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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112217
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】回転電機及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/22 20160101AFI20240813BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20240813BHJP
   H02K 3/18 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H02P21/22
H02P25/22
H02K3/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017138
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳
【テーマコード(参考)】
5H505
5H603
【Fターム(参考)】
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE30
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA10
5H505HB01
5H505HB05
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505JJ25
5H505LL01
5H505LL39
5H505LL41
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC11
(57)【要約】
【課題】弱め界磁制御を適切に実施することができる回転電機及び制御プログラムを提供すること。
【解決手段】モータ10は、電流位相差βを補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値Id*,Iq*を決定する電流指令部101と、電圧位相差δvを補正して3相座標系から座標変換される第2のdq座標系におけるq軸電圧Vq´に基づいて、弱め磁束制御における弱め界磁電流ΔIdを決定する弱め磁束制御部110と、を備える。電流指令部101は、弱め磁束制御部110から入力した弱め界磁電流ΔIdを考慮して、d軸電流の電流指令値Id*を決定する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)であって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備える回転電機において、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定する電流指令部(101)と、
前記第1の固定子巻線における各相の電圧と前記第2の固定子巻線における各相の電圧との電圧位相差(δv)を補正して3相座標系から座標変換される第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧(Vq´)に基づいて、弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定する弱め磁束制御部(110)と、を備え、
前記電流指令部は、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸の電流指令値を決定する回転電機。
【請求項2】
各相電流を取得し、取得した各相電流を座標変換して第1のdq座標系における検出電流を取得する電流変換部(102)と、
第1のdq座標系において、電流指令値と検出電流に基づいて電流フィードバック制御を行い、第1のdq座標系におけるd軸の指令電圧及びq軸の指令電圧を決定する指令電圧決定部(103、104)と、
第1のdq座標系におけるd軸の指令電圧及びq軸の指令電圧を、第2のdq座標系におけるd軸の指令電圧及びq軸の指令電圧に変換する電圧座標変換部(111)と、を備え、
前記弱め磁束制御部は、前記電圧座標変換部から第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧を取得する請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
各相電流を取得し、取得した各相電流を座標変換して第2のdq座標系における検出電流を取得する電流変換部(202)と、
第1のdq座標系におけるdq軸の電流指令値を、第2のdq座標系におけるdq軸の電流指令値に変換する電流座標変換部(211)と、
第2のdq座標系において、電流指令値と検出電流に基づいて電流フィードバック制御を行って第2のdq座標系におけるdq軸の指令電圧を決定する指令電圧決定部(203,204)と、
前記弱め磁束制御部は、前記指令電圧決定部から第2のdq座標系におけるq軸電圧を取得する請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)であって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備える回転電機において、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定する電流指令部(101)と、
前記第1のdq座標系におけるd軸の指令電圧(Vd)とq軸の指令電圧(Vq)の2乗和に基づいて前記固定子巻線の誘起電圧の絶対値を算出する絶対値算出部(311)と、
前記絶対値に基づいて弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定する弱め磁束制御部(310)と、を備え、
前記電流指令部は、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸電流の電流指令値を決定する回転電機。
【請求項5】
各相のコイル体Ua,Va,Waの起磁力に対する各相のコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差と、各相のコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対する各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差と、が電気角で20度を含む所定の位相範囲内となるように、
又は、各相のコイル体Ua,Va,Waの起磁力に対する各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差と、各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対する各相のコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差と、が電気角で20度を含む所定の位相範囲内となるように、前記第3ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の部分巻線により発生する起磁力と当該第3ティースに巻回される前記第2の固定子巻線の部分巻線により発生する起磁力との合算位相差、若しくは、前記第3ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の部分巻線に流れる電流と当該第3ティースに巻回される前記第2の固定子巻線の部分巻線に流れる電流との合算位相差が設定されている請求項1~4のうちいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
各相のコイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力が所定の振幅範囲内となるように、前記第1ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の巻回数、又は前記第2ティースに巻回される前記第2の固定子巻線の巻回数に対して、前記第3ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の巻回数及び前記第2の固定子巻線の巻回数を異ならせている請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)の制御装置(50)が実施する制御プログラムであって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記回転電機は、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備え、
前記制御装置に、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定させる電流指令処理(101)と、
前記第1の固定子巻線における各相の電圧と前記第2の固定子巻線における各相の電圧との電圧位相差(δv)を補正して3相座標系から座標変換される第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧(Vq´)に基づいて、弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定させる弱め磁束制御処理(110)と、を実施させ、
前記電流指令処理では、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸の電流指令値を決定させる制御プログラム。
【請求項8】
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)の制御装置(50)が実施する制御プログラムであって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記制御装置は、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備え、
前記制御装置に、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定させる電流指令処理(101)と、
前記第1のdq座標系におけるd軸電圧(Vd)とq軸電圧(Vq)の2乗和に基づいて誘起電圧の絶対値を算出させる絶対値算出処理(311)と、
前記絶対値に基づいて弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定させる弱め磁束制御処理(310)と、を実施させ、
前記電流指令処理では、前記弱め磁束制御処理で決定された前記弱め界磁電流を考慮して、d軸電流の電流指令値を決定させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3相電流が第1のインバータから供給される第1の電機子巻線と、3相電流が第2のインバータから供給される第2の電機子巻線と、を備える回転電機が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の回転電機は、第1の電機子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるコイル体Ua,Va,Waと、第2の電機子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるコイル体Ub,Vb,Wbと、第1の電機子巻線及び第2の電機子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるコイル体Uc,Vc,Wcと、を備えている。そして、各相のコイル体Ua,Va,Waの起磁力に対する各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差と、各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対する各相のコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差と、が電気角で20度となるように、第3ティースに巻回される第1の電機子巻線に流れる電流と当該第3ティースに巻回される第2の電機子巻線に流れる電流との位相差が設定されている。これにより、6次又は12次の高調波成分を打消し、トルクリプルを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7103299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の回転電機において、従来の方法で弱め界磁制御を実施しようとしても適切に実施できないことがわかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、弱め界磁制御を適切に実施することができる回転電機及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子と、多相の固定子巻線、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティースを有する固定子鉄心を有する固定子と、を備える回転電機であって、
前記固定子巻線には、第1のインバータから3相の電流が供給される第1の固定子巻線と、第2のインバータから3相の電流が供給される第2の固定子巻線と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差を有し、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備える回転電機において、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定する電流指令部と、
前記第1の固定子巻線における各相の電圧と前記第2の固定子巻線における各相の電圧との電圧位相差を補正して3相座標系から座標変換される第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧に基づいて、弱め磁束制御における弱め界磁電流を決定する弱め磁束制御部と、を備え、
前記電流指令部は、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸の電流指令値を決定する。
【0007】
上記課題を解決するための第2の手段は、
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子と、多相の固定子巻線、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティースを有する固定子鉄心を有する固定子と、を備える回転電機であって、
前記固定子巻線には、第1のインバータから3相の電流が供給される第1の固定子巻線と、第2のインバータから3相の電流が供給される第2の固定子巻線と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差を有し、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備える回転電機において、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定する電流指令部と、
前記第1のdq座標系におけるd軸の指令電圧とq軸の指令電圧の2乗和に基づいて前記固定子巻線の誘起電圧の絶対値を算出する絶対値算出部と、
前記絶対値に基づいて弱め磁束制御における弱め界磁電流を決定する弱め磁束制御部と、を備え、
前記電流指令部は、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸電流の電流指令値を決定する。
【0008】
上記課題を解決するための第3の手段は、
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子と、多相の固定子巻線、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティースを有する固定子鉄心を有する固定子と、を備える回転電機の制御装置が実施する制御プログラムであって、
前記固定子巻線には、第1のインバータから3相の電流が供給される第1の固定子巻線と、第2のインバータから3相の電流が供給される第2の固定子巻線と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差を有し、
前記回転電機は、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備え、
前記制御装置に、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定させる電流指令処理と、
前記第1の固定子巻線における各相の電圧と前記第2の固定子巻線における各相の電圧との電圧位相差を補正して3相座標系から座標変換される第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧に基づいて、弱め磁束制御における弱め界磁電流を決定させる弱め磁束制御処理と、を実施させ、
前記電流指令処理では、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸の電流指令値を決定させる。
【0009】
上記課題を解決するための第4の手段は、
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子と、多相の固定子巻線、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティースを有する固定子鉄心を有する固定子と、を備える回転電機の制御装置が実施する制御プログラムであって、
前記固定子巻線には、第1のインバータから3相の電流が供給される第1の固定子巻線と、第2のインバータから3相の電流が供給される第2の固定子巻線と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差を有し、
前記制御装置は、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備え、
前記制御装置に、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定させる電流指令処理と、
前記第1のdq座標系におけるd軸電圧とq軸電圧の2乗和に基づいて誘起電圧の絶対値を算出させる絶対値算出処理と、
前記絶対値に基づいて弱め磁束制御における弱め界磁電流を決定させる弱め磁束制御処理と、を実施させ、
前記電流指令処理では、前記弱め磁束制御処理で決定された前記弱め界磁電流を考慮して、d軸電流の電流指令値を決定させる。
【0010】
上記手段よれば、適切に弱め界磁制御を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】モータを示す縦断面図。
図2】モータを示す横断面図。
図3】制御装置の電気的構成を示す図。
図4】部分巻線の配置を示す図。
図5】固定子巻線を示す図。
図6】引出線の配置を示す図。
図7】トルクの高調波成分を示す図。
図8】起磁力の合算を示すベクトル図。
図9】電磁力の変動を示す図。
図10】第1実施形態の制御処理を示す図。
図11】(a)は、各相電流の位相を示す図、(b)は、各相電圧の位相を示す図。
図12】電流位相差と電圧位相差との関係を示す図。
図13】電流軸と電圧軸とのずれを示す図。
図14】第2実施形態の制御処理を示す図。
図15】第3実施形態の制御処理を示す図。
図16】第2実施形態における部分巻線の配置を示す図。
図17】モータを示す横断面図。
図18】第2実施形態の起磁力の合算を示すベクトル図。
図19】第3実施形態における部分巻線の配置を示す図。
図20】第4実施形態における部分巻線の配置を示す図。
図21】別例における部分巻線の配置を示す図。
図22】別例における部分巻線の配置を示す図。
図23】別例における部分巻線の配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。第1実施形態では、回転電機としてのモータ10を例示して説明する。
【0013】
図1に示すモータ10は、永久磁石界磁型のものであり、具体的には3相巻線を有する永久磁石界磁型同期機である。つまり、モータ10は、ブラシレスモータである。この3相巻線は2系統有する。モータ10は、ハウジング20と、ハウジング20に固定される固定子30と、固定子30に対して回転する回転子40と、回転子40が固定される回転軸11と、を備える。以下、本実施形態において、軸方向とは、回転軸11の軸方向のことを示す(図において矢印Y1で示す)。径方向とは、回転軸11の径方向のことを示す(図において矢印Y2で示す)。周方向とは、回転軸11の周方向のことを示す(図において矢印Y3で示す)。
【0014】
ハウジング20は、円筒形状に形成されており、ハウジング20内には、固定子30及び回転子40等が収容されている。ハウジング20には、軸受け23,24が設けられており、この軸受け23,24により回転軸11が回転自在に支持されている。ハウジング20の内周面の軸心は、回転軸11と同軸となっている。回転軸11の先端側には、角度センサ12が設けられている。角度センサ12は、磁気センサでもレゾルバでもよい。
【0015】
固定子30は、ハウジング20の軸方向略中央において、ハウジング20の内周に沿って円筒状に設けられている。そして、固定子30は、回転軸11の軸心Oを中心にして、ハウジング20の内周面に固定されている。固定子30は、磁気回路の一部を構成するものであり、円環状をなし回転子40の外周側において径方向に対向して配置される固定子鉄心31(電機子コア、ステータコア)と、固定子鉄心31に巻回された固定子巻線32(電機子巻線、アーマチャコイル)とを有している。
【0016】
図2に示すように、固定子鉄心31は、円環状のバックヨーク33と、バックヨーク33から径方向から回転軸11に向かって突出し、周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティースT1~T18とを有し、隣り合うティースT1~T18の間にスロット35(ステータスロット)が形成されている。固定子鉄心31においてスロット35は周方向に等間隔に設けられ、そのスロット35に固定子巻線32が巻回される。本実施形態では、ティースT1~T18の数を「18」とし、スロット35の数を「18」としている。説明の都合上、各ティースT1~T18には、周方向の配列順で反時計回りに符号T1~18を付する。固定子巻線32は、当該スロット35に収容され保持されている。そして、固定子巻線32は、電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。
【0017】
固定子鉄心31は、円環状をなす複数の薄板状の磁性体である鋼板(コアシート)を、固定子鉄心31の軸方向に積層して形成された一体型のものである。鋼板は、帯状の電磁鋼板材をプレス打ち抜きすることで形成される。
【0018】
回転子40は、磁気回路の一部を構成するものであり、周方向に1又は複数対の磁極を有し、固定子30に対して径方向に対向するように配置される。本実施形態において、回転子40は、14個の(すなわち、磁極対数が7個となる)磁極を有する。回転子40は、磁性体からなる回転子鉄心41と、回転子鉄心41に固定される永久磁石42と、を備える。具体的には、図2に示すように、回転子40は、周方向に極性が交互となるように磁石部としての永久磁石42を14個備えており、回転子鉄心41に軸方向に沿って設けられた収容孔に永久磁石42が埋め込まれている。
【0019】
回転子40は、周知の構成でよく、例えば、IPM型(Interior Permanent Magnet:埋め込み磁石型)の回転子であっても、SPM型(Surface Permanent Magnet:表面磁石側)の回転子であってもよい。また、回転子40として、界磁巻線側の回転子を採用してもよい。本実施形態では、IPM型の回転子を採用している。回転子40には、回転軸11が挿通され、回転軸11を中心にして回転軸11と一体回転するように回転軸11に固定されている。
【0020】
モータ10には、制御装置50が接続されている。制御装置50は、CPU、ROM、RAM及びI/O等を備えた周知のマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
【0021】
制御装置50が備える機能としては、例えば、外部(例えばバッテリ)からの電力を変換し、モータ10に供給して駆動力を発生させる機能を有する。また、例えば、制御装置50は、角度センサ12から入力された回転角度に関する情報を利用して、モータ10の制御(電流制御など)を行う機能を備える。
【0022】
また、制御装置50には、図3に示すように、第1のインバータ回路51及び第2のインバータ回路52が設けられている。第1のインバータ回路51は、それぞれ3相の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されている。制御装置50は、各アームに設けられたスイッチング素子のオンオフにより、各相における電流を制御する。
【0023】
詳しく説明すると、図3に示すように、第1のインバータ回路51は、U相、V相及びW相からなる3相において、スイッチング素子としての上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体をそれぞれ備えている。本実施形態では、各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、具体的にはIGBTを用いている。なお、MOSFETを用いてもよい。各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnには、それぞれフリーホイールダイオード(還流ダイオード)Dp,Dnが逆並列に接続されている。
【0024】
各相の上アームスイッチSpの高電位側端子(コレクタ)は、バッテリの正極端子に接続されている。また、各相の下アームスイッチSnの低電位側端子(エミッタ)は、バッテリの負極端子(グランド)に接続されている。各相の上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点は、それぞれ固定子巻線32の一端(引出線A1,B1,C1)に接続されている。なお、第2のインバータ回路52も第1のインバータ回路51と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
このような回転電機では、トルクリプルに基づく騒音や振動が問題となっている。トルクリプルは、主に6次高調波成分又は12次高調波成分が主要成分となるため、これらの抑制することが望ましい。そこで、以下のように構成している。
【0026】
固定子巻線32は、3相の各相をそれぞれ表すU相、V相、及びW相の固定子巻線32に分類される。図4及び図5に示すように、U相の固定子巻線32は、8個の部分巻線+U11,+U12,-U13,-U14,-U21,+U22,+U23,-U24により構成されている。V相の固定子巻線32は、8個の部分巻線-V11,+V12,+V13,-V14,+V21,-V22,-V23,+V24により構成されている。U相の固定子巻線32は、8個の部分巻線+W11,-W12,-W13,+W14,+W21,-W22,-W23,+W24により構成されている。
【0027】
また、24個の部分巻線は、図2及び図4に示すように、各ティースT1~T18に対応して、+U11、+V21、+W11/-V22、-W12、-U21、-V11/+U22、+V12、+W21、+U12/-W22、-U13、-V23、-W13/+V24、+W14、+U23、+V13/-U24、-V14、-W23、-U14/+W24の順番で配置されている。
【0028】
なお、「+」及び「-」の符号は、電流の向き、すなわち、部分巻線により生じる界磁の極性を示す。例えば、本実施形態の図2において、紙面手前側から奥側への電流の流れを「+」とした場合、奥側から手前側への電流の流れが「-」となる。つまり、固定子巻線32に電流が流れた場合、「+」の部分巻線と、「-」の部分巻線とは、径方向に反対となる起磁力が生じることを意味する。「+」の部分巻線と、「-」の部分巻線とは、電気角で180度の起磁力の位相差があるといえる。「+」の部分巻線と、「-」の部分巻線とは、巻き方を反対することにより実現できる。後述するコイル体の場合も同様である。
【0029】
また、「/」は同じティースT1~T18に対して、2個の部分巻線が径方向位置を異ならせて配置されていることを示している。つまり、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18に対して2個の部分巻線が配置されている。そして、他のティースT1,T2,T4,T5,T7,T8,T10,T11,T13,T14,T16,T17に対して1個の部分巻線が配置されている。なお、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18において、部分巻線の径方向位置を入れ替えてもよい。
【0030】
次に、図5に基づいて、固定子巻線32の配線について説明する。本実施形態では、Y結線(スター結線)としているが、デルタ結線としてもよい。
【0031】
図5に示すように、固定子巻線32は、第1の固定子巻線32aと、第2の固定子巻線32bとから構成されている。第1の固定子巻線32aでは、U相の部分巻線+U11,+U12,-U13,-U14が直列に接続され、V相の部分巻線-V11,+V12,+V13,-V14が直列に接続され、W相の部分巻線+W11,-W12,-W13,+W14が直列に接続されている。そして、これらの直列接続体は、一端が中性点Qに接続され、他端が第1のインバータ回路51に接続される引出線A1,B1,C1にそれぞれ接続されている。なお、引出線A1には、U相の部分巻線が接続され、引出線B1には、V相の部分巻線が接続され、引出線C1には、W相の部分巻線が接続される。
【0032】
第2の固定子巻線32bも同様に、U相の部分巻線-U21,+U22,+U23,-U24が直列に接続され、V相の部分巻線+V21,-V22,-V23,+V24が直列に接続され、W相の部分巻線+W21,-W22,-W23,+W24が直列に接続されている。そして、これらの直列接続体は、一端が中性点Qに接続され、他端が第2のインバータ回路52に接続される引出線A2,B2,C2にそれぞれ接続されている。なお、引出線A2には、U相の部分巻線が接続され、引出線B2には、V相の部分巻線が接続され、引出線C2には、W相の部分巻線が接続される。
【0033】
図6に示すように、各引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2は、回転軸11の軸心Oを中心として点対称となるように配置されている。すなわち、引出線A1,A2は、180度間隔で配置されており、引出線B1,B2は、180度間隔で配置されており、引出線C1,C2は、180度間隔で配置されている。なお、引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2は、軸方向に沿って直線状に設けられている。
【0034】
ここで、ティースT1,T4,T7,T10,T13,T16に、第1の固定子巻線32aのみが巻回(巻装)されることにより、各相のコイル体がそれぞれ2つずつ設けられている。これらのU相のコイル体を、コイル体Uaと示し、V相のコイル体を、コイル体Vaと示し、W相のコイル体を、コイル体Waと示す。以下では、第1の固定子巻線32aのみが巻回されるティースを、第1ティースと示す場合がある。第1実施形態では、ティースT1,T4,T7,T10,T13,T16が第1ティースに相当する。
【0035】
また、ティースT2,T5,T8,T11,T14,T17に、第2の固定子巻線32bのみが巻回されることにより、各相のコイル体がそれぞれ2つずつ設けられている。これらのU相のコイル体を、コイル体Ubと示し、V相のコイル体を、コイル体Vbと示し、W相のコイル体を、コイル体Wbと示す。以下では、第2の固定子巻線32bのみが巻回されるティースを、第2ティースと示す場合がある。第1実施形態では、ティースT2,T5,T8,T11,T14,T17が第2ティースに相当する。
【0036】
そして、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18に、第1の固定子巻線32aと、第2の固定子巻線32bとが巻回されることにより、各相のコイル体がそれぞれ2つずつ設けられている。これらのU相のコイル体を、コイル体Ucと示し、V相のコイル体を、コイル体Vcと示し、W相のコイル体を、コイル体Wcと示す。以下では、第1の固定子巻線32a及び第2の固定子巻線32bが巻回されるティースを、第3ティースと示す場合がある。第1実施形態では、ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18が第3ティースに相当する。
【0037】
図2に示すように、各相のコイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcは、回転軸11の軸心を中心として、2回回転対称に配置されている。つまり、軸心を中心に、機械角で180度回転させても、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの配置順が同じとなっている。
【0038】
ここで、部分巻線+U11,+U12の起磁力Fu1a、部分巻線-U13,-U14の起磁力Fu1b、部分巻線+U22,+U23の起磁力Fu2a、部分巻線-U21,-U24の起磁力Fu2bは、数式(1)~(4)により表すことができる。なお、「θ」は、固定子巻線32に流れる電流の位相(第1のインバータ回路51から供給されるU相電流の位相を基準とする)である。「β」は、第1のインバータ回路51から供給される電流と第2のインバータ回路52から供給される電流との位相差(以下、電流位相差と示す場合がある)である。また、「N」は、各部分巻線の巻回数である。「I」は、電流の振幅である。
【数1】
【0039】
同様に、部分巻線+V12,+V13の起磁力Fv1a、部分巻線-V11,-V14の起磁力Fv1b、部分巻線+V21,+V24の起磁力Fv2a、部分巻線-V22,-V23の起磁力Fv2bは、数式(5)~(8)により表すことができる。
【数2】
【0040】
同様に、部分巻線+W11,+W14の起磁力Fw1a、部分巻線-W12,-W13の起磁力Fw1b、部分巻線+W21,+W24の起磁力Fw2a、部分巻線-W22,-W23の起磁力Fw2bは、数式(9)~(12)により表すことができる。
【数3】
【0041】
そして、各相におけるトルクの6次高調波成分「Tr6」は、数式(13)により表すことができる。また、各相におけるトルクの12次高調波成分「Tr12」は、数式(14)により表すことができる。
【数4】
【0042】
なお、数式(13),(14)において、αは定数であり、ノイズなどにより依存する。また、第1実施形態において、数式(13),(14)の第1項は、コイル体Ua,Va,Waに基づく成分に対応し、第2項は、コイル体Ub,Vb,Wbに基づく成分に対応し、第3項は、コイル体Uc,Vc,Wcに基づく成分に対応する。
【0043】
また、「λ1」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ubの起磁力の位相差を示す。つまり、コイル体Uaの起磁力を基準として、コイル体Ubの起磁力の位相の遅れを示す。同様に、「λ1」は、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vbの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wbの起磁力の位相差を示す。同様に、「λ2」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ucの起磁力の位相差を示し、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vcの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wcの起磁力の位相差を示す。また、数式(13),(14)において、「Ta」は、コイル体Ua,Va,Waの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。また、「Tb」は、コイル体Ub,Vb,Wbの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。また、「Tc」は、コイル体Uc,Vc,Wcの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。
【0044】
ここで、「λ1」と「λ2」がそれぞれ電気角で「20度」と「40度」である場合であって、「Ta」、「Tb」及び「Tc」が同じである場合、数式(15)、(16)及び図7に示すように、トルクの各高調波成分がキャンセルされることがわかる。
【数5】
【0045】
そして、本実施形態において、第1のインバータ回路51と、第2のインバータ回路52との電流位相差「β」は、電気角で20度としている。つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力との各位相差は、20度ということとなり、「λ1」は、20度となる。したがって、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が、40度となるようにすれば、トルクリプルを抑制することができるといえる。
【0046】
つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力との各位相差と、コイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度となるようにすればよい。なお、位相差は、20度が望ましいが、20度を含む所定の位相範囲(例えば、15~25度の範囲)としてもよく、この場合でもトルクリプルの抑制効果を得ることができる。
【0047】
そこで、本実施形態では、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が40度となるように(コイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が20度となるように)、各第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との位相差が、電気角で72~88度の範囲内となるように設定されている。なお、以下では、各第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線に対して、第2の固定子巻線32bの部分巻線の起磁力の位相差を、合算位相差と示す場合がある。
【0048】
合算位相差を、電気角で72~88度の範囲内としたが、80度とすることが望ましい。本実施形態では、合算位相差が、80度となるように設定している。
【0049】
第3ティースであるティースT9に設けられるコイル体Ucを例示して、起磁力の合算について詳しく説明する。図2及び図4に示すように、ティースT9に設けられるコイル体Ucは、部分巻線+U12/-W22により構成されている。部分巻線+U12の起磁力Fu1aと、部分巻線-W22の起磁力Fw2bは、数式(1)(12)に示すとおりである。これらの起磁力をベクトル図で表すと、図8のようになる。そして、部分巻線+U12の起磁力Fu1aと部分巻線-W22の起磁力Fw2bとを合算すると、数式(17)に示すようになる。
【数6】
【0050】
なお、数式(17)では、部分巻線+U12の巻回数と、部分巻線-W22の巻回数を、共にNとしている。数式(17)に示すように、ティースT9に部分巻線+U12及び部分巻線-W22を巻回することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対して位相差が40度となるコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力を実現することができる。
【0051】
ところで、数式(17)に示すように、起磁力は、部分巻線の巻回数に比例している。このため、各部分巻線の巻回数を適切に設定しなければ、各コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcとの間で、起磁力の振幅が揃わなくなる。つまり、数式(13)、(14)において、定数「Ta」「Tb」「Tc」にばらつきが生じることとなる。起磁力の振幅が揃っていない場合、トルクリプルのキャンセル効果が低減してしまう。したがって、各コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力の振幅が所定の振幅範囲内となるように各巻回数を設定することが望ましい。
【0052】
そこで、本実施形態では、コイル体Ua,Va,Waの起磁力と、コイル体Ub,Vb,Wbの起磁力とを揃えるため、コイル体Ua,Va,Wa及びコイル体Ub,Vb,Wbの巻回数を共に同じ巻回数「Na」とする。
【0053】
また、各相のコイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力が同程度となるように、各第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数、及び第2の固定子巻線32bの巻回数が設定されている。
【0054】
具体的には、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数、及び第2の固定子巻線32bの巻回数を「Nb」とする場合に、1.4≦Na/Nb≦1.6の関係を満たすように、巻回数「Na」及び「Nb」が設定されている。Na/Nbが1.53に近づくような値となることが好ましく、本実施形態では、Na:Nbを3:2の比率(Na/Nbが1.5)となるように巻回数を設定している。
【0055】
次に、第1実施形態のモータ10の制御について説明する。図10には、U,V,W相の各相電流を制御する制御処理が示されている。なお、第1の固定子巻線32aの電流制御(第1のインバータ回路51の制御)と、第2の固定子巻線32bの電流制御(第2のインバータ回路52の制御)は、いずれも同様に実施される。
【0056】
制御処理は、制御装置50(のCPU)がROMに記憶されているプログラムを実施することにより、実施される。なお、制御装置50の各種機能(電流指令部101、dq変換部102、d軸電流フィードバック制御部103、q軸電流フィードバック制御部104、2相⇒3相変換部105、操作信号生成部106、弱め磁束制御部110)は、制御装置50(のCPU)がROMに記憶されているプログラムを実施することにより、実現される。制御装置50により実現される各種機能の全て及び一部は、ハードウェア的に実現されてもよい。
【0057】
電流指令部101は、トルク-dq変換マップを用い、モータ10に対するトルク指令値(力行トルク指令値又は発電トルク指令値)、弱め磁束制御部110により入力した弱め界磁電流ΔId、及びモータ10の回転電気角を時間微分して得られる回転速度(電気角速度)ωなどに基づいて、d軸の電流指令値Id*とq軸の電流指令値Iq*とを設定する。なお、トルク指令値は、上位制御装置などにより指令される。また、弱め磁束制御部110から入力する弱め界磁電流ΔIdについては後述する。
【0058】
dq変換部102は、相ごとに設けられた電流センサによる3相(U、V、W相)それぞれの電流検出値(各相電流Iu1,Iv1,Iw1,Iu2,Iv2,Iw2)を、直交2次元回転座標系の成分であるd軸電流(Id1,Id2)とq軸電流(Iq1,Iq2)とに変換する。第1実施形態において、dq変換部102は、電流位相差を補正して、第1の固定子巻線32aのd軸電流Id1と第2の固定子巻線32bのd軸電流Id2とを一致させるとともに、第1の固定子巻線32aのq軸電流Iq1と第2の固定子巻線32bのq軸電流Iq2とを一致させるように座標変換する。具体的には、下記数式(18)(19)に示すようにして、変換する。
【数7】
【0059】
なお、「Id1」は、第1のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのd軸電流であり、「Iq1」は、第1のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのq軸電流である。「Iu1」は、第1の固定子巻線32aにおけるU相電流(電流検出値)であり、「Iv1」は、第1の固定子巻線32aにおけるV相電流(電流検出値)であり、「Iw1」は、第1の固定子巻線32aにおけるW相電流(電流検出値)である。また、「Id2」は、第1のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのd軸電流であり、「Iq2」は、第1のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのq軸電流である。「Iu2」は、第2の固定子巻線32bにおけるU相電流(電流検出値)であり、「Iv2」は、第2の固定子巻線32bにおけるV相電流(電流検出値)であり、「Iw2」は、第2の固定子巻線32bにおけるW相電流(電流検出値)である。また、「β」は、前述同様、電流位相差であり、第1実施形態においては、「20°」である。
【0060】
数式(18)(19)に示すようにして変換することにより、電流位相差を補正することができ、第1のdq軸座標系では、Id1=Id2となり、Iq1=Iq2とすることができる。これにより、制御装置50は、第1の固定子巻線32aの電流と、第2の固定子巻線32bの電流とを同様に制御することができる。
【0061】
なお、電流位相差を補正するように各相電流を、d軸電流とq軸電流とに変換することを、各相電流を第1のdq軸座標系に変換すると示す。図10では、「UVW」⇒「dqI」と示す。このdq変換部102は、電流変換部に相当する。また、d軸電流Id1とd軸電流Id2をまとめてd軸電流Idと示す場合がある。q軸電流Iq1とq軸電流Iq2をまとめてq軸電流Iqと示す場合がある。
【0062】
d軸電流フィードバック制御部103は、d軸電流Idをd軸の電流指令値Id*にフィードバック制御するための操作量として、上記d軸電流Idとd軸電流指令値Id*との偏差量にPI(Proportional-Integral)ゲインを施して補正指令量、すなわち、d軸の指令電圧1,Vd2を算出する。このd軸の指令電圧Vd1,Vd2は、第1のdq軸座標系における値であり、まとめてVdと示す場合がある。また、d軸の指令電圧をd軸電圧と示す場合もある。
【0063】
また、制御装置50によるq軸電流フィードバック制御部104は、q軸電流Iqをq軸の電流指令値Iq*にフィードバック制御するための操作量として、上記q軸電流Iqとq軸電流指令値Iq*との偏差量にPIゲインを施して補正指令量、すなわち、q軸の指令電圧Vq1,Vq2を算出する。このq軸の指令電圧Vq1,Vq2は、第1のdq軸座標系における値であり、まとめてVqと示す場合がある。また、q軸の指令電圧をq軸電圧と示す場合もある。d軸電流フィードバック制御部103及びq軸電流フィードバック制御部104が指令電圧決定部に相当する。
【0064】
2相⇒3相変換部105は、第1のdq軸座標系におけるd軸及びq軸の指令電圧Vd,Vqを、U相、V相及びW相の指令電圧(Vu1,Vv1,Vw1,Vu2,Vv2,Vw2)に変換する。図10では、「dqI」⇒「UVW」と示す。なお、U相電圧、V相電圧及びW相電圧から、d軸電圧及びq軸電圧に変換する数式は、数式(20)(21)に示すとおりである。2相⇒3相変換部105は、この逆変換を実施して、d軸及びq軸の指令電圧を、U相、V相及びW相の指令電圧に変換する。
【数8】
【0065】
なお、「Vd1」は、第1のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのd軸電圧(d軸指令電圧)であり、「Vq1」は、第1のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのq軸電圧(q軸指令電圧)である。また、「Vu1」は、第1の固定子巻線32aにおけるU相電圧(U相指令電圧)であり、「Vv1」は、第1の固定子巻線32aにおけるV相電圧(V相指令電圧)であり、「Vw1」は、第1の固定子巻線32aにおけるW相電圧(W相指令電圧)である。また、「Vd2」は、第1のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのd軸電圧(d軸指令電圧)であり、「Vq2」は、第1のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのq軸電圧(q軸指令電圧)である。また、「Vu2」は、第2の固定子巻線32bにおけるU相電圧(U相指令電圧)であり、「Vv2」は、第2の固定子巻線32bにおけるV相電圧(V相指令電圧)であり、「Vw2」は、第2の固定子巻線32bにおけるW相電圧(W相指令電圧)である。また、「β」は、前述同様、電流位相差であり、第1実施形態においては、「20°」である。なお、電流位相差を補正するように各相電圧を、d軸電圧とq軸電圧とに変換することを、各相電圧を第1のdq軸座標系に変換すると示す。
【0066】
すなわち、第1実施形態の2相⇒3相変換部105は、第1のdq軸座標系におけるd軸及びq軸の指令電圧を、3相座標系におけるU相、V相及びW相の指令電圧に変換している。
【0067】
そして、制御装置50の操作信号生成部106は、周知の三角波キャリア比較方式を用い、3相の指令電圧に基づいて、インバータの操作信号を生成する。具体的には、操作信号生成部106は、3相の指令電圧を電源電圧で規格化した信号と、三角波信号等のキャリア信号(搬送波)との大小比較に基づくPWM制御により、各相における上下アームのスイッチ操作信号(デューティ信号)を生成する。制御装置50が備えるドライバ107は、操作信号生成部106で生成されたスイッチ操作信号に基づいて、第1のインバータ回路51及び第2のインバータ回路52の各3相のスイッチSp,Snをオンオフさせる。
【0068】
上述した第1実施形態のモータ10では、弱め磁束制御の採用が予定されている。弱め磁束制御とは、負のd軸電流を流すことにより、d軸電機子反作用による減磁効果を利用してd軸の磁束を減少させ、等価的な弱め界磁効果を得るための制御である。
【0069】
ここで弱め磁束制御の内容について説明する。モータ10の電圧方程式を、数式(22)、(23)に示す。なお、数式(22)、(23)において、「Id」がd軸電流であり、「Iq」がq軸電流であり、「Vd」がd軸電圧であり、「Vq」がq軸電圧である。また、「R」は、モータ10の抵抗値であり、「Ld」は、d軸のインダクタンスであり、「Lq」は、q軸のインダクタンスであり、「ω」は、モータ10の回転速度であり、「Φa」が磁石磁束である。また、モータ10の端子電圧「Vt」を、数式(24)に示す。
【数9】
【0070】
上記数式(22)~(24)に示すように、モータ10の回転速度ωが大きくなると、モータ10の端子電圧Vtが大きくなることがわかる。モータ10の印加電圧には上限値Vmaxが決まっており、端子電圧Vtが上限値Vmaxを超えると、モータ10を駆動させることができなくなる。つまり、制御できなくなる。このため、端子電圧Vtが上限値Vmaxを超えないように、回転速度ω(動作回転数)に応じて負のd軸電流Idを流し、q軸電圧Vqを小さくする必要がある。そこで、弱め界磁制御では、q軸電圧Vqを監視して、端子電圧Vtが上限値Vmaxを超えないように、d軸電流Idを決定するという制御を実施している。
【0071】
ところで、第1実施形態では、各第3ティース(ティースT3,T6,T9,T12,T15,T18)に、第1の固定子巻線32aと、第2の固定子巻線32bとを巻回して、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wbと同等のコイル体Uc,Vc,Wcを疑似的に構成している。このような構成にすると、電流位相差と電圧位相差が一致せず、弱め磁束制御を適切に実施できないということを発見した。
【0072】
詳しく説明すると、図11(a)に示すように、各相の電流位相差は、「20°」である。しかしながら、コイル体Uc,Vc,Wcを疑似的に構成すると、図11(b)に示すように第1の固定子巻線32aと各相電圧(誘起電圧)と、第2の固定子巻線32bと各相電圧(誘起電圧)との位相差が、電流位相差と異なることとなることがわかった。具体的には、図11及び図12に示すように、電流位相差が「20°」であり、合算位相差が「80°」である場合、電圧位相差「δv」は、「-12°」となる。
【0073】
このため、各相電圧を第1のdq軸座標系に変換すると、電流位相差「20°」と電圧位相差「-12°」との違いに基づいて、図13(a)に示すように、第1のdq軸座標系において、電流軸(白抜きの矢印で示す)と、第1の固定子巻線32aのq軸電圧Vq1の軸とがずれることとなる。同様に、図13(b)に示すように、第1のdq軸座標系において、電流軸と、第2の固定子巻線32bのq軸電圧Vq2の軸とがずれることとなる。これにより、第1のdq軸座標系では、Vd1とVd2が一致しなくなり、Vq1とVq2が一致しなくなる。
【0074】
このずれの影響により、例えば、第1のdq軸座標系では、q軸電圧Vq1が実際よりも低く演算されることとなる。そして、実際よりも低く演算されると、実際のq軸電圧が、負のd軸電流を流さなければならない電圧となった場合でも、負のd軸電流を流さなくなるなど、適切に弱め界磁制御を実施することができないという事態が生じる。そして、弱め界磁制御を適切に実施することができないと、電流が発振し、振動などの原因となりうる。また、回転速度も適切に向上させることができない。
【0075】
そこで、第1実施形態のモータ10では、弱め界磁制御を実施する場合、電圧位相差を補正するように座標変換することとしている。詳しく説明すると、電圧座標変換部111は、d軸電流フィードバック制御部103及びq軸電流フィードバック制御部104から、d軸の指令電圧Vd1及びq軸の指令電圧Vq1(第1のdq軸座標系の指令電圧)を取得し、電圧位相差を補正するように第2のdq軸座標系へ座標変換を行っている。具体的には、下記数式(25)に示すようにして、座標変換する。
【数10】
【0076】
なお、「β」は、電流位相差であり、第1実施形態では「20°」である。また、「δv」は、電圧位相差である。第1実施形態では、図12に示すように、電流位相差が「20°」であり、合算位相差が「80°」であるため、電圧位相差「δv」は、「-12°」となる。「Vd1´」は、第2のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのd軸電圧(d軸指令電圧)であり、「Vd2´」は、第2のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのd軸電圧(d軸指令電圧)である。「Vq1´」は、第2のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのq軸電圧(q軸指令電圧)であり、「Vq2´」は、第2のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのq軸電圧(q軸指令電圧)である。この変換を行うことにより、q軸電圧Vq1´とq軸電圧Vq2´とが等しくなる。
【0077】
なお、d軸の指令電圧Vd2及びq軸の指令電圧Vq2(第1のdq軸座標系の指令電圧)を取得し、下記数式(26)に示すようにして、座標変換してもよい。第2のdq軸座標系におけるq軸電圧はいずれも同じ(Vq1´=Vq2´)であるため、いずれの値を採用しても結果は同じとなる。
【0078】
そして、弱め磁束制御部110は、第2のdq軸座標系におけるq軸電圧Vq´(Vq1´又はVq2´)に基づいて、弱め界磁電流ΔId(負のd軸電流)を算出する。具体的には、弱め磁束制御部110は、第2のdq軸座標系におけるq軸電圧Vq´を監視して、端子電圧Vtが上限値Vmaxを超えないように、弱め界磁電流ΔIdを決定する。弱め界磁電流ΔIdの決定方法は、演算により算出してもよいし、マップにより特定してもよい。なお、弱め界磁電流ΔIdは、第1のdq軸座標系における値となっている。
【0079】
そして、前述したように、電流指令部101は、トルク指令値、弱め磁束制御部110により入力した弱め界磁電流ΔId、及び回転速度ωなどに基づいて、d軸の電流指令値とq軸の電流指令値とを設定する。以降の流れは前述したとおりであるため省略する。
【0080】
以上、第1実施形態の構成によれば、以下の効果を有する。
【0081】
弱め磁束制御部110は、電圧位相差を補正するための第2のdq軸座標系におけるq軸電圧Vq1´(又はVq2´)を監視して、弱め界磁電流を決定する。電圧位相差を補正するため、演算されたq軸電圧Vq1´(又はVq2´)と実際の値との間にずれがなくなり、適切に弱め界磁制御を実施することができる。これにより、電流の発振を抑制し、回転速度を適切に向上させることができる。また、弱め界磁電流ΔIdを第1のdq軸座標系における値で出力するため、電流指令部101の処理が簡単となる。
【0082】
コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差、及びコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差を、20度を含む所定の位相範囲内となるようにした。具体的には、各第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力に対して、当該第3ティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力の位相差(合算位相差)が、電気角で72~88度の範囲となるように設定した。本実施形態では、合算位相差が80度となるように設定した。これにより、数式(15)~(17)に示すように、トルクの6次又は12次高調波成分を打消し、トルクリプルを抑制することが可能となる。
【0083】
コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力が所定の振幅範囲内(本実施形態では同程度)となるように、各部分巻線の巻回数を設定した。具体的には、第1ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数を巻回数「Na」とした場合、第2ティースに巻回される第2の固定子巻線32bの巻回数を「Na」とする。そして、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数、及び第2の固定子巻線32bの巻回数をそれぞれ「Nb」とする場合に、1.4≦Na/Nb≦1.6の関係を満たすように、各巻回数を設定した。本実施形態では、Na:Nbを3:2の比率(Na/Nbが1.5)となるように巻回数を設定した。これにより、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力の振幅を同程度にすることができ、トルクリプルを抑制することができる。
【0084】
モータ10は、磁極数を「14」とし、スロット35の数を「18」とした。すなわち、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)とし、かつ、スロット数を18×mとした。これにより、軸心を中心として、電磁力のバランスを取ることができる。
【0085】
図9に基づいて詳しく説明する。図9(a)は、各ティースT1~T18により発生する電磁力と、モータ10の機械角との関係を示す図である。図9(b)は、回転軸11を中心とした場合において、図9(a)に示す電磁力の変動を周方向に沿って示したものである。
【0086】
図4に示すように、U相のコイル体Ua,Ub,Ucが約90度間隔で配置されている。V相のコイル体Va,Vb,Vc及びW相のコイル体Wa,Wb,Wcも同様である。このため、図9に示すように、電磁力のバランスが良くなる。したがって、電磁力がどこかに偏ることがなくなり、トルク変動を抑え、振動や騒音を抑制することができる。
【0087】
磁極数を「14」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と、当該第3ティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との合算位相差を、電気角で80度とした。これにより、図2及び図4に示すように、部分巻線が配置されることとなる。図2及び図4に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、第3ティースであるティースT18に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U14は、周方向に隣接する第1ティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
【0088】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、第3ティースであるティースT18に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+W24は、周方向に隣接する第2ティースであるティースT17に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-W23と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0089】
図6に示すように、引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2は、回転軸11の軸心を中心として各相が対称となるように配置されている。これにより、引出線A1,B1,C1,A2,B2,C2から発生する漏れ磁束をバランスさせ、打ち消すことができるため、角度センサ12の検出誤差を抑制することができる。
【0090】
(第2実施形態)
第1実施形態における制御処理の一部を変更してもよい。制御処理の一部を変更した第2実施形態について図14を参照して説明する。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、制御処理は、制御装置50(のCPU)がROMに記憶されているプログラムを実施することにより、実施される。なお、第2実施形態における制御装置50の各種機能(電流指令部201、dq変換部202、d軸電流フィードバック制御部203、q軸電流フィードバック制御部204、2相⇒3相変換部205、操作信号生成部106、弱め磁束制御部110)は、制御装置50(のCPU)がROMに記憶されているプログラムを実施することにより、実現される。制御装置50により実現される各種機能の全て及び一部は、ハードウェア的に実現されてもよい。
【0091】
図14に、第2実施形態における制御処理を示す。まず、第2実施形態のdq変換部202について説明する。
【0092】
dq変換部202は、相ごとに設けられた電流センサによる3相(U、V、W相)それぞれの電流検出値(各相電流)を、直交2次元回転座標系の成分であるd軸電流とq軸電流とに変換する。このとき、dq変換部202は、電圧位相差「δv」を補正するように、各相電流を第2のdq座標系におけるd軸電流「Id1´」「Id2´」と第2のdq座標系におけるq軸電流「Iq1´」「Iq2´」に変換する。具体的には、下記数式(27)(28)に示すようにして、変換する。
【数11】
【0093】
なお、「Id1´」は、第2のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのd軸電流(電流検出値)であり、「Iq1´」は、第2のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのq軸電流(電流検出値)である。また、「Id2´」は、第2のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのd軸電流(電流検出値)であり、「Iq2´」は、第2のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのq軸電流(電流検出値)である。また、「δv」は、第1の固定子巻線32aに対する第2の固定子巻線32bの電圧位相差であり、第2実施形態においては、図11及び図12に示すように、電流位相差が「20°」であり、合算位相差が「80°」であるため、電圧位相差「δv」は、「-12°」である。
【0094】
数式(27)(28)に示すようにして変換することにより、電圧位相差を補正しているため、Id1´≠Id2´となり、Iq1´≠Iq2´となる。なお、電圧位相差を補正するように各相電流を、d軸電流とq軸電流とに変換することを、各相電流を第2のdq軸座標系に変換すると示す。図14では、「UVW」⇒「dqII」と示す。
【0095】
図14に示すように、第2実施形態の電流指令部201は、第1実施形態と同様にして、d軸の電流指令値Id*とq軸の電流指令値Iq*とを設定する。なお、d軸の電流指令値Id*とq軸の電流指令値Iq*は、それぞれ第1のdq軸座標系における値である。
【0096】
そして、電流座標変換部211は、d軸の電流指令値Id*とq軸の電流指令値Iq*を取得し、第2のdq軸座標系へ変換する。具体的には、下記数式(29)(30)に示すようにして、変換する。なお、第2のdq軸座標系では、Id1´*≠Id2´*となり、Iq1´*≠Iq2´*となるため、第1の固定子巻線32aと第2の固定子巻線32bとで別々に算出する。
【数12】
【0097】
なお、「Id1*」は、第1のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのd軸電流指令値であり、「Iq1*」は、第1のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのq軸電流指令値である。「Id2*」は、第1のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのd軸電流指令値であり、「Iq2*」は、第1のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのq軸電流指令値である。「Id1´*」は、第2のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのd軸電流指令値であり、「Iq1´*」は、第2のdq軸座標系における第1の固定子巻線32aのq軸電流指令値である。「Id2*´」は、第2のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのd軸電流指令値であり、「Iq2*´」は、第2のdq軸座標系における第2の固定子巻線32bのq軸電流指令値である。また、「β」は、前述同様、電流位相差であり、第1実施形態においては、「20°」である。「δv」は、電圧位相差である。
【0098】
d軸電流フィードバック制御部203は、d軸電流Id1´,Id2´をd軸の電流指令値Id1´*,Id2´*にフィードバック制御するための操作量として、上記d軸電流Id1´,Id2´とd軸電流指令値Id1´*,Id2´*との偏差量にPI(Proportional-Integral)ゲインを施して補正指令量、すなわち、d軸の指令電圧Vd1´,Vd2´を算出する。「Vd1´」「Vd2´」は、それぞれ第2のdq軸座標系におけるd軸の指令電圧(d軸電圧)である。
【0099】
なお、第2実施形態では、Id1´*≠Id2´*となるため、第1実施形態とは異なり、第1の固定子巻線32aのd軸電流と、第2の固定子巻線32bのd軸電流をそれぞれ制御する必要がある。なお、各系統の電流の和と差を取って制御してもよい。
【0100】
また、制御装置50によるq軸電流フィードバック制御部204は、q軸電流Iq1´,Iq2´をq軸の電流指令値Iq1´*,Iq2´*にフィードバック制御するための操作量として、上記q軸電流Iq1´,Iq2´とq軸電流指令値Iq1´*,Iq2´*との偏差量にPIゲインを施して補正指令量、すなわち、q軸の指令電圧Vq1´,Vq2´を算出する。「Vq1´」「Vq2´」は、それぞれ第2のdq軸座標系におけるq軸の指令電圧(q軸電圧)である。
【0101】
なお、第2実施形態では、Iq1´≠Iq2´となるため、第1実施形態とは異なり、第1の固定子巻線32aのq軸電流と、第2の固定子巻線32bのq軸電流をそれぞれ制御する必要がある。なお、各系統の電流の和と差を取って制御してもよい。
【0102】
制御装置50による2相⇒3相変換部205は、第2のdq軸座標系におけるd軸及びq軸の指令電圧Vd1´,Vq1´,Vd2´,Vq2´を、U相、V相及びW相の指令電圧に変換する。図14では、「dqII」⇒「UVW」と示す。なお、U相電圧、V相電圧及びW相電圧から、第2のdq軸座標系におけるd軸電圧及びq軸電圧に変換する数式は、数式(31)(32)に示すとおりである。2相⇒3相変換部205は、この逆変換を実施して、d軸及びq軸の指令電圧Vd1´,Vq1´,Vd2´,Vq2´を、U相、V相及びW相の指令電圧に変換する。つまり、第2のdq軸座標系から3相座標系に変換する。
【数13】
【0103】
なお、「δv」は、電圧位相差であり、第2実施形態においては、電圧位相差「δv」は、「-12°」である。
【0104】
数式(31)(32)に示すようにして変換することにより、電圧位相差を補正しているため、第2のdq軸座標系では、Vd1´=Vd2´となり、Vq1´=Vq2´となる。電圧位相差を補正するように各相電圧を、d軸電圧とq軸電圧とに変換することを、各相電圧を第2のdq軸座標系に変換すると示す。
【0105】
操作信号生成部106及びドライバ107は、第1実施形態と同様であるため、以降の説明は省略する。
【0106】
次に、第2実施形態における弱め磁束制御部110について説明する。上述したように、d軸電流フィードバック制御部203及びq軸電流フィードバック制御部204は、第2のdq軸座標系で演算処理し、q軸電圧Vq1´,Vq2´を算出している。
【0107】
このため、第2実施形態においても弱め磁束制御部110は、第2のdq軸座標系のq軸電圧(Vq1´又はVq2´)を入力するため、第1実施形態と同様にして、q軸電圧(Vq1´又はVq2´)弱め界磁電流ΔId(負のd軸電流)を算出する。以降の説明は、第1実施形態と同様である。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
(第3実施形態)
第1実施形態における制御処理の一部を変更してもよい。制御処理の一部を変更した第3実施形態について図15を参照して説明する。
【0109】
第3実施形態では、電圧座標変換部111の代わりに、絶対値算出部311を設けている。絶対値算出部311は、制御装置50(のCPU)がROMに記憶されているプログラムを実施することにより、実現される。なお、絶対値算出部311は、ハードウェア的に実現されてもよい。
【0110】
制御装置50である絶対値算出部311は、d軸電流フィードバック制御部103及びq軸電流フィードバック制御部104から、d軸の指令電圧Vd1及びq軸の指令電圧Vq1(第1のdq軸座標系の指令電圧)を取得し、下記数式(33)から、固定子巻線32における誘起電圧の絶対値Vt1を算出する。なお、d軸の指令電圧Vd2及びq軸の指令電圧Vq2(第1のdq軸座標系の指令電圧)を取得し、下記数式(34)から、誘起電圧の絶対値Vt2を算出してもよい。なお、絶対値Vt1,Vt2は、モータ10の端子電圧Vtに相当する。
【数14】
【0111】
そして、絶対値とすることにより、位相のずれを考慮しなくてよくなり、Vt1=Vt2となる。このため、制御装置50である弱め磁束制御部310は、算出した絶対値Vt1(又はVt2)が上限値Vmaxを超えないように、弱め界磁電流ΔId(負のd軸電流)を決定する。なお、弱め界磁電流ΔIdは、第1のdq軸座標系における値となっている。すなわち、弱め磁束制御部310は、絶対値Vt1(又はVt2)を監視して、算出した絶対値Vt1(又はVt2)が上限値Vmaxを超えないように、回転速度ω(動作回転数)に応じて弱め界磁電流ΔIdを決定する。
【0112】
そして、前述したように、電流指令部101は、トルク指令値、弱め磁束制御部110により入力した弱め界磁電流ΔId、及び回転速度ωなどに基づいて、d軸の電流指令値とq軸の電流指令値とを設定する。以降の流れは前述したとおりであるため省略する。そして、第3実施形態の構成によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
(第4実施形態)
第1実施形態~第3実施形態の各実施形態の構成の一部を以下に示すように変更してもよい。上記各実施形態の構成の一部を変更した第4実施形態について説明する。
【0114】
上記実施形態では、合算位相差を80度としたが、第4実施形態では、合算位相差を40度としている。すなわち、第4実施形態では、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が40度となるように、各第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力に対して、第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力の合算位相差が、40度となるように設定されている。なお、40度とすることが好ましいが、32~48度の範囲内で変更してもよい。
【0115】
このようにする場合、各相の部分巻線の配置は、図16及び図17に示すようになる。ここで、ティースT9に設けられるコイル体Ucを例示して、合算位相差が40度となることについて説明する。
【0116】
図16に示すように、ティースT9に設けられるコイル体Ucは、部分巻線-W12/+U22により構成されている。部分巻線-W12の起磁力Fw1bと、部分巻線+U22の起磁力Fu2aは、数式(10)及び数式(3)に示すとおりである。これらをベクトル図で表すと、図18のようになる。そして、部分巻線-W12の起磁力Fw1bと部分巻線+U22の起磁力Fu2aとを合算すると、数式(35)に示すようになる。
【数15】
【0117】
なお、数式(35)では、部分巻線-W12の巻回数と、部分巻線+U22の巻回数は、共にNとしている。数式(35)に示すように、ティースT9に部分巻線-W12及び部分巻線+U22を巻回することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対して位相差(合算位相差)が40度となるコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力を実現することができる。
【0118】
ところで、数式(35)に示すように、起磁力は、部分巻線の巻回数に比例している。このため、各部分巻線の巻回数を適切に設定しなければ、各コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcとの間で、起磁力の振幅が揃わなくなる。
【0119】
そこで、第4実施形態では、コイル体Ua,Va,Wa及びコイル体Ub,Vb,Wbの巻回数を共に同じ巻回数「Na」とし、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの巻回数及び第2の固定子巻線32bの巻回数を「Nb」とする場合に、1.8≦Na/Nb≦2.0の関係を満たすように、巻回数「Na」及び「Nb」が設定されている。Na/Nbが1.88に近づくような値となることが好ましく、本実施形態では、Na:Nbを19:10の比率(Na/Nbが1.9)となるように巻回数を設定している。
【0120】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「20°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「34°」となることがわかった。このため、上記実施形態のモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「34°」として座標変換を実施する。
【0121】
以上、第4実施形態の構成によれば、以下の効果を有する。
【0122】
コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差、及びコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差を、20度を含む所定の位相範囲内となるようにした。具体的には、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力に対して、当該第3ティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力の合算位相差が、40度となるように設定した。つまり、合算位相差が40度となるように設定した。これにより、数式(15)(16)(35)に示すように、トルクの6次又は12次高調波成分を打消し、トルクリプルを抑制することが可能となる。
【0123】
また、1.8≦Na/Nb≦2.0の関係を満たすように、各巻回数を設定した。本実施形態では、Na:Nbを19:10の比率(Na/Nbが1.9)となるように巻回数を設定した。これにより、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力の振幅を同程度にすることができ、トルクリプルを抑制することができる。
【0124】
モータ10は、磁極数を「14」とし、スロット35の数を「18」とした。すなわち、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)として、かつ、スロット数を18×mとした。これにより、第1実施形態と同様に、軸心を中心として、電磁力のバランスを取ることができる。
【0125】
(第5実施形態)
第1実施形態~第3実施形態では、第1のインバータ回路51と、第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、電気角で20度としたが、第5実施形態では、40度としている。つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力との各位相差は、40度ということとなる。
【0126】
このため、第5実施形態では、数式(13),(14)において、第1項は、コイル体Ua,Va,Waに基づく成分に対応し、第2項は、コイル体Uc,Vc,Wcに基づく成分に対応し、コイル体Ub,Vb,Wbに基づく成分に対応する。
【0127】
そして、第3実施形態では、「λ1」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ucの起磁力の位相差を示し、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vcの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wcの起磁力の位相差を示す。同様に、「λ2」は、U相においては、コイル体Uaの起磁力に対するコイル体Ubの起磁力の位相差を示し、V相においては、コイル体Vaの起磁力に対するコイル体Vbの起磁力の位相差を示し、W相においては、コイル体Waの起磁力に対するコイル体Wbの起磁力の位相差を示す。また、数式(13),(14)において、「Ta」は、コイル体Ua,Va,Waの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。「Tb」は、コイル体Uc,Vc,Wcの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。「Tc」は、コイル体Ub,Vb,Wbの巻回数や電流の振幅に比例する定数である。
【0128】
したがって、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差が、20度となるようにすれば、数式(15)、(16)により、トルクリプルを抑制することができるといえる。
【0129】
つまり、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力との各位相差と、コイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度となるようにすればよい。なお、位相差は、20度が望ましいが、20度を含む所定の位相範囲(例えば、15~25度の範囲)としてもよく、この場合でもトルクリプルの抑制効果を得ることができる。
【0130】
そこで、第5実施形態では、各第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との位相差が、電気角で72~88度の範囲となるように設定されている。つまり、合算位相差が電気角で72~88度の範囲となるように設定されている。第3実施形態でも第1実施形態と同様に、合算位相差を80度とすることが望ましい。
【0131】
具体的には、図19に示すように、各ティースT1~T18に、部分巻線を配置している。このように構成することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力との各位相差と、コイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度とすることができる。また、第1実施形態と同様に、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力とを揃えるため、Na:Nbを3:2の比率(Na/Nbが1.5)となるように巻回数を設定している。
【0132】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「80°」とする場合、電圧位相差「δv」が「72°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「40°」とし、電圧位相差「δv」を「72°」として座標変換を実施する。
【0133】
以上のように構成することにより、第5実施形態は、第1実施形態~第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0134】
(第6実施形態)
第1実施形態~第3実施形態では、第1のインバータ回路51と、第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、電気角で20度としたが、第6実施形態では、インバータ回路51,52の電流位相差「β」を40度とするとともに、合算位相差を、40度としている。つまり、各第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との位相差を、40度となるように設定している。なお、40度とすることが好ましいが、32~48度の範囲内で変更してもよい。
【0135】
具体的には、図20に示すように、各ティースT1~T18に、部分巻線を配置している。このように構成することにより、コイル体Ua,Va,Waの起磁力に対するコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力との各位相差と、コイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対するコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差とを、それぞれ20度とすることができる。また、第2実施形態と同様の理由から、コイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力とを揃えるため、Na:Nbを19:10の比率(Na/Nbが1.9)となるように巻回数を設定している。
【0136】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「26°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「40°」とし、電圧位相差「δv」を「26°」として座標変換を実施する。
【0137】
以上により、第6実施形態は、第1実施形態~第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0138】
(他の実施形態)
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。
【0139】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「20°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「80°」とする場合、電圧位相差「δv」が「-12°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「-12°」として座標変換を実施すればよい。
【0140】
この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。図21に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U12は、周方向に隣接する第1ティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
【0141】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+W21は、周方向に隣接する第2ティースであるティースT3に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-W22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0142】
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。
【0143】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「20°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「34°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「34°」として座標変換を実施すればよい。
【0144】
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。
【0145】
この場合、図21に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+V11は、周方向に隣接する第1ティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線-V12と接続することが可能となる。
【0146】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+U22は、周方向に隣接する第2ティースであるティースT2に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0147】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「80°」とする場合、電圧位相差「δv」が「72°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「40°」とし、電圧位相差「δv」を「72°」として座標変換を実施すればよい。
【0148】
・上記実施形態において、磁極数を「22」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図21に示す。
【0149】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「26°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「40°」とし、電圧位相差「δv」を「26°」として座標変換を実施すればよい。
【0150】
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
【0151】
この場合、図22に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+V11は、周方向に2つ隣の第1ティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+V12と接続することが可能となる。
【0152】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21は、周方向に2つ隣の第2ティースであるティースT18に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-U24と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0153】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「20°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「80°」とする場合、電圧位相差「δv」が「-12°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「-12°」として座標変換を実施すればよい。
【0154】
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
【0155】
この場合、図22に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U12は、周方向に隣接する第1ティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
【0156】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+V21は、周方向に隣接する第2ティースであるティースT3に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-V22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0157】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「20°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「34°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「34°」として座標変換を実施すればよい。
【0158】
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
【0159】
この場合、図22に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+U12は、周方向に2つ隣の第1ティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
【0160】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+W21は、周方向に2つ隣の第2ティースであるティースT5に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線+W22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0161】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「80°」とする場合、電圧位相差「δv」が「72°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「72°」として座標変換を実施すればよい。
【0162】
・上記実施形態において、磁極数を「16」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図22に示す。
【0163】
この場合、図22に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-V11は、周方向に隣接する第1ティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+V12と接続することが可能となる。
【0164】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-V22は、周方向に隣接する第2ティースであるティースT2に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-V21と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0165】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「26°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「40°」とし、電圧位相差「δv」を「26°」として座標変換を実施すればよい。
【0166】
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図23に示す。
【0167】
この場合、図23に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+U12は、周方向に2つ隣の第1ティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
【0168】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-W21は、周方向に2つ隣の第2ティースであるティースT5に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-W22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0169】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「20°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「80°」とする場合、電圧位相差「δv」が「-12°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「-12°」として座標変換を実施すればよい。
【0170】
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「20度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図23に示す。
【0171】
この場合、図23に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-W11は、周方向に隣接する第1ティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+W12と接続することが可能となる。
【0172】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT3に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+U22は、周方向に隣接する第2ティースであるティースT2に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0173】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「20°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「34°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「20°」とし、電圧位相差「δv」を「34°」として座標変換を実施すればよい。
【0174】
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「80度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図23に示す。
【0175】
この場合、図23に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線+W11は、周方向に2つ隣の第1ティースであるティースT4に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+W12と接続することが可能となる。
【0176】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に2つ隣のティースT1~T18に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線+V21は、周方向に2つ隣の第2ティースであるティースT18に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線+V24と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0177】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「80°」とする場合、電圧位相差「δv」が「72°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「40°」とし、電圧位相差「δv」を「72°」として座標変換を実施すればよい。
【0178】
・上記実施形態において、磁極数を「20」とし、スロット数を「18」とし、かつ、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」を、「40度」とし、合算位相差を「40度」としてもよい。この場合における部分巻線の配置の一例を図23に示す。
【0179】
この場合、図23に示すように、第3ティースに巻回された第1の固定子巻線32aを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち一方に巻回される第1の固定子巻線32aと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第1の固定子巻線32aの部分巻線-U12は、周方向に隣接する第1ティースであるティースT1に巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線+U11と接続することが可能となる。
【0180】
同様に、第3ティースに巻回された第2の固定子巻線32bを、周方向に隣接するティースT1~T18のうち他方に巻回される第2の固定子巻線32bと接続することが可能となる。例えば、この例における第3ティースであるティースT2に巻回された第2の固定子巻線32bの部分巻線-U21は、周方向に隣接する第2ティースであるティースT3に巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線-U22と接続することが可能となる。これにより、コイルエンドにおいて、スロット35間を接続するための渡り線を短くすることができ、接続が容易となり、また、小型化することが可能となる。
【0181】
また、図12に示すように、電流位相差「β」を「40°」とし、起磁力の位相差(合算位相差)を「40°」とする場合、電圧位相差「δv」が「26°」となることがわかった。このため、上記第1実施形態~第3実施形態におけるモータ制御を実施する場合、電流位相差「β」を「40°」とし、電圧位相差「δv」を「26°」として座標変換を実施すればよい。
【0182】
・上記実施形態において、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)とし、かつ、スロット数が18×mとしてもよい。また、磁極数を(18±2)×n(nは1以上の整数)とし、かつ、スロット数を18×nとしてもよい。なお、磁極数を(18±4)×m(mは1以上の整数)とし、かつ、スロット数が18×mとした場合、図9において前述したように、90度間隔毎に、電磁力が大きくなるため、バランスを取ることができ、騒音、振動を抑制することができる。
【0183】
・上記実施形態において、第1のインバータ回路51と第2のインバータ回路52との電流位相差「β」は、「20度」又は「40度」であることが好ましいが、それぞれ15~25度の範囲、及び35~45度の範囲内で変更してもよい。
【0184】
・上記実施形態において、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aと、第2の固定子巻線32bの合算位相差は、「40度」又は「80度」であることが好ましいが、それぞれ32~48度の範囲、及び72~88度の範囲内で変更してもよい。
【0185】
・上記実施形態において、モータ10は、ラジアルギャップモータに限らず、例えば、アキシャルギャップモータでもよい。また、モータ10は、リラクタンスモータ、誘導モータであってもよい。
【0186】
・上記実施形態及び上記変形例では、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線により発生する起磁力と当該第3ティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線により発生する起磁力との合算位相差(起磁力合算位相差)が所定の範囲内となるように設定することにより、トルクリプルを抑制した。この起磁力合算位相差の代わりに、第3ティースに巻回される第1の固定子巻線32aの部分巻線に流れる電流と当該第3ティースに巻回される第2の固定子巻線32bの部分巻線に流れる電流との合算位相差(電流合算位相差)を用いてもよい。
【0187】
なお、部分巻線に流れる電流の位相は、部分巻線の巻回方向により、位相が180度ずれることに留意する必要がある。つまり、同じU相の部分巻線であっても、「+」の部分巻線に流れる電流と、「-」の部分巻線に流れる電流とは位相を180度ずらして、合算する電流の位相差を考える必要がある。
【0188】
例えば、インバータの電流位相差「β」が20度であり、U相の部分巻線であって、かつ、「+」の部分巻線に流れる電流の位相を基準の位相「θ」とする場合、V相の部分巻線であって、「-」の部分巻線に流れる電流の位相は、「θ-120(V相による位相のずれ)-20(電流位相差βに基づくずれ)-180(巻回方向による位相のずれ)」=「θ-320」となる。
【0189】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0190】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)であって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備える回転電機において、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定する電流指令部(101)と、
前記第1の固定子巻線における各相の電圧と前記第2の固定子巻線における各相の電圧との電圧位相差(δv)を補正して3相座標系から座標変換される第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧(Vq´)に基づいて、弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定する弱め磁束制御部(110)と、を備え、
前記電流指令部は、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸の電流指令値を決定する回転電機。
[構成2]
各相電流を取得し、取得した各相電流を座標変換して第1のdq座標系における検出電流を取得する電流変換部(102)と、
第1のdq座標系において、電流指令値と検出電流に基づいて電流フィードバック制御を行い、第1のdq座標系におけるd軸の指令電圧及びq軸の指令電圧を決定する指令電圧決定部(103、104)と、
第1のdq座標系におけるd軸の指令電圧及びq軸の指令電圧を、第2のdq座標系におけるd軸の指令電圧及びq軸の指令電圧に変換する電圧座標変換部(111)と、を備え、
前記弱め磁束制御部は、前記電圧座標変換部から第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧を取得する構成1に記載の回転電機。
[構成3]
各相電流を取得し、取得した各相電流を座標変換して第2のdq座標系における検出電流を取得する電流変換部(202)と、
第1のdq座標系におけるdq軸の電流指令値を、第2のdq座標系におけるdq軸の電流指令値に変換する電流座標変換部(211)と、
第2のdq座標系において、電流指令値と検出電流に基づいて電流フィードバック制御を行って第2のdq座標系におけるdq軸の指令電圧を決定する指令電圧決定部(203,204)と、
前記弱め磁束制御部は、前記指令電圧決定部から第2のdq座標系におけるq軸電圧を取得する構成1に記載の回転電機。
[構成4]
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)であって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備える回転電機において、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定する電流指令部(101)と、
前記第1のdq座標系におけるd軸の指令電圧(Vd)とq軸の指令電圧(Vq)の2乗和に基づいて前記固定子巻線の誘起電圧の絶対値を算出する絶対値算出部(311)と、
前記絶対値に基づいて弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定する弱め磁束制御部(310)と、を備え、
前記電流指令部は、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸電流の電流指令値を決定する回転電機。
[構成5]
各相のコイル体Ua,Va,Waの起磁力に対する各相のコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差と、各相のコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力に対する各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差と、が電気角で20度を含む所定の位相範囲内となるように、
又は、各相のコイル体Ua,Va,Waの起磁力に対する各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力の各位相差と、各相のコイル体Ub,Vb,Wbの起磁力に対する各相のコイル体Uc,Vc,Wcの起磁力の各位相差と、が電気角で20度を含む所定の位相範囲内となるように、前記第3ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の部分巻線により発生する起磁力と当該第3ティースに巻回される前記第2の固定子巻線の部分巻線により発生する起磁力との合算位相差、若しくは、前記第3ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の部分巻線に流れる電流と当該第3ティースに巻回される前記第2の固定子巻線の部分巻線に流れる電流との合算位相差が設定されている構成1~4のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成6]
各相のコイル体Ua,Va,Wa,Ub,Vb,Wb,Uc,Vc,Wcの起磁力が所定の振幅範囲内となるように、前記第1ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の巻回数、又は前記第2ティースに巻回される前記第2の固定子巻線の巻回数に対して、前記第3ティースに巻回される前記第1の固定子巻線の巻回数及び前記第2の固定子巻線の巻回数を異ならせている構成5に記載の回転電機。
[構成7]
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)の制御装置(50)が実施する制御プログラムであって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記回転電機は、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備え、
前記制御装置に、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定させる電流指令処理(101)と、
前記第1の固定子巻線における各相の電圧と前記第2の固定子巻線における各相の電圧との電圧位相差(δv)を補正して3相座標系から座標変換される第2のdq座標系におけるq軸の指令電圧(Vq´)に基づいて、弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定させる弱め磁束制御処理(110)と、を実施させ、
前記電流指令部は、前記弱め磁束制御部から入力した前記弱め界磁電流を考慮して、d軸の電流指令値を決定させる制御プログラム。
[構成8]
周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(40)と、多相の固定子巻線(32)、及び周方向に所定間隔で複数設けられ、前記固定子巻線が巻回されるティース(T1~T18)を有する固定子鉄心を有する固定子(30)と、を備える回転電機(10)の制御装置(50)が実施する制御プログラムであって、
前記固定子巻線には、第1のインバータ(51)から3相の電流が供給される第1の固定子巻線(32a)と、第2のインバータ(52)から3相の電流が供給される第2の固定子巻線(32b)と、があり、
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流とは、それぞれ所定の電流位相差(β)を有し、
前記制御装置は、
前記3相のうちU相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Uaと、
前記3相のうちV相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vaと、
前記3相のうちW相の前記第1の固定子巻線が第1ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Waと、
前記U相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ubと、
前記V相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vbと、
前記W相の前記第2の固定子巻線が第2ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wbと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるU相のコイル体Ucと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるV相のコイル体Vcと、
前記3相のうちいずれか1相の前記第1の固定子巻線及び前記3相のうちいずれか1相の前記第2の固定子巻線が第3ティースに巻回されることにより形成されるW相のコイル体Wcと、を備え、
前記制御装置に、
前記電流位相差を補正して3相座標系から座標変換される第1のdq座標系における電流指令値を決定させる電流指令処理(101)と、
前記第1のdq座標系におけるd軸電圧(Vd)とq軸電圧(Vq)の2乗和に基づいて誘起電圧の絶対値を算出させる絶対値算出処理(311)と、
前記絶対値に基づいて弱め磁束制御における弱め界磁電流(ΔId)を決定させる弱め磁束制御処理(310)と、を実施させ、
前記電流指令処理では、前記弱め磁束制御処理で決定された前記弱め界磁電流を考慮して、d軸電流の電流指令値を決定させる制御プログラム。
[構成9]
前記合算位相差が、電気角で72~88度の範囲で設定されている構成1~5のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成10]
前記回転子の磁極数が(18±4)×m(mは1以上の整数)であって、かつ、前記ティース間のスロット数が18×mである構成9に記載の回転電機。
[構成11]
前記回転子の磁極数が(18±2)×n(nは1以上の整数)であって、かつ、前記ティース間のスロット数が18×nである構成9に記載の回転電機。
[構成12]
前記回転子の磁極数を「14」又は「22」とし、前記ティース間のスロット数を「18」とし、かつ、前記合算位相差を、電気角で80度とした構成1~5のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成13]
前記回転子の磁極数を「16」又は「20」とし、前記ティース間のスロット数を「18」とし、かつ、前記合算位相差を、電気角で80度とした構成1~5のうちいずれかに項に記載の回転電機。
[構成14]
前記第1ティースに巻回される第1の固定子巻線の巻回数及び前記第2ティースに巻回される第2の固定子巻線の巻回数をそれぞれ「Na」とし、前記第3ティースに巻回される第1の固定子巻線の巻回数及び前記第3ティースに巻回される第2の固定子巻線の巻回数をそれぞれ「Nb」とする場合に、1.4≦Na/Nb≦1.6の関係を満たすように、各巻回数が設定されている構成9~13のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成15]
前記合算位相差が、電気角で32~48度の範囲で設定されている構成1~5のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成16]
前記回転子の磁極数が(18±4)×m(mは1以上の整数)であって、かつ、前記ティース間のスロット数が18×mである構成15に記載の回転電機。
[構成17]
前記回転子の磁極数が(18±2)×n(nは1以上の整数)であって、かつ、前記ティース間のスロット数が18×nである構成15に記載の回転電機。
[構成18]
前記回転子の磁極数を「16」又は「20」とし、前記ティース間のスロット数を「18」とし、かつ、前記合算位相差を、電気角で40度とした構成1~5のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成19]
前記第1ティースに巻回される第1の固定子巻線の巻回数及び前記第2ティースに巻回される第2の固定子巻線の巻回数をそれぞれ「Na」とし、前記第3ティースに巻回される第1の固定子巻線の巻回数及び前記第3ティースに巻回される第2の固定子巻線の巻回数をそれぞれ「Nb」とする場合に、1.8≦Na/Nb≦2.0の関係を満たすように、各巻回数が設定されている構成15~18のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成20]
前記第1のインバータから供給される3相の電流と、前記第2のインバータから供給される3相の電流との電流位相差は、15~25度の範囲内、又は35~45度の範囲内で設定される構成1~5,9~19のうちいずれかに記載の回転電機。
[構成21]
前記回転電機の回転軸(11)には、角度センサ(12)が設けられており、
前記第1のインバータに接続される前記第1の固定子巻線の引出線(A1,B1,C1)、及び前記第2のインバータに接続される前記第2の固定子巻線の引出線(A2,B2,C2)は、前記回転軸を中心として各相が対称となるように配置されている構成1~5,9~20のうちいずれかに記載の回転電機。
【符号の説明】
【0191】
10…モータ、30…固定子、32…固定子巻線、32a…第1の固定子巻線、32b…第2の固定子巻線、40…回転子、51…第1のインバータ回路、52…第2のインバータ回路、101…電流指令部、102…dq変換部、103…d軸電流フィードバック制御部、104…q軸電流フィードバック制御部、110…弱め磁束制御部、111…電圧座標変換部、201…電流指令部、202…dq変換部、203…d軸電流フィードバック制御部、204…q軸電流フィードバック制御部、211…電流変換部、310…弱め磁束制御部、311…絶対値算出部、T1~T18…ティース、β…電流位相差、δv…電圧位相差、ΔId…弱め界磁電流。
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