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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011222
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】熱管理装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240118BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240118BHJP
【FI】
B60H1/22 611D
B60L58/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113053
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 吉男
(72)【発明者】
【氏名】古川 智
(72)【発明者】
【氏名】大村 充世
【テーマコード(参考)】
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211DA42
3L211DA50
3L211EA50
3L211EA90
3L211GA43
3L211GA49
3L211GA93
3L211GA99
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD09
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】バッテリを加熱可能な車両を提案する。
【解決手段】熱管理装置は、第1熱媒体が循環する第1熱回路と、第2熱媒体が循環する第2熱回路と、制御部と、を備える。第1熱回路は、第1ラジエータと、バッテリと、を備えている。第2熱回路は、第2熱媒体を加熱するヒータと、第2熱媒体の温度センサと、第1経路と、第1経路上に配置されており第1熱媒体と第2熱媒体とで熱交換が可能な第2ラジエータと、第1経路と並列な第2経路と、第2経路上の暖房器と、第1および第2経路へ第2熱媒体を分流する流量調整部と、を備えている。制御部は、バッテリ加熱要求および暖房要求が要求された場合に、第2熱媒体を加熱し、第2熱媒体を第1および第2経路へ分流する。分流処理では、第2熱媒体の目標温度に対する測定温度の不足値が、第1しきい値よりも大きいときに、第2経路の第2分流割合が第1経路の第1分流割合よりも大きくされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱媒体が循環する第1熱回路と、第2熱媒体が循環する第2熱回路と、制御部と、を備え、車両に搭載される熱管理装置であって、
前記第1熱回路は、
第1ラジエータと、
バッテリと、
を備えており、
前記第2熱回路は、
前記第2熱媒体を加熱するヒータと、
前記第2熱媒体の温度を測定し測定温度を出力可能に構成されている温度センサと、
第1経路と、
前記第1経路上に配置されている第2ラジエータであって、前記第1ラジエータを流れる前記第1熱媒体と前記第2ラジエータを流れる前記第2熱媒体とが熱交換可能に構成されている、前記第2ラジエータと、
前記第1経路と並列な第2経路と、
前記第2経路上に配置されており、前記第2熱媒体を熱源として前記車両の室内を暖房する暖房器と、
前記第1経路および前記第2経路へ前記第2熱媒体を分流することが可能に構成されている流量調整部と、
を備えており、
前記制御部は、バッテリ加熱要求および暖房要求が要求された場合に、前記ヒータによって前記第2熱媒体を加熱するとともに、前記流量調整部によって前記第2熱媒体を前記第1経路および前記第2経路へ分流する分流処理を実行し、
前記分流処理では、前記第2熱媒体の目標温度に対する前記測定温度の不足値が、予め定められた第1しきい値よりも大きいときに、前記第2経路に分流する第2分流割合が前記第1経路に分流する第1分流割合よりも大きくされる、
熱管理装置。
【請求項2】
前記第1しきい値よりも小さい第2しきい値が予め定められており、
前記分流処理では、
前記不足値が前記第1しきい値より大きいときには、前記第2分流割合が第1固定値に制御され、
前記不足値が前記第2しきい値より小さいときには、前記第2分流割合が第1固定値よりも小さい第2固定値に制御され、
前記不足値が前記第1しきい値より小さく前記第2しきい値より大きいときには、前記第2分流割合が、前記不足値が小さくなることに応じて前記第1固定値から前記第2固定値まで単純減少するように制御される、請求項1に記載の熱管理装置。
【請求項3】
前記暖房器の暖房負荷が高くなるほど、前記第1固定値が大きく設定される、請求項2に記載の熱管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2熱媒体の前記目標温度を所定温度範囲内で可変に制御することが可能に構成されており、
前記制御部は、前記バッテリ加熱要求および前記暖房要求が要求された場合に、前記目標温度を前記所定温度範囲内の上限値に設定する、請求項1に記載の熱管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、熱管理装置に関する。
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される熱管理装置が開示されている。この熱管理装置は、熱媒体が循環する複数の熱回路(ヒータ回路、バッテリ回路等)を有している。ヒータ回路内の熱媒体をヒータを用いて加熱することで、車室内を暖房することができる。また、ヒータ回路内の熱媒体の熱をバッテリ回路に伝達することで、バッテリを加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-154814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調暖房の要求とバッテリ加熱の要求とが同時に発生した場合には、両要求に対してヒータの能力をどのように分配するのかが問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する熱管理装置は、車両に搭載される。熱管理装置は、第1熱媒体が循環する第1熱回路と、第2熱媒体が循環する第2熱回路と、制御部と、を備える。第1熱回路は、第1ラジエータと、バッテリと、を備えている。第2熱回路は、第2熱媒体を加熱するヒータと、第2熱媒体の温度を測定し測定温度を出力可能に構成されている温度センサと、第1経路と、第1経路上に配置されている第2ラジエータであって、第1ラジエータを流れる第1熱媒体と第2ラジエータを流れる第2熱媒体とが熱交換可能に構成されている、第2ラジエータと、第1経路と並列な第2経路と、第2経路上に配置されており、第2熱媒体を熱源として車両の室内を暖房する暖房器と、第1経路および第2経路へ第2熱媒体を分流することが可能に構成されている流量調整部と、を備えている。制御部は、バッテリ加熱要求および暖房要求が要求された場合に、ヒータによって第2熱媒体を加熱するとともに、流量調整部によって第2熱媒体を第1経路および第2経路へ分流する分流処理を実行する。分流処理では、第2熱媒体の目標温度に対する測定温度の不足値が、予め定められた第1しきい値よりも大きいときに、第2経路に分流する第2分流割合が第1経路に分流する第1分流割合よりも大きくされる。
【0006】
この構成によれば、加熱された第2熱媒体が第1経路に流れることによって、第2熱媒体と第1熱媒体との熱交換によって、第1ラジエータを流れる第1熱媒体を加熱することができる。加熱された第1熱媒体によって、バッテリを加熱することができる。また、加熱された第2熱媒体が第2経路に流れることによって、車両の室内を暖房することができる。そしてバッテリ加熱要求および暖房要求が要求された場合には、加熱された第2熱媒体を第1経路および第2経路へ分流することができるため、バッテリ加熱と暖房とを同時に実行することが可能となる。このとき、第2分流割合を第1分流割合よりも大きくすることによって、バッテリ加熱よりも暖房を優先して実行することができる。ドライバの意志により選択されている暖房要求を、バッテリ加熱要求よりも優先させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】熱管理装置100の回路図。
図2】弁開度の制御態様を示すグラフ。
図3】分流処理における制御の具体例を示すグラフ。
図4】変形例の熱管理装置100aの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する熱管理装置の技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0009】
本明細書が開示する一例の熱管理装置では、第1しきい値よりも小さい第2しきい値が予め定められていてもよい。分流処理では、不足値が第1しきい値より大きいときには、第2分流割合が第1固定値に制御されてもよい。分流処理では、不足値が第2しきい値より小さいときには、第2分流割合が第1固定値よりも小さい第2固定値に制御されてもよい。分流処理では、不足値が第1しきい値より小さく第2しきい値より大きいときには、第2分流割合が、不足値が小さくなることに応じて第1固定値から第2固定値まで単純減少するように制御されてもよい。この構成では、不足値が第1しきい値よりも小さくなることに応じて、除々に第2分流割合を小さくすることができる。これにより、第2熱媒体の測定温度が目標温度に近づくにつれて、除々にバッテリ加熱能力を高めていくことが可能となる。暖房感を維持しながら、ヒータの能力をバッテリ加熱へより多く配分することが可能となる。
【0010】
本明細書が開示する一例の熱管理装置では、暖房器の暖房負荷が高くなるほど、第1固定値が大きく設定されてもよい。この構成によれば、暖房負荷が高くなるほど、バッテリ加熱よりも暖房をより優先することができる。暖房要求に対する応答性を高めることが可能となる。
【0011】
本明細書が開示する一例の熱管理装置では、制御部は、第2熱媒体の目標温度を所定温度範囲内で可変に制御することが可能に構成されていてもよい。制御部は、バッテリ加熱要求および暖房要求が要求された場合に、目標温度を所定温度範囲内の上限値に設定してもよい。この構成によれば、バッテリ加熱と暖房とを同時に実行する場合に、ヒータの能力を最大限に利用することができる。バッテリ加熱量級および暖房要求に対する応答性を高めることが可能となる。
【実施例0012】
(熱管理装置100の構成)
図1に、本実施形態の熱管理装置100の回路図を示す。熱管理装置100は、車両に搭載されている。熱管理装置100は、制御部80、第1熱回路10、第2熱回路20、及び、第3熱回路30を有している。制御部80は、熱管理装置100の各部を制御する。第1熱回路10、第2熱回路20、及び、第3熱回路30のそれぞれの内部に、第1熱媒体、第2熱媒体、第3熱媒体が各々独立して流れる。熱媒体の種類は特に限定されず、例えば、ハイドロフルオロカーボンを用いることができる。
【0013】
制御部80は、エバポレータ63を用いて車室内の空気を冷却する冷房動作を実行することができる。また、制御部80は、ヒータコア74を用いて車室内の空気を加熱する暖房動作を実行することができる。また、制御部80は、バッテリ51、トランスアクスル43、PCU(パワーコントロールユニット)47、及び、SPU(スマートパワーユニット)46を冷却することができる。さらに、制御部80は、バッテリ51、トランスアクスル43、PCU47、及び、SPU46を加熱することができる。
【0014】
第1熱回路10は、低温ラジエータ経路11、バイパス経路12、電気機器経路13、バッテリ経路14、チラー経路15、接続経路16及び17を有している。
【0015】
低温ラジエータ経路11には、低温ラジエータ41が設置されている。低温ラジエータ41は、低温ラジエータ経路11内の第1熱媒体と外気(すなわち、車両の外部の空気)とを熱交換させる。電気機器経路13の下流端は、三方弁42を介してバイパス経路12の上流端と低温ラジエータ経路11の上流端に接続されている。電気機器経路13の上流端は、バイパス経路12の下流端と低温ラジエータ経路11の下流端に接続されている。電気機器経路13には、ポンプ48が設置されている。ポンプ48は、電気機器経路13内の第1熱媒体を下流へ送出する。三方弁42は、電気機器経路13から低温ラジエータ経路11に第1熱媒体が流れる状態と電気機器経路13からバイパス経路12に第1熱媒体が流れる状態との間で、流路を切り換える。
【0016】
電気機器経路13には、SPU46、PCU47、及び、オイルクーラ45が設置されている。SPU46とPCU47は、電気機器経路13内の第1熱媒体との熱交換によって加熱または冷却される。オイルクーラ45には、オイル循環路18が接続されている。オイルクーラ45は、電気機器経路13内の第1熱媒体とオイル循環路18内のオイルとの熱交換によって、オイル循環路18内のオイルを加熱または冷却する。オイル循環路18は、トランスアクスル43の内部を通るように配設されている。トランスアクスル43は、車両の駆動輪を回転させる走行用モータを内蔵している。オイル循環路18には、オイルポンプ44が設置されている。オイルポンプ44は、オイル循環路18内のオイルを循環させる。オイルクーラ45で冷却されたオイルがオイル循環路18を循環すると、トランスアクスル43が内蔵する走行用モータが冷却される。SPU46は、バッテリ51の充放電を制御する。PCU47は、バッテリ51から供給される直流電力を交流電力に変換し、交流電力をトランスアクスル43が内蔵するモータに供給する。
【0017】
チラー経路15の下流端は、三方弁49を介してバッテリ経路14の上流端と接続経路16の上流端に接続されている。チラー経路15の上流端は、バッテリ経路14の下流端と接続経路17の下流端に接続されている。接続経路17の上流端は、低温ラジエータ経路11によって接続経路16の下流端に接続されている。チラー経路15には、ポンプ53が設置されている。ポンプ53は、チラー経路15内の第1熱媒体を下流へ送出する。三方弁49は、チラー経路15からバッテリ経路14に第1熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に第1熱媒体が流れる状態との間で流路を切り換える。
【0018】
チラー経路15には、チラー52が設置されている。チラー52は、チラー経路15内の第1熱媒体と第3熱回路30内の第3熱媒体との熱交換によって、チラー経路15内の第1熱媒体を冷却する。
【0019】
バッテリ経路14には、バッテリ51が設置されている。バッテリ51は、PCU47に直流電力を供給する。バッテリ51は、バッテリ経路14内の第1熱媒体との熱交換によって、冷却または加熱される。
【0020】
第3熱回路30は、チラー経路22、エバポレータ経路24、及び、コンデンサ経路26を有している。コンデンサ経路26の下流端は、三方弁65を介してチラー経路22の上流端とエバポレータ経路24の上流端に接続されている。コンデンサ経路26の上流端は、チラー経路22の下流端とエバポレータ経路24の下流端に接続されている。コンデンサ経路26には、コンプレッサ66が設置されている。コンプレッサ66は、コンデンサ経路26内の第3熱媒体を加圧しながら下流へ送出する。三方弁65は、コンデンサ経路26からチラー経路22に第3熱媒体が流れる状態と、コンデンサ経路26からエバポレータ経路24に第3熱媒体が流れる状態との間で流路を切り換える。
【0021】
コンデンサ経路26には、コンデンサ67とモジュレータ68が設置されている。コンデンサ67には、高温の気体である第3熱媒体が流入する。コンデンサ67は、コンデンサ経路26内の第3熱媒体と第2熱回路20内の第2熱媒体との熱交換によって、コンデンサ経路26内の第3熱媒体を冷却する。コンデンサ経路26内の第3熱媒体は、コンデンサ67内で冷却されることで凝縮する。したがって、コンデンサ67を通過した第3熱媒体は、低温の液体である。モジュレータ68は、液体である第3熱媒体中から気泡を除去する。
【0022】
チラー経路22には、膨張弁61、及び、チラー52が設置されている。膨張弁61には、モジュレータ68を通過した、低温の液体状の第3熱媒体が流入する。第3熱媒体は、膨張弁61を通過するときに減圧される。したがって、チラー52には、低圧・低温の液体の第3熱媒体が流入する。チラー52は、チラー経路22内の第3熱媒体とチラー経路15内の第1熱媒体との熱交換によって、第3熱媒体を加熱するとともに第1熱媒体を冷却する。チラー52を通過したチラー経路22内の高温の気体状の第3熱媒体は、コンプレッサ66で加圧されて、コンデンサ67へ送られる。
【0023】
エバポレータ経路24には、膨張弁64、エバポレータ63、及び、EPR(エバポレータプレッシャレギュレータ)62が設置されている。膨張弁64には、モジュレータ68を通過した低温の液体状の第3熱媒体が流入する。第3熱媒体は、膨張弁64を通過するときに減圧される。したがって、エバポレータ63には、低圧・低温の液体の第3熱媒体が流入する。エバポレータ63は、エバポレータ経路24内の第3熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、第3熱媒体を加熱するとともに車室内の空気を冷却する。すなわち、エバポレータ63によって、車室内の冷房が実行される。EPR62は、エバポレータ経路24内の第3熱媒体の流量を制御することで、エバポレータ63内の圧力を略一定に制御する。EPR62を通過した第3熱媒体(すなわち、高温の気体である第3熱媒体)は、コンプレッサ66で加圧されて、コンデンサ67へ送られる。
【0024】
第2熱回路20は、コンデンサ経路32、ヒータコア経路34、及び、高温ラジエータ経路36を有している。コンデンサ経路32の下流端は、三方弁73を介してヒータコア経路34の上流端と高温ラジエータ経路36の上流端に接続されている。コンデンサ経路32の上流端は、ヒータコア経路34の下流端と高温ラジエータ経路36の下流端に接続されている。すなわち、コンデンサ経路32に対して、ヒータコア経路34および高温ラジエータ経路36が並列に配置されている。
【0025】
コンデンサ経路32には、ポンプ72およびコンデンサ67が設置されている。ポンプ72は、コンデンサ経路32内の第2熱媒体を下流へ送出する。コンデンサ67は、コンデンサ経路32内の第2熱媒体とコンデンサ経路26内の第3熱媒体との熱交換によって、第2熱媒体を加熱するとともに第3熱媒体を冷却する。
【0026】
ヒータコア経路34には、ヒータ71、温度センサ76、ヒータコア74が設置されている。ヒータ71は、高電圧電気ヒータであり、第2熱媒体を加熱する。温度センサ76は、第2熱媒体の温度を測定し、測定温度を制御部80に出力する。ヒータコア74は、ヒータコア経路34内の第2熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、車室内の空気を加熱(暖房)する。
【0027】
高温ラジエータ経路36には、高温ラジエータ75が設置されている。高温ラジエータ75は、高温ラジエータ経路36内の第2熱媒体と外気との熱交換によって、高温ラジエータ経路36内の第2熱媒体を冷却する。図1の回路図では、図面の見易さを優先して、高温ラジエータ75と低温ラジエータ41とが互いに離れた位置で示されている。しかしながら実際の構造では、低温ラジエータ41と高温ラジエータ75とは、ラジエータユニットとして一体的に配置されている。これにより、低温ラジエータ41を流れる第1熱媒体と、高温ラジエータ75を流れる第2熱媒体とが、熱交換可能に構成されている。
【0028】
三方弁73は、高温ラジエータ経路36およびヒータコア経路34へ第2熱媒体を分流することが可能に構成されている、三方流調弁である。三方弁73によって、高温ラジエータ経路36に分流する第1分流割合と、ヒータコア経路34に分流する第2分流割合とを、可変に制御することができる。本実施例では、三方弁73は、ヒータコア経路34への第2分流割合を制御するための弁を備えている。弁の開度が100%の場合には、第2熱媒体は全てヒータコア経路34へ流れるため、第2分流割合は100%となり、第1分流割合は0%となる。一方、弁の開度が0%の場合には、第2熱媒体は全て高温ラジエータ経路36へ流れるため、第2分流割合は0%となり、第1分流割合は100%となる。弁の開度を0~100%の範囲内で調整することにより、第1分流割合および第2分流割合を所望の値に制御することができる。なお、弁の開度と第2分流割合とは1対1の対応を有するため、本明細書では両者を同一の意味で使用する場合がある。
【0029】
(バッテリ加熱動作および暖房動作)
図1を用いて、バッテリ加熱要求および暖房要求が重複して制御部80に要求された場合における、熱管理装置100の動作を説明する。バッテリ加熱要求は、バッテリ51の温度が基準値以下の温度であるときに要求される。バッテリを加熱することにより、外部充電器からの充電や回生充電時において、入力電流量を大きくすることが可能となる。暖房要求は、ドライバによって不図示のエアコン温度調整ダイアルが操作されることによって要求される。バッテリ加熱要求および暖房要求が重複して要求される状況は、特に限定されない。例えば、車両を外部電源に接続して充電している状況や、車両の始動直後の状況などが挙げられる。また、車両が停止状態であるか走行状態であるかについても、特に限定されない。
【0030】
第2熱回路20の動作を説明する。制御部80は、バッテリ加熱要求および暖房要求が要求された場合には、ヒータ71を動作させることによって第2熱媒体を加熱する。また制御部80は、三方弁73を制御することによって、第2熱媒体を高温ラジエータ経路36およびヒータコア経路34へ分流する分流処理を実行する。これにより、高温ラジエータ経路36を流れる流路FP1、および、ヒータコア経路34を流れる流路FP2が形成される。また制御部80は、温度センサ76の測定温度に基づいて、第2熱媒体が高温ラジエータ経路36に分流する第1分流割合と、第2熱媒体がヒータコア経路34に分流する第2分流割合と、の比率を可変に制御する。当該制御内容については、後述する。
【0031】
第1熱回路10の動作を説明する。制御部80は、ポンプ53を作動させる。また制御部80は、チラー経路15とバッテリ経路14を接続する状態と、チラー経路15と接続経路16を接続する状態と、が交互に成立するように、三方弁49を制御する。したがって、循環流路CP1に第1熱媒体が循環する状態と、循環流路CP2に第1熱媒体が循環する状態とが、交互に切り換えられる。ここで循環流路CP1は、チラー経路15とバッテリ経路14によって構成される流路である。循環流路CP2は、チラー経路15、接続経路16、低温ラジエータ経路11、及び、接続経路17によって構成される流路である。
【0032】
バッテリ加熱動作を説明する。ヒータ71によって加熱された第2熱媒体が高温ラジエータ経路36に流れることによって、高温ラジエータ75に、高温の第2熱媒体が流入する(流路FP1参照)。高温ラジエータ75を流れる第2熱媒体の熱が、低温ラジエータ41を流れる第1熱媒体に伝達される(一点鎖線の矢印A1参照)。第2熱媒体と第1熱媒体との熱交換によって、第1熱媒体を加熱することができる。したがって、循環流路CP2では、低温ラジエータ41によって加熱された高温の第1熱媒体が流れている。三方弁49には、高温の第1熱媒体が到達する。三方弁49が切り換えられて、循環流路CP2に第1熱媒体が循環する状態から循環流路CP1に第1熱媒体が循環する状態に切り換えられると、高温の第1熱媒体がバッテリ経路14に流入し、バッテリ51が加熱される。
【0033】
暖房動作を説明する。ヒータ71によって加熱された第2熱媒体がヒータコア経路34に流れることによって、ヒータコア74に、高温の第2熱媒体が流入する(流路FP2参照)。ヒータコア74は、第2熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、車室内の空気を加熱する。これにより、車室内の暖房が実行される。
【0034】
(三方弁73の分流処理)
図2を用いて、三方弁73の分流処理について説明する。図2は、弁開度の制御態様を示すグラフである。図2の縦軸は、ヒータコア経路34側の弁開度である。図2の横軸は、第2熱媒体の目標温度TWOに対する、測定温度TWの不足値である。目標温度TWOは、暖房負荷に応じて、制御部80によって設定される温度である。暖房負荷は、例えば、エアコン吹き出し口における必要吹き出し温度、室内温度、外気温などに基づいて算出される。測定温度TWは、温度センサ76で測定される、現在の第2熱媒体の温度である。不足値は、目標温度TWOから測定温度TWを減じることで得られる値である。すなわち不足値は、目標温度TWOよりも測定温度TWが低い場合に、正の値となる。
【0035】
制御部80は、目標温度TWOを所定温度範囲内で可変に制御することが可能に構成されている。そして制御部80は、バッテリ加熱要求および暖房要求が重複して要求された場合には、目標温度TWOを所定温度範囲内の上限値に設定する。上限値の設定方法は様々である。例えば、ヒータ71のオーバーヒート温度(例:70℃)が予め定められている場合には、オーバーヒートしないマージン分だけ低い温度(例:65℃)を、上限値としてもよい。この構成によれば、バッテリ加熱と暖房とを同時に実行する場合に、ヒータの能力を最大限に利用することができる。バッテリ加熱量級および暖房要求に対する応答性を高めることが可能となる。
【0036】
不足値には、第1しきい値TH1および第2しきい値TH2が予め定められている。第2しきい値TH2は、第1しきい値TH1よりも小さい値である。図2の例では、第1しきい値TH1は15[℃]とされており、第2しきい値TH2は5[℃]とされている。また弁開度には、第1固定値FV1および第2固定値FV2が予め定められている。第1固定値FV1は、50%よりも大きい値である。すなわち第1固定値FV1は、ヒータコア経路34に分流する第2分流割合が、高温ラジエータ経路36に分流する第1分流割合よりも大きくなるような値とされる。また第2固定値FV2は、第1固定値FV1よりも小さい値である。図2の例では、第1固定値FV1は90[%]とされており、第2固定値FV2は60[%]とされている。
【0037】
分流処理では、不足値が第1しきい値TH1よりも大きいとき(領域R1参照)には、弁開度が第1固定値FV1(90%)とされる。すなわち第2分流割合が、第1固定値FV1に対応する一定値に制御される。また、不足値が第2しきい値TH2より小さいとき(領域R3参照)には、弁開度が第2固定値FV2(60%)とされる。すなわち第2分流割合が、第2固定値FV2に対応する一定値に制御される。また、不足値が第1しきい値TH1より小さく第2しきい値TH2より大きいとき(領域R2参照)には、弁開度が、不足値が小さくなることに応じて第1固定値FV1から第2固定値FV2まで単純減少するように制御される。
【0038】
(分流処理の具体例)
図3を用いて、分流処理における制御の具体例について説明する。図3(A)は、測定温度TWの時間変化を示すグラフである。横軸は時間であり、縦軸は温度である。図3(A)では、目標温度TWOが65[℃]、第1しきい値TH1が15[℃]、第2しきい値TH2が5[℃]である場合を説明する。従って、第1しきい値TH1は50[℃]に対応し、第2しきい値TH2は60[℃]に対応する。図3(B)は、弁開度の時間変化を示すグラフである。横軸は時間であり、縦軸は弁開度である。
【0039】
時刻t0において、車両のイグニションスイッチをオンにする場合を説明する。また時刻t0において、暖房要求およびバッテリ加熱要求が重複して要求される場合を説明する。時刻t0では、目標温度TWOに対する測定温度TWの不足値が35[℃]である。不足値が第1しきい値TH1(15[℃])よりも大きいため、制御部80は、弁開度を第1固定値FV1(90[%])に制御する(図2、領域R1参照)。また制御部80が、ヒータ71を動作開始させることで、測定温度TWが上昇開始する。
【0040】
これにより、バッテリ加熱要求および暖房要求が重複して要求されている場合には、加熱された第2熱媒体を高温ラジエータ経路36およびヒータコア経路34へ分流することができる。よって、バッテリ加熱と暖房とを同時に実行することが可能となる。また、不足値が第1しきい値TH1(15[℃])よりも大きい期間は、暖房感がまだ十分に得られていない期間である。この期間において、ヒータコア経路34へより多くの第2熱媒体を流すことで、バッテリ加熱よりも暖房を優先して実行することができる。ドライバの意志により選択されている暖房要求を、バッテリ加熱要求よりも優先させることが可能となる。また、暖房感を損なわない程度に、少量の熱をバッテリ51へ伝えることが可能となる。
【0041】
時刻t1において、測定温度TWが50[℃]まで上昇すると、不足値が第1しきい値TH1(15[℃])よりも小さくなる。時刻t1から時刻t2までの期間では、制御部80は、不足値の変動に応じて、弁開度を可変に制御する(図2、領域R2参照)。時刻t2から時刻t3までの期間において、測定温度TWが再び50[℃]を下回ると、制御部80は、弁開度を第1固定値FV1(90[%])に制御する。時刻t3から時刻t4までの期間において、測定温度TWが50[℃]から60[℃]まで上昇することに応じて、制御部80は、弁開度を90[%]から60[%]まで低下させる。時刻t4以降において、測定温度TWが60[℃]よりも高い状態が維持されると、不足値が第2しきい値TH2より小さい状態が維持される。従って制御部80は、弁開度を第2固定値FV2(60[%])に制御する(図2、領域R3参照)。
【0042】
不足値が第1しきい値TH1(15[℃])よりも小さい期間は、ある程度の暖房感が得られている期間である。この期間では、不足値が第1しきい値よりも小さくなることに応じて、除々にヒータコア経路34への分流割合を小さくするとともに、高温ラジエータ経路36への分流割合を大きくする。これにより、測定温度TWが目標温度TWOに近づくにつれて、除々にバッテリ加熱能力を高めていくことが可能となる。暖房感を維持しながら、ヒータ71の能力をバッテリ加熱へより多く配分することが可能となる。
【0043】
(対応関係)
低温ラジエータ41は、第1ラジエータの一例である。高温ラジエータ75は、第2ラジエータの一例である。高温ラジエータ経路36は、第1経路の一例である。ヒータコア経路34は、第2経路の一例である。三方弁73は、流量調整部の一例である。ヒータコア74は、暖房器の一例である。
【0044】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0045】
(変形例)
第1熱回路10の構成は様々であってよい。図4に示す変形例の熱管理装置100aの第1熱回路10aのように、五方弁49aを備える形態であってもよい。図4の熱管理装置100aと図1の熱管理装置100との間で、共通する部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。また熱管理装置100aに特有の部位には、符号の末尾に「a」を付すことで区別している。熱管理装置100aでは、五方弁49aによって、循環流路CP1aに第1熱媒体が循環する状態と、循環流路CP2aに第1熱媒体が循環する状態とが、交互に切り換えられる。ここで循環流路CP1aは、チラー経路15とバッテリ経路14によって構成される流路である。循環流路CP2aは、低温ラジエータ経路11と電気機器経路13によって構成される流路である。この構成によっても、ヒータ71を用いてバッテリ51を加熱することが可能となる。
【0046】
第1固定値FV1、第2固定値FV2、第1しきい値TH1、第2しきい値TH2の設定方法は、様々であって良い。例えば、暖房負荷が高くなるほど、第1固定値FV1や第2固定値FV2を大きく設定してもよい。また暖房負荷が高くなるほど、第1しきい値TH1や第2しきい値TH2を小さく設定してもよい。この構成によれば、暖房負荷が高くなるほど、バッテリ加熱よりも暖房をより優先することができる。暖房要求に対する応答性を高めることが可能となる。
【0047】
第2熱回路20における、三方弁73とヒータ71との配置位置関係は、様々であって良い。例えば、コンデンサ経路32上にヒータ71を配置してもよい。この場合、三方弁73とコンデンサ67との間にヒータ71を配置してもよい。
【0048】
本実施形態では、第1熱回路10において、バッテリ経路14内の第1熱媒体を加熱するための専用のヒータが配置されていない場合を説明した。しかしながら変形例では、バッテリ経路14に、第1熱媒体を加熱するヒータが配置されていてもよい。
【0049】
本実施形態では、第1熱回路10の三方弁49が、チラー経路15からバッテリ経路14に熱媒体が流れる状態と、チラー経路15から接続経路16に熱媒体が流れる状態との間で流路を切り換える場合を説明した。しかしながら、三方弁49は、上記の状態に加えて、チラー経路15からバッテリ経路14と接続経路16の両方に熱媒体が流れる状態に流路を切り換え可能であってもよい。
【0050】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
10:第1熱回路 20:第2熱回路 30:第3熱回路 34:ヒータコア経路 36:高温ラジエータ経路 41:低温ラジエータ 51:バッテリ 71:ヒータ 73:三方弁 74:ヒータコア 75:高温ラジエータ 76:温度センサ TH1:第1しきい値 TH2:第2しきい値
図1
図2
図3
図4