(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112271
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240813BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20240813BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240813BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20240813BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240813BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/043
H01M8/0438
H01M8/0444
H01M8/04746
H01M8/04791
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120437
(22)【出願日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】10-2023-0016222
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソン セ フン
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AA05
5H127AC06
5H127BA02
5H127BA62
5H127BB02
5H127DA16
5H127DB71
5H127DC81
5H127EE11
5H127EE19
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムおよびその制御方法に関する。
【解決手段】本文書に開示されている実施形態によると、燃料電池システムは、水素極および空気極を含む燃料電池スタックと、前記空気極から排出される窒素を貯蔵して、貯蔵された窒素を前記水素極に供給する窒素タンクと、前記窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、窒素の貯蔵および供給を制御する制御部とを含むことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素極および空気極を含む燃料電池スタックと、
前記空気極から排出される窒素を貯蔵し、貯蔵された窒素を前記水素極に供給する窒素タンクと、
前記窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、窒素の貯蔵および供給を制御する制御部とを含む、燃料電池システム。
【請求項2】
前記窒素タンクは、入力バルブおよび出力バルブを含み、
前記制御部は、前記入力バルブおよび前記出力バルブの開閉を制御して、窒素の貯蔵および供給を制御する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料電池スタックの低出力運転中に、第1条件を満たす場合、前記入力バルブを開放し、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、前記第1条件を満たしていない場合、前記入力バルブおよび前記出力バルブを閉鎖するように制御する、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1条件は、前記窒素タンクの充填量が第1値未満であるか、前記窒素タンクの圧力が前記空気極圧力以下である場合のうち少なくとも一つである、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記燃料電池スタックの高出力運転中に、第2条件を満たす場合、前記入力バルブを開放し、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、前記第2条件を満たしていない場合、前記入力バルブおよび前記出力バルブを閉鎖するように制御する、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第2条件は、前記窒素タンクの充填量が第2値未満であるか、前記窒素タンクの圧力が前記空気極圧力以下である場合のうち少なくとも一つである、請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記燃料電池スタックの運転終了後、前記窒素タンクの圧力が第3値未満である場合、前記入力バルブを開放し、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、前記窒素タンクの圧力が第3値以上である場合、前記入力バルブおよび前記出力バルブを閉鎖するように制御する、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記燃料電池スタックの運転終了後、前記入力バルブを閉鎖した後、第1時間が経過した場合、前記出力バルブを開放するように制御する、請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記窒素タンクの圧力の低下が中断される場合、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、節電モードに入る、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記節電モードに入った後、前記燃料電池スタックが運転されず、第2時間が経過した場合、前記出力バルブを開放するように制御する、請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
水素極および空気極を含む燃料電池スタックと、
前記空気極から排出される窒素を貯蔵し、貯蔵された窒素を前記水素極に供給する窒素タンクとを含む燃料電池システムであって、
前記窒素タンクの圧力および充填量を確認するステップと、
前記窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、前記窒素の貯蔵および供給を制御するステップとを含む、燃料電池システムの制御方法。
【請求項12】
前記窒素タンクは、入力バルブおよび出力バルブを含み、
前記窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、前記窒素タンクの窒素貯蔵および供給を制御するステップは、
前記入力バルブおよび前記出力バルブの開閉を制御して、前記窒素の貯蔵および供給を制御することを特徴とする、請求項11に記載の燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書に開示されている実施形態は、燃料電池システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、燃料電池スタックを用いて電気エネルギーを発生させることができる。例えば、水素が燃料電池スタックの燃料として使用される場合、地球環境問題を解決する代案になることができ、燃料電池システムに関する研究開発が行われ続けている。
【0003】
燃料電池システムは、電気エネルギーを発生させる燃料電池スタックと、燃料電池スタックに燃料(水素)を供給する燃料供給装置と、燃料電池スタックに電気化学反応に必要な酸化剤である空気中の酸素を供給する空気供給装置と、燃料電池スタックの反応熱をシステムの外部に除去し、燃料電池スタックの運転温度を制御し、且つ水管理機能を行う熱管理システム(thermal management system、TMS)とを含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムは、運転終了後、COD(Cathode Oxygen Depletion)またはCSD(Cold Shut Down)手続きにより燃料電池スタック内の残存水素および酸素を除去する。ここで、当該手続きを行った後、燃料電池スタックの運休期間中に、圧力の差などによって空気極の残留酸素が水素極に換算されて反応することで、スタックの耐久に影響を及ぼし得る。
【0005】
したがって、燃料電池スタックを保管する間に、水素極をスタック内で化学反応を引き起こさない窒素で満たすことで、空気極から水素極に酸素が流入されないようにし、反応が行われないようにすることで、スタックを保護する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本文書に開示されている実施形態によると、燃料電池システムは、水素極および空気極を含む燃料電池スタックと、前記空気極から排出される窒素を貯蔵し、貯蔵された窒素を前記水素極に供給する窒素タンクと、前記窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、窒素の貯蔵および供給を制御する制御部とを含むことができる。
【0007】
実施形態によると、前記窒素タンクは、入力バルブおよび出力バルブを含み、前記制御部は、前記入力バルブおよび前記出力バルブの開閉を制御して、窒素の貯蔵および供給を制御することができる。
【0008】
実施形態によると、前記制御部は、前記燃料電池スタックの低出力運転中に、第1条件を満たす場合、前記入力バルブを開放し、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、前記第1条件を満たしていない場合、前記入力バルブおよび前記出力バルブを閉鎖するように制御することができる。
【0009】
実施形態によると、前記第1条件は、前記窒素タンクの充填量が第1値未満であるか、前記窒素タンクの圧力が前記空気極圧力以下である場合のうち少なくとも一つであることができる。
【0010】
実施形態によると、前記制御部は、前記燃料電池スタックの高出力運転中に、第2条件を満たす場合、前記入力バルブを開放し、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、前記第2条件を満たしていない場合、前記入力バルブおよび前記出力バルブを閉鎖するように制御することができる。
【0011】
実施形態によると、前記第2条件は、前記窒素タンクの充填量が第2値未満であるか、前記窒素タンクの圧力が前記空気極圧力以下である場合のうち少なくとも一つであることができる。
【0012】
実施形態によると、前記制御部は、前記燃料電池スタックの運転終了後、前記窒素タンクの圧力が第3値未満である場合、前記入力バルブを開放し、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、前記窒素タンクの圧力が第3値以上である場合、前記入力バルブおよび前記出力バルブを閉鎖するように制御することができる。
【0013】
実施形態によると、前記制御部は、前記燃料電池スタックの運転終了後、前記入力バルブを閉鎖した後、第1時間が経過した場合、前記出力バルブを開放するように制御することができる。
【0014】
実施形態によると、前記制御部は、前記窒素タンクの圧力の低下が中断される場合、前記出力バルブを閉鎖するように制御し、節電モードに入ることができる。
【0015】
実施形態によると、前記制御部は、前記節電モードに入った後、前記燃料電池スタックが運転されず、第2時間が経過した場合、前記出力バルブを開放するように制御することができる。
【0016】
本文書に開示されている実施形態によると、燃料電池システムの制御方法は、水素極および空気極を含む燃料電池スタックと、前記空気極から排出される窒素を貯蔵し、貯蔵された窒素を前記水素極に供給する窒素タンクとを含む燃料電池システムであって、前記窒素タンクの圧力および充填量を確認するステップと、前記窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、前記窒素の貯蔵および供給を制御するステップとを含むことができる。
【0017】
実施形態によると、前記窒素タンクは、入力バルブおよび出力バルブを含み、前記窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、前記窒素タンクの窒素貯蔵および供給を制御するステップは、前記入力バルブおよび前記出力バルブの開閉を制御して、前記窒素の貯蔵および供給を制御することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本文書に開示されている実施形態による燃料電池システムは、燃料電池スタックから排出される窒素を窒素タンクに貯蔵することができ、貯蔵された窒素を燃料電池スタックの運休中に水素極に供給して水素極を満たすことで、燃料電池スタックを保護し、耐久性を向上させることができる。
【0019】
その他、本文書を介して直接的または間接的に把握される様々な効果が提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムの構造を示す図である。
【
図2】本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムのブロック図である。
【
図3a】本文書に開示されている一実施形態による窒素タンクへの窒素貯蔵時の窒素の移動経路を示す図である。
【
図3b】本文書に開示されている一実施形態による窒素タンクに窒素が貯蔵されない時の窒素の移動経路を示す図である。
【
図3c】本文書に開示されている一実施形態による窒素が水素極に供給される時の窒素の移動経路を示す図である。
【
図4】本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムの制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムの運転中の制御過程を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本文書に開示されている一実施形態による燃料電池の運転終了後の制御過程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の様々な実施形態が添付の図面を参照して記載される。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定するものではなく、本発明の実施形態の様々な変更(modification)、均等物(equivalent)、および/または代替物(alternative)を含むものと理解すべきである。
【0022】
本文書においてアイテムに対応する名詞の単数型は、関連する文脈上明白に異なるように指示しない限り、前記アイテムの一つまたは複数個を含むことができる。本文書において、「AまたはB」、「AおよびBのうち少なくとも一つ」、「AまたはBのうち少なくとも一つ」、「A、BまたはC」、「A、BおよびCのうち少なくとも一つ」および「A、B、またはCのうち少なくとも一つ」のような文章のそれぞれは、その文章のうち該当する文章にともに並べられた項目のいずれか一つ、またはそれらのすべての可能な組み合わせを含むことができる。「第1」、「第2」、または「一番目」または「二番目」のような用語は、単純に当該構成要素を他の当該構成要素と区別するために使用されることができ、当該構成要素を他の側面(例:重要性または順序)で限定しない。ある(例:第1)構成要素が他の(例:第2)構成要素に、「機能的に」または「通信的に」という用語とともに、もしくはこのような用語なしに、「カップルド」または「コネクテッド」と言及された場合、それは、前記ある構成要素が前記他の構成要素に直接的に(例:有線で)、無線で、または第3構成要素を介して連結され得ることを意味する。
【0023】
本文書で説明される構成要素のそれぞれの構成要素(例:モジュールまたはプログラム)は、単数または複数の個体を含むことができる。様々な実施形態によると、当該構成要素のうち一つ以上の構成要素または動作が省略されるか、または一つ以上の他の構成要素または動作が追加されることができる。概ねまたはさらに、複数の構成要素(例:モジュールまたはプログラム)は、一つの構成要素として統合されることができる。このような場合、統合された構成要素は、前記複数の構成要素それぞれの構成要素の一つ以上の機能を前記統合の前に前記複数の構成要素のうち当該構成要素によって行われることと同一または同様に行うことができる。様々な実施形態によると、モジュール、プログラムまたは他の構成要素によって行われる動作は、順に、並列に、繰り返して、またはヒューリスティックに実行されるか、前記動作のうち一つ以上が他の順序で実行されるか、省略されるか、または一つ以上の他の動作が追加されることができる。
【0024】
本文書で使用される用語「モジュール」、または「…部」は、ハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェアで実現されたユニットを含むことができ、例えば、ロジッグ、論理ブロック、部品、または回路のような用語と互いに互換的に使用されることができる。モジュールは、一体に構成された部品または一つまたはそれ以上の機能を行う、前記部品の最小単位またはその一部になることができる。例えば、一実施形態よると、モジュールは、ASIC(application-specific integrated circuit)の形態に実現されることができる。
【0025】
本文書の様々な実施形態は、機器(machine)により読み込み可能な記憶媒体(storage medium)(例:メモリ)に格納された一つ以上の命令語を含むソフトウェア(例:プログラムまたはアプリケーション)として実現されることができる。例えば、機器のプロセッサは、記憶媒体から格納された一つ以上の命令語のうち少なくとも一つの命令を呼び出し、それを実行することができる。これは、機器が前記呼び出された少なくとも一つの命令語に応じて少なくとも一つの機能を行うように運営されることを可能にする。上記の一つ以上の命令語は、コンパイラーによって生成されたコードまたはインタプリターによって実行されることができるコードを含むことができる。機器で読み込み可能な記憶媒体は、非一時的(non-transitory)記憶媒体の形態で提供されることができる。ここで、「非一時的」は、記憶媒体が実在(tangible)する装置であり、信号(signal)(例:電磁波)を含まないことを意味するだけであって、この用語は、データが記憶媒体に半永久に格納される場合と臨時に格納される場合を区別しない。
【0026】
図1は、本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムの構造を示す図である。
【0027】
図1を参照すると、燃料電池システムは、燃料電池スタック100を含むことができ、燃料電池スタック100の水素極110と連結されて燃料電池スタック100に供給される水素が移動する水素供給ライン11と、燃料電池スタック100の空気極120と連結されて燃料電池スタック100に供給される空気が移動する空気供給ライン21と、反応副生成物である水分(水)や未反応気体などを外部に排出するための排出ライン31、33、35と、パージラインとをさらに含むことができる。
【0028】
燃料電池スタック100(または、「燃料電池」として参照可能)は、燃料(例えば、水素)と酸化剤(例えば、空気)の酸化還元反応により電気を生産することができる構造に形成されることができる。
【0029】
一例として、燃料電池スタック100は、水素イオンが移動する電解質膜を中心に膜の両側に電気化学反応が行われる触媒電極層が付着された膜電極接合体(membrane electrode assembly、MEA)と、反応気体を均一に分布し、発生した電気エネルギーを伝達する役割を行う気体拡散層(gas diffusion layer、GDL)と、反応気体および冷却水の気密性と適正締結圧を維持するためのガスケットおよび締結装置と、反応気体および冷却水を移動させるバイポーラプレート(bipolar plate)とを含むことができる。
【0030】
燃料電池スタック100において、燃料である水素と酸化剤である空気(酸素)がバイポーラプレートの流路を介して膜電極接合体のアノード(anode)とカソード(cathode)にそれぞれ供給されることができ、例えば、水素は、水素極110であるアノードに供給され、空気は、空気極120であるカソードに供給されることができる。
【0031】
アノードに供給された水素は、電解質膜の両側に構成されている電極層の触媒によって水素イオン(proton)と電子(electron)に分解され、このうち、水素イオンだけが選択的に陽イオン交換膜である電解質膜を通過してカソードに伝達され、且つ電子は、導体である気体拡散層とバイポーラプレートを介してカソードに伝達されることができる。カソードでは、電解質膜を介して供給された水素イオンとバイポーラプレートを介して伝達された電子が空気供給装置によってカソードに供給された空気のうち酸素と接して水を生成する反応を起こすことができる。この時に行われる水素イオンの移動に起因して、外部導線を介する電子の流れが発生し、このような電子の流れによって電流が生成されることができる。
【0032】
水素供給ライン11には、水素遮断バルブ(Fuel Cut-Off Valve、FCV)、水素供給バルブ(Fuel Supply Valve、FSV)、水素排出器(Fuel Ejector、FEJ)などが配置されることができる。また、例えば、水素供給ライン11は、水素タンクと連結されることができる。
【0033】
水素遮断バルブFCVは、水素供給ライン11において水素タンクと水素供給バルブFSVとの間に配置されることができ、水素タンクから排出された水素が燃料電池スタック100に供給されることを遮断する役割を行うことができる。水素遮断バルブFCVは、燃料電池システムの始動オン(On)状態で開放され、始動オフ(Off)状態で閉鎖されるように制御されることができる。
【0034】
水素供給バルブFSVは、水素供給ライン11において水素遮断バルブFCVと水素排出器FEJとの間に配置されることができ、燃料電池スタック100に供給される水素圧力を調節する役割を行うことができる。一例として、水素供給バルブFSVは、水素供給ライン11の圧力が減少すると、開放されて水素が供給されるようにし、水素供給ライン11の圧力が増加すると、閉鎖されるように制御されることもできる。
【0035】
水素排出器FEJは、水素供給ライン11において水素供給バルブFSVと燃料電池スタック100との間に配置されることができ、水素供給バルブFSVを通過した水素に圧力を加えて燃料電池スタック100に供給する役割を行うことができる。
【0036】
水素供給ライン11は、燃料電池スタック100の出口と水素排出器FEJを連結することで、水素の循環ルートを形成することができる。したがって、水素排出器FEJによって排出された水素は、燃料電池スタック100内で空気と反応して電気エネルギーを発生させ、未反応の水素は、燃料電池スタック100の出口から排出されて水素排出器FEJに再流入することができる。この場合、未反応の水素を水素排出器FEJに再流入してまた燃料電池スタック100に供給されるようにすることで、水素の反応効率を増大することができる。
【0037】
燃料電池スタック100の水素極110において未反応の水素が再循環する過程で、水素供給ライン11に存在する水分は凝縮することができる。ここで、凝縮された水(凝縮水)は、燃料電池スタック100の水素極110において未反応の水素が水素排出器FEJに移動する水素供給ライン11上の一箇所と加湿器(Air Humidifier、AHF)を連結する第1排出ライン31を介して排出されることができる。
【0038】
第1排出ライン31上には、ウォータトラップ(Fuel Water Trap、FWT)およびドレンバルブ(Fuel Drain Valve、FDV)が配置されることができる。
【0039】
ウォータトラップFWTは、水素供給ライン11の一箇所で第1排出ライン31に流入した凝縮水を貯蔵する役割を行うことができる。
【0040】
ドレンバルブFDVは、ウォータトラップFWTに貯蔵された凝縮水を第1排出ライン31に沿って加湿器AHFに排出する役割を行うことができる。ここで、ドレンバルブFDVは、ウォータトラップFWTに貯蔵された凝縮水が所定の水位を超えるまでには閉鎖状態になり、ウォータトラップFWTに貯蔵された凝縮水が所定の水位を超えると、開放されて第1排出ライン31に沿って凝縮水が排出されるように制御されることができる。
【0041】
空気供給ライン21には、空気圧縮機(Air Compressor、ACP)、加湿器AHFおよび空気遮断バルブ(Air Cut-off Valve、ACV)などが配置されることができる。
【0042】
空気圧縮機ACPは、空気供給ライン21において外部空気(ambient air)を吸い込む空気吸入口と加湿器AHFとの間に配置されることができ、外部空気を吸い込んで圧縮し、圧縮された空気を供給する役割を行うことができる。
【0043】
加湿器AHFは、空気供給ライン21において空気圧縮機ACPと空気遮断バルブACVとの間に配置されることができ、空気圧縮機ACPによって吸入および圧縮された空気の湿度を調節して燃料電池スタック100の空気極120に供給する役割を行うことができる。加湿器AHFは、入口に空気圧縮機ACPによって圧縮された空気が流入されると、流入された空気に水分を供給して湿度を調節することができる。一例として、加湿器AHFは、第1排出ライン31を介して流入された凝縮水または燃料電池スタック100の空気極120と加湿器AHFを連結する第2排出ライン33を介して排出された空気に含まれた水分を用いて、空気圧縮機ACPから供給された空気を加湿することができる。
【0044】
加湿器AHFは、第1排出ライン31と連結されることができる。これにより、加湿器AHFは、第1排出ライン31を介して流入された凝縮水を用いて空気圧縮機ACPから供給された空気に水分を供給することができる。
【0045】
また、加湿器AHFは、第2排出ライン33を介して燃料電池スタック100の空気排出口と連結されることができ、燃料電池スタック100の空気極120から排出された空気は、第2排出ライン33を介して加湿器AHFに流入することができる。ここで、燃料電池スタック100の空気極120から排出された空気は、水分を含んでいることから、加湿器AHFは、燃料電池スタック100の空気極120から排出された空気と空気圧縮機ACPから供給される空気の水分交換により加湿が行われることができる。このように、加湿器AHFによって水分が供給された空気は、燃料電池スタック100の空気極120に流入されて水素と反応した後、反応物として水を生成することができる。
【0046】
一方、加湿器AHFは、第3排出ライン35を介して外部排出口と連結されることができ、第2排出ライン33を介して流入された空気を第3排出ライン35を介して外部に排出することができる。ここで、第3排出ライン35には、空気排気バルブ(Air Exhaust Valve、AEV)が配置されることができる。
【0047】
空気遮断バルブACVは、燃料電池スタック100および加湿器AHFを連結する空気供給ライン21上に配置されることができ、加湿器AHFから排出された水素が燃料電池スタック100の空気極120に供給されることを遮断するか、燃料電池スタック100の空気極120に供給される空気の圧力を調節することができる。一例として、空気遮断バルブACVは、燃料電池システムの始動オン(On)状態で開放され、始動オフ(Off)状態で閉鎖されるように制御されることができる。
【0048】
また、空気遮断バルブACVは、燃料電池スタック100と加湿器AHFを連結する第2排出ライン33とも連結されることができる。空気遮断バルブACVは、燃料電池スタック100の空気極120から排出された空気が第2排出ライン33を介して加湿器AHFに供給されることを遮断するか、燃料電池スタック100の空気極120から加湿器AHFに排出される空気の圧力を調節することができる。
【0049】
図1には、空気遮断バルブACVが空気供給ライン21と第2排出ライン33に統合配置されたことを図示しているが、空気供給ライン21上に配置された第1空気遮断バルブ(図示せず)と第2排出ライン33上に配置された第2空気遮断バルブ(図示せず)がそれぞれ分離された形態で実現されることもできる。
【0050】
一方、水素排出器FEJから燃料電池スタック100の水素極110に供給される水素が移動する水素供給ライン11上の一箇所には、パージラインが連結されることができ、パージライン上には、パージバルブ(Fuel-line Purge Valve、FPV)が配置されることができる。
【0051】
パージバルブFPVは、燃料電池スタック100および水素供給ライン11などの水素濃度を管理するために開閉されるバルブであり、燃料電池スタック100および水素供給ライン11の水素濃度を所定の範囲を維持するようにする役割を行うことができる。
【0052】
燃料電池スタック100は、水素と空気を発電させて電気エネルギーを発生させ、このような燃料電池スタック100が正常状態で運転される間にパージバルブFPVは閉鎖状態になることができる。
【0053】
ここで、燃料電池スタック100に供給される空気は、酸素の他に窒素などを含むが、水素極110と空気極120の窒素分圧の差によってクロスオーバーが生じてセル電圧が減少し得る。そのため、パージバルブFPVは、残留水素を排出して水素極110内の水素濃度を高めることで、窒素濃度を下げて、スタック性能が維持されるようにすることができる。パージバルブFPVは、燃料電池スタック100で所定期間の間に生成された電流を積分して計算された累積電流が目標値を超える場合に開放されて水素をパージすることで、水素極110内の水素濃度が所定量以上維持されるように制御されることができる。
【0054】
また、燃料電池システムは、窒素タンク200を含むことができる。窒素タンク200は、燃料電池スタック100に供給されて第2排出ライン31を介して排出された空気に含まれた窒素を貯蔵することができ、貯蔵された窒素を水素供給ライン11を介して水素極110に供給することができる。
【0055】
窒素タンク200は、入力バルブ210および出力バルブ220を含むことができる。入力バルブ210は、第2排出ライン31を介して排出された窒素を窒素タンク200への流入を許容するか遮断する役割を行うことができる。出力バルブ220は、窒素タンク200に貯蔵された窒素が水素供給ライン11を介して水素極110に供給されることを許容するか遮断する役割を行うことができる。
【0056】
実施形態によると、入力バルブ210および出力バルブ220は、ソレノイドバルブであることができ、制御部300は、PWM制御またはデューティ比の制御により、入力バルブ210および出力バルブ220の開閉を制御することができる。
【0057】
図2は、本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムのブロック図である。
【0058】
図2を参照すると、燃料電池システム1は、燃料電池スタック100と、窒素タンク200と、制御部300とを含むことができる。
【0059】
燃料電池システム1は、燃料電池スタック100の運転中にまたは運転後に排出される窒素を窒素タンク200に貯蔵することができ、貯蔵された窒素を燃料電池スタック100の運休中に水素極110に供給して水素極110を満たすことで、燃料電池スタック100を保護し、耐久性を向上させることができる。
【0060】
燃料電池スタック100は、水素の供給を受ける水素極110と、空気の供給を受ける空気極120とを含むことができる。燃料電池スタック100は、水素極110の水素と空気極120の空気が反応して電気を生産することができる。
【0061】
実施形態によると、窒素タンク200は、空気極120から排出される窒素を貯蔵し、貯蔵された窒素を水素極110に供給することができる。例えば、窒素タンク200は、燃料電池スタック100の運転中に空気極120から排出される空気に含まれている窒素の全部または一部を貯蔵することができる。他の例において、窒素タンク200は、燃料電池の運転終了後、燃料電池スタック100の運休中に貯蔵された窒素を排出して水素極110に供給することができる。
【0062】
実施形態によると、窒素タンク200は、入力バルブ210および出力バルブ220を含むことができる。
【0063】
入力バルブ210は、バルブの開閉により、窒素タンク200への窒素の流入を許容するか遮断する役割を行うことができる。例えば、入力バルブ210は、バルブの開放(open)状態で窒素タンク200への窒素の流入を許容することができ、バルブの閉鎖(close)状態で窒素タンク200への窒素の流入を遮断することができる。一例として、入力バルブ210が開放される時に、空気極120から第2排出ライン33に排出された空気に含まれた窒素は、入力バルブ210を通過して窒素タンク200に貯蔵されることができる。入力バルブ210は、第2排出ライン33上に位置するか、第2排出ライン33と窒素タンク200との間に位置してもよい。
【0064】
出力バルブ220は、バルブの開閉により、窒素タンク200からの窒素の排出を許容するか遮断する役割を行うことができる。例えば、出力バルブ220は、バルブの開放(open)状態で窒素タンク200からの窒素の排出を許容することができ、バルブの閉鎖(close)状態で窒素タンク200からの窒素の排出を遮断することができる。一例として、出力バルブ210が開放される時に、水素極110は、窒素タンク200から出力バルブ220を介して排出された窒素の供給を受けることができる。出力バルブ220は、水素供給ライン11上に位置するか、水素供給ライン11と窒素タンク200との間に位置してもよい。
【0065】
実施形態によると、制御部200は、プロセッサ(processor)もしくはMPU(Micro Processor Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、CPU(Central Processing Unit)、ECU(Electronic Controller Unit)といったハードウェア装置であるか、またはプロセッサによって実現されるプログラムであることができる。制御部300は、燃料電池システム1の各構成と連結されて熱管理システムの制御に関する全般的な機能を果たすことができる。一例として、制御部200は、燃料電池システム1の全般的な機能を制御する燃料電池制御器(Fuel cell Control Unit、FCU)であることができる。
【0066】
実施形態によると、制御部300は、燃料電池システム1を構成する各構成、例えば、燃料電池スタック100、窒素タンク200などと、有線または無線で通信することができ、一例として、CAN通信に基づいて通信することができる。
【0067】
実施形態によると、制御部300は、窒素タンク200の圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、窒素の貯蔵および供給を制御することができる。窒素タンク200は、内部圧力をセンシングするための圧力センサを含むことができ、制御部300は、圧力センサからセンシングされた窒素タンク200の圧力を受信することができる。また、制御部300は、窒素タンク200の圧力、重量、体積などから、窒素タンク200内の窒素充填量を取得することができる。例えば、圧力センサは、入力バルブ210での圧力をセンシングする入力圧力センサと、出力バルブ220での圧力をセンシングする出力圧力センサとを含むことができ、制御部300は、入力圧力センサのセンシング値に基づいて、窒素タンク200の圧力を取得し、出力圧力センサのセンシング値に基づいて、窒素タンク200の充填量を取得することができる。制御部300が窒素タンク200の圧力および充填量を取得する方式は、例示であって、これに制限されない。
【0068】
実施形態によると、制御部300は、入力バルブ210および出力バルブ220の開閉を制御して、窒素の貯蔵および供給を制御することができる。例えば、制御部300は、窒素タンク200に窒素を貯蔵する時に、入力バルブ210を開放し、出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。他の例として、制御部300は、水素極110に窒素を供給する時に、入力バルブ210を閉鎖し、出力バルブ220を開放するように制御することができる。
【0069】
実施形態によると、制御部300は、燃料電池スタック100の運転中に、予め設定された条件を満たす場合、窒素タンク200に窒素が貯蔵されるように制御することができる。制御部300は、燃料電池スタック100の運転中に、予め設定された条件を満たしていない場合、窒素タンク200に窒素が貯蔵されないように制御することができる。予め設定された条件は、窒素タンク200の圧力および充填量に基づいて設定されることができる。
【0070】
実施形態によると、予め設定された条件は、燃料電池スタック100の運転中の状態に応じて異なり得る。例えば、燃料電池スタック100の運転中の状態は、低出力運転および高出力運転状態を含むことができる。ここで、燃料電池スタック100の低出力運転および高出力運転は、例えば、燃料電池スタック100の出力および空気圧縮機ACPのポンプ回転数に応じて区別することができる。一例として、燃料電池スタック100の高出力運転状態は、燃料電池スタック100の出力が基準出力を超え、空気圧縮機ACPのポンプ回転数が基準回転数を超える場合であることができる。逆に、燃料電池スタック100の低出力運転状態は、燃料電池スタック100の出力が基準出力以下であるか、空気圧縮機ACPのポンプ回転数が基準回転数以下である場合であることができる。制御部300は、燃料電池スタック100の運転状態を判断し、予め設定された条件を異ならせて適用することができる。
【0071】
実施形態によると、制御部300は、燃料電池スタック100の低出力運転中に、第1条件を満たす場合、入力バルブ210を開放し、出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。すなわち、制御部300は、第1条件を満たす場合、窒素タンク200に窒素が貯蔵されるように制御することができる。ここで、出力バルブ220は閉鎖されるため、水素極110に窒素は供給されない。すなわち、制御部300は、燃料電池スタック100の低出力運転状態で予め設定された条件を第1条件として設定することができる。
【0072】
制御部300は、燃料電池スタック100の低出力運転中に、第1条件を満たしていない場合、入力バルブ210および出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。すなわち、制御部300は、第1条件を満たしていない場合、窒素タンク200に窒素が貯蔵されず、水素極110にも窒素が供給されないように制御することができる。
【0073】
実施形態によると、第1条件は、窒素タンク200の充填量が第1値未満であるか、窒素タンク200の圧力が空気極120圧力以下である場合のうち少なくとも一つであることができる。窒素タンク200の充填量が第1値未満であるとは、以降、水素極110に窒素を供給する必要がある状況で水素極110に供給される窒素の量が足りないことを意味することができ、この場合、制御部300は、窒素タンク200に窒素が貯蔵されるようにすることができる。また、窒素タンク200の圧力が空気極120圧力以下である場合には、空気極120から供給される窒素が窒素タンク200にさらに貯蔵され得ることを意味することができる。ここで、空気極120圧力は、空気極120と第2排出ライン33が連結される箇所での圧力、すなわち、空気極120の出口での圧力であることができる。第1値は、窒素タンク200の容量に対するの比率で表されることができ、例えば、燃料電池スタック100の運休中に水素極110に窒素を供給する時に、必要な窒素量に対応する値であることができる。例えば、窒素タンク200の容量が2Lであり、燃料電池スタック100の運休中に水素極110に供給される必要がある窒素の量が0.6Lである場合、第1値は、30%のように設定されることができる。
【0074】
窒素タンク200の充填量が第1値未満であるため、窒素が窒素タンク200に流入する場合(例えば、燃料電池システムの始動直後など)、空気極220から排出された窒素は、窒素タンク200および空気遮断バルブACVに流れることができる。ここで、窒素は、二またに分かれて流れることができ、空気排気バルブAEVの制御が不正確になり得る。したがって、制御部300は、空気排気バルブAEVの制御による空気極220の圧力調節の正確性を高め、窒素貯蔵の効率を高めるために、空気排気バルブAEVの開度率を下げるように制御し、以降、フィードフォワード制御により空気排気バルブAEVの開度率を補償することができる。ここで、空気排気バルブAEVの開度率の制御は、PID制御などにより行われることができる。
【0075】
逆に、制御部300は、第1条件を満たしていない場合、すなわち、窒素タンク200の充填量が第1値以上であり、窒素タンク200の圧力が空気極120圧力を超える場合には、水素極110に供給される窒素が十分であると判断することができ、また、入力バルブ210を開放する場合、かえって窒素タンク200から第2排出ライン33に窒素が逆行し得るため、制御部300は、入力バルブ210を閉鎖して、窒素タンク200への窒素の貯蔵を遮断することができる。
【0076】
実施形態によると、制御部300は、燃料電池スタック100の高出力運転中に、第2条件を満たす場合、入力バルブ210を開放し、出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。すなわち、制御部300は、第2条件を満たす場合、窒素タンク200に窒素が貯蔵されるように制御することができる。ここで、出力バルブ220は閉鎖されるため、水素極110に窒素は供給されない。すなわち、制御部300は、燃料電池スタック100の高出力運転状態で予め設定された条件を第2条件として設定することができる。
【0077】
制御部300は、燃料電池スタック100の高出力運転中に、第2条件を満たしていない場合、入力バルブ210および出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。すなわち、制御部300は、第2条件を満たしていない場合、窒素タンク200に窒素が貯蔵されず、水素極110にも窒素が供給されないように制御することができる。
【0078】
実施形態によると、第2条件は、窒素タンク200の充填量が第2値未満であるか、窒素タンク200の圧力が空気極120圧力以下である場合のうち少なくとも一つであることができる。ここで、第2値は、第1値より大きく設定されることができる。燃料電池スタック100の高出力運転状態では、燃料電池スタック100内での反応が低出力運転状態より増加するため、空気極220の圧力が増加する。したがって、燃料電池スタック100が低出力運転状態で、窒素タンク200の充填量が第1値を超えるようになり、入力バルブ210が閉鎖された状態でも燃料電池スタック100が高出力運転状態になると、空気極220の圧力が増加することによって、窒素タンク200に窒素をさらに貯蔵することができる環境になる。したがって、制御部300は、燃料電池スタック100が高出力である場合、窒素タンク200に窒素をさらに貯蔵されるようにするために、窒素タンク200の充填量が第2値未満である場合、入力バルブ220を開放することができる。第2値は、例えば、80%~100%に設定することができる。
【0079】
逆に、制御部300は、第2条件を満たしていない場合、すなわち、窒素タンク200の充填量が第2値以上であり、窒素タンク200の圧力が空気極120を超える場合には、水素極110に供給される窒素が十分であると判断することができ、また、入力バルブ210を開放する場合、かえって窒素タンク200から第2排出ライン33に窒素が逆行し得るため、制御部300は、入力バルブ210を閉鎖して、窒素タンク200への窒素の貯蔵を遮断することができる。
【0080】
実施形態によると、制御部300は、燃料電池スタック100の運転終了後、窒素タンク200の圧力に応じて窒素タンク200にさらに窒素を貯蔵するか否かを判断することができる。すなわち、制御部300は、窒素タンク200の圧力に基づいて、水素極110に供給されるのに十分な窒素が貯蔵されているかを判断することができる。例えば、制御部300は、窒素タンク200に窒素をさらに貯蔵する必要があると判断した場合、燃料電池スタック100の運転終了後、スタック内の残存水素および酸素を除去するためのCOD(Cathode Oxygen Depletion)またはCSD(Cold Shut Down)手続きを行う間に燃料電池スタック100から排出される窒素を窒素タンク200に貯蔵するようにすることができる。
【0081】
例えば、制御部300は、窒素タンク200の圧力が第3値未満である場合、窒素タンク200への窒素の貯蔵が必要であると判断し、入力バルブ210を開放し、出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。また、制御部300は、窒素タンク200の圧力が第3値以上である場合、窒素タンク200への窒素の貯蔵が不要であると判断し、入力バルブ210および出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。
【0082】
第3値は、予め設定された値であることができ、窒素が窒素タンク200の容量の一定の比率が貯蔵された時の圧力値であることができる。例えば、第3値は、窒素タンク200容量の60%が満たされたときに対応する圧力値であることができる。
【0083】
実施形態によると、制御部300は、燃料電池スタック100の運転終了後および入力バルブ210を閉鎖し、第1時間が経過した場合、出力バルブ220を開放するように制御することができる。ここで、燃料電池スタック100の運転終了後および入力バルブ210を閉鎖した時点は、スタック100の運転終了および入力バルブ210の閉鎖が全て行われた時点を意味することができる。例えば、スタック100の運転終了後、窒素タンク200の圧力が第3値未満であることからCODまたはCSD手続き中に入力バルブ220が開放された場合、燃料電池スタック100の運転終了後および入力バルブ210を閉鎖した時点は、CODまたはCSD手続きが終了するか、窒素タンク200の圧力が第3値以上になり、入力バルブ210が閉鎖された時点であることができる。
【0084】
第1時間は、予め設定されることができ、燃料電池スタック100の運転終了後、再始動されることができ、余裕時間を置いて設定されることができる。例えば、第1時間は、5分に設定されることができる。
【0085】
実施形態によると、制御部300は、窒素タンク200の圧力の低下が中断される場合、出力バルブ220を閉鎖するように制御し、節電モードに入ることができる。すなわち、制御部300は、出力バルブ220を開放して、水素極110に窒素が供給される状態で窒素タンク200の圧力の低下が中断される場合、水素極110に窒素が充分に供給されたと判断して出力バルブ220を閉鎖し、窒素の供給を中断することができる。ここで、窒素タンク200の圧力の低下が中断されたとは、水素極110の圧力と窒素タンク200の圧力が平衡をとったことを意味することができる。また、制御部300は、窒素タンク200の圧力の低下が中断されて出力バルブ220を閉鎖した場合、燃料電池システム1の運休中に、入力バルブ210および/または出力バルブ220を短期間で制御する必要がないため、節電モードに入ることができる。
【0086】
実施形態によると、制御部300は、節電モードに入った後、燃料電池スタック100が運転されず、第2時間が経過した場合、出力バルブ220を開放するように制御することができる。制御部300は、節電モードに入った後、燃料電池システム1の運休期間が続く場合、水素極110内の窒素が拡散などによって圧力が低くなり得るため、出力バルブ220を開放するように制御して、窒素を再供給することができる。ここで、制御部300は、水素極110に微量の窒素を供給すれば十分であり、出力バルブ220の開度率および/または開放時間を低く制御することができる。ここで、燃料電池システム1の運休状態は、制御部300が節電モードに入り、燃料電池スタック100が運転されない状態を意味することができる。
【0087】
図3aは、本文書に開示されている一実施形態による窒素タンクへの窒素貯蔵時の窒素の移動経路を示す図である。
図3bは、本文書に開示されている一実施形態による窒素タンクに窒素が貯蔵されていない時の窒素の移動経路を示す図である。
図3cは、本文書に開示されている一実施形態による窒素が水素極に供給される時の窒素の移動経路を示す図である。
【0088】
図3aを参照すると、窒素タンク200に窒素が貯蔵される場合、入力バルブ210は開放されて空気極120から第2排出ライン33に排出された窒素の一部が入力バルブ210を通過し、窒素タンク200に流入することができる。
【0089】
図3bを参照すると、窒素タンク200に窒素が貯蔵されていない場合、入力バルブ210は閉鎖されて空気極120から排出された窒素は、窒素タンク200に流入されず、第2排出ライン33に沿って空気遮断バルブACVに流れることができる。
【0090】
図3cを参照すると、水素極110に窒素が供給される場合、出力バルブ220が開放されて窒素タンク200から排出された窒素が出力バルブ220を通過し、水素供給ライン11に沿って水素極110に流入することができる。
【0091】
図4は、本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムの制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0092】
図4~
図6に図示されている実施形態は、一実施形態であって、本発明の様々な実施形態によるステップの順序は、図示と異なってもよく、
図4~
図6に図示された一部のステップが省略されるか、ステップ間の順序が変更されるかステップが併合されてもよい。
【0093】
図4を参照すると、燃料電池システムの制御方法は、窒素タンクの圧力および充填量を確認するステップ(S100)と、窒素タンクの圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、窒素の貯蔵および供給を制御するステップ(S200)とを含むことができる。
【0094】
S100ステップにおいて、制御部300は、窒素タンク200の圧力および充填量を確認することができる。このために、窒素タンク200は、圧力センサなどを含むことができる。
【0095】
S200ステップにおいて、制御部300は、窒素タンク200の圧力および充填量のうち少なくとも一つに基づいて、窒素の貯蔵および供給を制御することができる。制御部300は、窒素の貯蔵および供給を制御することで、燃料電池スタック100の運転中におよび/または運転終了後に排出される窒素を窒素タンク200に貯蔵することができ、貯蔵された窒素を燃料電池スタック100の運休中に水素極110に供給することで、燃料電池スタック100を保護し、耐久性を向上させることができる。
【0096】
図5は、本文書に開示されている一実施形態による燃料電池システムの運転中の制御過程を説明するためのフローチャートである。
【0097】
S310ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210および出力バルブ220を閉鎖(close)することができる。開始は、燃料電池スタック100の始動を意味することができ、制御部300は、入力バルブ210および出力バルブ220の状態を閉鎖することをデフォルトとすることができる。
【0098】
S320ステップにおいて、制御部300は、燃料電池スタック100の出力が高出力であるか否かを判断することができる。すなわち、制御部300は、燃料電池スタック100の運転状態が高出力運転状態であるか否かを判断することができる。制御部300は、燃料電池スタック100が高出力である場合(S320-Yes)、S370ステップに進むことができる。制御部300は、燃料電池スタック100が高出力ではない場合(低出力の場合)(S320-No)、S330ステップに進むことができる。
【0099】
S330ステップにおいて、制御部300は、窒素タンク200の充填量が第1値未満であるか否かを判断することができる。制御部300は、窒素タンク200の充填量が第1値未満である場合(S330-Yes)、S340ステップに進むことができる。制御部300は、窒素タンク200の充填量が第1値以上である場合(S330-No)、S350ステップに進むことができる。
【0100】
S340ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210を開放(open)し、出力バルブ220を閉鎖(close)するように制御することができる。
【0101】
S350ステップにおいて、制御部300は、窒素タンク200の圧力が空気極圧力を超えるか否かを判断することができる。制御部300は、窒素タンク200の圧力が空気極圧力を超える場合(S350-Yes)、S360ステップに進むことができる。制御部300は、窒素タンク200の圧力が空気極圧力以下である場合(S350-No)、S340ステップに戻ることができる。
【0102】
S360ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210および出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。
【0103】
S370ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210を開放し、出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。
【0104】
S380ステップにおいて、制御部300は、窒素タンク200の圧力が空気極圧力を超え、および窒素タンク200の充填量が第2値を超えるか否かを判断することができる。すなわち、制御部300は、燃料電池スタック100の高出力運転状態で第2条件を満たすか否かを判断することができる。制御部300は、第2条件を満たしていない場合(S380-Yes)、S390ステップに進むことができる。制御部300は、第2条件を満たす場合(S380-No)、S370ステップに戻ることができる。
【0105】
S390ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210および出力バルブ220を閉鎖することができる。
【0106】
図6は、本文書に開示されている一実施形態による燃料電池の運転終了後、制御過程を説明するためのフローチャートである。
【0107】
S410ステップにおいて、制御部300は、燃料電池スタック100の運転終了可否を判断することができる。制御部300は、燃料電池スタック100が運転終了である場合(S410-Yes)、S420ステップに進むことができる。
【0108】
S420ステップにおいて、制御部300は、窒素タンク200の圧力が第3値以上であるか否かを判断することができる。制御部300は、窒素タンク200の圧力が第3値以上である場合(S420-Yes)、S450ステップに進むことができる。制御部300は、窒素タンク200の圧力が第3値未満である場合(S420-No)、S430ステップに進むことができる。
【0109】
S430ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210を開放し、出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。
【0110】
S440ステップにおいて、制御部300は、燃料電池スタック100でCODまたはCSD手続きが行われるようにすることができる。
【0111】
S450ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210および出力バルブ220を閉鎖するように制御することができる。
【0112】
S460ステップにおいて、制御部300は、燃料電池スタック100の運転終了後および入力バルブ210の閉鎖後、第1時間が経過したか否かを判断することができる。第1時間が経過した場合(S460-Yes)、S470ステップに進むことができる。
【0113】
S470ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210を閉鎖し、出力バルブ220を開放するように制御することができる。これにより、制御部300は、窒素タンク200に貯蔵された窒素を水素極110に供給することができる。
【0114】
S480ステップにおいて、制御部300は、窒素タンク200の圧力の低下が中断されたか否かを判断することができる。制御部300は、窒素タンク200の圧力の低下が中断された場合(S480-Yes)、S490ステップに進むことができる。制御部300は、窒素タンク200の圧力の低下が中断されていない場合(S480-No)、S470ステップに戻ることができる。
【0115】
S490ステップにおいて、制御部300は、出力バルブ220を閉鎖し、節電モードに入ることができる。
【0116】
S500ステップにおいて、制御部300は、燃料電池スタック100の運休時間が第2時間を超えたか否かを判断することができる。ここで、燃料電池スタック100の運休時間は、制御部300が節電モードに入った後、燃料電池スタック100が運転されていない時間を意味することができる。
【0117】
S510ステップにおいて、制御部300は、入力バルブ210を閉鎖し、出力バルブ220を開放するように制御することができる。
【0118】
以上、本文書に開示されている実施形態を構成するすべての構成要素が一つに結合するか、結合して動作するものと説明されているとして、本文書に開示されている実施形態が必ずしもこのような実施形態に限定されるものではない。すなわち、本文書に開示されている実施形態の目的の範囲内であれば、そのすべての構成要素が一つ以上に選択的に結合して動作することもできる。
【0119】
また、以上で記載した「含む」、「構成する」、または「有する」などの用語は、特に逆の記載がない限り、当該構成要素を内在し得ることを意味し、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得るものと解釈すべきである。技術的や科学的な用語を含むすべての用語は、異なるように定義されない限り、本文書に開示されている実施形態が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。辞書に定義された用語のように一般的に使用される用語は、関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈すべきであり、本文書で明白に定義しない限り、理想的もしくは過剰に形式的な意味に解釈されない。
【0120】
以上の説明は、本文書に開示されている技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本文書に開示されている実施形態が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本文書に開示されている実施形態の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正および変形が可能である。したがって、本文書に開示されている実施形態は、本文書に開示されている実施形態の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであって、このような実施形態によって本文書に開示されている技術思想の範囲が限定されない。本文書に開示されている技術思想の保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈すべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本文書の権利範囲に含まれるものと解釈すべきである。