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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112263
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】脳波誘導方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/00 20060101AFI20240809BHJP
   A61B 5/38 20210101ALI20240809BHJP
【FI】
A61M21/00 Z
A61B5/38
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088745
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】112104096
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】503116213
【氏名又は名称】固昌通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Cotron Corporation
【住所又は居所原語表記】12Fl., No. 150, Sec.4, Cheng-de Rd., Shihlin District, Taipei City, 111,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】楊 宗隆
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127DD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脳波を効果的に誘導できる脳波誘導方法を提供する。
【解決手段】ユーザーの左耳に第1音波を提供し、同時に、ユーザーの右耳に第2音波を提供した後、第1音波および第2音波の提供は、自動的に停止される。第1音波の第1周波数と第2音波の第2周波数の間には、周波数差がある。周波数差は、時間とともに自動的に変化する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの左耳に第1音波を提供し、同時に、前記ユーザーの右耳に第2音波を提供することを含み、前記第1音波の第1周波数と前記第2音波の第2周波数の間に周波数差があり、前記周波数差が、時間とともに自動的に変化する脳波誘導方法。
【請求項2】
前記周波数差が、時間とともに多段階的に変化する請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項3】
前記周波数差が、各変化の後、5秒~120秒の間変化しない請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項4】
前記周波数差における各変化の変化量が、0.1Hz、0.2Hz、0.5Hz、または1Hzである請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項5】
前記周波数差における各変化の変化量が、0.1Hz~1Hzの間である請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項6】
前記周波数差が、0.5Hz~4Hzの間、4Hz~8Hzの間、8Hz~12Hzの間、または12Hz~20Hzの間で変化する請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項7】
前記周波数差が、12Hzから0.5Hzまで徐々に減少する請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項8】
前記周波数差が、毎回0.1Hzずつ減少する請求項7に記載の脳波誘導方法。
【請求項9】
前記周波数差が、各変化の後、16秒間変化しない請求項7に記載の脳波誘導方法。
【請求項10】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれイヤホンを介して前記ユーザーの前記左耳および前記右耳に提供される請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項11】
前記イヤホンが、アクティブノイズキャンセリング機能を有する請求項10に記載の脳波誘導方法。
【請求項12】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれ無線イヤホンを介して前記ユーザーの前記左耳および前記右耳に提供される請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項13】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれブルートゥースイヤホンを介して前記ユーザーの前記左耳および前記右耳に提供される請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項14】
前記ユーザーの前記左耳および前記右耳にそれぞれ前記第1音波および前記第2音波を所定の時間提供した後、前記第1音波および前記第2音波の提供が自動的に停止される請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項15】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれ前記ユーザーの自選オーディオに対して周波数調整を行った後に生成される請求項1に記載の脳波誘導方法。
【請求項16】
前記第1音波および前記第2音波を提供している間に、前記ユーザーの前記左耳に第1背景音波を提供し、前記ユーザーの前記右耳に第2背景音波を提供することをさらに含み、前記第1背景音波の第3周波数と前記第2背景音波の第4周波数の間に前記周波数差が提供される請求項1に記載の脳波誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法に関するものであり、特に脳波誘導方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
科学技術の急速な進歩とともに、感情の問題や睡眠の問題も、多くの人々が直面しなければならない問題となっている。現在、感情の問題や睡眠の問題を解決するためには、主に、薬物が使用される。しかし、薬物は、効果が限定的であり、副作用を伴うことが多い。
【0003】
研究によれば、異なる感情や睡眠段階において、脳によって放出される脳波が異なることがわかっている。さらに、特定の脳波を生成するように脳を誘導すると、人々の感情や睡眠段階に影響や変化を与えることもできるため、感情の問題や睡眠の問題を緩和することができる。したがって、いかにして特定の脳波を生成するように脳を効果的に誘導するかが、研究すべき課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脳波誘導の効率が悪い問題を緩和するのに適した脳波誘導方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、脳波誘導方法を提供する。この方法は、ユーザーの左耳に第1音波を提供し、同時に、ユーザーの右耳に第2音波を提供することを含む。第1音波の第1周波数と第2音波の第2周波数の間には、周波数差がある。この周波数差は、時間とともに自動的に変化する。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、周波数差は、時間とともに多段階的に変化する。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、周波数差は、各変化の後、5秒~120秒間変化しない。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、周波数差における各変化の変化量は、0.1Hz、0.2Hz、0.5Hz、または1Hzである。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、周波数差における各変化の変化量は、0.1Hz~1Hzの間である。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、周波数差は、0.5Hz~4Hzの間、4Hz~8Hzの間、8Hz~12Hzの間、または12Hz~20Hzの間で変化する。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、周波数差は、12Hzから0.5Hzまで徐々に減少する。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、周波数差は、毎回0.1Hzずつ減少する。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、周波数差は、各変化の後、16秒間変化しない。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、脳波誘導方法は、イヤホンを介してユーザーの左耳および右耳にそれぞれ第1音波および第2音波を提供することである。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、イヤホンは、アクティブノイズキャンセリング(active noise cancellation, ANC)機能を有する。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、脳波誘導方法は、無線イヤホンを介してユーザーの左耳および右耳にそれぞれ第1音波および第2音波を提供することである。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、脳波誘導方法は、ブルートゥース(Bluetooth)イヤホンを介してユーザーの左耳および右耳にそれぞれ第1音波および第2音波を提供することである。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、ユーザーの左耳および右耳にそれぞれ第1音波および第2音波を所定の時間提供した後、第1音波および第2音波の提供は、自動的に停止される。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、第1音波および第2音波は、それぞれユーザーの自選オーディオに対して周波数調整を行った後に生成される。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、脳波誘導方法は、さらに、第1音波および第2音波を提供している間に、ユーザーの左耳に第1背景音波を提供し、ユーザーの右耳に第2背景音波を提供することを含む。第1背景音波の第3周波数と第2背景音波の第4周波数の間には、周波数差が提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の脳波誘導方法は、時間とともに周波数差を自動的に変化させるため、特定の脳波を生成するように大部分のユーザーの脳を上手く誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例1の実験結果である。
図1B】実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例1の実験結果である。
図2A】先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例2の実験結果である。
図2B】実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例2の実験結果である。
図3A】実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例3の実験結果である。
図3B】実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例4の実験結果である。
図4A】先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例3の実験結果である。
図4B】実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例5の実験結果である。
図5A】先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例4の実験結果である。
図5B】実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例6の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の1つの実施形態は、脳波誘導方法を提供する。この方法は、ユーザーの左耳に第1音波を提供し、同時に、ユーザーの右耳に第2音波を提供することを含む。第1音波の周波数は、第1周波数であり、第2音波の周波数は、第2周波数である。第1周波数と第2周波数の間には、周波数差がある。周波数差は、時間とともに自動的に変化する。すなわち、周波数差は、一定ではない。さらに、人間が介入しなくても、周波数差は、予め設定された方法に基づいて、自動的に変化する。
【0024】
脳波とは、人間の脳内の神経細胞が活動する際に発生する電気的な揺れのことであり、脳細胞活動のリズムとも言われる。人間の脳は、常に脳波を生成している。周波数によって分類される脳波には、少なくともβ波、α波、θ波、δ波、およびγ波が含まれる。一般的に、人が非急速眼球運動睡眠の第3段階にある時、脳波は、通常、δ波(周波数が0.5Hz~4Hzの間)である。人が深い眠りの夢、深い瞑想、強烈な主観性の状態等にある時、脳波は、通常、θ波(周波数が4Hz~8Hzの間)である。人が寝る前のぼんやりとした心、徐々にぼやける意識、ひらめき、リラックスした身体と集中した心等の状態にある時、脳波は、通常、α波である。人がリラックスしているが集中している状態、以前に受け取った情報を整理している状態等にある時、脳波は、通常、β波である。ただし、研究では、人間の脳が異なる脳波を生成するように誘導されると、それが逆に人の状態に影響を与えることもわかっている。例えば、人間の脳がα波を生成するように誘導されると、その人もひらめき、リラックスした身体と集中した心等の状態に導かれる。
【0025】
上記の理由に基づいて、先行技術は、ユーザーの左耳と右耳にそれぞれ周波数の異なる2種類の音波を提供し、2つの音波の周波数差を誘導したい脳波の周波数に対応させることを試みた。しかしながら、従来技術は、2つの音波の間の周波数差を一定の値で保持する。図1Aは、先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例1の実験結果である。比較例1において、周波数差は、8Hzで一定に保持される。図1Aを参照すると、このような周波数差を継続的に入力した8分以内において、被験者の脳にはα波がほとんど誘導されていない。
【0026】
逆に、本実施形態の脳波誘導方法は、第1周波数と第2周波数の間の周波数差が時間とともに自動的に変化する。図1Bは、本実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例1の実験結果である。比較例1と実験例1の被験者は、同一人物である。実験例1において、周波数差は、8Hz~12Hzの間で自動的かつ区分的に変化し、周波数差における各変化の変化量は、0.1Hzであり、同じ周波数差は、各変化の後、10秒間変化しない。図1Bを参照すると、実験例1の方法で周波数差を継続的に入力した8分以内において、ほぼ大部分の時間帯で被験者の脳にα波が誘導されることが検出されている。特に、周波数差が8.6Hz、9.1Hz、9.6Hz、10.6Hz、10.7Hz、11Hz、および11.3Hzの時、誘導されたα波のエネルギーが特に高い。
【0027】
図1Aの比較例1の実験結果と図1Bの実験例1の実験結果を比較すると、本実施形態の脳波誘導方法が先行技術よりも効率的に脳波を誘導できることが明確にわかる。すなわち、本実施形態の脳波誘導方法は、時間とともに周波数差を自動的に変化させることにより、明らかかつ効果的に脳波を誘導することができる。
【0028】
ユーザーの左耳と右耳に異なる周波数の2種類の音波を提供するために、イヤーマフイヤホン、イヤープラグイヤホン、インイヤーイヤホン、または他の異なる種類のイヤホン等のイヤホンを使用することができ、イヤホンは、例えば、有線イヤホン、ブルートゥースイヤホン、またはその他の無線イヤホン等であってもよい。イヤホンは、周囲の騒音に影響されないようにするためのアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を有する。
【0029】
本発明の様々な実施形態において、ユーザーは、ポップソング、クラシック音楽、ラジオ番組、または他の種類のオーディオ等のオーディオを選択することができる。自選オーディオを受信した後、例えば、左耳に提供したい自選オーディオの音波をアップコンバート(up-convert)して第1音波を生成し、右耳に提供したい自選オーディオの音波をダウンコンバート(down-convert)して第2音波を生成することにより、第1音波の第1周波数と第2音波の第2周波数の間に所望の周波数差を設け、ユーザーの左耳と右耳にそれぞれ第1音波と第2音波を提供する。あるいは、左耳に提供したい自選オーディオの音波をダウンコンバートして第1音波を生成し、右耳に提供したい自選オーディオの音波をアップコンバートして第2音波を生成することにより、第1音波の第1周波数と第2音波の第2周波数の間に所望の周波数差を設ける。または、左耳に提供したい自選オーディオの音波をアップコンバートして第1音波を生成し、右耳に提供したい自選オーディオの音波を直接第2音波として取り込むことにより、第1音波の第1周波数と第2音波の第2周波数の間に所望の周波数差を設ける。または、左耳に提供したい自選オーディオの音波を直接第1音波として取り込み、右耳に提供したい自選オーディオの音波をダウンコンバートして第2音波を生成することにより、第1音波の第1周波数と第2音波の第2周波数の間に所望の周波数差を設ける。どの方法を採用しても、第1音波の第1周波数と第2音波の第2周波数の間に所望の周波数差が存在する限りは、本発明の精神が満たされるものとする。
【0030】
また、ユーザーの自選オーディオには空白部分がある可能性があるため、空白部分でも脳波を誘導し続けるために、第1音波と第2音波を提供している間に、ユーザーの左耳に第1背景音波を提供し、ユーザーの右耳に第2背景音波を提供してもよい。第1背景音波の第3周波数と第2背景音波の第4周波数は、所望の周波数差を有する。背景音波は、継続的であり、空白部分がないため、ユーザーの自選オーディオの空白部分でも脳波を誘導し続けることができる。背景音波は、例えば、風の音や波の音等の自選オーディオに影響を与えにくい音波である。
【0031】
図2Aは、先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例2の実験結果である。比較例2において、周波数差は、8Hzで一定に保持されるが、被験者は、比較例1とは異なる。図2Aを参照すると、周波数差を継続的に入力した8分以内において、最初の時だけ被験者の脳にα波が誘導されているが、その持続時間は、30秒未満である。
【0032】
図2Bは、本実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例2の実験結果である。比較例2および実験例2の被験者は、同一人物である。実験例2において、周波数差は、自動的かつ区分的に8Hz~12Hzの間で変化し、周波数差における各変化の変化量は、0.1Hzであり、同じ周波数差は、各変化の後、10秒間変化しない。図2Bを参照すると、実験例2の方法で周波数差を継続的に入力した8分以内において、ほぼ大部分の時間帯で被験者の脳にα波が誘導されることが検出されている。特に、周波数差が8Hz、8.6Hz、10Hz、および11Hzの時、誘導されたα波のエネルギーが特に高い。
【0033】
図2Aの比較例2の実験結果と図2Bの実験例2の実験結果を比較すると、本実施形態の脳波誘導方法が先行技術よりも効率的に脳波を誘導できることが明確にわかる。すなわち、本実施形態の脳波誘導方法は、時間とともに周波数差を自動的に変化させることにより、明らかかつ効果的に脳波を誘導することができる。
【0034】
また、図1Bの実験例1の実験結果と図2Bの実験例2の実験結果を参照すると、異なる周波数差の第1音波と第2音波が異なる被験者の脳波誘導に対して異なる効果を有することがわかる。そのため、先行技術では、一定の周波数差を用いて異なるユーザーの脳波を誘導するため、優れた誘導効果を有さない。逆に、本実施形態の脳波誘導方法は、自動的に変化する周波数差でユーザーの脳波を誘導するため、ユーザーの脳波が特定の周波数差において優れた誘導効果を有していなくても、周波数差の自動的な変化とともに、本発明の方法は、基本的に変化している期間の間ユーザーの脳に対して優れた誘導効果を有することができる。
【0035】
また、各ユーザーの脳は、単一の周波数差に対して優れた誘導効果を有するだけでなく、通常、複数の周波数差に対して優れた誘導効果を有することができる。本実施形態の脳波誘導方法は、自動的に変化する周波数差でユーザーの脳波を誘導するため、複数の周波数差においてより優れた誘導効果をもたらすことができる。また、図2Aの比較例2からもわかるように、被験者が入力された単一の周波数差に対して優れた誘導効果を有していても、その持続時間は長くない。本実施形態の脳波誘導方法は、自動的に変化する周波数差でユーザーの脳波を誘導するため、ユーザーの脳が疲れた後に別の周波数差に切り替えて、再び優れた誘導効果をもたらすことができる。最終的に、本実施形態の脳波誘導方法は、より長い時間において優れた脳波誘導効果をもたらすことができる。
【0036】
本実施形態において、周波数差は、時間とともに多段階的に変化する。すなわち、前の瞬間の周波数差と次の瞬間の周波数差との間には、比較的明らかな差がある。周波数差における各変化の変化量は、0.1Hz~1Hzの間、例えば、0.1Hz、0.2Hz、0.5Hz、または1Hzであってもよい。別の実施形態において、周波数差は、時間とともに非区分的に変化してもよい。
【0037】
【表1】
【0038】
上記の表1を参照すると、一定の周波数差の音波による脳波誘導を25人の被験者に対して行った場合、5秒~30秒の間に2Hz、6Hz、10Hz、および/または20Hzの脳波を誘導したことが検出されたのは、9~12人であり、30秒~60秒の間に脳波を誘導したことが検出されたのは、7~8人であり、60秒~90秒の間に脳波を誘導したことが検出されたのは、1~4人であり、90秒~120秒の間に脳波を誘導したことが検出されたのは、1~3人である。しかしながら、試験の最初の5秒間は、2Hz、6Hz、10Hz、または20Hzの脳波を誘導したことが検出された人が誰もおらず、試験を120秒以上行った後は、2Hz、6Hz、10Hz、または20Hzの脳波を誘導したことが検出されなかった人がまだ2~3人いる。すなわち、試験が5秒未満の場合、基本的に、脳波誘導の目的を達成することができない。一方、被験者が試験を120秒間維持してもまだ脳波が誘導されない場合、試験を続けても脳波誘導の目的を達成することができない。
【0039】
本発明の各実施形態において、ユーザーの脳波を一定の周波数差の音波で所定の時間誘導した後、第1音波および第2音波の提供は、自動的に停止してもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0040】
図3Aは、本実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例3の実験結果である。実験例3において、周波数差は、8Hz~12Hzの間で自動的かつ区分的に変化し、周波数差における各変化の変化量は、0.1Hzであり、同じ周波数差は、各変化の後、4秒間変化しない。図3Aを参照すると、実験例3の方法で周波数差を継続的に入力した8分以内において、ほぼ大部分の時間帯で被験者の脳にα波が誘導されることが検出されているが、誘導されたα波のエネルギーは、非常に低い。
【0041】
図3Bは、実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例4の実験結果である。実験例3および実験例4の被験者は、同一人物である。実験例4において、周波数差は、8Hz~12Hzの間で自動的かつ区分的に変化し、周波数差における各変化の変化量は、0.1Hzであり、同じ周波数差は、各変化の後、5秒間変化しない。図3Bを参照すると、実験例4の方法で周波数差を継続的に入力した8分以内において、ほぼ大部分の時間帯で被験者の脳にα波が誘導されることが検出されており、誘導されたα波のエネルギーは、高レベルで継続的に維持されている。
【0042】
表1の分析結果に基づき、図3Aの実験例3の実験結果と図3Bの実験例4の実験結果を比較すると、本実施形態の脳波誘導方法は、同じ周波数差が各変化の後、例えば、5秒~120秒間変化しないため、より優れた脳波誘導効率を達成することができるが、本発明はそれに限定されない。
【0043】
本実施形態において、周波数差を0.5Hz~4Hzの間で変化させてδ波を誘導し、周波数差を4Hz~8Hzの間で変化させてθ波を誘導し、周波数差を8Hz~12Hzの間で変化させてα波を誘導し、周波数差を12Hz~20Hzの間で変化させてβ波を誘導することができる。また、本実施形態において、周波数差は、特定の区間内で前後に変化してもよく、徐々に増加するだけ、または徐々に減少するだけに限定されない。
【0044】
本発明の別の実施形態の脳波誘導方法は、周波数差が大きい値から目標値まで徐々に減少し、例えば、12Hzから0.5Hzまで徐々に減少する。周波数差が目標値よりも小さくなった時、脳波誘導手順を終了することができる。本実施形態において、周波数差は、自動的かつ区分的に徐々に減少してもよく、例えば、周波数差は、毎回0.1Hzずつ減少する。
【0045】
図4Aは、先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例3の実験結果である。比較例3において、周波数差は、2Hzで一定に保持される。図4Aを参照すると、周波数差を継続的に入力した30分以内において、最初の2分間だけ被験者の脳にδ波が誘導されている。しかしながら、実験から2分以降、被験者の脳にδ波を誘導することは、ほぼ不可能であった。
【0046】
逆に、本実施形態の脳波誘導方法は、第1周波数と第2周波数の周波数差が時間とともに自動的に徐々に減少する。図4Bは、本実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例5の実験結果である。比較例3と実験例5の被験者は、同一人物である。実験例5において、周波数差は、自動的かつ区分的に12Hzから0.5Hzまで徐々に減少し、周波数差の各変化の変化量は、0.1Hzであり、同じ周波数差は、各変化の後、16秒間変化しない。図4Bを参照すると、実験例5の方法で周波数差を継続的に入力した最初の20分間は、周波数差とδ波の間の差が比較的大きいため、被験者の脳にδ波を誘導することは、ほぼ不可能であった。しかしながら、実験から20分以降、大部分の時間で被験者の脳にδ波が検出されており、検出された誘導されたδ波のエネルギーは、特に高い。これは、本実施形態の脳波誘導方法が自動的に徐々に減少する周波数差で被験者を誘導することによって、複数の周波数差においてより優れた誘導効果をもたらし、より長い時間において優れた脳波誘導効果をもたらしたからである。
【0047】
図4Aの比較例3の実験結果と図4Bの実験例5の実験結果を比較すると、本実施形態の脳波誘導方法が先行技術よりも非常に効率的に脳波を誘導できることが明確にわかる。すなわち、本実施形態の脳波誘導方法は、時間とともに周波数差を自動的に徐々に減少させるため、明らかかつ効果的に脳波を誘導することができる。
【0048】
図5Aは、先行技術の脳波誘導方法を用いた比較例4の実験結果である。比較例4において、周波数差は、2Hzで一定に保持されるが、被験者は、比較例3の被験者とは異なる。図5Aを参照すると、比較例3と同様に、このような周波数差を継続的に入力した30分以内において、最初の2分間だけ被験者の脳にδ波が誘導されている。しかしながら、実験から2分以降、被験者の脳にδ波を誘導することは、ほぼ不可能であった。
【0049】
図5Bは、実施形態の脳波誘導方法を用いた実験例6の実験結果である。比較例4および実験例6の被験者は、同一人物である。実験6において、周波数差は、自動的かつ区分的に12Hzから0.5Hzまで徐々に減少し、周波数差における各変化の変化量は、0.1Hzであり、同じ周波数差は、各変化の後、16秒間変化しない。図5Bを参照すると、実験例5と同様に、実験例6の方法で周波数差を継続的に入力した最初の20分間は、周波数差とδ波との差が比較的大きいため、被験者の脳にδ波を誘導することは、ほぼ不可能であった。しかしながら、実験から20分以降、大部分の時間で被験者の脳にδ波が検出されており、検出された誘導されたδ波のエネルギーは、特に高い。
【0050】
図5Aの比較例4の実験結果と図5Bの実験例6の実験結果を比較すると、本実施形態の脳波誘導方法が先行技術よりも効率的に脳波を誘導できることが明確にわかる。すなわち、本実施形態の脳波誘導方法は、時間とともに周波数差を自動的に減少させるため、明らかかつ効果的に脳波を誘導することができる。
【0051】
以上のように、本発明の脳波誘導方法は、周波数差が時間とともに自動的に変化するため、異なるユーザーが異なる周波数差を受信した後に異なる脳波誘導効果を有しても、周波数差を変えることによって、ユーザーの大部分がより反応しやすい周波数差で目的とする脳波を誘導することができる。また、各ユーザーがより反応しやすい周波数差は、単一の特定値ではなく、複数の特定値であってもよく、本発明の脳波誘導方法は、時間とともに自動的に変化する周波数差を使用するため、適切な周波数差を1つずつ対応させて目的とする脳波を誘導し、脳波を上手く誘導できる時間を増やすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の脳波誘導方法は、大部分のユーザーの脳を上手く誘導し、特定の脳波を生成することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの左耳に第1音波を提供し、同時に、前記ユーザーの右耳に第2音波を提供することを含み、前記第1音波の第1周波数と前記第2音波の第2周波数の間に周波数差があり、前記周波数差が、時間とともに自動的に変化するイヤホン
【請求項2】
前記周波数差が、時間とともに多段階的に変化する請求項1に記載のイヤホン
【請求項3】
前記周波数差が、各変化の後、5秒~120秒の間変化しない請求項1に記載のイヤホン
【請求項4】
前記周波数差における各変化の変化量が、0.1Hz、0.2Hz、0.5Hz、または1Hzである請求項1に記載のイヤホン
【請求項5】
前記周波数差における各変化の変化量が、0.1Hz~1Hzの間である請求項1に記載のイヤホン
【請求項6】
前記周波数差が、0.5Hz~4Hzの間、4Hz~8Hzの間、8Hz~12Hzの間、または12Hz~20Hzの間で変化する請求項1に記載のイヤホン
【請求項7】
前記周波数差が、12Hzから0.5Hzまで徐々に減少する請求項1に記載のイヤホン
【請求項8】
前記周波数差が、毎回0.1Hzずつ減少する請求項7に記載のイヤホン
【請求項9】
前記周波数差が、各変化の後、16秒間変化しない請求項7に記載のイヤホン
【請求項10】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれイヤホンを介して前記ユーザーの前記左耳および前記右耳に提供される請求項1に記載のイヤホン
【請求項11】
前記イヤホンが、アクティブノイズキャンセリング機能を有する請求項10に記載のイヤホン
【請求項12】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれ無線イヤホンを介して前記ユーザーの前記左耳および前記右耳に提供される請求項1に記載のイヤホン
【請求項13】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれブルートゥースイヤホンを介して前記ユーザーの前記左耳および前記右耳に提供される請求項1に記載のイヤホン
【請求項14】
前記ユーザーの前記左耳および前記右耳にそれぞれ前記第1音波および前記第2音波を所定の時間提供した後、前記第1音波および前記第2音波の提供が自動的に停止される請求項1に記載のイヤホン
【請求項15】
前記第1音波および前記第2音波が、それぞれ前記ユーザーの自選オーディオに対して周波数調整を行った後に生成される請求項1に記載のイヤホン
【請求項16】
前記第1音波および前記第2音波を提供している間に、前記ユーザーの前記左耳に第1背景音波を提供し、前記ユーザーの前記右耳に第2背景音波を提供することをさらに含み、前記第1背景音波の第3周波数と前記第2背景音波の第4周波数の間に前記周波数差が提供される請求項1に記載のイヤホン

【外国語明細書】