(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112224
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】建築物用ルーバー装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240813BHJP
E04F 10/08 20060101ALI20240813BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240813BHJP
E06B 7/084 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
E06B5/00 A
E04F10/08
E04F13/08 Z
E06B7/084
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017148
(22)【出願日】2023-02-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000250432
【氏名又は名称】理研軽金属工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】李 時桓
【テーマコード(参考)】
2E036
2E105
2E110
2E239
【Fターム(参考)】
2E036JA06
2E036KA03
2E036LA06
2E036LB05
2E036NA08
2E036NB01
2E036QA02
2E105AA03
2E105DD04
2E105FF14
2E110AA04
2E110AB04
2E110AB22
2E239AA01
2E239AA09
(57)【要約】
【課題】効率的に太陽光発電を実現できる建築物用ルーバー装置を提供する。
【解決手段】建築物50の壁面50aに設置される建築物用ルーバー装置10であって、複数のルーバー材20を備え、ルーバー材20は、所定の面に開口部21aを形成したルーバー本体21と、ルーバー本体21の開口部21aに取り付けられる太陽電池モジュール23と、を有し、ルーバー材20の内部には、ルーバー材20の長手方向の全長に渡って中空部20bが形成されており、太陽電池モジュール23の背面23bが中空部20bに露出している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面に設置される建築物用ルーバー装置であって、
複数のルーバー材を備え、
前記ルーバー材は、所定の面に開口部を形成したルーバー本体と、前記ルーバー本体の開口部に取り付けられる太陽電池モジュールと、を有し、
前記ルーバー材の内部には、前記ルーバー材の長手方向の全長に渡って中空部が形成されており、前記太陽電池モジュールの背面が前記中空部に露出している、
建築物用ルーバー装置。
【請求項2】
前記中空部を通過した空気を室内空間へ取り込むことが可能である、
請求項1に記載の建築物用ルーバー装置。
【請求項3】
前記中空部を通過した空気を屋外へ排出可能である、
請求項2に記載の建築物用ルーバー装置。
【請求項4】
前記複数のルーバー材の角度を変えるための角度変更手段を備える、
請求項1に記載の建築物用ルーバー装置。
【請求項5】
前記角度変更手段は、予め設定された条件に基づき、自動的に前記複数のルーバー材の角度を変える、
請求項4に記載の建築物用ルーバー装置。
【請求項6】
前記ルーバー材が回転可能に取り付けられた枠体を備える、
請求項1に記載の建築物用ルーバー装置。
【請求項7】
前記枠体を建築物開口を囲むように取り付けた、
請求項6に記載の建築物用ルーバー装置。
【請求項8】
前記ルーバー材は、前記中空部が上下方向に延びるように配置され、前記中空部の上下端部に外部と連通する通気口が形成されている、
請求項1に記載の建築物用ルーバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の壁面に取り付けられる建築物用ルーバー装置に関し、特に、太陽電池モジュールを備えた建築物用ルーバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電と換気を行う建物用ルーバが開示されている。この建物用ルーバは、水平方向に所要の長さを有しかつ所要の上向き角度を有する受光面を備えたルーバ本体を、上下方向に所要の間隔を隔てて複数配設することによりルーバ本体の相互間に換気口を形成し、ルーバ本体の受光面に太陽電池を配置している。この発明では、ルーバ本体内部に形成した空間部に冷却空気を流通させるための空気流通孔を形成することで、換気口を通る空気によってルーバ本体が冷却されるうえに、空気流通孔からルーバ本体内に流動する空気によって太陽電池の温度上昇を抑制することができて、太陽電池の高い発電効率を維持できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された発明は、ルーバ本体の裏面等に小さな空気流通孔を形成したものであるため、空気の流通量が少なく、太陽電池の冷却効果に限界があった。また、空気流通孔を形成する加工の手間が必要であった。
そこで、本発明は、効率的に太陽光発電を実現できる建築物用ルーバー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、本発明は、建築物の壁面に設置される建築物用ルーバー装置であって、複数のルーバー材を備え、前記ルーバー材は、所定の面に開口部を形成したルーバー本体と、前記ルーバー本体の開口部に取り付けられる太陽電池モジュールと、を有し、前記ルーバー材の内部には、前記ルーバー材の長手方向の全長に渡って中空部が形成されており、前記太陽電池モジュールの背面が前記中空部に露出している。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上記の通りであり、ルーバー材は、所定の面に開口部を形成したルーバー本体と、ルーバー本体の開口部に取り付けられる太陽電池モジュールと、を有し、ルーバー材の内部には、ルーバー材の長手方向の全長に渡って中空部が形成されており、太陽電池モジュールの背面が中空部に露出している。このような構成によれば、中空部を通過する空気によって太陽電池モジュールが背面から直接的に冷却されるため、太陽電池の冷却効果を高めることができる。しかも、ルーバー材の中空部を利用して空気の流通経路を形成しているため、ルーバー材の加工も最小限とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】建築物用ルーバー装置を設置した建築物の外観図である。
【
図2】建築物用ルーバー装置を設置した状態を示す側面図である。
【
図4】(a)ルーバー材を組み立てる前の平面図、(b)ルーバー材を組み立てた後の平面図である。
【
図5】(a)小口蓋を取り付けたルーバー材の平面図、(b)シャフトに取り付けたルーバー材の背面図である。
【
図6】ルーバー材の角度変化を説明する図であって、(a)受光面が正面に向いた図、(b)受光面が斜めを向いた図、(c)受光面が側方を向いた図である。
【
図7】ルーバー材の中空部を通過した空気を屋外へ排出する様子を示す図である。
【
図8】ルーバー材の中空部を通過した空気を室内空間へ取り込む様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
本実施形態に係る建築物用ルーバー装置10は、太陽光発電の機能を備えたものであり、
図1に示すように、建築物50の壁面50aに取り付け可能である。建築物50の壁面50aを利用することで、広い発電面積を確保することができる。この建築物用ルーバー装置10は、枠体11の内側に複数のルーバー材20が取り付けられており、この枠体11を任意の壁面50aに固定することで、既存の建築物50にも容易に取り付けることができる。
【0009】
この建築物用ルーバー装置10は、
図2に示すように、窓などの建築物開口50bの前面に取り付けてもよい。このとき、枠体11は、建築物開口50bを囲むように取り付けられる。このように建築物開口50bの前面をルーバー材20で覆うことで、建築物用ルーバー装置10を日除けとして使用することができる。なお、建築物用ルーバー装置10は、必ずしも建築物開口50bの前面に取り付けなければならないわけではなく、任意の壁面50aに取り付けることができる。なお、
図1においては、建築物用ルーバー装置10を1つの建築物開口50bにのみ取り付けているが、この
図1は例示に過ぎない。すなわち、建築物用ルーバー装置10は、任意の壁面50aに、複数取り付けることができる。例えば、建築物開口50bごとに、建築物用ルーバー装置10を取り付けてもよい。また、発電効率を考えれば、建築物用ルーバー装置10は、南向きの壁面50aに取り付けることが好ましい。
この建築物用ルーバー装置10は、
図3に示すように、枠体11、ルーバー材20、シャフト35、角度変更手段30を備える。
【0010】
枠体11は、上枠11aと下枠11bと左右の縦枠11cとからなる四方枠である。本実施形態においては、上枠11aと下枠11bとの間に複数のシャフト35が垂直に架け渡してある。複数のシャフト35には、それぞれにルーバー材20が固定されている。
【0011】
ルーバー材20は、細長い羽板状の部材である。本実施形態に係る建築物用ルーバー装置10は、複数のルーバー材20が互いに干渉しないように所定間隔で平行に配置されている。各ルーバー材20は、シャフト35に固定されており、シャフト35と一体的に回転するようになっている。これら複数のルーバー材20は連動して回転するようになっており、互いに平行な状態を保って同じ角度で回転する。
このルーバー材20は、
図4、
図5に示すように、ルーバー本体21、固定用部材22、太陽電池モジュール23、小口蓋24を有して構成されている。
【0012】
ルーバー本体21は、
図4(a)に示すような、断面略コ字形の部材であり、所定の面(後述する受光面20a)に開口部21aが形成されている。ルーバー本体21は、例えばアルミなどの金属で構成される。ルーバー本体21は、ボルト26用の穴を除けば、全長に渡って同一形状であり、押出形材を使用することができる。また、ルーバー本体21は、押出形材を使用せずに、金属板を曲折して形成してもよい。
【0013】
本実施形態に係るルーバー本体21は、
図4(a)に示すように、背面板21bと、背面板21bの両端から直角に延びる一対の側面板21cと、側面板21cの先端をL字形に曲げた形状の受部21dと、を備える。両側の受部21dは、互いに先端が向き合うように延びている。また、両側の受部21dの表面は、面一に形成されている。このような形状により、両側の受部21dの間にスリット状の開口部21aが形成されている。この開口部21aは、太陽電池モジュール23によって塞がれる。具体的には、両側の受部21dの間に太陽電池モジュール23が架け渡されて固定される。このとき、面一な受部21dの表面に、太陽電池モジュール23の背面23bが当接する。なお、
図4(a)に示すルーバー本体21の形状は例示に過ぎず、開口部21aを太陽電池モジュール23で塞ぐことができる形状であれば、具体的な形状は任意に設計可能である。
【0014】
固定用部材22は、ルーバー本体21に対して太陽電池モジュール23を固定するための部材である。本実施形態に係る固定用部材22は、
図4(a)に示すように、断面L字形の部材であり、互いに直角に接続された側面部22aと前面部22bとを備える。この固定用部材22は、前面部22bで後述する太陽電池モジュール23を押さえ込んだ状態で、側面部22aがルーバー本体21の側面板21cにボルト26で固定される。固定用部材22は、例えば、ルーバー本体21の長手方向の長さと同じ長さで形成されている。なお、固定用部材22は、ルーバー本体21に対して太陽電池モジュール23を固定できるものであればよく、ルーバー本体21よりも短尺であってもよい。
【0015】
太陽電池モジュール23は、複数の太陽電池を枠内に配置したパネル状の部材である。太陽電池モジュール23は、太陽光を受けることで、太陽光エネルギーを電力に変換する。この太陽電池モジュール23は、上述したように、ルーバー本体21の開口部21aに取り付けられる。本実施形態に係る太陽電池モジュール23は、ルーバー本体21の開口部21aを完全に塞ぐことができる大きさで形成されている。例えば、ルーバー本体21の長手方向の長さと同じ長さで形成され、ルーバー本体21の横幅(
図4に示す左右方向の幅)と同じ横幅で形成されている。この太陽電池モジュール23は、
図4(b)に示すように、ルーバー本体21の受部21dと、固定用部材22の前面部22bとで挟み込まれて保持される。
【0016】
この太陽電池モジュール23は、正面23a(意匠面)が受光面20a(太陽光を受ける面)を構成するように、ルーバー本体21に取り付けられる。このため、ルーバー材20の受光面20aを太陽の方向に向けると、太陽電池モジュール23の正面23aで太陽光を受けることができ、効率的に発電を行うことができる。
【0017】
このルーバー材20の内部には、中空部20bが形成されている。中空部20bは、ルーバー本体21と太陽電池モジュール23とで挟まれた空間である。この中空部20bは、ルーバー材20の長手方向の全長に渡って形成される。この中空部20bを形成することで、ルーバー材20の内部を、ルーバー材20の長手方向に沿って、空気を流通させることができる。また、この中空部20bの前側の面は、太陽電池モジュール23によって形成されている。言い換えると、太陽電池モジュール23の背面23bが中空部20bに露出している。このため、中空部20bを流通する空気が太陽電池モジュール23の背面23bに沿って流れるようになっている。
【0018】
小口蓋24は、ルーバー材20の上下それぞれの端部に取り付けられる部材である。本実施形態に係る小口蓋24は、
図5に示すように、蓋部24aと取付部24eとを備えた、側面視L字形の部材である。
【0019】
蓋部24aは、ルーバー本体21の上下端部を塞ぐように取り付けられる平板状の部位である。ただし、この蓋部24aには、通気口(切欠き24bおよび通気孔24c)が形成されており、蓋部24aでルーバー材20の上下端部を完全に塞がないようにしている。すなわち、切欠き24bおよび通気孔24cによって、ルーバー材20の中空部20bの上下端部は外部と連通している。このため、中空部20bを上下に空気が通り抜けられるようになっている。
【0020】
切欠き24bは、
図5(a)に示すように、蓋部24aの中央付近を略U字形に切り欠いた形状である。この切欠き24bは、ルーバー材20の中心を貫通するシャフト35(後述)を通過させるために形成されている。また、通気孔24cは、切欠き24bの左右に複数形成された貫通孔である。本実施形態に係る通気孔24cは、長穴形状で形成されている。
【0021】
取付部24eは、小口蓋24をルーバー本体21に固定するための部位である。小口蓋24をルーバー本体21に固定するときには、取付部24eをルーバー材20の中空部20bに挿通し、ルーバー本体21の背面板21bに当接させた状態で、ボルト26を締結する。
【0022】
シャフト35は、ルーバー材20の回転軸となる棒状部材である。シャフト35は、ルーバー材20ごとに1対1で設けられている。それぞれのシャフト35は、ルーバー材20を長手方向に貫通しており、当該ルーバー材20に固定されている。このようにルーバー材20ごとに設けられた複数のシャフト35は、左右に一定間隔で配置されており、上枠11aおよび下枠11bに対して回転可能に取り付けられている。このシャフト35が回転することで、ルーバー材20も一体的に回転し、その角度が変化するようになっている。
【0023】
シャフト35には、
図5(b)に示すようなセットカラー36が固定されている。セットカラー36は、上下一対で設けられており、ルーバー材20の上下端部に配置された小口蓋24に当接する位置に配置されている。このセットカラー36を小口蓋24に固定することで、小口蓋24に固定されたルーバー材20がシャフト35に固定される。
【0024】
なお、ルーバー材20は、予め枠体11に取り付けられたシャフト35に対して組み付けられる。具体的には、シャフト35を前後から挟み込むように、ルーバー本体21と太陽電池モジュール23とを固定用部材22で固定する。また、小口蓋24の切欠き24bに沿ってシャフト35を通過させることで、小口蓋24をルーバー本体21に取り付ける。
【0025】
このようにルーバー材20をシャフト35に取り付けると、
図3に示すように、ルーバー材20の上下には、上枠11aおよび下枠11bとの間にスペースが生じる。このようなスペースを設けることで、ルーバー材20の端部(蓋部24a)から、外部の空気を取り込んだり、外部に空気を排出したりすることができる。
【0026】
また、このシャフト35には、
図3に示すように、ベルトギア37が固定されている。このベルトギア37には、図示しないベルトが掛けられており、シャフト35の回転を伝達する動力伝達手段が構成されている。この動力伝達手段によって、各シャフト35が同時に回転する(回転周期が一致する)ようになっている。具体的には、特定のシャフト35(
図3に示す最も左のシャフト35)が回転すると、このシャフト35に取り付けられたベルトギア37が駆動ギアとなり、駆動ギアの回転力がベルトによって他のベルトギア37(従動ギア)に伝達される。これにより、複数のシャフト35が同期して回転する。このような動きにより、
図6に示すように、複数のルーバー材20が同じ角度で回転し、すべての受光面20aが同じ方向を向くようになっている。なお、複数のベルトギア37の間に、ベルトの動きをスムーズにするためのローラー38を配置してもよい。
【0027】
本実施形態においては、複数のシャフト35を連動して回転させるための動力伝達手段として、ベルトギア37やベルトを使用しているが、動力伝達手段はこのような態様に限らず、周知の任意の手段を使用することができる。例えば、ギアのみで動力を伝達してもよいし、チェーンなどで動力を伝達してもよいし、ゴムなどの摩擦力で動力を伝達してもよい。
【0028】
角度変更手段30は、複数のルーバー材20の角度を変えるための機構である。例えば、
図3に示すように、モータ31と出力軸32を備える。モータ31が作動すると出力軸32が回転し、出力軸32に接続された1つのルーバー材20(
図3に示す最も左のルーバー材20)が回転する。1つのルーバー材20が回転すると、上記した動力伝達手段によって、すべてのルーバー材20が同期して回転する。このため、
図6に示すように、すべてのルーバー材20が常に同じ角度となる。
【0029】
角度変更手段30によってルーバー材20の角度を変えることで、季節や時間に応じて最適な角度にルーバー材20を設定することができる。すなわち、受光面20aを太陽に向けることで、太陽光線の吸収率を上げて、発電効率を上昇させることができる。また、受光面20aを太陽に向けることで、ルーバー材20による遮光効果が向上する。
【0030】
なお、角度変更手段30は、図示しないコントローラで操作可能であり、ルーバー材20の角度を任意に設定することができる。また、角度変更手段30は、この予め設定された条件に基づき、自動的に複数のルーバー材20の角度を変えることもできる。具体的には、角度変更手段30の制御装置に内蔵されたタイマーを作動させることで、ルーバー材20の受光面20aを自動的に太陽に向けるように制御することができる。このように制御すれば、太陽の動きに追従して自動的にルーバー材20の角度が変位するため、発電効率を上げることができる。
【0031】
ところで、本実施形態に係るルーバー材20は、内部に中空部20bを有しており、中空部20bを空気が通過可能である。中空部20bに滞留する空気は、太陽熱や太陽電池モジュール23の熱によって温められ、
図7に示すように上方へと流れていく。このように、中空部20bを上下方向に延びるように配置することで、温度差による自然対流によって空気の流れを作ることができる。このとき、中空部20bを空気が通過することで、太陽電池モジュール23が背面23bから冷却されるため、太陽光発電の効率を向上させることができる。
なお、中空部20bを通過した温められた空気は、屋外56へ排出することも可能であるし、室内空間55へ取り込むことも可能である。
【0032】
例えば、夏場などで排熱したい場合には、
図7に示すように、中空部20bを通過した空気を屋外56へ排出すればよい。具体的には、ルーバー材20の下端(下枠11bとの間)から屋外56の空気を取り込み、ルーバー材20の上端(上枠11aとの間)から屋外56へ空気を排出すればよい。このような空気の流れは、自然対流でも実現可能であるが、ファンなどで強制的に空気の流れを作ってもよい。
【0033】
また、冬場などは、
図8に示すように、中空部20bを通過して温められた空気を室内空間55へ取り込むようにしてもよい。このように温められた空気を使用して換気を行うことで、冬場の換気負荷を低減させることができる。なお、中空部20bを通過して温められた空気を室内空間55へ取り込む手段としては、例えば、壁面50aや枠体11にダクトの開口を設ければよい。このダクトを介して、自然換気または強制換気により、ルーバー材20の上方に滞留している空気を室内空間55へ取り込むことができる。
【0034】
以上説明したように、ルーバー材20は、所定の面に開口部21aを形成したルーバー本体21と、ルーバー本体21の開口部21aに取り付けられる太陽電池モジュール23と、を有し、ルーバー材20の内部には、ルーバー材20の長手方向の全長に渡って中空部20bが形成されており、太陽電池モジュール23の背面23bが中空部20bに露出している。このような構成によれば、中空部20bを通過する空気によって太陽電池モジュール23が背面23bから直接的に冷却されるため、太陽電池の冷却効果を高めることができる。しかも、ルーバー材20の中空部20bを利用して空気の流通経路を形成しているため、ルーバー材20の加工も最小限とすることができる。
【0035】
また、中空部20bを通過した空気を室内空間55へ取り込むことが可能であるため、冬期には熱回収を行った空気を室内に取り込むことで換気負荷の低減を実現できる。
【0036】
また、中空部20bを通過した空気を屋外56へ排出可能であるため、夏期には空気を外部に排出することで太陽電池モジュール23の温度上昇を抑制して発電効率の向上を実現できる。
【0037】
また、複数のルーバー材20の角度を変えるための角度変更手段30を備えるため、季節や時間によってルーバー材20を最適な角度に変位させることができ、太陽光線を効率的に吸収することができる。
【0038】
また、角度変更手段30は、予め設定された条件に基づき、自動的に複数のルーバー材20の角度を変えるため、ルーバー材20の受光面20aを自動で太陽光に向けることができる。例えば、タイマー機能を作動させて、終日、太陽の動きに合わせてルーバー材20を自動的に回転させることができる。
また、ルーバー材20が回転可能に取り付けられた枠体11を備えるため、任意の壁面50aに容易に建築物用ルーバー装置10を取り付けることができる。
また、建築物開口50bを囲むように枠体11を取り付けることで、太陽光発電を行いつつ、ルーバーを日除けや目隠しに使うことができる。
【0039】
また、ルーバー材20は、中空部20bが上下方向に延びるように配置され、中空部20bの上下端部に外部と連通する通気口(切欠き24b、通気孔24c)が形成されている。このような構成によれば、ルーバー材20の内部で太陽電池モジュール23の発熱などにより空気温度が上昇し、温められた空気の浮力により上昇気流が発生するため、中空部20bを下から上へと空気が通過し、自然換気が実行される。よって、特別な機構を用いることなく、太陽電池モジュール23の冷却効果が向上する。
【0040】
なお、上記した実施形態においては、ルーバー材20の長手方向が上下方向になるように配置したが、これに限らず、ルーバー材20を別の方向で配置してもよい。例えば、ルーバー材20の長手方向が水平になるように配置してもよいし、ルーバー材20の長手方向が斜めとなるように配置してもよい。
【0041】
また、上記した実施形態においては、建築物用ルーバー装置10を、直接、建築物50の壁面50aに取り付けるようにしたが、建築物用ルーバー装置10は必ずしも壁面50aに直接取り付けなくてもよい。本発明の建築物用ルーバー装置10は、壁面50aに当たる太陽光を遮ることができる程度に、壁面50aに近接して設置されていればよい。例えば、地面に設置した取付台に建築物用ルーバー装置10を取り付けるなどして、壁面50aの近くに建築物用ルーバー装置10を自立させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 建築物用ルーバー装置
11 枠体
11a 上枠
11b 下枠
11c 縦枠
20 ルーバー材
20a 受光面
20b 中空部
21 ルーバー本体
21a 開口部
21b 背面板
21c 側面板
21d 受部
22 固定用部材
22a 側面部
22b 前面部
23 太陽電池モジュール
23a 正面
23b 背面
24 小口蓋
24a 蓋部
24b 切欠き
24c 通気孔
24e 取付部
26 ボルト
30 角度変更手段
31 モータ
32 出力軸
35 シャフト
36 セットカラー
37 ベルトギア
38 ローラー
50 建築物
50a 壁面
50b 建築物開口
55 室内空間
56 屋外