(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112237
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】蓄電システム及び蓄電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/35 20060101AFI20240813BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240813BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J7/00 303C
H02J7/00 303B
H01M10/44 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017182
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 洋生
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503BB05
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA06
5H030AA10
5H030BB01
5H030BB07
5H030FF42
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】鉛蓄電池の長寿命化を図る。
【解決手段】蓄電システム12は、再生可能エネルギー発電装置14と、再生可能エネルギー発電装置14により充電される、鉛蓄電池以外の種類の二次電池(リチウムイオン電池20)と、鉛蓄電池以外の種類の二次電池及び再生可能エネルギー発電装置14の少なくとも一方から充電される鉛蓄電池22と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置から充電される、鉛蓄電池以外の種類の二次電池と、
前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池及び前記再生可能エネルギー発電装置の少なくとも一方から充電される鉛蓄電池と、
を有する蓄電システム。
【請求項2】
前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池の正極と、前記鉛蓄電池の正極と、が接続されている、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記鉛蓄電池の容量は前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池の容量よりも大きい、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池は、リチウムイオン電池、亜鉛電池、ニッケル水素電池及びニッケルカドミウム電池の少なくとも1種類を含む、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項5】
再生可能エネルギー発電装置から充電される、鉛蓄電池以外の種類の二次電池と、
前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池及び前記再生可能エネルギー発電装置のいずれか一方から充電される鉛蓄電池と、
を有する蓄電システムに対し、
前記再生可能エネルギー発電装置の電流を、少なくとも前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池に充電して蓄電する蓄電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、蓄電システム及び蓄電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電機構からの供給電力を蓄電する複数の主蓄電池と、この主蓄電池からの電力を再蓄電する、当該主蓄電池よりも蓄電能力の小さい副蓄電池と、複数の主蓄電池から副蓄電池に向けて放電すべき電池を選択するための切替手段を有する蓄電システムが記載されている。また、主蓄電池として鉛蓄電池が例示され、副蓄電池としてリチウムイオン電池が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光パネルを用いた太陽光発電装置や風力により発電する風力発電装置等の再生可能エネルギー発電装置では、発電電流が時間により大きく変動することがある。そして、時間的変動の大きい電流が鉛蓄電池に入力されると、鉛蓄電池の低寿命化を招くことがある。すなわち、蓄電システムとして、鉛蓄電池の長寿命化を図る点で改善の余地がある。
【0005】
本開示の技術は、鉛蓄電池の長寿命化を図ることが可能な蓄電システム及び蓄電方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の蓄電システムは、再生可能エネルギー発電装置から充電される、鉛蓄電池以外の種類の二次電池と、前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池及び前記再生可能エネルギー発電装置の少なくとも一方から充電される鉛蓄電池と、を有する。
【0007】
この蓄電システムでは、鉛蓄電池と、鉛蓄電池以外の種類の二次電池と、を有している。そして、再生可能エネルギー発電装置の発電電流により、「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」が充電される。「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」は、鉛蓄電池と比較して、充電電流の時間的変化に起因する寿命の低下が発生しづらい。これにより、鉛蓄電池に対する再生可能エネルギー発電装置の発電電流の時間的変化の影響が、再生エネルギー発電装置の電流が鉛蓄電池のみに入力される構成と比較して少なくなるので、鉛蓄電池の長寿命化を図ることができる。
【0008】
なお、再生可能エネルギー発電装置の発電電流のすべてが「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」に入力される必要はなく、発電電流の一部が「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」に入力される構成であってもよい。
【0009】
また、負荷(電流の出力先)へは、たとえば、「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」と鉛蓄電池の両方から出力可能な構成であっても、また、これらのいずれか一方から出力可能な構成であってもよい。
【0010】
第二態様の蓄電システムは、第一態様において、前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池の正極と、前記鉛蓄電池の正極と、が接続されている。
【0011】
したがって、「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」から鉛蓄電池へ電流を入力することが可能である。
【0012】
第三態様の蓄電システムは、第一又は第二態様において、前記鉛蓄電池の容量は前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池の容量よりも大きい。
【0013】
したがって、再生可能エネルギー発電装置の発電電流について、「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」よりも多くの電力を鉛蓄電池に充電できる。
【0014】
なお、「鉛蓄電池以外の種類に二次電池」が複数でユニット化されている場合、及び鉛蓄電池が複数でユニット化されている場合には、それぞれのユニットにおける容量について、上記の関係が満たされる。
【0015】
第四態様の蓄電システムでは、第一~第三のいずれか一態様において、前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池は、リチウムイオン電池、亜鉛電池、ニッケル水素電池及びニッケルカドミウム電池の少なくとも1種類を含む。
【0016】
これにより、「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」として、鉛蓄電池よりも優先的に再生可能エネルギー発電装置から充電される構造を実現できる。
【0017】
第五態様の蓄電方法は、再生可能エネルギー発電装置から充電される、鉛蓄電池以外の種類の二次電池と、前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池及び前記再生可能エネルギー発電装置のいずれか一方から充電される鉛蓄電池と、を有する蓄電システムに対し、前記再生可能エネルギー発電装置の電流を、少なくとも前記鉛蓄電池以外の種類の二次電池に充電して蓄電する。
【0018】
この蓄電方法の対象である蓄電システムは、鉛蓄電池と、鉛蓄電池以外の種類の二次電池と、を有している。そして、再生可能エネルギー発電装置の発電電流を、少なくとも「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」が充電して蓄電する。「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」は、鉛蓄電池と比較して、充電電流の時間的変化に起因する寿命の低下が発生しづらい。これにより、鉛蓄電池に対する再生可能エネルギー発電装置の発電電流の時間的変化の影響が、再生エネルギー発電装置の電流が鉛蓄電池のみに入力される構成と比較して少なくなるので、鉛蓄電池の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術では、鉛蓄電池の長寿命化を図ることが可能な蓄電システム及び蓄電方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は第一実施形態の蓄電システムを示す概念図である。
【
図2】
図2は第一実施形態の蓄電システムにおける充電電流の時間的変化を示すグラフである。
【
図3】
図3は第二実施形態の蓄電システムを示す概念図である。
【
図4】
図4は第二実施形態の蓄電システムにおける充電電流の時間的変化を示すグラフである。
【
図5】
図5は第二実施形態の変形例の蓄電システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して第一実施形態に係る蓄電システム12について説明する。この蓄電システム12は、リチウムイオン電池20、及び鉛蓄電池22を有している。そして、再生可能エネルギー発電装置14で発電された電流が入力されると共に、負荷24に電流が出力されるようになっている。
【0022】
再生可能エネルギー発電装置14としては、たとえば、太陽光を受けて発電する太陽光発電装置、風力によってプロペラ等を回転させて発電する風力発電装置、洋上の潮汐により発電する潮汐発電装置、地熱により発電する地熱発電装置等を挙げることができる。これらの再生可能エネルギー発電装置では、発電電流が時間的に大きく変動する場合がある。たとえば太陽光発電装置では、日中の時間帯であても、晴天時と曇天時及び雨天時では、日射量が異なるため、発電電流が日射量に応じて変動する。
【0023】
リチウムイオン電池20は、開示の技術に係る「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」の一例である。リチウムイオン電池20は、例えば、正極にリチウム遷移金属複合酸化物、負極に炭素材料又はチタン酸リチウムが用いられると共に、電解液が、リチウム塩(電解質)と、これを溶解する非水系溶媒と、から構成され、正極と負極との間における電解質を介したリチウムイオンの移動により、充電及び放電を行う二次電池である。このように、リチウムイオンが電解質を介して正極と負極との間を移動することで充放電が行われれば、正極、負極及び電解液(非水系溶媒)の材料は、上記したものに限定されない。正極材料としては、コバルト、ニッケル、マンガンの単一または複合の金属酸化物やリン酸鉄系の材料を用いることが可能である、負極材料としては、炭素系材料や合金系の材料を用いることが可能である。非水系溶媒としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等を用いることが可能である。
【0024】
図1に示す例では、複数のリチウムイオン電池20によってリチウムイオン電池ユニット16が構成されている。複数のリチウムイオン電池20のうちの少なくとも1つは、2つの正極と1つの負極とを有する三端子型であり、これ以外は、1つの正極と1つの負極と、を有する二端子型である。以下では、必要に応じて、三端子型をリチウムイオン電池20Aとし、二端子型をリチウムイオン電池20Bとして区別する。
【0025】
そして、1つ又は複数のリチウムイオン電池20がL行×M列でマトリクス状に配置されることで、全体として(L×M)個のリチウムイオン電池20を有するリチウムイオン電池ユニット16が構成されている。複数のリチウムイオン電池20をこのようにマトリクス状に配置することで、リチウムイオン電池ユニット16の全体として、所定の電圧、電流及び抵抗に調整されている。特に、リチウムイオン電池ユニット16の抵抗は、後述する鉛蓄電池ユニット18の抵抗よりも低くされている。
【0026】
上記のL及びMは自然数である。したがって、リチウムイオン電池ユニット16として、たとえば、L≧2且つM=1の構成(複数のリチウムイオン電池20が単に直列接続されている)、L=1且つM≧2の構成(複数のリチウムイオン電池20が単に並列接続されている)、及びL=M=1の構成(1つのリチウムイオン電池20でリチウムイオン電池ユニット16を成す)を含む。
【0027】
また、
図1に示す例では、複数の鉛蓄電池22によって、鉛蓄電池ユニット18が構成されている。複数の鉛蓄電池22はいずれも、1つの正極と1つの負極とを有する二端子型の鉛蓄電池である。
【0028】
そして、複数の鉛蓄電池22がP行×Q列でマトリクス状に配置されることで、全体として(P×Q)個の鉛蓄電池22を有する鉛蓄電池ユニット18が構成されている。複数の鉛蓄電池22をこのようにマトリクス状に配置することで、鉛蓄電池ユニット18の全体として、所定の電圧、電流及び抵抗に調整されている。
【0029】
上記のP及びQは自然数である。したがって、鉛蓄電池ユニット18として、たとえば、P≧2且つQ=1の構成(複数の鉛蓄電池22が単に直列接続されている)、P=1且つQ≧2の構成(複数の鉛蓄電池22が単に並列接続されている)、及びP=Q=1の構成(1つの鉛蓄電池22で鉛蓄電池ユニット18を成す)を含む。
【0030】
以下では、リチウムイオン電池ユニット16及び鉛蓄電池ユニット18において、
図1における上側の端部を上端、下側の端部を下端とする。個別のリチウムイオン電池20及び鉛蓄電池22では、上端は+(プラス)端であり、下端は-(マイナス)端である。ただし、この「上端」及び「下端」は説明の便宜上のものであり、実際のリチウムイオン電池ユニット16及び鉛蓄電池ユニット18の使用状態における向きとは無関係である。リチウムイオン電池ユニット16では、各列の上端側(第1行)のリチウムイオン電池20Bの正極と、リチウムイオン電池20Aの正極(2つの正極のうちの一方)とが並列で、再生可能エネルギー発電装置14に接続されている。鉛蓄電池ユニット18では、各列の上端側(第1行)の鉛蓄電池22の正極と、リチウムイオン電池20Aの正極(2つの正極のうちの他方)とが並列で、負荷24に接続されている。
【0031】
また、リチウムイオン電池ユニット16における各列の他端側(第M行)のリチウムイオン電池20の負極と、鉛蓄電池ユニット18における各列の他端側(第Q行)の鉛蓄電池22の負極とが並列で、再生可能エネルギー発電装置14及び負荷24とに接続されている。
【0032】
なお、
図1に示すリチウムイオン電池ユニット16では、第1列のみにおいて、第1行のリチウムイオン電池20を三端子型のリチウムイオン電池20Aとしているが、他の任意の列において第1行のリチウムイオン電池20を三端子型のリチウムイオン電池20Aとしてもよい。たとえば、全列の第1行のリチウムイオン電池20を三端子型のリチウムイオン電池20Aとし、並列された三端子型のリチウムイオン電池20Aのそれぞれの正極の一方と、鉛蓄電池22の正極とを接続して、充電効率及び放電効率を高めた構成としてもよい。
【0033】
リチウムイオン電池ユニット16の正極の電位は、リチウムイオン電池ユニット16における第一行のリチウムイオン電池20の正極の電位である。また、鉛蓄電池ユニット18の正極の電位は、鉛蓄電池ユニット18における第一行の鉛蓄電池22の正極の電位である。たとえば再生可能エネルギー発電装置14からリチウムイオン電池20に電流が入力されると、リチウムイオン電池ユニット16の正極の電位が鉛蓄電池ユニット18の正極の電位よりも僅かに高くなる。そしてこの電位差によって、リチウムイオン電池ユニット16から鉛蓄電池22に充電される場合がある。この結果、リチウムイオン電池ユニット16の正極の電位と鉛蓄電池ユニット18の正極の電位とは、実質的には概ね等しい状態を維持しつつ、再生可能エネルギー発電装置14からの入力及び負荷24への出力等に応じて変動する。なお、実際のリチウムイオン電池ユニット16と鉛蓄電池ユニット18との間の電流については、上記した電位差に加えて、各電池ユニットの抵抗及び容量比等に応じて変動する。たとえば再生可能エネルギー発電装置14からの充電電流は、電池ユニットの電位差、抵抗及び容量比等に応じて分配される。
【0034】
鉛蓄電池ユニット18の全体での蓄電の容量は、リチウムイオン電池ユニット16の全体での蓄電の容量よりも大きく設定されている。
【0035】
なお、
図1では図示を省略しているが、本開示の技術では、再生可能エネルギー発電装置14及び負荷24と、リチウムイオン電池ユニット16及び鉛蓄電池ユニット18との間には、必要に応じて各種の装置が設けられる。たとえば、第一実施形態の場合では、再生可能エネルギー発電装置14からリチウムイオン電池ユニット16への入力配線に配置される装置として、いわゆるMPPT(Maximum Power Point Tracking)コントローラやDC/DCコンバータを例示できる。また、負荷24が交流機器、すなわち交流電流が入力される機器の場合には、リチウムイオン電池ユニット16及び鉛蓄電池ユニット18から負荷24への出力配線に配置される装置として、DC/ACインバータを例示できる。
【0036】
次に、第一実施形態の蓄電システムの作用及び蓄電方法を説明する。
【0037】
第一実施形態の蓄電システム12では、再生可能エネルギー発電装置14に、リチウムイオン電池ユニット16の各列の上端側(第1行)の複数のリチウムイオン電池20が接続されている。また、リチウムイオン電池ユニット16の各列においては、L個のリチウムイオン電池20が直列に接続されている。このため、再生可能エネルギー発電装置14によって発電された電流は、リチウムイオン電池20に入力され、リチウムイオン電池20のそれぞれが充電される。
【0038】
さらに、リチウムイオン電池20Aと、鉛蓄電池ユニット18の各列の上端側(第1行)の複数の鉛蓄電池22とが接続されている。また、鉛蓄電池ユニット18の各列においては、P個の鉛蓄電池22が直列に接続されている。このため、リチウムイオン電池20Aと鉛蓄電池22との電位差によって、リチウムイオン電池20から電流が鉛蓄電池22に入力され、鉛蓄電池22のそれぞれが充電される。
【0039】
そして、負荷24には、リチウムイオン電池20Aと、鉛蓄電池ユニット18の鉛蓄電池22と、から電流が供給される。
【0040】
このように、第一実施形態の蓄電システム12では、再生可能エネルギー発電装置14からの電流はリチウムイオン電池20に入力され、鉛蓄電池22には入力されない。再生可能エネルギー発電装置14としては、上記したように、太陽光発電装置、風力発電装置、潮汐発電装置、地熱発電装置等を挙げることができるが、これらの再生可能エネルギー発電装置14では、発電電流の時間的変化が大きい。たとえば太陽光発電装置では、日中の晴天時では発電量が多いが、日中であっても曇天時や雨天時、さらに夜間では、発電量は少ない。
【0041】
図2には、第一実施形態の蓄電システム12において、再生可能エネルギー発電装置14として太陽光発電装置を用いた場合の、日中の時間経過に伴うリチウムイオン電池ユニット16及び鉛蓄電池ユニット18それぞれの充電電流の変化の一例が示されている。この
図2及び後述する
図4の各グラフにおいて、「LIB」はリチウムイオン電池ユニットを、「LAB」は鉛蓄電池ユニットを、それぞれ示す。
【0042】
太陽光発電装置では、太陽光パネルへの太陽光の照射量の変化等により、発電量が時間で変動する。第一実施形態の蓄電システム12では、再生可能エネルギー発電装置14はリチウムイオン電池ユニット16に接続されているので、
図2に破線で示すように、リチウムイオン電池ユニット16への充電電流が、太陽光発電装置の発電量に伴って時間的に変動している。
【0043】
鉛蓄電池22は、リチウムイオン電池20と比較して、充電電流の時間的変化に伴って劣化、すなわち寿命の低下が発生しやすい。これに対し、リチウムイオン電池20は鉛蓄電池22よりも低抵抗であり、充電電流の急激な時間的変化が生じても劣化しづらい。第一実施形態の蓄電システム12では、鉛蓄電池ユニット18は再生可能エネルギー発電装置14とは直接的に接続されておらず、リチウムイオン電池ユニット16を介して充電される。したがって、
図2に二点鎖線で示すように、鉛蓄電池ユニット18への充電電流の時間的変化が、リチウムイオン電池ユニット16への充電電流の時間的変化と比較して緩やかになっている。再生可能エネルギー発電装置14からの充電電流の時間的変化が急激であっても、リチウムイオン電池20がこの時間的変化を吸収するので、鉛蓄電池22への充電電流の急激な時間的変化の影響を緩和できる。これにより、第一実施形態の蓄電システム12では、鉛蓄電池22の劣化を抑制し、鉛蓄電池22の長寿命化を図ることができる。
【0044】
特に、第一実施形態の蓄電システム12では、リチウムイオン電池ユニット16の一部に三端子型のリチウムイオン電池20Aを用い、再生可能エネルギー発電装置14からの電流の入力が、鉛蓄電池22には作用しない構成を実現している。このため、鉛蓄電池22の長寿命化をより効果的に図ることができる。
【0045】
なお、
図2に示すグラフにおいて、概ね14時17分以降では、リチウムイオン電池20への充電電流が実質的に0(ゼロ)になっている。これは、たとえば、再生可能エネルギー発電装置14が全く発電していない場合の他、何等かの理由で再生可能エネルギー発電装置14からリチウムイオン電池ユニット16までの電流配線が遮断された場合等に生じる事象である。本開示の技術では、このように再生可能エネルギー発電装置14からの供給電流が急激に0(ゼロ)になった場合でも、鉛蓄電池ユニット18への充電電流は0(ゼロ)にはなっておらず、急激な電流変化を抑制する効果があることが分かる。
【0046】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素、部材等には第一実施形態と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0047】
図3に示すように、第二実施形態の蓄電システム32では、リチウムイオン電池ユニット16の第1行のリチウムイオン電池20と、鉛蓄電池ユニット18の第1行の鉛蓄電池22のそれぞれの正極が並列で、再生可能エネルギー発電装置14に接続されている。また、三端子型のリチウムイオン電池20Aの正極の1つは、負荷24に接続されている。
【0048】
また、再生可能エネルギー発電装置14と、リチウムイオン電池ユニット16の各列の上端側(第1行)の複数のリチウムイオン電池20及び鉛蓄電池ユニット18の各列の上端側(第1行)の複数の鉛蓄電池22と、が接続されている。リチウムイオン電池ユニット16の全体での内部抵抗は、鉛蓄電池ユニット18の全体での内部抵抗よりも低くなるように、それぞれのリチウムイオン電池20及び鉛蓄電池22の構成及び配列が調整されている。
【0049】
なお、第二実施形態の蓄電システム32においても、第一実施形態の蓄電システム12と同様に、第1列だけでなく、他の任意の列において第1行のリチウムイオン電池20を三端子型のリチウムイオン電池20Aとしてもよい。たとえば、全列の第1行のリチウムイオン電池20を三端子型のリチウムイオン電池20Aとした場合、並列された三端子型のリチウムイオン電池20Aのそれぞれの正極の一方と、鉛蓄電池22のそれぞれの正極とが並列で接続される。そして、三端子型のリチウムイオン電池20Aのそれぞれの正極の他方が、負荷24に並列で接続される。
【0050】
また、第二実施形態の蓄電システム32においても、再生可能エネルギー発電装置14及び負荷24と、リチウムイオン電池ユニット16及び鉛蓄電池ユニット18との間には、必要に応じて各種の装置が設けられる。
【0051】
このような構成とされた第二実施形態の蓄電システム32では、再生可能エネルギー発電装置14によって発電された電流は、リチウムイオン電池20及び鉛蓄電池22に入力され、リチウムイオン電池20及び鉛蓄電池22のそれぞれが充電される。
【0052】
図4には、第二実施形態の蓄電システム32において、
図2と同様に再生可能エネルギー発電装置14として太陽光発電装置を用いた場合の、日中の時間経過に伴うリチウムイオン電池ユニット16及び鉛蓄電池ユニット18それぞれの充電電流の変化の一例が示されている。
【0053】
第二実施形態の蓄電システム32では、再生可能エネルギー発電装置14からの電流がリチウムイオン電池ユイット16と鉛蓄電池ユニット18の両方に入力される。再生可能エネルギー発電装置14から入力される電流の分配は、リチウムイオン電池20と鉛蓄電池22との電位差に加えて、これらの抵抗及び容量比等に応じて決まる。また、リチウムイオン電池20と鉛蓄電池22の内部の反応応答性が再生可能エネルギー発電装置14からの入力電流の分配に影響することもある。たとえば、鉛蓄電池ユニット18の充電残容量がリチウム16の充電残容量よりも大きい場合は、再生可能エネルギー発電装置14からの電流の多くは、鉛蓄電池ユニット18に入力されることがある。しかし、このような場合でも、再生可能エネルギー発電装置14からの電流が、リチウムイオン電池20に入力されずに鉛蓄電池22に入力される構成と比較して、鉛蓄電池ユニット18への充電電流の時間的変化の影響が緩やかになっている。すなわち、第二実施形態の蓄電システム32においても、再生可能エネルギー発電装置14からの充電電流の時間的変化が急激であっても、リチウムイオン電池20がこの時間的変化を吸収するので、鉛蓄電池22への充電電流の急激な時間的変化の影響を緩和できる。これにより、第二実施形態の蓄電システム32でも、鉛蓄電池22の劣化を抑制し、鉛蓄電池22の長寿命化を図ることができる。
【0054】
第二実施形態において、
図5に示す変形例の構成としてもよい。変形例の蓄電システム34では、リチウムイオン電池ユニット16の第1行第1列のリチウムイオン電池20が二端子型のリチウムイオン電池20Bである。そして、1つの正極で再生可能エネルギー発電装置14からの電流の入力を受けると共に、鉛蓄電池ユニット18に向けて電流を出力するようになっている。
【0055】
図5に示す変形例の蓄電システム34では、リチウムイオン電池ユニット16を二端子型のリチウムイオン電池20Bのみで構成でき、構成を簡素化できる。
【0056】
これに対し、三端子型のリチウムイオン電池20Aを有する構成では、たとえば第一実施形態の蓄電システム12のように、リチウムイオン電池20Aの2つの正極をそれぞれ再生可能エネルギー発電装置14と負荷24とに接続する構成を採り得る。これにより、リチウムイオン電池20Aにおいて、電流の入力側と出力側とでリチウムイオン電池20A内の反応を分離できる。
【0057】
そして、少なくとも1つの三端子型のリチウムイオン電池20Aを有することで、
図1に示した第一実施形態の蓄電システム12のように、再生可能エネルギー発電装置14からの入力をリチウムイオン電池ユニット16のみで受ける構成とすることが可能である。この構成では、再生可能エネルギー発電装置14からの充電電流の時間的変化が大きい場合でも、この時間的変化の影響が鉛蓄電池ユニット18に作用しづらい構成を実現できる。
【0058】
また、少なくとも1つの三端子型のリチウムイオン電池20Aを有することで、
図3に示した第二実施形態の蓄電システム32のように、リチウムイオン電池ユニット16のみから負荷24に出力(電流供給する)構成を実現することも可能である。
【0059】
さらに、上記各実施形態及び変形例では、リチウムイオン電池20の正極と鉛蓄電池22の正極とが接続されている例を挙げている。これにより、たとえば、リチウムイオン電池20から鉛蓄電池22に電流を入力し、鉛蓄電池22を充電することが可能な構成が実現される。これに対し、リチウムイオン電池20の正極と鉛蓄電池22の正極とが接続されず、リチウムイオン電池20の正極と鉛蓄電池22の正極とがそれぞれ独立して、再生可能エネルギー発電装置14に接続されている構成であってもよい。すなわち、この構成であっても、再生可能エネルギー発電装置14の発電電流の一部がリチウムイオン電池20に入力されるので、再生可能エネルギー発電装置14からの充電電流の時間的変化が大きい場合に、この時間的変化の影響が鉛蓄電池ユニット18に作用しづらい構成を実現できる。
【0060】
以上説明したように、本開示の技術の蓄電システムでは、再生可能エネルギー発電装置14の発電電流の一部又は全部が、リチウムイオン電池20に入力される。したがって、再生可能エネルギー発電装置14の発電電流の全てが鉛蓄電池22に入力される構成と比較して、再生可能エネルギー発電装置14の発電電流の時間的変化が大きい場合でも、鉛蓄電池22の劣化を抑制し長寿命化を図ることができる。
【0061】
また、本開示の技術の蓄電システムでは、蓄電容量の一部を鉛蓄電池22が担っている。したがって、蓄電容量の全部をリチウムイオン電池20で担う構成と比較して、低コストで蓄電システムを構成できる。
【0062】
特に、鉛蓄電池ユニット18の全体での蓄電容量は、リチウムイオン電池ユニット16の全体での蓄電容量よりも大きく設定されている。このため、低コストで、蓄電システム12としての蓄電容量を大きく確保できる。
【0063】
本開示の技術における「鉛蓄電池以外の種類の二次電池」としては、上記したリチウムイオン電池に限られず、たとえば、亜鉛電池、ニッケル水素電池及びニッケルカドミウム電池の少なくとも1種類を含んでいればよい。これらの種類の二次電池は、複数の種類の組み合わせとしてユニット化されていてもよい。いずれにしても、これらの種類の二次電池は鉛蓄電池と比較して低抵抗であり、再生可能エネルギー発電装置からの電流が鉛蓄電池よりも優先的に入力されやすい。そして、再生可能エネルギー発電装置からの充電電流の時間的変化を、これらの種類の二次電池が吸収することで、鉛蓄電池に対する充電電流の時間的変化を緩和し、鉛蓄電池の長寿命化を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
12 蓄電システム
14 再生可能エネルギー発電装置
16 リチウムイオン電池ユニット
18 鉛蓄電池ユニット
20 リチウムイオン電池
22 鉛蓄電池
24 負荷
32 蓄電システム
34 蓄電システム