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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112235
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】光発生装置及び照明システム
(51)【国際特許分類】
   F21S 10/00 20060101AFI20240813BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240813BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20240813BHJP
   F21V 9/12 20060101ALI20240813BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240813BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240813BHJP
   F21Y 115/20 20160101ALN20240813BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20240813BHJP
   F21Y 103/00 20160101ALN20240813BHJP
【FI】
F21S10/00 200
F21S2/00 670
F21V3/02 500
F21V9/12
F21V9/32
F21Y115:10
F21Y115:20
F21Y101:00 100
F21Y103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017179
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】523043566
【氏名又は名称】株式会社シンシ
(74)【代理人】
【識別番号】100184262
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 義則
(72)【発明者】
【氏名】岸本 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 音哉
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】高島 健二
(57)【要約】
【課題】手軽にリラックス効果を与える光発生装置及び照明システムを提供する。
【解決手段】光発生装置10は、第1の壁部11と、第1の壁部11と所定の距離離れて設けられて第1の壁部11との間に閉じられた領域12を形成する透光性を有する第2の壁部13と、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12に封入された透光性の液体14と、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12に封入された粒状の蓄光材15と、を備え、第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離が0.5mm以上5mm以下の範囲内であり、液体14が2mPa・s以上100mPa・s以下の粘度を有しており、蓄光材15が50μm以上の等価直径を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁部と、
前記第1の壁部から所定の距離離れて設けられ、前記第1の壁部との間に閉じられた領域を形成する透光性を有する第2の壁部と、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の前記領域に封入された透光性の液体と、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の前記領域に封入された粒状の蓄光材と、
を備え、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との距離が0.5mm以上5mm以下の範囲内であり、
前記液体が2mPa・s以上100mPa・s以下の粘度を有しており、
前記蓄光材が50μm以上の等価直径を有する、光発生装置。
【請求項2】
さらに、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の前記領域に粒状物が封入されており、
前記粒状物が、50μm以上の等価直径を有しており、かつ、前記蓄光材とは異なる見掛け比重、粒子径の何れか又は双方を有する、請求項1に記載の光発生装置。
【請求項3】
さらに、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の前記領域に気泡が封入されている、請求項1に記載の光発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の光発生装置と、
前記蓄光材に励起光を照射するための光照射装置と、
を備える、照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラックス効果を与える光発生装置及び照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様な働き方の広がりと共に、自宅でテレワークをする人が増え、仕事が終わった後に自宅で手軽に気分をリラックスする方法に関心が集まっている。蓄光材から放射される光を利用した、リラックス効果を与える照明装置がインテリア照明として利用されている。蓄光材は、ある特定の波長の光(以下、励起光という。)が照射されると、励起光のエネルギーを吸収して可視領域の波長の光を放射し、その後励起光の照射がなくなっても可視光を放射し続ける特徴がある。
【0003】
特許文献1には、透光性素材からなるランプシェード又はキャンドルシェードの一部に収納部を設け、その中に蓄光材を収納した照明具に関して、室内やキャンドル周囲の人に精神的なリラクゼーション効果を付与できることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、蓄光材の粉粒体を透明材料の間に分散状に配置固定した装飾構造を有するコースター用の蓄光装置に関して、人間の心に癒しを与えるような優雅な雰囲気を周辺にもたらすと開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3169272号公報
【特許文献2】特開2005-246926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された照明具や蓄光装置は、蓄光材が放射する光の幻想的な輝きによって室内の雰囲気を変えてリラックス効果を得ようとするものであり、仕事を終えたあとに、自宅で手軽に、より効果的にリラックスする方法が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、手軽にリラックス効果を与える光発生装置及び照明システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、透明の液体中を無数の小さな粒状物が重力により落下していく状態を見ていると、気持ちが落ち着き、不安やイライラが減少し、リラックスできることを見出し、さらに、当該無数の小さな粒状の蓄光材が発光しながら落下していく状態を薄暗い部屋で見ていると、より高いリラックス効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
無数の粒子(粒状物を含む)が液体中を重力により落下する場合、直線的に一様に落下するわけではなく、他の粒子に衝突したり、液体の流れに乗ったりして、不規則に揺らぎながら落下していく。このように、不規則に変位するが、ある程度規則性の見られるゆらぎは、「1/fゆらぎ」と言われ、「1/fゆらぎ」に接するとそれが人間の生体リズムと相関して心地良さを感じさせると考えられている。「1/fゆらぎ」の具体例としては、ロウソクや焚火の炎、小川のせせらぎ、海辺の波の音、木漏れ日、木の年輪、木目の間隔、人の心臓の鼓動などが知られている。
【0010】
本発明のコンセプトは、第1の壁部と、第1の壁部から所定の距離離れて設けられ、第1の壁部との間に閉じられた領域を形成する透光性を有する第2の壁部と、第1の壁部と第2の壁部との間の領域に封入された透光性の液体と、第1の壁部と第2の壁部との間の領域に封入された粒状の蓄光材と、を備え、第1の壁部と第2の壁部との距離が0.5mm以上5mm以下の範囲内であり、液体が2mPa・s以上100mPa・s以下の粘度を有しており、蓄光材が50μm以上の等価直径を有する、光発生装置に関する。ここで、第2の壁部とは、通常の使用で閉じられた領域の中の蓄光材を見たときに、当該領域を形成する部分のうち、蓄光材と目を結ぶ直線と交わる領域をいい、第1の壁部とは、第2の壁部と対向する領域をいう。
【0011】
さらに、第1の壁部と第2の壁部との間の領域に粒状物が封入されており、粒状物が、50μm以上の等価直径を有しており、かつ、蓄光材とは異なる見掛け比重、粒子径の何れか又は双方を有することが好ましい。さらに、第1の壁部と第2の壁部との間の領域に気泡が封入されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のコンセプトは、上記光発生装置と、蓄光材に励起光を照射するための光照射装置と、を備える、照明システムに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手軽にリラックス効果を与える光発生装置及び照明システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る光発生装置を模式的に示す一部断面図である。
図2図2は、図1とは異なる本発明の実施形態に係る光発生装置を模式的に示す一部断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る照明システムの構成図である。
図4図4は、本発明の具体的な第1の実施形態に係る光発生装置の断面図である。
図5図5は、本発明の具体的な第1の実施形態に係る照明システムの構成図である。
図6図6Aは本発明の具体的な第2の実施形態に係る照明システムにおける光発生装置の平面図であり、図6Bは光照射装置を含めたVIB線-VIB線に沿う一部断面図である。
図7図7Aは本発明の第3の具体的な実施形態に係る照明システムのVIIA線-VIIA線に沿う断面図であり、図7Bは本発明の第3の具体的な実施形態に係る照明システムの正面図である。
図8】実施例4に関し、転置させる前の光発生装置を示す像である。
図9】実施例4に関し、図8に示す状態から転置させた直後の光発生装置を示す像である。
図10】実施例4に関し、図9に示す状態から時間が経過したときの光発生装置を示す像である。
図11】実施例4に関し、図10に示す状態から時間が経過したときの光発生装置を示す像である。
図12】実施例4に関し、図11に示す状態から時間が経過したときの光発生装置を示す像である。
図13】実施例4に関し、図12に示す状態から時間が経過したときの光発生装置を示す像である。
図14】実施例4に関し、図13に示す状態から時間が経過したときの光発生装置を示す像である。
図15】実施例4に関し、図14に示す状態から時間が十分経過したときの光発生装置を示す像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の実施形態には、本発明の範囲を変更しない範囲において、構成の一部を変更したり、削除したりするなどの設計変更した形態が含まれる。
【0016】
本発明の実施形態に係る光発生装置の一部断面を図1に模式的に示す。図1に示すように、本発明の実施形態に係る光発生装置10は、第1の壁部11と、第1の壁部11から所定の距離離れて設けられて第1の壁部11との間に閉じられた領域12を形成する透光性を有する第2の壁部13と、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12に封入された透光性の液体14と、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12に封入された粒状の蓄光材15と、を備える。そして、特に、第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離が0.5mm以上5mm以下の範囲内であり、液体14が2mPa・s以上100mPa・s以下の粘度を有しており、蓄光材15が50μm以上の等価直径を有する。蓄光材15は蓄光体と呼んでもよい。液体14の粘度は、使用する環境の温度25℃での測定値である。ここで、蓄光材15の等価直径とは、蓄光材15を球状と近似した際に蓄光材15の体積と等しい球状の直径を意味する。
【0017】
第1の壁部11と第2の壁部13の形状は、それぞれ任意の形状とすることができるが、第1の壁部11と第2の壁部13とが接合する部分及びその近傍を除いて所定の範囲内で離隔していることが好ましい。第1の壁部11と第2の壁部13とのそれぞれ一部が接合されることなどにより、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12が密閉されており、当該領域12内に液体14及び蓄光材15に封入されて漏れ出ない構造となっている。
【0018】
第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離は、両者が接合される部分及びその近傍を除いて最大0.5mm以上5mm以下の範囲内とすることが好ましい。ここで、「第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離」とは、第1の壁部11の第2の壁部13との対向面上の任意の点と、当該点における法線が第2の壁部13の第1の壁部11側の対向する面上と交わる点との距離をいう。第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離は、場所によって異なっていてもよい。
【0019】
粒状の各蓄光材15が集合しないでバラバラになり、ゆらぎながら落下する状態が人にリラックス効果を与えるので、第1の壁部11と第2の壁部13と間の距離が上記範囲より大きくなると、粒状の蓄光材15が集合して短時間で落下し、粒子の落下のゆらぎが視認できないため、十分なリラックス効果が得られず好ましくない。一方、第1の壁部11と第2の壁部13のとの距離が上記範囲より小さくなると、第1の壁部11と第2の壁部13の間に封入できる粒状の蓄光材15の量が少なくなり暗くなるため、リラックス効果が低下し好ましくない。
【0020】
ここで、第1の壁部11の第2の壁部13側の対向面、第2の壁部13の第1の壁部11側の対向面の何れか又は双方の一部に、凹凸があることにより、部分的に第1の壁部11と第2の壁部13との距離が0.5mm未満となったり5mm以上となったりしてもよい。蓄光材15の落下が1/fのゆらぎと同様のリラックス効果を与えることができるからである。
【0021】
第2の壁部13は透光性があればその材質は特に限定されない。すなわち、第2の壁部13は透明であって第1の壁部11との間の領域12内の粒状の蓄光材15を視認できればよく、着色されていても良い。第2の壁部13の材質は無機ガラス、透明樹脂などから選択される。透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂などから適宜選択される。
【0022】
第1の壁部11の材質は特に限定されない。第1の壁部11が第2の壁部13と同一又は同等の材質からなる場合には、第1の壁部11と第2の壁部13とを部分的に接合することが容易であるため好ましい。第1の壁部11は透明であっても不透明であっても良く、中実でも中空でもよい。第1の壁部11が長手方向、すなわち上下方向に貫通した穴を有するような場合には、第1の壁部11は透光性を有することが好ましい。後述するように蓄光材15へ励起光を照射するための光源をその穴に配置することができるためである。この場合、第1の壁部11の材質は無機ガラス、透明樹脂などから選択される。透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂などから適宜選択される。
【0023】
液体14の粘度が低く粒状の蓄光材15の落下速度が速いとリラックス効果が低いため、液体14の粘度は好ましくは2mPa・s以上であり、より好ましくは5mPa・s以上であり、さらに好ましくは10mPa・s以上である。透明の液体14の粘度が高く粒状の蓄光材15の落下速度が遅いとリラックス効果が低いため、液体14の粘度は好ましくは100mPa・s以下であり、より好ましくは50mPa・s以下であり、さらに好ましくは30mPa・s以下である。
【0024】
液体14の種類は限定されないが、透光性を有しており、危険有害性が低く取り扱い易い材料として、水、エチレングリコールやプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、流動パラフィン、特に蓄光材15の物性に影響を与えず粘度が安定していることからシリコーンオイルが好適である。
【0025】
粒状の蓄光材15の種類は限定されないが、アルミン酸ストロンチウム系、ケイ酸ストロンチウム系、硫化亜鉛系、その他の蓄光性を有する物質の粒状物が使用でき、2種以上の粒状蓄光材15を混合して使用することもできる。蓄光材15は液体14よりも密度が大きい。蓄光材15が液体14中で落下するようにするためである。
【0026】
リラックス効果を得るためには、光発生装置10を手に取って見たときに落下する粒状の蓄光材15の粒が視認できる程度に大きいことが必要であり、粒状の蓄光材15の粒子直径は限定されないが、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは70μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。この粒子直径の範囲より小さいと、蓄光材15の粒が視認できず液体全体が濁って見えるため、好ましくない。また、蓄光材15は球状である必要はなく、蓄光材15の表面は凹凸があってもよい。蓄光材15の粒子径は球状と仮定した場合の等価直径が上記の範囲であればよい。なお、蓄光材15の大きさの上限は、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12の液体14中を、蓄光材15が重力により難なく落下できる大きさであればよい。
【0027】
光発生装置10は、円柱形状、円筒形状、卵形状、略直方形状、平板形状、屏風形状、曲面板形状などの各種の形状とすることができる。光発生装置10は、長手方向に延びており手に持って長手方向の上下方向に反転させることができる寸法であることが好ましい。光発生装置10のうち例えば長手方向の上下部分を除く中間部において、第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離が好ましい範囲内であって、蓄光材15が第1の壁部11及び第2の壁部13の各対向面に沿って任意の方向に自由に光を発しながら移動することができるため、リラックス効果がより高まるからである。光発生装置10の上下方向に直交する断面の最大部分に関して、その最大部分の断面をできるだけ含むように最小の円で近似した際の円の直径が2cm以上、より好ましくは3cm以上であり、16cm以下、より好ましくは10cm以下である。例えば、その最大部分の断面が楕円形状である場合には、楕円形状の長軸の長さが「近似した際の円の直径」に該当し、その最大部分の断面が三角形や矩形状などの多角形である場合には、多角形の凸となる頂点をできるだけ通る円の直径が「近似した際の円の直径」に該当し、その最大部分の断面の一部が円弧を含む場合には、その円弧を構成する円の直径が「近似した際の円の直径」に該当し、その最大部分の断面が曲線と直線との組み合わせである場合には、その曲線とその直線との接続点、直線同士の接続点をできるだけ通りかつその曲線の出来るだけ多くの部分を含む円の直径が「近似した際の円の直径」に該当する。一方、長手方向の寸法は4cm以上32cm以下、より好ましくは20cm以下、さらに好ましくは15cm以下が好ましい。
【0028】
次に、図1とは異なる本発明の実施形態に係る光発生装置の一部断面を図2に模式的に示す。本発明の実施形態において、さらに、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12に粒状物16が封入されていることが好ましい。ここで、粒状物16は、蓄光材15の見掛け比重、粒子径の何れか又は双方と異なる。粒状物16は液体14よりも密度が大きい。粒状物16が液体14中で落下するようにするためである。粒状物16は、球状と近似した場合に50μm以上の等価直径を有する。粒状物16は、着色砂、粒状蛍光材、金属粉、樹脂粉、ガラスビーズから1種又は2種以上を選択することができる。粒状物16は蓄光材15と見掛け比重、粒径の何れか又は双方が異なることにより、蓄光材15と粒状物16とを液体14中で同時に落下させると、落下速度が異なるため、沈降後に蓄光材15と粒状物16が均一に混合されず、縞模様や斑模様を形成するので、リラックス効果をより高めることができる。粒状物16は蓄光材15と異なる色に着色されることにより、リラックス効果をさらに高めることができる。
【0029】
本発明の実施形態において、第1の壁部11と第2の壁部13との間の領域12に気泡17が封入されていることが好ましい。液体14の中に気泡17が存在すると、気泡17の上に乗った蓄光材15及び粒状物16は落下が遅くなるので、不規則性が増しさらにリラックス効果を高めることができる。光発生装置10を静置して蓄光材15と粒状物16を沈降させた後、光発生装置10を180度転置した時に、すべての蓄光材15と粒状物16が気泡17の上に乗ってしまうと蓄光材15と粒状物16は落下しないので、気泡17の体積は、気泡がない場合に光発生装置10を静置して蓄光材15と粒状物16を沈降させた時の液体14との境界面の面積に、第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離を乗じた値よりも小さいことが好ましい。
【0030】
本発明の実施形態に係る照明システム1は、図3に示すように、光発生装置10と、蓄光材15に励起光を照射するための光照射装置20とを含んで構成される。光照射装置20は、光源21を備える。光源21は蓄光材15の励起エネルギーに相当する波長の光を照射するものであればよい。光源21はLEDランプ、ELランプ、蛍光灯、水銀灯、ハロゲンランプ、白熱電球などから選択される。光源21は、光源21から出射された光が、第1の壁部11、第2の壁部13の何れか一方又は双方の透光部分を透過して蓄光材15を照射するように配置されればよい。光発生装置10は手に取って眺めるためのものであり、光発生装置10が台座などから容易に取り外せるように配置されることが好ましい。詳細は後述する。
【0031】
本発明の実施形態に係る光発生装置10によれば、光を放射する粒状の蓄光材15の動きに、「1/fゆらぎ」と同様のリラックス効果を与える動きを発現することができ、それを見ることにより手軽にリラックス効果が得られる。本発明の実施形態に係る照明システム1によれば、粒状の蓄光材15に効率的に励起光を照射することができ、手軽にリラックス効果が得られると共に、インテリア照明として利用することもできる。
【0032】
以下、さらに具体的な実施形態について説明する。
【0033】
(具体的な第1の実施形態)
本発明の具体的な第1の実施形態に係る光発生装置10の一例を図4に示す。第2の壁部13は透明なアクリル樹脂製の中空体である。第1の壁部11は透明又は不透明なアクリル樹脂製の成形体であり、上下の両端に形成した凸部によって第2の壁部13と接着され、第1の壁部11と第2の壁部13とで囲まれた密閉された領域12を形成し、第1の壁部11と第2の壁部13との距離は0.5mm以上5mm以下の範囲である。透明の液体14として粘度が2mPa・s以上100mPa・s以下のシリコーンオイルを採用する。蓄光材15及び粒状物16の粒子径は50μm以上であり、領域12に封入して第1の壁部11と第2の壁部13との対向面に沿って、上下方向を含む任意の方向に自由に移動可能な寸法である。領域12には、気泡17が封入されている。
【0034】
本発明の具体的な第1の実施形態に係る照明システム1を図5に示す。照明システム1は、図4に示す光発生装置10と光照射装置20とを備える。光照射装置20は、光発生装置10の下部を支持する台座部22と、台座部22を保持するステージ23とを備える。ステージ23は、台座部22の下方から励起光を照射するための光源21としてLEDランプが一又は複数配置されている。光源21は、台座部22に光発生装置10を載置した状態において、光発生装置10の下部を下方ないしは斜め下方から励起光を照射する。これにより、光発生装置10の上記領域12内で沈降した蓄光材15、沈降しつつある蓄光材15に励起光を照射することができる。
【0035】
光照射装置20の台座部22は、透光性の素材で製作し、台座部22の下に光源21として一又は複数のLEDランプを配置することにより、効率的に粒状の蓄光材15に励起光を照射することができ、照射後の光発生装置10を手早く手に取ることができる。
【0036】
(具体的な第2の実施形態)
本発明の具体的な第2の実施形態に係る照明システム1における光発生装置10の平面視を図6Aに、光照射装置20を含めたVIB線-VIB線に沿う一部断面を図6Bに示す。図3及び図5に示す照射システム1と同様に、照射システム1は、光発生装置10と光照射装置20とを備える。光発生装置10において、第2の壁部13は透明なアクリル樹脂製の成形体であり、第1の壁部11は蓄光材15の励起光を透過するアクリル樹脂製の成形体であり、第1の壁部11と第2の壁部13とはアクリル樹脂製の環状の結合部18a、18bが上下で接着されている。これにより、第1の壁部11と第2の壁部13とが密閉された領域12を形成している。第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離は0.5mm以上5mm以下の範囲内である。液体として粘度が2mPa・s以上100mPa・s以下の範囲内にあるシリコーンオイルなどが選択される。蓄光材15及び粒状物16の粒子直径は50μm以上である。第1の壁部11の上下方向に直交する断面や結合部18a、18bは無端形状である環状であればよく、図示するように円環状やリング状に限られない。
【0037】
光照射装置20は、光発生装置10を載置するための台座25と、台座25の中央部分に複数の光源21を異なる高さで設置するためのスタンド26とを備え、光源21として複数のLEDランプが、異なる外向き(放射状に)に励起光を照射するように、かつ台座25からの高さが異なる位置に、設けられている。台座25には、光発生装置10の位置を規定するため、窪み、溝や張り出し部を設けてもよい。
【0038】
光照射装置20は、光発生装置10を置くための台座25の中央に放射状に光源21としてLEDランプを配置することにより、光発生装置10の第1の壁部11の第2の壁部13側表面から効率的に粒状の蓄光材15に励起光を照射することができ、照射後の光発生装置10を手早く手に取ることができる。
【0039】
(具体的な第3の実施形態)
本発明の具体的な第3の実施形態に係る照明システム1のVIIA線-VIIA線に沿う断面を図7Aに、正面視を図7Bに示す。図3及び図5に示す照射システム1と同様に、図7A及び図7Bに示す照射システム1は、光発生装置10と光照射装置20とを備える。光発生装置10において、第2の壁部13は透明なアクリル樹脂製の成形体であり、第1の壁部11は透明又は不透明なアクリル樹脂製の成形体であり、第1の壁部11と第2の壁部13とはアクリル樹脂製の結合部18a、18bにより上下で接着されている。これにより、第1の壁部11と第2の壁部13とが密閉された領域12を形成している。第1の壁部11と第2の壁部13との間の距離は0.5mm以上5mm以下の範囲内である。液体として粘度が2mPa・s以上100mPa・s以下の範囲内にあるシリコーンオイルなどが選択される。蓄光材15及び粒状物16の粒子直径は50μm以上である。図7Aに示す領域12は、図6Aに示すように上下方向に直交する断面が環状や無端形状を有しておらず、封止部19a、19bと第1の壁部11と第2の壁部13とによる有端形状を有する。有端形状はU字形状やL字形状や円弧の一部など任意の直線、曲線形状又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0040】
光照射装置20は、ステージ23の下方から励起光を照射するための光源21としてLEDランプが複数配置されている。これにより、光発生装置10の上記領域12内で沈降した蓄光材15、沈降しつつある蓄光材15に励起光を照射することができる。第1の壁部11、結合部18a、18b及び封止部19a、19bが透光性のアクリル樹脂製である場合は、第1の壁部11、結合部18a、18b及び封止部19a、19bを透過した光によっても蓄光材15を効率的に励起できるため好ましい。具体的な第2の実施形態で説明したように、ステージ23上に図6Bに示すようなスタンド26を立て、そのスタンド26に光源21を取り付け、光源21から外向きに励起光を照射することにより、第1の壁部11を経由して蓄光材15に励起光を照射してもよい。
【0041】
(実施例1)
図4に示す光発生装置10を作製した。上下方向に直交する断面の最大直径80mm、高さ140mmの透明アクリル樹脂製の第2の壁部13を使用し、第1の壁部11と第2の壁部13の距離を2mmとしてアクリル樹脂製の第1の壁部11と接着し、第1の壁部11と第2の壁部13で囲まれた領域12に、液体14として粘度が19mPa・sのシリコーンオイル(信越化学工業(株)KF-96-20CS)と、蓄光材15として発光色が青緑色の市販のアルミン酸系蓄光顔料を目開きが150μmと425μmのステンレスふるいを用いて分級して得られた粒子径が150μm~425μmの粒状蓄光材(見掛け比重3.7)を封入した。見掛け密度は、物質自身が占める体積と内部空隙の体積を密度算出用の体積とする密度をいい、見掛け比重は、同体積の圧力1013.25hPaのもとにおける4℃の純粋な水との質量比をいう(見掛けの比重の数値については、以下、同様である。)。
【0042】
光発生装置10の第2の壁部13の外側から、昼光色のLEDライトを使用して20分間、粒状の蓄光材15に励起光を照射した後、照射をやめて光発生装置10を180度上下転置したところ、無数の青緑色の粒が不規則に落下し、概ね2分~4分後にすべての粒が落下した。その落下状態を見ていると心が落ち着き、リラックス効果が得られた。
【0043】
(実施例2)
実施例1で使用した粒状の蓄光材15の代わりに、発光色が青緑色の市販のアルミン酸系蓄光顔料を目開きが150μmと425μmのステンレスふるいを用いて分級して得られた粒子径が150μm~425μmの粒状蓄光材15(見掛け比重3.7)と、珪砂を無機顔料で青色に着色した市販のカラーサンドを目開きが100μmと212μmのステンレスふるいを用いて分級して得られた粒子径が100μm~212μmのカラーサンドの粒状物16(見掛け比重2.6)との混合粒状物を用いた。蓄光材15と粒状物16の質量比が88:12となるように混合して、第1の壁部11と第2の壁部13の間の領域12に封入した以外は実施例1と同様にして光発生装置10を製作した。
【0044】
実施例1と同様に、光発生装置10の第2の壁部13の外側から、昼光色のLEDライトを使用して20分間、粒状の蓄光材15に励起光を照射した後、照射をやめて光発生装置10を180度上下転置したところ、概ね2分~4分後にすべての粒状の蓄光材15と粒状物16のカラーサンドが落下した。青緑色の粒が不規則に落下していく状態を見ていると心が落ち着き、リラックス効果が得られた。落下後の粒状物は、粒状蓄光材とカラーサンドが層状の模様を形成し、心地よい雰囲気を醸し出していた。
【0045】
(実施例3)
実施例2において光発生装置10にさらに少量の気泡を封入し、光発生装置10を静置して粒状の蓄光材15と粒状物16のカラーサンドの混合粒状物を沈降させたのち180度上下転置した直後に生成する、混合粒状物と空気との境界面の面積と混合粒状物とシリコーンオイルとの境界面の面積の和に対する、混合粒状物と空気との境界面の面積の割合が0.6になるように気泡の量を調整した。
【0046】
実施例2と同様に、光発生装置10の第2の壁部13の外側から、昼光色のLEDライトを使用して20分間、粒状の蓄光材15に励起光を照射した後、照射をやめて光発生装置10を180度上下転置したところ、青緑色の粒が不規則に落下し、気泡の移動により落下運動の不規則性が増し、概ね2分~4分後にすべての混合粒状物が落下した。この落下状態を見つめていると心が落ち着き、リラックス効果が得られた。落下後の粒状物は、粒状蓄光材とカラーサンドが層状の模様を形成し、心地よい雰囲気を醸し出していた。
【0047】
(実施例4)
実施例3で作製した光発生装置10に対して、図5の光照射装置20のように、透明アクリル樹脂製の円筒状の台座部22の下方に配置されている光源21としての紫外線LEDランプを用いて、光照射装置20の台座部22の上に、光発生装置10を置き、5分間紫外線を照射した。その後、光発生装置10を手に取り180度上下転置して青緑色の光が放出しながら不規則に落下する粒状の蓄光材15を見ると心が落ち着き、リラックス効果が得られた。実施例1及び実施例2で作製した光発生装置10についても同様の結果を得た。
【0048】
実施例4に関し、紫外線照射をやめてから暗室で光発生装置10を撮影した。転置させる前の光発生装置10の像を図8に示し、図8に示す状態から転置させた直後の光発生装置10の像を図9に示し、その後、時間の経過と共に光発生装置10の変化の像を図10乃至図15に示す。図8に示すように、光発生装置10の領域12の下部に蓄光材15及び粒状物16が沈降し、その上に液体14が存在していることが分かる。光発生装置10を上下転置すると、図9に示すように、光発生装置10の領域12の上部に蓄光材15及び粒状物16が存在し、液体14の大部分がそれらよりも下に存在し、蓄光材15及び粒状物16と液体14との境界上に空気の気泡17が帯状に存在している。その後、図10乃至図13に順に示すように、気泡17上にない蓄光材15及び粒状物16が領域12の下部に移動し、それに伴って気泡17上の蓄光材15及び粒状物16も形が崩れ、図14に示すように時間が十分経過すると、光発生装置10の領域12の下部にすべての蓄光材15及び粒状物16が沈降した。
【0049】
(実施例5)
図6A及び図6Bに示すように、外直径100mm、高さ150mmのパイプ状の透明アクリル樹脂製の第2の壁部13と、第1の壁部11と第2の壁部13の距離を2mmとして励起光を透過するアクリル樹脂製の第1の壁部11をアクリル樹脂製の結合部18a、18bで接合し、第1の壁部11と第2の壁部13で囲まれた領域12の中に、粘度が19mPa・sのシリコーンオイル(信越化学工業(株)KF-96-20CS)と、蓄光材15として発光色が青緑色の市販のアルミン酸系蓄光顔料を目開きが150μmと425μmのステンレスふるいを用いて分級して得られた粒子径が150μm~425μmの粒状の蓄光材15(見掛け比重3.7)と珪砂を無機顔料で青色に着色した市販のカラーサンドを目開きが100μmと212μmのステンレスふるいを用いて分級して得られた粒子径が100μm~212μmのカラーサンドの粉状物16(見掛け比重2.6)とを質量比88:12で混合した混合粒状物と、少量の気泡17を封入した。気泡17の量は、光発生装置10を静置して混合粒状物を沈降させたのち180度転置した直後に生成する、粒状混合物と空気との境界面の面積と粒状混合物とシリコーンオイルとの境界面の面積の和に対する、粒状混合物と空気との境界面の面積の割合が0.6になるように調整した。
【0050】
光照射装置20は、光発生装置10の第1の壁部11の内側に配置され、第1の壁部11の第2の壁部13と非対向面側から励起光を粒状の蓄光材15に照射する。励起光を5分間照射した後、光発生装置10を手に取り180度上下転置して青緑色に光る粒が不規則に落下する状態材を見ると心が落ち着き、リラックス効果が得られた。
【0051】
(比較例1)
実施例1において使用したシリコーンオイルの代わりに、粘度が1mPa・sのシリコーンオイルを使用し、実施例1と同様に光発生装置を作製した。光発生装置を180度上下転置してから15秒ですべての粒状の蓄光材が落下してしまい、リラックス効果は得られなかった。
【0052】
(比較例2)
第1の壁部11と第2の壁部13の距離を6mmとした以外は、実施例1と同様に光発生装置を作製した。光発生装置を180度上下転置すると、粒状の蓄光材は集合して落下したため、粒子の落下のゆらぎが視認できず、リラックス効果は得られなかった。
【0053】
本発明は、図示した形態に依らず、本発明の本質的な部分以外の部分について、適宜設計変更してもよい。第1の壁部11が第2の壁部13との関係で内外を区別できるような場合には、第1の壁部11は「内壁部」と呼んでもよいし、同様に、第2の壁部13が第1の壁部11との関係で内外を区別できるような場合には、第2の壁部13は「外壁部」と呼んでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:照明システム
10:光発生装置
11:第1の壁部
12:領域
13:第2の壁部
14:液体
15:蓄光材
16:粉状物
17:気泡
18a,18b:結合部
19a,19b:封止部
20:光照射装置
21:光源
22:台座部
23:ステージ
25:台座
26:スタンド
図1
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