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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112223
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017147
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 三起夫
(72)【発明者】
【氏名】堀田 忠資
(72)【発明者】
【氏名】小村 正人
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA03
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB02
3H039BB11
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC12
3H039CC27
3H039CC42
(57)【要約】
【課題】電動圧縮機1において潤滑油の圧力の脈動を抑える
【解決手段】可動スクロール11は、給油孔501aが溝部114bのうち一部領域700aに連通した状態で、固定スクロール12および溝部114bが固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を絞る絞り流路700bを形成する。可動スクロール11が旋回するに伴って、給油孔501aのうち溝部114bに連通する一部領域が増大しつつ、絞り流路700bの流路長が短くなることにより、溝部114bを流れる流量を増大させる。固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量変化の勾配を小さくする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(30)内に配置され、固定部(12)、および可動部(11)を備え、前記固定部に対して前記可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
前記固定部は、前記高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、前記低圧力冷媒および前記高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、前記可動部側に開口されて前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
前記可動部は、前記固定部側に開口して前記可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して前記給油孔に間欠的に連通して前記給油孔からの前記潤滑油が流入される受給孔(114a)と、前記受給孔に流入される前記潤滑油を前記ハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、前記第2潤滑油流路に対して前記受給孔の変位方向の一方側に配置されて、かつ前記固定部側に開口されて、さらに前記第2潤滑油流路に連通して前記給油孔からの前記潤滑油を前記第2潤滑油流路に導くための溝部(114b)と、を形成し、
前記溝部のうち一部領域(700a)が前記給油孔に連通して前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、前記溝部のうち前記一部領域以外の他の領域が前記固定部によって覆われた状態で、前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第2絞り流路(700b)を形成し、
前記可動部の旋回に伴って、前記受給孔が前記給油孔に相対的に近づくにつれて、前記溝部のうち前記一部領域が増大しつつ、前記第2絞り流路の流路長が短くなることにより、前記第1潤滑油流路から前記第2潤滑油流路に流れる流量を増大させる圧縮機。
【請求項2】
前記溝部を第1溝部としたとき、前記可動部は、前記第2潤滑油流路に対して前記変位方向の他方側に配置されて、かつ前記固定部側に開口されて、さらに前記第2潤滑油流路に連通して前記給油孔からの前記潤滑油を前記第2潤滑油流路に導くための第2溝部(114c)と、を形成し、
前記第2溝部のうち一部領域(700c)が前記給油孔に連通して前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第3絞り流路を形成し、前記溝部のうち前記一部領域以外の他の領域が前記固定部によって覆われた状態で、前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第4絞り流路(700d)を形成し、
前記可動部の旋回に伴って、前記受給孔が前記給油孔から相対的に遠くなるにつれて、前記第2溝部のうち前記一部領域が減少しつつ、前記第2絞り流路の流路長が長くなることにより、前記第1潤滑油流路から前記第2潤滑油流路に流れる流量を減少させる請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
ハウジング(30)内に配置され、固定部(12)、および可動部(11)を備え、前記固定部に対して前記可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
前記固定部は、前記高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、前記低圧力冷媒および前記高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、前記可動部側に開口されて前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
前記可動部は、前記固定部側に開口して前記可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して前記給油孔に間欠的に連通して前記給油孔からの前記潤滑油が流入される受給孔(114a)と、前記受給孔に流入される前記潤滑油を前記ハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、前記第2潤滑油流路に対して前記受給孔の変位方向の他方側に配置されて、かつ前記固定部側に開口されて、さらに前記第2潤滑油流路に連通して前記給油孔からの前記潤滑油を前記第2潤滑油流路に導くための溝部(114c)と、を形成し、
前記溝部のうち一部領域(700c)が前記給油孔に連通して前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、前記溝部のうち前記一部領域以外の他の領域が前記固定部によって覆われた状態で、前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第2絞り流路(700d)を形成し、
前記可動部の旋回に伴って、前記受給孔が前記給油孔から相対的に遠くなるにつれて、前記溝部のうち前記一部領域が減少しつつ、前記第2絞り流路の流路長が長くなることにより、前記第1潤滑油流路から前記第2潤滑油流路に流れる流量を減少させる圧縮機。
【請求項4】
ハウジング(30)内に配置され、固定部(11A)、および可動部(12A)を備え、前記固定部に対して前記可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
前記可動部は、前記高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、前記低圧力冷媒および前記高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、前記可動部側に開口されて前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
前記固定部は、前記固定部側に開口して前記可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して前記給油孔に間欠的に連通して前記給油孔からの前記潤滑油が流入される受給孔(114a)と、前記受給孔に流入される前記潤滑油を前記ハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、前記第2潤滑油流路に対して前記受給孔の変位方向の一方側に配置されて、かつ前記可動部側に開口されて、さらに前記第2潤滑油流路に連通して前記給油孔からの前記潤滑油を前記第2潤滑油流路に導くための溝部(114b)と、を形成し、
前記溝部のうち一部領域(700a)が前記給油孔に連通して前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、前記溝部のうち前記一部領域以外の他の領域が前記固定部によって覆われた状態で、前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第2絞り流路(700b)を形成し、
前記可動部の旋回に伴って、前記受給孔が前記給油孔に相対的に近づくにつれて、前記溝部のうち前記一部領域が増大しつつ、前記第2絞り流路の流路長が短くなることにより、前記第1潤滑油流路から前記第2潤滑油流路に流れる流量を増大させる圧縮機。
【請求項5】
前記溝部を第1溝部としたとき、前記固定部は、前記第2潤滑油流路に対して前記変位方向の他方側に配置されて、かつ前記固定部側に開口されて、さらに前記第2潤滑油流路に連通して前記給油孔からの前記潤滑油を前記第2潤滑油流路に導くための第2溝部(114c)と、を形成し、
前記第2溝部のうち一部領域(700c)が前記給油孔に連通して前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第3絞り流路を形成し、前記溝部のうち前記一部領域以外の他の領域が前記固定部によって覆われた状態で、前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第4絞り流路(700d)を形成し、
前記可動部の旋回に伴って、前記受給孔が前記給油孔から相対的に遠くなるにつれて、前記第2溝部のうち前記一部領域が減少しつつ、前記第2絞り流路の流路長が長くなることにより、前記第1潤滑油流路から前記第2潤滑油流路に流れる流量を減少させる請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
ハウジング(30)内に配置され、固定部(11A)、および可動部(12A)を備え、前記固定部に対して前記可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
前記可動部は、前記高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、前記低圧力冷媒および前記高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、前記可動部側に開口されて前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
前記固定部は、前記固定部側に開口して前記可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して前記給油孔に間欠的に連通して前記給油孔からの前記潤滑油が流入される受給孔(114a)と、前記受給孔に流入される前記潤滑油を前記ハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、前記第2潤滑油流路に対して前記受給孔の変位方向の他方側に配置されて、かつ前記可動部側に開口されて、さらに前記第2潤滑油流路に連通して前記給油孔からの前記潤滑油を前記第2潤滑油流路に導くための溝部(114c)と、を形成し、
前記溝部のうち一部領域(700c)が前記給油孔に連通して前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、前記溝部のうち前記一部領域以外の他の領域が前記固定部によって覆われた状態で、前記第1潤滑油流路を通過した前記潤滑油を絞る第2絞り流路(700d)を形成し、
前記可動部の旋回に伴って、前記受給孔が前記給油孔から相対的に遠くなるにつれて、前記溝部のうち前記一部領域が減少しつつ、前記第2絞り流路の流路長が長くなることにより、前記第1潤滑油流路から前記第2潤滑油流路に流れる流量を減少させる圧縮機。
【請求項7】
前記冷媒は、二酸化炭素を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機では、固定スクロールに対して可動スクロールが旋回して冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構から吐出される冷媒から潤滑油を分離する分離機構とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
固定スクロールには、分離機構からの潤滑油が流れる潤滑油流路とこの潤滑油流路を通過した潤滑油を排出する給油孔とが形成されている給油ピンが設けられている。
可動スクロールには、給油ピンの給油孔から供給される潤滑油が流入される受給孔とこの受給孔に流入される潤滑油を軸受けなどの摺動部に導くための潤滑油流路とが設けられている。
【0004】
可動スクロールの旋回に伴って、給油ピンの給油孔に可動スクロールの受給孔が間欠的に連通することにより、分離機構からの潤滑油が給油ピンの潤滑油流路、給油孔、および可動スクロールの受給孔、潤滑油流路を通して摺動部に間欠的に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-196415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の圧縮機では、上述の如く、可動スクロールの旋回に伴って、分離機構からの潤滑油が給油ピン、および可動スクロール潤滑油流路等を通して摺動部に間欠的に流れる。このため、可動スクロールの旋回に伴って、潤滑油の圧力変動が間欠的に生じる。したがって、潤滑油の圧力の変動によって、騒音、振動が発生する虞がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、潤滑油の圧力変動を抑える圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ハウジング(30)内に配置され、固定部(12)、および可動部(11)を備え、固定部に対して可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
固定部は、高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、低圧力冷媒および高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、可動部側に開口されて第1潤滑油流路を通過した潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
可動部は、固定部側に開口して可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して給油孔に間欠的に連通して給油孔からの潤滑油が流入される受給孔(114a)と、受給孔に流入される潤滑油をハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、第2潤滑油流路に対して受給孔の変位方向の一方側に配置されて、かつ固定部側に開口されて、さらに第2潤滑油流路に連通して給油孔からの潤滑油を第2潤滑油流路に導くための溝部(114b)と、を形成し、
溝部のうち一部領域(700a)が給油孔に連通して第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、溝部のうち一部領域以外の他の領域が固定部によって覆われた状態で、第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第2絞り流路(700b)を形成し、
可動部の旋回に伴って、受給孔が給油孔に相対的に近づくにつれて、溝部のうち一部領域が増大しつつ、第2絞り流路の流路長が短くなることにより、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量を増大させる。
【0009】
したがって、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量が増大する際の、潤滑油の圧力変動を抑える圧縮機を提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、ハウジング(30)内に配置され、固定部(12)、および可動部(11)を備え、固定部に対して可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
固定部は、高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、低圧力冷媒および高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、可動部側に開口されて第1潤滑油流路を通過した潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
可動部は、固定部側に開口して可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して給油孔に間欠的に連通して給油孔からの潤滑油が流入される受給孔(114a)と、受給孔に流入される潤滑油をハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、第2潤滑油流路に対して受給孔の変位方向の他方側に配置されて、かつ固定部側に開口されて、さらに第2潤滑油流路に連通して給油孔からの潤滑油を第2潤滑油流路に導くための溝部(114c)と、を形成し、
溝部のうち一部領域(700c)が給油孔に連通して第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、溝部のうち一部領域以外の他の領域が固定部によって覆われた状態で、第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第2絞り流路(700d)を形成し、
可動部の旋回に伴って、受給孔が給油孔から相対的に遠くなるにつれて、溝部のうち一部領域が減少しつつ、第2絞り流路の流路長が長くなることにより、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量を減少させる。
【0011】
したがって、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量が減少する際の、潤滑油の圧力変動を抑える圧縮機を提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、ハウジング(30)内に配置され、固定部(11A)、および可動部(12A)を備え、固定部に対して可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
可動部は、高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、低圧力冷媒および高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、可動部側に開口されて第1潤滑油流路を通過した潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
固定部は、固定部側に開口して可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して給油孔に間欠的に連通して給油孔からの潤滑油が流入される受給孔(114a)と、受給孔に流入される潤滑油をハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、第2潤滑油流路に対して受給孔の変位方向の一方側に配置されて、かつ可動部側に開口されて、さらに第2潤滑油流路に連通して給油孔からの潤滑油を第2潤滑油流路に導くための溝部(114b)と、を形成し、
溝部のうち一部領域(700a)が給油孔に連通して第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、溝部のうち一部領域以外の他の領域が固定部によって覆われた状態で、第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第2絞り流路(700b)を形成し、
可動部の旋回に伴って、受給孔が給油孔に相対的に近づくにつれて、溝部のうち一部領域が増大しつつ、第2絞り流路の流路長が短くなることにより、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量を増大させる。
【0013】
したがって、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量が増大する際の、潤滑油の圧力変動を抑える圧縮機を提供することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、ハウジング(30)内に配置され、固定部(11A)、および可動部(12A)を備え、固定部に対して可動部が旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部(10)を備え、
可動部は、高圧力冷媒に含まれる潤滑油を貯める貯油部から供給される潤滑油を、低圧力冷媒および高圧力冷媒の圧力差によって流通させる第1潤滑油流路(501)と、可動部側に開口されて第1潤滑油流路を通過した潤滑油を排出する給油孔(501a)と、を形成し、
固定部は、固定部側に開口して可動部の旋回に伴って変位方向(He)の一方側に変位して給油孔に間欠的に連通して給油孔からの潤滑油が流入される受給孔(114a)と、受給孔に流入される潤滑油をハウジング内の摺動部に導くための第2潤滑油流路(114)と、第2潤滑油流路に対して受給孔の変位方向の他方側に配置されて、かつ可動部側に開口されて、さらに第2潤滑油流路に連通して給油孔からの潤滑油を第2潤滑油流路に導くための溝部(114c)と、を形成し、
溝部のうち一部領域(700c)が給油孔に連通して第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第1絞り流路を形成し、溝部のうち一部領域以外の他の領域が固定部によって覆われた状態で、第1潤滑油流路を通過した潤滑油を絞る第2絞り流路(700d)を形成し、
可動部の旋回に伴って、受給孔が給油孔から相対的に遠くなるにつれて、溝部のうち一部領域が減少しつつ、第2絞り流路の流路長が長くなることにより、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量を減少させる。
【0015】
したがって、第1潤滑油流路から第2潤滑油流路に流れる流量が減少する際の、潤滑油の圧力変動を抑える圧縮機を提供することができる。
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における電動圧縮機を含むヒートポンプ式給湯機が構成するヒートポンプサイクルを示す図である。
図2】第1実施形態の電動圧縮機の全体構成を示す断面図であり、可動スクロール、固定スクロール、第1軸受部、第2軸受部、可動基板部、および給油ピン等の構成要素の説明を補助するための図である。
図3】第1実施形態において、可動基板部に設けられている可動側潤滑油流路、受給孔、溝部、および固定基板部に設けられている給油孔、および固定部側潤滑油流路の説明を補助するための図である。
図4】第1実施形態において、固定スクロールの固定基板部の給油孔、および可動スクロールの可動基板部の受給孔、2つの溝部との位置関係、および受給孔の変位の軌跡の説明を補助するための図である。
図5】第1実施形態において、固定スクロールの固定基板部、可動歯部、給油孔に対する可動スクロールの可動歯部、受給孔の変位の説明を補助するための図であり、2つの溝部の図示が省略されている図である。
図6】第1実施形態において、固定スクロールの固定基板部、可動歯部、給油孔に対する可動スクロールの可動歯部、受給孔の変位の説明を補助するための図であり、2つの溝部の図示が省略されている図である。
図7】第1実施形態において、固定スクロールの固定基板部、可動歯部、給油孔に対する可動スクロールの可動歯部、受給孔の変位の説明を補助するための図であり、2つの溝部の図示が省略されている図である。
図8】第1実施形態において、固定スクロールの固定基板部、可動歯部、給油孔に対する可動スクロールの可動歯部、受給孔の変位の説明を補助するための図であり、2つの溝部の図示が省略されている図である。
図9】第1実施形態において、固定スクロールに対する可動スクロールの回転角と、固定スクロールの給油ピンの潤滑油流路から可動側潤滑油流路へ流れる潤滑油の流量との関係を示す図である。
図10】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔および2つの溝部が給油孔に対して外れている状態を説明するための図である。
図11】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、1つの溝部が給油孔に重なっている状態を説明するための図である。
図12】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔が給油孔に重なっている状態を説明するための図である。
図13】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔が給油孔に重なっている状態を説明するための図である。
図14】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、1つの溝部が給油孔に重なっている状態を説明するための図である。
図15】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔および2つの溝部が給油孔に対して外れている状態を説明するための図である。
図16】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に対して受給孔および2つの溝部が外れている状態を説明するための図である。
図17】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に対して1つの溝部が連通されている状態を説明するための図である。
図18】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に1つの溝部が連通されている状態を説明するための図である。
図19】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に1つの溝部が連通されている状態を説明するための図である。
図20】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔および1つの溝部が給油孔に対して連通されている状態を説明するための図である。
図21】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に受給孔が連通されている状態を説明するための図である。
図22】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に受給孔が連通されている状態を説明するための図である。
図23】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔および1つの溝部が給油孔に連通されている状態を説明するための図である。
図24】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に1つの溝部が連通されている状態を説明するための図である。
図25】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、給油孔に1つの溝部が連通されている状態を説明するための図である。
図26】第1実施形態において、可動スクロールの受給孔および2つの溝部と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔および2つの溝部が給油孔に対して外れている状態を説明するための図である。
図27】対比例において、固定スクロールの固定基板部の給油孔、および可動スクロールの可動基板部の受給孔の位置関係、および受給孔の変位の軌跡の説明を補助するための図である。
図28】対比例において、固定スクロールに対する可動スクロールの回転角と、固定スクロールの給油ピンの潤滑油流路から可動側潤滑油流路へ流れる潤滑油の流量との関係を示す図である。
図29】対比例において、可動スクロールの受給孔と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔が給油孔に対して外れている状態を説明するための図である。
図30】対比例において、可動スクロールの受給孔と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔が給油孔に連通している状態を説明するための図である。
図31】対比例において、可動スクロールの受給孔と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔が給油孔に連通している状態を説明するための図である。
図32】対比例において、可動スクロールの受給孔と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔が給油孔に連通している状態を説明するための図である。
図33】対比例において、可動スクロールの受給孔と、固定スクロールの給油孔との位置関係を示す図であり、受給孔が給油孔に対して外れている状態を説明するための図である。
図34】対比例において、固定スクロールの給油ピンの潤滑油流路から可動側潤滑油流路へ流れる潤滑油の圧力を示すタイミングチャートであり、給油期間に生じる潤滑油の圧力変動を説明するためのタイミングチャートである。
図35】対比例において、固定スクロールの給油ピンの潤滑油流路から可動側潤滑油流路へ流れる潤滑油の圧力を示すタイミングチャートであり、給油期間に生じる潤滑油の圧力変動が大きい状態を示すタイミングチャートである。
図36】第1実施形態において、固定スクロールの給油ピンの潤滑油流路から可動側潤滑油流路へ流れる潤滑油の圧力を示すタイミングチャートであり、可動スクロールの旋回に伴う潤滑油の圧力変動が低減した状態を示すタイミングチャートである。
図37】第2実施形態において、可動スクロールの受給孔および1つの溝部の説明を補助するための図であり、1つの溝部が可動側潤滑油流路に対して可動スクロールの変位方向の他方側に配置されている状態を示す図である。
図38】第3実施形態において、可動スクロールの受給孔および1つの溝部の説明を補助するための図であり、1つの溝部が可動側潤滑油流路に対して可動スクロールの変位方向の一方側に配置されている状態を示す図である。
図39】第4実施形態において、可動スクロールの受給孔および溝部の説明を補助するための図であり、溝部が可動側潤滑油流路に対して可動スクロールの変位方向の一方側および他方側に配置されている状態を示す図である。
図40】第5実施形態において、可動スクロールの可動基板部と固定スクロールの固定基板部の位置関係を示す図であり、2つの溝部のそれぞれの形状を説明するための図である。
図41】第6実施形態において、可動スクロールの可動基板部と固定スクロールの固定基板部の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0018】
(第1実施形態)
図1図2等により第1実施形態を説明する。本実施形態では、電動圧縮機1を、ヒートポンプ式給湯機にて給湯水を加熱するヒートポンプサイクル(すなわち、蒸気圧縮式の冷凍サイクル)に適用している。
【0019】
ヒートポンプサイクルは、図1に示すように、電動圧縮機1、水冷媒熱交換器2、膨張弁3、室外熱交換器4、気液分離器5等を有している。電動圧縮機1は、気液分離器5から気相冷媒である低圧力冷媒を吸入して圧縮して吐出する。水冷媒熱交換器2は、電動圧縮機1から吐出された高圧力冷媒と貯湯タンクからの給湯水とを熱交換して給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。
【0020】
膨張弁3は、水冷媒熱交換器2から流出した高圧力冷媒を減圧する。室外熱交換器4は、膨張弁3で減圧された低圧力冷媒と送風機4aから送風される外気とを熱交換して低圧力冷媒を蒸発させる吸熱用熱交換器である。気液分離器5は、室外熱交換器4から流れ出る低圧力冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒を電動圧縮機1の吸入口に導く分離部である。
【0021】
本実施形態のヒートポンプサイクルでは、冷媒として二酸化炭素を採用しており、電動圧縮機1の吐出ポートから膨張弁3入口側へ至るサイクルの高圧力側冷媒の圧力が臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成している。
【0022】
さらに、冷媒には、電動圧縮機1内部の各摺動部を潤滑する潤滑油(すなわち、冷凍機油)が混入されており、この潤滑油の一部は冷媒とともに超臨界冷凍サイクルを循環している。
【0023】
ヒートポンプ式給湯機は、水冷媒熱交換器2にて加熱された給湯水を貯湯する貯湯タンク、貯湯タンクと水冷媒熱交換器2との間で給湯水を循環させる給湯水循環回路、および給湯水循環回路に配置されて給湯水を圧送する水ポンプ等を備えている。
【0024】
次に、図2図3等を用いて、電動圧縮機1の詳細構成を説明する。なお、図2における上下の各矢印は、電動圧縮機1をヒートポンプ式給湯機に搭載した状態における上下の各方向を示している。
【0025】
本実施形態の電動圧縮機1は、いわゆるスクロール型の圧縮機であり、圧縮部10、電動モータ部20、ハウジング30、および油分離器40等を有している。
【0026】
圧縮部10は、圧縮対象流体である冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。電動モータ部20は、圧縮部10を駆動する回転駆動力を出力する三相交流同期型電動機である。
【0027】
ハウジング30は、電動圧縮機1の外殻を形成するとともに、その内部に圧縮部10および電動モータ部20等を収容するものである。油分離器40は、ハウジング30の外部に配置されて圧縮部10にて圧縮された高圧力冷媒から潤滑油を分離する。
【0028】
本実施形態の電動圧縮機1は、図2に示すように、電動モータ部20から圧縮部10へ回転駆動力を伝達する回転軸25が鉛直方向(すなわち、上下方向)に延びて、圧縮部10と電動モータ部20が鉛直方向に配置された、いわゆる縦置きタイプに構成されている。より具体的には、この電動圧縮機1では、圧縮部10が電動モータ部20の下方側に配置されている。
【0029】
ハウジング30は、軸線Sが鉛直方向に延びる円筒状に形成されている筒状部材31と、筒状部材31の上端部を塞ぐ椀状の上蓋部材32と、筒状部材31の下端部を塞ぐ椀状の下蓋部材33とを有し、これらを一体に接合して密閉容器構造としたものである。
【0030】
筒状部材31、上蓋部材32および下蓋部材33は、いずれも鉄あるいは鉄系金属で形成されており、これらの部材はハウジング30への溶接等にて接合されている。
【0031】
ハウジング30の筒状部材31の側壁には、図2に示すように、外部接続管310、313が貫通している。外部接続管310のうち軸線方向の中央側には径方向外側に突起するフランジ部320が設けられている。
【0032】
外部接続管310と同様に、外部接続管313には、それぞれ、フランジ部320が設けられている。本実施形態の外部接続管310には、吸入ポート30aが形成されている。外部接続管313には、潤滑油吸入ポート41aが形成されている。
【0033】
外部接続管310には、気液分離器5から流出した低圧力冷媒を圧縮部10の圧縮室15側に流通させる冷媒流路310aが形成されている。冷媒流路310aの冷媒入口は、吸入ポート30aを構成している。吸入ポート30aは、気液分離器5から流出した低圧力冷媒を圧縮部10へ吸入させるための冷媒吸入口である。
【0034】
外部接続管313には、油分離器40の油流出口431から流れる潤滑油を給油流路25a側に供給する潤滑油流路313aが形成されている。潤滑油流路313aの潤滑油入口は、潤滑油吸入ポート41aを形成している。潤滑油吸入ポート41aは、油分離器40から流れる潤滑油を圧縮部10側に供給するための潤滑油吸入口である。
【0035】
電動モータ部20は、ステータ21とロータ22とを有して構成されている。ステータ21は、ステータコア21aおよびステータコイル21bを備える。ステータコア21aは、磁性体等から構成されているもので、ハウジング30の内壁に固定されている。
【0036】
ステータコイル21bは、ステータコア21aに巻回されている。ステータコイル21bは、ステータコア21a、ハウジング30等を介して固定スクロール12に支持されている。
【0037】
ロータ22は、磁性体等から構成されて軸線Sを中心とする円筒状に形成されている。ロータ22の軸中心穴には、回転軸25が圧入により固定されている。このことにより、ロータ22は、回転軸25を介して可動スクロール11に支持されている。
【0038】
回転軸25は、略円筒状に形成されており、その両端部は、それぞれ、すべり軸受けにて構成された軸受部26、軸受部27に回転可能に支持されている。回転軸25の内部には、軸受部26、軸受部27に潤滑油を供給するための給油流路25aが形成されている。軸受部26、軸受部27は、回転軸25の外表面に対して摺動する摺動部を構成する。
【0039】
軸受部26は、ハウジング30内の空間を電動モータ部20が配置される空間と圧縮部10が配置される空間とに仕切るように固定されたミドルハウジング28に形成されている。軸受部26は、回転軸25の下端側(すなわち、圧縮部10側)を回転可能に支持している。
【0040】
ミドルハウジング28は、ハウジング30の内壁に支持されている。軸受部27は、介在部材を介してハウジング30の筒状部材31に固定されており、回転軸25の上端側(すなわち、圧縮部10の反対側)を回転可能に支持している。
【0041】
圧縮部10は、可動スクロール11と固定スクロール12とを有して構成されるスクロール型の圧縮機構である。
【0042】
可動スクロール11は、固定スクロール12に対して軸線方向一方側(図2中上側)に配置されている可動部である。軸線方向は、軸線Sが延びる方向である。軸線Sは、回転軸25の軸線に一致して、かつ可動スクロール11の旋回運動の中心線に一致する。
【0043】
可動スクロール11は、円板状の可動基板部111、および可動基板部111から固定スクロール12側(すなわち、軸線方向他方側)へ向かって突出して渦巻き状に形成されている可動歯部112を有している可動部材である。
【0044】
固定スクロール12は、円板状の固定基板部121、および固定基板部121から可動スクロール11側(すなわち、軸線方向一方側)へ向かって突出して渦巻き状に形成されている固定歯部122を有している固定部である。
【0045】
固定スクロール12は、固定基板部121の外周側面がハウジング30の筒状部材31の内周側面に圧入されていることによって、ミドルハウジング28の下方側に固定されている。可動スクロール11は、ミドルハウジング28と固定スクロール12との間に形成される空間に配置されている。
【0046】
可動スクロール11および固定スクロール12は、それぞれの基板部111、121の板面が対向するように配置されている。これに加えて、可動スクロール11および固定スクロール12は、それぞれの歯部112、122同士が噛み合わされて、一方のスクロールの歯部の先端部が他方のスクロールの基板部に当接するように配置されている。
【0047】
これにより、それぞれの歯部112、122同士が複数箇所で接触し、それぞれの歯部112、122同士の間には、回転軸25の軸線方向から視たときに三日月形状に形成される圧縮室15が複数形成される。すなわち、圧縮部10では、可動基板部111、可動歯部112、固定基板部121、および固定歯部122が複数の圧縮室15を形成している。
【0048】
なお、本実施形態の可動スクロール11および固定スクロール12は、鋳鉄等の金属により形成されている。
【0049】
可動スクロール11の可動基板部111の上面側の中心部には、回転軸25の下端部(すなわち、圧縮部10側の端部)が挿入される円筒状のボス部113が形成されている。
【0050】
一方、回転軸25の下端部は、回転軸25の回転中心線に対して偏心した偏心部25bになっている。従って、可動スクロール11の可動基板部111のボス部113に、回転軸25の偏心部25bが挿入される。回転軸25の回転中心線は、ハウジング30の軸線Sに一致している。
【0051】
さらに、可動スクロール11およびミドルハウジング28の間には、可動スクロール11が偏心部25b周りに自転することを防止する図示しない自転防止機構が設けられている。
【0052】
このため、回転軸25が回転すると、可動スクロール11は、偏心部25b周りに自転することなく、回転軸25の回転中心(すなわち、軸線S)を公転中心として旋回運動(すなわち、変位)する。
【0053】
そして、この旋回運動により、前述した圧縮室が容積を縮小しながら、回転軸25回りに、外周側から中心側へ変位する。さらに、本実施形態では、それぞれのスクロールの歯部112、122の先端部に、チップシールを配置することにより、圧縮室15の気密性を向上させている。
【0054】
このようなチップシールとしては、PEEK(すなわち、ポリエーテルエーテルケトン)樹脂で形成されたものを採用することができる。
【0055】
また、吸入ポート30aは、固定スクロール12の固定基板部121の冷媒吸入孔部128aを介して圧縮室15のうち最外周側に連通している。
【0056】
固定スクロール12の固定基板部121には、圧縮室15で圧縮された高圧力冷媒が吐出される主吐出孔123が形成されている。固定スクロール12の固定基板部121のうち主吐出孔123の下方側には、主吐出孔123と一対の副吐出孔126とに連通する吐出室124が形成されている。
【0057】
吐出室124には、逆止弁19が設けられている。逆止弁19は、吐出室124から圧縮室15への冷媒の逆流を防止する吐出弁(すなわち、リード弁)と吐出弁の最大開度を規制するストッパとから構成されている。
【0058】
ここで、吐出室124には、外部接続管が嵌め込まれている。この外部接続管には、吐出室124から吐出される高圧力冷媒を油分離器40の潤滑油吸入ポート40bに導く流路が形成されている。この外部接続管の高圧力冷媒流出口と油分離器40の潤滑油吸入ポート40bとは冷媒配管によって接続されている。
【0059】
油分離器40は、鉛直方向に延びる筒状部材を有し、その内部に形成された空間で圧縮部10にて昇圧された高圧力冷媒を旋回させ、遠心力の作用によって気相冷媒と潤滑油とを分離するものである。
【0060】
油分離器40にて分離された高圧力気相冷媒は、油分離器40の上方側に形成された高圧力冷媒流出口40aから水冷媒熱交換器2(すなわち、外部機器)側へ吐出される。一方、油分離器40のうち下方側部位41は、冷媒から分離された潤滑油を貯める貯油部としての役割を果たす。油分離器40の下蓋部材43には、油分離器40のうち下方側部位41に貯められた潤滑油を油分離器40の外部に流出させる油流出口431が形成されている。
【0061】
油流出口431には、油配管46が接続されている。油配管46は、油流出口431から可動側潤滑油流路114に潤滑油を導く給油流路46aを備えるものである。油配管46は、外部接続管313に接続されている。油配管46は、外部接続管313の軸線方向一方側を径方向外側から覆うように形成されている。
【0062】
外部接続管313は、ハウジング30の筒状部材31を貫通し、固定基板部121の側面に形成された挿入穴129に挿入されている。固定基板部121には、外部接続管313を通過した潤滑油が流れる固定側給油流路127が設けられている。固定側給油流路127のうち外部接続管313の出口側には、潤滑油を濾過するフィルタ127aが配置されている。
【0063】
図3に示すように、可動基板部111には、固定基板部121側に開口して給油ピン50の給油孔501aから潤滑油が流入される受給孔114aと、この受給孔111aに流入される潤滑油を給油流路25a側に導く可動側潤滑油流路114が形成されている。
【0064】
可動基板部111の受給孔114aは、可動スクロール11の旋回運動に伴って、給油ピン50の給油孔501aに間欠的に連通して、給油ピン50の給油孔501aからの潤滑油の供給を間欠的に受ける。
【0065】
本実施形態の可動基板部111には、溝部114bが設けられている。溝部114bは、可動側潤滑油流路114に対して可動スクロール11の変位方向Heの一方側に配置されている。
【0066】
溝部114bは、図4に示すように、受給孔114aの旋回(すなわち、変位)の軌跡600に沿うように形成されている。溝部114bは、可動側潤滑油流路114に連通し、かつ固定基板部121側に開口されている。
【0067】
本実施形態の可動基板部111には、溝部114cが設けられている。溝部114cは、可動側潤滑油流路114に対して可動スクロール11の変位方向Heの他方側に配置されている。
【0068】
溝部114cは、図4に示すように、受給孔114aの旋回(すなわち、変位)の軌跡600に沿うように形成されている。溝部114cは、可動側潤滑油流路114に連通し、かつ固定基板部121側に開口されている。
【0069】
溝部114b、114cは、可動スクロール11の旋回運動に伴って、給油ピン50の給油孔501aに間欠的に連通して、給油ピン50の給油孔501aから可動側潤滑油流路114に流入される潤滑油の流量を調整する役割を果たす。なお、溝部114b、114cによる潤滑油の流量調整の詳細について後述する。
【0070】
固定側給油流路127は、挿入穴129に連通している。固定側給油流路127は、可動基板部111側に開口している。固定側給油流路127のうち可動基板部111側には、給油ピン50を収納する収容部51aが設けられている。
【0071】
給油ピン50には、上下方向に貫通して、上側が給油孔501aに連通して、かつ下側が固定側給油流路127に連通する潤滑油流路(すなわち、第1潤滑油流路)501が設けられている。
【0072】
給油ピン50には、油分離器40内の圧力、すなわち圧縮室15で圧縮された高圧力冷媒の圧力により可動スクロール11側に押圧される。これにより、給油ピン50の上端面が可動スクロール11の下面(すなわち、摺動面)に押し当てられる。
【0073】
このため、固定側給油流路127からの潤滑油が、固定スクロール12と可動スクロール11との間の僅かな間隙に漏れ出すことなく、給油ピン50の内部を流れて可動側潤滑油流路114に流入することができる。
【0074】
可動側潤滑油流路114は、可動スクロール11のボス部113の内面最下部に連通されている。このため、可動側潤滑油流路114は、潤滑油をボス部113と回転軸25の偏心部25bとの間の隙間に導入して、次いで回転軸25の下端部側から回転軸25の給油流路25aに導く。
【0075】
回転軸25には、給油流路25aから可動スクロール11のボス部113に向かって径方向外側に延びる貫通孔255が形成されている。また、回転軸25には、図2に示すように、給油流路25aからミドルハウジング28の軸受部26に向かって径方向外側に延びる貫通孔253と、給油流路25aから軸受部27に向かって径方向外側に延びる貫通孔257とが形成されている。
【0076】
このため、給油流路25aに流入した潤滑油は、これら貫通孔253、255、257を通じて、回転軸25とボス部113との間、回転軸25と軸受部26との間、および回転軸25と軸受部27との間に供給される。
【0077】
このように供給された潤滑油は、重力によってミドルハウジング28の中心孔を流下し、2枚のスラストプレート13、14の間に供給される。
【0078】
2枚のスラストプレート13、14の間に供給された潤滑油は、可動基板部111の外周側に形成された隙間(すなわち、ミドルハウジング28の内周面との隙間)を流下する。この流下した潤滑油は、次いで、固定基板部121を上下方向に貫通する油流下流路を流下して、ハウジング30内の最下部に形成された貯油室35に至る。
【0079】
貯油室35は、固定スクロール12および通路形成プレート14Aの下方側に形成されている。通路形成プレート14Aは、円板状の金属部材で形成されており、固定スクロール12の下方側の面にボルト締め等の固定手段によって固定されている。
【0080】
通路形成プレート14Aには、上下方向に貫通する貫通孔181が形成されている。貫通孔181は、固定基板部121の冷媒吸入孔部128と連通している。貫通孔181には、貯油室35に貯められた潤滑油を吸い上げるパイプ182が下方側(すなわち、貯油室35側)から挿入されている。貯油室35の潤滑油は、パイプ182、通路形成プレート14Aの貫通孔181、および固定基板部121の冷媒吸入孔部128を通じて圧縮室15に供給される。
【0081】
次に、本実施形態の電動圧縮機1の作動の概略を説明する。
【0082】
まず、可動スクロール11は、電動モータ部20の回転力によって固定スクロール12に対して旋回運動する。図5図6図7、および図8に示すように、可動歯部112が固定歯部122に対して旋回運動する。
【0083】
このとき、気液分離器5の冷媒出口から電動圧縮機1の吸入ポート30a、および冷媒吸入孔部128を通して圧縮室15に供給される。これと同時に、貯油室35の潤滑油がパイプ182、通路形成プレート14Aの貫通孔181および固定基板部121の冷媒吸入孔部128を通じて圧縮室15に供給される。
【0084】
これにより、可動基板部111、固定基板部121、可動歯部112、および固定歯部122によって形成された三日月状の圧縮室15が外周側から中心側へ容積を減少させつつ、外周側から中心側へ回転軸25を中心として旋回しながら移動する。この際に、低圧力冷媒が流入した圧縮室15は、回転軸25の回転に伴って、その容積を縮小させながら移動する。
【0085】
さらに、回転軸25の回転に伴って圧縮室15が中心側の固定スクロール12の主吐出孔123へ連通する位置に移動し、圧縮室Vc内の冷媒の圧力が吐出弁の開弁圧を超えると吐出弁が開く。
【0086】
これにより、冷媒が吐出室124へ吐出される。吐出室124へ吐出された高圧力冷媒は、遠心分離方式にて、油分離器40で潤滑油が分離されて、この潤滑油が除かれた高圧力冷媒は、高圧力冷媒流出口40aから水冷媒熱交換器2の冷媒入口に吐出される。
【0087】
一方、高圧力冷媒から分離された潤滑油は、重力によって油分離器40内部を流下して油分離器40内の下部に貯められる。油分離器40内に貯められた潤滑油は、回転軸25の給油流路25a側に間欠的に供給される。
【0088】
具体的には、上述のごとく、可動スクロール11の旋回運動に伴って可動スクロール11の受給孔114a、溝部114b、114cが給油ピン50の給油孔501aと間欠的に連通する。
このとき、油分離器40内の高圧力冷媒圧力とハウジング30のうち軸受部27、26側の低圧力冷媒圧力との圧力差によって、油分離器40内の潤滑油が給油流路46a、潤滑油流路313a、固定側給油流路127、固定部側潤滑油流路501に流れる。
【0089】
この固定部側潤滑油流路501に流入される潤滑油は、可動側潤滑油流路114を通じて、可動スクロール11のボス部113と回転軸25の偏心部25bとの間の隙間に導入され、次いで回転軸25の下端部側から回転軸25の内部の給油流路25aに流入する。
【0090】
ここで、給油ピン50は、油分離器40内の圧力、換言すれば圧縮室15で圧縮された高圧力冷媒の圧力により可動スクロール11側に押圧される。これにより、給油ピン50の上端面が可動スクロール11の下面に押し当てられる。
【0091】
このため、固定側給油流路127からの潤滑油が、給油ピン50内の給油孔501aを流れて可動側潤滑油流路114に流入することができるので、回転軸25の給油流路25aへの潤滑油の供給を確実に行うことができる。
【0092】
回転軸25の給油流路25aに供給された潤滑油は、回転軸25の貫通孔255、256、257を通じて回転軸25と軸受部26との間、および回転軸25と軸受部27との間に供給される。これにより、回転軸25の摺動部で潤滑性を良好に維持できる。
【0093】
回転軸25と軸受部26との間に供給された潤滑油は、重力によってミドルハウジング29の中心孔を流下し、2枚のスラストプレート13、14の間に供給される。これにより、スラストプレート13、14同士の摺動部で潤滑性を良好に維持できる。
【0094】
2枚のスラストプレート13、14の間に供給された潤滑油は、可動基板部111の外周側に形成された隙間(すなわち、ミドルハウジング29の内周面との隙間)を流下し、次いで固定基板部121を上下方向に貫通する油流下流路を流下する。さらに、その流下潤滑油は、ハウジング30内の最下部に形成された貯油室35に至る。
【0095】
以上の如く、本実施形態の電動圧縮機1の圧縮部10は、低圧力冷媒を吸入し、圧縮して高圧力冷媒を吐出することができる。
【0096】
次に、本実施形態の溝部114b、114cによる潤滑油の圧力調整の詳細について図4図9図36を参照して説明する。
【0097】
まず、可動スクロール11が固定スクロール12に対して旋回することに伴って、図4に示すように、給油孔501aに対して受給孔114aおよび溝部114b、114cが旋回する。図4中の符号600は、受給孔114aの変位の軌跡を示す。
【0098】
受給孔114aおよび溝部114b、114cが旋回するに伴って、給油孔501aに対する受給孔114aおよび溝部114b、114cの位置関係は、図10図11図12図13図14図15の順に、変化する。
【0099】
図10図11図12図13図14図15は、給油孔501a、受給孔114aおよび溝部114b、114cを軸線方向他方側(すなわち、下側)から視た図である。
【0100】
図10図11図12図13図14図15において、回転角度は、θa、θb、θc、θd、θe、θfの順に大きくなる。図10図11図12図13図14図15において、変位方向の一方側He1は、変位方向Heの一方側を意味する。
【0101】
図10は、可動スクロール11が回転角度θaときの、給油孔501aに対する受給孔114a、溝部114b、114cの位置関係を示す。可動スクロール11が回転角度θaとき、給油孔501aに対して可動基板部111の溝部114b(すなわち、第1溝部)が変位方向の一方側He1にずれて配置されている。
【0102】
図11は、可動スクロール11が回転角度θbときの、給油孔501aに対する受給孔114a、溝部114b、114cの位置関係を示す。可動スクロール11が回転角度θbとき、受給孔114a、溝部114b、114cのうち溝部114bが給油孔501aに連通している。
【0103】
図12は、可動スクロール11が回転角度θcときの、給油孔501aに対する受給孔114a、溝部114b、114cの位置関係を示す。可動スクロール11が回転角度θcとき、受給孔114a、溝部114b、114cのうち受給孔114aが給油孔501aに連通している。
【0104】
図13は、可動スクロール11が回転角度θdときの、給油孔501aに対する受給孔114a、溝部114b、114cの位置関係を示す。可動スクロール11が回転角度θdとき、給油ピン50の給油孔501aが可動基板部111の受給孔114aのうち溝部114c側に連通している。
【0105】
図14は、可動スクロール11が回転角度θeときの、給油ピン50の給油孔501aに対する可動基板部111の受給孔114a、溝部114b、114cの位置関係を示す。可動スクロール11が回転角度θeとき、可動基板部111の受給孔114a、溝部114b、114cのうち溝部114c(すなわち、第2溝部)が給油孔501aに連通している。
【0106】
図15は、可動スクロール11が回転角度θfときの、給油孔501aに対する受給孔114a、溝部114b、114cの位置関係を示す。可動スクロール11が回転角度θfとき、給油孔501aに対して受給孔114a、溝部114b、114cが変位方向He一方側にずれて配置されている。
【0107】
具体的には、受給孔114a、溝部114b、114cと給油孔501aとの間の位置関係は、図16図17図18図19図20図21図22図23図24図25図26の順に変化する。図16図26において、固定スクロール12において、給油孔501aおよび固定部側潤滑油流路501を図示して、給油ピン50の外形の図示を省略する。
【0108】
具体的には、図16に示すように、給油孔501aに対して溝部114bが変位方向Heの他方側(すなわち、変位方向において一方側He1の反対側)にずれて配置されている。
【0109】
このとき、固定部側潤滑油流路501が可動基板部111によって閉じられている。このため、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に潤滑油が流れない。
【0110】
次に、図17に示すように、給油孔501aが溝部114bの一部領域700aに連通して、溝部114bのうち一部領域700a以外の他の領域が固定基板部121によって覆われた状態で絞り流路700bを形成する。絞り流路700bは、可動スクロール11および固定スクロール12によって形成されている。
【0111】
このため、給油孔501aから溝部114bの一部領域700a、絞り流路700bを経て可動側潤滑油流路114に潤滑油が流れる。
【0112】
ここで、溝部114bの一部領域700aは、固定部側潤滑油流路501内の潤滑油の流れを絞るオリフェス絞りを形成する。絞り流路700bは、固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を絞る矩形絞りを形成する。
【0113】
次に、図18に示すように、溝部114bのうち給油孔501aが連通する一部領域700aが大きくなり、溝部114bのうち一部領域700a以外の他の領域が小さくなる。このため、絞り流路700bの流路長が小さくなる。
【0114】
その後、図19に示すように、溝部114bのうち一部領域700aが更に大きくなり、溝部114bのうち一部領域700a以外の他の領域が更に小さくなる。このため、給油ピン50の給油孔501aの全体が溝部114bに連通している状態になる。
【0115】
このように、可動基板部111が図16図17図18図19の順に変位することにより、受給孔114aが給油孔501aに相対的に近づくにつれて、溝部114bのうち一部領域700aが大きくなるとともに、他の領域が小さくなる。
【0116】
すなわち、受給孔114aが給油孔501aに相対的に近づくにつれて、給油ピン50の給油孔501aうち溝部114bに連通する開口面積が徐々に大きくなり、かつ絞り流路700b(すなわち、矩形絞り)の流路長が徐々に小さくなる。
【0117】
具体的には、受給孔114aが給油孔501aに相対的に近づくにつれて、可動スクロール11の回転角度に対して給油ピン50の開口面積がほぼ比例して、かつ絞り流路700bの流路長がほぼ反比例する。
【0118】
したがって、可動基板部111の旋回に伴って、給油ピン50の固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力損失が徐々に小さくなる。このため、受給孔114aが給油孔501aに相対的に近づくにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に増える。
【0119】
すなわち、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量の勾配を小さく保ったまま、潤滑油の流量が直線的に増加する。
【0120】
その後、図20に示すように、給油孔501aのうち一部領域に溝部114bの一部領域700aが連通して、給油孔501aのうち一部領域以外の他の領域が受給孔114aの一部領域に連通した状態になる。
【0121】
これにより、給油孔501aを流れる潤滑油の一部が溝部114bの一部領域700aを経て可動側潤滑油流路114に潤滑油が流れる。
【0122】
これに加えて、給油孔501aを流れる潤滑油のうち溝部114bに流れる一部の潤滑油以外の残りの潤滑油は、給油ピン50の給油孔501aから可動側潤滑油流路114の一部領域700aに直接流れる。
【0123】
このとき、溝部114bは、給油孔501aを通過した潤滑油の流れを絞る絞り流路を構成する。可動側潤滑油流路114の一部領域700aは、給油孔501aを通過した潤滑油を絞る絞り流路を構成する。
【0124】
その後、図21に示すように、給油ピン50の給油孔501aの全体が可動基板部111の受給孔114aに連通した状態になる。これにより、給油孔501aから可動側潤滑油流路114に潤滑油が直接流れる。
【0125】
以上のように、図16図17図18図19図20図21の順に、給油孔501aに対して受給孔114aおよび溝部114b、114cが変位することにより、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に増える。
【0126】
その後、図22に示すように、給油孔501aの全体が受給孔114aに連通した状態で、給油孔501aに対して受給孔114aおよび溝部114b、114cが変位方向Heの一方側に変位する。このため、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量は、一定値に維持される。
【0127】
次に、図23に示すように、給油孔501aの一部領域が溝部114cの一部領域700cに連通して、給油ピン50の給油孔501aのうち一部領域以外の他の領域が受給孔114aの一部領域に連通した状態になる。
【0128】
これにより、給油ピン50の給油孔501aを流れる潤滑油の一部が溝部114cを経て可動側潤滑油流路114に潤滑油が流れる。給油ピン50の給油孔501aを流れる潤滑油のうち溝部114cに流れる一部の潤滑油以外の残りの潤滑油は、可動側潤滑油流路114の一部領域721に直接流れる。
【0129】
このとき、溝部114bの一部領域700cが給油孔501aを通過した潤滑油を絞る絞り流路を構成する。可動側潤滑油流路114の一部領域721は、給油孔501aを通過した潤滑油を絞る絞り流路を構成する。
【0130】
その後、図24に示すように、給油孔501aの全体が溝部114cの一部領域700cに連通して、溝部114bのうち一部領域700c以外の他の領域が絞り流路700dを形成する。絞り流路700dは、可動スクロール11および固定スクロール12によって形成されている。
【0131】
これにより、給油ピン50の給油孔501aを流れる潤滑油が溝部114cを経て可動側潤滑油流路114に潤滑油が流れる。
【0132】
ここで、溝部114bの一部領域700cは、固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を絞るオリフェス絞りを形成する。絞り流路700dは、固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を絞る矩形絞りを形成する。
【0133】
その後、図25に示すように、溝部114cのうち給油孔501aが連通する一部領域700cが小さくなり、溝部114bのうち一部領域700c以外の他の領域が大きくなる。
【0134】
すなわち、給油孔501aうち溝部114cに連通する面積(すなわち、開口面積)が徐々に小さくなり、かつ絞り流路700d(すなわち、矩形絞り)の流路長が徐々に大きくなる。
【0135】
具体的には、受給孔114aが給油孔501aに相対的に遠くなるにつれて、可動スクロール11の回転角度に対して給油ピン50の開口面積がほぼ反比例して、かつ絞り流路700bの流路長がほぼ比例する。
【0136】
したがって、可動基板部111の旋回に伴って、給油ピン50の固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力損失が徐々に大きくなる。このため、受給孔114aが給油孔501aに相対的に遠くなるにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に減る。
【0137】
すなわち、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量の勾配を小さく保ったまま、潤滑油の流量が直線的に減少する。
【0138】
その後、図26に示すように、給油孔501aが溝部114cに対して変位方向He他方側にずれて配置されている。
【0139】
このとき、固定部側潤滑油流路501が可動基板部111によって閉じられた状態になる。このため、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に潤滑油が流れなくなる。
【0140】
このように、可動基板部111が図22図23図24図25図26の順に変位することにより、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力損失が徐々に大きくなる。
【0141】
このため、可動基板部111の旋回に伴って、受給孔114aが給油孔501aから相対的に遠くなるにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に減る。その後、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に潤滑油が流れなくなる。
【0142】
このように、可動スクロール11の旋回に伴って、図9のグラフGaに示すように、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量は、回転角度θaから回転角度θc迄の間には、緩やかに増大する。
【0143】
その後、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量は、回転角度θcから回転角度θd迄の間には、一定になる。
【0144】
次に、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量は、回転角度θdから回転角度θf迄の間には、緩やかに減少する。
【0145】
なお、図9のグラフGbは、可動基板部111に、溝部114b、114cを設けていない対比例において、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量を示す。
【0146】
以上説明した本実施形態によれば、電動圧縮機1は、ハウジング30内に配置され、可動スクロール11および固定スクロール12を備える圧縮部10を備える。可動スクロール11は、固定スクロール12に対して旋回することによって低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する。
【0147】
電動圧縮機1は、圧縮部10から吐出される高圧力冷媒から潤滑油を分離する気液分離器(すなわち、分離部)5を備える。固定スクロール12は、低圧力冷媒および高圧力冷媒の圧力差に基づいて気液分離器5で分離される潤滑油を流通させる固定部側潤滑油流路(すなわち、第1潤滑油流路)501を備える。
【0148】
固定スクロール12は、可動スクロール11側に開口されて固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を排出する給油孔501aを形成する固定部である。
【0149】
可動スクロール11は、固定スクロール12側に開口して給油孔501aからの潤滑油が流入される受給孔114aと、受給孔114aに流入される潤滑油をハウジング30内の軸受部26、軸受部27等に導くための可動側潤滑油流路114とを備える。
【0150】
可動スクロール11は、可動側潤滑油流路114に対して可動スクロール11の変位方向Heの一方側に配置され、かつ受給孔114aの変位の軌跡に沿うように形成される溝部114bを備える可動部である。
【0151】
溝部114bは、固定スクロール12側に開口されて、さらに可動側潤滑油流路114(すなわち、第2潤滑油流路)に連通し、さらに給油孔501aからの潤滑油を可動側潤滑油流路114に導くための溝部である。
【0152】
可動スクロール11は、可動側潤滑油流路114に対して可動スクロール11の変位方向Heの他方側に配置され、かつ受給孔114aの変位の軌跡に沿うように形成される溝部114cを備える。
【0153】
可動スクロール11の旋回によって受給孔114aおよび溝部114b、114cが給油孔501aに間欠的に連通する。
【0154】
図17図18図19に示すように、給油ピン50の給油孔501aは、溝部114bの一部領域700aに連通して、溝部114bのうち一部領域700a以外の他の領域が固定基板部121によって覆われた状態で絞り流路700bを形成する。
【0155】
溝部114bのうち一部領域700aは、固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を絞る絞り流路(すなわち、第1絞り流路)を形成する。絞り流路700bは、固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を絞る矩形絞り(すなわち、第2絞り流路)を形成する。
【0156】
可動スクロール11が旋回するに伴って、受給孔114aが給油孔501aに相対的に近づくにつれて、溝部114bのうち給油孔501aに連通する一部領域700aが増大しつつ、絞り流路700bの流路長が短くなる。
【0157】
このため、受給孔114aが給油孔501aに相対的に近づくにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力損失が徐々に小さくなる。
【0158】
これにより、受給孔114aが給油孔501aに相対的に近づくにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に増える。したがって、溝部114bを設けることにより、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114へ流れる潤滑油の流量が増大する際の、潤滑油の圧力変動を抑えることができる。
【0159】
図24図25に示すように、給油ピン50の給油孔501aが溝部114cの一部領域700cに連通して、溝部114cのうち一部領域700c以外の他の領域が絞り流路700dを形成する。
【0160】
溝部114cのうち一部領域700cは、固定部側潤滑油流路501を通過した潤滑油を絞る絞り流路(すなわち、第1絞り流路、第3絞り流路)を形成する。絞り流路700dは、固定部側潤滑油流路501内の潤滑油の流れを絞る矩形絞り(すなわち、第2絞り流路、第4絞り流路)を形成する。
【0161】
可動スクロール11が旋回するに伴って、受給孔114aが給油孔501aから相対的に遠くなるにつれて、溝部114bのうち給油孔501aに連通する一部領域700cが減少しつつ、絞り流路700dの流路長が長くなる。
【0162】
このため、受給孔114aが給油孔501aから相対的に遠くなるにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力損失が徐々に大きくなる。
【0163】
これにより、受給孔114aが給油孔501aから相対的に遠くなるにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に減少する。したがって、溝部114cを設けることにより、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114へ流れる潤滑油の流量が減少する際の、潤滑油の圧力変動を抑えることができる。
【0164】
一方、図27に示すように、溝部114b、114cを設けない対比例の場合において、可動スクロール11を旋回させることにより、図29図33に示すように、受給孔114aに対して受給孔114aを変位させる。
【0165】
この場合、図28のグラフGbおよび図34に示すように、可動スクロール11の回転角度θ1~θ2の潤滑油の増大時の勾配が急峻になる。可動スクロール11の回転角度θ4~θ5の潤滑油の減少時の勾配は、急峻になる。
【0166】
このため、固定部側潤滑油流路501から給油孔501aを通して可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力変動は、大きくなる。図33は、可動基板部111に溝部114b、114cを設けていない対比例において、給油ピン50の給油孔501aから受給孔114aへ潤滑油が流れる給油期間において、潤滑油の圧力が変動する状態を示すタイミングチャートである。
【0167】
これに対して、上述の如く、図9に示すように、溝部114b、114cを設けることにより、可動スクロール11が旋回するに伴って、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量変化の勾配を小さくすることができる。
【0168】
図9の可動スクロール11の回転角度θa~θc、θd~θfの間のグラフGaの勾配は、図28の可動スクロール11の回転角度θ1~θ2、θ4~θ5の間のグラフGbの勾配に比べて、小さくなっている。
【0169】
以上により、本実施形態では、溝部114b、114cを設けることにより、図35図36に示すように、固定部側潤滑油流路501から給油孔501aを通して可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力変動を小さくすることができる。このため、圧力の変動に伴って、騒音、振動が発生することを未然に抑えることができる。
【0170】
図35は、可動基板部111に溝部114b、114cを設けていない対比例において、給油ピン50の給油孔501aから受給孔114aへ流れる潤滑油の圧力の変動を示すタイミングチャートである。
【0171】
図36は、可動基板部111に溝部114b、114cを設けていない本実施形態において、給油ピン50の給油孔501aから受給孔114aへ流れる潤滑油の圧力の変動を示すタイミングチャートである。
【0172】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、可動基板部111に溝部114bおよび溝部114cを設けた例について説明した。しかし、これに代えて、本第2実施形態では、図37に示すように、可動基板部111において溝部114bおよび溝部114cのうち溝部114cのみを設けてもよい。
【0173】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、可動基板部111に溝部114bおよび溝部114cを設けた例について説明した。しかし、これに代えて、本第2実施形態では、図38に示すように、可動基板部111において溝部114bおよび溝部114cのうち溝部114bのみを設けてもよい。
【0174】
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、可動基板部111に溝部114bおよび溝部114cを設けた例について説明した。しかし、本第4実施形態では、溝部114bおよび溝部114cのそれぞれの幅方向寸法を変化させる例について図39を参照して説明する。
【0175】
本実施形態の溝部114bは、変位方向Heの一方側に進むほど、幅方向寸法を小さくするように形成されている。幅方向寸法とは、変位方向Heに直交して、かつ上下方向に直交する方向である。上下方向とは、可動スクロール11、および固定スクロール12が並ぶ方向である。
【0176】
本実施形態の溝部114cは、変位方向Heの他方側に進むほど、幅方向寸法を小さくするように形成されている。
【0177】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、可動基板部111に溝部114bおよび溝部114cを設けた例について説明した。しかし、本第5実施形態では、溝部114bおよび溝部114cのそれぞれの上下方向寸法を変化させる例について図40を参照して説明する。
【0178】
本実施形態の溝部114bは、変位方向Heの一方側に進むほど、上下寸法を小さくするように形成されている。本実施形態の溝部114cは、変位方向Heの他方側に進むほど、上下寸法を小さくするように形成されている。上下方向とは、可動スクロール11、および固定スクロール12が並ぶ方向である。
【0179】
(第6実施形態)
上記第1~第5実施形態では、固定スクロール12が固定部側潤滑油流路501を備え、かつ可動スクロール11が可動側潤滑油流路114、溝部114b、114cを備える例について説明した。
【0180】
これに代えて、可動スクロール12Aが固定部側潤滑油流路501を備え、かつ固定スクロール11Aが可動側潤滑油流路114、溝部114b、114cを備える本第6実施形態について図41を参照して説明する。図41において、図3と同一符号は、同一のものを示し、その説明を省略する。
【0181】
すなわち、本実施形態の電動圧縮機1では、上記第1~第5実施形態の固定スクロール12に代わる固定スクロール11Aが設けられ、上記第1~第5実施形態の可動スクロール11に代わる可動スクロール12Aが設けられている。
【0182】
このため、可動スクロール12Aは、固定スクロール11Aに対して旋回運動する可動部材を構成する。可動スクロール12Aには、上記第1実施形態の固定スクロール12の固定基板部121および固定歯部122が設けられている。
【0183】
さらに、固定スクロール11Aは、停止状態を維持する固定部材を構成する。固定スクロール11Aには、上記第1実施形態の可動基板部111および可動歯部112が設けられている。
【0184】
本実施形態では、可動スクロール12Aが固定スクロール11Aに対して旋回運動することにより、低圧力冷媒を吸入して圧縮してこの圧縮した冷媒を高圧力冷媒として吐出する圧縮部10を構成する。
【0185】
可動スクロール12Aが旋回するに伴って、給油孔501aが受給孔114aに相対的に近づくにつれて、溝部114bのうち給油孔501aに連通する一部領域700aが増大しつつ、絞り流路700bの流路長が短くなる。
【0186】
このため、給油孔501aが受給孔114aに相対的に近づくにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力損失が徐々に小さくなる。
【0187】
これにより、給油孔501aが受給孔114aに相対的に近づくにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に増える。したがって、溝部114bを設けることにより、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114へ流れる潤滑油の流量が増大する際の、潤滑油の圧力変動を抑えることができる。
【0188】
可動スクロール12Aが旋回するに伴って、給油孔501aが受給孔114aから相対的に遠くなるにつれて、溝部114bのうち給油孔501aに連通する一部領域700cが減少しつつ、絞り流路700dの流路長が長くなる。
【0189】
このため、給油孔501aが受給孔114aから相対的に遠くなるにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力損失が徐々に大きくなる。
【0190】
これにより、給油孔501aが受給孔114aから相対的に遠くなるにつれて、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の流量が徐々に減少する。
【0191】
したがって、溝部114cを設けることにより、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114へ流れる潤滑油の流量が減少する際の、潤滑油の圧力変動を抑えることができる。
【0192】
以上により、本実施形態では、上記第1実施形態と同様、溝部114b、114cを設けることにより、固定部側潤滑油流路501から可動側潤滑油流路114に流れる潤滑油の圧力変動を小さくすることができる。
【0193】
このため、圧力の変動に伴って、騒音、振動が発生することを未然に抑えることができる。
(他の実施形態)
【0194】
(1)上記第1~第6実施形態では、電動圧縮機1を、ヒートポンプ式給湯機にて給湯水を加熱する給湯器に適用した例について説明した。しかし、これに代えて、電動圧縮機1を、自動車用空調装置、ビル用空調装置、家庭用空調装置等の各種の空調装置に適用してもよい
【0195】
(2)上記第1~第6実施形態では、ヒートポンプサイクルの冷媒として二酸化炭素を採用した例について説明した。しかし、これに代えて、ヒートポンプサイクルの冷媒としては、二酸化炭素以外のフロン等の各種冷媒を用いてもよい
【0196】
(3)上記第1~第6実施形態では、油分離器40をハウジング30の外側に配置した例について説明したが、これに代えて、油分離器40をハウジング30の内側に配置してもよい。
【0197】
(4)上記第1~第6実施形態では、軸受部26、軸受部27が回転軸25の外表面に対して摺動するハウジング30内の摺動部を構成する例について説明した。しかし、これに限らず、ハウジング30内の摺動部として、一方の部材が他方の部材に対して摺動する摺動部であれば、どのような部位でもよい。
【0198】
(5)上記第1~第6実施形態を実施するにあたり、油分離器40としては、圧縮部10にて圧縮された高圧力冷媒から潤滑油を分離して貯めるものであればよく、遠心力を用いたものに限らず、各種の油分離器を用いてもよい。
【0199】
(5)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0200】
1 電動圧縮機
10 圧縮部
11 可動スクロール
12 固定スクロール
30 ハウジング
40 油分離器
501 給油孔
501a 給油孔
114a 受給孔
114b 溝部
700a 一部領域
700b 他の領域
図1
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