貯留する第1貯留部と、
前記第2輸送手段に接続されて、当該第2輸送手段により輸送された前記混練物の一部を貯留する第2貯留部を有し、当該第2貯留部に貯留されている前記混練物を電極用板に塗布する塗布手段と、
前記第2貯留部の内部の前記混練物の量を監視し、この監視量に基づいて、前記第1貯留部の貯留量を調整するように前記供給手段を制御する輸送量制御手段と、
を備えることを特徴とする電池電極スラリー処理装置である。
【0014】
第2の態様は、
前記第1貯留部は前記入口部の途中に設けられており、前記入口部と前記出口部との間には当該入口部から輸送された前記混練物をさらに混練して当該出口部に向かって連続的に排出する第2混練手段を備えることを特徴とする第1の態様の電池電極スラリー処理装置である。
【0015】
第3の態様は、
前記第1混練手段および前記第2混練手段のうち少なくともいずれかは、複数設けられ、
前記第1混練手段が複数設けられている場合には、前記複数の第1混練手段は並列あるいは直列に設けられ、
前記第2混練手段が複数設けられている場合には、前記複数の第2混練手段は並列あるいは直列に設けられている、
ことを特徴とする第2の態様の電池電極スラリー処理装置である。
【0016】
第4の態様は、
前記第1混練手段は、前記複数の材料を粗混練し、
前記第2混練手段は、前記第2輸送手段により輸送された材料を本混練することを特徴とする第2の態様の電池電極スラリー処理装置である。
【0017】
第5の態様は、
前記塗布手段を複数備え、
前記第2輸送手段の前記出口部が複数に分岐し、前記分岐した複数の前記出口部のそれぞれに前記塗布手段が接続されている、
ことを特徴とする第1の態様~第4の態様のいずれかに記載の電池電極スラリー処理装置である。
【0018】
第6の態様は、
前記輸送量制御手段は、複数の前記塗布手段の電極用板への塗布状況を監視し、塗布可能な前記塗布手段の数に応じて、前記第1貯留部における貯留量を調整する、
ことを特徴とする第5の態様の電池電極スラリー処理装置である。
【0019】
第7の態様は、
前記輸送量制御手段は、複数の前記塗布手段への供給を、各塗布手段における塗布状況に応じて優先順位を付けて制御する、
ことを特徴とする第5又は6の態様の電池電極スラリー処理装置である。
【0020】
第8の態様は、
前記第2輸送手段により輸送される前記混練物を循環させる循環手段をさらに具備する、
ことを特徴とする第1~7の態様のいずれかの電池電極スラリー処理装置である。
【0021】
第9の態様は、
電池電極スラリーを作製して塗布する電池電極スラリー処理装置における電池電極スラリー処理方法であって、
前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料を供給し、
供給された前記複数の材料を輸送し、
輸送された前記複数の材料を混練し、混練物を連続的に排出し、
前記混練物の一部を第1貯留部に貯留しつつ輸送し、
輸送された前記混練物の一部を第2貯留部に貯留するとともに、前記混練物を電極用板に塗布するに際し、
前記第2貯留部で貯留されている前記混練物の量を監視し、この監視量に基づいて、前記第2貯留部の貯留量を調整するように前記電池電極スラリーの作製用の複数の材料の供給量を制御する、
ことを特徴とする電池電極スラリー処理方法である。
【0022】
第10の態様は、
前記混練物を前記第1貯留部から前記第2貯留部へ輸送する途中で、再混練して、再混練した前記混練物を連続的に輸送する、
ことを特徴とする第9の態様の電池電極スラリー処理方法である。
【0023】
第11の態様は、
前記混練を、前記複数の材料の粗混練とし、
前記再混練を、本混練とする、
ことを特徴とする第10の態様の電池電極スラリー処理方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電池電極スラリー処理装置において、混練処理を自動化しつつ品質が安定したスラリーを生成し、塗布処理することができ、電池電極スラリーの品質を安定して維持しつつ処理することができる電池電極スラリー処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー処理装置の概略を示す構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー処理装置が備える貯留タンクの概略を示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る収容タンクの概略構成を示す斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る電池電極スラリー処理装置の概略を示す構成図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る電池電極スラリー処理装置の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0027】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー処理装置1の概略を示す構成図である。電池電極スラリー処理装置1は、複数の材料として、例えば、バインダーである被混練材料A、例えば、正極活物質である被混練材料B、および、例えば、導電助剤(導電助材)である被混練材料Cを混練して、リチウムイオン二次電池の正極に用いられる正極スラリーを作製し、作製した正極スラリーを正極用板である金属箔(アルミニウム箔)に塗布する装置である。
【0028】
例えば、バインダーである被混練材料Aは、供給手段の1つである被混練材料A供給部11に収容される。被混練材料A供給部11には、第1輸送手段の1つである配管21が連通しており、被混練材料A供給部11は、配管21に被混練材料Aの所定量を連続的に供給する。配管21には、予備混練部14が連通しているとともに、モーノポンプであるポンプ51が設けられている。モーノポンプであるポンプ51は、配管21に供給された被混練材料Aを予備混練部14に向って付勢する。
【0029】
なお、上述の連続的とは、本実施形態では、時間的に途切れることなく(とめどなく)という意味である。このため、配管21に被混練材料Aを連続的に供給するとは、時間的に途切れることなく(とめどなく)配管21に被混練材料Aを供給するということである。
【0030】
また、被混練材料Aの一例であるバインダーとしては、有機溶剤に溶かして用いるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの有機溶剤系(非水系)のバインダーを使用することができる。また、水系バインダーとして、水に分散可能であるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸エステルや、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸や、SBRと併用されるだけでなく近年バインダーとしても注目されているカルボキシメチルセルロース(CMC)などの水系ポリマーや、アルギン酸化合物などを使用することもできる。
また、これらを複数種類混合したものを使用することもできる。
【0031】
さらに、バインダーは、溶剤に溶解または分散させて使用することもできる。溶剤としては、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール、トルエン、水などを使用することができ、これらを複数種類混合したものを使用することもできる。これらは、使用する導電助剤や活物質の種類および特性に応じて、適宜選択して使用することができる。
【0032】
例えば、正極活物質である被混練材料Bは、供給手段の1つである被混練材料B供給部12に収容される。被混練材料B供給部12には、第1輸送手段の1つである配管22が連通しており、被混練材料B供給部12は、配管22に被混練材料Bを連続的に供給する。配管22には、予備混練部14が連通しているとともに、例えば、重量計52が設けられている。重量計52は、被混練材料B供給部12から予備混練部14に向かって配管22の内部を流通した被混練材料Bの重量を計測して、配管22の内部を流通した被混練材料Bの瞬時流量を測定し、測定結果を被混練材料B供給部12に送信するとともに、瞬時流量の変動の有無の確認と、積算流量の管理と、を行う。被混練材料B供給部12には、投入された被混練材料Bを配管22に供給するフィーダー(図示省略)が設けられており、被混練材料B供給部12は、重量計52から送信された測定結果に基づいて供給量を決定し、決定した供給量で、被混練材料Bを、フィーダーを介して配管22に連続的に供給する。配管22は、鉛直方向に延伸しており、予備混練部14は、配管22の下端に連通している。このため、配管22に供給された被混練材料Bは、重力により自由落下して連続的に予備混練部14に供給されることになる。
【0033】
なお、被混練材料Bの一例である正極活物質としては、一般式LiMO(Mは、Ni、Co、Fe 、Mn、Si、Alの中から選ばれる1種以上の元素であり、xは0<x<1.5を満たすものとする)などの層状構造・スピネル構造を有する物質や、一般式LixAPO(Aは、Ti、Zn、Mg、Co、Mnの中から選ばれる1種以上の金属元素であり、xは0<x≦1.2を満たすものとする)などのオリビン型構造を有する物質などを使用することができる。特に、オリビン型リン酸鉄リチウムを有する物質である、一般式LiFe(1-y)PO(ただし、xは0<x≦1を満たし、yは0<y≦1を満たし、AはTi、Zn、Mg、Co、Mnの中から選ばれる一種の金属元素であるものとする)で表わされるリチウムリン酸金属化合物を使用することが望ましい。また、リチウムリン酸金属化合物の表面にカーボンが被覆された粒子、または、この粒子の凝集体を使用することもできる。
【0034】
例えば、導電助剤である被混練材料Cは、供給手段の1つである被混練材料C供給部13に収容される。被混練材料C供給部13には、第1輸送手段の1つである配管23が連通しており、被混練材料C供給部13は、配管23に被混練材料Cを連続的に供給する。配管23には、予備混練部14が連通しているとともに、例えば、重量計53が設けられている。重量計53は、被混練材料C供給部13から予備混練部14に向かって配管23の内部を流通した被混練材料Cの重量を計測して、配管23の内部を流通した被混練材料Cの瞬時流量を測定し、測定結果を被混練材料C供給部13に送信するとともに、瞬時流量の変動の有無の確認と、積算流量の管理と、を行う。被混練材料C供給部13には、投入された被混練材料Cを配管23に供給するフィーダー(図示省略)が設けられており、被混練材料C供給部13は、重量計53から送信された測定結果に基づいて供給量を決定し、決定した供給量で、被混練材料Cを、フィーダーを介して配管23に連続的に供給する。配管23は、鉛直方向に延伸しており、予備混練部14は、配管23の下端に連通している。このため、配管23に供給された被混練材料Cは、重力により自由落下して連続的に予備混練部14に供給されることになる。
【0035】
なお、被混練材料Cの一例である導電助剤としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラックなどのカーボン粉体を使用することができる。また、これらを複数種類混合したものを使用することもできる。
【0036】
以上より、予備混練部14には、ポンプ51により付勢されたバインダーが適切な分量で連続的に供給されるとともに、重力により自由落下して正極活物質および導電助剤がそれぞれ適切な分量で連続的に供給されることになる。なお、バインダーなどの液体の被混練材料に対しても安定した量を供給可能であれば自由落下で供給することを妨げるものではなく、正極活物質や導電助剤などの粉体の被混練材料に対しても所定量ずつ排出可能な供給手段を配管22や配管23に設けることで自由落下を用いることなく適量ずつ予備混練部14へ供給可能であればそのような供給手段を用いることを妨げるものではない。このように、被混練材料の供給は、その性質に応じて所定量ずつ予備混練部14へ供給する。
【0037】
予備混練部14は、連続的に供給される、例えば、バインダー、正極活物質、および導電助剤を、逐次、粗混練して予備混練スラリーとして連続的に排出する。予備混練部14には、第2輸送手段の1つである配管24を介して本混練部15が連通しており、予備混練部14から連続的に排出された予備混練スラリーは、ポンプ51からバインダーへの付勢力や予備混練部14からの吐出力を利用して、配管24を介して本混練部15に連続的に供給される。
【0038】
以上によれば、予備混練部14は、例えば、バインダー、正極活物質、および導電助剤の粗混練を行いつつ、これら材料の連続的な受け入れと、本混練部15への予備混練スラリーの連続的な供給と、を行う。すなわち、予備混練部14は、予備混練スラリーを本混練部15へ連続的に供給することと、新たに供給された材料を連続的に粗混練することと、を並行して行う。
【0039】
予備混練部14には、例えば、浅田鉄工株式会社のミラクルKCK、シルバーソン社製のインライン型ミキサーであるフラッシュブレンドやフラッシュミックス、ティーメックス社製の粉体溶解システム、IKA社製のMHDなどを用いることができる。予備混練部14の構成の一例は、例えば、特開2017-147188号公報に記載されたものである。
【0040】
なお、バインダーのような液体と、正極活物質および導電助剤のような粉体と、を混練する場合には、最初から本混練を行ってしまうと、液体リッチな領域と、粉体リッチな領域と、ができてしまうおそれがある。また、予備混練部14による粗混練が完了した段階では、液体内における粉体の分散が十分に均等化されていないため、所望の品質を有する正極スラリーを得ることができない。そこで、電池電極スラリー処理装置1は、予備混練部14による粗混練を行った後に、本混練部15による本混練を行う。
【0041】
本混練部15は、連続的に供給される予備混練スラリーを、逐次、本混練して正極スラリーとして連続的に排出する。本混練部15による本混練は、予備混練部14により粗混練された予備混練スラリーを、所望の品質を有する正極スラリーになるまで混練することを目的とする。この本混練部15には、第2輸送手段の1つである配管25を介して塗布部19が連通しており、本混練部15から連続的に排出された正極スラリーは、本混練部15からの吐出力により、配管25を介して塗布部19に連続的に供給される。
【0042】
本混練部15は、予備混練スラリーの本混練を行いつつ、予備混練スラリーの連続的な受け入れと、塗布部19への正極スラリーの連続的な供給と、を行う。すなわち、本混練部15は、正極スラリーを塗布部19へ連続的に供給することと、新たに供給された予備混練スラリーを連続的に混練することと、を並行して行う。
【0043】
なお、配管24のうち予備混練部14に連結している部分、言い換えると配管24のうち予備混練部14側の端部の接続部のことを、入口部241と呼ぶこととする。また、配管25のうち塗布部19側の端部の接続部のことを、出口部251と呼ぶこととする。すると、本混練部15は、入口部241と出口部251との間に配置されていることになる。
【0044】
本混練部15には、例えば、IKA社製の攪拌装置DR/DROやUTLやMKO、プライミクス社製の混合装置薄膜旋回型ミキサーのフィルミックス(登録商標)、浅田鉄工株式会社製の混合装置ゼロミル(登録商標)などを用いることができる。本混練部15の構成の一例は、例えば、特開2017-147188号公報に記載されたものである。
【0045】
また、予備混練部14と本混練部15との間には、第1貯留部の一例である貯留タンク41が配置されている。すなわち、貯留タンク41は、予備混練部14に連通する配管24の途中に設けられており、予備混練スラリーの少なくとも一部を貯留する。この貯留タンク41は、配管24を介して予備混練部14から連続的に供給される予備混練スラリーの一部を貯留するとともに、貯留している予備混練スラリーを、配管24を介して本混練部15に連続的に供給する。
【0046】
貯留タンク41の一例の構造は、例えば、図2に示すものである。
図2は、貯留タンク41の概略を示す断面図である。貯留タンク41は、モーター411、攪拌部412、およびケース413を備える。攪拌部412は、いわゆるアンカー型攪拌翼であり、回転軸4121および攪拌翼4122を備える。回転軸4121は、回転軸4121の長手方向の中心線を回転軸として、モーター411により回転駆動され、回転軸4121が回転すると、攪拌翼4122も回転する。貯留タンク41は、モーター411を駆動して攪拌翼4122を回転させることで、貯留している予備混練スラリーを攪拌する。なお、予備混練スラリーは、貯留タンク41の側面の上部に設けられた搬入口(図示省略)から貯留タンク41の内壁をつたって貯留タンク41内に入る。これは、内壁をつたわせずに貯留タンク41の上方から入ることによって予備混練スラリーに発生する気泡を避けるためである。すなわち、このように、予備混錬スラリーを貯留タンク41の内壁をつたって入れることにより、貯留タンク41内に気泡が発生するのを防止している。そして、貯留タンク41に貯留されている予備混練スラリーは、貯留タンク41の底面に設けられた排出口(図示省略)から排出される。
【0047】
なお、貯留タンク41の構造は、これに限定されず、予備混練スラリーの一部を貯留し、貯留した予備混練スラリーを本混練部15に連続的に供給する構造であればよく、例えば、攪拌部412を備えてなくてもよい。ただし、攪拌部412を設けて貯留している予備混練スラリーを撹拌しておく方が、後述するような、被混練材料の分散状態や予備混練スラリーの粘度等の予備混練スラリーの品質を維持管理し易いので好適である。
【0048】
予備混練部14には、被混練材料A供給部11、被混練材料B供給部12、および被混練材料C供給部13のそれぞれからバインダーなどの被混練材料A、正極活物質などの被混練材料B、および導電助剤などの被混練材料Cが予め定められた配合比で供給される。しかし、フィーダーのタイミング、計量誤差、搬送に基づく影響(搬送速度、搬送タイミング、搬送量など)などにより、僅かではあるが、予備混練部14で粗混練されて連続的に排出される予備混練スラリーの品質にばらつきが生じてしまうことがある。しかし、予備混練部14と本混練部15との間に貯留タンク41を備えるため、予備混練部14で粗混練されて連続的に排出される予備混練スラリーは、貯留タンク41で貯留された後に、本混練部15に供給される。したがって、予備混練部14で粗混練された予備混練スラリーは、貯留タンク41で貯留されている間に混ざり合うので、本混練部15に供給された時点での予備混練スラリーの品質のばらつきは、予備混練部14から排出された時点での予備混練スラリーの品質のばらつきと比べて小さくなる。よって、正極スラリーの品質を安定して維持することができる。
【0049】
また、貯留タンク41には、貯留している予備混練スラリーを攪拌する攪拌部412が設けられている場合には、予備混練部14で粗混練された予備混練スラリーは、貯留タンク41で貯留されている間にさらに混ざり合うので、粗混練により分散させた、予備混練スラリーを構成する材料が分離してしまうことなく、予備混練スラリーを複数の材料が混練された状態に維持することができ、正極スラリーの品質を安定して維持することができる。
【0050】
また、予備混練部14と本混練部15との間に貯留タンク41が設けられていると、予備混練部14の処理量と、本混練部15の処理量と、が異なっていても、貯留タンク41をいわゆるバッファとして利用することができ、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。具体的には、予備混練部14の処理量が、本混練部15の処理量よりも少ない場合、その差分を貯留タンク41に貯留されている予備混練スラリーで補って、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。また、予備混練部14の処理量が、本混練部15の処理量よりも多い場合、その差分を貯留タンク41に貯留して、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。このため、予備混練部14により粗混練された予備混練スラリーを連続的に本混練部15に供給しつつ、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況などに応じて、適宜、予備混練部14と本混練部15とを独立して駆動させることができる。
【0051】
さらに、貯留タンク41から本混練部15への供給量を調整して本混練部15から塗布部19への供給量を調整することができる。すなわち、貯留タンク41の出口の図示しない調整弁の開放状態や開放時間を調整することにより、本混練部15への供給量を調整することができる。なお、貯留タンク41の出口に調整弁が設けられていない場合には、貯留タンク41と本混練部15との間に調整弁を設けて調整できるようにしてもよい。
【0052】
配管25の途中、本混練部15の後流には、フィルタ16が設けられている。フィルタ16は、配管25の内部を輸送される正極スラリーに含まれる不純物を除去するものである。フィルタ16により除去される不純物としては、気泡や、未分散の凝集塊などがある。なお、本混練部15による混練を介した正極スラリーに気泡や未分散の凝固塊などが生じないような混練及び搬送をするようであれば、フィルタ16は、必ずしも備える必要はないが、気泡や未分散の凝集塊による影響への対策としてはフィルタ16を設けておいた方が好適である。
【0053】
配管25には、配管29を介して図示では3つの塗布手段が連通している。すなわち、配管29の3つの分岐配管291~293には、それぞれバルブ171~173を介して、塗布部19を構成する収容タンク181~183と、コーター191~193とが順次連通しており、配管25内部を輸送される正極スラリーは、コーター191~193に連続的に供給される。このように、本実施形態では、塗布部19は、収容タンク181~183の1つと対応するコーター191~193の1つからなる塗布手段を複数準備された構成となっている。なお、塗布手段の数は、勿論、限定されず、1つ又は2つでもよく、4つ以上でもよい。
【0054】
収容タンク181、182及び183は、正極スラリーの少なくとも一部を貯留する第2貯留部の一例であり、正極スラリーを正極用板に塗布するコーター191、192および193に供給する。正極用板としては、金属箔のように電気伝導性を有するものであれば使用することができ、材質や形状や大きさには特に制限がない。好ましくは、正極用板ならアルミニウム箔、負極用板なら銅箔を使用することが望ましい。
【0055】
なお、収容タンク181~183への正極スラリーの供給および停止は、バルブ171~173によって行われる。複数のバルブ171~173のうち、2個以上が同時に開くことで2個以上の収容タンク181~183に同時に正極スラリーを供給するようにしてもよく、複数のバルブ171~173のうち、1つ開くことで3つの収容タンク181~183のうち開いたバルブと連通する収容タンクに正極スラリーを供給するようにしてもよい。
【0056】
図3は、分岐配管291と、収容タンク181を示す斜視図である。図3において、矢印は、正極スラリーの流れる向きを示している。分岐配管291の端部は、収容タンク181の底面に形成された貫通孔291aを介して、収容タンク181が連通し、分岐配管291に流れ込んだ正極スラリーは、収容タンク181の底面から収容タンク181の内部に流入する。収容タンク181の貯留可能な量は貯留タンク41の貯留量より小さいことから底面から正極スラリーを流入することができ、このようにすることで正極スラリーに気泡を含まないよう収容タンク181に供給することができる。もちろん、貯留タンク41と同様に、収容タンク181の上方から内壁をつたって正極スラリーを流入するようにしてもよいが、上方から流入させるための壁をわざわざ設けなければならない可能性もあることを踏まえると、収容量の小さいタンクであれば底面から流入させた方が収容タンクのサイズが大きくなることを避けることができる。コーター191は、収容タンク181に貯留されている正極スラリーを、正極用板に塗布する。
【0057】
配管292、収容タンク182およびコーター192、並びに配管293、収容タンク183およびコーター193についても、上述の配管291、収容タンク181およびコーター191との場合と同様に連通し、上述の配管291、収容タンク181およびコーター191との場合と同様に正極スラリーが移送される。
【0058】
以上の構成を備える電池電極スラリー処理装置1は、収容タンク181~183のそれぞれの内部に収容されている正極スラリーの量を監視し、その監視量に基づいて、貯留タンク41の内部の貯留量を制御する輸送量制御部61を備える。
【0059】
輸送量制御部61による収容タンク181~183の内部の正極スラリーの量の監視は、各収容タンク181~183にセンサーを設けて測定してもよいし、収容タンク181~183への正極スラリーの供給量と、コーター191~193への供給量とをそれぞれ測定し、その差分を算出することにより収容タンク181~183への正極スラリーの収容量を把握するようにしてもよい。
【0060】
収容タンク181~183の収容量の監視により、貯留タンク41の貯留量を調節する制御は、例えば、以下のように行われる。
【0061】
収容タンク181~183の収容量が所定の下限量より少なくなった場合には、貯留タンク41の貯留量を増やすように制御する。具体的には、貯留タンク41から本混練部15への予備混練スラリーの供給量を増やすことにより行う。予備混練スラリーの供給量の増加は、貯留タンク41に調整弁が設けられている場合には、調整弁の調整により供給量を増加し、次いで、被混練材料A、被混練材料Bおよび被混練材料Cの予備混練部14への供給量を増加させる。また、貯留タンク41に調整弁が設けられていない場合には、直接、被混練材料A、被混練材料Bおよび被混練材料Cの予備混練部14への供給量を増加させる。
【0062】
なお、輸送量制御部61が判別する収容タンク181~183の所定の下限量とは、各収容タンク181~183のそれぞれの収容量であってもよく、全ての収容タンク181~183の合計の収容量であってもよく、平均の収容量であってもよい。本実施形態では、輸送量制御部61は、各収容タンク181~183のそれぞれの収容量が下限量となった場合に、貯留タンク41の貯留量を増やすように制御するようにした。3つの収容タンク181~183の全てが下限量となった場合に制御する場合も、3つの収容タンク181~183の合計量で制御する場合であっても、まったく減らない収容タンクと極端に減るのが早い収容タンクとが発生した場合には、貯留タンク41への供給量を増やす制御をする前に、減るのが早い収容タンクだけが空になってしまうことも考えられる。特に、収容タンクの数が多くなるとこのような課題も生じやすい。このような事態に対しては、例えば、収容タンク181~183の貯留量の制御のための下限量(以下、第1の下限量)とは別に、収容タンク181~183が空になるのを防ぐためのしきい値として、第1の下限量よりも低い第2の下限量を設定し、複数の収容タンク181~183のいずれか1つでもこの第2の下限量に到達したら強制的に貯留タンク41への供給量を増やすとともに、第2の下限量となった収容タンクに対応するバルブ171~173を優先的に空けて対象の収容タンクへ正極スラリーを供給するようにするようにすればよい。この時、強制的に正極スラリーを供給する収容タンクへは少なくとも第1の下限量を超える正極スラリーの供給を行うようにすることで、またすぐに第2の下限量に達することがないようにするのがよい。特に、3つの収容タンク181~183の全てが第1の下限量となった場合に本発明の制御をすることを考慮すると、第2の下限量となった収容タンクにおける貯留量の所定の上限量あるいはその近傍まで供給する必要はなく、第1の下限量あるいはそれを少し超える程度の量まで供給しておくことで、本実施形態での制御、つまり、3つの収容タンク181~183のそれぞれが第1の下限量となる、あるいは3つの収容タンク181~183の合計量が第1の下限量にまでにかかる時間差を小さくすることが期待でき、3つの収容タンク181~183の全てが第1の下限量に至り易くなり、本発明の制御が実行し易い。また、第2の下限量に達した収容タンク181~183に対して第1の下限量あるいはそれを少し超える程度の量まで補充する制御は、例えば、第2の下限量となったことを検出してから所定の時間(第2の下限量に達した収容タンク181~183に第1の下限量あるいはそれを少し超える程度の量の正極スラリーが供給されるのに相当する時間)だけ貯留タンク41への供給量を増やし、第2の下限量となった収容タンクに対応するバルブ171~173を優先的に空けるようにすればよい。
【0063】
輸送量制御部61によって貯留タンク41の貯留量を増やすように制御した後は、第1の下限量より少なくなった収容タンク181~183に対応するバルブ171~173を開くことで収容タンク181~183が第1の下限量よりも多い収容量となるように制御する。
【0064】
また、収容タンク181~183の収容量の監視により、貯留タンク41の貯留量を調節する制御の他の例は、例えば、以下のように行われる。
【0065】
収容タンク181~183の何れかの収容量が所定の下限量より少なくなった場合には、貯留タンク41の貯留量を増やすように制御する。具体的には、貯留タンク41から本混練部15への予備混練スラリーの供給量を増やすことにより行う。次いで、被混練材料A、被混練材料Bおよび被混練材料Cの予備混練部14への供給量を増加させる。また、貯留タンク41に調整弁が設けられていない場合には、直接、被混練材料A、被混練材料Bおよび被混練材料Cの予備混練部14への供給量を増加させる。
【0066】
なお、輸送量制御部61が判別する収容タンク181~183の何れかの所定の下限量とは、各収容タンク181~183のそれぞれの収容量であって、本実施形態では、輸送量制御部61は、各収容タンク181~183の何れかの収容量が下限量となった場合に、貯留タンク41の貯留量を増やすように制御するようにした。3つの収容タンク181~183の複数が下限量となった場合に制御する場合は、まったく減らない収容タンクと極端に減るのが早い収容タンクとが発生した場合には、貯留タンク41への供給量を増やす制御をする前に、減るのが早い収容タンクだけが空になってしまうことも考えられる。特に、収容タンクの数が多くなるとこのような課題も生じやすい。このような事態に対しては、例えば、収容タンク181~183の貯留量の制御のための下限量(以下、第1の下限量)とは別に、収容タンク181~183が空になるのを防ぐためのしきい値として、第1の下限量よりも低い第2の下限量を設定し、複数の収容タンク181~183のいずれか1つでもこの第2の下限量に到達したら強制的に貯留タンク41への供給量を増やすとともに、第2の下限量となった収容タンクに対応するバルブ171~173を優先的に空けて対象の収容タンクへ正極スラリーを供給するようにするようにすればよい。この時、強制的に正極スラリーを供給する収容タンクへは少なくとも第1の下限量を超える正極スラリーの供給を行うようにすることで、またすぐに第2の下限量に達することがないようにするのがよい。特に、3つの収容タンク181~183の全てが第1の下限量となった場合に本発明の制御をすることを考慮すると、第1の下限量あるいはそれを少し超える程度の量まで供給しておくことで、本実施形態での制御、つまり、3つの収容タンク181~183のそれぞれが第1の下限量となるあるいは3つの収容タンク181~183の合計量が第1の下限量にまでにかかる時間差を小さくすることが期待でき、3つの収容タンク181~183の全てが第1の下限量に至り易くなり、本発明の制御が実行し易い。また、第2の下限量に達した収容タンク181~183に対して第1の下限量あるいはそれを少し超える程度の量まで補充する制御は、例えば、第2の下限量となったことを検出してから所定の時間(第2の下限量に達した収容タンク181~183に第1の下限量あるいはそれを少し超える程度の量の正極スラリーが供給されるのに相当する時間)だけ貯留タンク41への供給量を増やし、第2の下限量となった収容タンクに対応するバルブ171~173を優先的に空けるようにすればよい。
【0067】
輸送量制御部61によって貯留タンク41の貯留量を増やすように制御した後は、第1の下限量より少なくなった収容タンク181~183に対応するバルブ171~173を開くことで収容タンク181~183が第1の下限量よりも多い収容量となるように制御する。このとき、第1の下限量より少なくなっていない収容タンク181~183のバルブ171~173を閉じることで、第1の下限量よりも少ない収容タンク181~183に優先的に正極スラリーを供給するようにしてもよい。バルブ171~173は、収容タンク181~183のうち、第1の下限量より多い所定の収容量に達した収容タンクに対するバルブから順次閉じるようにしてもよいし、第1の下限量以上の収容量となった収容タンクが所定数(例えば半数以上)になったら一斉にすべてのバルブを止めるようにしてもよい。ただし、後者のように一斉にバルブを閉じるようにすると、一部の収容タンクでの収容量が過剰に多くなることや、第1の下限量に満たないままのものが半数程度残ることになるため、個別にバルブの開閉制御する方が望ましい。なお、所定の収容量としては、予め設定しておいた収容タンク181~183の上限量でもよいし、第1の下限量に到達していない(バルブが閉じられて正極スラリーの供給をしない)収容タンクが収容している量まででもよい。前者の方は制御回数が少なくなることが期待でき、後者の方は収容タンク全てが1回にかかる制御時間が短くできることが期待できる。どちらの制御とするかは求める効果に応じて選択すればよく、どちらで制御するかを輸送量制御部61にて選択可能としてもよい。
【0068】
貯留タンク41の内部の貯留量は、輸送量制御部61により監視できるようになっている。貯留タンク41の貯留量の監視は、貯留タンク41にセンサーを設けて測定してもよいし、貯留タンク41への予備混練スラリーの供給量と、貯留タンク41から本混練部15への正極スラリーの供給量とをそれぞれ測定し、その差分により貯留タンク41への予備混練スラリーの貯留量を把握するようにしてもよい。
【0069】
一方、収容タンク181~183の収容量が所定の上限量より多くなった場合には、貯留タンク41の貯留量を減らすように制御する。例えば、収容タンク181~183のうちの収容タンク181の収容量が所定の上限量より多くなった場合は、収容タンク181のバルブ171を閉じて収容タンク181に正極スラリーは供給されないようにする。その間に、他の収容タンク182,183の収容量が所定の上限量より多くなった場合は、3つの収容タンク181~183全ての収容量が所定の上限量を超えるので、貯留タンク41の貯留量を減らすように制御することになる。一方、他の収容タンク182,183の収容量が所定の上限量より多くなる前に収容タンク181の収容量が所定の上限量より少なくなった場合は、バルブ171を開いて収容タンク181に正極スラリーが供給されるようにし、この後に、他の収容タンク182,183の収容量が所定の上限量より多くなったとしても収容タンク181の収容量が所定の上限量より少ない状態であれば貯留タンク41の貯留量を減らすように制御はしないこととなる。貯留タンク41の貯留量を減らす制御は、具体的には、貯留タンク41を介して本混練部15へ供給される予備混練スラリーからの供給量を減らすことにより行う。貯留タンク41から本混練部15への予備混練スラリーの供給量の減少は、貯留タンク41に調整弁が設けられている場合には、調整弁の調整(開閉の調整、開時間や閉時間の調整、あるいは、開口の大きさの調整等やこれらの組合せでの調整)により本混練部15への供給量を減少することができる。次いで、貯留タンク41の貯留量が上限量より増加した場合には、被混練材料A、被混練材料Bおよび被混練材料Cの予備混練部14への供給量を減少させる。また、貯留タンク41から本混練部15への供給量を調整する調整弁が設けられていない場合には、直接、被混練材料A、被混練材料Bおよび被混練材料Cの予備混練部14への供給量を減少させる。
【0070】
なお、輸送量制御部61が判別する収容タンク181~183の所定の上限量とは、下限量と同様に、各収容タンク181~183のそれぞれの収容量に対して設定された上限量であってもよく、全ての収容タンク181~183の合計の収容量に対して設定された上限量であってもよく、収容タンク181~183の平均の収容量であってもよい。本実施形態では、輸送量制御部61は、各収容タンク181~183のそれぞれの収容量が上限量より多くなった場合に、貯留タンク41の貯留量を減らすように制御するようにした。
また、収容タンク181~183の収容量の減少を早急に行う場合には、バルブ171~173を一時的に閉じるようにしてもよい。
【0071】
このように、輸送量制御部61は、収容タンク181~183の収容量の監視をして貯留タンク41からの本混練部15への予備混練スラリーの供給量を調整することにより、混練処理を自動化しつつ品質が安定したスラリーを生成する際に、電池電極スラリーの品質を安定して維持しつつ処理することができ、また、品質を安定したまま、正極スラリーの正極用板への塗布を継続して行うことができる。
【0072】
また、輸送量制御部61は、複数のコーターへ191~193への正極スラリーの供給を、各コーター191~193における塗布状況に応じて優先順位を付けて制御するようにてもよい。
【0073】
これにより、同時に複数のコーター191~193への正極スラリーの供給が必要な場合に、コーター191~193による塗布が中断されるのを抑制して、効率よく供給することができる。
【0074】
また、輸送量制御部61は、複数のコーター191~193の電極用板への塗布状況を監視し、塗布可能なコーター191~193の数に応じて、貯留タンク41における貯留量を調整するように制御する。例えば、コーターとして稼働(コーターへ電源が投入されたら“稼働”と判断してもよいし、電源投入後に稼働スイッチをオンにして稼働開始するものであれば稼働スイッチのオンを稼働と判断すればよい)しているものを塗布可能と判断するようにした場合、電源投入されているコーター数に応じて貯留量を調整するように制御すればよい。
【0075】
これにより、予備混練した予備混練スラリーを長期間タンクに溜め置くのを防止することができる。
【0076】
例えば、収容タンク181~183のうち、下限値を下回った又は上限値を上回った収容タンクが複数ある場合には、優先順位を考慮して貯留タンク41からの供給量を調整すればよい。例えば、メンテナンス時期を考慮して、メンテナンス時期が近い収容タンクに対しては、追加供給を一時停止してメンテナンスを優先するなどの制御を行ってもよい。また、追加供給すべき収容タンクが複数ある場合には、貯留タンク41からの供給量の増大を大きくするなどの制御を行う。
【0077】
以上の構成を備える電池電極スラリー処理装置1は、以下の効果を奏することができる。
【0078】
電池電極スラリー処理装置1は、予備混練部14に、被混練材料A供給部11および配管21により例えば、バインダーである被混練材料Aを供給し、被混練材料B供給部12および配管22により正極活物質を供給し、被混練材料C供給部13および配管23により導電助剤を供給し、予備混練部14により、供給された複数の材料を粗混練し、配管24により、粗混練された予備混練スラリーを本混練部15に供給し、本混練部15により、予備混練スラリーを本混練する。このため、予備混練部14は、複数の材料の粗混練を行いつつ、これら複数の材料の受け入れと、粗混練した材料の本混練部15への供給と、を行うことができる。すなわち、予備混練部14は、粗混練済みの材料を本混練部15へ供給することと、新たに供給される複数の材料を粗混練することと、を並行して行うことができる。したがって、本混練部15への予備混練スラリーの供給を連続的に行うことができる。よって、本混練部15による本混練を連続的に行うことができ、予備混練部14の後段における工程を止める必要がないので、正極スラリーを連続的かつ短時間に得ることができる。
【0079】
また、電池電極スラリー処理装置1は、上述のように本混練部15への予備混練スラリーの供給を連続的に行うことができるので、従来のように大釜を取り替える必要がない。このため、正極スラリーの作製過程における工数を削減することができる。
【0080】
また、電池電極スラリー処理装置1は、上述のように本混練部15への予備混練スラリーの供給を連続的に行うことができるので、大量の材料を一度に混練する必要がない。このため、予備混練部14を小型化することができるので、電池電極スラリー処理装置1を小型化することができる。
【0081】
また、電池電極スラリー処理装置1は、モーノポンプであるポンプ51により、配管21により輸送されるバインダーを付勢するとともに、予備混練部14から予備混練スラリーを排出し、本混練部15から正極スラリーを付勢した状態で排出する。このため、モーノポンプであるポンプ51による付勢力や、予備混練部14や本混練部15による吐出力により、電池電極スラリー処理装置1に設けられた各構成における材料や排出物が、電池電極スラリー処理装置1内を移送されることになる。したがって、正極スラリーの作製工程全体を自動化することができる。
【0082】
なお、ポンプ51の付勢力だけでは不十分な場合には、例えば、貯留タンク41と本混練部15との間や、本混練部15の後流側にモーノポンプを設けてもよい。これにより、付勢力が向上し、正極スラリーが順調に安定して移送されることになる。
【0083】
予備混練部14には、被混練材料A供給部11、被混練材料B供給部12、および被混練材料C供給部13のそれぞれからバインダーである被混練材料A、正極活物質である被混練材料B、および導電助剤である被混練材料Cが予め定められた配合比で供給される。しかし、フィーダーのタイミング、計量誤差、搬送に基づく影響(搬送速度、搬送タイミング、搬送量など)などにより、僅かではあるが、予備混練部14で粗混練されて連続的に排出される予備混練スラリーの品質にばらつきが生じてしまうことがある。しかし、電池電極スラリー処理装置1は、予備混練部14と本混練部15との間に貯留タンク41を備える。このため、予備混練部14で粗混練されて連続的に排出される予備混練スラリーは、貯留タンク41で貯留された後に、本混練部15に供給される。したがって、予備混練部14で粗混練された予備混練スラリーは、貯留タンク41で貯留されている間に混ざり合うので、本混練部15に供給された時点での予備混練スラリーの品質のばらつきは、予備混練部14から排出された時点での予備混練スラリーの品質のばらつきと比べて、小さくなる。よって、予備混練部14での粗混練での予備混錬スラリーの品質ばらつきは抑えられ、正極スラリーの品質への影響を抑えることができる。
【0084】
また、電池電極スラリー処理装置1では、貯留タンク41に、貯留している予備混練スラリーを攪拌する攪拌部412が設けられている。このため、予備混練部14で粗混練された予備混練スラリーは、貯留タンク41で貯留されている間にさらに混ざり合うので、粗混練により分散させた、予備混練スラリーを構成する材料が分離してしまうことなく、予備混練スラリーを複数の材料が混練された状態に維持することができ、正極スラリーの品質を安定にすることができる。
【0085】
また、電池電極スラリー処理装置1では、予備混練部14と本混練部15との間に貯留タンク41が設けられているので、予備混練部14の処理量と、本混練部15の処理量と、が異なっていても、貯留タンク41をいわゆるバッファとして利用することができ、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。具体的には、予備混練部14の処理量が、本混練部15の処理量よりも少ない場合、その差分を貯留タンク41に貯留されている予備混練スラリーで補って、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。また、予備混練部14の処理量が、本混練部15の処理量よりも多い場合、その差分を貯留タンク41に貯留して、本混練部15の処理量に等しい量の予備混練スラリーを本混練部15に供給することができる。このため、予備混練部14により粗混練された予備混練スラリーを連続的に本混練部15に供給しつつ、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況などに応じて、適宜、予備混練部14と本混練部15とを独立して駆動させることができる。
【0086】
さらに、電池電極スラリー処理装置1では、収容タンク181~183の収容量を監視して貯留タンク41の貯留量を制御する輸送量制御部61が設けられているので、電池電極スラリー処理装置において、混練処理を自動化しつつ品質が安定したスラリーを生成し、電池電極スラリーの品質を安定に保つことができるとともに、コーター191~193への正極スラリーの供給を停止することなく連続的に行うことができ、メンテナンス期間などを除いて、コーター191~193への供給を連続して行うことができる。
【0087】
また、輸送量制御部61は、複数のコーターへ191~193への正極スラリーの供給を、各コーター191~193における塗布状況に応じて優先順位を付けて制御するので、同時に複数のコーター191~193への正極スラリーの供給が必要な場合に、コーター191~193による塗布が中断されるのを抑制して、効率よく供給することができる。
【0088】
また、輸送量制御部61は、複数のコーター191~193の電極用板への塗布状況を監視し、塗布可能なコーター191~193の数に応じて、貯留タンク41における貯留量を調整するので、予備混練した予備混練スラリーを長期間タンクに溜め置くのを防止することができる。
【0089】
このような電池電極スラリー処理装置1では、被混練材料A供給部11、被混練材料B供給部12、および被混練材料C供給部13のそれぞれを初端とし、収容タンク181~183を終端とし、これらが連通して形成される空間を、密閉し、空間制御部を連通して、上記空間を、減圧または不活性ガスを充満させた状態にしてもよい。なお、不活性ガスとしては、例えば窒素を使用することができる。
【0090】
このため、被混練材料A供給部11、被混練材料B供給部12、および被混練材料C供給部13に各材料が投入されてから、収容タンク181~183に貯留されている正極スラリーが正極用板に塗布されるまでの間において、これら材料や正極スラリーが大気にさらされてしまうのを抑制することができる。したがって、正極スラリーの品質を安定させることができるとともに、正極スラリーの作製状態にかかわらず安定した塗布処理をコーター191~193により行うことができる。
【0091】
有機溶剤系バインダーは、吸水性を有するため、大気雰囲気では水分を吸収しやすく、水分を吸収してしまうことで品質への影響が生じてしまうおそれがある。このため、バインダーとして有機溶剤系バインダーを使用する場合には、空間制御部による空間制御は特に有効である。
【0092】
一方、水系バインダーは、元来、水分を有している。このため、水系バインダーでは、有機溶剤系バインダーと比べて、大気中の水分による品質への影響が小さい。したがって、バインダーとして水系バインダーを使用する場合には、空間制御部による空間制御を行わなくてもよいが、主に温度を安定させることを目的として、温調用のガスを導入するために空間制御部による空間制御を行うこととしてもよい。
【0093】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態に係る電池電極スラリー処理装置1Aの概略を示す構成図である。電池電極スラリー処理装置1Aは、図1に示した本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー処理装置1とは、循環配管28、およびモーノポンプ55を備える点が異なる。なお、電池電極スラリー処理装置1Aにおいて、電池電極スラリー処理装置1と同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0094】
図4に示すように、本混練部15から正極スラリーが連続的に供給される配管25の途中に、循環配管28が設けられている。循環配管28は、配管21から配管25と同様の管状の配管を、環状に形成して構成されており、一部は配管25と共用され、途中にモーノポンプであるポンプ55およびフィルタ16が設けられている。ポンプ55は、循環配管28に供給された正極スラリーをフィルタ16に向かって付勢する。フィルタ16は、循環配管28の内部を循環する正極スラリーに含まれる不純物を除去する。フィルタ16により除去される不純物としては、気泡や、未分散の凝集塊などがある。
【0095】
また、循環配管28の途中には、配管25と塗布手段との接続部となる出口部251が3つ設けられており、出口部251のそれぞれには配管29である分岐配管291~293に接続している。分岐配管291~293には、それぞれバルブ171~173、収容タンク181~183、およびコーター191~193が設けられており、循環配管28の内部を流通する正極スラリーの少なくとも一部は、モーノポンプ55による付勢力により、収容タンク181~183およびコーター191~193に連続的に供給される。
【0096】
電池電極スラリー処理装置1Aは、モーノポンプであるポンプ51により、配管21 により輸送されるバインダーである被混練材料Aを付勢するとともに、予備混練部14から予備混練スラリーを排出し、本混練部15から本混練スラリーを排出し、モーノポンプ55により、循環配管28により輸送される正極スラリーを付勢する。このため、モーノポンプ55による付勢力や、予備混練部14や本混練部15による吐出力により、電池電極スラリー処理装置1Aに設けられた各構成における材料や排出物が、電池電極スラリー処理装置1A内を移送されることになる。したがって、正極スラリーの処理工程全体を自動化することができる。
【0097】
また、本混練部15から排出された正極スラリーを、配管25を介して循環配管28 に供給し、供給された正極スラリーを循環配管28において循環させる。また、この循環配管28には、分岐配管291~293のそれぞれを介してコーター191~193のそれぞれが接続される。このため、本混練部15で本混練された正極スラリーは、配管25と、循環配管28と、分岐配管291~293のそれぞれと、を介して、コーター191~193のそれぞれに供給される。したがって、コーター191~193のそれぞれを駆動させることで、電池電極スラリー処理装置1Aにおいて得られた正極スラリーを用いた電池電極の作製を複数ラインで連続的に且つ安定して行うことができるので、電池電極の生産能力を向上させることができる。また、コーター191~193のうち、いずれか1つ又は2つを駆動させて電池電極の作製を継続しつつ、他のものを停止させて清掃やメンテナンスを行うこともできる。以上によれば、電池電極の生産性を向上させることができる。
【0098】
また、本混練部15で本混練された正極スラリーは、配管25の内部を流通してからコーター191~193に供給されるまでの期間、循環配管28により循環している。このため、上述の期間、正極スラリーが流れ続けるので、収容タンク181~183に収容しきれない正極スラリーが発生しても、この正極スラリーが停滞することがなく、分離や沈降が発生してしまうのを防止することができ、正極スラリーの品質低下を防止することができる。
【0099】
ここで、循環配管28の入口側に貯留タンク41と同様な貯留タンクをさらに設けてもよい。このような貯留タンクには、貯留している正極スラリーを攪拌する攪拌部が設けられているのが好ましい。これにより、循環配管28の内部を循環する正極スラリーと、配管25を介して本混練部15から連続的に供給される正極スラリーとは、貯留タンクで貯留されている間にさらに混ざり合うので、粗混練および本混練により分散させた、正極スラリーを構成する材料が分離してしまうことなく、正極スラリーを複数の材料が混練された状態に維持することができ、正極スラリーの品質を安定して維持することができる。
【0100】
また、循環配管28に貯留タンクがさらに設けられていると、本混練部15の処理量と、コーター191~193のそれぞれの処理量の総和と、が異なっていても、貯留タンクを追加のバッファとして利用することができ、コーター191~193のそれぞれの処理量の総和に等しい量の正極スラリーをコーター191~193に供給することができる。このため、コーター191~193に正極スラリーを連続的に供給しつつ、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況などに応じて、適宜、予備混練部14および本混練部15や、コーター191~193を独立して駆動させることができる。
【0101】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態に係る電池電極スラリー処理装置1Bの概略を示す構成図である。
例えば、上述の第1実施形態および第2実施形態では、予備混練部14および本混練部15の2つの混練部が設けられている場合について説明した。しかし、混練部は、3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。
【0102】
図5に示す電池電極スラリー処理装置1Bは、図1に示した本発明の第1実施形態に係る電池電極スラリー処理装置1とは、予備混練部14および本混練部15の代わりに混練部114を備える点が異なる。電池電極スラリー処理装置1Bは、それぞれ、電池電極スラリー処理装置1、1Aと同様の効果を奏することができる。
【0103】
<他の実施形態>
上述の第1実施形態~第3実施形態では、正極スラリーの例を説明したが、本発明は、これに限らず、例えば負極スラリーに対して適用することもできるし、第3実施形態の配管29に代えて第2実施形態の循環配管28を用いるようにしてもよい。
【0104】
また、上述の第1実施形態および第2実施形態では、混練すべき複数の材料の全てを、予備混練部14といった最初の混練部に対して供給している。しかし、これに限らず、混練すべき複数の材料を、複数の混練部に分散して供給してもよい。
【0105】
また、上述の第1実施形態~第3実施形態では、被混練材料A供給部11から予備混練部14又は混練部141への被混練材料Aの供給を、モーノポンプであるポンプ51により行うものとした。しかしこれに限らず、例えば、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、デラスコポンプ、ギヤーポンプ、ベーンポンプなどを用いることもできる。また、被混練材料A供給部11を予備混練部14又は混練部141よりも高い位置に設け、重力を利用してバインダーに圧力を付勢することで、被混練材料A供給部11から予備混練部14へのバインダーの供給を行うものとしてもよい。なお、重量を利用する場合でも、供給する材料の供給量を制御するために、配管21にポンプ51を設けておくことが好ましい。
【0106】
また、上述の第1実施形態および第2実施形態では、予備混練部14は、1つ設けられるものとしたが、これに限らず、例えば、2つ以上の複数が並列あるいは直列に設けられるものとしてもよい。これによれば、複数を並列に設けた場合は、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況に応じて、複数の予備混練部14のそれぞれを独立して駆動させることができる。一方、複数を直列に設けた場合は、異種の活物質を混練する場合など応用した混練に適合することができる。
【0107】
また、上述の第1実施形態および第2実施形態では、本混練部15は、1つ設けられるものとしたが、これに限らず、上述の予備混練部14と同様に、複数が並列あるいは直列に設けられるものとしてもよい。これによれば、複数を並列に設けた場合は、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況に応じて、複数の本混練部15のそれぞれを独立して駆動させることができる。一方、複数を直列に設けた場合は、異種の活物質を混練する場合など応用した混練に適合することができる。
【0108】
また、上述の第1実施形態において、予備混練部14を上述のように複数並列に設けるとともに、本混練部15も上述のように複数並列に設けるものとしてもよい。この場合、予備混練部14のそれぞれと、本混練部15のそれぞれと、をそれぞれ独立して制御し、予備混練部14のそれぞれの処理量の総和と、本混練部15のそれぞれの処理量の総和と、を等しくする。これによれば、予備混練部14により混練された予備混練スラリーを連続的に本混練部15に供給しつつ、作製する正極スラリーの目標量や、清掃といったメンテナンス状況などに応じて、適宜、予備混練部14のそれぞれや本混練部15のそれぞれを駆動させることができる。
【0109】
また、上述の第1実施形態~第3実施形態は、被混練材料A供給部11、被混練材料B供給部12、および被混練材料C供給部13のそれぞれから、すなわち異なる構成から、バインダー、正極活物質、および導電助剤などの被混練材料A~Cのそれぞれが供給されるものとした。しかし、これに限らず、バインダー、正極活物質、および導電助剤などの被混練材料A~Cのそれぞれが、同一の構成から供給されるものとしてもよい。
【0110】
また、上述の第1実施形態~第3実施形態は、被混練材料A供給部11、被混練材料B供給部12、および被混練材料C供給部13のそれぞれからの供給量の調整は、ポンプ51や重量計52、53で行うようにしたが、配管21~23のポンプ51及び重量計52、53の後流側に調整弁などを設け、供給量の調整を行うことができるようにしてもよい。
【0111】
また、上述の第1実施形態では、モーノポンプは、配管21に設けられるポンプ51とした。しかし、これに限らず、配管24、配管25、循環配管28、分岐配管291~293のいずれかに設けられるものとしてもよい。配管24、25、分岐配管291~293や循環配管28に設ける場合には、付勢手段として、圧力などによりスラリーを吸引するようにして付勢する構成を設けることが好ましい。さらに、配管24に設ける場合には、最初の予備混練スラリーが予備混練部14から排出されるまで、配管25に設ける場合には、最初の正極スラリーが本混練部15から排出されるまで、配管21に設けられたポンプ51によりバインダーを付勢させたり、予備混練部14や本混練部15にある程度の付勢力を有する構成を設けて材料を付勢させたりすることが好ましい。このように付勢させることで、電池電極スラリー処理装置1内における材料やスラリーの移送をよりスムーズに行うことができる。
【0112】
また、上述の各実施形態では、予備混練部14や混練部141には、3種類の材料が供給されるものとしたが、これに限らず、例えば2種類の材料や、4種類の材料が供給されるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1、1A、1B; 電池電極スラリー処理装置
11; 被混練材料A供給部
12; 被混練材料B供給部
13; 被混練材料C供給部
14; 予備混練部
15; 本混練部
16; フィルタ
181、182、183; 収容タンク
191、192、193; コーター
21~25; 配管
28; 循環配管
29、291~293; 分岐配管
41; 貯留タンク
51; ポンプ
52、53; 重量計
55; モーノポンプ
114; 混練部
241; 入口部
251; 出口部
図1
図2
図3
図4
図5