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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112226
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】X線検査システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240813BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240813BHJP
   G01N 23/10 20180101ALI20240813BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/00 610
G01N23/04
G01N23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017151
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】000198318
【氏名又は名称】株式会社IHI検査計測
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 啓
(72)【発明者】
【氏名】坂本 陸
(72)【発明者】
【氏名】中島 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
(72)【発明者】
【氏名】大貫 宏和
【テーマコード(参考)】
2G001
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA06
2G001FA29
2G001HA13
2G001LA10
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA16
5L096DA01
5L096EA03
5L096EA14
5L096EA16
5L096GA19
5L096GA34
5L096GA51
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】貨物の種類を正確に推定する。
【解決手段】X線検査システム100は、検査対象である貨物をX線を用いて撮像し、検査対象のX線画像を出力する撮像部400と、税関申告情報に含まれる貨物の大きさに基づいて、X線画像のサイズを変更する第1の画像サイズ変更部582と、サイズが変更されたX線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分X線画像に分割する第1の画像分割部584と、貨物に関する学習用X線画像に基づいて構築された学習モデルを用いて、複数の部分X線画像のうち少なくとも1つに写っている貨物の種類を推定する推定部586と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である貨物をX線を用いて撮像し、前記検査対象のX線画像を出力する撮像部と、
税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさに基づいて、前記X線画像のサイズを変更する第1の画像サイズ変更部と、
前記サイズが変更された前記X線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分X線画像に分割する第1の画像分割部と、
前記貨物に関する学習用X線画像に基づいて構築された学習モデルを用いて、前記複数の部分X線画像のうち少なくとも1つに写っている前記貨物の種類を推定する推定部と、
を備える、X線検査システム。
【請求項2】
前記所定の画像サイズは、前記学習モデルを構築するために用いられる学習画像のサイズである、
請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項3】
1種または複数種類の前記貨物の種類および大きさに関する情報を含む税関申告情報が蓄積される税関データベースと、
学習対象である貨物をX線を用いて撮像して得られた学習用X線画像が蓄積されるX線画像データベースと、
前記税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさに基づいて、前記学習用X線画像のサイズを変更する第2の画像サイズ変更部と、
前記サイズが変更された前記学習用X線画像を、前記所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像に分割する第2の画像分割部と、
前記部分学習用X線画像に基づいて、前記学習対象の貨物の学習モデルを構築する学習部と、
を備える、
請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項4】
前記税関申告情報と、ユーザ入力とに基づいて、前記学習用X線画像に写っている前記学習対象の各貨物の種類を、前記学習用X線画像に関連付ける関連付け部、をさらに備え、
前記学習部は、
前記部分学習用X線画像を前記学習モデルに入力し、当該学習モデルから出力された前記学習対象の前記貨物の種類が、前記部分学習用X線画像に関連付けられた前記貨物の種類と一致するように、前記学習モデルのパラメータを変更する、
請求項3に記載のX線検査システム。
【請求項5】
前記税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさが所定の第1基準値より大きい場合、前記画像サイズ変更部は、前記X線画像のサイズを縮小する、
請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項6】
前記税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさが所定の第2基準値未満である場合、前記画像サイズ変更部は、前記X線画像の周囲に余白領域を追加することで前記X線画像のサイズを拡大する、
請求項1に記載のX線検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
税関などで、輸出入検査を受けるコンテナ内の貨物を検査するために、X線検査装置を用いてコンテナ越しに貨物のX線画像を撮像するX線検査装置が用いられている。このX線検査装置では、撮像されたX線画像を事前に学習した学習モデルに入力させ、コンテナ内の貨物の種類を出力として得ることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、X線検査装置を用いてコンテナ越しに貨物のX線画像を撮像し、撮像されたX線画像を分類器に入力し、コンテナ内に収容された貨物の種類を出力として得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6338674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、貨物を収容するコンテナは、貨物に比べて非常に大きいものであるため、コンテナを撮像したX線画像は、必然的に貨物単体を撮像したX線画像よりも非常に大きいものとなる。このようなコンテナを撮像したX線画像を用いて学習モデルを学習させる場合、X線画像が非常に大きいことから、学習精度を高めることが困難である。そのため、X線画像を例えば特許文献1に記載のように分割し、より小さいX線画像を学習モデルに入力させることで、学習モデルの学習精度を高めるという対応がなされている。
【0006】
しかしながら、X線画像を小さく分割するほど、小さい貨物の検出精度を上げることができる一方、大きい貨物の検出精度が低くなる。反対に、X線画像を大きく分割するほど、大きい貨物の検出精度を上げることができる一方、小さい貨物の検出精度が低くなる。このように、さまざまな大きさの貨物が収容されるコンテナにおいて、コンテナを撮像したX線画像からコンテナ内の貨物の種類を正確に推定することは困難であった。
【0007】
そこで、本開示の目的は、貨物の種類を正確に推定することが可能なX線検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のX線検査システムは、
検査対象である貨物をX線を用いて撮像し、前記検査対象のX線画像を出力する撮像部と、
税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさに基づいて、前記X線画像のサイズを変更する第1の画像サイズ変更部と、
前記サイズが変更された前記X線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分X線画像に分割する第1の画像分割部と、
前記貨物に関する学習用X線画像に基づいて構築された学習モデルを用いて、前記複数の部分X線画像のうち少なくとも1つに写っている前記貨物の種類を推定する推定部と、
を備える。
【0009】
前記所定の画像サイズは、前記学習モデルを生成するために用いられる学習画像のサイズであってもよい。
【0010】
1種または複数種類の前記貨物の種類および大きさに関する情報を含む税関申告情報が蓄積される税関データベースと、
学習対象である貨物をX線を用いて撮像して得られた学習用X線画像が蓄積されるX線画像データベースと、
前記税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさに基づいて、前記学習用X線画像のサイズを変更する第2の画像サイズ変更部と、
前記サイズが変更された前記学習用X線画像を、前記所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像に分割する第2の画像分割部と、
前記部分学習用X線画像に基づいて、前記学習対象の貨物の学習モデルを構築する学習部と、
を備えてもよい。
【0011】
前記税関申告情報と、ユーザ入力とに基づいて、前記学習用X線画像に写っている前記学習対象の各貨物の種類を、前記学習用X線画像に関連付ける関連付け部、をさらに備え、
前記学習部は、
前記部分学習用X線画像を前記学習モデルに入力し、当該学習モデルから出力された前記学習対象の前記貨物の種類が、前記部分学習用X線画像に関連付けられた前記貨物の種類と一致するように、前記学習モデルのパラメータを変更してもよい。
【0012】
前記税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさが所定の第1基準値より大きい場合、前記画像サイズ変更部は、前記X線画像のサイズを縮小してもよい。
【0013】
前記税関申告情報に含まれる前記貨物の大きさが所定の第2基準値未満である場合、前記画像サイズ変更部は、前記X線画像の周囲に余白領域を追加することで前記X線画像のサイズを拡大してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、貨物の種類を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に係るX線検査装置を示す模式図である。
図2図2は、同実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、同実施形態に係る推論モジュールおよび学習モジュールの機能を説明するための機能ブロック図である。
図4図4は、同実施形態に係る学習用X線画像を縮小および分割する画像処理を示す説明図である。
図5図5は、同実施形態に係る学習用X線画像を拡大および分割する画像処理を示す説明図である。
図6図6は、同実施形態に係る学習用X線画像を等倍で分割する画像処理を示す説明図である。
図7図7は、同実施形態に係る学習モデルの一例を示す概略構成図である。
図8図8は、同実施形態に係るX線検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
[1.X線検査システムの全体構成]
まず、図1を参照して、本開示の第1の実施形態に係るX線検査システム100の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係るX線検査システム100を示す模式図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るX線検査システム100は、検査対象のX線画像を撮像し、当該X線画像に基づいて検査対象の内容を検査するためのシステムである。X線検査システム100は、例えば、税関等に設置され、輸出入検査を受ける貨物を検査するための大型のX線検査システムであってもよい。ただし、X線検査システム100は、かかる例に限定されず、X線画像を用いて検査対象を検査するためのシステムであれば、他の各種の検査システムにも適用可能である。
【0019】
X線検査システム100は、税関データベース200と、X線画像データベース300、X線撮像装置400と、画像処理装置500とを備える。税関データベース200、X線画像データベース300、および、画像処理装置500は、有線もしくは無線のネットワークまたは配線などを介して、相互に通信可能に接続されている。また、X線撮像装置400、および、画像処理装置500は、有線もしくは無線のネットワークまたは配線などを介して、相互に通信可能に接続されている。
【0020】
税関データベース200は、検査対象であるコンテナ410に収容された貨物412に関する貨物情報を含む税関申告情報を蓄積する。税関申告情報は、税関申告書を基に作成される。税関申告情報には、検査対象としての1種または複数種類の貨物412の種類および大きさに関する貨物情報が含まれる。具体的に、税関申告情報には、貨物412の画像情報、名称、個数、大きさに関する貨物情報が含まれる。
【0021】
X線画像データベース300は、検査対象であるコンテナ410内の貨物412の種類を推定する際に使用する学習モデルを構築するための学習用X線画像を蓄積する。学習用X線画像は、コンテナ410に収容された貨物412を学習対象として設定し、学習対象として設定された貨物412をX線撮像装置400により撮像することで得ることができる。具体的に、学習用X線画像は、コンテナ410内に学習対象としての貨物412を収容し、X線撮像装置400を用いてコンテナ410内の貨物412をX線420を用いて撮像することで得ることができる。なお、学習用X線画像は、税関申告情報における貨物412の画像情報として、税関申告情報に関連付けられて税関データベース200に保存されてもよい。また、本実施形態のX線画像データベース300は、X線撮像装置400により撮像された学習用X線画像を蓄積するが、これに限定されず、X線検査システム100の外部から取得された学習用X線画像を蓄積してもよい。例えば、X線画像データベース300は、X線検査システム100の外部に設けられた他のX線撮像装置により撮像された学習用X線画像を取得して蓄積してもよい。
【0022】
X線撮像装置400は、本開示の撮像部の一例である。X線撮像装置400は、X線420を用いて検査対象を撮像する。X線撮像装置400は、検査対象であるコンテナ410に収容された貨物412を、X線420を用いて撮像して、当該検査対象の貨物412が写っているX線画像を生成する。X線画像は、例えば、白黒の濃淡で撮像対象物(例えば貨物412)を表現するグレースケール画像であってよい。X線撮像装置400は、撮像処理により得られた検査対象のX線画像を画像処理装置500に出力する。また、X線撮像装置400は、学習対象である貨物412の学習用X線画像を画像処理装置500に出力する。
【0023】
画像処理装置500は、X線画像に対する各種の画像処理と、各種の演算処理を実行する情報処理装置である。詳しくは後述するように、画像処理装置500は、税関データベース200に蓄積される税関申告情報とX線画像データベース300に蓄積される学習用X線画像に基づいて、X線画像に写っている検査対象の貨物412の種類を推定するための学習モデルを構築することができる。また、画像処理装置500は、構築した学習モデルに基づいて、X線画像から検査対象である貨物412の種類を推定することができる。
【0024】
以上のような税関データベース200、X線画像データベース300、X線撮像装置400と画像処理装置500を備えたX線検査システム100により、コンテナ410に収容されている検査対象の貨物412の貨物の種類を正確に推定することができる。したがって、ユーザ(例えば、税関等の検査官)は、X線検査システム100を利用して、検査対象のコンテナ410内の貨物412の正確な種類を、容易に把握できる。よって、ユーザは、X線画像の目視で観察して貨物412を特定する必要がないので、ユーザの検査作業の負担を大幅に軽減できる。
【0025】
[2.貨物について]
次に、図1を参照して、本実施形態に係るX線検査システム100による検査対象である貨物412について説明する。
【0026】
図1に示すように、貨物412は、X線検査システム100による検査対象である。貨物412は、さまざまな種類、大きさを有するものであり、少なくとも一の貨物412がコンテナ410に収容される。なお、貨物412は、学習モデルを構築する場合、学習対象として設定される。本実施形態では、貨物412は、運送用のコンテナ410の内部に収容されている。なお、貨物412は、運送対象となる物品であればよく、例えば、貨物412は、製品、部品、材料、機械設備または食料品など、各種の物品であってよい。また、本実施形態に係る検査対象の貨物412は、コンテナ410に収容された状態で保管されているが、かかる例に限定されない。貨物412は、コンテナ410などの運送用容器に収容されずに、剥き出しで保管されていてもよい。
【0027】
[3.X線撮像装置について]
次に、図1を参照して、本実施形態に係るX線撮像装置400の構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、X線撮像装置400(「撮像部」に相当する。)は、コンテナ410内に収容された貨物412を撮像して、貨物412のX線画像あるいは学習用X線画像を生成するための装置である。X線撮像装置400は、X線照射部430と、X線検出部440と、X線画像生成部450と、コントローラ460と、コンテナ410を搬送する不図示の搬送装置とを備える。
【0029】
X線照射部430とX線検出部440は、所定の間隔を空けて対向配置される。図1の例では、X線照射部430とX線検出部440は、上下方向に対向配置されている。X線照射部430は、X線420を発生させるX線源と、X線420の照射装置を備える。X線照射部430は、X線検出部440に向けて所定方向(例えば図1のZ方向)にX線420を照射する。当該X線420は、撮像対象物を通過して、X線検出部440に向かう。X線検出部440は、例えば、X線検出用のラインセンサなどで構成される。X線検出部440は、X線照射部430から照射されて撮像対象物を通過したX線420を検出する。X線検出部440は、検出したX線420を表す撮像信号を出力する。
【0030】
X線画像生成部450は、X線検出部440により検出されたX線420の撮像信号に基づいて、撮像対象物のX線画像を生成する。X線画像生成部450は、例えば、AD変換素子と、画像メモリとを備える。AD変換素子は、X線検出部440から出力された撮像信号をAD変換する。画像メモリは、AD変換された撮像信号を画素毎に記憶する。
【0031】
搬送装置は、ベルトコンベヤなどで構成され、貨物412が収容されたコンテナ410を所定方向(例えば図1のX方向)に搬送する。コントローラ460は、上記のX線照射部430、X線検出部440、X線画像生成部450および搬送装置など、X線撮像装置400の各部を制御する。
【0032】
かかる構成のX線撮像装置400により、検査対象の貨物412に対してX線420を走査して、貨物412のX線画像を撮像することができる。このようなX線撮像装置400によるX線撮像動作について、以下に説明する。
【0033】
X線撮像装置400は、搬送装置にコンテナ410を載置した状態で、搬送装置を動作させる。これにより、コンテナ410は、X線照射部430とX線検出部440に対して、X線420の走査方向(図1のX方向)に相対移動して、X線照射部430とX線検出部440との間を通過する。このとき、X線照射部430は、撮像対象のコンテナ410に向けてX線420を照射する。X線検出部440は、X線照射部430から照射されたX線420のうち、コンテナ410およびその内部の貨物412を通過したX線420を検出する。X線画像生成部450は、X線検出部440により検出されたX線420に基づいて、貨物412が写ったX線画像を生成する。
【0034】
ここで、本実施形態では、コンテナ410内の貨物412を上方から撮像したX線画像が生成される。当該X線画像は、貨物412がXY平面に投影された二次元画像であり、貨物412を上面側から透視した画像に相当する。しかし、X線画像の撮像方向は、上下方向の例に限定されない。例えば、X線画像は、貨物412を下面側(Z方向)から撮像した画像であってもよい。あるいは、X線画像は、貨物412を右側面若しくは左側面側から撮像した側面方向(Y方向)の画像であってもよい。あるいは、X線画像は、貨物412を正面側若しくは背面側から撮像した正面方向(X方向)の画像であってもよい。また、複数の方向から貨物412を撮像した複数のX線画像を生成してもよい。
【0035】
また、X線撮像装置400は、上記のようにして、検査対象の貨物412のX線画像を生成する。X線撮像装置400は、生成したX線画像を、画像処理装置500に出力する。なお、貨物412が学習対象である場合も、検査対象である場合と同様にして学習用X線画像が生成され、生成された学習用X線画像は、画像処理装置500に出力される。
【0036】
ここで、本実施形態に係るX線撮像装置400により撮像されたX線画像の仕様の例について説明する。
【0037】
本実施形態に係るX線画像は、例えば、撮像された検査対象を白黒の濃淡で表現したグレースケール画像である。グレースケール画像は、色情報は含まず、明るさ情報のみを含んでいる。グレースケール画像は、例えば、1画素の輝度値(画素値)を8ビットで表現した画像であってよい。この8ビットのグレースケール画像の階調は、256階調(輝度値:0~255)である。輝度値0が黒を表し、輝度値255が白を表す。一般的な256階調のグレースケール画像を用いれば、本実施形態の特徴的な画像処理を好適に実現できる。ただし、X線画像の階調は、256階調以外であってもよい。
【0038】
[4.画像処理装置の構成]
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像処理装置500の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理装置500の構成を示すブロック図である。
【0039】
[4.1.画像処理装置のハードウェア構成]
まず、本実施形態に係る画像処理装置500のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理装置500のハードウェア構成の一例を示してある。
【0040】
図2に示すように、画像処理装置500は、プロセッサ510と、メモリ520と、ストレージ530と、通信装置540と、入力装置550と、出力装置560と、バス570とを備える。
【0041】
プロセッサ510は、コンピュータに搭載される演算処理装置である。プロセッサ510は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成されるが、その他のマイクロプロセッサで構成されてもよい。また、プロセッサ510は、1つまたは複数のプロセッサで構成されてもよい。プロセッサ510は、メモリ520または他の記憶媒体に記憶されているプログラムを実行する。これにより、画像処理装置500における各種の処理が実行される。
【0042】
プログラムは、コンピュータにより実行される命令を含むコンピュータプログラムである。なお、プログラムは、例えば、外部装置から通信ネットワークを通じた配信により、画像処理装置500に提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体(non transitory computer readable medium)を介して、画像処理装置500に提供されてもよい。画像処理装置500にプログラムをインストールすることにより、画像処理装置500は、当該プログラムにより定められた各種の機能を実現可能になる。
【0043】
メモリ520は、プログラムおよびその他の各種データを記憶する記憶媒体である。メモリ520は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などを有する。ROMは、プロセッサ510が使用するプログラム、およびプログラムを動作させるためのデータ等を記憶する不揮発性メモリである。RAMは、プロセッサ510により実行される処理に用いられる変数、演算パラメータ、演算結果等のデータを一時記憶する揮発性メモリである。ROMに記憶されたプログラムは、RAMに読み出され、CPUなどのプロセッサ510により実行される。
【0044】
ストレージ530は、各種の情報、データを保存するための記憶装置である。ストレージ530は、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、光ディスクなどの記録媒体と、当該記録媒体からデータを読み出す、または当該記録媒体に書き込むドライブとを有する。ストレージ530は、メモリ520と比べて大容量のデータを保存することができる。ストレージ530は、画像処理装置500に内蔵される内部ストレージであってもよいし、画像処理装置500の外部入出力用端子を介して接続される外部ストレージであってもよい。また、ストレージ530は、通信ネットワークを介して接続されるオンラインストレージであってもよい。
【0045】
通信装置540は、画像処理装置500に対して有線または無線により接続された外部装置と通信するためのデバイスである。通信装置540は、予め定められたプロトコルに従って、外部装置と通信接続を確立させて、外部装置との間で各種の情報、データを送信および受信する。
【0046】
入力装置550は、ユーザが画像処理装置500に情報を入力するために用いられる装置である。入力装置550は、例えば、タッチセンサ、キーボード、キーパッド、マウス、リモートコントローラ、ボタン、スイッチまたはダイヤルなどを含む。入力装置550は、マイクロフォン、音声認識モジュールなどの音声入力用の入力装置を含んでもよい。また、入力装置550は、画像処理装置500を遠隔操作するためのユーザ入力をリモートデバイスから受信する遠隔制御モジュールを含んでもよい。入力装置550は、ユーザによる入力操作を受け付けると、当該入力操作に応じた入力信号をプロセッサ510に送信する。
【0047】
出力装置560は、画像処理装置500の外部に情報、データを出力するための装置である。出力装置560は、テキスト、図形、画像等の情報を表示する表示装置と、音声を出力する音声出力装置とを含む。表示装置は、表示画面を有するディスプレイと、画像表示モジュールとを備える。ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)、またはブラウン管(CRT)などであってもよい。また、表示装置は、表示画面にタッチセンサが設けられたタッチパネルであってもよい。音声出力装置は、スピーカと、音声出力モジュールとを備える。
【0048】
バス570は、上記のプロセッサ510、メモリ520、ストレージ530、通信装置540、入力装置550および出力装置560を相互に接続する。これにより、これらのデバイス間で各種の情報、データを送信および受信することができる。
【0049】
[4.2.画像処理装置の機能構成]
次いで、図2図7を参照して、本実施形態に係る画像処理装置500の機能構成について説明する。
【0050】
図2に示すように、画像処理装置500は、推論モジュール580と、学習モジュール590とを備える。そして、図3に示すように、推論モジュール580は、第1の画像サイズ変更部582と、第1の画像分割部584と、推定部586とを備える。また、学習モジュール590は、関連付け部592と、第2の画像サイズ変更部594と、第2の画像分割部596と、学習部598とを備える。画像処理装置500のプロセッサ510がプログラムに基づいて演算処理を実行することにより、これら画像処理装置500の各機能部が実現される。
【0051】
本実施形態の画像処理装置500は、大きく分けて学習パートと推論パートの2つのパートに分かれて機能する。以下では、まず学習パートについて説明し、その後、推論パートについて説明する。
【0052】
(学習パート)
学習パートは、税関申告情報と学習用X線画像に基づいて、貨物412の種類を推定する際に使用される学習モデルを構築するパートである。
【0053】
図3は、本実施形態に係る推論モジュール580および学習モジュール590の機能を説明するための機能ブロック図である。図3に示すように、まず、関連付け部592は、X線画像データベース300から学習用X線画像を取得する。学習用X線画像は、上述したように、例えばX線撮像装置400により撮像されたコンテナ410内の学習対象である貨物412が写り込んでいるX線画像であり、既知の貨物412が写り込んでいるX線画像である。
【0054】
学習用X線画像に写り込んでいる貨物412の種類は、X線撮像装置400により撮像する際に、ユーザ(例えば、税関等の検査官)が把握していてもよいし、学習用X線画像に貨物412の位置、種類、大きさ等の貨物情報が関連付けられて保存されていてもよい。
【0055】
また、関連付け部592は、税関データベース200から税関申告情報を取得する。このとき、関連付け部592は、学習用X線画像を撮像した際のコンテナ410内の貨物412に関する貨物情報が含まれる税関申告情報を取得する。そして、関連付け部592は、税関申告情報から貨物412の種類および大きさに関する貨物情報を抽出する。なお、関連付け部592は、X線検査システム100の外部に設けられた他のX線画像データベースおよび他の税関データベースから学習用X線画像および税関申告情報を取得してもよい。
【0056】
つぎに、関連付け部592は、取得した学習用X線画像および税関申告情報を出力装置560の表示装置に表示させる。このとき、ユーザは、表示装置に表示された学習用X線画像および税関申告情報を確認し、学習用X線画像に写り込んでいる学習対象の各貨物412の位置、種類、大きさを把握する。
【0057】
ユーザは、入力装置550を用いて、学習用X線画像に対し、把握した学習対象の各貨物412の位置、種類、大きさに関する貨物情報を付加する。例えば、ユーザは、学習用X線画像に写り込む学習対象の各貨物412の位置にバウンディングボックス等の注釈をつける。
【0058】
関連付け部592は、学習用X線画像に対し、ユーザ入力により付加された学習対象の各貨物412の位置、種類、大きさに関する貨物情報を関連付ける処理を行う。このように、関連付け部592は、学習用X線画像と税関申告情報とユーザ入力とに基づいて、学習用X線画像に含まれる学習対象である各貨物412の位置、種類、大きさに関する貨物情報を学習用X線画像に関連付ける処理を行う。貨物情報が関連付けられた学習用X線画像は、ストレージ530に記憶される。ただし、関連付け部592は、貨物情報が関連付けられた学習用X線画像を第2の画像サイズ変更部594に出力してもよい。
【0059】
つぎに、第2の画像サイズ変更部594は、関連付け部592あるいはストレージ530から貨物情報が関連付けられた学習用X線画像を取得する。また、第2の画像サイズ変更部594は、関連付け部592から税関申告情報を取得する。なお、第2の画像サイズ変更部594は、税関データベース200から税関申告情報を取得してもよい。
【0060】
第2の画像サイズ変更部594は、税関申告情報に含まれる各貨物412の大きさに基づいて、学習用X線画像のサイズを変更する。具体的に、第2の画像サイズ変更部594は、税関申告情報に含まれる各貨物412の大きさが所定の第1基準値より大きい場合、あるいは、所定の第2基準値未満である場合、学習用X線画像のサイズを変更する。所定の第2基準値は、所定の第1基準値よりも小さい値である。例えば、所定の第2基準値は、所定の第1基準値の半分の値である。ただし、これに限定されず、所定の第2基準値は、所定の第1基準値と等しい値であってもよい。
【0061】
詳細には、第2の画像サイズ変更部594は、税関申告情報に含まれる各貨物412の大きさが所定の第1基準値より大きい場合、学習用X線画像のサイズを縮小する。また、第2の画像サイズ変更部594は、税関申告情報に含まれる各貨物412の大きさが所定の第2基準値未満である場合、学習用X線画像のサイズを拡大する。
【0062】
図4は、本実施形態に係る学習用X線画像を縮小および分割する画像処理を示す説明図である。図4では、学習用X線画像600Aに第1の貨物412Aが写り込んでいる。ここで、第1の貨物412Aの大きさは、所定の第1基準値より大きいものとする。
【0063】
まず、第2の画像サイズ変更部594は、税関申告情報に含まれる第1の貨物412Aの大きさが所定の第1基準値より大きいか否か判定する。つぎに、第2の画像サイズ変更部594は、第1の貨物412Aの大きさが所定の第1基準値より大きいと判定した場合、図4に示すように、学習用X線画像600Aのサイズを縮小した縮小X線画像700を生成する。
【0064】
ここで、所定の第1基準値は、貨物412を撮像したX線画像あるいは学習用X線画像において、所定の画像サイズ内に貨物412の全体が写る貨物412の大きさである。また、所定の画像サイズは、後述する学習モデルを構築するために用いられる学習画像のサイズであり、例えば、224px×224pxの画素数の画像サイズである。つまり、所定の第1基準値は、例えば、224px×224pxの画素数の画像サイズ内に貨物412の全体が写る貨物412の大きさである。
【0065】
図4では、所定の画像サイズを、一点鎖線で示す画像サイズ枠Sで表している。図4に示すように、学習用X線画像600A内の第1の貨物412Aの大きさは、所定の画像サイズを表す画像サイズ枠Sよりも大きく、第1の貨物412Aの全体が画像サイズ枠Sの枠内に収まっていない。
【0066】
第2の画像サイズ変更部594は、第1の貨物412Aの大きさが所定の第1基準値より大きいと判定した場合、第1の貨物412Aの大きさが所定の第1基準値となる縮小倍率を演算し、演算した縮小倍率を学習用X線画像600に乗じて、縮小X線画像700を生成する。
【0067】
なお、学習用X線画像600Aには、関連付け部592により、学習対象である各貨物412の位置、種類、大きさに関する貨物情報が関連付けられている。第2の画像サイズ変更部594は、学習用X線画像600Aに関連付けられた第1の貨物412Aの大きさに関する貨物情報に基づいて、第1の貨物412Aの大きさが所定の画像サイズより大きいか否かを判定してもよい。
【0068】
図4では、学習用X線画像600Aに関連付けられた第1の貨物412Aの大きさを表す貨物サイズ枠610Aを二点鎖線で表している。図4に示すように、貨物サイズ枠610Aの大きさは、所定の画像サイズを表す画像サイズ枠Sよりも大きい。
【0069】
第2の画像サイズ変更部594は、貨物サイズ枠610Aの大きさが所定の画像サイズより大きいと判定した場合、貨物サイズ枠610Aの大きさが所定の画像サイズとなる縮小倍率を演算し、演算した縮小倍率を学習用X線画像600Aに乗じて、縮小X線画像700を生成する。
【0070】
このように、第2の画像サイズ変更部594は、学習用X線画像に写る学習対象である各貨物412の大きさが所定の第1基準値あるいは所定の画像サイズより大きいか否かを判定する。そして、第2の画像サイズ変更部594は、学習用X線画像600Aに写る第1の貨物412Aの大きさが所定の第1基準値あるいは所定の画像サイズより大きいと判定した場合、学習用X線画像600Aのサイズを縮小し、縮小X線画像700を生成する。これにより、学習用X線画像600Aに写り込む第1の貨物412Aを所定の画像サイズ内に収めることができる。
【0071】
図5は、本実施形態に係る学習用X線画像を拡大および分割する画像処理を示す説明図である。図5では、学習用X線画像600Bに第2の貨物412Bが写り込んでいる。ここで、第2の貨物412Bの大きさは、所定の第2基準値より小さいものとする。
【0072】
まず、第2の画像サイズ変更部594は、税関申告情報に含まれる第2の貨物412Bの大きさが所定の第2基準値未満であるか否か判定する。つぎに、第2の画像サイズ変更部594は、第2の貨物412Bの大きさが所定の第2基準値未満であると判定した場合、図5に示すように、学習用X線画像600Bのサイズを拡大した拡大X線画像800を生成する。
【0073】
なお、学習用X線画像600Bには、関連付け部592により、学習対象である各貨物412の位置、種類、大きさに関する貨物情報が関連付けられている。第2の画像サイズ変更部594は、学習用X線画像600Bに関連付けられた第2の貨物412Bの大きさに関する貨物情報に基づいて、第2の貨物412Bの大きさが所定の画像サイズ未満であるか否かを判定してもよい。
【0074】
図5では、学習用X線画像600Bに関連付けられた第2の貨物412Bの大きさを表す貨物サイズ枠610Bを二点鎖線で表している。図5に示すように、貨物サイズ枠610Bの大きさは、所定の画像サイズを表す画像サイズ枠Sよりも小さい。
【0075】
ここで、貨物サイズ枠610Bの大きさが所定の画像サイズ未満であると判定した場合、貨物サイズ枠610Bの大きさが所定の画像サイズとなる拡大倍率を演算し、演算した拡大倍率を学習用X線画像600Bに乗じて、拡大X線画像を生成することも可能である。しかし、その場合、画像拡大処理により画像が粗くぼやけてしまうことから、後述する学習モデルの検出精度が低下するおそれが生じる。
【0076】
そこで、第2の画像サイズ変更部594は、図5に示すように、学習用X線画像600Bの周囲に余白領域810を設けることで学習用X線画像600Bを拡大した拡大X線画像800を生成する。この余白領域810の幅は、学習用X線画像600B内の第2の貨物412Bの中心位置に、所定の画像サイズを表す画像サイズ枠Sの中心を一致させた際、拡大X線画像800内に画像サイズ枠Sが収まる幅に設定される。
【0077】
このように、第2の画像サイズ変更部594は、学習用X線画像に写る学習対象である各貨物412の大きさが所定の第2基準値あるいは所定の画像サイズ未満であるか否かを判定する。そして、第2の画像サイズ変更部594は、学習用X線画像600Bに写る第2の貨物412Bの大きさが所定の第2基準値あるいは所定の画像サイズ未満であると判定した場合、余白領域810を設けることで拡大X線画像800を生成する。これにより、学習用X線画像600Bに拡大倍率を乗じる画像拡大処理を行うことなく、拡大X線画像800を生成することができる。
【0078】
第2の画像サイズ変更部594は、このようにして縮小された縮小X線画像700あるいは拡大された拡大X線画像800を第2の画像分割部596に出力する。なお、第2の画像サイズ変更部594は、学習対象である各貨物412の大きさが所定の第1基準値以下、かつ、第2基準値以上である場合、学習用X線画像のサイズを変更することなく、第2の画像分割部596に等倍の学習用X線画像を出力する。あるいは、第2の画像サイズ変更部594は、学習対象である各貨物412の大きさが所定の画像サイズである場合、学習用X線画像のサイズを変更することなく、第2の画像分割部596に等倍の学習用X線画像を出力する。
【0079】
第2の画像分割部596は、第2の画像サイズ変更部594から取得した学習用X線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像に分割する。具体的に、図4に戻り、第2の画像分割部596は、サイズが縮小された縮小X線画像700を、所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像710に分割する。この部分学習用X線画像710は、所定の画像サイズを有する画像サイズ枠Sと等しいサイズを有し、部分学習用X線画像710に写り込む第1の貨物412Aの全体は、部分学習用X線画像710内に収まっている。
【0080】
また、図5に戻り、第2の画像分割部596は、サイズが拡大された拡大X線画像800を、所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像820に分割する。この部分学習用X線画像820は、所定の画像サイズを有する画像サイズ枠Sと等しいサイズを有し、部分学習用X線画像820に写り込む第2の貨物412Bの全体は、部分学習用X線画像820内に収まっている。
【0081】
図6は、本実施形態に係る学習用X線画像を等倍で分割する画像処理を示す説明図である。図6では、学習用X線画像600Cに第3の貨物412Cが写り込んでいる。ここで、第3の貨物412Cの大きさは、所定の第1基準値以下、かつ、第2基準値以上であるものとする。あるいは、第3の貨物412Cの大きさは、所定の画像サイズと等しいものとする。
【0082】
図6では、学習用X線画像600Cに関連付けられた第3の貨物412Cの大きさを表す貨物サイズ枠610Cを二点鎖線で表している。図6に示すように、貨物サイズ枠610Cの大きさは、所定の画像サイズを表す画像サイズ枠Sと等しい。
【0083】
図6に示すように、第2の画像分割部596は、等倍の学習用X線画像600Cを、所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像620に分割する。この部分学習用X線画像620は、所定の画像サイズを有する画像サイズ枠Sと等しいサイズを有し、部分学習用X線画像620に写り込む第3の貨物412Cの全体は、部分学習用X線画像620内に収まっている。
【0084】
第2の画像分割部596は、学習用X線画像内で分割位置を所定量ずつずらしながら、学習用X線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像に分割する。複数の部分学習用X線画像の一部は、互いに重複するように設けられてもよい。第2の画像分割部596は、複数の部分学習用X線画像を学習部598に出力する。なお、第2の画像分割部596は、学習用X線画像内の各貨物412の特徴量を抽出してもよい。第2の画像分割部596は、学習用X線画像を、当該特徴量が得られる所定の画像サイズの部分学習用X線画像に分割してもよい。なお、第2の画像分割部596から出力された部分学習用X線画像に対し、不図示の画像処理部により左右反転処理、上下反転処理、回転処理、コントラスト処理などの画像処理が行われる。学習部598には、画像処理部により画像処理部によりされた部分学習用X線画像が入力される。ただし、画像処理部による画像処理は、第2の画像分割部596による画像分割の前に行われてもよい。
【0085】
学習部598は、第2の画像分割部596から複数の部分学習用X線画像を取得し、複数の部分学習用X線画像に基づいて、学習モデルを構築する。学習モデルは、例えば、画像解析における深層学習モデル(ディープラーニング)である。学習モデルは、例えば、ニューラルネットワーク(NN)を有している。ニューラルネットワークは、教師あり学習で学習された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。ただし、畳み込みニューラルネットワーク以外のニューラルネットワークを用いてもよい。また、ニューラルネットワーク以外の学習モデルを用いてもよい。
【0086】
学習モデルは、例えば、ニューラルネットワークの構造と各ニューロン間の結びつきの強さであるパラメータの組合せにより構成される。ニューロンとニューロンの間の結合部には、1つずつ係数であるパラメータが設けられている。各パラメータは、調節可能に構成される。学習モデルの内部状態は、内部変数といわれるニューラルネットワークの構造と各ニューロン間のパラメータの組合せである数値の組によって表される。
【0087】
図7は、本実施形態に係る学習モデルの一例を示す概略構成図である。図7に示すように、学習モデルには、複数の部分学習用X線画像が入力され、各ニューロンN、N、N、N、N、NM-1、Nを経ることで、各貨物412の種類を表す値が出力データとして出力される。
【0088】
学習モデルは、関連付け部592により各貨物412の位置、種類、大きさに関する貨物情報が関連付けられた学習用X線画像を基に構築される。学習モデルに対し、第2の画像分割部596により分割された部分学習用X線画像を入力させる。このときの学習モデルの出力データとしての各貨物412の種類と、学習用X線画像に関連付けられた各貨物412の種類との誤差が小さくなるように、学習モデルの内部変数の値が設定される。
【0089】
このように、学習部598は、部分学習用X線画像を学習モデルに入力し、当該学習モデルから出力された学習対象の貨物412の種類が、部分学習用X線画像に関連付けられた貨物412の種類と一致するように、学習モデルのパラメータを変更する。こうして、部分学習用X線画像を基に、学習モデルが構築される。学習モデルの構築に使用される部分学習用X線画像のサイズが貨物412の大きさによらず同一サイズで形成されるため、学習モデルの検出精度を高めることができる。また、部分学習用X線画像には、大きい貨物412が写っている場合も貨物412の全体が写るようにサイズの縮小処理が行われるため、学習モデルの検出精度を高めることができる。また、部分学習用X線画像には、拡大倍率による画像拡大処理が行われないため、画像拡大処理により画像が粗くぼやけることを抑制し、学習モデルの検出精度を高めることができる。
【0090】
(推論パート)
推論パートは、学習パートで構築された学習モデルを用いて、検査対象のX線画像に写っている貨物412の種類を推定するパートである。
【0091】
まず、第1の画像サイズ変更部582は、図1に示すX線撮像装置400により撮像されたコンテナ410内の検査対象の貨物412が写り込んでいるX線画像を取得する。また、第1の画像サイズ変更部582は、税関データベース200から税関申告情報を取得する。そして、第1の画像サイズ変更部582は、税関申告情報から貨物412の種類および大きさに関する貨物情報を抽出する。
【0092】
第1の画像サイズ変更部582は、上述した学習パートと同様に、税関申告情報に含まれる貨物412の大きさに基づいて、X線画像のサイズを変更する。具体的に、税関申告情報に含まれる検査対象の貨物412の大きさが所定の第1基準値あるいは所定の画像サイズより大きい場合、第1の画像サイズ変更部582は、X線画像のサイズを縮小する。また、税関申告情報に含まれる検査対象の貨物の大きさが所定の第2基準値あるいは所定の画像サイズ未満である場合、第1の画像サイズ変更部582は、X線画像の周囲に図4に示すような余白領域810を追加することでX線画像のサイズを拡大する。第1の画像サイズ変更部582によるX線画像のサイズを変更する処理は、上述した第2の画像サイズ変更部594による学習用X線画像のサイズを変更する処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。第1の画像サイズ変更部582でサイズが変更されたX線画像あるいは等倍のX線画像は、第1の画像分割部584に出力される。
【0093】
第1の画像分割部584は、上述した学習パートと同様に、サイズが等倍のX線画像あるいはサイズが変更されたX線画像を、図4図6に示すように所定の画像サイズを有する複数の部分X線画像に分割する。第1の画像分割部584によるX線画像を、部分X線画像に分割する処理は、上述した第2の画像分割部596による学習用X線画像を、部分学習用X線画像に分割する処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。第1の画像分割部584で分割された部分X線画像は、推定部586に出力される。なお、第1の画像分割部584から出力された部分X線画像に対し、不図示の画像処理部により左右反転処理、上下反転処理、回転処理、コントラスト処理などの画像処理が行われる。推定部586には、画像処理部により画像処理部によりされた部分X線画像が入力される。ただし、画像処理部による画像処理は、第1の画像分割部584による画像分割の前に行われてもよい。
【0094】
推定部586は、学習パートにおいて学習用X線画像に基づいて構築された学習モデルを用いて、分割された部分X線画像に写っている貨物の種類を推定する。つまり、推定部586は、貨物412に関する学習用X線画像に基づいて構築された学習モデルを用いて、複数の部分X線画像のうち少なくとも1つに写っている貨物412の種類を推定する。具体的に、推定部586は、部分X線画像を、学習部598により構築された学習モデルに入力させる。このとき、学習モデルは、部分X線画像の各画素を分類し、各貨物412の種類を表す値を出力データとして出力する。学習モデルに入力される部分X線画像のサイズが貨物412の大きさによらず同一サイズで形成される。また、部分X線画像のサイズが学習モデルを構築する際に使用された部分学習用X線画像と同じサイズとなるため、学習モデルの出力である貨物412の種類の推定精度を高めることができる。また、部分X線画像には、大きい貨物412が写っている場合も貨物412の全体が写るようにサイズの縮小処理が行われるため、学習モデルの出力である貨物412の種類の推定精度を高めることができる。また、部分X線画像には、拡大倍率による画像拡大処理が行われないため、画像拡大処理により画像が粗くぼやけることを抑制し、学習モデルの出力である貨物412の種類の推定精度を高めることができる。
【0095】
[5.X線検査方法]
次に、図8を参照して、本実施形態に係るX線検査システム100を用いたX線検査方法について詳細に説明する。図8は、本実施形態に係るX線検査方法を示すフローチャートである。
【0096】
図8に示すように、学習パートにおいて、関連付け部592は、X線画像データベース300から学習用X線画像を取得する(S10)。また、関連付け部592は、税関データベース200から税関申告情報を取得する(S20)。そして、関連付け部592は、ユーザ入力に基づいて、学習用X線画像に対し、税関申告情報に含まれる学習対象の各貨物412の位置、種類、大きさに関する貨物情報を関連付ける(S30)。
【0097】
つぎに、第2の画像サイズ変更部594は、税関申告情報に含まれる貨物412の大きさに基づいて、学習用X線画像のサイズを変更する(S40)。このサイズ変更の処理については上記で詳細に説明しているため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0098】
第2の画像分割部596は、サイズが変更された学習用X線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像に分割する(S50)。この画像分割の処理については上記で詳細に説明しているため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0099】
そして、学習部598は、部分学習用X線画像に基づいて、学習モデルを構築する(S60)。この学習モデルの構築処理については上記で詳細に説明しているため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0100】
つぎに、推論パートにおいて、第1の画像サイズ変更部582は、X線撮像装置400により検査対象である貨物412を撮像した検査対象のX線画像を取得する(S70)。また、第1の画像サイズ変更部582は、税関データベース200から税関申告情報を取得する(S80)。
【0101】
第1の画像サイズ変更部582は、税関申告情報に含まれる貨物412の大きさに基づいて、X線画像のサイズを変更する(S90)。このサイズ変更の処理については、学習パートにおけるサイズ変更の処理と同様であり、また上記で詳細に説明しているため、ここでの詳細な説明は省略する。なお、学習パートにおけるサイズ変更の処理における「学習用X線画像」は、「X線画像」に読み替えられる。
【0102】
第1の画像分割部584は、サイズが変更されたX線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分X線画像に分割する(S100)。この画像分割の処理については、学習パートにおける画像分割の処理と同様であり、また上記で詳細に説明しているため、ここでの詳細な説明は省略する。なお、学習パートにおける画像分割の処理における「部分学習用X線画像」は、「部分X線画像」に読み替えられる。
【0103】
推定部586は、学習部598により構築された学習モデルを用いて、分割された部分X線画像に写っている貨物412の種類を推定する(S110)。この推定処理については上記で詳細に説明しているため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0104】
[6.まとめ]
以上、本実施形態に係るX線検査システム100について詳細に説明した。本実施形態によれば、税関申告情報に含まれる検査対象の貨物412の大きさに基づいて、X線画像のサイズを変更し、サイズが変更されたX線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分X線画像に分割している。そして、複数の部分X線画像を学習モデルに入力することで、検査対象である貨物412の種類を推定している。
【0105】
これにより、さまざまな大きさの検査対象の貨物412がコンテナ410に収容されている場合であっても、学習モデルに入力される部分X線画像には、検査対象である貨物412の全体を含ませることができる。また、貨物412の大きさによらず、学習モデルに入力される部分X線画像を、学習モデルを構築する際に使用された部分学習用X線画像と同じサイズにすることができる。その結果、学習モデルの出力である貨物412の種類の推定精度を高めることができ、コンテナ410を撮像したX線画像からコンテナ410内の貨物412の種類を正確に推定することできる。
【0106】
また、本実施形態によれば、税関申告情報と、ユーザ入力とに基づいて、学習用X線画像に写っている学習対象の各貨物の種類を、学習用X線画像に関連付ける。また、税関申告情報に含まれる学習対象の貨物412の大きさに基づいて、学習用X線画像のサイズを変更し、サイズが変更された学習用X線画像を、所定の画像サイズを有する複数の部分学習用X線画像に分割している。そして、複数の部分学習用X線画像に基づいて、学習モデルを構築している。このとき、部分学習用X線画像を学習モデルに入力した際の出力である貨物の種類が、部分学習用X線画像に関連付けられた種類と一致するように、学習モデルのパラメータを変更することで、学習モデルを構築している。
【0107】
これにより、さまざまな大きさの学習対象の貨物412がコンテナ410に収容されている場合であっても、学習モデルに入力される部分学習用X線画像には、貨物412の全体を含ませることができる。また、貨物412の大きさによらず、学習モデルに入力される部分学習用X線画像を同じサイズにすることができる。その結果、学習モデルの検出精度を高めることができる。
【0108】
また、本実施形態によれば、税関申告情報に含まれる貨物の大きさが所定の第1基準値あるいは所定の画像サイズより大きい場合、X線画像のサイズを縮小する。これにより、部分X線画像は、大きい貨物412が写っている場合も貨物412の全体が写るようにサイズの縮小処理が行われるため、学習モデルの出力である貨物412の種類の推定精度を高めることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、税関申告情報に含まれる貨物の大きさが所定の第2基準値未満あるいは所定の画像サイズ未満である場合、X線画像の周囲に余白領域を追加することでX線画像のサイズを拡大する。これにより、部分X線画像には、拡大倍率による画像拡大処理が行われないため、画像拡大処理により画像が粗くぼやけることを抑制し、学習モデルの出力である貨物412の種類の推定精度を高めることができる。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0111】
なお、上述した本実施形態に係る画像処理装置500等の各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの組合せのうちいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部または外部に設けられる非一時的な記憶媒体(non-transitory media)に予め格納されてもよい。そして、プログラムは、例えば、非一時的な記憶媒体(例えば、ROM)から一時的な記憶媒体(例えば、RAM)に読み出され、CPUなどのプロセッサにより実行されてもよい。
【0112】
上記各装置の各機能を実現するためのプログラムを作成し、上記各装置のコンピュータにインストールすることが可能である。プロセッサが、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、上記各機能の処理が実行される。このとき、複数のプロセッサによりプログラムを分担して実行してもよいし、1つのプロセッサでプログラムを実行してもよい。また、通信ネットワークにより相互に接続された複数のコンピュータを用いるクラウドコンピューティングにより、上記各装置の各機能を実現してもよい。
【0113】
なお、プログラムは、外部装置から通信ネットワークを通じた配信により、各装置のコンピュータに提供されて、インストールされてもよい。あるいは、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体(non-transitory computer readable medium)に格納され、当該記録媒体を介して各装置のコンピュータに提供されて、インストールされてもよい。
【0114】
また、本実施形態によれば、上記各装置の各機能の処理を実行するためのプログラムを提供することができる。さらに、当該プログラムが格納された、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体を提供することもできる。非一時的な記録媒体は、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のディスク型記録媒体であってもよいし、または、フラッシュメモリ、USBメモリ等の半導体メモリであってもよい。
【符号の説明】
【0115】
100 X線検査システム
200 税関データベース
300 X線画像データベース
400 X線撮像装置
410 コンテナ
412 貨物
420 X線
430 X線照射部
440 X線検出部
450 X線画像生成部
460 コントローラ
500 画像処理装置
510 プロセッサ
520 メモリ
530 ストレージ
540 通信装置
550 入力装置
560 出力装置
570 バス
580 推論モジュール
582 第1の画像サイズ変更部
584 第1の画像分割部
586 推定部
590 学習モジュール
592 関連付け部
594 第2の画像サイズ変更部
596 第2の画像分割部
598 学習部
図1
図2
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図8