(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011226
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/27 20190101AFI20240118BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240118BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20240118BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20240118BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240118BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240118BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240118BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240118BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240118BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60L58/27
B60W10/26 900
B60W10/26 ZHV
B60W10/30 900
B60W20/00 900
B60L53/14
B60L1/00 L
H01M10/615
H01M10/625
H02J7/00 P
H02J7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113058
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹末 一平
(72)【発明者】
【氏名】増田 陽
(72)【発明者】
【氏名】福家 和也
【テーマコード(参考)】
3D202
5G503
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA10
3D202BB19
3D202BB25
3D202BB43
3D202CC00
3D202CC57
3D202DD00
3D202DD44
3D202DD45
3D202DD46
3D202DD48
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA02
5G503CB11
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5H031CC09
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC19
5H125BC21
5H125CC06
5H125CD09
5H125DD02
5H125EE21
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】外部電源によって充電することが可能な二次電池を備えた車両を提案する。
【解決手段】車両は、二次電池と、二次電池を昇温可能に構成されているヒータと、外部電源に接続可能に構成されている充電制御部と、を備える。充電制御部は、外部電源に接続されているときに、外部電源から供給される電力を二次電池およびヒータに出力可能に構成されている。充電制御部は、外部電源に要求電力量を要求すること、および、外部電源から要求電力量に応じた供給電力量の供給を受けることが可能に構成されている。充電制御部は、二次電池の充電に必要な第1電力量と、ヒータによる加熱に必要な第2電力量と、を含んだ要求電力量を外部電源に要求する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池を昇温可能に構成されているヒータと、
外部電源に接続可能に構成されている充電制御部と、
を備える車両であって、
前記充電制御部は、前記外部電源に接続されているときに、前記外部電源から供給される電力を前記二次電池および前記ヒータに出力可能に構成されており、
前記充電制御部は、前記外部電源に要求電力量を要求すること、および、前記外部電源から前記要求電力量に応じた供給電力量の供給を受けることが可能に構成されており、
前記充電制御部は、前記二次電池の充電に必要な第1電力量と、前記ヒータによる加熱に必要な第2電力量と、を含んだ前記要求電力量を前記外部電源に要求する、車両。
【請求項2】
前記要求電力量を前記外部電源に要求してから、要求した前記要求電力量に応答して前記外部電源が前記供給電力量を供給するまでの時間である応答時間が存在しており、
前記充電制御部は、
前記応答時間に対応する所定電力量を算出する処理と、
前記ヒータで消費される電力を指示する指示電力量を取得する処理と、
前記指示電力量から前記所定電力量を減じた電力量を第2電力量とする処理と、
を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記要求電力量を前記外部電源に要求してから、要求した前記要求電力量に応答して前記外部電源が前記供給電力量を供給するまでの時間である応答時間が存在しており、
前記充電制御部は、
前記応答時間に対応する所定電力量を算出する処理と、
前記ヒータで消費される電力を指示する指示電力量を取得する処理と、
前記ヒータで実際に消費される電力を示す実消費電力量を取得する処理と、
前記指示電力量から前記所定電力量を減じた電力量と、前記実消費電力量と、のうちの小さい方の電力量を前記第2電力量とする処理と、
を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記指示電力量には、変化レートの最大値が予め定められており、
前記所定電力量は、前記変化レートの最大値と前記応答時間との積によって算出される値以上の値である、請求項2または3に記載の車両。
【請求項5】
前記要求電力量を前記外部電源に要求してから、要求した前記要求電力量に応答して前記外部電源が前記供給電力量を供給するまでの時間である応答時間が存在しており、
前記要求電力量には、減少レートの最大値が予め定められており、
前記充電制御部は、前記要求電力量が前記減少レートの最大値を超えて減少する急減現象が発生した場合には、前記急減現象の発生時点から前記応答時間以上経過する時点まで前記ヒータの動作を継続させる、請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、車両に関する。特に、外部電源によって充電することが可能な二次電池を備えた車両に関する。
【0002】
特許文献1には、電動車両が備えているバッテリを加熱する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部電源を用いて二次電池を充電する際に、二次電池の充電に用いる電力量の一部を利用して二次電池を加熱する場合、二次電池への供給電力量が減少してしまう。その結果、充電時間が長くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両は、二次電池と、二次電池を昇温可能に構成されているヒータと、外部電源に接続可能に構成されている充電制御部と、を備える。充電制御部は、外部電源に接続されているときに、外部電源から供給される電力を二次電池およびヒータに出力可能に構成されている。充電制御部は、外部電源に要求電力量を要求すること、および、外部電源から要求電力量に応じた供給電力量の供給を受けることが可能に構成されている。充電制御部は、二次電池の充電に必要な第1電力量と、ヒータによる加熱に必要な第2電力量と、を含んだ要求電力量を外部電源に要求する。
【0006】
要求電力量が第1電力量と第2電力量とを含んでいる態様は、様々であって良い。例えば、要求電力量は、第1電力量と第2電力量との合算値であってもよいし、合算値に対して各種の補正(例:マージン電力量の加算や減算)が行われた値であってもよい。
【0007】
電力量の制御方法は、様々であってよい。電流値および電圧値の一方のみを制御する技術も、本明細書の電力量の制御に含まれる。例えば、本明細書の電力量の制御には、電圧値を二次電池で定まる一定値とし、電流値を可変にすることで電力量を制御する技術も含まれる。
【0008】
この構成によれば、二次電池の充電に必要な第1電力量に、ヒータによる加熱に必要な第2電力量を上乗せした電力量を、要求電力量として外部電源に要求することができる。第1電力量のみを要求する場合に比して、要求電力量を大きく要求することができる。二次電池をヒータで加熱しながら外部電源によって充電する場合において、二次電池の充電に必要な第1電力量の一部がヒータ動作のために使用されることがない。充電時間が長くなってしまうことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例の充電システム1の概略ブロック図。
【
図2】従来及び本実施例の外部充電の制御を説明する図。
【
図3】かさ上げ指示電流量RICの制御における課題を説明する図。
【
図4】かさ上げ指示電流量RICの実施例1の制御方法を説明する図。
【
図5】実施例2のかさ上げ指示電流量RICの制御方法を説明する図。
【
図6】実施例3のかさ上げ指示電流量RICの制御方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示する熱管理装置の技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0011】
本明細書が開示する一例の車両では、要求電力量を外部電源に要求してから、要求した要求電力量に応答して外部電源が供給電力量を供給するまでの時間である応答時間が存在していてもよい。充電制御部は、応答時間に対応する所定電力量を算出する処理を実行してもよい。充電制御部は、ヒータで消費される電力を指示する指示電力量を取得する処理を実行してもよい。充電制御部は、指示電力量から所定電力量を減じた電力量を第2電力量とする処理を実行してもよい。この構成では、指示電力量を、応答時間に対応する所定電力量だけ予め低く設定することができる。従って、指示電力量と第2電力量との間に、所定電力量の電力量の差が発生した場合においても、第2電力量が指示電力量を下回ることがない。これにより、ヒータで消費されなかった電力が二次電池に流れ込むことを防止できるため、二次電池を保護することが可能となる。
【0012】
本明細書が開示する一例の車両では、要求電力量を外部電源に要求してから、要求した要求電力量に応答して外部電源が供給電力量を供給するまでの時間である応答時間が存在していてもよい。充電制御部は、応答時間に対応する所定電力量を算出する処理を実行してもよい。充電制御部は、ヒータで消費される電力を指示する指示電力量を取得する処理を実行してもよい。充電制御部は、ヒータで実際に消費される電力を示す実消費電力量を取得する処理を実行してもよい。充電制御部は、指示電力量から所定電力量を減じた電力量と、実消費電力量と、のうちの小さい方の電力量を第2電力量とする処理を実行してもよい。この構成では、指示電力量と第2電力量との間に、所定電力量の電力量の差が発生した場合においても、第2電力量が指示電力量を下回ることがない。また、第2電力量が実消費電力量を超過することがない。これにより、ヒータで消費されなかった電力が二次電池に流れ込むことを防止できるため、二次電池を保護することが可能となる。
【0013】
本明細書が開示する一例の車両では、指示電力量には、変化レートの最大値が予め定められていてもよい。所定電力量は、変化レートの最大値と応答時間との積によって算出される値以上の値であってもよい。この構成では、応答時間内における、指示電力量の変化量の最大値を算出することができる。
【0014】
本明細書が開示する一例の車両では、要求電力量を外部電源に要求してから、要求した要求電力量に応答して外部電源が供給電力量を供給するまでの時間である応答時間が存在していてもよい。要求電力量には、減少レートの最大値が予め定められていてもよい。充電制御部は、要求電力量が減少レートの最大値を超えて減少する急減現象が発生した場合には、急減現象の発生時点から応答時間以上経過する時点までヒータの動作を継続させてもよい。この構成では、要求電力量が急減する場合においても、ヒータによって電力を消費し続けることができる。よって、ヒータでの実消費電力量が供給電力量を下回ることがない。二次電池を保護することが可能となる。
【実施例0015】
(充電システム1の概要)
図1に、本実施例の充電システム1の概略ブロック図を示す。
図1では、信号線を点線で示し、電源線を一重実線で示し、媒体の流路を二重実線で示している。充電システム1は、外部電源2および車両3を備えている。外部電源2は、例えば、充電スタンドや家庭用電源(商用電源)などである。外部電源2は、充電ケーブル2cおよび接続プラグ2pを備えている。外部電源2は、直流電流を供給する装置であってもよい。
【0016】
車両3は、バッテリ10、ヒータ20、充電制御部30、インレット40、を主に備えている。インレット40は、接続プラグ2pが接続される接続口である。充電制御部30は、充電器31およびECU32を備えている。外部電源2と充電器31とは、電源線11Pおよび11Nと、信号線11Sとによって接続されている。充電器31とバッテリ10とは、電源線12Pおよび12Nによって接続されている。充電器31と高電圧電気ヒータ(HVH)21とは、電源線13Pおよび13Nによって接続されている。
【0017】
ECU32は、バッテリ10の充放電制御やヒータ20の制御など、各種の制御を行う部位である。ECU32は、信号線11Sを介して、外部電源2に要求電流量RCを送信する。ECU32は、HVH21へHVH指示電流量を送信するとともに、HVH21からHVH実消費電流量HACを受信する。ECU32は、充電器31からかさ上げ実供給電流量RACを受信する。これらの電流量の具体的内容については後述する。
【0018】
バッテリ10は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池である。電流センサ11は、バッテリ10に流れる充電電流を検出し、充電電流量CCをECU32に出力する。
【0019】
ヒータ20は、バッテリ10を昇温させる加熱装置である。ヒータ20は、車両3に搭載されている熱管理装置の一部によって構成されている。熱管理装置は、冷暖房動作や、トランスアクスル(不図示)およびバッテリ10等の冷却/加熱を行うための装置である。
図1のヒータ20では、ヒータ20を構成するために必要な部品のみを、熱管理装置から抜き出して記載している。
図1に示す実施形態のヒータ20は、第1熱回路20aおよび第2熱回路20bを有している。第1熱回路20aおよび第2熱回路20bのそれぞれの内部に、熱媒体が流れる。
【0020】
第1熱回路20aは、HVH21、ポンプ22、三方弁23、ヒータコア24、高温ラジエータ25、水温センサ28、を備える。HVH21は、電気式のヒータである。HVH21は、バッテリ10による内部電力または外部電源2から供給される外部電力によって駆動する。ポンプ22は、第1熱回路20a内の熱媒体を矢印方向へ送出する。水温センサ28は、HVH21から出力される熱媒体の温度を測定する。測定された温度を示す温度情報TEは、ECU32へ送信される。三方弁23は、ヒータコア24に熱媒体が流れる流路P1と、高温ラジエータ25に熱媒体が流れる流路P2との間で、流路を切り換える。ヒータコア24は、熱媒体と車室内の空気との熱交換によって、車室内を暖房する。高温ラジエータ25は、外気との熱交換によって、熱媒体を冷却する。
【0021】
第2熱回路20bは、低温ラジエータ26、ポンプ27、バッテリ10を備える。低温ラジエータ26は、外気との熱交換によって、熱媒体を冷却する。バッテリ51は、熱媒体との熱交換によって加熱または冷却される。
【0022】
バッテリ10の加熱動作を説明する。充電制御部30は、HVH21を作動させて、熱媒体を加熱する。高温ラジエータ25に、加熱された高温の熱媒体が流入する。高温ラジエータ25を流れる熱媒体の熱が、低温ラジエータ26を流れる熱媒体に伝達される(矢印A0)。低温ラジエータ26を流れる熱媒体を加熱することができる。加熱された熱媒体は、第2熱回路20bを介してバッテリ10に流入し、バッテリ10が加熱される。
【0023】
(従来の外部充電の課題)
図2(A)を用いて、従来の外部充電における課題を説明する。なお本明細書では、直流電流で充電する場合を説明する。また、バッテリ10で決定される電圧下で、電流値を制御することによって、充電時の供給電力を制御する場合を説明する。この場合、電流値の制御と電力量の制御とは、同義とみなすことができる。
【0024】
ユーザが接続プラグ2pをインレット40に接続し、不図示のスイッチにより充電開始指令を入力すると、バッテリ10への外部充電が開始される。ステップS1において充電制御部30は、バッテリ10の充電で使用可能な最大電流値である、充電電流量CCを算出する。充電電流量CCは様々な方法で算出可能である。本実施例では、バッテリの充電電流許容値Winに基づいて、充電電流量CCを求める。
図2(A)の例では、ステップS1において、充電電流量CCが4[A]と算出される。
【0025】
充電制御部30は、ステップS1で算出された充電電流量CCを、要求電流量RCとして外部電源2に要求する。しかし外部電源2には、出力可能な最低電流値MCが予め定められている。そして外部電源2の性能が低いほど、最低電流値MCが高くなる。そのため、要求電流量RCが外部電源2の最低電流値MCを下回る場合には、外部電源2による充電ができなくなる場合がある。
図2(A)の例では、外部電源の最低電流値MCが5[A]であるため、充電することができない。
【0026】
また外部充電時に、バッテリ10をヒータで加熱する場合がある。充電電流量CCの一部を使用してヒータを動作させる場合、バッテリ10への充電電流量が減少してしまうため、充電時間が長くなってしまう。またバッテリ10を用いてヒータを動作させる場合、SOCが低下してしまう場合がある。
【0027】
(本実施例の外部充電の制御)
図2(B)を用いて、本実施例の外部充電の制御を説明する。ステップS11において充電制御部30は、充電電流量CCを求める。
図2(B)の例では、充電電流量CCは、4[A]と算出される。
【0028】
ステップS12において充電制御部30は、HVH指示電流量HICを算出する。HVH指示電流量HICは、ヒータ20によるバッテリ10の加熱に必要な電流量である。換言すると、HVH指示電流量HICは、ヒータ20で消費される電流量を指示する情報である。HVH指示電流量HICは、様々な方法で算出可能である。例えば、水温センサ28で測定された温度情報TEと目標温度TTとの差分に基づいて算出してもよい。また例えば、ヒータ20を駆動し、電流消費量を確認することで算出してもよい。
図2(B)の例では、HVH指示電流量HICは、14[A]と算出される。
【0029】
ステップS13において、充電制御部30は、外部電源2の応答時間RTに対応する所定電流量PCを算出する。応答時間RTおよび所定電流量PCについては後述する。
図2(B)の例では、所定電流量PCは、4[A]と算出される。ステップS14において、充電制御部30は、HVH指示電流量HICから所定電流量PCを減じる。これにより、かさ上げ指示電流量RICが算出される。
図2(B)の例では、かさ上げ指示電流量RICは、10[A]と算出される。
【0030】
ステップS15において充電制御部30は、充電電流量CCとかさ上げ指示電流量RICとの合算電流量を、要求電流量RCとする。
図2(B)の例では、要求電流量RCは、14[A]と算出される。充電制御部30は、算出された要求電流量RCを、信号線11Sを介して外部電源2に要求する。
図2(B)の例では、要求電流量RC(14[A])が外部電源の最低電流値MC(5[A])を上回っているため、充電することが可能となる。そして、ステップS11からS15の処理は、所定周期(例:100ms)で繰り返し実行される。
【0031】
この構成によれば、バッテリ10の充電に必要な充電電流量CCに、ヒータ20による加熱に必要なかさ上げ指示電流量RICを上乗せした電流量を、要求電流量RCとして外部電源2に要求することができる。充電電流量CCのみを要求する場合に比して、要求電流量RCを大きく要求することができる。要求電流量RCが外部電源2の出力可能な最低電流値MCを下回ってしまう事態を抑制することができるため、外部電源2による充電を確実に実行することが可能となる。
【0032】
またバッテリ10をヒータで加熱しながら外部充電する場合において、充電電流量CCの一部がヒータ動作のために使用されることがない。充電時間が長くなってしまうことを抑制できる。またバッテリ10を用いてヒータを動作させることもないため、SOCの低下を抑制することができる。
【0033】
(かさ上げ指示電流量RICの制御の課題)
図3の比較例を用いて、かさ上げ指示電流量RICの制御における課題を説明する。比較例の制御方法は、外部電源2の応答時間RTを考慮しない方法である。
【0034】
図3(A)は、HVH指示電流量HIC、HVH実消費電流量HAC、かさ上げ指示電流量RIC、かさ上げ実供給電流量RAC、の時間変化を示す図である。HVH指示電流量HICは、HVH21に対して指示される、発熱に使用する電流量である。HVH実消費電流量HACは、HVH21で実際に発熱に使用される電流量である。HVH実消費電流量HACは、モニタ値であってもよいし、モニタ値の誤差を補正した値であってもよい。HVH実消費電流量HACは、HVH指示電流量HICから公差量VAだけ低下した値である。公差量VAは、HVH指示電流量HICと実際の消費電力との公差であり、HVH21の性能で決まる値である。HVH実消費電流量HACは、HVH指示電流量HICの変化に追従して変化する。かさ上げ指示電流量RICは、HVH実消費電流量HACの分だけ要求電流量RCをかさ上げするための電流量である。かさ上げ指示電流量RICは、HVH実消費電流量HACの変化に追従して変化する。かさ上げ実供給電流量RAC(点線)は、かさ上げ指示電流量RICに応答して外部電源2から実際に供給される電流量である。かさ上げ実供給電流量RACは、かさ上げ指示電流量RICの変化に対して、応答時間RTだけ遅延して追従する。
【0035】
図3(B)は、温度情報TEの時間変化を示す図である。温度情報TEは、HVH21から出力される熱媒体の温度を示す情報である。
図3(C)は、超過電流量OCの時間変化を示す図である。超過電流量OCは、バッテリ10の充電電流許容値Winを超過した電流量である。
【0036】
時刻t1において、HVH指示電流量HICが立上り、HVH21の加熱が開始される。かさ上げ指示電流量RICおよびかさ上げ実供給電流量RACは、HVH指示電流量HICおよびHVH実消費電流量HACに追従して上昇する。時刻t2から時刻t3までは、これら4つの電流量は一定値となる。
【0037】
時刻t3において、温度情報TEが目標温度TTに到達すると、HVH指示電流量HICおよびHVH実消費電流量HACは所定の減少レートで減少を開始する(矢印A1)。従ってかさ上げ指示電流量RICも追従して減少を開始する。
【0038】
しかし外部電源2には応答時間RTが存在する。応答時間RTは、かさ上げ指示電流量RICを外部電源2に要求してから、要求したかさ上げ指示電流量RICに応答して外部電源2がかさ上げ実供給電流量RACを供給するまでの遅れ時間である。すなわちかさ上げ指示電流量RICは、時刻t3において、減少を開始することを外部電源2に要求する。 しかし外部電源2は、時刻t3から応答時間RTが経過した時刻t6において、かさ上げ実供給電流量RACの低下を開始する。すると時刻t3から時刻t6までの間、HVH指示電流量HIC、HVH実消費電流量HACおよびかさ上げ指示電流量RICは同一傾きで低下する一方で、かさ上げ実供給電流量RACは一定値が維持される。その結果、時刻t4において、HVH実消費電流量HACが、かさ上げ実供給電流量RACを下回ってしまう。HVH21で消費されずに余った電流はバッテリ10に流れ込むため、超過電流量OCが上昇を開始する(矢印A2)。そして時刻t5において、超過電流量OCが上限値ULに到達すると、バッテリ10の保護のために充電停止となってしまう(領域R1参照)。
【0039】
(実施例1のかさ上げ指示電流量RICの制御方法)
図4を用いて、かさ上げ指示電流量RICの実施例1の制御方法を説明する。実施例1の制御方法は、外部電源2の応答時間RTを考慮する方法である。
図4の内容は、前述の
図3の内容と同様である。
【0040】
前述のステップS13において、充電制御部30は、応答時間RTに対応する所定電流量PCを算出する。具体的に説明する。HVH指示電流量HICには、変化レートの最大値が予め定められている。また応答時間RTにも、充電規格によって最大値が予め定められている。従って、HVH指示電流量HICの変化レートの最大値と応答時間RTの最大値との積によって、応答時間RT内でのHVH指示電流量HICの最大変化量を算出することができる。そして、所定電流量PCは、HVH指示電流量HICの最大変化量以上の値に決定される。本実施例では、HVH指示電流量HICの減少レートの最大値は0.5[A/sec]であり、応答時間RTの最大値は8[sec]である。従って、HVH指示電流量HICの最大変化量は、4.0[A]である。よって本実施例では、所定電流量PCを4.0[A]とした。
【0041】
前述のステップS14において、充電制御部30は、HVH指示電流量HICからマージン量MAおよび所定電流量PCを減じる(矢印A3参照)。これにより、かさ上げ指示電流量RICが求まる。
【0042】
図4の時刻t3において、HVH指示電流量HICは減少を開始する。時刻t3から時刻t6までの間、HVH指示電流量HIC、HVH実消費電流量HAC、かさ上げ指示電流量RICは、同一傾きで低下する。一方、かさ上げ実供給電流量RACは、一定値が維持される。しかし前述のように、かさ上げ指示電流量RICは、所定電流量PCだけ予め低くされている。よって、応答時間RTの経過後の時刻t6においても、HVH実消費電流量HACがかさ上げ実供給電流量RACを下回ることがない(領域R2参照)。これにより、超過電流量OCの上昇を抑制できるため、充電停止の事態の発生を防止することが可能となる。
実施例2では、HVH指示電流量HICの増加レートの最大値が、HVH実消費電流量HACの増加レートの最大値よりも大きい場合を説明する。この場合、時刻t11においてHVH21の加熱が開始されると、HVH指示電流量HICの上昇傾き(領域R11)に対して、HVH実消費電流量HACの上昇傾き(領域R12)が小さくなる。一方、かさ上げ指示電流量RICは、HVH指示電流量HICから所定電流量PCを減じて求められる。よってかさ上げ指示電流量RICの上昇傾き(領域R13)は、HVH指示電流量HICの上昇傾き(領域R11)と同様に大きくなる。すると一点鎖線で示すように、時刻t12からt13までの過渡期間TPの間、かさ上げ指示電流量RICがHVH実消費電流量HACを超過してしまう。かさ上げ指示電流量RICがHVH実消費電流量HACを超過すると、超過電流量OCが上昇するため、問題である。